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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【百合花 (LILIUM) : 萬事美妙】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH 百合花 (LILIUM) !!

“If composing music is like cooking, I’m probably a chef who loves using local ingredients. Taiwan has such a rich musical heritage to explore”

DISC REVIEW “萬事美妙”

「作曲が料理のようなものだとしたら、僕は地元の食材を使うのが大好きなシェフなのかもしれない。 台湾には探求すべき豊かな音楽遺産が多くあり、僕は大学でも民俗学を学んできた。 学べば学ぶほどその魅力に取りつかれ、だから僕は常にそうした要素を自分の作品に織り込んでいるんだ」
台湾へ旅したことのある人なら、彼の地の料理、その本場の躍動感に圧倒された経験があるはずです。その地で育ち、その地の歴史や空気を吸って生み出された文化の蓄積は、あまりにも尊く、そして魅力的です。
近年、そうした唯一無二の審美や精神性を自らのアートに取り入れるメタルやプログレッシブの綺羅星が登場し、シーンを牽引していますが、台湾の百合花もそうしたバンドのひとつ。そして彼らが料理した音楽は、西欧というポップスやロックの出発点を置き去りにするほど、理想的な東洋の神秘だといえるでしょう。
「僕は音楽を聴くたびに、その要素を分解し、ジャンルの起源をたどることに惹かれる。 音楽は人間が作り出したものだから、文章と同じように分析することができるんだよ。その土地の語彙や借用語、さらには発音を間違えて生まれた新しい用語みたいなものを、音楽の中に発見できる。だから将来、百合花の音楽を聴いた人々が、その中に埋め込まれた北管や南管の要素を発見してくれることを願っているよ」
音楽を文章に例えるとしたら、百合花が記す言葉は豊かなクレオールなのかもしれませんね。プログレッシブやメタル、オルタナティブ・ロックはもちろん、ボサノバ、レゲトン、ディスコ・ファンク、そして演歌にいたるまで、西洋も東洋もなく、あまりにも多様な音の葉を飲み込んだ彼らの音楽は、しかしいかなる時も “台湾的” なバイブスに貫かれています。
台湾に根付いた伝統音楽、北管・南管に加えて、銅鑼、リコーダー、葬儀の音楽。そして、多くの台湾人がマンダリン、北京語の台湾方言を使用する中で、台湾伝統の Hokkien (福建語) で紡がれる百合花の音楽には確実に台湾固有のスピリットが宿っています。だからこそ、百合花の音楽は、色彩豊かでに驚きに満ちた万華鏡の中に、確固とした独自のビジョンを投影できるのです。
「音楽は、人々に過去に起こったことを思い出させ、同じ過ちを繰り返さないようにすることができる。 例えば、僕たちの曲のひとつである “もし私が女だったら”(假使我是一個女人)は、政治的犠牲者である蔡奇遠さんの獄中告白をもとに生み出した。 脱獄中、彼は女装して美容院に行き、髪をセットしてもらっていたんだ」
戦争の足音がゆっくりと、しかし確実に忍び寄る東アジアにおいて、最新作 “萬事美妙” で彼らは各曲で複数の主人公の物語が探求することに決めました。祝福を授ける神様から、無力感に苛まれる外国人の叫び、道端の占い師の問いかけ、大道芸人の送別パフォーマンス、そして政治犯の嘆きまで、バンドの楽曲は台湾音楽に台湾音楽ならではの想像力豊かで、思考を要する視点をもたらしました。
そう、音楽は世界を変えることはできなくとも、その身に宿った旋律やリズム、そしてリリックで心を動かすストーリーを伝えることならできるのです。過去や寓話、物語から学ぶのもまた、おそらくアートを嗜む私たちの義務なのですから。そうすればきっと、”すべてが素晴らしくなる” はずです。
今回弊誌では、ボーカル/ギターの林奕碩 (リン・ イースォ) とベーシスト林威佐 (リン・ウェーズォ) にインタビューを行うことができました。「台湾の文化は日本文化の影響を強く受けている。 僕たちが若い頃は、年長者が日本の演歌を歌っているのをよく耳にしたものだよ。 そして、台湾の歌の多くも演歌の影響を受けているんだ。 僕たちの歌 “藝術家” も演歌の影響を使っているんだ。台湾の年長者の様子を表現するためにね。 あと、”猿捕り唄”(掠猴之歌)のアレンジは、任天堂の “マリオブラザーズ” のサウンドトラックの影響を受けているよ」 どうぞ!!

百合花 “萬事美妙” : 10/10

INTERVIEW WITH 百合花

Q1: Our magazine focuses on heavy metal and progressive music, but in recent years, more and more such bands are valuing their own culture, language, and roots. I assume you are one of them. Why do you make music that values Taiwanese culture, music, and language?

【SHUO】: If composing music is like cooking, I’m probably a chef who loves using local ingredients. Taiwan has such a rich musical heritage to explore; I’ve studied both in university and through folk traditions. The more I learn, the more fascinated I become, and I constantly weave these elements into my own work.
Before I discovered traditional music, Progressive Rock was my go-to―I love the structures used by bands like Yes, Kansas, and Queen’s ‘Bohemian Rhapsody.’ So, when I try to fuse tradition with rock, my ideas naturally lean toward that Prog Rock vibe. I’m also a big fan of the ‘manic’ and unpredictable arrangements you hear in bands like System of a Down.

Q1: 本誌はヘヴィ・メタルやプログレッシブ・ミュージックを中心に扱っていますが、近年、そうしたバンドが自国の文化や言語、ルーツを大切にするようになってきているように感じます。
百合花もまた、そんなバンドのひとつだと思いますが、あなたはなぜ台湾の文化、音楽、言語を大切にした音楽を作るのですか?

【SHUO】: 作曲が料理のようなものだとしたら、僕は地元の食材を使うのが大好きなシェフなのかもしれない。 台湾には探求すべき豊かな音楽遺産が多くあり、僕は大学でも民俗学を学んできた。 学べば学ぶほどその魅力に取りつかれ、だから僕は常にそうした要素を自分の作品に織り込んでいるんだ。
伝統音楽に出会う前は、プログレッシブ・ロックが僕のお気に入りだった。YES
や KANSAS、それから QUEEN の “ボヘミアン・ラプソディ” のような構造が大好きなんだ。 だから、伝統とロックを融合させようとすると、僕のアイデアは自然とプログレッシブな雰囲気に傾くんだ。 また、SYSTEM OF A DOWN のようなバンドで聴くことができる、”マニアック” で予測不可能なアレンジメントの大ファンでもあるよ。

Q2: Your use of the Taiwanese language is another important factor for 百合花! What is the significance of sticking to Taiwanese when most people use Mandarin?

【SHUO】: While Mandarin has developed its own unique local flavors and accents in Taiwan over the last 70 years, my heart belongs to the older traditions. Growing up in a family where Taiwanese Hokkien (Taigi) was the primary language, I was surrounded by a way of speaking that felt incredibly alive―full of raw emotion, humor, and everyday energy.
As a singer, you have to truly believe in the words coming out of your mouth to be convincing. For me, everything just clicks when I sing in Taiwanese. It feels authentic and ‘right’ in a way that other languages just can’t match.

Q2: 台湾語を使うことも百合花にとって重要な要素ですね! 台湾でも多くの人が北京語ベースの言葉を使う中、台湾語にこだわる意義はなんですか?

【SHUO】: この70年の間に、台湾では標準語が独自の風味とアクセントを持つようになった。だけど、僕の心は古い伝統に根ざしている。 台湾の福建語(タイギ)を母国語とする家庭で育った僕は、生の感情、ユーモア、日常のエネルギーに満ちた、信じられないほど生き生きとした話し方に囲まれていたんだ。
歌手として説得力を持たせるには、自分の口から出る言葉を心から信じなければならない。僕の場合、台湾語で歌うとすべてがピタリとはまる。 他の言語にはない、本物の “正しい” 感じがするからね。

Q3: In the East, pop and rock music is more or less influenced by Western music, theory, and culture, as is the case in Japan, but you have to find a way to deal with it, would you agree?

【WEI】: I agree. But I think the crucial part is finding your own way to express yourself. After all, everyone is influenced by different cultures, so it is difficult to sort them by using labels like East or West. I think Japanese music does a great job. You can hear the influence of Western Music, but also did some iconic breakthroughs in timbre and style.

Q3: 東洋では、ポップスやロックが多かれ少なかれ西洋の音楽、理論、文化の影響を受けていて、それは日本も同じです。あなたたちは、その葛藤に対処する方法を見つけたようですね?

