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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LITURGY : 93696】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RAVENNA HUNT-HENDRIX OF LITURGY !!

“Life Has Been Unbelievably Better Since My Transition. Unfortunately The Politics Of Gender Are Becoming Increasingly Scary In the United States, But It’s Still Much Better To Be Living Out In The Open.”

DISC REVIEW “93696”

「男性から女性に移行してからの生活は信じられないほど良くなっているわ。 残念ながら、アメリカではジェンダーに対する政治的な圧力はますます恐ろしいものになってきているけど、それでも、オープンに生きている方が私はずっといいんだよ」
ブラック・メタルを哲学する革新者、LITURGYのハンター・ハント・ヘンドリクスは現在、ラヴェンナ・ハント・ヘンドリクスへとその名を変えています。
「私は女性よ。ずっとそうだった。様々な拒絶を恐れて明かせなかったの。私は女性として音楽家、神学者、詩人で、生まれるものは全て女性の心から。同時に男性として生まれたことを否定したくもないのよね」
長い間、女性の心を持つ男性として生きてきたラヴェンナにとって、トランスジェンダーの告白は非常に勇気のいるものでした。周りの目や差別、弾圧といった現実のプレッシャーをはねのけて、それでも彼女がカミング・アウトした理由は、自分の人生を、そして世界をより良くしたいから。彼女の理想とする天国であり想像の未来都市”Haelegen”実現のため、ラヴェンナの音楽は、魂は、いつしか抑圧を受ける少数派の祈りとなったブラック・メタルと共に、もう立ち止まることも、変化を恐れることもありません。
「ブラック・メタルはロックという枠組みとその楽器を使ってクラシックを作るものだと考えていたんだ。 みんながそう思っているわけではないけど、私にとってはそこが大きな魅力だから」
21世紀に入ってから、ブラック・メタルはメタルの多様性と寛容さを象徴するようなジャンルへと成長を遂げてきました。DEAFHEAVENの光、ALCESTの自然、SVALBARDの闘志、VIOLET COLDの願い、KRALLICEの異形、ZEAL&ARDORのルーツなど、ブラック・メタルが探求する世界は、新世紀の20年で膨大な広がりと深みを備えることになったのです。
そうしたブラック・メタルの領域においてラヴェンナは、作曲、芸術、哲学を共有する組織LITURGYを設立します。”トランセンデンタル・ブラック・メタル”、”超越的ブラック・メタル”と呼ばれるようになったLITURGYのアートはまさに超越的で、バンドに備わる審美と多様性を純粋に統合。神学、宗教、宇宙的な愛、終末論、性について探求しながら、息を呑むような壮大さで恍惚感を表現していきます。
ラヴェンナはこの場所でブラック・メタルの暗黒から歩みを進め、管楽器、アンサンブル、グリッチ、オペラ、時には日本の雅楽まで統合した唯一無二の音楽性を追求し、変化を恐れない彼女のポジティブな哲学を体現しています。その知性の煌めきと実験性は、”ヘヴィネスの再定義”につながっていきました。つまりラヴェンナは、”重さ”を神聖なもの、物語や哲学への触媒として使用することにしたのです。その方法論として彼女は、メタルと前衛的なクラシック音楽の間のスペース、危険な境界線を常に探っています。
「”93696″は”Origin of the Alimonies”のようにオペラやクラシックを想起させる緻密な構成だけど、どちらかというとロックのような安定したグルーヴがある。だから、両方のジャンルが持つすべてを提供できるような作品になればいい」
神の実在について瞑想し、LITURGYのメタル・サイドにフォーカスした”H.A.Q.Q.”と、世界の創造と人類の堕落をクラシック/オペラの音楽言語で表現した”Origin of the Alimonies”。そして、謎の数字を冠した本作”93696″は、その2枚のアルバムのまさにハイブリッドにも思える現行LITURGYの表裏一体。驚くべきことに、ハードコア・パンクの衝動まで帯電した2枚組の巨編は、LITURGYの集大成でありながら、未来をも見つめています。
「バンドの一体感が欲しかったのよ。だから、今回はよりライブに近い音で録りたいと思ったの。もともとこのバンドのバック・グラウンドがパンクだったということもあるんだけど、アルバム自体がこうしたライブ感で作られることが最近非常に少なくなってきているからね」
そうしてラヴェンナによる”ヘヴィネスの再定義”はここに一つの完成を見ます。”93696″には、おそらくこれまでのLITURGYに欠けていた最後のピース、”人間味”、バンドらしさが溢れています。ただ実験を繰り返すだけでは、ただメタルとクラシックをかけあわせるだけではたどり着けない境地がここにはあります。逆に言えば、だからこそラヴェンナは今回、ハードコア・パンクの衝動を必要とし、デジタルからあのスティーヴ・アルビニの手によるアナログの録音に戻したのかもしれません。
例えば、タイトル・トラック”93696″は、LITURGYのトレードマークである複雑かつプログレッシブなリズムとは対極にあって、ダイナミクスの揺らぎや反復の美学で神聖と恍惚を表現。レオ・ディドコフスキーの叩き出す千変万化で獰猛なグルーヴは、ティア・ヴィンセント・クラークの轟音ベースへと感染し、ラヴェンナのメロディズムと雄弁なハーモニーを奏でます。”ポスト・アポカリプス”を紡ぐLITURGYのサウンドは、あるいはもう、ブラック・メタルというよりもISISやCULT OF LUNAの指標する”ポスト・メタル”に近い音像と言えるのかもしれませんね。そしてその一体感は、さながら人の”和”こそが人類の未来であることを示しているようにも思えます。
とはいえ、もちろんこれはLITURGYの作品です。緻密で細部まで作り込まれたニュアンス豊かな楽曲と、想像力豊かなリリックには驚きが満ち溢れています。弦楽器、聖歌隊、フルート、ホルン、ベルを用いて崇高さの高みへと舞い上がる前衛的グリッチ・メタリック・クラシック”Djennaration”を筆頭に、あらゆる楽器、あらゆるジャンルから心に響く美しさを抽出するラヴェンナの才能は健在。そうして彼女は、探求の先にある未知なるものへの寛容さと未来への希望を、自らの作品で祝福してみせたのです。表裏一体から三位一体への大きな進歩。さて、人類はラヴェンナとLITURGYが想望する”天国”へとたどり着くことはできるのでしょうか?
「これは終末的なアルバムよ。そのほとんどは2020年に構築されたものだから、あの年に起こったことすべてがこの作品に影響を与えている。でもね、最終的には希望があるの。最近の世界を見ているとありえないことかもしれないけど…人類の歴史に対するポジティブな未来への憧れがね」

LITURGY H.A.Q.Q. 弊誌インタビュー

LITURGY ORIGIN OF THE ALIMONIES 弊誌インタビュー

“93696”の解説、4000字完全版は DAYMARE RECORDINGS から発売された日本盤のライナー・ノーツをぜひ!

LITURGY “93696” : 10/10

INTERVIEW WITH RAVENNA HENDRIX

Q1: First, in just the past few years we have seen major world-changing events in the form of pandemics and wars. Of course, this new, epic, huge album may have been influenced by the lockdown, but mentally, did those events affect your work?

【RAVENNA】: Yes, the times feel apocalyptic and it is an apocalyptic album. And most of it was constructed during 2020, so everything going on during that year was influencing the project.

Q1まず、ここ数年だけでもパンデミックや戦争など、世界を変えるような大きな出来事がありました。もちろん、今回の壮大で巨大なアルバムも、精神的に、そうした一連の暗い出来事に影響を受けているのでしょうか?

【RAVENNA】: そうだね、今の時代は終末的な感じがするから、これはやっぱり終末的なアルバムになっている。 そして、この作品のほとんどは2020年に構築されたものだから、あの年に起こったことすべてがこのプロジェクトに影響を与えているの。

Q2: You mentioned that you were aware that your previous work, “Origin of the Alimonies,” was an opera in your mind and that you were working on a video production of it. Did you switch that production to “93696” during the lockdown?

【RAVENNA】: I created a video for Origin of the Alimonies during 2020, which we use for live performances but haven’t released widely yet.

Q2: 前回のインタビューであなたは、前作 “Origin of the Alimonies” は、自分の中ではオペラだと認識していて、それを映像作品として制作しているとおっしゃっていましたね。パンデミックの最中に、その制作を “93696” へと切り替えたのでしょうか?

【RAVENNA】: 2020年の間に “Origin of the Alimonies” の映像を制作し、ライブでは使っているんだけど、まだ広く公開はしていないんだ。

Q3: 93696 is a number derived from the religions of Christianity and Thelema, right? Since many Japanese are non-religious, can you tell us why this number is so special?

【RAVENNA】: I’m not completely sure what the meaning of the number is. It just came to me. But it has something to do with the union of creative self-realization with universal compassion.

Q3: “93696” は、キリスト教やテレマといった宗教に由来する数字ですよね?日本人は無宗教の人が多いので、この数字がなぜ特別なのか、教えていただきたいのですが。

【RAVENNA】: “93696”という数字の意味するところは、自分でもまったくわからない。ただ、降りてきただけなのよ。でも、創造的な自己実現と普遍的な慈悲の心に関係しているのはたしかね。

Q4: I understand “Halegen” to be your interpretation of heaven in your ideal future city. Is this “93696” the story of a new world sprouting from the end of the world?

【RAVENNA】: Yes, it’s a yearning for a positive outcome for human history, as unlikely as they may be.

Q4: “Haelegen” とは、あなたの理想の未来都市で、天国だと理解しています。この “93696” は、世界の終焉から理想的な新しい世界が芽生えるという話なのでしょうか?

【RAVENNA】: そうね、最終的には希望があるの。最近の世界を見ているとありえないことかもしれないけど…人類の歴史に対するポジティブな未来への憧れがね。

Q5: What is particularly striking about this album is the increased band-like quality. Of course, you composed all the music, but I can feel a live impulse and a sense of unity as a band more than ever before. I hear that the hardcore-punk influence is stronger than ever. Is that the reason?

【RAVENNA】: Yes, I wanted to make a recording that sounded more like our live performances do. In part because the band’s background has always been punk, but also because it’s becoming so much less common for albums to be made in such a live way.

Q5: 今回のアルバムで特に印象的なのは、バンドらしさが増したことです。もちろん全曲あなたが作曲されているのですが、今まで以上にライブ感やバンドとしての一体感を感じることができます。ハードコア・パンクの影響がこれまで以上に強いのも、それが理由でしょうか?

【RAVENNA】: バンドの一体感が欲しかったのよ。だから、今回はよりライブに近い音で録りたいと思ったの。もともとこのバンドのバック・グラウンドがパンクだったということもあるんだけど、アルバム自体がこうしたライブ感で作られることが最近非常に少なくなってきているからね。

Q6: Black metal continues to expand philosophically, spiritually and musically, and this album seems to embody such a situation, doesn’t it? Did you see this much potential in the black metal you listened to as a child?

【RAVENNA】: Kind of, yes. I’ve always seen black metal as a way to make classical music using rock instrument. Not everyone sees it that way, but that’s a big part of the attraction to me.

Q6: ブラック・メタルは哲学的、精神的、音楽的に広がり続けていますが、このアルバムはそうした状況を体現しているように思えます。あなたは、子供の頃に聴いていたブラック・メタルにこれだけの可能性を感じていたのでしょうか?

【RAVENNA】: ちょっとだけ、そうだね。 ブラック・メタルはロックという枠組みとその楽器を使ってクラシックを作るものだと考えていたんだ。 みんながそう思っているわけではないけど、私にとってはそこが大きな魅力だから。

Q7: “Origin” approaches Liturgy from the classical side, while “H.A.Q.Q.” approaches it from the metal side. In a way, is “93696” on the border between the two, a dangerous but ideal heavy music for you?

【RAVENNA】: Yes, exactly. 93696 is as meticulous a composition as Origin of the Alimonies but it has more of a steady groove like rock music, so the hope is for it to provide everything both genres have to offer.

Q7: “Origin “はクラシック側から、”H.A.Q.Q. “はメタル側から LITURGY のアートにアプローチした作品でした。ある意味、両者の境界線上にある “93696” は、あなたにとって危険でありながら理想的なヘヴィ・ミュージックの形なのでしょうか?

【RAVENNA】: うん、まさにその通りね。”93696″は”Origin of the Alimonies”のようにオペラやクラシックを想起させる緻密な構成だけど、どちらかというとロックのような安定したグルーヴがある。だから、両方のジャンルが持つすべてを提供できるような作品になればいいな。

Q8: Finally, have the past two years as Ravenna been more pleasant and happy than ever for you?

【RAVENNA】: Yes, life has been unbelievably better since my transition. Unfortunately the politics of gender are becoming increasingly scary in the United States, but it’s still much better to be living out in the open

Q8: 最後に、ラヴェンナとしてのこの2年間は、あなたにとってこれまで以上に幸せで、満たされたものでしたか?

【RAVENNA】: そうね。ハンターからラヴェンナへ、男性から女性に移行してからの生活は信じられないほど良くなっているわ。 残念ながら、アメリカではジェンダーに対する政治的な圧力はますます恐ろしいものになってきているけど、それでも、オープンに生きている方が私はずっといいんだよ。

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【PERIPHERY : PERIPHERY Ⅴ: DJENT IS NOT A GENRE】


COVER STORY : PERIPHERY “PERIPHERY V: DJENT IS NOT A GENRE”

“They’re All Mad That We Named It That, Because We’re Clearly a Djent Band”

DJENT IS NOT A GENRE

ワシントンDCの “Djent” のパイオニアが7枚目のアルバムの名前を決めようとしたとき、出てきた案はすべて次点でした。結局、タイトルは “Periphery V : Djent Is Not a Genre” に落ち着きます。それは、彼らが自らが作る音楽以外では、まったく何も真剣に考えないバンドである証拠でした。
PERIPHERY の創設者である Misha Mansoor は、Mark Holcomb と Jake Bowen という2人のギタリストと一緒に何も気にしていないことを強調します。
「Djent はジャンルではなく、ライフスタイルなんだ!」Misha は苦笑いと共にタイトルがただのジョークであることを匂わせます。「俺はただ、どこかのデータベースにこう書かれているかもしれないと考えると笑ってしまうんだ。”Periphery V: Djent Is Not a Genre” ジャンル Djent ってね」。そうして幸せそうに笑うのです。「名前なんて人生においては小さなことさ」
「だってそうだろ? KARNIVOOL は昔から大好きなバンドだけど、あれはひどい名前だ!」と、Misha は食人を文字った恐ろしい名前の素晴らしいバンドについて話し続けます。Mark もまけずに笑いを誘うようなパンチラインを交換します。「その最たるものを教えてやろうか?KORN だよ!」
「”Djentはジャンルじゃねぇ!” というタイトルを思いつくのに、アルバム制作期間、つまり3年近くかかったと付け加えておくよ」と Jake も負けずに冗談を飛ばします。「あれは、俺たちが唯一 “うげっ!”てならなかったアイデアなんだ」

