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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【CROWN LANDS : APOCALYPSE】


COVER STORY : CROWN LANDS “APOCALYPSE”

“In my opinion, video games are unquestionably art, and I’d argue that it is a melting pot of many different disciplines of art coming together in a way that has the potential to be more impactful than movies, and possibly one of the highest potential forms of art.”

APOCALYPSE

カナダのプログレッシブ・ロック・デュオ、CROWN LANDS は決して安易な道を選びません。最新作 “Apocalypse” は、その姿勢を如実に示しています。ギター、ベース、ベース・ペダルを担当する Kevin Comeau と、ドラム&ボーカルを担当する Cody Bowles の2人によって制作されたレコードは、大胆でありながら統一感のあるコンセプト・アルバムとなり、彼らのサウンドをこれまで以上に広大な領域へと押し広げることになりました。
アルバムは、映画的なオープニング “Proclamation” から、疾走感あふれる “Foot Soldiers of the Syndicate”、メロディックな重厚さを湛えた “Through the Looking Glass” と “Blackstar” を経て、19分にも及ぶ壮大なクロージング・トラック “Apocalypse” へと展開していきます。つまり、この多部構成のエピック・アルバムこそ、デュオの才能を存分に発揮する場となっているのです。
「2人組であることの素晴らしさは、お互いに自由にアイデアを出し合えるし、二人以外誰も “ノー” と言ったり、他の意見を言ったりしないこと」と Bowles は語ります。 「僕たちが一緒に曲を作る時は、すべてその場でライブで作るんだ。だから、それはまさに僕たちの純粋な化学反応。色々な要素を組み合わせ、何がうまくいって何がうまくいかないのかを見極め、そこから本当に美しい錬金術が生まれるんだよね…例えば、”Apocalypse” の一節になるような、素晴らしいリフのある15秒のフレーズを見つけたら、それを別のフレーズと重ね合わせる。そうやって、すべてをライブで録音し、テストしていくんだ。
ただ、真の民主主義が欠如していることにはマイナス面もある。どちらかが譲歩しなければ何も起こらない。しかし、その制約を乗り越え、それを活かして何かを生み出すことができれば、実は強みになる」
同じようなダイナミズムは “Beardless Part One” にも影響を与え、より壮大なコーラスを作るという新たな挑戦が、アルバムの中でも特に印象的な瞬間を生み出しました。この創造的な “摩擦” は、バンドの活動を停滞させるどころか、どちらか一方だけでは到達できない高みへと彼らを押し進めているのです。
この2人編成というスタイル自体は、意図的な選択というよりは、むしろ自然発生的なものでした。Bowles は19歳頃、Comeau とのジャムセッションに参加するまで、歌ったことは一度もありませんでした。
「声が自然に出てきて、”うわ、すごい!” って思ったんだ。で、これは続けなきゃって」

CROWN LANDS の RUSH 愛、ミクマク族の遺産についてはこちら。

Bowles は生まれてからずっとドラマーで、父親の好きなバンドは RUSH でした。中学2年生になるまで、ほとんど RUSH ばかり聴いていました。初期のブルースのジャムセッションで、Comeau が足でキック・ドラムを叩いてリズムを取り始めたとき、Bowles はほとんど偶然にドラムセットを引き継ぎました。
「Kevin が “足はどうしたらいいんだ?” って言って、ベースペダルを弾き始めたんだ。それで僕は “よし、なら僕は歌ってドラムも叩こう” って思ったんだ。もうなるようになれって、ドラムを叩きながら歌を覚えたんだよな。まさに環境の産物だね」
Bowles がボーカルでよく比較されるのは、特に Geddy Lee や Robert Plant ですが、彼はそれを謙虚に受け止めつつも、その背景をきちんと理解しています。もともとのブルース・ロックの影響は、初期の頃は Steve Marriott, John Fogerty そして Plant へと彼を導きました。そこから、バンドのプログレッシブな方向転換によって、彼の鋭角的なメロディセンスがより鮮明になったのです。
「ほとんど本能的にそういう傾向が出てくる。でも、結局それは僕自身のスタイルなんだよな」
“Apocalypse” では、バンドは長年守ってきたルールの一つ、”ライブで演奏できないなら、レコーディングしない” を意識的に放棄することにしました。当時、Comeau は他の楽器に加えてベース・ギターを加えることを主張し、すぐに演奏用に特注のダブルネックベースを製作したくらいでしたが、”Apocalypse” の頃には、彼らは芸術を第一に考え、ライブでのアレンジは後から考えるという方針に完全に傾倒するようになりました。そのため、Comeau がステージで簡単に再現できない複雑なハーモニー、創造的な工夫を必要とする重層的な楽器編成、そして最終的には、ライブで楽曲を生き生きと輝かせるために2人のツアー・ミュージシャンを新たに加えるという決断に至ったのです。
「この音楽は僕たちよりも長く生き続けるだろう。芸術のために音楽を作り、ライブでどう演奏するかは、その時に考えよう」

そう、”Apocalypse” への道のりは、昨年リリースされたアンビエント・ワールドミュージックを基調とした2枚のアルバム “Ritual I” と “Ritual II” の自由に深く根ざしています。Bowles にとって、これらのアルバムは “音楽への愛がロックの枠を超えていることに気づいた” 作品でした。ユニバーサル・レーベルとの決別後、バンドは方向転換を余儀なくされていました。「レーベルもレコーディング予算もなかったけど、自分たちで曲作りやリハーサルをするスタジオはあった。そこで自分たちでレコーディングやミックスをするには、ちょっとした工夫が必要だったんだ。
“Ritual II” のレコードは、僕らがが初めてプロデュースしたレコード…そのアルバムが今年JUNOにノミネートされたのは本当に素晴らしいことだ…そのレコードの大部分が僕たちのソファでレコーディングされたというのは、ちょっとクレイジーだよね」
“Ritual I&II” は、バンドにとって音楽的に大きな転換点となり、リフと轟くドラムの代わりに、フルートと世界各国のパーカッション、それに柔らかなメロディーが採用されました。
「あれはプログ・ファンを驚かせたけど、最高だよ。人を驚かせられないとしたら、正しいことをしていないってことだと思うからね」
その芸術的な自由さは、今回のアルバムのすべてのトラックに散りばめられています。例えば、”The Fall” は Comeau が弾いていたリフから生まれました。当初、そのリフは PINK FLOYD の “Run Like Hell” に少し似すぎていると感じられましたが、軌道修正の結果、フロイドの雰囲気と、Bowles による KISS の影響を受けたドラム・アプローチが融合した楽曲が生まれました。Bowles はこの曲で Peter Chris から直接的なインスピレーションを受けたと語っています。
“Through the Looking Glass” は、壮大なコーラス・メロディーを中心に形作られました。そうして、スタジオでプロデューサーと話し合った際、Bowles が当初は却下していたドラゴンのイメージというコンセプトにたどり着いたのです。
「ずっとノーと言っていたんだ。でも、結局 “わかった、賭けに負けた” ってなった。ドラゴンの翼に乗って、僕たちは飛ぶ。まあ、それでいいか」 結局、この曲はアルバムの中でも彼のお気に入りの1曲となったのです。

19分にも及ぶタイトル曲をリードシングルとしてリリースしたことも、アルバムの他のすべての楽曲と同様に、意図的な選択でした。
「統計的に考えて、何の注目も浴びずにアルバムを丸ごとリリースしたら、誰も聴いてくれないだろう。だから、注目を浴びるようにしたんだ。インスト・アルバムを2枚出したけど、方向性を見失ったわけじゃない。僕たちはプログレッシブ・バンドだ。僕たちはプログレッシブ・ロックをやっているんだ。宇宙のドラゴンについての20分の曲もあるんだ。ただ好きなことをやっている。これが僕たちが考え出した素晴らしいストーリーだ。じっくりと味わい、読み、理解してほしいね」
レコーディングを通して二人が頼りにしたヴィンテージ機材も、アルバムの個性を形作る上で重要な役割を果たしました。Comeau はオリジナルのモーグ・シンセサイザー、古いトーラス・ペダル、ヴィンテージのレスリー・キャビネットを持ち込み、一方 Bowles はアルバムの一部を1970年代のスリンガーランド・ブラックゴールド・キットでレコーディングしました。「僕たちは間違いなくクラシックなサウンドの機材を好むんだ」
“Apocalypse” に貫かれているコンセプトは、”Fearless” の前日譚として機能し、宿敵であるシンジケートとその首領ブラックスターの起源を描いています。シンジケートの台頭、シンジケートの右腕としてブラックスターが頭角を現し、カラゴンが没落する。
「これは、シンジケートがすでにカラゴンに拠点を築き、仕事を終わらせるために戻ってきた時代。彼らは “Fearless” の惑星を破壊した後、露天掘りですべての資源を奪うんだ…シンジケートの本拠地であるブラックスターの故郷から、宇宙の資源と惑星を占領して植民地化し、略奪し、太陽系を攻撃する。そんなシンジケートのイデオロギーをめぐって内戦が勃発していくんだ。空想的に聞こえるかもしれないけど、これは僕たちの現実に根ざしている。まさに今の時代を反映しているんだ。これはつまり、普通の人がいかに簡単に過激化できるかについて…普通の人がオルタナ右翼に誘惑されることについて。だからこそ、ファンタジー要素をもっと盛り上げる必要があったんだよな。
あのエッジーなリフが “Blackstar” になったのは、怒りと凶悪さを感じさせるサウンドで、まるで彼が他の惑星を征服するモンタージュのようだったから。
社会として、僕たちは本当に不快な問題に直面している。そんな中で、僕らが愛するサイエンス・ファンタジーで語りかけることができたのは、まさに幸運だった。”Apocalypse” の根底にあるテーマは、憎しみは憎しみを生み、暴力は暴力を生むということだ。蒔いた種は必ず自分に返ってくる」