【WEI】: そうだね。 でも肝心なのは、自分なりの表現方法を見つけることだと思う。 結局のところ、誰もが異なる文化の影響を受けているわけだから、東洋とか西洋とかいうレッテルで分類するのは難しい。 日本の音楽は素晴らしい仕事をしていると思う。 西洋音楽の影響も感じられるけど、音色やスタイルにおいて象徴的なブレークスルーもあるからね。

Q4: I feel that 北管・南管 are in a way one of the major roots of Taiwan and 百合花. By incorporating this into your rock, do you also intend to introduce it to the younger generation and the world without letting it fade away?

【SHUO】: Whenever I listen to music, I’m drawn to deconstructing its elements and tracing the origins of its genres. Since music is a human creation, it can be analyzed much like a sentence: you find local vocabulary, loanwords, and even new terms born from mispronunciations.
My hope is that when people in the future hear Lilium’s music, they’ll discover the Beiguan and Nanguan elements embedded within―almost like clicking a link on a website that leads you to a whole new world of discovery.

Q4: 北管・南管もある意味、台湾や百合花の大きなルーツのひとつだと感じています。 そうした伝統音楽をロックに取り入れることで、若い世代や世界にも風化させることなく紹介していきたいのですか?

【SHUO】: 僕は音楽を聴くたびに、その要素を分解し、ジャンルの起源をたどることに惹かれる。 音楽は人間が作り出したものだから、文章と同じように分析することができるんだよ。その土地の語彙や借用語、さらには発音を間違えて生まれた新しい用語みたいなものを、音楽の中に発見できる。
だから将来、百合花の音楽を聴いた人々が、その中に埋め込まれた北管や南管の要素を発見してくれることを願っているよ。ウェブサイト上のリンクをクリックすると、まったく新しい発見があるようにね。

Q5: Taiwanese culture is not only influenced by the West, but also by Japanese culture, right?What is the connection between your music and Japanese music and other cultures, such as anime and video games?

【WEI】: Taiwanese culture is very influenced by Japanese culture. When we were young,we often heard the elders sing Japanese enka. Many Taiwanese songs are also influenced by enka. Our song ‘Artist’(藝術家) uses this type of music to describe the state of elders. The arrangement of ‘The Monkey Catching Song’(掠猴之歌) is also influenced by the soundtrack of Nintendo’s “Mario Brothers”.

Q5: 台湾の文化は西洋だけでなく、日本の文化からも影響を受けていますよね。あなたの音楽と日本の音楽、そしてアニメやビデオゲームなど他の日本文化との関係はどういったものですか?

【WEI】: 台湾の文化は日本文化の影響を強く受けている。 僕たちが若い頃は、年長者が日本の演歌を歌っているのをよく耳にしたものだよ。 そして、台湾の歌の多くも演歌の影響を受けているんだ。
僕たちの歌 “藝術家” も演歌の影響を使っているんだ。台湾の年長者の様子を表現するためにね。 あと、”猿捕り唄”(掠猴之歌)のアレンジは、任天堂の “マリオブラザーズ” のサウンドトラックの影響を受けているよ。

Q6: I was very impressed by the song about a Taiwanese funeral. Does 萬事美妙 also have songs that deal with Taiwanese culture and traditions?

【SHUO】: The second recorder interlude in the song ‘Strange Smell’ (怪味)is an adaptation of the melody from ‘Sui Di Yu’ (Fish Beneath the Water), a traditional Beiguan piece.
https://www.youtube.com/watch?v=Utg5mbjlznQ.

Q6: 台湾のお葬式を歌った曲はとても印象的でした。”萬事美妙” にも、そうした台湾の文化や伝統を扱った曲があるのですか?

【SHUO】: 2つ目のリコーダー間奏曲 “Strange Smell” (怪味)は、北管の伝統曲 “Sui Di Yu”(水底の魚)のメロディーをアレンジしたものだよ。
https://www.youtube.com/watch?v=Utg5mbjlznQ

Q7: East Asia has been hearing the footsteps of war in recent years… Taiwan in particular has some difficult political, diplomatic issues, how are you dealing with those political and social issues?

【SHUO】: While staying informed about global politics is a civic duty, my heart lies in my craft. To me, creating art is the act of accumulating culture; there is nothing more vital than laboring for one’s own roots. In this interconnected world, it’s a pity to see global tastes converging so heavily toward the style of major cultural exporters.

Q7: 東アジアでは近年、戦争の足音が近づいているように思えます。 特に台湾は政治的、外交的に難しい問題を抱えていますが、そうした問題にあなたは個人的にどう対処していますか?

【SHUO】: 世界の政治について情報を得ることは市民の義務だけど、僕の心は芸術、創造にある。 僕にとって、芸術を創造することは文化を蓄積する行為なんだよ。自らのルーツのために、自らの文化を蓄積するために労働することほど重要なことはない。
この相互接続された世界において、世界の嗜好が主要な文化輸出国のスタイルに大きく収束していくのを見るのは残念なことだけどね。

Q8: With Covid, war, and division, the world has been getting darker and darker since the beginning of the 20s. In such a world, what can music do?

【WEI】: Music can remind people of what happened in the past through singing, and prevent them from repeating the same mistakes. For example, one of our songs, “If I Were a Woman,”(假使我是一個女人) is based on the prison confession of Mr. Tsai Chi-Yuan, a political victim. During his escape, he dressed up as a woman and went to a beauty salon to get his hair done. The song describes how Tsai Chi-Yuan suffered after escaping dressed as a woman and began to doubt his desire to dress up.

Q8: パンデミック、戦争、分断と、20年代に入ってから世界はどんどん暗い場所となっています。 そんな世界で、音楽には何ができるのでしょう?

【WEI】: 音楽は、人々に過去に起こったことを思い出させ、同じ過ちを繰り返さないようにすることができる。
例えば、僕たちの曲のひとつである “もし私が女だったら”(假使我是一個女人)は、政治的犠牲者である蔡奇遠さんの獄中告白をもとに生み出した。 脱獄中、彼は女装して美容院に行き、髪をセットしてもらっていた。 この歌は、女装して脱獄した後、蔡氏がどのように苦しみ、自分の女装願望を疑うようになったかを描いているんだ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED LILIUM’S LIFE!!

Red Hot Chili Peppers “By the Way”

伍佰&China Blue “樹枝孤鳥”

Yes “Fragile”

Michael Jackson “Off the Wall”

Tenacious D “Tribute”

MESSAGE FOR JAPAN

SHUO: I truly admire the Japanese music scene―there’s an audience for every kind of unique sound. I really hope Japanese listeners will enjoy our music too! Can’t wait to see you all soon!

僕は心底、日本の音楽シーンを崇拝している。日本の音楽シーンには、どんなユニークなサウンドにも耳を傾けてくれるオーディエンスがいるからね。 だから、日本のリスナーにも僕らの音楽を楽しんでもらいたいね! 早くみんなに会いたいよ!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MORON POLICE : PACHINKO】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SONDRE SKOLLEVOLL OF MORON POLICE !!

“Especially the JRPGs, went on to influence millions of kids, who then, because of the music in these games, had a natural inclination towards progressive rock/metal (and classical too, to an extent). It was basically prog rock/metal, just on a Super Nintendo/Playstation!”

DISC REVIEW “PACHINKO”