それも驚くようなことではありません。PERIPHERY の信奉者であれば、バンドにとってユーモアのセンスは必須条件であることはすでにご存じでしょうから。彼らの前作は “Periphery IV: Hail Stan” というタイトルでしたが、これはタイプミスではありません。それ以前にも、”Ow My Feelings”、”Jetpacks Was Yes”、”Froggin’ Bullfish” という笑いを誘う楽曲を書いているのですから。そして、PERIPHERY がいかに真剣にタイトルを考えていないかというのは、彼らが実際には Djent が今ではジャンルだと考えていることで伝わるのです。
「アルバムを “Djent はジャンルじゃねえ!” と呼ぶ理由は、俺たちが愛情を込めてファンを小馬鹿にするのが好きだからなんだ。愛情を込めて!だよ!」と Mark は主張します。Jake は笑って付け加えます。「俺たちは明らかに Djent バンドだから、みんなそう名付けたことに怒ってるんだ (笑) まあ、Djent については、いろいろな意見があるよね。俺たちの頭の中ではプログレッシブ・メタル・バンドとしてスタートしたのに、そうしたタグに入れられたんだ。俺には、それが奇妙に聞こえたんだよな。そこには、俺が期待していたような美的感覚がなかったというか。でも、何年もかけて、俺はそれを気にしないようになった。グランジを見ればわかるよ。グランジというのは、ジャンル名としては明らかに信じられないほど愚かな名前だと思うけど、それでも、グランジと聞くと、NIRVANA や ALICE IN CHAINS, PEARL JAM, SOUNDGARDEN など、世界的で歴史を変えるようなバンドが思い浮かぶからね」
そもそも、Djent という言葉の誕生に Misha は深く関わっています。
「MESHUGGAH のフォーラムで彼らのサウンドが “Djenty” って形容されてた。だから俺の曲を “Djentyな曲” って紹介してたら、それがジャンルだと思われてしまった。ジョークだったのにね!」

では…実際に “Djent” とは何でしょうか? Wikipedia には “オフビートと複雑なリズムパターンの使用を特徴とするプログレッシブ・メタルのサブジャンル” と書かれていますが、実際にはそれ以上の何かがあります。Djent は2000年代半ばに始まったムーブメントで、MESHUGGAH が使用するポリリズムの多弦低音弦のピッキングに魅了されたギタリストたちが、それを利用したのが始まりです。パーム・ミュートした低音弦が発する音から、このジャンルは “Djent” という擬音で呼ばれるようになり、Misha Mansoor, TesseracTの Acle Kahney, SKYHARBOR の Keshav Dhar などがそのパイオニアとなりました。しかし、それまでのメタルのムーブメントとは異なり、Djent は地理的にも文化的にも固定されておらず、ギター・オタクが世界中の寝室からフォーラムや MySpace, 長じて Bandcamp にリフや楽曲を投稿する良い意味でのカオスが生まれたのです。
Misha は、「ちょうど物事の転換期で、面白い時代だった」と振り返ります。「俺は、”スタジオはもう必要ない” という最初の波に乗った一人なんだ。レコード会社から出る予算は減り、レコードの売り上げはもはや大きな要素ではなく、レコード契約の性質や予算がすべて変わりつつあった。レーベルの若い人たちはみんな “PERIPHERY と契約しろ” って感じだったけど、もう少し年配の、インターネットや MP3 をただの流行と捉えているような上層部の人たちは、俺たちのことをよく理解していなかったんだ。彼らの言葉も、俺たちに出したオファーも、そのことをはっきりと示していたよ。実際、たくさんのオファーがあったけど、どれもひどいものだった。3年くらいは、レコード契約を断ってばかりいたよ」
実際、Misha は大きく変わった今の音楽産業にも前向きです。
「俺は他のメタル・バンドとは考え方が違う。彼らはバンドがお金を産まなくなった事実に対し前向きな変化が勝手に起こる事を期待する。でも俺はメンバーにこのバンドでは稼げないと断言している。そして機材の知識やプロデュース業で収入を確保したんだ。今もしバンドをやっているなら様々な方法で収入を確保しないと生き残れない。でも、正しいアプローチさえすれば、音楽産業には間違いなくまだチャンスはあるよ!」

自らのレーベルも立ち上げました。3DOT Recordings です。
「自分たちのレーベルを作りたいとずっと思っていたんだ。それはいつも冗談みたいなものだった。アルバムを作るたびに、”自分たちのレーベルから出せばいいじゃないか” みたいな感じで。これは俺たち全員の夢がようやく実現したようなもので、実現するとは思ってもみなかったけれど、実現したのだから、これ以上の喜びはない。素晴らしいことさ」
しかし Jake は、決して 3DOT と PERIPHERY で億万長者になりたいわけではないと話します。
「もちろん、何らかの金銭的な補償があることを望んでいるからこそ、これだけの労力を費やしている。でも、現実的に考えて、この仕事で億万長者になることはないだろうとも理解しているよ。俺も音楽試聴には主に Spotify を使っている。これは、今のところ、アーティストにとってタブーな答えだと思うけど。でも、2015年に Spotify を本格的に利用するようになってから、俺の音楽に対する視野が完全に広がったんだ。朝起きると、聴いたことのない曲がたくさん入った新しいプレイリストがあり、それを全部保存している。膨大なプレイリストができあがるからね。そのおかげで、音楽、特にエレクトロニック・ミュージックへの愛情を探求することができたんだ。
同時に俺は、Spotify に登録したアーティストであり、そこから得られる報酬を見なければならないけど、残念で不合理な額だ。問題は、彼らのビジネスモデルがよくわからないことなんだ。もちろん、地球上すべてのアーティストにライセンスを与える権利を支払うには、それなりの費用がかかる。だから、彼らのジレンマはわかるけど、コンテンツにはお金を払うべきだろ? 俺たちはコンテンツ・クリエイターで、彼らは俺たちのコンテンツをライセンスし、サブスクリプションを通じてお金を稼いでいるわけだけど、そのパワーバランスは少しずれているような気がするね。
でも、YouTube がある。Spotify で見つからない曲や、ゲームのサウンドトラックなど、Spotify にはない曲を聴きたいとき、YouTube はとても便利だ。俺は、YouTube にお金を払って、プレミアム…サービスを利用するのが好きなんだ」

PERIPHERY は、2010年にデビュー・アルバムをリリースした Sumerian から、Misha によれと “攻撃的な” レコード契約を結んでもらったおかげで、DIY と寝室を離れることになりました。しかし、皮肉なことに、”Djent Is Not a Genre” は依然として、完全無欠に “Djenty” なアルバムです。オープニングの “Wildfire” は、ドラムロールを合図に、ダウンチューンのチャグにハーモニクスの嘶きが不規則に割り込む、決して穏やかではない、Djent な幕開け。”Atropos”, “Dying Star”, “Zagreus”, Everything Is Fine” も同様に、指板の最も窮屈な場所に夢中になっているようにも思えます。
しかし、PERIPHERY が常に目指している、真のプログレッシブ・ミュージックを示すタッチもここには豊富に存在しています。フロントマンの Spencer Sotelo は、咆哮と歌唱の切り替えで対比の美学を生み出し、両手を広げて “ファック・イット!” と宣言して、シンセウェーブと脈打つ EDM ビートを取り入れます。そうして、”Djent Is Not a Genre” の最後を飾る “Dracul Gras” と “Thanks Nobuo” のデュオロジーでは、プログ、Djent、ポップ、ポストロックのカラフルな饗宴が24分にわたって繰り広げられるのです。
同時に PERIPHERY は自らの栄光の軌跡をもここに織り交ぜています。例えば “Wildfire” は、以前 “The Event” で採用されたメロディを再現したもので、2部構成のロック・オペラ、2015年の “Juggernaut” のインストゥルメンタル・セグエの再来です。
「もともと “Periphery V” は “Juggernaut” の後継作品にしたかったんだけど、それはすぐに廃案になったんだ」 と Mark は明かします。「その後、”関連する部分のいくつかを残すか” という話し合いが行われたんだ”。俺が尊敬するバンド、例えば Devin Townsend のようなミュージシャンは、何の根拠もなく突然18年前に発表した曲に関連させたりする。それって結局、彼の膨大なバック・カタログから感じられる自由さだよね。ミュージシャンとしていつかたどり着きたい、実現不可能な場所のように思えたんだ」

なぜ、”Juggernaut Part 2″ のアイデアは破棄されたのでしょう?
「コンセプト・レコードを作るのは難しいから。レコードの中で有機的に流れるように曲を書くだけでなく、それらを物語に適合させなければならないんだよ。歌詞がすべて一致し、ストーリーを語り、その下に音楽が存在し、そこでも同じようなことをしなければならない。それは長く、拷問のようなプロセスだ」
このコンセプトアルバムを巡る混乱は、”Djent Is Not a Genre” のライティング・プロセスにおける、創造的に息苦しい状況を象徴していたようです。バンド自身によれば、それが彼らをほとんど “壊しかけた” とまで言います。パンデミックが起きたとき、メンバーはリモートで作曲をしようとしましたが、その場でのフィードバックがなく、何も進展しませんでした。Misha が説明します。
「多くのアイデアはあったのだけど、Spencer がそれを気に入ったかどうか、実際に曲としてアレンジできるかどうかを確認する必要があったんだ。それ自体には何の意味もない、曲のセクションばかりがたくさんあったんだよ。パンデミックが核心的な問題であったことは間違いないだろうな。で、結局、重要なのは、批評家やファンの承認ではなく、自分たちの気持ちだとわかった。”Hail Stan” はとても簡単にできたし、あのレコードは俺が本当に誇りに思うものだった。だから、ファンや批評家が “彼らはタッチを失った” と言っても、俺は気にしなかった。自分が誇りに思っていれば無敵になれるんだよ。もし君が何かを信じているなら、もし君が自分の生み出したものを信じているなら、それはきっと君を無敵にしてくれる」
Zoom によるコラボレーションもうまくいかず、その結果、PERIPHERY は孤立した状態で、個々に自分のアルバムを作曲するようになりました。Jake は “The Daily Sun” でエレクトロニカに手を出し、Mark はエクストリーム・メタル・バンド HAUNTED SHORES を復活させ、Misha は伝説的なソロ・プロジェクト Bulb を復活させ、Spencer とドラマーの Matt Halpern はエモプログのチームアップ KING MOTHERSHIP を立ち上げました。しかし、こうした動きも彼らにとっては不利に働きました。曲作りのために、2020年10月にバンドが直接再集結するまでに、PERIPHERY はすでに “燃え尽き症候群” に陥っていたのです。その結果、”Djent Is Not a Genre” は制作に3年近くを要することになります。
Mark は “諸刃の剣だった” と当時を振り返ります。
「このアルバムに長い時間をかけていることは分かっていたし、ファンも不安に思っていた。でも、レコードを作り始めた時を考えると、これが唯一の方法だったと思うんだ。もし、何かの期限に間に合わせるために、急いでレコードを出さなければならなかったら、それは不可能だっただろうね」

そうした停滞を解決したのが、実はビデオ・ゲームでした。ご承知の通り、PERIPHERY はゲーマーのバンドです。ツアー中も、スタジオでも、家でも、ノンストップのガチゲーマー。Mark が解説します。
「2000年代半ばに出会ったとき、PERIPHERY は音楽とファイナル・ファンタジーの2つで結ばれていたんだ。俺は声優(Disco Elysium、Hello Puppets: Midnight Show)に、Misha は作曲(Deus Ex: Mankind Divided、Halo 2 Anniversary)に携わり、ゲームへの親しみはますます強くなっている。そして、ゲームが “Djent Is Not A Genre” の音楽に直接インスピレーションを与えたんだ。いくつかそのタイトルをあげてみよう。
まずは “Hades”。今回のセッションの間、Spencer, Misha, そして俺は、完全にこのゲームに夢中になっていた。仕事の休憩時間には、みんなで Switch に向かって、会話もなくただ黙々とランを繰り返していたくらいでね。この10年で一番好きなゲームのひとつだよ。ゲームプレイのループに酔いしれ、死んだらすぐに、次のランを始めたくなる。”Zagreus” という曲は、このゲームの主人公の名前から取ったもので、最後まで聴いた人なら、この曲の最後の4つのコードが、死んだときに流れるモチーフのなごりであることがわかると思う。死にゲーだから、すぐに脳に焼き付いてしまうんだよな。このゲームはダレン・コルブが全曲を作曲しており、サウンドトラックも素晴らしいんだよ。
次は “Returnal”。Misha が Jake と俺を引き込んだんだけど、どっぷりハマったよ。このゲームもまた、ゲームプレイのループが非常に楽しいローグライク・ゲームで、近年登場したゲームの中で最もフィーリングが良いものの1つだろう。サウンドデザインも素晴らしく、Blue Öyster Cultの “Don’t Fear the Reaper” が繰り返しテーマとしてゲームに使われているのが実に巧い。”Atropos” は、ゲームの舞台となる惑星にちなんで命名されたんだ。
次は、ファイナル・ファンタジー・シリーズ。あまり説明の必要はないだろう。植松伸夫は、このシリーズの主要な作曲家で、俺たちが最も影響を受けた音楽家の一人だからね。初期の PERIPHERY, HAUNTED SHORES, 古い Bulb のデモなど、俺たちの傘下にあるすべての作品に彼の足跡が残っている。最後のトラックは “Thanks Nobuo” というタイトルで、要するに彼への感謝状なんだ。この曲には、FF7のテーマが使われているよ。わかるかな?
そしてもちろん、昨年、俺の人生は Elden Ring に飲み込まれた。あのアート・スタイルがあったからこそ、自分たちの音楽をもっとダークなところに持っていきたいと思ったし、バンドとしてやることすべてが、1/10000でもあのゲームの壮大さを再現できればいいと思っていたんだよな。ラスボス戦になると、メインメニューのテーマがオーケストラで再現されるのも、特にやり込んでいる人なら満足感があったよな。PERIPHERY が過去の作品から様々なテーマやメロディーを引用するのも、その気持ちのほんの一部をリスナーと共有したいからなんだ。
最後は、ブラッドボーン、ダークソウル1~3、デモンズソウル。フロムゲーは俺がこれまでで最も好きな作品群のひとつで、俺が関わるすべての音楽に影響を与えている。HAUNTED SHORES の前作 “Void” では、アルバムアートを “Bloodborne” から切り取ったようなものにしたかったし、音楽もそのゲームと同じくらい敵意を感じるものにすることを目指した。Spencer もこのゲームには深くハマっていて、セッション中、特に作曲の初期は間違いなく2人ともインスパイアされたよ」

実際、”Periphery Ⅱ”の “Muramasa” と “Masamunue” はファイナル・ファンタジーに関連する楽曲でしたし、Misha は “FF7″ のリメイクに真剣に関わりたがっていました。
「植松伸夫は驚異的な才能だよ。彼のメロディーのセンスやテクスチャーの使い方は、俺にとって間違いなく大きな参考になっている。だから一曲でも関わりたいよな…」
苦労したセッションの最終結果は、結局、自分たちの好きなアルバムに落ち着きました。ベタな名前はともかく、”Djent Is Not a Genre” は、バンドが今でも最も折衷的で先鋭的であることを捉えています。そうして、今となってはジャンルのひとつに違いない Djent は、シンセやフック、サックス・ソロにたっぷりのユーモアもあるパイオニアの作品によってやはり牽引されているのです。Spencer はかつてこんな言葉を残しています。
「最高の芸術作品を作りながらユーモアも忘れずいたいね。音楽に個性を反映させないでシリアス一辺倒な奴らは信用できないから。一人の人間でいればいい。どうせ今、メタルで金は稼げないんだから、好きという気持ちだけで音楽を作ろうじゃないか」
ただし、PERIPHERY にとってここは決して全てでもなく、終わりでもありません。
「最終的に、自分たちが満足できなければ、アルバムはリリースしないよ。でも、そうすることで、自分たちが心から誇れるアルバムが完成するんだ。それが、唯一受け入れられる最終目標だった。誇れるアルバムなら、商業的にはどんなものでも手に入れることができるんだ。他の人たちのことは言いたくないけど……俺たちのアルバムを売り尽くしたいんだ。良いと思うなら金をくれ!(笑)」


参考文献:GUITAR.com:“We like to lovingly take the piss out of our fans!” Periphery on why Djent is, actually, a genre

METAL INJECTION:PERIPHERY Names The Video Games They Played While Recording Their New Album

LIVE METAL:INTERVIEW: Jake Bowen of PERIPHERY

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ICE AGE : WAVES OF LOSS AND POWER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ICE AGE !!