もし、Bowles が愛するビデオ・ゲームを、バンドをテーマにして無制限の予算で制作できるとしたら、どんなゲームにするのでしょうか?
「もしバンドを題材にしたビデオ・ゲームを制作できるとしたら、間違いなくオープン・ワールドの3DアクションRPGにするだろうね。独特なアートスタイル(ファイナル・ファンタジーXII ゾディアックエイジとワンダと巨像を合わせたようなイメージ)で、プレイヤーキャラクターは Fearless だ。彼は、自らの民が滅ぼされた謎を解き明かし、邪悪なシンジケートへの復讐の道を歩むことになるよ。バンドの “Fearless Chronology” に登場するキャラクターや場所、例えば Fearless が導きを求めるオラクル、凍てつく荒野、そしてもしかしたら Fearless の失われた民の生き残りであるドラゴン・ライダーなどを登場させて、バンドのストーリーをさらに掘り下げていきたいね」
ビデオ・ゲームは、CROWN LANDS の音楽制作にインスピレーションを与えているのでしょうか?
「ビデオゲームは僕の人生の様々な面やメディアとの向き合い方に影響を与えてきたけど、中でも音楽的な面で最も大きな影響を受けているんだ。メロディーの感覚は、特に幼い頃にプレイしたゼルダから大きく培われたと思う。(日本の作曲家)近藤浩治氏が、シリーズを通してハイラルの多様な風景にふさわしい、素晴らしい音楽的フックと色彩豊かなモチーフを織り交ぜる能力は、僕の心に深く刻み込まれているよ。
同様に、素晴らしいサウンド・トラックを持つ数々の名作ゲームやIPにも深く感動させられている。例えば、”ワンダと巨像”, “SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE”, “Ghost of Tsushima”, “モンスターハンター”, “スパイロ“, “シャドウマン”, “ルーンスケープ” とかだね。特に “ルーンスケープ” は、ロックの枠を超えて、変拍子を用いたプログレッシブ・ロックの世界への入り口となった。今でも、こうした名曲を口ずさむことがあるくらいでね」

ゲームの世界に足を踏み入れるきっかけとなったゲームは何だったのでしょう?
「4歳の頃、”ゼルダの伝説” で、美しく広大なゲームの世界に触れたんだ。きっかけを作ってくれたのは父。父は物心ついた頃からゼルダに夢中で、当時よく夜遅くまでファミコン版の初代 “ゼルダの伝説” や “ゼルダの伝説II リンクの冒険” をプレイしていたんだよね。父が “時のオカリナ” をプレイするのを見て、僕もゲームそのものにすっかり魅了されたってわけさ。父は闇の神殿を攻略するのに苦戦していたけど、ついにセーブデータを作らせてくれたんだよね。それ以来、ゼルダ・シリーズは僕の一番好きなゲームになった」
好きなゲームのジャンルは?
「一番好きなゲームジャンルはRPGだね!進行システムが複雑で奥深いほど良いね。どんなゲームでも、常に成長していくシステムが大好きで、新しいアイテムや機能、スキル・ポイントをアンロックするためにひたすらプレイし、スキルツリーに組み込んだり、ゲーム世界を探索したりするのが楽しいんだよ。戦闘やタイミング、パズルなど、難易度が高く、ミスが許されないゲームも好みだね。
Old School RuneScape、World of Warcraft、Baldur’s Gate、Diablo、Dungeons & Dragons Online、Knights of the Old Republic など、挙げればきりがない。さらに絞り込むと、特にアクションRPGが好きでね。フロム・ソフトウェアの名作の数々、モンスター・ハンター・シリーズ、エルダースクロールズ・シリーズ、Black Myth Wukong、Black Desert、そしてもちろんゼルダ・シリーズ(厳密にはアクションRPGではないけど、個人的にはここに含めている)などだね。
強敵を倒して、ドロップ・アイテムを使ってキャラクターを成長させる時の達成感、あるいは型破りな発想で報酬が得られる巧妙にデザインされたパズルほど素晴らしいものはない。脳の特定の部分を刺激し、この上なく心地よく、決して飽きることがないんだよ!」
これまでプレイしたゲームの中で、最も難しかったゲームは何でしょう?
「これまでプレイしたゲームの中で、間違いなく “仁王2” は最も難しいゲームの一つ、いや、もしかしたら一番難しいゲームだったかもしれないね。僕はソウルライク・ゲームでもかなりの難易度を好む方で、 “SEKIRO” を2回もクリアしたくらいだけど、”仁王2″ は難易度の面で全く別次元と言える。ソウルライク・ゲームでありながら、ボスは容赦なくプレイヤーを圧倒し、非常に複雑なスキル・ポイント制の戦闘システムは、習得に非常に時間がかかる。特に、各武器に3種類の構えが用意されている点が大きな特徴で、メイン武器は11種類、遠距離武器は3種類ある。
それに加えて、戦闘には奥深い妖怪化とスキルシステムがあり、これは非常に重要でありながら、理解するのが難しい。最も基本的な敵でさえも、そのスピードと容赦ないダメージ出力を考えると、メタアニメーション・キャンセル戦術とパーフェクト・パリィが生存に不可欠となる。
これまでにないほどの挑戦を与えてくれたゲームで、だからこそ心から愛しているんだよ」

これまでプレイした中で最も美しいゲームは何でしょう?
「懐かしさ抜きで言うと、これまでプレイした中で最も美しいゲームは “ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム” だね。美しいセル・シェーディングのグラフィックと、深く彩られた手作りのオープンワールドは、プレイした瞬間から僕を完全に魅了しまたよ。もちろん、前作 “ブレス オブ ザ ワイルド” やそれ以前のゼルダ・シリーズもすべてプレイしているけど、この作品のハイラルの息を呑むような世界観と雰囲気は、本当に際立っていたね。他のどのゲームとも違って、僕をその世界そのものに引き込んでくれたんだ」
今までプレイした中で最高のゲームは?
「今までプレイした中で最高のゲームを選ぶのは本当に難しいね。あえて挙げるとすれば、”SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE” と “エルデンリング” の2つだろうか。”SEKIRO” のアクション戦闘とストーリーは、僕の意見では他に類を見ないほど素晴らしいものだよ。戦闘は、僕がこれまでプレイしたゲームの中で最も緻密で、ピクセル単位で完璧な剣戟アクションであり、ストーリーは驚くほど緻密なディテール、秘密、隠されたクエスト、そして独特の雰囲気に満ち溢れているね。源の宮、そして水生村の悲劇的な物語など、ほんのわずかな情報さえも、僕を魅了してやまないんだ。
“エルデンリング” も、環境デザインとオープン・ワールド全体の美しさ、そして半神たちがエルデンリングの欠片を巡って争う壮大な物語の深みにおいて、僕にとっては “SEKIRO” と同等の完成度を誇っている。これまでプレイしてきたソウルライク・ゲームに比べれば簡単だったけど、その圧倒的なスケールと、サウンドデザインから戦闘、世界探索に至るまで全てが一貫して素晴らしい出来栄えだったことに深く心を奪われたね。初めてプレイした時の衝撃は一生忘れられないだろう。
マップは、もう全て見尽くしたと思っても、どんどん広がっていくんだよね。どこを見てもやることが山ほどあって、バンドの練習の合間を縫って1ヶ月間部屋にこもりきりで、発売から1ヶ月以内に100%クリアしたんだ。後悔は全くないよ(笑)」
ビデオ・ゲームは、音楽と同様に芸術と言えるのでしょうか?
「僕の考えでは、音楽と同様、ビデオ・ゲームは紛れもなく芸術で、様々な芸術分野が融合したるつぼのような存在だ。映画よりも大きな影響力を持つ可能性を秘めていて、おそらく最も高い潜在能力を持つ芸術形態の一つと言えるだろう。プレイヤーが次にどこへ進むべきか、世界のどの部分や物語を解き明かすべきかを自ら発見できるというゲームの本質は、その作り込まれた世界で交流するすべての人にとって、他に類を見ない個人的な体験を生み出すからね。
僕自身のゲーム体験では、精緻に作り込まれた世界に登場するキャラクターや冒険に、まるで心の中で大切にしている現実の延長であるかのように、感情的に深く結びついている。もしこの感覚が芸術作品への愛着から生まれたものでないとしたら、一体他に何が芸術といえるのか僕には分からないよ」

参考文献: V13net:Level Up: Crown Lands Drummer & Vocalist Cody Bowles Discusses His Life as a Gamer

THE PROG REPORT :Crown Lands Interview – Apocalypse

SPILL MAG:SPILL FEATURE: APOCALYPSE – A CONVERSATION WITH CROWN LANDS’ KEVIN COMEAU & CODY BOWLES

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【ANGINE DE POITRINE VOL. Ⅱ】 FUJI ROCK 26′


COVER STORY : ANGINE DE POITRINE “VOL. Ⅱ”

“I built the first microtonal guitar we used myself. I added more frets on a guitar with a saw. The moment we started playing it, we just laughed!”