「世界は年を追うごとに暗くなっているように思えるね。 インターネットが普及し、ソーシャルメディアが発達したことで、僕たちはあらゆるものを見聞きし、何らかの形でそうしたノイズに関わらざるを得なくなったからだ。 これはとても、とても憂鬱なことだよね。そんな世界でノルウェーの小さなバンドが世界中に広がり、こんなにも遠い日本という岸辺に居場所を見つけることができるなんて、不思議なことだ。でも、これってインターネットってこうして僕たちを引き合わせるものであって、引き離すものではないということを示す素晴らしい例だと思う!」
今や世界は、インターネットとSNSに支配されています。分断や差別を煽るだけの無責任かつ野放図なアルゴリズムは、ただただ悪意と対立を感染させる狂気のウィルスとして日々世界中にばら撒かれています。現代を生きる私たちに、そこから逃れるすべはありません。インターネットなしで生きることのできない私たちには、そうしたノイズを完全に遮断することなど不可能なのです。
しかし、インターネットやSNSは本来、人と人、好きと好きをつなげるポジティブなツールであるべきでしょう。ノルウェーの美しき海辺の街、ベルゲンから世界に旅立った MORON POLICE は、彼らの音楽が遠き日本の岸辺へと届き、この国で人気を博すこととなった現代の “メッセージ・イン・ザ・ボトル” こそがインターネットのあるべき姿だと胸を張ります。
「これは近未来の東京で、ある男が悪魔によってパチンコ台にされてしまうというコンセプト・アルバムなんだ。ストーリーが日本を舞台にしているからというのが一番の理由なんだけどね! それに、僕は日本に興味があるからね! 祖父母と叔父が80年代に確か3年間日本に住んでいて、日本から輸出されるさまざまな文化を見て育ったから、日本の文化や歴史、さまざまな自然に興味があるんだ。それから、アイヌの人々にはとても興味があって、いつか北海道を訪れてみたいと思っているんだ。”Hanabi” については、北野武監督の同名の映画にちなんだ楽曲なんだ」
だからこそ、MORON POLICE の心臓、Sondre Skollevoll は最新作の舞台に日本と “パチンコ” を選びました。実際、このミュージカルのようにカラフルな、そしてジェットコースターのように目まぐるしい風変わりなアルバムに “パチンコ” というタイトルは完璧にフィットしています。現実世界から逃避できる、光のような高揚感も音楽的な射倖心を煽ります。ただし、パチンコに闇があるように、この作品にも暗がりは存在していました。それは、Sondre の親友で長年の相棒でもあったドラマー、Thore Omland Pettersen の死去でした。
「”Pachinko” は彼が亡くなる前にすでに書かれていて、彼はアルバムの曲を知っていた。だから僕たちは、彼のためにもアルバムを完成させたかったんだ。僕が唯一得意なのは音楽を作ることだけど、彼がいなければ同じようにはいかないね。 正直、彼が亡くなってからあまり音楽を作っていないんだけど、それでも今でも演奏するのは楽しいよ。これから僕らの音楽はもっと増えるだろう。それが彼の遺産を称えることであり、2008年に僕たちが始めたことを称えることだと考えているよ。 彼の死を理由に MORON POLICE を終わらせてしまったら、彼は本当に本当に怒ると思うからね」
2022年に不慮の交通事故で亡くなってしまった親友にしてバンドの盟友。Sondre は真剣に、MORON POLICE の終焉を考えました。しかし、それは決して亡き Thore の望みではないと思い直します。そして、Thore も携わっていた “Pachinko” は思わぬ形で完成を見ました。亡き Thore が心酔していた THE DILLINGER ESCAPE PLAN、Billy Rymer の参加です。そうして、ポップとプログ、そしてゲーム音楽のクロスオーバーとして名を上げた MORON POLICE の音楽は、そこにハードコアと混沌を取り入れることでさらなる進化を遂げました。高揚感と遊び心、繊細と優雅の狭間にパンチの効いたアクセントを取り入れたアルバムは、まさに前人未聴。誰も聴いたことのないオープンワールド・ミュージックの傑作として、紆余曲折の末、遂にリスナーの元に届きます。
今回弊誌では、Sondre Skollevoll にインタビューを行うことができました。「JRPGの多くは、何百万人もの子供たちに影響を与え、影響を受けた子供たちは、これらのゲームに登場する音楽のおかげで、プログレッシブ・ロック/メタル(そしてある程度はクラシックも)に自然と傾倒するようになった。 だから、あの頃のゲーム音楽はスーパーファミコン/プレイステーションに乗っているだけで、基本的にプログ/メタルだったんだ!”」 二度目の登場。どうぞ!!

MORON POLICE “PACHINKO” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CYBER BAND : THROUGH THE PASSAGES OF TIME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDREW PATUASIC OF CYBER BAND !!

“My Dad Advised Us To Learn Tom Sawyer And YYZ by Rush If We Wanted To Win. And Through Learning Both Of The Songs Made Us Love Prog Rock And Opened Our Eyes To a New World Of Music.”

DISC REVIEW “THROUGH THE PASSAGES OF TIME”

「僕たちがまだ初心者だった頃、アマチュアのバンド・バトルに参加しては負け続けていたんだよ。父は、コンテストに勝ちたければ RUSH の “Tom Sawyer” と “YYZ” を覚えろとアドバイスしてくれた。この2曲を覚えたことで、僕たちはプログが大好きになり、新しい音楽の世界に目を向けるようになったんだ」
DREAM THEATER や GOJIRA のグラミー獲得。Steven Wilson の全英チャート1位。もしかすると、インスタントな文化、音楽に対する反動として、プログレッシブ・ミュージックの復権、その狼煙があがったように見える昨今。とはいえ、結局そうした怪気炎も音楽に対価を支払い、アルバム単位で鑑賞する過去の風習が染み付いた40代以上の踏ん張りに支えられているようにも思えます。
実際、シーンを牽引し、ムーブメントを起こすのは若い力。そうした意味で、20代前半からなるフィリピンの至宝 CYBER BAND が注目を集め始めていることに、プログの民はどれほど勇気づけられることでしょう。彼らの “情熱” は、勝利と喜びの味を教えてくれた RUSH とプログに対する恩返し。だからこそ、信頼できるのです。しかも彼らが現れたのはプログ未開の地、フィリピン。メタル同様、第三世界から登場する才能の芽は、シーンの未来を明るく照らします。
「僕らはプログの神様、EMERSON LAKE & PALMER, RUSH, YES, KING CRIMSON, GENESIS から影響を受けている。”Through The Passages of Time” は、壮大なプログ・ロック・ソングへの愛から生まれたもので、自分たちで作ろうと決め、自分たちの限界に挑戦したんだ。テクノロジーの台頭によって、より多くのミュージシャンが革新的で新しいものを生み出すようになると思う。プログの神々が当時そうであったように、もっと多くのアーティストが自分たちの限界に挑戦するようになれば、21世紀のプログレッシブ・ロック・ミュージックはもっと新しい音楽的次元へと進化していくだろうな」
事実、23分のオープナー “Through the Passages of Time” は、音楽の喜びを教えてくれたプログの神々に対する愛情にあふれています。さながら目前でライブを見ているかのような生々しいプロダクションはまさに70年代の偉大なプログやクラウトロックを彷彿とさせます。当時、レコーディングは生のまま、ある意味不完全なものが多くありましたが、だからこそバンドの演奏の楽しさとアイデアの豊かさが際立った側面はあるはずです。このアルバムのサウンドも同じで、パワフルでありながら扇情的で、レトロでありながらモダン。彼らのスピリットを余すことなく伝えていきます。
レトロとモダンの鍔迫り合いは音楽やアイデアにも飛び火します。CYBER BANDは、ドラム、ギター、ベース、ボーカルというクラシックなラインナップを基本としながらも、ストリングス、ピアノ、管楽器、エレクトロニック・エレメントがサウンドを豊かにし、多彩な音のビッグバンを作り出すことでプログ宇宙を拡張していきます。ジャズからクラシックまで、あの頃の巨人と同様に音楽の冒険を楽しみながら、シームレスに調和を取りながら、自らの歩みを進めるのです。
“Epitaph” や “Red Barchetta” を想わせる名演が繰り広げられるアルバムの中で、CYBER BAND をさらに特別な存在へと押し上げるのが、インタビューイ Andrew Patuasic の素晴らしい歌声でしょう。Wetton, Lake, Mercury といった伝説が帰還したかのようにエモーショナルで心を揺さぶる伸びやかな Andrew の歌唱はロックの本質、感情の昂りをリスナーに思い起こさせてくれます。それにしても、Arnel Pineda といい、フィリピンの人は本当に歌心がありますね。
今回弊誌では、Andrew Patuasic にインタビューを行うことができました。「アニメが大好きなんだ!”坂道のアポロン” というアニメが大好きで、日本がいろいろな音楽にオープンであることも大好きなんだ。”賭ケグルイ”のサウンドトラックを聴いて衝撃を受け、日本がいかにあらゆる音楽を愛しているかということを思い知らされたよ」 鍵盤とベースを同時に操る眼鏡クィッの彼も秀逸。どうぞ!!

CYBER BAND “THROUGH THE PASSAGES OF TIME” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PROFESSOR CAFFEINE & THE INSECURITIES : S.T.】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PROFESSOR CAFFEINE & THE INSECURITIES !!

“Everyone Forgets That Yamcha And Tien Are The Unsung OG Heroes Of Dragon Ball, By The Time You Get Around To Dragon Ball Z Everybody Is So Overpowered You Lose That.”