“I Vividly Remember Kevin Moore Playing Some Of The Songs And Parts That Would End Up On “Images And Words” For Me On The Piano In His Living Room.”

DISC REVIEW “WAVES OF LOSS AND POWER”

「僕たちの音楽が、若い人たちが流行に逆らい、長い曲、挑戦的な歌詞など、こうした体験に没頭するきっかけになればと願っているんだよ。だって、プログレッシブの “巨人” の中には、避けられない時間の経過のために消えてしまった人もいるかもしれないけど、まだ健在なバンドもたくさんあって、プログレッシブ・ミュージックは今こそ、主流で定型的なポップスに代わる選択肢を提供していると思うからね」
インスタントでファストな文化が支配する現代において、プログレッシブ・ミュージックの手間暇や長さ、複雑さは明らかに異端であり逆風です。しかし、だからこそプログレッシブ・ミュージックは今必要なのだと、ロングアイランドのカルト・ヒーローは力説します。Z世代だって全員が全員、時代の潮流やトレンドに馴染めるわけじゃない。僕たちが “選択肢” を提供するのだと。
「DREAM THEATER とは個人的につながりがあってね。Kevin が彼のリビングルームのピアノで、”Images and Words” に入る曲やパートのいくつかを弾いてくれたのを鮮明に覚えているよ。 僕たちを含む多くのプログレッシブ・バンドが “When Dream and Day Unite” に強い影響を受けたことは周知の事実だ。実は、僕はあのアルバムのリリース・パーティに参加したんだけど、PAから聞こえてきた曲を聞いて、文字通りその夜から僕の音楽の趣味や志向が変わったと言えるくらいでね。あれは天啓だったよ」
ICE AGE は1999年に “The Great Divide” で鮮烈なデビューを飾ります。攻撃的なプログ・メタルの複雑性だけでなく、Josh Pincus のゴージャスなボーカルとカラフルな鍵盤による極上のメロディを兼ね備えた彼らは、DREAM THEATER の後継者に最も近い存在だったのかもしれません。
DREAM THEATER については、Kevin Moore 以前と以後がよく語られるトピックですが、ICE AGE は明らかに Kevin Moore 以前の音楽性を受け継いでいました。実際、Kevin と旧知の仲である Josh は、Kevin のようにメロディはもちろん、奇数拍子のダンスに、テクニカルやメカニカルまでもすべて楽曲の “イメージと言葉” へと奉じて、プログレッシブ・メタルの新たな礎を築き上げました。
「僕らはいつも、プログレッシブなフォーマットの中でキャッチーなメロディとパートを持つ曲を書く能力こそが、僕らを差別化するものだと思っていた。 一般的に、このジャンルではボーカルのメロディが迷子になることがよくあるんだ。音楽が先に書かれ、その上にボーカルが “叩きつけられ”、後回しになることがよくあるからね。”Waves of Loss and Power” ではこの罠を避けるように意識したんだ。ボーカル・メロディと歌詞は常に最優先だったよ」
うれしいことに、22年という月日が流れたとは思えないような不変の哲学で彼らは帰ってきました。DREAM THEATER, RUSH, GENESIS, QUEENSRYCHE, KANSAS, STYX といったバンドが煮込まれたプログ・メタルのシチューは、シェフの巧みな味付けによって紛れもなく ICE AGE 以外の何ものでもない美味なる味わいを響かせています。
そして実際、このアルバムにはバンドが残した2枚のアルバム、その続編の意味も込められています。”Perpetual Child”, “To Say Goodbye” はプログ・メタルのファンにとって忘れられないエピックで、その続きを2023年に聴くことができることにまず驚きと感謝を捧げずにはいられません。そしてその “伝承” こそがアルバムのクライマックス。
プログ・メタルの同業者とは異なり、ここに派手さのためのシュレッドはなく、常に楽曲のイメージとアトモスフィアのためにテクニカル・パズルのピースは存在しています。異様なまでに一体化した楽器隊はその証明。彼らは、ムード、テンポ、楽器編成を変化させながら、本物の叙事詩を構築する方法を知っているのです。刻々と変化を続け、好奇心を誘う旋律と戦慄の饗宴は、長尺でありながら一切の切り取りを許さないがゆえに現代への完璧なアンチテーゼであり、もっと言えば、マグナ・カルタに “潰された” SHADOW GALLERY や MAGELLAN, DALI’S DILEMMA の墓標まで背負った魂のルフランなのでしょう。
今回弊誌では、ボーカル/キーボードのJosh、ベースの Doug Odell, ドラムの Hal Aponte にインタビューを行うことができました。「このアルバムは、戦争の非人道性、特に20世紀半ばの中国によるチベットへの侵略と文化破壊について扱っている。これは、領土の征服だけでなく、基本的な人権や良識の抑圧という点でも、心を痛める例なんだよ。 君の言う通り、こうした戦争は各地で現在も続いている。ある派閥が自分たちの世界観や宗教を他の派閥に押し付けようとするのは、常に危険で、しばしば暴力的となる。それは人類が持つ最悪の衝動なのだよ」どうぞ!!

ICE AGE “WAVES OF LOSS AND POWER” : 10/10

INTERVIEW WITH ICE AGE

Q1: Can you start by telling us why you have decided to revive the band now after 22 years?

【HAL】: Thanks! We’re psyched to be back!! The short story is that we had spoken about playing together again for years. We never lost touch as we are brothers, in and out of the band, so there was always some sort of communication or contact between all of us. I had a barbecue at my house a few years back and decided it would be a great idea to have everyone there, maybe even jam a little bit if everyone felt up to it, with no pressure of any kind put on any of us. The jam session went so extremely well that we had no choice but to see this whole opportunity through; we started writing new material that ended up on “Waves of Loss and Power” right on the spot that first time we jammed. After that we did some studio rehearsals and it just escalated from there. Again, it took a few years – it did not come together overnight. We didn’t allow ourselves to put time restraints or pressures of any kind on the process, so it was really done at our own, attainable pace. As far as the right timing goes, it was just a matter of everyone’s schedules being aligned. In 20+ years you would expect everyone’s lives to have changed at least a little bit lol, especially with new challenges and responsibilities, right? From living in different states, marriages, family lives, the pandemic, etc … So it was just a matter of getting the most out of our own individual windows of available time. We did the best that we could while still maintaining our day to day normality. We also capitalized on all of the technological resources that were readily available to us. We learned a lot and definitely grew as a band. We were also able to make the proper adjustments along the way and we got closer as brothers.

【JOSH】: Also, during those many years we weren’t playing together, the urge and need to be creative never went away. Any artist will tell you that no matter how much time you may spend away from you craft, it’s never far from your mind and your heart. I think we all knew in the back of our minds that we’d eventually get back together and write/record. Part of the beauty of being able to do this now is the fact that life experiences have seasoned us all so much, and our individual musical tastes have changed somewhat; that maturation process finds its way into the music and lyrics, and it’s very clear that the finished pieces are products of that time apart, but also of the incredible chemistry we have as musicians and people; in that sense, it’s like we never stopped playing together.

Q1: まず、今、22年ぶりにバンドを復活させようと思ったのはなぜだったんですか?

【HAL】: ありがとう!戻ってこられて感無量だよ! 簡単に説明すると、僕たちはもう何年も前からまた一緒に演奏しようと話していたんだ。僕たちはバンド内外において兄弟のようなものだから、常に何かしらのコミュニケーションやコンタクトがあって、音信不通になることはなかったからね。
数年前に僕の家でバーベキューをしたとき、みんなを集めて、プレッシャーをかけずにその気になれば少しジャムるのもいいんじゃないかと思ったんだ。そのジャムセッションは非常にうまくいったから、この機会を逃すわけにはいかず、最初にジャムったその場で “Waves of Loss and Power” につながる新曲を書き始めたのさ。その後、スタジオでリハーサルを行い、そこからどんどん活動はエスカレートしていった。もちろん、一夜にして完成したわけではなく、数年の歳月を要したけどね。
時間的な制約やプレッシャーは一切かけなかったから、自分たちのペースで進めていくことができたんだ。まあタイミングとしては、全員のスケジュールが一致したことかな。20年以上経てば、皆の生活も多少なりとも変化しているはずでね。特に、新たな挑戦や責任などで。だから、僕たち一人ひとりが使える時間を最大限に活用することが重要だった。僕たちは、日々の生活を正常に保ちながら、このバンドでできる限りのことをしていきたかったんだ。
すぐに利用できる技術的なリソースはすべて活用したよ。僕たちは多くを学び、バンドとして間違いなく成長を遂げた。また、その過程で適切な話し合いを行うことができ、兄弟としてより親密になったんだ。

【JOSH】: それに、一緒に演奏していなかった長い年月の間も、創造的でありたいという衝動と欲求は決して消えなかったからね。アーティストなら誰でも言うだろう…どんなに長く創作活動から遠ざかっても、創造性が頭や心から離れることはない…と。僕たちは皆、心の奥底で、いずれは再び集まって作曲やレコーディングをすることになるだろうと思っていたんだよ。
今また、こうして活動する中でより美しいことは、人生経験が僕たちをさらに大きく味付けし、それぞれの音楽的嗜好が多少変化しているという事実だろうな。その成熟の過程が楽曲や歌詞に反映され、完成した作品は、離れていた時間の産物であると同時に、ミュージシャンとして、人間として、素晴らしい化学反応を起こしていることがよくわかるからね。

Q2: I mean, The prog world has changed in your absence. Many of the prog giants are old and have passed away. Meanwhile, the world is dominated by the instant culture of social networking and clippings, and few young people will bother to take the time and trouble to pursue a grand and complex prog. What was it that drove you guys to the prog in such a situation?

【JOSH】: The short answer is that that’s generally the style of music we love. We’re not interested in musical trends or fads; we do this to feed our need to be creative and to offer original, memorable, thoughtful music and lyrics, and the “progressive” genre gives us the best opportunity to express ourselves in that way. We hope that our music will encourage some younger people to buck the trends and immerse themselves in this kind of experience – longer songs, challenging lyrics, etc…While some of the progressive “giants” may have gone away because of the inevitable passage of time, there are still plenty that are alive and well, and progressive music still offers a much-needed alternative to mainstream, formulaic pop.

【DOUG】: From my perspective I think there were two main intentions that were in the ether without us actually thinking or talking about it. First of all there was unfinished business after LIBERATION in that the band had – and still has more to say creatively, in the authentic way that only Ice Age can. The second piece of that is that we enjoy playing together and we started down this path with the sole purpose of making ourselves happy by writing new music together. We didn’t have any business, cultural or technological pressures to contend with because this was a selfish pursuit, coming from the purest artistic place possible. Only as we became serious about this being a new era for the band did we start to reestablish our presence seriously online. Hal (drummer) has been running a Facebook page for years and that’s been one thread of connection that was very important, where fans would share their love of the band and wishes for something new. Now, we are anywhere and everywhere on social media platforms, sharing new content.

Q2: プログの巨人たちの多くは高齢となり、すでにこの世を去った人も少なくありません。一方で、現代ではSNSや切り抜きなどのインスタント文化に支配され、わざわざ時間と手間をかけて壮大で複雑なプログを追求する若者は少なくなっています。つまり、そんな中で、あなたたちが今またプログに駆り立てられ、復活した理由が知りたいんですよ。

【JOSH】: 簡単に言うと、僕たちがこのスタイルの音楽を愛しているから。 僕たちは音楽のトレンドや流行に興味があるわけではないからね。創造的でありたいという欲求を満たすために、オリジナルで、記憶に残る、思慮深い音楽と歌詞を提供するためにこの仕事をしているんだよ。
でもね、同時に、僕たちの音楽が、若い人たちが流行に逆らい、長い曲、挑戦的な歌詞など、こうした体験に没頭するきっかけになればと願っているんだよ。だって、プログレッシブの “巨人” の中には、避けられない時間の経過のために消えてしまった人もいるかもしれないけど、まだ健在なバンドもたくさんあって、プログレッシブ・ミュージックは今こそ、主流で定型的なポップスに代わる選択肢を提供していると思うからね。

【DOUG】: 僕の観点では、実際に考えたり話したりしたわけじゃないけど、そこには2つの主要な意図があったと思うんだ。
まず第一に、 “Liberation” の後にやり残したことがあったから。そこには、ICE AGE だけができる本物の方法で、クリエイティブにもっと言いたいことがあったし、今もある。もうひとつは、僕らが一緒に演奏することを楽しんでいて、一緒に新しい音楽を作ることで自分たちを幸せにすることだけを目的にこの道を歩み始めることができたから。 ビジネスや文化、技術的なプレッシャーは一切なく、純粋に芸術的なものを追求するためにね。
バンドにとって新しい時代であると真剣に考えるようになってから、僕たちはオンラインで真剣に存在感を示し始めたんだ。ドラマーの Hal は何年も前から ICE AGE のフェイスブック・ページを運営していて、ファンがバンドへの愛や新作への願いを共有する、とても重要なつながりの糸となっていたんだよ。 今は、ソーシャルメディアのプラットフォームで、どこでも、新しいコンテンツを共有しているよ。

Q3: On the other hand, the last 20 years have seen the djent movement, originated by Meshuggah, gain momentum. What did you think of that polyrhythmic and bass approach?

【JOSH】: Ahh, yes, “math metal” lol. I think there’s always been an element of that in progressive rock and metal; that’s just the nature of the beast. This kind of music always explores odd time signatures and challenging, technical playing. That’s how a lot of musicians in this genre play, and that’s what turns the audience on. That said, as a singer, I was never drawn to that style of vocals; singing to me is a craft and the vocal chords are an instrument like any other, that require care and practice to excel. We’re all fans of melody, and we’re much more attracted to the musical side of things as opposed to the pounding rhythms and growling vocal genre.

【HAL】: I think Meshuggah are great ! They are absolute masters at what they do and they have truly raised the bar. Musically and stylistically things can become monotonous and boring quite quickly for any artist. For the composer’s as well as the listener’s sake it’s great to be able to think outside of the box. When you are capable of achieving something like this (the djent movement) then you have just uncovered so many new avenues of exploration and sound. As for a polyrhythmic approach I love the idea of maximizing a sections potential rhythmically. Isn’t that where it all stems from – the root of it all? You have your essential pulse that you can branch out from. It pretty much just depends on how many different directions you would like for it to flow in. The sense of freedom is also present and it grants you complete control of an uncharted journey.

Q3: 一方で、あなたたちがシーンにいなかったこの20年で、プログ世界には MESHUGGAH を始祖とする、低音とポリリズムの饗宴 Djent ムーブメントが起こっていましたね?