ANGINE DE POITRINE

「ノコギリでフレットを増やしたんだ」 ANGINE DE POITRINE (フランス語で狭心症の意) は “意味不明” なマイクロトーン・ダブルネック・ギターを自作。そうして今、彼らはネット上で爆発的な人気を博しています。
ジャズ、プログ、マスロックを融合させた彼らの濃密なサウンドは、数百万回の再生回数を記録し、Rick Beato や Cory Wong, Dave Grohl といったミュージシャンを驚愕させながら、音楽世界の話題をかっさらっています。
ケベック出身の型破りなデュオは、まるで別次元、別宇宙から来たかのような、見た目も音色も異彩を放つ自作のマイクロトーン・ダブルネック・ギターを手に、不協和音をバイラルな言語へと昇華させ、先月KEXPで行われた彼らのパフォーマンスは、なんと350万回以上の再生回数を記録。FUJI ROCK 26′ への参戦も決定。
2020年から活動を開始し、ケベックを拠点とするこのデュオは、まさに方向感覚を失わせるようなサウンドを奏でています。彼らの黒と白の水玉模様の衣装と張り子の頭部は、そのミステリアスな雰囲気をさらに高め、ただでさえ異質なサウンドに、催眠的でありながら悪夢のような視覚的アイデンティティを与えているのです。しかし、真の物語は彼らの指先に込められています。
異質な存在の始まりは、やはり異質でした。
「初めてお互いの音楽を聴いたのは、初めて一緒にジャムセッションをした時だった。子供の頃、僕たちは音楽を仕事場というより遊び場のように捉えていてね。午後は地下室で過ごしたり、時にはドラムとアンプを野外に持ち出して自由に即興演奏をしたりしていたんだ。僕たちが結束を固め、緊密な共通の芸術的ビジョンを築き上げてきたのは、カバー曲を演奏することに全く興味がなく、自由な即興演奏を通して一緒に演奏することを学んだからだと思う。
常に、グロテスクな即興演奏で笑いを取ったり、自分たちのオリジナル曲のレパートリーを増やしたりすることを目指していた。あるいは、遊びを通して互いに刺激し合うこともあった。例えば、”おい、こっちの友達に無調のウォーキング・ベースを三連符で弾いてもらって、ギターは奇妙な16分音符のラインで切り込みを入れて、ドラムはスウィングと均一なリズムを交互に刻むんだ。まるでビデオゲームのビートみたいにね” といった具合にね」

当時も今も、二人はギタリスト Khn の家をリハーサルスペースとして使っています。彼ら曰く、そこは “混沌としていて、ちょっと崩れかけている” 場所で、アリやネズミがいて、壁にはカビが生え、屋根からは水が漏れているそうです。しかし、その環境には独特の静けさがあり、それが彼らの奇妙な演奏を可能にしているといいます。「森の中の静かな場所だから、いつでも思いっきり騒げるんだ」
ANGINE DE POITRINE の初の公式コンサートは、シクティミで開催されたパフォーマンスアート・イベントで行われました。そこで二人は、好奇心旺盛でオープンマインドな地元の人々からすぐに支持を得ることに成功します。
「あの最初のショーは、もし僕らが活動を続けたらどうなるかという試金石だった。バンドの構想は、ライブ・パフォーマンスに特化していて、最初はちょっとした冗談だった。でも、僕たちがこれまでやってきたことの多くは、そういう瓢箪から駒的なものなんだ」
ふたりは匿名性について語ろうとはしませんが、バンド名とインスピレーションの源については(ユーモラスに)認めています。
「視覚的にも音響的にも、僕たちの主なインスピレーション源はテングザルだ。バンド名は最初は冗談で出したものだったけど、不協和音による心臓機能不全というアイデアと合致していることに気づいた。それと、いくつかの曲に感じられる切迫感もね」
たしかに、”切迫感” という言葉は、ANGINE DE POITRINE の特徴である、力強く、微分音的で、ループを多用したサウンドとその進化を的確に表現しています。
「僕たちは物事を自然に進化させている。音楽の方向性に厳密なスタイルの境界線を設けないでね。僕たちの音楽的嗜好はロック音楽に深く根ざしているので、常に少し “ヘヴィ” な雰囲気があるかもしれないね。でも、曲を通してさまざまな影響を感じ取ることができるだろう。”Vol. II” では、あまり深く考えずに、さまざまな方向へ進んでみた。そういうこともあるんだってね」

作曲における彼らのモットーは何でしょう?
「僕らのモットーは常に、新鮮な音楽的アイデアを世に送り出し、驚きで脳を刺激しつつ、ある程度シンプルさを保つことなんだ。変拍子をできるだけ聴きやすくしようと常に心がけているんだ。タイトで “複雑な” ビートと、すごく踊れるビートの間を行き来するのが好きなんだ。ギターのように、緊張と解放のパターンを作り出すようにしているんだよ」
とはいえ、考えすぎてはいないようです。
「僕たちは、象徴主義にはあまり重きを置いていないんだ。バンド全体として、深い概念的な思考プロセスは存在しなくてね。みんなが耳にする、目にするすべてのものは、常に僕たちの独特なユーモアのセンスの産物であり、それが僕たちの共通の創造空間の根底にあるものだ。つまり、音楽に合わせて体を揺らし、笑い、奇妙で不条理、あるいは驚きに満ちた美的表現(視覚的なものも音楽的なものも)を通して、喜びの状態に到達するのが目的なんだ」
独特の衣装も偶然の産物で、強いていえばリスナーの驚きを誘うため。
「衣装は、初めてのライブのために即興で作ったんだ。アンディ・カウフマンみたいな、地元の観客を驚かせるためのちょっとしたイタズラみたいなもので、ライブを1回や2回、あるいは3000回やるかどうかも分からなかったからね。最初は冗談のつもりだったんだ。僕たちはジョークが大好きで、アイデンティティの一番の源だからね。何事も少し軽快で楽しいものが好きだ。時が経つにつれ、僕たちのバンドがちょっと風変わりだということを受け入れるようになってきた。そして今では、それが別の意味で役に立っている。プライベートとステージ上のペルソナを切り離し、匿名性を保つことができるからね」

彼らのサウンドの中心にあるのは、自作のマイクロトーン楽器。ストラトキャスター型のダブルネックギターで、エレキギターとベースの中間のような形状をしています。このギターは手作業でフレットを追加することで改造されていて、標準的な西洋音階の音程間の音程を奏でることができるのです。
Jack White のギターとベースを融合させた “アグリー・スティック” を彷彿とさせるこのギターは、ギターとベースを兼ねたダブルネック構造で、その特徴はとんでもなく奇妙なフレット間隔にあります。Bumblefoot のフレットレスのように、これまでにも興味深いダブルネック・ギターはいくつか存在しましたが、これは全く異なる存在かもしれません。そうして、実験的に始まったものが、あっという間にバンドの代名詞となりました。
「僕たちが最初に使ったマイクロトーン・ギターは、自分で作ったんだ」と、ドラマーの Klek de Poitrine は告白しています。「ノコギリを使ってギターにフレットを追加したんだよ。でも演奏し始めた瞬間、みんなで笑ってしまったんだ。でも、僕はギタリストじゃないから、楽器のポテンシャルを十分に引き出せていなかった。それで、Khn に持って行って、”これ、絶対試してみて。全く意味不明だけど” って言ったんだ。そしたら、演奏し始めた瞬間、不協和とそれぞれの音の近さに、みんなで大笑いしたよ」
その “不協和” こそが重要でした。インドと日本の音楽伝統からインスピレーションを得たこのデュオは、四分音やマイクロインターバルを装飾としてではなく、楽曲の基盤として活用しているのですから。
プログレッシブ・ロックとモダン・ジャズをバックグラウンドに持つギタリストのKhnは、ギターを異国情緒あふれる目新しい楽器としてではなく、ハーモニー言語の拡張手段として捉えています。
「四分音を使うことで、半音階的なアイデアを拡張し、より緊張感を高めることができる。そうすることで、Frank Zappa のようなフレージングに近いものになるんだけど、僕らはさらにその先へと突き詰めている。結局のところ、僕たちが作る曲のほとんどは、John Scofield の “Überjam” や Miles Davis の “So What” のような曲とハーモニー的に比較できるだろう」

Klek がマイクロトーンに惹かれた理由は何だったのでしょう?
「ドラマーだけど、昔から “東洋音楽” 、つまりインド音楽や日本音楽などが大好きなんだ。音符が増えることで、より複雑な響きが生まれるように感じてね。四分音や三分音がもたらす深みに、いつも魅了されてきたよ。音符間の緊張感や不協和をこよなく愛する僕たちにとって、その方向へ進むのはごく自然な流れだった」
ギタリストの Khn はまず、アラビアの響きに惹かれていました。
「最初は、アラビア風の響きをどうにかして出そうとしていたんだ。でもすぐに、よりモード的なアプローチへと移行し、非常にステレオタイプで、結局は自分の文化ではないものを連想させるようなものに陥ることなく、不協和音の可能性を最大限に活用しようとしたね。それに、僕自身の音楽的背景は、プログレッシブ・ロック、モダン・ジャズ、そして現代音楽に深く根ざしている。僕にとって、四分音をもっとキュビズム的、というか、Frank Zappa 風のフレーズで使うのはごく自然なことなんだ。四分音を使うことで、倍の長さの半音階的なアプローチを探求し、より緊張感を高めることができる」
また、トルコのロックや、日本の伝統音楽、そして KING CRIMSON が “Dicipline” で探求したインドネシアのガムラン音楽も影響を受けていると述べています。しかし、時が経つにつれ、彼らはこの独特な楽器を本当の意味で自分たちのものにしつつあります。
「僕たちは、ロックのグルーヴ美学に深く根ざした、独自の音楽言語を探求しているんだ。まだそれほど長くこの手法に取り組んできたわけじゃない。ギターを弾き始めて20年になるけど、マイクロトーンを探求したのはせいぜい4、5年くらいかな。まさに今、僕たちが開いたばかりの扉なんだ」

Klek のお気に入りのバンドはなかなかに通好み。
「僕の生涯のお気に入りは、70年代のプログレッシブ・ロック・バンド、GENTLE GIANT だ。彼らは本当に変人で、プログレッシブ・ミュージックのオタクだった。BLACK SABBATH の前座を務めたんだけど、あまりにも奇妙だったから観客はブーイングしたんだ。観客は準備ができていなかった。ヘヴィ・メタルのリフを求めていたのに、GENTLE GIANT はバイオリンやトランペット、中世の衣装で現れたんだ(笑)。
あと、DUA LIPA は本当に最高にイカしたグルーヴを生み出すと思う。Calvin Harris の音楽全般も、本当に素晴らしい名曲ばかり。過小評価されているバンドといえば、僕の友人で LE PARC というバンドのメンバーにもエールを送りたいね。彼らは僕たちより少し若いけどとてつもない実力派だよ。彼らは一流のプログレッシブ・ロックを演奏する。彼らが国際的にブレイクすることを願っているんだ。少なくとも、彼らが望むだけの名声を得ることをね。だって、本当に、彼らはブレイクするに値するんだから」