DISC REVIEW “PROFESSOR CAFFEINE & THE INSECURITIES”

「Thank You Scientist はあまり聴いたことがなかったんだ。2019年に彼らのオープニングを飾ったし、本当に素晴らしい人たちだったからあまり言いたくないけど、彼らにハマったのは僕らがすでに地位を確立したずっと後だったんだ。その時点で、僕たちの2枚目のリリース “The Video Game EP” は少なくとも1年前にリリースされていたからね。でも今聴くと、確かに似ているところがあるね」
2011年、ニュージャージー州モントクレア。Thank You Scientist は “The Perils of Time Travel” でジャジー&サックスを前面に押し出した複雑性と、エモーショナルで人を惹きつけるパワーポップのメロディが同居した革命的で魅力的なデビューEPをリリースしました。彼らはキャリアの道のりでますますジャズ・フュージョンの影響に傾き、ますます複雑なインストゥルメンタルと、メロディアスでありながらより複雑なソングライティングを聴かせてくれています。しかし、もしTYSが複雑なジャズよりも、音楽性をキャッチーでエモいコーラスをシームレスに折り込むという天性の才能に集中していたとしたら?ニューイングランドを拠点とするプログ/ポップ/マス/エモ・アンサンブル、Professor Caffeine & the Insecurities のセルフタイトルはまさにその “IF” を実現します。
「SEVENDUST, ALTER BRIDGE, ANIMALS AS LEADERS といったバンドに出会ったとき、彼らは僕にもっと音楽を追求するよう背中を押してくれたんだ。CALIGULA’S HORSE からビリー・アイリッシュへ、CARBOMB から BOYGENINUS へ、といった具合だ」
印象的なフックや曲作りと、興味深く進歩的な音楽的アイデアのバランスを取る最高で最初のバンドが RUSH だとしたら、Professor Caffeine はこの指標で非常に高いスコアを獲得するはずです。それはきっと、彼らを “プログ” の世界に誘った偉人たち、CALIGULA’S HORSE や ANIMALS AS LEADERS が常に複雑性とメロディの美しさを両立させていたから。
リスナーは、どうしようもなくキャッチーで甘ったるくなりそうなコーラス、”Wolf Fang Fist!” や “Astronaut” を口ずさむ一方で、ほぼすべての曲にまるでクッキーの中のチョコレート・チップのように、トリッキーで小さなアルペジオが隙間なくちりばめられていることに気づくはずです。
“The Spinz” に組み込まれた狂ったようなピアノ・ランや、陽気なサウンド “Dope Shades” のバックボーンを形成する驚くほど複雑なジャズ・ハーモニーのように、時には繊細なものもあれば、”That’s a Chunky” でのクランチーなリフとシンセの爆発的なバーストや、”Make Like a Tree (And Leave)” のコーラスに充満する不条理なほどヌケの良いギター・リードなど、より明白な場合も。リスナーが一瞬でも、このバンドのパワー・ポップの才能に導かれてプログであることを忘れてしまうたびに、彼らはまた複雑なユニゾン・ラン、突然のテンポ・シフトや様々な小道具で絶妙のバランスを構築していきます。
そう
「この曲はヤムチャにちなんでいるんだ!ヤムチャはDBZサーガではあまり活躍しなかったけれど、子供の頃から大好きなキャラクターだった。ヤムチャは悟空に対抗できる最初のキャラクターの一人で、彼が “狼牙風風拳” という拳の技をキックから始めるのがいつもコミカルだと感じていたんだよね (笑)。僕たちはドラゴンボールの世界が大好きだから、Dan もこのネーミングを気に入ってくれると思ったんだ。バンドに見せたオリジナルのデモはBPMが20も速くて、想像するのも乱暴なんだけど、もともと最初のアイデアは、ぶっ飛んだ、容赦のない “Kick You In the Face” なライブ・ソングやアルバムのオープニングを作ることだったんだ」
アルバムのハイライトは、ドラゴンボールのヤムチャをテーマとした “Wolf Fang Fist!” “狼牙風風拳” でしょう。物語が進むにつれてインフレしていくキャラクターの強さと “気”。しかし、私たちは原点を忘れてはいないだろうか?ヤムチャの狼牙風風拳や天津飯の気功砲が、ドラゴンボール初期のコミカルな笑いの中で、シリアスに絶妙なバランスを生み出していました。アルバムはフック対複雑、光と影、ユーモアとシリアスの対立が常に存在していますが、まさにドラゴンボール初期のように絶対にどちらかが勝ちすぎることはないのです。
今回弊誌では、Professor Caffeine & the Insecurities にインタビューを行うことができました。「放課後はDBZのセル編やゾイドを見るために急いで家に帰ってたし、サムライチャンプルーは夜遅くまで見てたよ。植松伸夫は、ダークソウル、メトロイド、バイオハザード、そしてソニーと任天堂のほとんどすべてのゲームとともに、作曲家として僕に大きなインスピレーションを与えてくれた」 どうぞ!!

PROFESSOR CAFFEINE & THE INSECURITIES “S.T.” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【FROST* : LIFE IN THE WIRES】


COVER STORY : FROST* “LIFE IN THE WIRES”

“Every Prog Band Worth Their Salt Really Should Do a Double Album, Shouldn’t They?”

LIFE IN THE WIRES

「価値のあるプログ・バンドは皆、ダブル・アルバムを出すものだし、出すべきだよね」
FROST* とその心臓 Jem Godfrey は、この切り抜きやプレイ・リストのストリーミング全盛のインスタントな時代に、90分2枚組の巨大なエピック “Life in the Wires” を作り上げました。それだけではありません。このアルバムは前作2021年の “Day and Age” のコンセプトとリンクしながら、同時に初期の作品、特に画期的なデビュー・アルバム “Milliontown” のサウンドを見事に取り込んでいるのです。2024年にこれだけ “布石” のあるプログらしいプログを手に入れられるとは思えません。
「新しいアルバムの最初のトラックは、”Day and Age” の最後の曲 “Repeat To Fade” の終わりから始まるんだ。”Day and Age” を作ったときに、未来のためのちょっとした布石としてこの曲を入れたのを覚えているよ。
新しいアルバムの舞台に映画の世界のようなものを作り上げたんだ。 John と私が “Day and Age” を書いていたとき、私は音楽に関してかなり視覚的に考えていたんだ。曲を書いていると、その人たちがいる世界が見えてくる。”Day and Age” の世界観はとても映画的で、さまざまな場所や、メガホンを持った5人の紳士が象徴的なアルバム・ジャケット、そしてその世界観など、私にはとても映画的に感じられた! それで、”Day and Age” の最後、”Repeat to Fade” という曲の最後に、曲がフェードアウトして訪れる静寂の中で、”Can you hear me? “という声を入れた。それが新しいアルバムの始まりなんだ。”ジェームス・ボンドが帰ってくる” みたいな感じかな。 そういうアイデアがとても気に入ったんだ」

その映画のような世界観は、ビデオゲームともリンクしています。
「私の頭の中では、ビデオゲームの “グランド・セフト・オート” のような、ひとつの街でドライブしながら何かをするような世界が舞台になっている。 でも、その気になれば、車に飛び乗り、橋を渡って別の街に行くことができ、そこでは別の世界が繰り広げられているみたいなね。”Day and Age” の世界と “Life in the Wires” の世界は同じ世界の別の場所なんだ。 でも、物事は同時進行している。
“Day and Age” の世界では、”Terrestrial” や “The Boy Who Stood Still” のような登場人物たちがいて、同じように “Life in the Wires” にも登場人物たちがいて、それが同時に起こっている。 すべてが同じ宇宙を舞台にしているというアイデアがとても気に入ったんだ。その結果、ビジュアル面でも音楽面でも、ハウス・スタイルを確立するのはとても簡単だった」
だからこそ、ダブル・アルバムが必要でした。
「”Life in the Wires” のストーリーは、2枚組のアルバムが正義だと思えるほど、十分な物語があったと思う。たしかに怖さはあったよ。長くてつまらない迷走しているプログ・バンドだと評価されるほど最悪なことはないからね。 だから私たちは、以前は60分のCDというフォーマットの枠の中で十分に語ることができると思っていた。
でもこのアルバムでは、4面のレコードを作りたいと強く思ったんだ。 その結果、最適な音質を得るために、ヴァイナルの1ビットが約20分(片面)という制約が生まれた。 不思議なことに、86分と言われるととても長く感じる。 でも、20分のヴァイナル盤を4面分と言われれば、頭の中ではそれほど大変なことだとは感じない。
ダブルアルバムのアイデアはずっとやりたいと思っていた。 2枚組アルバムという素晴らしいプログのクリシェをやるのにちょうどいいタイミングだと思ったんだ!」