【JOSH】: ああ、そうだね! “数学メタル” だ(笑)。 プログレッシブ・ロックやメタルには常に数学の要素があり、それはまさにこうした音楽につきものなのだと思う。この種の音楽は常に奇妙な拍子記号と挑戦的でテクニカルな演奏を探求するからね。このジャンルの多くのミュージシャンがそうやって演奏し、それが観客を興奮させてきたんだ。
まあだけど、シンガーとして僕はああしたスタイルにハマったことはない。僕にとって歌は技術で、声帯は他の楽器と同じで、優れたパフォーマンスを発揮するためにはケアと練習が必要なんだ。 僕たちは皆、メロディーのファンで、叩きつけるようなリズムやうなり声のボーカルというジャンルとは対照的に、もっと音楽的な側面に魅力を感じているからね。

【HAL】: でも MESHUGGAH は最高だと思う。彼らは自分たちがやっていることの絶対的なマスターであり、本当にレベルを上げ続けている。どんなアーティストでも、音楽やスタイルはすぐに単調で退屈なものになってしまいがちなのにね。作曲家にとっても、リスナーにとっても、既成概念にとらわれない発想ができることは素晴らしいことだよ。Djent ムーブメントが起こったことで、新しい探求やサウンドの道をたくさん発見することができた人も多いだろう。
ポリリズムのアプローチについては、セクションのポテンシャルをリズム的に最大化するというアイデアが気に入っている。すべての根源はそこにあるのではないだろうか?本質的なパルスがあって、そこから枝分かれしていくことができるというかね。それをどれだけいろいろな方向に流せるかが重要なんだ。そこには自由な感覚もあり、未知なる旅路を完全にコントロールすることができるだろう。

Q4: So let’s talk a little about the past. I first discovered you in 1999 with the release of “The Great Divide,” and I have been listening to your music for the past 25 years. It’s a really great album! At the time, you were often described as the successor to Dream Theater. How do you feel about the current DREAM THEATER?

【JOSH】: Thanks for your kind words and your support through the decades – yes, The great Divide album was (and still is) very well regarded. I have a personal connection to Dream Theater because I both took lessons from and taught lessons at the same music store in Long Island as Kevin Moore (original member and keyboardist of Dream Theater); I vividly remember him playing some of the songs and parts that would end up on “Images and Words” for me on the piano in his living room. It’s no secret that many progressive bands, including us, were strongly influenced by “When Dream and Day Unite” – I remember attending the album release party for that album and hearing on the PA – I can literally say my musical tastes and aspirations changed that night. It was a revelation. Partly because of the personal connection and the fact that I’m a huge fan of Kevin’s melodic style and lyrics, I will always be partial to the early DT material; I also loved Derek Sherinian’s contribution. Jordan Rudess is an amazing player technically; no one can match him in that regard; they really are the absolute best from a pure technique standpoint.

【DOUG】: Dream Theater as one of only two progressive metal bands (the other being Porcupine Tree) to reach the level of being on/staying on a major record label (with that level of support and exposure behind them) truly paved the way for many other bands like Ice Age to come after them. It’s very admirable that Dream Theater are still out there, being true to what they do. They have been nominated three times for a Grammy award and actually won in 2022. Speaking very subjectively to answer your question, I personally did not stay on board as a fan after the exits of Kevin Moore (keyboards) and Mike Portnoy (drums) because the material that I connect with the most passionately is on those first three albums.

Q4: では少し昔の話をしましょうか。私が ICE AGE を知ったのは1999年の傑作デビュー “The Great Divide” でした。あれから25年、ずっと聴き続けていますよ。あの頃、あなたたちは DREAM THEATER の後継者などとも言われていましたが…

【JOSH】: そうだね、”The Great Divide” は当時も、そして今もとても高く評価されているよね。僕は Kevin Moore(DREAM THEATER のオリジナル・メンバーでキーボーディスト)と同じロングアイランドの楽器店でレッスンを受け、同時に教えていたから、DREAM THEATER とは個人的につながりがあってね。Kevin が彼のリビングルームのピアノで、”Images and Words” に入る曲やパートのいくつかを弾いてくれたのを鮮明に覚えているよ。
僕たちを含む多くのプログレッシブ・バンドが “When Dream and Day Unite” に強い影響を受けたことは周知の事実だ。実は、僕はあのアルバムのリリース・パーティに参加したんだけど、PAから聞こえてきた曲を聞いて、文字通りその夜から僕の音楽の趣味や志向が変わったと言えるくらいでね。あれは天啓だったよ。
個人的なつながりや、Kevin のメロディックなスタイルと歌詞の大ファンであることもあって、僕はずっと初期の DREAM THEATER の楽曲を好んで聴き続けている。とはいえ、Jordan Rudess は技術的に素晴らしいプレイヤーだ。この点で彼に匹敵する人はいないね。だから純粋なテクニックの観点からみれば、今の彼らは本当に絶対的なベストだよ。

【DOUG】: DREAM THEATER は、メジャー・レコード・レーベルに所属し、そのレーベルに留まるというレベルに達したたった2つのプログレッシブ・メタル・バンド(もう1つは PORCUPINE TREE)の1つとして、そのレベルのサポートと露出を背景に、僕らのような後に来る他の多くのバンドへの道を本当に切り拓いたんだ。
DREAM THEATER がまだここにいて、自分たちのやることに忠実であることは、とても立派なこと。 彼らはグラミー賞に3回ノミネートされ、2022年には実際に受賞しているからね。
ただ、非常に主観的な話をすると、僕自身は Kevin Moore(キーボード)と Mike Portony(ドラムス)の脱退後、ファンとして残ることはなかったんだ。なぜなら、僕が最も情熱的につながっていたマテリアルは、最初の3枚のアルバムにあるからだ。

Q5: Back then, you guys belonged to Magna Carta. There were many great bands on that label, such as Cairo, Megellan, Shadow Gallery, and Dali’s Dilemma, but in the end none of them were commercially successful. What do you think was the reason?

【JOSH】: I agree – there were so many great bands on Magna Carta; I just think it was a function of them not having the budget/desire to really develop them in a proper way. Back in the day, record labels would nurture (and fund) a band creatively; sadly, I think part of the issue there was the fact that they were capitalizing on the popularity of a few flagship prog bands at the time, and were really focused more on total profit than promoting their artists. I think this is the main reason we (and some of the other bands) became disillusioned when we realized our aspirations were not in line with the label’s.

【DOUG】: I know that I reached out to them (the record company) and tried to get some support for us to get on bills for local shows with bands like Fates Warning and Symphony X – and there was absolutely zero assistance from the label.

Q5: あの頃、あなたたちは Magna Carta に所属していました。あのレーベルには、他にも CAIRO, MAGELLAN, SHADOW GALLERY, DALI’S DILEMMA など素晴らしいバンドが多く所属していましたが、結局、商業的な成功を収めたバンドはいませんでした…

【JOSH】: Magna Carta には素晴らしいバンドがたくさんいたのに、彼らをきちんと育てる予算や意欲がなかったということだと思う。 昔はレコード会社がバンドをクリエイティブに育てる(資金を提供する)ものだったけど、悲しいことに Magna Carta は、当時の代表的なプログ・バンドの人気に便乗し、アーティストのプロモーションよりも総利益を重視していた。それが問題の一因だったと思っているんだ。そこが、僕たち(と他のバンド)の願望がレーベルの願望と一致していなくて、幻滅した主な理由だと思う。

【DOUG】: 僕はレーベルに連絡を取り、FATES WARNING や SYMPHONY X のようなバンドと一緒に地元のライブに参加できるようなサポートを得ようとしたんだけど、レーベルからの援助はまったくなかったんだ。

Q6: Still, “Waves of Loss and Power” is a great comeback! You seem to be focusing more on melody than before. Would you agree?

【DOUG】: I personally think that melody has always been a big part of the Ice Age sound, especially with a big focus that evolved in that respect with LIBERATION. There are so many musical and vocal hooks at every turn and that’s one of the things that I think sets Ice Age apart from prog bands that cram impressive playing into song structures for the sake of fitting into an expected way of approaching the style of music. This new album is the next logical progression for us, especially when considering the extent of vocal harmonies Josh (singer/keyboards) added, which goes beyond the first two albums from a production standpoint.

【JOSH】: Thanks so much!! We’re very proud of it. I agree with Doug – the melodic core was always there – we always thought what differentiated us was the ability to write songs with catchy melodies and parts within the progressive format. In general, vocal melodies can get lost in the shuffle in this genre; the music often gets written first, and then the vocals are sort of “slapped” on top and become an afterthought; I made a conscious effort on “Waves of Loss and Power” to avoid this trap – vocal melodies and lyrics were always top-of-mind, and that may be part of the reason why you feel it is more melody-focused..

Q6: それにしても、”Waves of Loss and Power” は素晴らしいカムバック・アルバムですね!以前よりもさらに、メロディにフォーカスしているように感じましたよ。

【DOUG】: 個人的には、メロディーは常に ICE AGE のサウンドの大きな部分を占めていると考えているよ。特に “Liberation” では、そこにフォーカスして大きな進化を遂げたんだ。音楽的、ヴォーカル的なフックが随所にあり、それが、音楽スタイルへ合わせるために印象的な演奏を曲構成に詰め込むプログ・バンドとは一線を画す点だと思う。
特に Josh(シンガー/キーボード)が加えたボーカル・ハーモニーを考慮すると、この新しいアルバムは、最初の2枚のアルバムを超えた、僕たちにとって次の論理的進歩だと言えるね。

【JOSH】: 本当にありがとう!!(笑)僕らはそれをとても誇りに思っているよ。Doug の意見に賛成だね。メロディックな核はいつもそこにあった。
僕らはいつも、プログレッシブなフォーマットの中でキャッチーなメロディとパートを持つ曲を書く能力こそが、僕らを差別化するものだと思っていた。 一般的に、このジャンルではボーカルのメロディが迷子になることがよくあるんだ。音楽が先に書かれ、その上にボーカルが “叩きつけられ”、後回しになることがよくあるからね。”Waves of Loss and Power” ではこの罠を避けるように意識したんだ。ボーカル・メロディと歌詞は常に最優先だったよ。それが、よりメロディ重視のアルバムだと感じる理由の一つかもしれないね。

Q7: The band’s second album, “Liberation,” is an album about freedom and liberation, and it is an album that should be listened to in these times of war and fascism/right wings. So, what is the theme of this album?

【JOSH】: Thank you so much for that; yes, part of that album is indeed a statement about the inhumanity of war in general, and more specifically about the invasion and attempted cultural destruction of Tibet by China in the mid 20th Century. That is a heartbreaking example not only of territorial conquest but of the subjugation of basic human rights and decency. You are correct; this struggle is ongoing; it’s just part of being human. It is always dangerous, and often violent, when one faction or another tries to force their worldview or religion on another. It is the worst impulse humanity has to offer. “Waves of Loss and Power” addresses some of these ideas in Perpetual Child Part II; if we can’t find a way to coexist with each other, sadly I believe we will all cease to exist. Generally speaking, the new album is about the great heights of creativity and hopefulness and personal power we all feel at times in life, and the contrast with the sadness and grief of loss we all inevitably have to face in many different ways; personal loss, cultural loss, loss of innocence, etc…there are moments of optimism and moments of cynicism; these coexist within us constantly, and that inner battle expresses itself in the actions we take outwardly every day.

Q7: お話にあった “Liberation” では、文字通り自由と開放をテーマとしていましたが、戦争やファシズム、極右の台頭する今だからこそ聴かれるべきアルバムだと感じます。そこから、今回はどういったテーマに進化したのでしょう?

【JOSH】: このアルバムは、戦争の非人道性、特に20世紀半ばの中国によるチベットへの侵略と文化破壊について扱っている。これは、領土の征服だけでなく、基本的な人権や良識の抑圧という点でも、心を痛める例なんだよ。
君の言う通り、こうした戦争は各地で現在も続いている。ある派閥が自分たちの世界観や宗教を他の派閥に押し付けようとするのは、常に危険で、しばしば暴力的となる。それは人類が持つ最悪の衝動なのだよ。
“Waves of Loss and Power” では、特に “Perpetual Child Part II” でこうしたアイデアのいくつかを取り上げている。もし僕たちが互いに共存する方法を見つけることができなければ、悲しいことに、人類は消滅してしまうだろうと思う。
一般的に言えば、この新しいアルバムは、僕たちが人生の中で感じる創造性、希望、個人的な力の高さと、個人的な損失、文化的な損失、無邪気さの損失など、さまざまな形で僕たちが必然的に直面しなければならない損失の悲しみや嘆きとの対比をテーマにしているんだ。楽観主義の瞬間と皮肉主義の瞬間があってね。その両者は常に僕らの中で共存している。その内面の戦いは毎日外に向かって取る行動で表現されているんだ。

Q8: “Perpetual Child” and “To Say Goodbye” are sequels to your earlier albums, why do you choose to create continuity in your Ice Age work?

【JOSH】: Well, that’s a prog tradition, right? Rush had the “Fear” saga, etc…as we were writing for WAVES, I always had in mind the idea of continuing the stories/songs we started on the first two albums. Musically, some of the parts Jimmy came up with for what would become Perpetual Child Part II were reminiscent of the first part, and we kept that in mind as we fleshed out the song. When I started writing on the piano, it became clear my subconscious was steering me back in the direction of “To Say Goodbye,” so I went with it. On the new album, we knew we had a real opportunity to go “big” in continuing some of the musical motifs and lyrical ideas of the first two albums. I wanted to connect with fans of the first two albums, and remind them that we remember what came before, and that we feel like these concepts we touched on back in the day still apply to the continuing experience of music and life. The idea of the Perpetual Child is about reconciling yourself to the experiences and “duties” of adulthood, while being self-aware enough to realize that we never really leave those formative years behind, and that we carry everything with us through our lives, whether we admit it or not. It’s also used as a metaphor for other things in Part II, but I’ll leave that for the listener to figure out! “To Say Goodbye” is really about loss, regret, and grief. We all experience these things in many different ways – Part V is pretty specific regarding the issue it addresses.

Q8: その “Perpetual Child” や “To Say Goodbye” は以前の作品からシリーズ化している楽曲ですよね?

【JOSH】: まあ、それはプログの伝統だからね。RUSH には “Fear” サーガがあったしね。だから ”WAVES” のために作曲するとき、最初の2枚のアルバムで始めた物語や歌を続けるというアイデアを常に念頭に置いていたよ。
音楽的には、”Perpetual Child Part II” のために Jimmy が思いついたパートのいくつかは、 “Part Ⅰ” を彷彿とさせるもので、それを意識しながら曲を練り上げていった。それに、ピアノで書き始めたら、潜在意識が “To Say Goodbye” の方向へ舵を切っていることがわかったので、それに従った。
新しいアルバムでは、最初の2枚のアルバムの音楽的モチーフや歌詞のアイデアを継承し、より “ビッグ” にできるチャンスがあるとわかっていたんだ。 最初の2枚のアルバムのファンとつながり、僕たちが前の作品を覚えていること、そして当時触れたこうしたコンセプトが、音楽と人生の継続的な体験にまだ適用できると感じていることを思い出してもらいたかった。
永遠の子供というアイデアは、大人になってからの経験や “義務” に自分を納得させつつも、一方で、僕たちは自身の形成期を決して忘れることができず、認めるかどうかにかかわらず、人生を通じてすべてを持ち続けているということを自覚しているという話。 第二部では他のことの比喩としても使われているけど、それはリスナーが考えてくれることだろう。
“To Say Goodbye “は、まさに喪失、後悔、悲しみについて歌っている。 僕たちは皆、さまざまな方法でこれを経験する。パートVは、扱う問題に関してかなり具体的だ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED ICE AGE’S LIFE!!