Khn は複雑な音楽に没頭する時期は終わったと考えています。
「ほら、誰しもがもっと凝った、もっと複雑なものに共感しようとする時期を経るじゃない。大学で音楽を勉強した後、その時期は終わったよね。今はポップをたくさん聴いているんだ。実は、僕も Calvin Harrisという名前が頭に浮かんでいて、リアーナや DUA LUPA 、その他 Calvin がプロデュースした大物ポップスターたちのヒット曲はどれも最高なんだよな。
過小評価されているバンドなら LOUNGE LIZARDS かな。有名ではないけれど、世界中のアンダーグラウンドシーンでは認知されているバンドだからね。本当にユニークで、他に類を見ない個性を持ったバンドなんだ。ジャズの美学を取り入れつつも、ポップ・ロックのスタイルで演奏する。そして、そのエネルギーはパンクに近い。初めて彼らの音楽を知った時は、本当に衝撃を受けたよ。ギタリストの Arthur Lindsay のギターの弾き方は、ジャズとは全く関係ないんだ。彼はノイズシーン出身で、意味不明なリフを思いつく。まるで音色や音符の概念を拒否しているかのようだ。彼は明確に定義できる音符やメロディーを演奏しない。だから彼のギター演奏が大好きだ!
僕が最も誇りに思うアーティストは、ケベックのバンド、DEUX POUILLES EN CAVALE で、彼らのライブでのルーパーの使い方に本当に感銘を受けた。彼らは僕たちにデュオで演奏するよう刺激を与えてくれたね。僕は彼らのツアーに同行し、彼らが演奏するほぼすべての場所に行った。彼らを見るためにヒッチハイクまでしたんだ」
Rick Beato によれば、ANGINE DE POITRINE ほど彼の受信箱に大量のメールが殺到したアーティストは他にいないそうです。
「彼らについてのメールが1日に25通届き、コメントは何千件にも上っている。彼らの演奏を聴くと、”一体どうやって演奏しているんだろう?” と驚かされてしまうよね。これが未来の音楽のサウンドだと私は想像しているよ」
4月2日にセカンドアルバム “Vol. II” をリリースした彼らの使命は明確です。マイクロトーン音楽を、単なる珍しい音楽ではなく、完全に確立された音楽のひとつとして、そして Jeff Beck がこれまで探求してきたマイクロトーンの限界を超えて、メジャーへと押し上げることです。
「目標は、マイクロトーンを他の音と同じように使うこと。装飾としてではなく、言語そのものとして使うことだよ」
彼らの奇妙で不協和音に満ちた世界は、2026年を通してさらに拡大していくことでしょう。

参考文献: GUITAR WORLD :microtonal guitar has been the key to their unlikely success

NOISE MAG:ANGINE DE POITRINE: A DISCUSSION WITH THE INFECTIOUS QUEBEC BAND

FLOOD MAG:Angine de Poitrine Put the “Big” in Ambiguous

FUJI ROCK FESTIVAL 26′

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WIDEK : ENTRANCE INTO ETERNITY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH WIDEK !!

“I’ve always loved calmer parts in metal music. Back in 2010 I listened a lot of djent precursors and post-rock bands and I was like: Hey! I love heavy riffs and I love ambienty post-rock clean guitars. Let’s mix this!”

DISC REVIEW “ENTRANCE INTO ETERNITY”

「僕は常に Djent の単調さや類似性を避けようとしてきたんだ。当時多くの曲は “0-0-0” というリフ構成と、同じようなメロディーやパターンに基づいていたからね。だから、同じようなサウンドのバンドが多すぎたという理由で、Djent の人気が衰えた理由も理解できるよね。残念ながら、メタルコアというジャンルでも同様のことが起こっていた。もちろん、今でもトップレベルで活躍している Djent バンドはたくさんあり、僕の大好きなバンド (PERIPHERY) もその一つだよ!」
00年代末期から10年代の中盤まで、Djent は大きなムーブメントとしてヘヴィ・メタルを牽引していました。もともと、MySpace やネットの掲示板から火がついたナードでアンダーグラウンドなリズムとシュレッドの実験は、その多くが “ベッドルーム・ミュージシャン” で、プロモーションやリリースも大半が DIY で行うという、まさに SNS 時代の到来を感じさせる刹那の煌めきでした。
しかし、その “誰にでも参加できる” というムーブメントの性質は、多くの才能を輩出すると同時に、シーンを飽和させ、同じような音楽が乱立することによって衰退への道を歩むことにもつながったのです。とはいえ、もちろん Djent の代名詞であったあの重低音とポリリズミックな響きは今でもメタル・リフのそこかしこで輝きを放っていますし、何よりも真に才能あるアーティストはムーブメントの浮き沈みにかかわらず活動を続けています。
シーンの先駆けとなった PERIPHERY, ANIMALS AS LEADERS, TesseracT、そして Plini, Sithu Aye, Owane, Jacob Zytecki, David Maxim Micic…彼らには人智を超えた超絶技巧はもちろん、類稀なる個性も備わっています。ポーランドの Widek もそんなひとつの才能。
「僕はメタルの中の落ち着いた静かなパートが昔から大好きなんだよ。2010年頃、Djent の先駆けやポスト・ロックをたくさん聴いていて、”ヘヴィなリフも好きだし、アンビエントなポスト・ロックのクリーン・ギターも好きだ。これをミックスしてみよう!” って思ったんだよね。新しいジャンルではないのは分かっていたけど、当時はヘヴィでありながら落ち着いた/アンビエントなインストゥルメンタル・バンドはあまり多くなかったからね。個人的には、その方がずっと退屈じゃないと思うんだ。そして、その試みは大成功だった。誰かが僕の最初のEPを YouTube にアップロードしてくれて、最初から人気が出たんだよね!」
当時 Bandcamp の “Djent” タグをせっせと漁っていた人間で、WIDEK の名を知らない者はいないでしょう。そしてたしかに、彼の音楽は異端で、斬新で、雄弁でした。細分化と多様化が進むモダン・メタル勇躍の時を象徴するかのように、WIDEK はなんのためらいもなくメタルの重厚な技巧に、ポスト・ロックの繊細と静謐、夢見心地な壮大さ、そして幻想的で美しい世界観を組み合わせました。
重要なのは、WIDEK の音楽がいわゆる “ポスト・メタル” とはまた別のベクトルを向いていること。彼の盟友 Gru の手によるアートワークが示す通り、WIDEK の世界は宇宙と空間、次元の合間を行き来していて、だからこそ、プログレッシブで、まるで夜空を輝く星々のように息を呑むほど美しいのです。トレモロとクリーンが織りなす Djent の天の川。
「ギターは決して死んでいない。ソロ・ゲストの参加は僕の音楽の大きな部分を占めていて、曲に深みと多様性を加えてくれる。ギターソロなしでは Widek のアルバムを聴くことは不可能だと言っても過言ではないんだよ!」
同時に、彼の音楽にはシュレッドの夢が詰まっています。”Entrance into Eternity” “永遠への入り口” と名付けられたアルバムには、Gru, Sithu Aye, Morgan Thomaso, Paul Wardingham, Marco Sfogli, Bruno Henrique, Per Nilsson といった歴戦のギター勇士たちが馳せ参じ、AI 全盛の時代に人の手による驚きと興奮を存分に伝えてくれます。そう、これはギターという永遠に探索可能な “宇宙” への入り口でもあるのです。
今回弊誌では、WIDEK にインタビューを行うことができました。「僕は昔からSFや宇宙を題材にした作品が好きだったんだ!そんなロマンティックな場所から発する世界へのメッセージは、”言葉遣い、仕草、日々の選択において、お互いに優しくありましょう” というものだよ。優しい言葉一つが、誰かの1日、あるいは人生を変えることもあるからね。僕たちは、今他人がどんな困難に直面しているかを知るすべもない。だけど、一つだけできることがある。それは、優しくあること。敬意を払うことにお金はかからないけど、その意味は計り知れないんだよ」 どうぞ!!

WIDEK “ENTRANCE INTO ETERNITY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【百合花 (LILIUM) : 萬事美妙】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH 百合花 (LILIUM) !!

“If composing music is like cooking, I’m probably a chef who loves using local ingredients. Taiwan has such a rich musical heritage to explore”

DISC REVIEW “萬事美妙”

「作曲が料理のようなものだとしたら、僕は地元の食材を使うのが大好きなシェフなのかもしれない。 台湾には探求すべき豊かな音楽遺産が多くあり、僕は大学でも民俗学を学んできた。 学べば学ぶほどその魅力に取りつかれ、だから僕は常にそうした要素を自分の作品に織り込んでいるんだ」
台湾へ旅したことのある人なら、彼の地の料理、その本場の躍動感に圧倒された経験があるはずです。その地で育ち、その地の歴史や空気を吸って生み出された文化の蓄積は、あまりにも尊く、そして魅力的です。
近年、そうした唯一無二の審美や精神性を自らのアートに取り入れるメタルやプログレッシブの綺羅星が登場し、シーンを牽引していますが、台湾の百合花もそうしたバンドのひとつ。そして彼らが料理した音楽は、西欧というポップスやロックの出発点を置き去りにするほど、理想的な東洋の神秘だといえるでしょう。
「僕は音楽を聴くたびに、その要素を分解し、ジャンルの起源をたどることに惹かれる。 音楽は人間が作り出したものだから、文章と同じように分析することができるんだよ。その土地の語彙や借用語、さらには発音を間違えて生まれた新しい用語みたいなものを、音楽の中に発見できる。だから将来、百合花の音楽を聴いた人々が、その中に埋め込まれた北管や南管の要素を発見してくれることを願っているよ」
音楽を文章に例えるとしたら、百合花が記す言葉は豊かなクレオールなのかもしれませんね。プログレッシブやメタル、オルタナティブ・ロックはもちろん、ボサノバ、レゲトン、ディスコ・ファンク、そして演歌にいたるまで、西洋も東洋もなく、あまりにも多様な音の葉を飲み込んだ彼らの音楽は、しかしいかなる時も “台湾的” なバイブスに貫かれています。
台湾に根付いた伝統音楽、北管・南管に加えて、銅鑼、リコーダー、葬儀の音楽。そして、多くの台湾人がマンダリン、北京語の台湾方言を使用する中で、台湾伝統の Hokkien (福建語) で紡がれる百合花の音楽には確実に台湾固有のスピリットが宿っています。だからこそ、百合花の音楽は、色彩豊かでに驚きに満ちた万華鏡の中に、確固とした独自のビジョンを投影できるのです。
「音楽は、人々に過去に起こったことを思い出させ、同じ過ちを繰り返さないようにすることができる。 例えば、僕たちの曲のひとつである “もし私が女だったら”(假使我是一個女人)は、政治的犠牲者である蔡奇遠さんの獄中告白をもとに生み出した。 脱獄中、彼は女装して美容院に行き、髪をセットしてもらっていたんだ」
戦争の足音がゆっくりと、しかし確実に忍び寄る東アジアにおいて、最新作 “萬事美妙” で彼らは各曲で複数の主人公の物語が探求することに決めました。祝福を授ける神様から、無力感に苛まれる外国人の叫び、道端の占い師の問いかけ、大道芸人の送別パフォーマンス、そして政治犯の嘆きまで、バンドの楽曲は台湾音楽に台湾音楽ならではの想像力豊かで、思考を要する視点をもたらしました。
そう、音楽は世界を変えることはできなくとも、その身に宿った旋律やリズム、そしてリリックで心を動かすストーリーを伝えることならできるのです。過去や寓話、物語から学ぶのもまた、おそらくアートを嗜む私たちの義務なのですから。そうすればきっと、”すべてが素晴らしくなる” はずです。
今回弊誌では、ボーカル/ギターの林奕碩 (リン・ イースォ) とベーシスト林威佐 (リン・ウェーズォ) にインタビューを行うことができました。「台湾の文化は日本文化の影響を強く受けている。 僕たちが若い頃は、年長者が日本の演歌を歌っているのをよく耳にしたものだよ。 そして、台湾の歌の多くも演歌の影響を受けているんだ。 僕たちの歌 “藝術家” も演歌の影響を使っているんだ。台湾の年長者の様子を表現するためにね。 あと、”猿捕り唄”(掠猴之歌)のアレンジは、任天堂の “マリオブラザーズ” のサウンドトラックの影響を受けているよ」 どうぞ!!