4面を扱えることで、ストーリーの幅も広がります。
「その通りだよ。前半の第1幕で登場人物を紹介する。そして次の第2幕で旅が始まる。 そして第3幕で寓話が語られ、4幕で教訓が語られる。 音楽的にも、そういった形式に対応できる十分な素材があったんだ。全曲がつながっているんだ。 だから、組曲のようなものなんだ」
かつてプログレッシブ・ロックのレコードにはそうした組曲やつながりのある作品が多く存在しました。
「”The Wall” は連続した作品で、”The Lamb” もその多くがリンクしていた。だからそうするのが自然だと思ったんだ。 もし “CDを作るんだ” と考えていたら、違ったものになっていたと思う。 でも、私の頭の中では、4面のレコード盤ということになっていて、そう思えた……よくわからないけど、今回は完璧に自然に思えたんだ」
“Life in the Wires” のストーリーは、主人公のナイオを中心に展開します。ナイオは、A.I.が運営する世界で、意味のない未来に向かう無目的な子供でした。しかし彼は、かつて母親からもらった古いAMラジオで年老いたDJの声を聞き、信号の発信源をたどって “ライブワイヤー” を見つけ、より良い未来がそこにあるかどうかを確かめようと決心します。しかし、”オール・シーイング・アイ” “全てを見通す瞳” はこの独立した思想に感心せず、攻撃を始めます。
やがてナイオは、ライブワイヤーの故郷を突き止め、自由を得ようとしますが国中を追われることになっていきます。
それでももちろん、多くのコンセプト・アルバムがそうであるように、このアルバムを楽しむために音楽の背景にあるストーリーを完全に受け入れる必要はありません。たとえナイオの旅が頭の上を通り過ぎたとしても、このアルバムは約90分、CD2枚組、またはレコードの伝統的な4面にわたる、多様で革新的、そして非常に楽しい曲のコレクションであることに変わりはないのです。

「ELO の “Out of Blue” は名盤だが、それ以上に “Time” のような作品を作りたかった」
Godfrey の ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA に対する愛情はこの作品にもヒシヒシと感じ取れます。彼はまるで Jeff Lynne のように、メロディックなソングライティング、見事なプロダクション、ポピュラーでありながら知的なアプローチを持つレコードを作りあげました。”Life in the Wires” もまた ELO の作品と同様、プログレッシブでありながら何度も聴かないと理解できないレコードではないのです。
「このアルバムはよりプログレッシブな雰囲気とアレンジになっているから、今回はルールを設けないのが賢明だと思ったんだ。 だから私たちは演奏できるし、ちょっとしたソロもできる。それにさまざまなムードや雰囲気をカバーしている。 ソロを弾いたり、楽器的に自分を表現したりする能力を奪ってしまうと、86分間という時間の中で、自分自身に楽しみがなくなってしまう。このジャンルやミュージシャンの楽しみのひとつは、開放的になれることだと思う。 バンドの中でそれを許容するために、ちょっとした光と影を持つことは公平だと思った。 味わい深いものであることを願うよ!」
Godfrey が12曲を書き、さらにあとの2曲は John Mitchell とのセッションから生まれたもの。”Day and Age” では Mitchell がリード・ボーカルを多く取っていましたが、今回はキーボードの巨匠がリード・ボーカルにしっかりと戻り、シンセもより前面に出ています。
「なぜそうしたかというと、このアルバムの大半を私が書いているから。自分ひとりで書いた曲が多いから、歌うことに意味があったんだ。 私がこれを歌って、John に何か歌ってもらおう” というよりはね。 彼は私よりも音域が広いんだ。 例えば、”Day And Age” では、私が実際に歌っていた曲のうち、John が歌うことになったものが何曲かあった。”Skywards” とかね。
私は “Milliontown” の全曲を歌っていたから、こうしてある種の輪が完成したんだ。 マイクの前に戻って歌を歌うグリーン・パスがもらえたと思ったんだ。 いい機会だと思ったよ」

しかし、FROST* は誰ひとり欠けても FROST* にはならないと Godfrey は主張します。
「John は、彼独特の “Johnular” なアティテュードをもたらしてくれる! 彼はユニークなギター・トーン、ユニークなサウンドを持っている。 人々が音楽を色として見るならば、彼の個性はネオンパープルになるんだ! なぜだろう? エキゾチックというか、ちょっとイタリックというか! とにかく、彼には独特の魅力があって、素敵なんだ。 彼がプレーすると、物事に高価な光沢がもたらされる。それが彼の持ち味なんだ。 それに、彼の声はたしかなものだ。 アルバムの最後、”Starting Fires” で彼が歌っているのがわかるだろう。 彼が、”We’re star…” と歌うだけで、”ああ、John だ!”と思うんだ。
Craig Brundell は、明らかに子犬のような熱意を何にでも持ってくる! 彼はずっと、”ハロー、目が覚めたよ”って感じなんだ。 子犬のように走り回るんだ。 これは何?これは何?ってドラム・グルーヴを歌う。彼はバックビートに素晴らしいエネルギーをもたらしてくれるね。
そして Nathan King は、バンドの父親みたいな存在だ! 彼は信じられないほど冷静で、禅の心を持っている。 彼はバンドの中で最も才能のあるミュージシャンで、鍵盤も弾けるし、歌も歌えるし、ベースもギターも弾ける! そして、彼はいつも音楽を覚えている。 だから私たちはいつも、”Nate、これどうやるの?”って言ってるんだ。 彼は私たちを見渡して、みんなを一直線に導いてくれる。
そういう点で、この関係はとても興味深い。 私は基本的に、みんなに指示を出す一番前のうるさいやつなんだ」

たしかに、このアルバムではバンド全員を再び解き放つことで、抑えきれないほどの喜びが表出しています。
「”Day and Age” では、ソロを省いて巧みなアレンジをするということを明確にしていたね。でも今回は、その立場を少し変化させてもいいんじゃないかと思ったんだ」
その素晴らしい例が “Moral & Consequence” でしょう。まさに “足かせ” が外されたのがわかります。ソロにソロを重ねたこの曲は、様々な意味で前作に対するアンチテーゼとなり、それでもとてもキャッチーです。Godfrey のそのポップ・センスは出自によるところも大きいようです。
「私が音楽に目覚めたのは、7歳くらいのときにテレビでブライアン・イーノを見たのがきっかけだった。彼は1970年代の “ドクター・フー” に出てくるエイリアンの悪役みたいな格好をしていて、EMSのVCS3を弾いていた。私の関心はそれだけだった。
それから14年後、私は結局、金持ちで有名なポップ・スターにはなれないということをようやく受け入れ、ロンドンのヴァージン・ラジオでアシスタント・プロデューサーとして働くことになった。そしてそれから2年後、BBCラジオ1にヘッドハンティングされ、オンエアのイメージング・チームに加わることになったんだ」
そしてポップが花開いた80年代はまさに Godfrey の音を形作りました。
「80年代は私の10年だった。私は 1984 年にティーンエイジャーになったからね。シンセサイザーに夢中になっていた。それはキーボード奏者にとって完璧な嵐だったよ。すべてが可能であり、すべてが現実を超えていた。私たちは70年代の終わりイギリスのとても憂鬱な数年間から抜け出して、率直に言って休憩が必要だった」

ELO はもちろん、ABBA や敬愛する Tony Banks の GENESIS, RADIOHEAD に QOTSA まで様々な影響を織り込んだアルバムにおいて、彼らは重さ軽さではなく、推進力と静寂のペース配分で作品にダイナミズムを生み出しました。当然、あの傑作 “Milliontown” の焼き直しをやるつもりはありません。
「私は純粋に、人々が私たちについて良いとか悪いとか言うのを読まない。もし私がレストランを経営していたら、評判をとても気にするだろうけど、レストランを経営している人とは違って、誰かがクソだと言ったからといって、急いでスタジオに戻ってアルバムを書き直したり、リミックスしたりはしない。誰かが良いと言ってくれたとしても、自分の最新作を聴きながら鏡に映る自分を愛おしそうに見つめ、自分に酒を注ぐようなことはしないんだよ」
そうして Godfrey はこの光のプログレッシブ・ロックで世界を良くしていきたいと願います。
「最近、プログの世界でもメタルギターが多く、叫んでいるように見える。皆、何事にも腹を立てているようだ。カメラに向かってにらみを利かせ、”Lung-Ripper IV- The Death Nexus “という曲を歌う。そんな気分になるのはIKEAにいるときだけだ。プログにはもうユーモアはないようだ。私の時代はもう少し上品だった。今でもFrostのフォーラムを覗いてみると、最近の激論はマーマイト (イギリスのペースト) についてだった。トランプについてはどうすることもできないが、マーマイトについては何人かに落ち着くように言うことができる。このように小さなことからだけど、私たちは世界をより良い場所にしたいんだよ」


参考文献: TPA: Frost* – Life In The Wires

PROGARCHY :Jem Godfrey of Frost*: The Progarchy Interview

THE PROG MIND :TEN QUESTIONS WITH JEM GODFREY

FROST 弊誌インタビュー!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE CHRONICLES OF THE FATHER ROBIN : THE SONGS & TALES OF AIROEA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDREAS WETTERGREEN OF THE CHRONICLES OF FATHER ROBIN !!