JOSH: RUSH “Signals”, BLACK SABBATH “Volume 4”, DREAM THEATER “When Dream and Day Unite”, IRON MAIDEN “Powerslave”, SPOCK’S BEARD “The Kindness of Strangers”

HAL: RUSH “Exit Stage Left”, OZZY OSBOURNE “The Ultimate Sin”, BILLY JOEL “The Stranger”, RUSH “Moving Pictures”, METALLICA “Ride The Lightning”

DOUG: LED ZEPPELIN “Led Zeppelin I”, RUSH “Permanent Waves”, KING’S X “Dogman”, BLACK SABBATH “Heaven and Hell”, Chris Cornell “Euphoria Morning”

MESSAGE FOR JAPAN

HAL: As always thank you all so very much for all of your support and encouraging, kind words throughout our time away. We would love to say thank you by performing live for you some time. Maybe that will become a reality in the very near future. Until then … Thank you !!!

JOSH: We know that Japanese music fans in general have a long history and tradition of love for metal and progressive music; we’re so grateful for our audience there, and we hope you enjoy “Waves of Loss and Power!”

DOUG: We are so honored and excited to be connecting with fans of Ice Age from Japan.

HAL:僕たちが離れている間もいつも、応援してくれたり、励ましや優しい言葉をかけてくれたり、本当にありがとう。いつかみんなのためにライブをすることで、感謝の気持ちを伝えたいと思っているよ。近い将来、それが現実になるかもしれないね。それまでは… ありがとう!!

JOSH: 日本の音楽ファンには、メタルやプログレッシブ・ミュージックを愛する長い歴史と伝統があることを、僕たちは知っているよ。”Waves of Loss and Power” を楽しんでもらえたらと思う。

DOUG:日本の ICE AGE ファンの方々とつながることができ、とても光栄に思うし、興奮しているよ。

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COVER STORY 【MR. BIG : THE BIG FINISH】INTERVIEW WITH NICK D’VIRGILIO !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK D’VIRGILIO OF MR. BIG !!

“I Could Never Replace Pat. He Had a Unique Sound And Feel And The Band Really Gelled Together In a Great Way. He Was a Huge Part Of The Mr Big Sound. All I Can Try To Do Is Play To The Best Of My Ability And Pay Tribute To Pat.”

THE BIG FINISH

パット・トーピーが私たちの前からいなくなって、どれくらいの月日が過ぎたでしょう。アイスクリームとハンバーガーを愛し、アメリカの学園モノに出て来そうな爽やかな笑顔でブロンドをなびかせ、年齢をちょっぴり詐称した歌って叩ける MR.BIG のドラマーはあのころ、文字通りみんなのアイドルでした。
ただし、ポール・ギルバート、ビリー・シーンという当代きっての弦楽隊のおかげで霞んでしまってはいましたが、パット・トーピーは顔が良いだけでなく、相当の実力者でバンドの要。”Take Cover” や “Temperamental”, “Undertow” のユニークなリズム・パターンに巧みなゴーストノート、ボンゾを思わせる骨太でタメ気味のドラミングはやっぱりスペシャルで、”Yesterday” を歌いながらソロをとるパットの姿がみんな大好きだったのです。
そして、どこか飄々として浮世離れしたポール、やんちゃなエリック、職人肌で真面目なビリーをつないでいたのもやはりパットだったのでしょう。特に、ビリーとエリックが一時、相当険悪な仲であったことはもう誰もが知る事実ですから。
結局、私たちはパットを失って再度、MR.BIG は “あの4人” でなければならないと痛感させられました。1度目はポールがバンドを去った時。FREE の名曲をその名に冠するバンドです。リッチー・コッツェンでも、むしろポールよりリッチーの方が上手くいってもおかしくはなかったのです。しかし、実際はポールの不思議なメロディ・センスやメカニカルなギターを失ったバンドは一度瓦解しました。
今、THE WINERY DOGS が生き生きとしているのは、THE WHO や FREE の21世紀バージョンを全力で追求しているから。MR.BIG の建前はたしかにほぼ同じでしたが、実のところ彼らはもっと甘いメロディやスター性、派手なテクニックを売りにしていました。その “アンバランス” が実は MR.BIG のキモで魅力だったのです。リッチーと作った ”Get Over It” は玄人好みの素晴らしいアルバムでしたが、MR.BIG はそもそも玄人好みのバンドであるべきではなかったのです。
だってそうでしょう?90年代、私を含めてどれだけ多くのキッズが彼らに憧れて楽器を始めたことでしょう?バンドを始めたことでしょう?アイバニーズのFホールやヤマハのライトグリーンがそこかしこに溢れていたのですから。今、あれだけ長いソロタイムを設けられるバンドがどれだけいるでしょう? “Raw Like Sushi” シリーズのソロタイムをみんなが食い入るように分析していたのですから。MR.BIG はあのころ日本で、楽器をより純粋で真剣な何かへと変えていきました。それは彼らがとことんキャッチーで、ある種のアイドルで、全員がスーパーなテクニカル・スターだったからできたこと。
そんな日本におけるハードロックの父、MR.BIG にも遂に終焉の時が訪れます。エリックは最近、こんな話をしていました。
「BON JOVI がこの年まで続けるとわかってたら “Livin’ On A Prayer” をあんな高くは歌わなかったと言ってた。僕もそう。南米のバンドとやるときに “Lucky This Time” をやりたいと言われたけど無理だった。”Green-Tinted” の高音でさえキツイんだ」
あのベビーフェイスで鳴らしたエリックももう62歳。ポールは56歳。ビリーにいたっては69歳。もちろん情熱は年齢を凌駕しますが、それでも人間に永遠はありません。
それでも、パットが亡くなってから数年後、エリックはこう話していました。
「MR.BIG をまたやりたいよ。あの音楽が大好きだし、バンドを愛してるから。ビリー、ポール、そしてパットの魂とまたステージに上がりたいね」
パットの座右の銘は、”Never Give Up” でした。病に倒れたあとも、パットは常にバンドと帯同し、諦めず、不屈の精神で MR.BIG の音楽と絆を守り続けてきました。だからこそ、やはり幕を下すべき時なのです。お恥ずかしい話ですが、少なくとも私はあのころ、4人の絆と友情を純粋に信じていました。でも、それもあながち間違いではなかったのかもしれませんね。エリック、ポール、ビリー、そしてパットの魂は今回の “The Big Finish” ワールドツアーを最後にやはり、バンドを終わらせるつもりのようです。とても、とても残念で寂しいですが、それはきっと正しい決断なのでしょう。
最後のツアーは、MR.BIG のアンバランスが最高のバランスを発揮した “Lean Into It” が中心となります。マキタのドリルも、”Alive and Kickin” の楽しいハーモニクスも、”Green-Tinted” のメロディックなタッピングも、”Road to Ruin” のビッグ・スイープも、もしかしたらこれが聴き納めとなるかもしれません。しかし何より、多くのファンに別れを告げるため、物語をしっかりと終わらせるため、そしてパットに対する美しきトリビュートとしても、非常に重要なツアーとなるはずです。
ドラム・ストゥールには、ニック・ディヴァージリオが座ります。現在の英国を代表するプログレッシブ・ロック・バンド BIG BIG TRAIN のメンバーで、SPOCK’S BEARD, GENESIS, FROST, FATES WARNING など様々な大御所バンドで腕を振るって来たプログレッシブの巨人。ドラムの腕はもはや疑うまでもありませんが、ニックはとにかく歌が上手い。MR.BIG がボーカル・ハーモニーを何より大事にしてきたこと、ボーカル・ハーモニーで成功を収めたことはご承知のとおり。インタビューにもあるように、実は VAN HALEN や MR.BIG を愛し、その “歌” で選ばれたニックなら、きっと素晴らしい花道を作ってくれるはずです。
「僕は決してパットの代わりにはなれないよ。彼はユニークなサウンドとフィーリングを持っていて、バンドは本当に素晴らしい形で融合していたんだから。彼は MR.BIG サウンドの大きな部分を担っていたんだ。僕ができることは、自分の能力を最大限に発揮して、パットに敬意を表することだ。でも、僕はプロフェッショナルであることを誇りに思っているし、MR.BIG の曲を本物のロック・サウンドにするために必要なことは何でもするつもりだよ」NDV ことニック・ディヴァージリオの弊誌独占インタビュー。どうぞ!!

INTERVIEW WITH NICK D’VIRGILIO

Q1: First of all, how was your participation in Mr. BIG decided? And how do you feel now?

【NICK】: Here in the US I work at Sweetwater. The biggest online music gear retailer in the country. We have very nice recording studios and hold all kinds of workshops and masterclasses, along with normal recording sessions for all kinds of artists. It is a pretty unique place. Paul has been to Sweetwater a number of times and I have played with him in the workshops. Paul also played on my solo record “INVISIBLE” that I released in the summer of 2020. Through all of those things Paul sent me an email on day last year, I think in September – I’ll have to go find the original email, asking if I would be interested in the tour. I of course said yes immediately!
From there Paul sent me some demo tracks to play along to. With the aim of see how my voice would fit. I think we both knew that we made a nice connection as far as the drumming was concerned but Pat Torpey was such a great singer as well and Mr Big’s vocals in their live shows are a big deal. Paul and the boys needed to know that I could sing those parts. So I set out and recorded myself on the songs that Paul sent. They were a few tunes from the “Lean Into It” record. In the end, they liked what I did and I got the gig! I am so very happy!!!

Q1: まず、今回の MR.BIG への参加はどのようにして決まったのでしょう? 今はどんな気持ちでいますか?

【NICK】: ここアメリカでは、僕は Sweetwater で仕事をしているんだ。国内最大のオンライン音楽機器販売会社だよ。僕たちはとても素晴らしいレコーディング・スタジオを持っていて、あらゆるアーティストのための通常のレコーディング・セッションに加えて、ワークショップやマスタークラスも開催しているんだ。かなりユニークな場所なんだよ。
ポールは Sweetwater に何度も来ていて、ワークショップで一緒に演奏したこともあるんだよね。それに、2020年の夏にリリースした僕のソロ・レコード “INVISIBLE” でもポールは演奏してくれたんだ。そういったことを経て、ポールは昨年のある日、確か9月だったと思うのだけど、元のメールを探しに行かないといけないね、とにかく、MR.BIG のツアーに興味があるかどうかというメールを送ってきたんだよ。もちろん、すぐにイエスと答えたよ!
それから、ポールは僕に、練習用のデモ・トラックをいくつか送ってきてくれた。僕の声がどのようにフィットするかを確認するためにね。そもそもドラムに関しては、僕たちはいい関係を築けると思っていたんだけど、パット・トーピーは素晴らしいシンガーだったし、MR.BIG のライブでのボーカルはとても重要なんだ。だから、ポールたちは、僕がパットのパートを歌えるということを知る必要があったんだ。
そこで、ポールから送られてきた曲を自分でレコーディングしてみたんだよ。”Lean Into It” のアルバムに収録されている数曲だった。最終的に、彼らは僕の歌や演奏を気に入ってくれて、ライブに加わることができた。とてもうれしいよ!!

Q2: Considering your “Progressive” background, it doesn’t seem like your connection with Mr. Big is very deep. Did you actually listen to Mr. Big’s music before you decided to join?

【NICK】: Sure! I listened to Mr Big when their records were brand new. I was a fan of the band, Pat’s drumming, and got to meet him once back in the 1990’s. I think it was at a clinic or the NAMM show. I forget exactly but I definitely learned as much as I could from his playing. I’ve had a long career in progressive music but I am a rocker at heart. It all goes together in my opinion.

Q2: あなたの “プログレッシブな” バックグラウンドを考えると、MR.BIG への加入は驚きだったのですが、実際、この話が来る前に MR.BIG の音楽は聴いていましたか?

【NICK】: もちろん!クラシックな MR.BIG のレコードがリリースされていたころは聴いていたよ。バンドとパットのドラムのファンで、1990年代に一度だけ彼に会うことができたんだ。クリニックか NAMM ショーだったと思うけど。
正確には忘れたけど、彼の演奏からできる限り多くのことを学んだのは間違いないね。たしかに僕はプログレッシブ・ミュージックで長いキャリアを積んできたけど、根っからのロッカーでもあるんだよ。というか、僕の中では、すべてが一緒なんだ。

Q3: Of course, Mr. Big had Pat Torpey sitting on the drum set all the time, and the members and fans really loved him. How do you feel about taking Pat’s place musically and as a human being?

【NICK】: I could never replace Pat. He had a unique sound and feel and the band really gelled together in a great way. He was a huge part of the Mr Big sound. All I can try to do is play to the best of my ability and pay tribute to Pat. I pride myself on being a pro and will do what I have to make the songs sound authentic and rock! I want the fans to have a great time at the shows.

Q3: MR.BIG のドラムセットをずっと守って来たパットの後任をつとめることは、簡単ではないですよね?

【NICK】: 僕は決してパットの代わりにはなれないよ。彼はユニークなサウンドとフィーリングを持っていて、バンドは本当に素晴らしい形で融合していたんだから。彼は MR.BIG サウンドの大きな部分を担っていたんだ。
僕ができることは、自分の能力を最大限に発揮して、パットに敬意を表することだ。でも、僕はプロフェッショナルであることを誇りに思っているし、MR.BIG の曲を本物のロック・サウンドにするために必要なことは何でもするつもりだよ。ファンの皆さんには、ライブで素晴らしい時間を過ごしてもらいたいと思っているからね。

Q4: Many fans thought that Mike Portnoy would be chosen because of his relationship with Billy and Paul. I have a feeling you were chosen not only because of your drumming technique, but also because of your singing ability, as we listen to Spock’s Beard and it’s immediately obvious that you are a great vocalist! How about that?

【NICK】: I love to sing as much as I love to drum. Having the ability to do both has proven a good thing for my music career. It has helped me get many gigs including this one.

Q4: ポールやビリーとのつながりから、マイク・ポートノイが選ばれると思っていたファンも多いでしょう。ただ、SPOCK’S BEARD でのあなたの歌唱を聴けば、適任はあなただと皆が認めるはずです。

【NICK】: 僕はドラムと同じくらい歌うことが大好きだからね。その両方ができることは、僕の音楽キャリアにとって良いことだと証明されている。今回のライブも含め、多くのライブや仕事を得るのに役立っているよ。

Q5: You have played with many different virtuosos and you yourself play many different instruments. How do you feel about Paul and Billy’s technique?

【NICK】: Oh my gosh, Paul and Billy are two of the best ever and I a honored that I will share the stage with them. I will be honest that it makes me feel good inside knowing that I have what it takes to play with them. I’ve worked hard to be the best musician I can possibly be.

Q5: BIG BIG TRAIN をはじめ、様々なヴァーチュオーゾと共演し、ご自身もマルチプレイヤーであるあなたの目から見て、ポールとビリーのテクニックはどういったものですか?

【NICK】: オーマイゴッド!ポールとビリーは史上最高の2人で、彼らとステージを共有できることを本当に光栄に思っている。正直に言うと、彼らと一緒に演奏するために必要なものが僕の中にあると思うと、すごく心が晴れやかになるんだ。僕は最高のミュージシャンになるために努力してきたからね。報われた気分だよ!

Q6: Mr. Big has a huge discography, but what albums do you particularly like and what songs would you like to play live?