百合花 “萬事美妙” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MORON POLICE : PACHINKO】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SONDRE SKOLLEVOLL OF MORON POLICE !!

“Especially the JRPGs, went on to influence millions of kids, who then, because of the music in these games, had a natural inclination towards progressive rock/metal (and classical too, to an extent). It was basically prog rock/metal, just on a Super Nintendo/Playstation!”

DISC REVIEW “PACHINKO”

「世界は年を追うごとに暗くなっているように思えるね。 インターネットが普及し、ソーシャルメディアが発達したことで、僕たちはあらゆるものを見聞きし、何らかの形でそうしたノイズに関わらざるを得なくなったからだ。 これはとても、とても憂鬱なことだよね。そんな世界でノルウェーの小さなバンドが世界中に広がり、こんなにも遠い日本という岸辺に居場所を見つけることができるなんて、不思議なことだ。でも、これってインターネットってこうして僕たちを引き合わせるものであって、引き離すものではないということを示す素晴らしい例だと思う!」
今や世界は、インターネットとSNSに支配されています。分断や差別を煽るだけの無責任かつ野放図なアルゴリズムは、ただただ悪意と対立を感染させる狂気のウィルスとして日々世界中にばら撒かれています。現代を生きる私たちに、そこから逃れるすべはありません。インターネットなしで生きることのできない私たちには、そうしたノイズを完全に遮断することなど不可能なのです。
しかし、インターネットやSNSは本来、人と人、好きと好きをつなげるポジティブなツールであるべきでしょう。ノルウェーの美しき海辺の街、ベルゲンから世界に旅立った MORON POLICE は、彼らの音楽が遠き日本の岸辺へと届き、この国で人気を博すこととなった現代の “メッセージ・イン・ザ・ボトル” こそがインターネットのあるべき姿だと胸を張ります。
「これは近未来の東京で、ある男が悪魔によってパチンコ台にされてしまうというコンセプト・アルバムなんだ。ストーリーが日本を舞台にしているからというのが一番の理由なんだけどね! それに、僕は日本に興味があるからね! 祖父母と叔父が80年代に確か3年間日本に住んでいて、日本から輸出されるさまざまな文化を見て育ったから、日本の文化や歴史、さまざまな自然に興味があるんだ。それから、アイヌの人々にはとても興味があって、いつか北海道を訪れてみたいと思っているんだ。”Hanabi” については、北野武監督の同名の映画にちなんだ楽曲なんだ」
だからこそ、MORON POLICE の心臓、Sondre Skollevoll は最新作の舞台に日本と “パチンコ” を選びました。実際、このミュージカルのようにカラフルな、そしてジェットコースターのように目まぐるしい風変わりなアルバムに “パチンコ” というタイトルは完璧にフィットしています。現実世界から逃避できる、光のような高揚感も音楽的な射倖心を煽ります。ただし、パチンコに闇があるように、この作品にも暗がりは存在していました。それは、Sondre の親友で長年の相棒でもあったドラマー、Thore Omland Pettersen の死去でした。
「”Pachinko” は彼が亡くなる前にすでに書かれていて、彼はアルバムの曲を知っていた。だから僕たちは、彼のためにもアルバムを完成させたかったんだ。僕が唯一得意なのは音楽を作ることだけど、彼がいなければ同じようにはいかないね。 正直、彼が亡くなってからあまり音楽を作っていないんだけど、それでも今でも演奏するのは楽しいよ。これから僕らの音楽はもっと増えるだろう。それが彼の遺産を称えることであり、2008年に僕たちが始めたことを称えることだと考えているよ。 彼の死を理由に MORON POLICE を終わらせてしまったら、彼は本当に本当に怒ると思うからね」
2022年に不慮の交通事故で亡くなってしまった親友にしてバンドの盟友。Sondre は真剣に、MORON POLICE の終焉を考えました。しかし、それは決して亡き Thore の望みではないと思い直します。そして、Thore も携わっていた “Pachinko” は思わぬ形で完成を見ました。亡き Thore が心酔していた THE DILLINGER ESCAPE PLAN、Billy Rymer の参加です。そうして、ポップとプログ、そしてゲーム音楽のクロスオーバーとして名を上げた MORON POLICE の音楽は、そこにハードコアと混沌を取り入れることでさらなる進化を遂げました。高揚感と遊び心、繊細と優雅の狭間にパンチの効いたアクセントを取り入れたアルバムは、まさに前人未聴。誰も聴いたことのないオープンワールド・ミュージックの傑作として、紆余曲折の末、遂にリスナーの元に届きます。
今回弊誌では、Sondre Skollevoll にインタビューを行うことができました。「JRPGの多くは、何百万人もの子供たちに影響を与え、影響を受けた子供たちは、これらのゲームに登場する音楽のおかげで、プログレッシブ・ロック/メタル(そしてある程度はクラシックも)に自然と傾倒するようになった。 だから、あの頃のゲーム音楽はスーパーファミコン/プレイステーションに乗っているだけで、基本的にプログ/メタルだったんだ!”」 二度目の登場。どうぞ!!

MORON POLICE “PACHINKO” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CYBER BAND : THROUGH THE PASSAGES OF TIME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDREW PATUASIC OF CYBER BAND !!

“My Dad Advised Us To Learn Tom Sawyer And YYZ by Rush If We Wanted To Win. And Through Learning Both Of The Songs Made Us Love Prog Rock And Opened Our Eyes To a New World Of Music.”

DISC REVIEW “THROUGH THE PASSAGES OF TIME”

「僕たちがまだ初心者だった頃、アマチュアのバンド・バトルに参加しては負け続けていたんだよ。父は、コンテストに勝ちたければ RUSH の “Tom Sawyer” と “YYZ” を覚えろとアドバイスしてくれた。この2曲を覚えたことで、僕たちはプログが大好きになり、新しい音楽の世界に目を向けるようになったんだ」
DREAM THEATER や GOJIRA のグラミー獲得。Steven Wilson の全英チャート1位。もしかすると、インスタントな文化、音楽に対する反動として、プログレッシブ・ミュージックの復権、その狼煙があがったように見える昨今。とはいえ、結局そうした怪気炎も音楽に対価を支払い、アルバム単位で鑑賞する過去の風習が染み付いた40代以上の踏ん張りに支えられているようにも思えます。
実際、シーンを牽引し、ムーブメントを起こすのは若い力。そうした意味で、20代前半からなるフィリピンの至宝 CYBER BAND が注目を集め始めていることに、プログの民はどれほど勇気づけられることでしょう。彼らの “情熱” は、勝利と喜びの味を教えてくれた RUSH とプログに対する恩返し。だからこそ、信頼できるのです。しかも彼らが現れたのはプログ未開の地、フィリピン。メタル同様、第三世界から登場する才能の芽は、シーンの未来を明るく照らします。
「僕らはプログの神様、EMERSON LAKE & PALMER, RUSH, YES, KING CRIMSON, GENESIS から影響を受けている。”Through The Passages of Time” は、壮大なプログ・ロック・ソングへの愛から生まれたもので、自分たちで作ろうと決め、自分たちの限界に挑戦したんだ。テクノロジーの台頭によって、より多くのミュージシャンが革新的で新しいものを生み出すようになると思う。プログの神々が当時そうであったように、もっと多くのアーティストが自分たちの限界に挑戦するようになれば、21世紀のプログレッシブ・ロック・ミュージックはもっと新しい音楽的次元へと進化していくだろうな」
事実、23分のオープナー “Through the Passages of Time” は、音楽の喜びを教えてくれたプログの神々に対する愛情にあふれています。さながら目前でライブを見ているかのような生々しいプロダクションはまさに70年代の偉大なプログやクラウトロックを彷彿とさせます。当時、レコーディングは生のまま、ある意味不完全なものが多くありましたが、だからこそバンドの演奏の楽しさとアイデアの豊かさが際立った側面はあるはずです。このアルバムのサウンドも同じで、パワフルでありながら扇情的で、レトロでありながらモダン。彼らのスピリットを余すことなく伝えていきます。
レトロとモダンの鍔迫り合いは音楽やアイデアにも飛び火します。CYBER BANDは、ドラム、ギター、ベース、ボーカルというクラシックなラインナップを基本としながらも、ストリングス、ピアノ、管楽器、エレクトロニック・エレメントがサウンドを豊かにし、多彩な音のビッグバンを作り出すことでプログ宇宙を拡張していきます。ジャズからクラシックまで、あの頃の巨人と同様に音楽の冒険を楽しみながら、シームレスに調和を取りながら、自らの歩みを進めるのです。
“Epitaph” や “Red Barchetta” を想わせる名演が繰り広げられるアルバムの中で、CYBER BAND をさらに特別な存在へと押し上げるのが、インタビューイ Andrew Patuasic の素晴らしい歌声でしょう。Wetton, Lake, Mercury といった伝説が帰還したかのようにエモーショナルで心を揺さぶる伸びやかな Andrew の歌唱はロックの本質、感情の昂りをリスナーに思い起こさせてくれます。それにしても、Arnel Pineda といい、フィリピンの人は本当に歌心がありますね。
今回弊誌では、Andrew Patuasic にインタビューを行うことができました。「アニメが大好きなんだ!”坂道のアポロン” というアニメが大好きで、日本がいろいろな音楽にオープンであることも大好きなんだ。”賭ケグルイ”のサウンドトラックを聴いて衝撃を受け、日本がいかにあらゆる音楽を愛しているかということを思い知らされたよ」 鍵盤とベースを同時に操る眼鏡クィッの彼も秀逸。どうぞ!!