“We Think It’s Sad If Someone Wants To Live And Express Themselves Only Through «New Formulas» And Dogmatic Only Seek To Do Something That No One Has Done Before. Then You Forget History And The Evolution Of Things, Which In Our Opinion Is At The Core Of Human Existence.”

DISC REVIEW “THE SONGS & TALES OF AIROEA – BOOK Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ

「最初は若いワインのように最初は有望で実り豊かなバンドだったけど、やがて複雑さを増し、私たち集団の心の奥底にある濁った深みで数年間熟成され、エレジオンの森のオーク樽で熟成されたとき、ついにそのポテンシャルを完全に発揮することになったのさ」
アルバムの制作に長い時間をかけるバンドは少なくありませんが、それでも30年を超える月日を作品に費やすアーティストはほとんど前代未聞でしょう。ノルウェー・プログの粋を集めた THE CHRONICLES OF FATHER ROBIN は、ロビン神父の数奇なる物語に自分たちの人生や経験を重ね合わせ、四半世紀以上かけてついに壮大な3部作を完成させました。
「90年代に親が着ていた70年代の古着に身を包み、髪を伸ばし、1967年から1977年の音楽ばかりを聴いていたんだ。当時のポップ・ミュージックやポップ・カルチャー・シーンにはとても否定的で、RUSH や YES, そして DOORS の音楽は、例えば RED HOT CHILLI PEPPERS や RAGE AGAINST THE MACHINE, NEW KIDS ON THE BLOCK など他のバンドが聴いている音楽よりもずっと聴き応えがあると、パーティーで長い間議論していたほどでね。私たちは、自分たちが他人よりより高い位置にいると確信し、できるだけ多くの “失われた魂” を救おうとしていたんだ。だけどそれからしばらくして、私たちは他人がどう思うかとか、彼らが何に夢中になっているかということに疲れ、ただ自分たちの興味と、ミュージシャンとして、バンドとしての成長にエネルギーを集中させていくことにした」
70年代が終焉を告げて以来、プログレッシブ・ロックはつねに大衆から切り離された場所にありました。だからこそ、プログの世界に立ち入りし者たちはある種の特権意識に目覚め、あまつさえ大衆の啓蒙を望む者まで存在します。90年代のカルチャーに馴染めなかった TCOFR のメンバーたちも当初はカウンター・カルチャーとしてのプログに惹かれていましたが、しかしワインのように熟成され、長い年月を重ねるにつれて、ただ自分たちが夢中になれる音楽を創造する “道” へと進んでいきました。
3部作のコンセプト最初の芽は、民話、神話、幻想文学、サイケデリア、冒険的な音楽に共通の興味を持つ10代の仲間から生まれ、最新の発見を紹介し合ううち、徐々にノルウェーの仲間たちは独自の糸を紡ぎ、パッチワークやレンガのように新たな色彩や経験を積み重ねるようになりました。それは30年もの長きにわたる壮大なブレイン・ストーミング。
「確かに、私たちはプログ・ロックの穴を深く這いずり回ってきたけど、クラシック・ロック、フォーク・ロック、サイケ、ジャズ、クラシック音楽、エスニック、ボサノヴァ、アンビエント・エレクトロニック・ミュージックなどを聴くのをやめたことはない。たとえ自分たちが地球上で最後の人間になったとしても、こうした音楽を演奏するだろう。私たちは、お金や “大衆” からの評価のために音楽をやったことはない。もちろん、レコードをリリースして夢を実現できるだけのお金を稼ぎたいとは思っているけど、どんなジャンルに属するものであれ、音楽を通じて自分たちの考えや感情を顕在化させることが最も重要であり、これからもそうあり続けるだろう。そしてそれこそが、極めてプログレッシブなことだと私たちは考えているんだ」
WOBBLER, WHITE WILLOW, Tusmørke, Jordsjø, IN LINGUA MORTUA, SAMUEL JACKSON 5など、ノルウェーの実験的でプログレッシブなバンドのアーティストが一堂に会した TCOFR は、しかしプログレッシブ・ロックの真髄をその複雑さや華麗なファンタジーではなく、個性や感情を顕在化させることだと言い切ります。
とはいえ、プログの歴史が積み重ねたステレオタイプやクリシェを否定しているわけではありません。学問もアートもすべては積み重ねから生まれるもの。彼らは先人たちが残したプログの書を読み漁り、学び、身につけてそこからさらに自分たちの “クロニクル” を書き加えようとしているのです。
表現力豊かな和声のカデンツ、絶え間なく変化するキーボードの華やかさ、ジャンキーなテンポ、蛇行するギター・セクションの間で、TCOFR の音楽は常に注意力を翻弄し、ドーパミンの過剰分泌を促します。ここにある TCOFR の狂気はまちがいなく、ノルウェーにおける温故知新のプログ・ルネサンスの成果であり、大衆やトレンドから遠すぎる場所にあるがゆえに、大衆やトレンドを巻き込むことを期待させるアートの要塞であり蔵から発掘された奇跡の古酒なのです。
今回弊誌では、WOBBLER でも活躍する Andreas Wettergreen にインタビューを行うことができました。「芸術の発展は、決して1969年の “In The Court of the Crimson King” やバッハのミサ曲ロ短調から始まったわけではない。芸術と芸術を通した人間の表現力は非常に長い間続いており、それは何世紀にもわたって展開し続けている。イタリアの作曲家カルロス・ゲスアルドは、16世紀に複雑で半音階的な難解な合唱作品を作ったが、一方で今日作られるもっとシンプルな合唱作品も美しく興味深いものである。両者は共存し、決して競い合うものではない。
心に響くなら、それはとても良いスタートだ。それが知性も捉えるものであれば、なおさらだ。音楽と芸術はシステムの問題ではなく、感情と気持ちの問題なんだよ。最も重要なことは、良い音楽に限界はないということだ」 ANEKDOTEN, ANGLAGARD に追いつけ、追い越せ。どうぞ!!

THE CHRONICLES OF FATHER ROBIN “THE SONGS AND TALES OF AIROEA” : 10/10

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COVER STORY + INTERVIEW 【WANG WEN : INVISIBLE CITY】 三国演義 JAPAN TOUR 24


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH XIE YUGANG OF WANG WEN !!

“能和Mono还有Jambinai一起演出太令人兴奋了。Mono是我们一直尊敬和热爱的乐队,过去的二十多年,他们一刻都没有停歇,一直在书写新的音乐,并把这些音乐带到了世界上的各个角落,他们绝对是我们的榜样。听Jambinai很多年了,他们的音乐绝对是独一无二的,硬核的节奏和幽怨的民族乐器奏出的旋律完美的融合在一起”

DISC REVIEW “INVISIBLE CITY”