【NICK】: All of the record have great songs and It will be cool to the play the songs from “Lean Into It”. That is what I know so far about what we will be playing. What I’ve done while I am waiting to hear what the rest of the set will consist of is to go back and listen to their live records and watch a bunch of YouTube videos. Songs like “Colorado Bulldog”, “Addicted To That Rush”, “Wild World”, “Take Cover”, and others seem to be very popular with the fans and songs the boys have played a lot over the years so I have been learning those as well just in case. “Colorado Bulldog’ is a beast of a song! Even if we don’t play all of those songs it is still good for me to immerse myself into their music.

Q6: MR.BIG にはかなりの数のアルバムや楽曲がありますが、特に気に入っているものや、ライブでプレイしたいものを教えていただけますか?

【NICK】: どのレコードも素晴らしい曲ばかりだけど、”Lean Into It” の曲を演奏するのはクールだろうね。これが、今のところ分かっている演奏予定でもある。残りのセット内容を聞いている間に、彼らのライブ盤を聴き直したり、YouTube のビデオをたくさん見たりしているところさ。
“Colorado Bulldog”, “Addicted To That Rush”, “Wild World”, “Take Cover” といった曲はファンにとても人気があるようだし、彼らが長年にわたってたくさん演奏してきた曲なので、いつでもできるようにそれらも覚えているんだ。”Colorado Bulldog” は野獣のような曲だよね!これらの曲は実際にすべてを演奏しないかもしれないけど、彼らの音楽に浸ることができるのはライブに向けていいことだと思うんだ。

Q7: To a prog-maniac like me, you are literally GOD, but there are still some Japanese hard rock fans who don’t know you. To introduce yourself to these people, please tell us some of your works that you would like them to hear.

【NICK】: Ha! Well…thank you! I have been blessed to do many things over my career. I would point people who have never heard of me to my current band BIG BIG TRAIN. I have proudly been in BBT since 2007 and we’ve made a lot of records in that time. What is crazy for me this year is that I will go from the last show for Mr Big in Indonesia directly to the UK for a 3 week tour of Europe with Big Big Train. Our biggest tour of Europe to date. I am very proud of my band and I hope some Mr Big fans will check out BBT. It is a prog rock band in the style of Genesis, Yes, and others. Incredible musicians in my band as well. www.bigbigtrain.com
I would also like folks to check out my solo record “INVISIBLE”. Paul played on the song “Overcome”. I also had many other great guest artists play on the record. I am proud of that record. It was one I wanted to make for a long time and finally got the chance. www.nickdvirgilio.com

Q7: 私のようなプログ・マニアにとってあなたは文字通り神ですが、MR.BIG のファンの中にはまだ知らない人もいるかもしれません。いくつか、あなたのお気に入りの作品を紹介していただけますか?

【NICK】: ハッ! そうか…まあ、ありがとう(笑)。僕は自分のキャリアが、いろいろなことに恵まれてきたと思っていてね。僕のことを知らない人には、現在のバンド BIG BIG TRAIN をまず紹介したいね。
僕は2007年から BBT に所属していて、その間にたくさんのレコードを作ってきたことを誇りに思っているからね。今年、僕にとってクレイジーなのは、インドネシアでの MR.BIG の最後のショーから直接イギリスに行き、BIG BIG TRAIN と一緒に3週間のヨーロッパ・ツアーを行うこと(笑)。これまでで最大のヨーロッパ・ツアーなんだ。僕は自分のバンドをとても誇りに思っているし、MR. BIG のファンの人にも BBT をチェックしてもらえたらうれしいね。GENESIS や YES スタイルのプログ・バンドだ。 僕のバンドにも信じられないようなミュージシャンがいるんだよ。http://www.bigbigtrain.com
あとは、僕のソロ・アルバム “INVISIBLE” もぜひチェックしてほしい。ポールは “Overcome” という曲で演奏しているよ。他にも多くの素晴らしいゲスト・アーティストに参加してもらったんだ。僕はこのレコードを誇りに思っているよ。長い間作りたかったもので、ようやくそのチャンスが巡ってきたからね。http://www.nickdvirgilio.com

Q8: Finally, Japan has a special connection with Mr. Big. They’ve been ridiculed abroad for things like Big in Japan, but we really love them! Do you think this is really Mr. Big’s “Finish”?

【NICK】: All I know is where I am going at the moment. Not the best answer I know,haha.

Q8: 最後に、これは本当に MR.BIG の “Finish” なんでしょうか?

【NICK】: うーん…僕が知っているのは、今、このバンドがどこに行こうとしているかということだけなんだ。ベストな答えではないことは知っているけど……(笑)。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED S LIFE!!

Genesis “Selling England By The Pound”

Led Zeppelin “IV”

Tony Williams Lifetime “Emergency!”

Bill Bruford “One Of A Kind”

Van Halen “1984”

Just about anything from Motown. I love Funk, Soul, and old school R&B music. It’s made a huge difference in the way I play drums. Especially when I rock.

MESSAGE FOR JAPAN

I cannot wait to get back to Japan! I’ve only has the pleasure of going one time with a power pop group called “The Rubinoos”. We played 4 shows in September of 2002. 21 years ago! It was such an incredible experience. Such amazing history and culture. It will be awesome to experience it again!

日本に戻るのが待ち遠しいよ!僕は THE RUBINOOS というパワー・ポップ・グループと一緒に一度だけ日本に行ったことがあるんだ。2002年の9月に4回公演したよ。21年前だって?!信じられないような経験だった。素晴らしい歴史と文化。それをまた体験できるなんて、最高でしょう!

NICK D’VIRGILIO

NICK D’VIRGILIO

MR.BIG

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【THE WORLD IS QUIET HERE : ZON】 VIDEO GAME IS PROG METAL…


COVER STORY : THE WORLD IS QUIET HERE “ZON”

“The Legend of Zelda: Majora’s Mask Is My Favourite Game. I Loved Ocarina of Time, but Majora’s Mask Is On a Different Level”

ZON

プログレッシブ・メタルとは、実験的でしかし感情的で、技術的にも音楽的にも他の人がやらないようなことをやってのけたうえに、そのすべてをうまくまとめるという難攻不落の使命を帯びたジャンルです。ウィスコンシンの新鋭 THE WORLD IS QUIET HERE のニューアルバム “Zon” はその難題をクリアした稀有なレコードでしょう。彼らのプログレッシブ・メタルは実に冒険的で、エモーショナルで、しかしその創造的な自由の中で、エクストリーム・ミュージックのファンなら誰もが魅了されるであろうメタリックな旅へと誘います。
ドラマーの David Lamb はそもそもジャズ畑のプレイヤーですが、驚くべきことにこのバンドは他にも “学位” を持つプレイヤーが二人もいます。
「ギタリストの Isaac Stolzer と僕 (Tyler Dworak) は音楽専攻で、二人ともレコーディング・プログラムを修了している。David も少しだけど、彼はソフトウェアのプログラミングか、コンピュータの何かを勉強したと思うんだ。彼はドラムが得意で、Izaac はジャズ・アンサンブルでギターを弾いていたね。それがきっかけで、ふたりは本当につながったんだ。僕らの何人かはクラシックのトレーニングを経て、音楽の学位を持っているんだよ」
新ボーカル Lou の歌唱は、この分野では非常に独特で、際立っていて、例えるなら SikTh の Mikee のような異彩を放っています。
「Lou が素晴らしいのは、自分が何をやっているのか理解していること。彼の音域はとても広いから、シンガーではない僕らがハーモニーを担当する必要もなかったね。歌の分野でもっと経験豊富な人がいることは、僕たちにとって本当に必要なことだったし、Lou がそれに応えてくれることに本当に感謝しているよ。それに、面白いことに Lou は車の中で全部録音したんだ。彼は基本的に車の中だけで自分を孤立させることができる。だから、僕の知る限り、Lou の音はすべて彼の車の中で録られたものだ」

同時に、”Zon” には元 PAINTED IN EXILE のギタリスト Ivan Chopik、元 NATIVE CONSTRUCT のギタリスト Kee Poh Hock、そしてOTHERS BY NO ONE のシンガー Max Mobarry といったそうそうたるメンバーがゲスト参加していて、界隈における彼らの高まりつつある名声を証明してます。ただ、特別興味深いことに、TWIQH の面々は、プログレッシブ・メタルが要求する高いハードルを越えるため、ストーリーや音楽においてビデオゲームをジャンプの原動力としています。
もちろん、メタル、特にプログレッシブ・メタルの世界では、そのマニアックな音楽性や世界観と共鳴するかのようにゲームやアニメの “オタク” が多いのですが、彼らの “ナー度” はその中でも群を抜いています。ベーシストで中心メンバーの Tyler Dworak が “この世界” にのめり込んだのは、あるゲームがきっかけでした。
「漠然とした記憶だけど、セガの “アラジン” が最初に買ったゲームかな。実際に覚えている最初のゲームは “ドンキーコング64” だね。クリスマスに買ってもらったんだけど、僕の小さな脳みそが吹き飛ぶくらいの衝撃。あのゲームの巨大さは現実離れしていて、ビーバー (ノーティ) を蹴って探検するのが楽しい世界だった。今でも持っていて、ときどき引っ張り出して遊んでいるよ」
最近はどんなゲームにハマっているのでしょうか?
「最近はアクション・アドベンチャーや RPG が好きだね。時間がかかるゲームや、ストーリーのあるゲーム。音楽と一緒だよ。僕は “ゼルダの伝説” シリーズで育ち、今でもほぼ全作品が大好きで、ずっと夢中になっている。ちょうど今は、ゼルダ・スタイルのゲームのルネッサンスのようなもので、とても素晴らしい。新しい “God of War” も最高だよね。”エルデン・リング” は、プレイヤーにとっては時には悲惨な結果になることもあったけど、オープンワールドのゲームの勝利だよ。
最近は JRPG にハマっているんだけど、ちょっと変わったゲームも好きだよ。”マザー” のゲーム、特に “マザー3” が大好きでね。17年前のゲームとは思えないほど、ストーリーの構成が斬新なんだ。影響されるよね。ここ数年は “ペルソナ5″ に夢中で、あのゲームは僕らのバンド以上にスタイルがあるよ。あと、僕と妻が冗談のように話しているのが、”ゼノブレイド・クロニクル” シリーズ。あのゲームはバカバカしくて、脚本も声優もかなりひどいものだけど、それも魅力のひとつだし、大好きなんだ (笑)」

当然、TWIQH のアルバムにも際立ったストーリーが存在します。
「僕らの音楽はすべて1つの連続した物語だから、このアルバムはファースト・アルバムの直後が舞台なんだ。前作 “Prologue” のリリースからもう5年も経っているんだ。歌詞を読んで内容を推測することなく、インパクトのある形で物語を伝える方法を模索しているよ。もっと決定的な表現方法を見つけたいんだ。
ファースト・アルバムの主人公は、1曲目から推測できるように、”Some Call Me Cynical” という曲だけど、自分をとても卑下していて、人生観が良くないんだ。彼は内向きのスパイラルに陥り、アパートの屋上から飛び降りることになり、”Prologue” の最後で死んでしまうん。僕たちは、人が死ぬとどうなるのかを知りたかった。
何年か前に Eithan のアイデアで、死後の世界は天空の宇宙いうことを思いついてね。死後の世界は “Zon” と呼ばれる惑星から始まり、そこで自分の嫌なところや人生で後悔したことを自分なりに受け止めて、折り合いをつけていく。
だからこのアルバムの物語は、人生の終わりにひどい人間だった主人公が、そのことに気づき、どうすれば変われたか、どうすればもっと良くなれたかをゆっくりと受け入れていくというものなんだ。自分を償うことができれば、その先にあるものを手に入れることができる。彼は今は煉獄から抜け出せないでいるようなものだね。
SF的な要素は少なく、どちらかといえば少しファンタジーに傾いているね。宇宙船やディストピアなどは出てこないよ。手遅れかもしれないのに、より良い人間になろうとする自己反省についてのとても個人的な物語なんだ」
ゲームのようにアルバムのストーリーに浸って欲しいとバンドは望んでいます。
「このアルバムは濃密で、たくさんのことが起こっているんだけど、みんなに歌詞に参加してほしいんだ。このアルバムを聴いて、絶対的なヘヴィネスを追求するのではなく、今まで聴いたことのないような、内省的で奇妙な旅を楽しんでもらいたいんだ。アルバムで語られていることはたくさんあって、ちょっと行間を読むと大きなテーマがあるんだ。そういうことを考えてもらいたいね。
さっきも言ったけど、このアルバムは自分を見つめ直すための大きな作品だし、個人的にもそれはより良い人間になるためにとても大切なことだと思う。だから、その旅を始めるのは大変なことだけど、これをその第一歩にしてほしい。だから、このアルバムの内容を楽しんで、歌詞を読んで、僕らが何を言おうとしているのか、よりよく理解してほしいな」

ゲームからは、ストーリーのみならず、音楽的なインスピレーションも受けているようです。
「”Zon” のベースラインは “ペルソナ3” の勝利のテーマにインスパイアされたものなんだ。偶然、初代スーパーマリオブラザーズの “バウアーズキャッスル” を超彷彿とさせるベースラインを書いたんだけど、これは結局使わなかったね。
アルバム中盤にある “Heliacal Vessels II” のパートがお気に入りなんだ。この曲には、他のどのパートとも違う、Lou が伝道師に変わる部分があるんだ。主人公が出会うキャラクターはほとんど預言者のようなもので、彼は信徒に向かって演説している。ジャズの要素がたくさん入っていて、その部分はとても楽しくて、13分もある超ヘビーな曲の真ん中にあるのだから、おそらく最も奇妙である意味ダサいパートだと思う。このユーモアは多くの人に気に入ってもらえたと思うよ。
最近、僕はシンセサイザーを使った音楽をたくさん作っているんだけど、このゲームがミームになっているのと同じくらい、”Undertale” のサウンドトラックにはインスパイアされたな」
最も長時間プレイしたゲームは何でしょう?
「いくつか思い浮かぶな。生涯では、間違いなくポケモンシリーズがナンバーワンだね。フランチャイズ全体で、何千時間もプレイしているだろう。赤・青・黄以降のゲームは、駄作も含めてすべて何度もプレイしている。見たことのないポケモンを見ると、6歳の頃、レベル100のカメックスだけが大事だったことを思い出すんだ。
“シングルゲーム” ということであれば、パンデミックが始まった頃に夢中になった “ペルソナ5″ は、妻とふたりで合わせて300時間以上やり込んでいる。また、”大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL” と “The Binding of Isaac (アイザックの伝説)” はそれぞれ400時間以上やっているね。どちらもとても上手になるにはそれでも時間が足りないけど、電源を入れて物事を深く考えないようにするには最高のゲームなんだ」