CYBER BAND “THROUGH THE PASSAGES OF TIME” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PROFESSOR CAFFEINE & THE INSECURITIES : S.T.】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PROFESSOR CAFFEINE & THE INSECURITIES !!

“Everyone Forgets That Yamcha And Tien Are The Unsung OG Heroes Of Dragon Ball, By The Time You Get Around To Dragon Ball Z Everybody Is So Overpowered You Lose That.”

DISC REVIEW “PROFESSOR CAFFEINE & THE INSECURITIES”

「Thank You Scientist はあまり聴いたことがなかったんだ。2019年に彼らのオープニングを飾ったし、本当に素晴らしい人たちだったからあまり言いたくないけど、彼らにハマったのは僕らがすでに地位を確立したずっと後だったんだ。その時点で、僕たちの2枚目のリリース “The Video Game EP” は少なくとも1年前にリリースされていたからね。でも今聴くと、確かに似ているところがあるね」
2011年、ニュージャージー州モントクレア。Thank You Scientist は “The Perils of Time Travel” でジャジー&サックスを前面に押し出した複雑性と、エモーショナルで人を惹きつけるパワーポップのメロディが同居した革命的で魅力的なデビューEPをリリースしました。彼らはキャリアの道のりでますますジャズ・フュージョンの影響に傾き、ますます複雑なインストゥルメンタルと、メロディアスでありながらより複雑なソングライティングを聴かせてくれています。しかし、もしTYSが複雑なジャズよりも、音楽性をキャッチーでエモいコーラスをシームレスに折り込むという天性の才能に集中していたとしたら?ニューイングランドを拠点とするプログ/ポップ/マス/エモ・アンサンブル、Professor Caffeine & the Insecurities のセルフタイトルはまさにその “IF” を実現します。
「SEVENDUST, ALTER BRIDGE, ANIMALS AS LEADERS といったバンドに出会ったとき、彼らは僕にもっと音楽を追求するよう背中を押してくれたんだ。CALIGULA’S HORSE からビリー・アイリッシュへ、CARBOMB から BOYGENINUS へ、といった具合だ」
印象的なフックや曲作りと、興味深く進歩的な音楽的アイデアのバランスを取る最高で最初のバンドが RUSH だとしたら、Professor Caffeine はこの指標で非常に高いスコアを獲得するはずです。それはきっと、彼らを “プログ” の世界に誘った偉人たち、CALIGULA’S HORSE や ANIMALS AS LEADERS が常に複雑性とメロディの美しさを両立させていたから。
リスナーは、どうしようもなくキャッチーで甘ったるくなりそうなコーラス、”Wolf Fang Fist!” や “Astronaut” を口ずさむ一方で、ほぼすべての曲にまるでクッキーの中のチョコレート・チップのように、トリッキーで小さなアルペジオが隙間なくちりばめられていることに気づくはずです。
“The Spinz” に組み込まれた狂ったようなピアノ・ランや、陽気なサウンド “Dope Shades” のバックボーンを形成する驚くほど複雑なジャズ・ハーモニーのように、時には繊細なものもあれば、”That’s a Chunky” でのクランチーなリフとシンセの爆発的なバーストや、”Make Like a Tree (And Leave)” のコーラスに充満する不条理なほどヌケの良いギター・リードなど、より明白な場合も。リスナーが一瞬でも、このバンドのパワー・ポップの才能に導かれてプログであることを忘れてしまうたびに、彼らはまた複雑なユニゾン・ラン、突然のテンポ・シフトや様々な小道具で絶妙のバランスを構築していきます。
そう
「この曲はヤムチャにちなんでいるんだ!ヤムチャはDBZサーガではあまり活躍しなかったけれど、子供の頃から大好きなキャラクターだった。ヤムチャは悟空に対抗できる最初のキャラクターの一人で、彼が “狼牙風風拳” という拳の技をキックから始めるのがいつもコミカルだと感じていたんだよね (笑)。僕たちはドラゴンボールの世界が大好きだから、Dan もこのネーミングを気に入ってくれると思ったんだ。バンドに見せたオリジナルのデモはBPMが20も速くて、想像するのも乱暴なんだけど、もともと最初のアイデアは、ぶっ飛んだ、容赦のない “Kick You In the Face” なライブ・ソングやアルバムのオープニングを作ることだったんだ」
アルバムのハイライトは、ドラゴンボールのヤムチャをテーマとした “Wolf Fang Fist!” “狼牙風風拳” でしょう。物語が進むにつれてインフレしていくキャラクターの強さと “気”。しかし、私たちは原点を忘れてはいないだろうか?ヤムチャの狼牙風風拳や天津飯の気功砲が、ドラゴンボール初期のコミカルな笑いの中で、シリアスに絶妙なバランスを生み出していました。アルバムはフック対複雑、光と影、ユーモアとシリアスの対立が常に存在していますが、まさにドラゴンボール初期のように絶対にどちらかが勝ちすぎることはないのです。
今回弊誌では、Professor Caffeine & the Insecurities にインタビューを行うことができました。「放課後はDBZのセル編やゾイドを見るために急いで家に帰ってたし、サムライチャンプルーは夜遅くまで見てたよ。植松伸夫は、ダークソウル、メトロイド、バイオハザード、そしてソニーと任天堂のほとんどすべてのゲームとともに、作曲家として僕に大きなインスピレーションを与えてくれた」 どうぞ!!

PROFESSOR CAFFEINE & THE INSECURITIES “S.T.” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【FROST* : LIFE IN THE WIRES】


COVER STORY : FROST* “LIFE IN THE WIRES”

“Every Prog Band Worth Their Salt Really Should Do a Double Album, Shouldn’t They?”

LIFE IN THE WIRES

「価値のあるプログ・バンドは皆、ダブル・アルバムを出すものだし、出すべきだよね」
FROST* とその心臓 Jem Godfrey は、この切り抜きやプレイ・リストのストリーミング全盛のインスタントな時代に、90分2枚組の巨大なエピック “Life in the Wires” を作り上げました。それだけではありません。このアルバムは前作2021年の “Day and Age” のコンセプトとリンクしながら、同時に初期の作品、特に画期的なデビュー・アルバム “Milliontown” のサウンドを見事に取り込んでいるのです。2024年にこれだけ “布石” のあるプログらしいプログを手に入れられるとは思えません。
「新しいアルバムの最初のトラックは、”Day and Age” の最後の曲 “Repeat To Fade” の終わりから始まるんだ。”Day and Age” を作ったときに、未来のためのちょっとした布石としてこの曲を入れたのを覚えているよ。
新しいアルバムの舞台に映画の世界のようなものを作り上げたんだ。 John と私が “Day and Age” を書いていたとき、私は音楽に関してかなり視覚的に考えていたんだ。曲を書いていると、その人たちがいる世界が見えてくる。”Day and Age” の世界観はとても映画的で、さまざまな場所や、メガホンを持った5人の紳士が象徴的なアルバム・ジャケット、そしてその世界観など、私にはとても映画的に感じられた! それで、”Day and Age” の最後、”Repeat to Fade” という曲の最後に、曲がフェードアウトして訪れる静寂の中で、”Can you hear me? “という声を入れた。それが新しいアルバムの始まりなんだ。”ジェームス・ボンドが帰ってくる” みたいな感じかな。 そういうアイデアがとても気に入ったんだ」

その映画のような世界観は、ビデオゲームともリンクしています。
「私の頭の中では、ビデオゲームの “グランド・セフト・オート” のような、ひとつの街でドライブしながら何かをするような世界が舞台になっている。 でも、その気になれば、車に飛び乗り、橋を渡って別の街に行くことができ、そこでは別の世界が繰り広げられているみたいなね。”Day and Age” の世界と “Life in the Wires” の世界は同じ世界の別の場所なんだ。 でも、物事は同時進行している。
“Day and Age” の世界では、”Terrestrial” や “The Boy Who Stood Still” のような登場人物たちがいて、同じように “Life in the Wires” にも登場人物たちがいて、それが同時に起こっている。 すべてが同じ宇宙を舞台にしているというアイデアがとても気に入ったんだ。その結果、ビジュアル面でも音楽面でも、ハウス・スタイルを確立するのはとても簡単だった」
だからこそ、ダブル・アルバムが必要でした。
「”Life in the Wires” のストーリーは、2枚組のアルバムが正義だと思えるほど、十分な物語があったと思う。たしかに怖さはあったよ。長くてつまらない迷走しているプログ・バンドだと評価されるほど最悪なことはないからね。 だから私たちは、以前は60分のCDというフォーマットの枠の中で十分に語ることができると思っていた。
でもこのアルバムでは、4面のレコードを作りたいと強く思ったんだ。 その結果、最適な音質を得るために、ヴァイナルの1ビットが約20分(片面)という制約が生まれた。 不思議なことに、86分と言われるととても長く感じる。 でも、20分のヴァイナル盤を4面分と言われれば、頭の中ではそれほど大変なことだとは感じない。
ダブルアルバムのアイデアはずっとやりたいと思っていた。 2枚組アルバムという素晴らしいプログのクリシェをやるのにちょうどいいタイミングだと思ったんだ!」