「音楽の大きな役割はまさに、政治や文化の壁を越えることにあると思っている。音楽は国境を超えた言語であり、異なる国や民族の人々が音楽を通じて、言葉や文字以上の感情や情報を感じ取ることができるのだから。それはまるで、より高次元のコミュニケーションのようだよね。僕らは、音楽によって生まれる心と心のつながりを壊すことができるものは何もないと信じているんだよ」
日本、中国、韓国。東アジアの国々にはそれぞれに長い歴史があり、複雑に絡み合う愛憎劇を悠久の時を超え演じてきました。憎しみもあれば愛もある。互いの関係を一言で言い表すことは難しく、特に政治の上で東アジアの国々は決して蜜月を謳歌しているとはいえないでしょう。
ただし、いつまでも歪み合い、反目し合うことが東アジアに住む人々の幸せにつながるでしょうか?いつかはこれまでの恩讐を越え、より良い未来を作っていくべきではないでしょうか?中国の独創的なポスト・ロック WANG WEN は、そうやって国境や文化を超えた心と心のつながりを作るために、音楽以上の美しい言語はないと信じています。
「MONO や JAMBINAI と一緒に演奏できるので、とても興奮しているよ。MONO は僕たちが常に尊敬し愛してきたバンドで、彼らは過去20年以上、一瞬たりとも立ち止まることなく、新しい音楽を作り続け、それを世界中に届けてきたんだよ。彼らは僕たちの模範だよ。JAMBINAI の音楽は何年も聴いてきたけど、その音楽は絶対に唯一無二だね。ハードコアなリズムと哀愁漂う民族楽器の旋律が完璧に融合しているよ」
7月に日本で行われる “三国演義 Romance of the Three Kingdoms” は、まさにその第一歩を踏み出す素晴らしき会合で邂逅。MONO, WANG WEN, JAMBINAI。日中韓の伝奇を超えたポスト・ロックのラブロマンスは、きっと凝り固まった人々の心まで溶かす新たな三国志の幕開けでしょう。
「MONO は最も説得力がある例だと思うよ。前述したように、彼らは絶え間ない音楽の創作と疲れを知らない公演で多くの場所に行っているんだ。これらはすべて、僕たちが学び、努力するべき面だと思っているね。実際のところ、どんなスタイルのラベルも重要ではなく、自分自身の声と表現方法を見つけることこそが重要なんだよ」
重要なのは、三者がそれぞれリスペクトという絆で強くつながっていること。三者ともにポスト・ロックというラベルを超えて、自らの声、表現方法を見つけていること。そうそして、WANG WEN がその声を完全に確立したアルバムは、”Invisible City” なのかもしれません。
あの SIGUR ROS がレコーディング・スタジオに改造したレイキャビクのプール。雪の降り積もるアイスランドで録音を行った彼らの心にあったのは、生まれ故郷の大連でした。ホルン、チェロ、ヴァイオリンを加えた美のオーケストラ、不気味な子守唄、ざわめくアンビエント・ノイズの風は、優しさと哀愁、静かで明るい大連という都市の有り様を見事に伝えています。多くの若者が去り、街が沈んで老いていく。そんな中でも、この地に残る人々の希望を描く “不可視の都市” には、きっと反目とヘイトが飛び交う東アジアにおいても優しい未来を育む寛容な人たちと同じ理念、同じ音の葉が貫かれているはずです。
とはいえ、そうした哲学的な話を脇においても、WANG WEN の音楽は MONO や JAMBINAI 同様に世界中で認められた、雨と悲しみと少しの希望の物語。SIGUR ROS, PG. LOST, WE LOST THE SEA, そして PINK FLOYD が紡ぐエモーションと絵画のような創造性、複雑な音楽構造を共存させる稀有なる存在。そうしてきっと新たな三国志は、2000年の時を超えて人々の心を溶かし、ほんの少しだけ近づけてくれるはずです。
今回弊誌では Xie Yugang にインタビューを行うことができました。「ここ最近の数年間、中国ではポスト・ロックを聴く若者やバンドが増えてきているんだ。一方で、メタルは20年前と比べて大きく減少しているね。しかし、ポスト・ロックであれメタルであれ、主流のポップ・ミュージックに比べると、中国ではまだ非常にマイナーな音楽だといえる」  弊誌 MONO インタビュー。  弊誌 JAMBINAI インタビュー。どうぞ!!

WANG WEN “INVISIBLE CITY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OU : Ⅱ: FRAILTY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANTHONY VANACORE OF OU !!

“Yoko Kanno Is a Prolific Composer In That Area And She Is One Of My Favorite Composers, And Definitely Has an Influence In The Music Of OU.”

DISC REVIEW “Ⅱ: FRAILTY”

「最終曲の “Recall” でジェゴグを使うアイディアがあった。だからそのパートのレコーディングを手伝ってもらえないかと芸能山城組に連絡を取ったんだよ。彼らはとても親切に対応してくれたけど、残念ながら実現はしなかったね。そこで、僕の恩師のひとりであるマイケル・リプシーに連絡を取ったところ、彼がジェゴグの故郷であるインドネシア・バリ島の知り合いに連絡を取ってくれて、そこの偉大なミュージシャン、 Ida Bagus Made Widnyana がそのパートを録音してくれることになったんだ」
デビュー作で世界を驚かせた中国のプログ・メタル・アクト OU から連絡があったのは、彼らがセカンド・アルバムを制作している最中のことでした。あの芸能山城組とコンタクトを取りたい。デビュー作でインタビューを行ってくれた君に何かツテはないだろうか?と。
AKIRA のサウンド・トラックを手がけたビッグネームにツテなどあるはずがありません。しかし、なんとか彼らの期待に応えようと、コンタクト・フォームや電話などでアプローチを試みました。ありがたいことに、芸能山城組からはとても丁寧で親切な返信 (リモートではなく実際に同じ場所で演奏をしたいという哲学) をいただき、残念ながら今回のコラボレートは実現しないことになりました。
「日本のアニメの音楽には以前から興味があったよ。AKIRA の音楽は、これまでに作られたサウンドトラックの中で最も興味深いもののひとつだと思う!菅野よう子はこの分野で多作な作曲家であり、僕の好きな作曲家の一人で、間違いなく OU の音楽に影響を与えているよ」
実現こそしませんでしたがそれでも、私は OU の情熱と包容力と見識の高さに一層魅了されてしまいました。まず、AKIRA や菅野よう子、芸能山城組という日本が誇る革新的な文化に大きく影響を受けている見識の高さ。そして、中国という伝統文化の結晶から、さらにインドネシアのジェゴグ、日本文化にアプローチを試みるその情熱と包容力。まさに、多様性と寛容さが花開く現代のメタル世界、その象徴的存在でしょう。
「音楽全体のテーマとして共通しているのは、”Fragility” 脆さ。そして人間の状態というものが本当にどれほどか弱いものなのか、どれほど簡単に流されてしまうものなのかということを扱っているんだ」
実際、彼らが扱うテーマやその音楽自体も現代のメタルを体現し、今の世界を反映したもの。この暗い世界で私たちは、人間があまりに脆く弱い存在であることを再確認しています。より良き場所へ向かうはずだった世界は、人間の脆さにより挫折し、弱い人間を抑圧し排除するかつての短絡的で “簡単な” 生きづらいレールへと舞い戻ってしまいました。OU は、中国という奇妙にバランスとのれたしかし危うい国から、人間の弱さを見つめ直しています。そして同時に彼らは、かつて強さや勝利に重きを置いていたヘヴィ・メタルの世界線に、弱さや儚さの音の葉を注ぎ込んでメタルの現在地をも更新して見せました。
「STRAPPING YOUNG LAD 時代からずっと、彼の作品はほとんど全部好きだよ。特に彼のアルバムで好きなのは、”Ghost”, “Deconstruction”, Empath”, “Lightwork”, あとはすべてのライブ・アルバムだね。特に “Order of Magnitude” は素晴らしいよ」
そんな儚くも美しい “II:Frailty” において、最後のピースは Devin Townsend のプロデュースとゲスト参加に違いありません。まさにその身を挺してメタルの多様性を切り開いてきた偉人。プログ、パンク、アンビエント、ジャズ、オーケストラにアコースティックとさまざまな切り口でメタルの進化を促した Devin は、”Frailty” にミニマルで繊細な音の織物をマキシムにレイヤーしていきました。ミニマリズムとマキシマイズこそ Devin の真骨頂。爆発的なバンドの力と幽玄絶後なボーカル、そして煌びやかなシンセの海は、まさに狂おしく、夢のように波打ちます。
今回弊誌では、Anthony Vanacore にインタビューを行うことができました。21世紀の “Mandalyon” of THE GATHERING。 二度目の登場。どうぞ!!

OU “Ⅱ: FRAILTY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DARWIN : FIVE STEPS ON THE SUN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DARWIN !!

“I Think Where We Differ From Toto Though Is Sometimes We Can Get Pretty Heavy, Sometimes You Need To Feel The Crunch Or Chugg. But Again, Similar To Toto, We’d Also Like To Reach a Wide Audience.”