“Zon” の美しいアートワークのように、今までプレイした中で最も美しいゲームは何ですか?
「”大神” だね。最近でこそ人気が出てきたけど、2006年に発売された当時、あのゲームは大失敗という認識だった。当時は新しいゲーム機が出始めたばかりで、PS2のゲームには誰も見向きもしなかったのだけど、このゲームは隅から隅まで本当に素晴らしい出来だった。筆で描いたような独特のグラフィックと、セル画のような陰影が、独特の世界観を作り出していたね。日本の民話に根ざしたストーリー、驚くほど面白く心に響く脚本、ゲーム界で最も素晴らしいサウンドトラック(”ワンダと巨像” に次ぐもの…かも)と相まって、ぼくがこれまで経験した中で最も充実したゲーム体験のひとつとなっているよ。いつもリプレイしているけど、その魅力は決して消えることはないね」
TWIQH の音楽のように、今までで一番難解なゲームは何ですか?
「おそらく “エルデン・リング” だろうね。まあ、他のフロムゲーを全くプレイしていない僕が言うのだから、もう信用は失墜しているけど。バンドのメンバーと一緒にプレイするために、”エルデン・リング” を発売と同時に手に入れたんだけど、荒削りだったね。あのゲームをプレイするのは好きだったし、驚異だと思うんだけど、フロムゲーをプレイしていない人間としてのトラウマは強烈なんだ。このゲームはわざと難しくしているのだ!そして時には自分の実力不足もあるのだ!と悟る必要があったね…でも、このゲームは好きなように遊べるから、その仕組みを学ぶにはもってこいだったよ。とはいえ、本当に難しいボスからは全部逃げていて、マレニアは倒せなかった。もう限界なんだ…」
一番良かったゲームは何でしょう?
「最近よく言われることだけど、”ゼルダの伝説 ムジュラの仮面” が一番好きなゲームだね。”時のオカリナ” も好きだけど、”ムジュラの仮面” はレベルが違うね。Nintendo 64の他のゲームのほとんどは、プレイヤーがある場所から別の場所に移動することが重要で、環境は背景に溶け込むようなものだった。しかし “ムジュラの仮面” は、じっくりと世界を探索し、そこに登場するキャラクターたちと交流することで、初めて成立するものなんだよ。
月が落ちてくる3日間で、時計塔の街が変化していく様子には、いつも驚かされる。市民たちのスケジュールが変わり、彼らとの関わり方によってすべてが違ってくる。ゲームって決してゲーム性だけじゃないんだなあと、子供のころに目から鱗だったんだ。それに加えて、超弩級のサウンドトラックとタルミナという舞台が、これ以上ないくらいにマッチしているんだよ」

そうした “良い” ゲームから学んだこともあります。
「可能な限り包括的で寛容で多様でありたいと思っている。僕は FLUMMOX というバンドの大ファンなんだ。そのバンドの僕らの親友 Max Moberry は、OTHERS BY NO ONE という別のバンドにも参加しているんだけど、彼らは…間違ったラベルを付けたくはないんだけど、そのコミュニティの一員なんだ。そして Max は僕らのアルバムにもフィーチャーされているんだ。”Moonlighter” の一番最後にね。
だから、僕たちはどんな生き方も歓迎するし、誰も排除したくはないんだ。むしろ、少数派の人たちにスポットライトを当てたい。OTHERS BY NO ONE は昨年 “Book II: Where Stories Come From” という素晴らしいアルバムを出していて、FLUMMOX は最近たくさんのライブをやっているよ。この2つのバンドとは Max のおかげでつながることができた」
トレカの収集にも余念がありません。
「”ハースストーン” は大学までずっとプレイしていたよ。物を集めるのは好きなんだけど、実際に物を買って集めるお金がなかったから、無料でゲームができるのは痒いところに手が届くというかそんな感じでね。2021年にBlizzard(Entertainment)が何かと物議を醸し、今のままでは応援できないと思い、その年の夏からプレイをやめたんだ。ちょうどその頃、同僚の多くが仕事帰りや昼休みに定期的に “マジック:ザ・ギャザリング” をプレイしていることを知り、僕も飛びついたんだ。
トレカにハマったのは、同年代のみんなと同じで、ポケモンカードが最初だよ。幼少期は絶対的なアイテムだったな。買いものに行くたびに親にカードをせがんだよ。これもみんなと同じように、実際のゲームの遊び方を知らなかったから、友達に見せびらかしたり、弟に自慢したりするためだけに、カードのお金をせびっていたんだ。それがきっかけで収集癖がついたというかね。その後、”遊戯王”、”マジック・ザ・ギャザリング” へと進んだんだ」

トレカの醍醐味とは何でしょう?
「一緒にプレイする仲間さ。コマンダー形式をプレイするので、だいたい4人組になる。確かに勝つために、できるだけ攻撃的になるゲームもあるけど、たいていの場合は、できる限り非常識なやりとりをしようと思っているんだ。テーブルで誰も見たことのないようなクレイジーなことが起こるのであれば、喜んでゲームに負けるよ。職場の Discord では、デッキのアイデアやルール、トレードなどについてみんなで話している。一緒にいて楽しいコミュニティだよ」
これから、ネットゲームやトレカ、テーブルトークRPG を始める人たちにアドバイスは?
「僕はストーリーを語るのが好きで、即興で人を笑わせるのが好きなんだ。僕がプレイを始めたのは、みんなで貢献できる方法で、お金もかからず、友達と面白い話をしたかったから。初めてプレイする人は、恥をかきたくないとか、オタクになるのが心配とか、いろいろな不安を抱えているし、それは理解できる。キャラクターを演じる “ということは、演じたことがない人” にとっては怖いことなんだよね。地元のゲームショップのイベントに行くのは、安全で歓迎される空間である限りオススメだよ。そこにいるほとんどの人は、たいてい新しい人にやり方を教えることにとても熱心で、理解を示してくれるはずさ」
音楽世界も同様に、初心者やバンドに寛容であるべきでしょう。
「人々はレコードを注文するべきだと思うし、好きなバンドから何かを受け取り続けるべきだと思う。音楽業界は今、バンドがツアーに出られなかったり、ツアーに出ても大赤字だったりと、良い状況ではないので、できる限りバンドをサポートし、クールな音楽を聴くべきだと思うよ」

参考文献: Level Up: The World Is Quiet Here’s Tyler Dworak on Video Games, Card Games, and RPGs

Interview with Tyler Dworak of The World Is Quiet Here

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【SANGUISUGABOGG : HOMICIDAL ECSTASY】


COVER STORY : SANGUISUGABOGG “HOMICIDAL ECSTASY”

“A Chuck Jones or Tex Avery approach, where we rip out entrails and we’re jumping rope with them.”

HOMICIDAL ECSTASY

Devin Swank は SANGUISUGABOGG が笑われることを気にしてはいません。オハイオ州コロンバスのフロントマン(そして時折スタンダップ・コメディアン)は、デスメタルのピエロ的な側面、道化役を強く意識しています。9月にエリザベス2世が亡くなったとき、彼はファンのお気に入りである “Dead As Shit” をステージ上で彼女に捧げ、SANGUISUGABOGG のミームを煮詰めた自虐的な Instagram アカウントを運営しています。ソーシャルメディアの誰かが、バンドの増え続けるTシャツ・デザインのストックをぼろくそに言ったときには、彼らの Encylopaedia Metallum のジャンルを “マーチ・コア” と変更。血みどろにこだわった歌詞も、怖いというより喜劇の匂いがします。
「俺はこれを面白いことだと思っている。トムとジェリーやロードランナーのチャック・ジョーンズのようなアプローチで、内臓を引きちぎって縄跳びをするんだ」

オハイオの悪名高い、境界を押し広げる、吸血デスメタルの SANGUISUGABOGG は、CANNIBAL CORPSE, MORTICIAN, GWAR, DETHKLOK といったビジュアルやステージにも拘った先達からインスピレーションを得て、90年代初頭のアクションコメディ “Sgt. Kabukiman N.Y.P.D” からカブキマン軍曹を招集し、ホラー・コメディのセンスで、妥協のない、率直で、強烈なデスメタルを作り上げています。
自称ホラー映画の狂信者で、10 歳のときに両親に引きずられて劇場でリングを見に行ってトラウマとなったSwank。トロマ映画とミュージック・ビデオでのコラボレーションは、BOGGブランドを確立することにつながりました。
「トロマと一緒に仕事をするのは本当にクールだったね。それは俺たちの夢のようなものだった。バンドを結成する前から、俺たちは皆巨大なトロマヘッドのようだった。トロマが忙しくしていなかったら、今もトロマと一緒に仕事を続けていただろう。彼らは今、”トキシック・アベンジャー” のリブートに取り組んでいるからね。エクストリーム・ミュージックとホラーの間には間違いなく境界線がほとんどなくて、両者とも視覚的にも音響的にも非常にインパクトがあり、人々に語りかけ、人々を魅了する。そうやって多くの時間を一緒に過ごして、脳が地獄にワープして戻ってくるように笑い合っているんだ」

同時に、Swank と彼のバンドメンバーは、デスメタルのテクニックにも専念しています。「俺たちは自分たちの音楽性、演奏、そしてどれだけ一生懸命に働くかをいつも真剣に考えてるんだ」
つまり、面白いバンドであることとコメディ・バンドであることの間には明確に違いがあって、SANGUISUGABOGG は後者と間違われることを望んでいないのです。”Homicidal Ecstasy” は彼らにとって2枚目のフルアルバムで、ここにはしっかりと彼らの旗が聳え立っています。ニューシングル “Face Ripped Off” には、JESUS PIECE の Aaron Heard がゲスト・ボーカルとして参加していて、その点でも彼らの活動がシーンに認められつつあると伝わるでしょう。
「俺たちには証明したいことがあったんだ。今回はもっと真剣に取り組んだし、その上、何かをまとめるための時間があったから、より多くの心を込めたんだ」
SANGUISUGABOGG は、FROZEN SOUL, UNDEATH, NECROT, TOMB MOLD, SKELTAL REMAINS, GATECREEPER といったレーベルメイトの北米デスメタル・バンドと共に、”NWOOSDM”、オールドスクール・デスメタルの旗手としてリリースを独占しています。
そして Swank は、OSDMを新しい世代の耳へと届けるムーブメントの一部であることを誇りに思っているのです。ちなみに、FROZEN SOUL と SANGUISUGABOGG は過去に、難読バンドロゴ対決で戦ったライバルでもあります。
「若い人たちに受け入れられているこのスタイルのデスメタルの先駆者になるために、全員が同時に成功を収めたのはクールなことだ。FROZEN SOUL と UNDEATH のメンバーは親友のようなものだ。みんなお互いをサポートし合っているんだ。UNDEATH とは2回ツアーをやったし、FROZEN SOUL と自分たちが同じレーベルになったことで、これから一緒にいろいろなことをやっていくことになると思う」

SANGUISUGABOGG が最初にシーンに登場したのは、2019年の “Pornographic Seizures” で、1日で録音、トラッキング、ミックスされたプリミティブ・デスメタルの電撃的作品でした。Bandcamp のジャンル・タグを調べれば誰もが知っているように、そうした何処の馬の骨ともわからない地下作品は毎週何十枚もリリースされています。しかし、”Pornographic Seizures” は、そうした有象無象の頂点に立つことができたのです。
「アンダーグラウンド・サーキットで話題になるだろうと思っていた。もちろん、大きなメディアに、この作品が取り上げられるとは思っていなかった。でも、頭の片隅には、これが話題になるようなクールなものになるかもしれないし、ライヴでもクールなものになるかもしれないと思っていたんだ。EP がリリースされる前にガレージ・ライブをやったんだけど、リリースされた瞬間に NPR に取り上げられたんだ。子供の頃に尊敬していたミュージシャンたちが、この曲について話しているんだ。これは想像していたよりもずっと大きなことだと思ったね。最初からとても感謝していたし、謙虚な気持ちでいたよ」
“Pornographic Seizures” がネットで話題になった直後、SANGUISUGABOGG はツアーを開始します。すると最初のツアーで、メタル界の重鎮 Century Media の社員が、レーベルのA&R担当者にEPを渡すと連絡してきたのです。しかし、少なくとも最初はうまくいきませんでした。
「彼らのA&Rからメールが来て、本当に悪口は言わなかったけど、ちょっと馬鹿にしていて、最初は興味がなかったんだ。それで、無知でふざけた感じで、EP のレコードを出すときに、Century Media の悪口を書いたステッカーを貼り付けたんだ。彼らがメールで言っていたことを引用して、”From The Posers That Brought You Deez Nuts” (君にタマキンをもたらすポーザーより) と書いたんだ。それを売ったら、みんなが大喜びして、いつの間にか彼らのA&Rがそれを知って、”お前たちのことを誤解していた” って言ってきたんだよ」

しかし、Century Media とのレコード契約のインクが乾く前に、バンドには嵐雲が立ちこめはじめます。まず、COVID-19 の大流行でライブハウスが閉鎖され、予定されていた BLACK DAHLIA MURDER, CATTLE DECAPITATION, KNOCKED LOOSE とのツアーが頓挫。その後すぐに、結成当初のギタリスト Cameron Boggs とバンドの他のメンバーとの間に距離ができ始めます。Boggs は Century Media からのデビュー作 “Tortured Whole” には参加しましたが、それが SANGUISUGABOGG への事実上の最後の貢献となりました。
「彼は約7ヶ月間、俺らと一緒に練習することはなかった。パンデミックの後に戻って最初のツアーをしようとした時に、正式に脱退するとメールを送ってきたんだ。その時、彼は額にアルバム名のタトゥーを入れたんだけど、そこからはもう会わなくなったよ」
バンドの創設者 Boggs は高校時代には友達がゼロで、クラスでゲイの子ということで激しくいじめられていました。学校生活は悲惨でしたが、彼と Davison は SUICIDE SILENCE から BLOOD BROTHERS までを楽しみ、最終的には TRAPPED UNDER ICE や COLD WORLD のようなハードコア・バンドまで、その足跡を辿っていきました。Boggs は小学4年生からギターを弾いていて、高校を卒業するとハードコアの中に受け入れるコミュニティーを見つけ、その後、ユースクルーハードコア、スクリーモ、テクデス、ブラックメタルなど、ヘヴィなスペクトルのあらゆるバンドでプレイするようになりました。

彼らが始めたベッドルームのブラックメタル・プロジェクトは、最終的にデスメタル・バンドである SANGUISUGABOGG へと変化していきました。当初は Boggs と Davidson の2人組で活動する予定でしたが、ボーカルが必要だと考えた Boggs が Facebook で Swank と出会い、1週間後にデモを録音しに来るように依頼。すぐに意気投合し、最初のセッションの帰りの車の中でミックスを聴きながら、曲が終わるたびにお互いに顔を見合わせ、「ヘヘヘ、シックだね」と、さながら “Beavis and Butt-Head” のように笑いあっていたのです。
Boggs の短期間のブラックメタル・バンドでのステージネームはSanguisuga(ラテン語で吸血鬼の意味)でしたが、”bog” がイギリスのスラングで “トイレ” を意味することを知り、このプロジェクトでこの2つを組み合わせることにしました。つまり、吸血トイレ。最初から彼らのジョークは冴え渡っていたのです。
Boggs の脱退は短期的には事態を複雑にしましたが、新しく改良された SANGUISUGABOGG への道を開くことにもなりました。ベースを担当するために最近加入した Ced Davis が、ギターにスライド。ベースは MUTILATRED の Drew Arnold が担当することに。そして、バンドの共同創設者であり、”Tortured Whole” のほとんどの曲の作詞者でもあるドラマーの Cody Davidson が存在感を増して、ラインナップはさらに充実しました。Swank によると、SANGUISUGABOGG は2022年に125回という異常な数のライブを行ったそう。それは、大胆な新しい構成から始まりました。
「俺たちはただ、何かバカなことをやろうぜって感じだったんだ。俺の好きなバンドのひとつにAGORAPHOBIC NOSEBLEED がいるんだけど、彼らにはベースがいなかったんだ。彼らはギターをベース・キャブに通すということをやっていた。PIG DESTROYER もそうしていたな。だから、”2人のギタリストを使って、俺らが聴いているデスメタル・バンドが得意とするような泥臭いトーンでやってみよう” ということになったんだ。そして、(2022年初頭の)NILE と INCANTATION のツアーで試してみることにして、そこからは、これにこだわろうということになったんだ」