4面を扱えることで、ストーリーの幅も広がります。
「その通りだよ。前半の第1幕で登場人物を紹介する。そして次の第2幕で旅が始まる。 そして第3幕で寓話が語られ、4幕で教訓が語られる。 音楽的にも、そういった形式に対応できる十分な素材があったんだ。全曲がつながっているんだ。 だから、組曲のようなものなんだ」
かつてプログレッシブ・ロックのレコードにはそうした組曲やつながりのある作品が多く存在しました。
「”The Wall” は連続した作品で、”The Lamb” もその多くがリンクしていた。だからそうするのが自然だと思ったんだ。 もし “CDを作るんだ” と考えていたら、違ったものになっていたと思う。 でも、私の頭の中では、4面のレコード盤ということになっていて、そう思えた……よくわからないけど、今回は完璧に自然に思えたんだ」
“Life in the Wires” のストーリーは、主人公のナイオを中心に展開します。ナイオは、A.I.が運営する世界で、意味のない未来に向かう無目的な子供でした。しかし彼は、かつて母親からもらった古いAMラジオで年老いたDJの声を聞き、信号の発信源をたどって “ライブワイヤー” を見つけ、より良い未来がそこにあるかどうかを確かめようと決心します。しかし、”オール・シーイング・アイ” “全てを見通す瞳” はこの独立した思想に感心せず、攻撃を始めます。
やがてナイオは、ライブワイヤーの故郷を突き止め、自由を得ようとしますが国中を追われることになっていきます。
それでももちろん、多くのコンセプト・アルバムがそうであるように、このアルバムを楽しむために音楽の背景にあるストーリーを完全に受け入れる必要はありません。たとえナイオの旅が頭の上を通り過ぎたとしても、このアルバムは約90分、CD2枚組、またはレコードの伝統的な4面にわたる、多様で革新的、そして非常に楽しい曲のコレクションであることに変わりはないのです。

「ELO の “Out of Blue” は名盤だが、それ以上に “Time” のような作品を作りたかった」
Godfrey の ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA に対する愛情はこの作品にもヒシヒシと感じ取れます。彼はまるで Jeff Lynne のように、メロディックなソングライティング、見事なプロダクション、ポピュラーでありながら知的なアプローチを持つレコードを作りあげました。”Life in the Wires” もまた ELO の作品と同様、プログレッシブでありながら何度も聴かないと理解できないレコードではないのです。
「このアルバムはよりプログレッシブな雰囲気とアレンジになっているから、今回はルールを設けないのが賢明だと思ったんだ。 だから私たちは演奏できるし、ちょっとしたソロもできる。それにさまざまなムードや雰囲気をカバーしている。 ソロを弾いたり、楽器的に自分を表現したりする能力を奪ってしまうと、86分間という時間の中で、自分自身に楽しみがなくなってしまう。このジャンルやミュージシャンの楽しみのひとつは、開放的になれることだと思う。 バンドの中でそれを許容するために、ちょっとした光と影を持つことは公平だと思った。 味わい深いものであることを願うよ!」
Godfrey が12曲を書き、さらにあとの2曲は John Mitchell とのセッションから生まれたもの。”Day and Age” では Mitchell がリード・ボーカルを多く取っていましたが、今回はキーボードの巨匠がリード・ボーカルにしっかりと戻り、シンセもより前面に出ています。
「なぜそうしたかというと、このアルバムの大半を私が書いているから。自分ひとりで書いた曲が多いから、歌うことに意味があったんだ。 私がこれを歌って、John に何か歌ってもらおう” というよりはね。 彼は私よりも音域が広いんだ。 例えば、”Day And Age” では、私が実際に歌っていた曲のうち、John が歌うことになったものが何曲かあった。”Skywards” とかね。
私は “Milliontown” の全曲を歌っていたから、こうしてある種の輪が完成したんだ。 マイクの前に戻って歌を歌うグリーン・パスがもらえたと思ったんだ。 いい機会だと思ったよ」

しかし、FROST* は誰ひとり欠けても FROST* にはならないと Godfrey は主張します。
「John は、彼独特の “Johnular” なアティテュードをもたらしてくれる! 彼はユニークなギター・トーン、ユニークなサウンドを持っている。 人々が音楽を色として見るならば、彼の個性はネオンパープルになるんだ! なぜだろう? エキゾチックというか、ちょっとイタリックというか! とにかく、彼には独特の魅力があって、素敵なんだ。 彼がプレーすると、物事に高価な光沢がもたらされる。それが彼の持ち味なんだ。 それに、彼の声はたしかなものだ。 アルバムの最後、”Starting Fires” で彼が歌っているのがわかるだろう。 彼が、”We’re star…” と歌うだけで、”ああ、John だ!”と思うんだ。
Craig Brundell は、明らかに子犬のような熱意を何にでも持ってくる! 彼はずっと、”ハロー、目が覚めたよ”って感じなんだ。 子犬のように走り回るんだ。 これは何?これは何?ってドラム・グルーヴを歌う。彼はバックビートに素晴らしいエネルギーをもたらしてくれるね。
そして Nathan King は、バンドの父親みたいな存在だ! 彼は信じられないほど冷静で、禅の心を持っている。 彼はバンドの中で最も才能のあるミュージシャンで、鍵盤も弾けるし、歌も歌えるし、ベースもギターも弾ける! そして、彼はいつも音楽を覚えている。 だから私たちはいつも、”Nate、これどうやるの?”って言ってるんだ。 彼は私たちを見渡して、みんなを一直線に導いてくれる。
そういう点で、この関係はとても興味深い。 私は基本的に、みんなに指示を出す一番前のうるさいやつなんだ」

たしかに、このアルバムではバンド全員を再び解き放つことで、抑えきれないほどの喜びが表出しています。
「”Day and Age” では、ソロを省いて巧みなアレンジをするということを明確にしていたね。でも今回は、その立場を少し変化させてもいいんじゃないかと思ったんだ」
その素晴らしい例が “Moral & Consequence” でしょう。まさに “足かせ” が外されたのがわかります。ソロにソロを重ねたこの曲は、様々な意味で前作に対するアンチテーゼとなり、それでもとてもキャッチーです。Godfrey のそのポップ・センスは出自によるところも大きいようです。
「私が音楽に目覚めたのは、7歳くらいのときにテレビでブライアン・イーノを見たのがきっかけだった。彼は1970年代の “ドクター・フー” に出てくるエイリアンの悪役みたいな格好をしていて、EMSのVCS3を弾いていた。私の関心はそれだけだった。
それから14年後、私は結局、金持ちで有名なポップ・スターにはなれないということをようやく受け入れ、ロンドンのヴァージン・ラジオでアシスタント・プロデューサーとして働くことになった。そしてそれから2年後、BBCラジオ1にヘッドハンティングされ、オンエアのイメージング・チームに加わることになったんだ」
そしてポップが花開いた80年代はまさに Godfrey の音を形作りました。
「80年代は私の10年だった。私は 1984 年にティーンエイジャーになったからね。シンセサイザーに夢中になっていた。それはキーボード奏者にとって完璧な嵐だったよ。すべてが可能であり、すべてが現実を超えていた。私たちは70年代の終わりイギリスのとても憂鬱な数年間から抜け出して、率直に言って休憩が必要だった」

ELO はもちろん、ABBA や敬愛する Tony Banks の GENESIS, RADIOHEAD に QOTSA まで様々な影響を織り込んだアルバムにおいて、彼らは重さ軽さではなく、推進力と静寂のペース配分で作品にダイナミズムを生み出しました。当然、あの傑作 “Milliontown” の焼き直しをやるつもりはありません。
「私は純粋に、人々が私たちについて良いとか悪いとか言うのを読まない。もし私がレストランを経営していたら、評判をとても気にするだろうけど、レストランを経営している人とは違って、誰かがクソだと言ったからといって、急いでスタジオに戻ってアルバムを書き直したり、リミックスしたりはしない。誰かが良いと言ってくれたとしても、自分の最新作を聴きながら鏡に映る自分を愛おしそうに見つめ、自分に酒を注ぐようなことはしないんだよ」
そうして Godfrey はこの光のプログレッシブ・ロックで世界を良くしていきたいと願います。
「最近、プログの世界でもメタルギターが多く、叫んでいるように見える。皆、何事にも腹を立てているようだ。カメラに向かってにらみを利かせ、”Lung-Ripper IV- The Death Nexus “という曲を歌う。そんな気分になるのはIKEAにいるときだけだ。プログにはもうユーモアはないようだ。私の時代はもう少し上品だった。今でもFrostのフォーラムを覗いてみると、最近の激論はマーマイト (イギリスのペースト) についてだった。トランプについてはどうすることもできないが、マーマイトについては何人かに落ち着くように言うことができる。このように小さなことからだけど、私たちは世界をより良い場所にしたいんだよ」


参考文献: TPA: Frost* – Life In The Wires

PROGARCHY :Jem Godfrey of Frost*: The Progarchy Interview

THE PROG MIND :TEN QUESTIONS WITH JEM GODFREY

FROST 弊誌インタビュー!

日本盤のご購入はこちら。SONY MUSIC

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE CHRONICLES OF THE FATHER ROBIN : THE SONGS & TALES OF AIROEA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDREAS WETTERGREEN OF THE CHRONICLES OF FATHER ROBIN !!

“We Think It’s Sad If Someone Wants To Live And Express Themselves Only Through «New Formulas» And Dogmatic Only Seek To Do Something That No One Has Done Before. Then You Forget History And The Evolution Of Things, Which In Our Opinion Is At The Core Of Human Existence.”