DISC REVIEW “FIVE STEPS ON THE SUN”

「僕たちにとって非常に重要なのは、自分たち自身、そしてリスナー全員に、音楽の中で大きな問いを投げかけるよう促すこと。自分たちを取り巻く世界、宇宙、テクノロジー、科学、時事問題について、音楽の “問いかける” 力を感じてもらいたい。僕たちは音楽を通して大きな問いを立てることができる。音楽は、僕たちがこの世界についてどう感じているのか、もっと考える機会を与えてくれるんだ」
音楽やアートは何のために存在するのでしょうか?もちろん、純粋に気持ちよくなるため、感動を味わうためにアートを享受する人も多いでしょう。そうした一方通行で受け身のアートももちろん素晴らしいものです。一方で、アートを受け取って投げ返す対面通行の楽しみ方も、悪くはないものです。アイスランドを拠点とするギタリスト DarWin は、自らの音楽でリスナーに、世界に対して何かしらの “問い” を立ててほしいと願っています。
「僕たちの多くは、ひいひいおじいちゃんおばあちゃんがネアンデルタール人だったのだよ。いずれにせよ、ネアンデルタール人は種として消滅した。 それから1万数千年が経った今、僕たちはここにいる。 僕は、ホモ・サピエンス、つまり現代の “人類” の最後の一族になるとはどういうことなのだろうかとずっと考えていた。 そして “次世代の人類” はどのような姿をしているのだろうか? ホモ・サピエンスの後には何が来るのだろう? 彼らはどのように出現するのだろうか? …ってね。僕はときどき、次世代の人類はいかにテクノロジーに適応し、あるいは融合して、より高度な能力を獲得する必要があるのだろうかと考えることがあるのだよ」
2015年に産声をあげた DARWIN は、克明に暗雲が増えていく世の中でいつしか、人類 “ホモ・サピエンス” の終焉を夢想するようになります。そのプロジェクト名が示すように、DarWin は種の起源と終焉について掘り下げながら、滅びゆく世界で人類の進化、その正当性と妥当性に問いを投げかけるのです。
「エアポッドでバッハを脳内に流しながら外をランニングするほど素晴らしいことはないよ。何百年も前の作曲が、まったく異なる世界情勢に直面しながら、モバイルネットワーク通信、何百ものマイクロプロセッサー、バッテリーエネルギー、その他さまざまな現代の技術革新によって、僕らの脳にストリーミングされているのだから。 古代と未来の衝突はとても魅力的だ」
それでも DARWIN は、人類の可能性を諦めたわけではありません。人類はとても脆いけど、個々の人間には内省があり、希望があり、回復力と大きな可能性を秘めている。その左相がこれまでの素晴らしき音楽の歴史と、未来を見据えたテクノロジーの進化、その融合でしょう。道程と道筋の邂逅。
DARWIN は長い音楽とロックの歴史を抱きしめながら、今を生き、未来を創造しようとしています。ここに参加するアーティストは、ほとんどが百戦錬磨。かつてはあの Billy Sheehan, Guthrie Govan も名を連ねていた DARWIN のラインナップ。今回の “Five Steps on the Sun” では、Simon Phillips, Matt Bissonette, Derek Sherinian, Greg Howe のレギュラー・メンバーに加えて、Andy Timmons も降臨。一方で、新進気鋭のベーシスト Mohini Dey も起用して、まさにロックのロード・ムービーを完成させました。
「たとえプレイヤーたちがみんな狂ったようにシュレッドできるとしても、メンバーの真の貢献は本当に素晴らしい曲にあると思う。 彼らは幅広い聴衆のためにポップなロック・ソングを作ったけど、曲作りには洗練さと思慮深さもあった。 でも、僕らが TOTO と違うところは、時にはかなりヘヴィになったり、クランチやチャグを感じることがあるところだと思う。でも TOTO と同じように、幅広いオーディエンスに音楽を届けたいと思っているんだ」
そんな DARWIN によるロックの “進化論” を探求する試みは、もちろんその楽曲にも及んでいます。プログレッシブでシュレッドを織り交ぜながらも、あくまでメロディとフック、そして構成の妙で勝負する DARWIN の楽曲は、あの TOTO と肩を並べるほどの楽曲派です。
しかし、それだけでなく、ここには Plini や PERIPHERY を思わせる Fu-djent, 近未来的なシュレッドやチャグチャグしたリズムまで存在しています。”ロックの起源” からその道のりを余さず投影した彼らの音楽は、そうしてアートと人類の可能性を指し示しているのです。
今回弊誌では、DarWin にインタビューを行うことができました。P-Vine から日本盤の発売も決定!どうぞ!!

DarWin (g)
Simon Phillips (d, p)
+
Matt Bissonette (v)
Greg Howe (Lg)
Mohini Dey (b)
Derek Sherinian (key)
Julian Pollack (key)
Chariya Bissonette (bv)
Jesse Siebenberg (Ag, bv)
Andy Timmons (Lg)

DARWIN “FIVE STEPS ON THE SUN” : 10/10

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COVER STORY + INTERVIEW 【ASIA : THE HEAT OF THE MOMENT TOUR 24】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HARRY WHITLEY OF ASIA !!

“I Really Don’t See It As Replacing John Wetton – Nobody Can, Ever. I’m Here To Keep The Music Alive And Let The Fans Come Together And Enjoy Hearing The Music Live And Loud!”

TIME AGAIN

「鍵となる重要なメンバーが抜けた後、新たにバンドに入る人を見つけるのはとても難しいことだよね。僕は絶対に John の代わりにはなれないと思っているよ。それはね、誰も決してできないことだよ。だけど僕は ASIA の音楽を存続させ、ファンが一緒になって大音量で生の演奏を楽しめるようにするためにここにいるんだ!」
Dimebag Darrell と Vinnie Paul の Abott 兄弟が亡くなった時、誰もが PANTERA は終わったと思ったはずです。実際、彼らはバンドの屋台骨で、心臓で、カリスマで、決して替えのきく存在ではありませんでした。それでも、PANTERA は蘇りました。私が実際に見た PANTERA。それはまちがいなく PANTERA でした。そう、彼らは不可欠な心臓を情熱と愛情、そして使命感で補っていたのです。
鍵となるメンバーが亡くなったり、引退したり、袂を分つことで継続が困難となるバンドは少なくありません。特に、年齢層が高くなったメタルやプログ世界ではなおさらのこと。もちろん、綺麗な思い出だけを封印して大事にしまっておくのもひとつの考え方でしょうが、それでは若い世代が実体験することも叶いません。きっと大事なのは、愛情と尊敬、そして情熱をもって音楽の灯火をつないでいくこと。そして今回、ASIA、そして John Wetton の炎をつなぐこととなった Harry Whitley は、その使命に文字通り燃えています。
「John Wetton はまさに天賦の才を持っていた。素晴らしいボーカリストであり、雷鳴のようなベーシストであり、天才的なソングライターだった。John が残してくれた遺産を引き継ぐのは大変な仕事だけど、喜んで引き受けるよ!オリジナルに敬意を払いつつ、その素材を探求し、自分のものにすることにとても興奮しているんだ」
Zakk Wylde にしても、Harry にしても、決して亡きカリスマのかわりになろうとしているわけではありません。そもそも、人は誰かのかわりになることなどできません。なぜなら、きっとそれぞれの個性は唯一無二の “True Colors” だから。それでも、先人の遺志に敬意を払い、愛情と情熱をそそぎ、自分なりのやり方で美しき灯火を受け継いでいくことならできるはずです。だからこそ、あの素晴らしき John Wetton の声、そしてベースをメンターとして育った Harry Whitley は、新たな ASIA の顔として相応しき人物に違いありません。
「John の後を継ぐというのはかなり大変なことだけど、Geoff は僕に任せてくれているし、ファンやジョンの妻リサ・ウェットンを含め、みんなが応援してくれている。もし ASIA が新しいアルバムをレコーディングするとしたら、再結成アルバムに近いものになると思うけど、もう少しロック的なエッジの効いたものになると思うよ」
実際、新たな ASIA にあるのは、ノスタルジーだけではありません。Al Pitrelli, Guthre Govan, Bumblefoot, Sam Coulson など、以前からわりあい “攻めた” 人選を続けている Geoff Downes ですが、今回はドラムに Virgil Donati, 歌えるギタリストに FROST や IT BITES で知られる John Mitchell を抜擢。非常にエッジの効いたラインナップを揃えてきました。ただ、紙芝居のように歴史を語るだけではなく、歴史を未来へと繋いでいく。そんな気概も見え隠れしますね。
「プログはいつも僕の心の近くにある!なぜなら僕はチャレンジが好きだから。挑戦的な音楽はやっぱり楽しいよ!だからただ出ていって、ただ流れに身を任せるようなことはしたくない。それはファンに対してフェアじゃないからね。プログの世界には面白い音楽がたくさんあるし、それは聴かれるべきものだから、YouTube で作ったビデオを通してプログの世界を新しいリスナーに紹介することにベストを尽くしている。そしてこれからは、ASIA の灯火をつないでいかなければならないんだ」
ASIA の “Sole Surviver” となった Geoff Downes。John Wetton という盟友が “Without You” となっても、彼は “Wildest Dreams” の “Time Again” を諦めてはいません。そして、Harry Whitley という新たな “Voice of ASIA” と出会った Geoff はその夢に “One Step Closer” したはずです。”Open Your Eyes” で “Phoenix” の復活、プログの “Tomorrow the World” を見届けましょう。その行く末はきっと “Only Time Will Tell”…
今回弊誌では、Harry Whitley にインタビューを行うことができました。「ボーカルでは、”The Smile Has Left Your Eyes” が一番難しいかな。ただ歌うだけではダメなんだ!歌詞のひとつひとつに意味があり、そこに感情を込めて歌わなければ魔法はかからないからね」 どうぞ!!

INTERVIEW WITH HARRY WHITLEY

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