DISC REVIEW “THE SONGS & TALES OF AIROEA – BOOK Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ

「最初は若いワインのように最初は有望で実り豊かなバンドだったけど、やがて複雑さを増し、私たち集団の心の奥底にある濁った深みで数年間熟成され、エレジオンの森のオーク樽で熟成されたとき、ついにそのポテンシャルを完全に発揮することになったのさ」
アルバムの制作に長い時間をかけるバンドは少なくありませんが、それでも30年を超える月日を作品に費やすアーティストはほとんど前代未聞でしょう。ノルウェー・プログの粋を集めた THE CHRONICLES OF FATHER ROBIN は、ロビン神父の数奇なる物語に自分たちの人生や経験を重ね合わせ、四半世紀以上かけてついに壮大な3部作を完成させました。
「90年代に親が着ていた70年代の古着に身を包み、髪を伸ばし、1967年から1977年の音楽ばかりを聴いていたんだ。当時のポップ・ミュージックやポップ・カルチャー・シーンにはとても否定的で、RUSH や YES, そして DOORS の音楽は、例えば RED HOT CHILLI PEPPERS や RAGE AGAINST THE MACHINE, NEW KIDS ON THE BLOCK など他のバンドが聴いている音楽よりもずっと聴き応えがあると、パーティーで長い間議論していたほどでね。私たちは、自分たちが他人よりより高い位置にいると確信し、できるだけ多くの “失われた魂” を救おうとしていたんだ。だけどそれからしばらくして、私たちは他人がどう思うかとか、彼らが何に夢中になっているかということに疲れ、ただ自分たちの興味と、ミュージシャンとして、バンドとしての成長にエネルギーを集中させていくことにした」
70年代が終焉を告げて以来、プログレッシブ・ロックはつねに大衆から切り離された場所にありました。だからこそ、プログの世界に立ち入りし者たちはある種の特権意識に目覚め、あまつさえ大衆の啓蒙を望む者まで存在します。90年代のカルチャーに馴染めなかった TCOFR のメンバーたちも当初はカウンター・カルチャーとしてのプログに惹かれていましたが、しかしワインのように熟成され、長い年月を重ねるにつれて、ただ自分たちが夢中になれる音楽を創造する “道” へと進んでいきました。
3部作のコンセプト最初の芽は、民話、神話、幻想文学、サイケデリア、冒険的な音楽に共通の興味を持つ10代の仲間から生まれ、最新の発見を紹介し合ううち、徐々にノルウェーの仲間たちは独自の糸を紡ぎ、パッチワークやレンガのように新たな色彩や経験を積み重ねるようになりました。それは30年もの長きにわたる壮大なブレイン・ストーミング。
「確かに、私たちはプログ・ロックの穴を深く這いずり回ってきたけど、クラシック・ロック、フォーク・ロック、サイケ、ジャズ、クラシック音楽、エスニック、ボサノヴァ、アンビエント・エレクトロニック・ミュージックなどを聴くのをやめたことはない。たとえ自分たちが地球上で最後の人間になったとしても、こうした音楽を演奏するだろう。私たちは、お金や “大衆” からの評価のために音楽をやったことはない。もちろん、レコードをリリースして夢を実現できるだけのお金を稼ぎたいとは思っているけど、どんなジャンルに属するものであれ、音楽を通じて自分たちの考えや感情を顕在化させることが最も重要であり、これからもそうあり続けるだろう。そしてそれこそが、極めてプログレッシブなことだと私たちは考えているんだ」
WOBBLER, WHITE WILLOW, Tusmørke, Jordsjø, IN LINGUA MORTUA, SAMUEL JACKSON 5など、ノルウェーの実験的でプログレッシブなバンドのアーティストが一堂に会した TCOFR は、しかしプログレッシブ・ロックの真髄をその複雑さや華麗なファンタジーではなく、個性や感情を顕在化させることだと言い切ります。
とはいえ、プログの歴史が積み重ねたステレオタイプやクリシェを否定しているわけではありません。学問もアートもすべては積み重ねから生まれるもの。彼らは先人たちが残したプログの書を読み漁り、学び、身につけてそこからさらに自分たちの “クロニクル” を書き加えようとしているのです。
表現力豊かな和声のカデンツ、絶え間なく変化するキーボードの華やかさ、ジャンキーなテンポ、蛇行するギター・セクションの間で、TCOFR の音楽は常に注意力を翻弄し、ドーパミンの過剰分泌を促します。ここにある TCOFR の狂気はまちがいなく、ノルウェーにおける温故知新のプログ・ルネサンスの成果であり、大衆やトレンドから遠すぎる場所にあるがゆえに、大衆やトレンドを巻き込むことを期待させるアートの要塞であり蔵から発掘された奇跡の古酒なのです。
今回弊誌では、WOBBLER でも活躍する Andreas Wettergreen にインタビューを行うことができました。「芸術の発展は、決して1969年の “In The Court of the Crimson King” やバッハのミサ曲ロ短調から始まったわけではない。芸術と芸術を通した人間の表現力は非常に長い間続いており、それは何世紀にもわたって展開し続けている。イタリアの作曲家カルロス・ゲスアルドは、16世紀に複雑で半音階的な難解な合唱作品を作ったが、一方で今日作られるもっとシンプルな合唱作品も美しく興味深いものである。両者は共存し、決して競い合うものではない。
心に響くなら、それはとても良いスタートだ。それが知性も捉えるものであれば、なおさらだ。音楽と芸術はシステムの問題ではなく、感情と気持ちの問題なんだよ。最も重要なことは、良い音楽に限界はないということだ」 ANEKDOTEN, ANGLAGARD に追いつけ、追い越せ。どうぞ!!

THE CHRONICLES OF FATHER ROBIN “THE SONGS AND TALES OF AIROEA” : 10/10

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COVER STORY + INTERVIEW 【WANG WEN : INVISIBLE CITY】 三国演義 JAPAN TOUR 24


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH XIE YUGANG OF WANG WEN !!

“能和Mono还有Jambinai一起演出太令人兴奋了。Mono是我们一直尊敬和热爱的乐队,过去的二十多年,他们一刻都没有停歇,一直在书写新的音乐,并把这些音乐带到了世界上的各个角落,他们绝对是我们的榜样。听Jambinai很多年了,他们的音乐绝对是独一无二的,硬核的节奏和幽怨的民族乐器奏出的旋律完美的融合在一起”

DISC REVIEW “INVISIBLE CITY”

「音楽の大きな役割はまさに、政治や文化の壁を越えることにあると思っている。音楽は国境を超えた言語であり、異なる国や民族の人々が音楽を通じて、言葉や文字以上の感情や情報を感じ取ることができるのだから。それはまるで、より高次元のコミュニケーションのようだよね。僕らは、音楽によって生まれる心と心のつながりを壊すことができるものは何もないと信じているんだよ」
日本、中国、韓国。東アジアの国々にはそれぞれに長い歴史があり、複雑に絡み合う愛憎劇を悠久の時を超え演じてきました。憎しみもあれば愛もある。互いの関係を一言で言い表すことは難しく、特に政治の上で東アジアの国々は決して蜜月を謳歌しているとはいえないでしょう。
ただし、いつまでも歪み合い、反目し合うことが東アジアに住む人々の幸せにつながるでしょうか?いつかはこれまでの恩讐を越え、より良い未来を作っていくべきではないでしょうか?中国の独創的なポスト・ロック WANG WEN は、そうやって国境や文化を超えた心と心のつながりを作るために、音楽以上の美しい言語はないと信じています。
「MONO や JAMBINAI と一緒に演奏できるので、とても興奮しているよ。MONO は僕たちが常に尊敬し愛してきたバンドで、彼らは過去20年以上、一瞬たりとも立ち止まることなく、新しい音楽を作り続け、それを世界中に届けてきたんだよ。彼らは僕たちの模範だよ。JAMBINAI の音楽は何年も聴いてきたけど、その音楽は絶対に唯一無二だね。ハードコアなリズムと哀愁漂う民族楽器の旋律が完璧に融合しているよ」
7月に日本で行われる “三国演義 Romance of the Three Kingdoms” は、まさにその第一歩を踏み出す素晴らしき会合で邂逅。MONO, WANG WEN, JAMBINAI。日中韓の伝奇を超えたポスト・ロックのラブロマンスは、きっと凝り固まった人々の心まで溶かす新たな三国志の幕開けでしょう。
「MONO は最も説得力がある例だと思うよ。前述したように、彼らは絶え間ない音楽の創作と疲れを知らない公演で多くの場所に行っているんだ。これらはすべて、僕たちが学び、努力するべき面だと思っているね。実際のところ、どんなスタイルのラベルも重要ではなく、自分自身の声と表現方法を見つけることこそが重要なんだよ」
重要なのは、三者がそれぞれリスペクトという絆で強くつながっていること。三者ともにポスト・ロックというラベルを超えて、自らの声、表現方法を見つけていること。そうそして、WANG WEN がその声を完全に確立したアルバムは、”Invisible City” なのかもしれません。
あの SIGUR ROS がレコーディング・スタジオに改造したレイキャビクのプール。雪の降り積もるアイスランドで録音を行った彼らの心にあったのは、生まれ故郷の大連でした。ホルン、チェロ、ヴァイオリンを加えた美のオーケストラ、不気味な子守唄、ざわめくアンビエント・ノイズの風は、優しさと哀愁、静かで明るい大連という都市の有り様を見事に伝えています。多くの若者が去り、街が沈んで老いていく。そんな中でも、この地に残る人々の希望を描く “不可視の都市” には、きっと反目とヘイトが飛び交う東アジアにおいても優しい未来を育む寛容な人たちと同じ理念、同じ音の葉が貫かれているはずです。
とはいえ、そうした哲学的な話を脇においても、WANG WEN の音楽は MONO や JAMBINAI 同様に世界中で認められた、雨と悲しみと少しの希望の物語。SIGUR ROS, PG. LOST, WE LOST THE SEA, そして PINK FLOYD が紡ぐエモーションと絵画のような創造性、複雑な音楽構造を共存させる稀有なる存在。そうしてきっと新たな三国志は、2000年の時を超えて人々の心を溶かし、ほんの少しだけ近づけてくれるはずです。
今回弊誌では Xie Yugang にインタビューを行うことができました。「ここ最近の数年間、中国ではポスト・ロックを聴く若者やバンドが増えてきているんだ。一方で、メタルは20年前と比べて大きく減少しているね。しかし、ポスト・ロックであれメタルであれ、主流のポップ・ミュージックに比べると、中国ではまだ非常にマイナーな音楽だといえる」  弊誌 MONO インタビュー。  弊誌 JAMBINAI インタビュー。どうぞ!!

WANG WEN “INVISIBLE CITY” : 10/10

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