“Homicidal Ecstasy” でバンドが捉えた腹の底に響くような低音の音色は、その実験の成功を裏付けています。
「ライブのサウンドをできるだけ再現したかったんだ。サブ・ウーファーやローエンドの下にあるベースの音を再現している。でも、これはギターなんだ。一方で、ベース・ソロも入っていて、そのサウンドは “甘い” んだよな」
“Homicidal Ecstasy” の音の病は、そのベース音にとどまりません。Swank は、このアルバムがバンドにとってこれまでで最も協力的な作品であると自負していて、メンバー全員がリフの製造を担当しています。ゆえに、スタジオで制作された前作とは異なり、”Homicidal Ecstasy” は素晴らしいライブバンドの作品のように聴こえるのです。彼らは過去1年半、デスメタルの王道、ハードコアの伝説、そしてハングリーな若手バンドとの共演を果たしています。そのすべてが反映されているようなサウンド。”Homicidal Ecstasy” は、その打撃効果に一途でありながら、グルーヴ、スピード、そしてメロディーと、さまざまな方法で豊かさを実現しているのです。
“Homicidal Ecstasy” は歌詞やテーマの面でも大きな進歩を遂げていますが、これは Swank がようやく歌詞を書くのに十分な時間が取れるようになったため。連続殺人犯のドラマ “デクスター: 警察官は殺人鬼” に触発されたアイデアから始まったこの作品は、デスメタルにおける殺人に対する執着を一種の麻薬のように描いています。
「猟奇殺人はハマってしまうようなもの。多幸感があって安心できるもの。必要で切望するもの。長い目で見れば自分を傷つけるもの。だけど、80年代にティッパー・ゴア(アル・ゴアの元妻で、PMRCを率いて、暴力的あるいは性的に露骨な歌詞が含まれる音楽を批判) に狙われていたらと思うと、フランク・ザッパやディー・スナイダーと一緒に、このテーマがいかに深刻でないかを訴えていただろうからね」

確かに、”Black Market Vasectomy” や “Necrosexual Deviant” といった楽曲は挑発的ではあるものの、基本的に笑いがあって、そこから現実の猟奇的殺人が起こるようには思えません。一方で、シリアスなテーマも存在します。
「アルバム全体のテーマはすべて死に関係していて、そのエクスタシーは多幸感のようなもの。物質やドラッグに関係している可能性もある。死は人を引き込むもの。俺たちが ”A Lesson in Savager” と呼んでいる曲があってこれは、一生殺しをやめられない男のことを皮肉を込めて歌ったもの。まるで中毒のようだ。
同じ中毒でも、現実的なドラッグにも再発のようなものがあるし。自分自身や、自分ををとても愛し、気にかけてくれる人々の周りに大きな影響を及ぼす。俺を育ててくれた祖母を亡くしたとき、俺はドラッグで自分をすり減らし壊すか、彼女のために生きるか選択を迫られた。ありがたいことに、俺は後者を選んだけど、”Mortal Admonishment” “死への戒め” では、そうしなかったらどうなるかという状況を書いた。この曲を書いたのは、いつも俺たちに手を差し伸べてくれる人がいるということを人々に知らせるため。なあ、俺らはいつでも君のそばにいる。何かを乗り越えるためにバンドや音楽が必要な場合は、俺たちがそのバンドになろう。喜んで力を貸すさ」
“Homicidal Ecstasy” が新しいファンを獲得するならば、それはバンドが自分たちの方式を破ってやり直したからではなく、自分たちの方式をより強固にするために一緒になったからであるはずです。
「俺たちは両極端なバンドなんだ。変なロゴと変な名前のバンドだから、みんな俺らのことをどう考えているのかわからない。でも、”Homicidal Ecstasy” を他の作品と比較して聴いてみると、俺らがデスメタルにより多くの愛情を注いでいることがわかる気がするんだ。もっともっと “俺ら” が入っているからな」

参考文献: STEREOGUM:Band To Watch: Sanguisugabogg

REVOLVER: SANGUISUGABOGG

METAL INJECTION:SANGUISUGABOGG: Trauma, Troma Entertainment & The Horrors Of Homicidal Ecstasy

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HAMMERS OF MISFORTUNE : OVERTAKER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN COBBETT FROM HAMMERS OF MISFORTUNE !!

“Let’s Boil It Down To “Illusions” By Sadus And “Nursery Cryme” By Genesis; This Pair Of Albums Are Kind Of i Ideal In Thrash On One Hand, And Prog On The Other, To Me Anyway.”

DISC REVIEW “OVERTAKER”

「SADUS の “Illusions” と GENESIS の “Nursery Cryme” だね。僕にとってこの2枚はスラッシュとプログの理想形なんだよ。だからこの作品のキーワードは “理想” なんだ。この2枚のアルバムを、プログとスラッシュ、それぞれの分野の表現の象徴として捉えているんだ。この2枚のアルバムの、実際の音楽を組み合わせるということではなく、その精神、ゴーストのようなものを捉えたかった。音楽に対するアプローチが全く異なる2つの作品、どちらも大好きだ。だから、この相反するものをどうにかして結びつけたいと思ったんだ」
プログレッシブ・スラッシュといえば、VOIVOD, VEKTOR。CORONER や MEKONG DELTA、ひょっとすると MEGADETH もその範疇に入るのかもしれません。とにもかくにも、この分野のバンドはほとんどがメタル世界のカルト・ヒーローとして大きなリスペクトを集めています。ただし、彼らは本当に “プログレ” とスラッシュ・メタルを融合させてきたというよりは、独自の実験で “プログレッシブ” の称号を得たと言う方が正しいのかもしれませんね。
一方で、HAMMERS OF MISFORTUNE は彼らほどの認知も賞賛も得られてはいませんが、実験の精神と “プログレ” の解像度ではどのバンドにも負けてはいません。常に裏街道を歩んできた “範馬の不運” は近年、ついにその才能に見合う評価を勝ち取ろうとしています。
「僕はみんなと同じように様々な気分を持っているんだ。時には邪悪なスラッシュの気分、時には壮大なプログレの気分、時にはノイジーなDビート・パンクの気分だ! MR. BUNGLE や NAKED CITY のようなバンドも好きだけど、だけど僕らの音楽がコラージュのように聞こえるのは嫌なんだ。すべてが調和して、自然で有機的なサウンドになることが重要。音楽の “トランジション” はとても重要なんだ」
“トランジション” はひとつ、近年のモダン・メタルにおいてキーワードとなる言葉かもしれませんね。多様で境界を押し拡げるモダン・メタルの理念において、”クソコラ” のように様々なジャンルをツギハギするバンドは決して少なくありません。そんな安易なモザイク、不都合なジグソーパズルは結局、イロモノとしてリスナーに処理され、せいぜい SNS でひと時の “バズ” を得て消えていきます。
一方で、HAMMERS OF MISFORTUNE のやり方は、実にしたたかで巧妙。インテレクチュアルなスラッシュのリフ・ハンマーと、VEKTOR での不運を薙ぎ払うリズム隊の猛攻。そこに、濃密で荘厳なシンセ、メロトロン、そして複数のボーカリストが重なり合い、シームレスに連鎖して、轟音と畏怖と美麗の塊を創造していきます。
GENESIS と SADUS の共存共栄。そんな狂気の夢物語は、地獄のラボで音そのものをツギハギするのではなく、英傑たちのオーラを抽出して “Overtaker” というフラスコへと慎重に注ぎ込む抽象的な実験だったのです。世界観と世界観の蜜月。ロマンティックとおぞましさの婚姻。だからこそ、彼らの狂気はジェットコースターのように、リスナーの五感を圧倒します。
「住宅危機やソーシャル・メディアについて書くのは、最もメタルらしい題材ではない。たしかにそうだ。でも、このようなテーマに取り組んでいるメタルバンドは他に思いつかないけど、間違いなくメタルバンドだって皆これらの問題を扱い、日々深い影響を受けているんだよ。ホームレスと所得格差を暴力的なSFおとぎ話の形で扱った曲、”Overthrower” の歌詞を思いつくには、真剣に考える必要があった。メタルの曲で扱うには簡単なテーマではないけれど…」
つまり、要約すれば、このプロジェクトの首謀者、ベイエリアで長年カルト・ギターヒーローとして活躍を続けた John Cobbett はヘヴィネス、ムード、ドラマ、エキセントリックを変幻自在に超越し、VEKTOR や SABBATH ASSEMBLY といった異能のメンバーを操りながら、フォーキーで、リズミカルで、クラシカルで、プログレッシブなスラッシュ・オペラを完成させ、イラク戦争、住宅問題、SNSというテーマを経て、地球の険しいしがらみから逃れたサイケデリックな宇宙の旅へと到達しました。
ある意味、彼が一平方あたりの人口が6人という途方もない田舎、モンタナへと居を移したことが吉と出たのでしょう。フレキシブルで自由に選べるメンバー、余分なジャムを削ぎ落としたソリッドで凝縮されたコンパクトな楽曲、そして何より、残酷で生死をリアルに感じさせる厳しい自然環境が”Overtaker” のメタル、プログレッシブ、パンクを一層タイトに結びつけました。不運を名に宿したバンドの雪解けは、もうすぐそこです。
今回弊誌では、John Cobbett にインタビューを行うことができました。「現実世界の問題を壮大なヘヴィ・メタルの歌詞にするのは難しいことだけど、結果的にその方がメッセージが効果的になると思うんだよね。間違いなく、よりエンターテインメント性が高い。平凡なことが深遠であってはならないなんて、誰が言ったんだ?」 どうぞ!!

HAMMERS OF MISFORTUNE “OVERTAKER” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIRE-TOOLZ : I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH Fire-Toolz !!

“I Do Love Dark Music, But To Me My Music Just Sounds Like Rainbows. Jagged Piercing Ones At Times, But Still Rainbows.”

DISC REVIEW “I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY”

「私は自分の音楽を、天使と悪魔の融合とは思っていない。私にとってはすべて天使的なものなんだ。悪魔的なものは、私自身の悪魔について論じるときに題材として登場するだけでね。意図的にダークな音楽を作ろうとはしていないんだ。ダークな音楽は好きだけど、私にとって自分の音楽は虹のように聞こえるだけ。時にはギザギザに突き刺さるような虹もあるんだけど、それでも虹なんだよ」
ご存知の通り、ヘヴィ・ミュージックが無味乾燥で一義的な場所であるというのは、完全なる誤解です。とはいえ、殺風景で無彩色なスタイルの持ち主がたしかに多いのも事実。しかし、そういったアーティストと同じくらい、ヘヴィ・ミュージックを色鮮やかなアートの爆発として扱う人たちも同様に多いのです。シカゴの Fire-Toolz は、ヘヴィネスに宿る無限の色彩を提案するインターネットの虹。Fire-Toolz A.KA. Angel Marcloid は、プログレッシブ、ブラックメタル、ジャズ・フュージョン、インダストリアル、AOR, グラインドコア、さらには日本のシティー・ポップの要素までスリリングなプロキシを通して屈折させ、スタイルの境界を創造のピクセルで消してしまうのです。
「どんなジャンルの音楽にも、男っぽいとか、女っぽいとか、固有のジェンダー・アイデンティティや表現があるとは思えないよ。ここアメリカの私たちにしても、他の文化にしても、そうした関連付けや決めつけをしてしまうのは残念なことだよ。ただ、私はそうしたレッテル貼りが一般的であることも理解しているんだ。私がそんな風に物事を見たことがないたけでね。境界が曖昧になることは、ほとんどの場合、良いことだと思うんだ。制限を取り払い、規範を解体し、自由を活用することは、とても重要なことだから」
ここ数十年にわたるポスト・モダニズム思想の定着は、ステレオタイプを曖昧で不安定なものとし、ジャンルや形式といった制約を過去の遺物と見なす新しい文化を精製しました。Fire-Toolz の最新作、”I will not use the body’s eyes today” は、この新世界の芸術的アプローチをある意味で体現しているのです。その主眼は、音楽の “脱構築” にあります。
「他の人が私のカオスをどう捉えているかは、よくわかるんだよ。私にとってこの混沌は、とてもコントロールされ、組織化されているように感じられるんだけど、外から見ると、混乱しているように見えるかもしれないね」
私たちが毎秒何千ものピクセルを自然とスクロールするように、この7曲はリスナーを容赦なく説得し、時に幻惑します。一つのテクスチャーやモチーフに落ち着くことはほとんどなく、さながらグリッチを含んだデジタル・コラージュのように機能していきます。最もオーソドックスな “Soda Lake With Game Genie” にしても、6分半という長尺の中にサックスやブラスト・ビート、80年代のポップなど、予期せぬ展開が濁流のように押し寄せる非常に流動的な仕上がり。
“A Moon In The Morning” では、Angel Marcloid のパレットは全体を覆い尽くす焼けるようなディストーションへと変化し、悪魔の遠吠えとオーケストラのMIDIストリングスの厳しいせめぎ合いが対消滅の危機感を抱かせます。イタロ・ディスコ、テクノ、EBM のテイストを取り入れたビートも、アコースティック・ギターのサスティーンを強調したブレイクダウンも、この構築を逃れたしかし意図的なカオスの中にあります。
重要なのは “仕切り” がないこと。ここはブラックメタル、ここは AOR、ここはプログレッシブなどという構築された混沌は、結局のところステレオタイプで、興ざめです。
こうして、従来の構成や動きといった概念を完全に捨て去ろうとする姿勢が “I will not use the body’s eyes today” をユニークで挑戦的作品にしているのです。それはまさに、体の目を使わず、心の目で作品を作ること。心を開き、未来を見据えることのできるリスナーにとって、この計算された混沌はすべての芸術と文化が境界線を失ってもまだ機能する世界の予兆とまで言えるでしょう。そう、私たちは Fire-Toolz によってまんまとハッキングされているのです。
「”I will not use the body’s eyes today” というフレーズは、多かれ少なかれ、私がエゴ (肉体的な目) からではなく、高次の自己の目 (心の目) から見ることを肯定しているんだよね。つまりこれは、超越のための嘆願なんだよ」
ヴェーダ哲学、キリスト教神秘主義、見捨てられることへの恐れ、感情の断絶、愛着の不安、自己破壊、意識の霊的傾向、トラウマの治癒、恥。Angel は永遠に拡張される音のツールボックスと同様に、世界とその神秘に対する多様な哲学と神学のインデックスをもその作品に注ぎ込んでいます。そうして、Fire-Toolz というプログラムは自己実現によって既存の器がさらに拡大可能であることを証明しているのです。
今回弊誌では、Angel Marcloid にインタビューを行うことができました。「カシオペア、角松敏生、木村恵子、杏里、Hiroshima、堀井勝美、鈴木良雄、菊池桃子を生んでくれてありがとう!」 どうぞ!!

Fire-Toolz “I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【POLYPHIA : REMEMBER THAT YOU WILL DIE】


COVER STORY : POLYPHIA “REMEMBER THAT YOU WILL DIE

“I’m Gonna Grow Up And Be a Rock Star, And Just Truly Believing That.”

REMEMBER THAT YOU WILL DIE


「中学2年生の時にマリファナを吸い始めた。それが僕の人生の中で大きな意味を持つようになったんだ。テキサスに住んでいたから麻薬所持で逮捕されたけど、それが僕のキャリアに火をつけたようなもの。僕は保護観察中で、1年間、学校に行って、家に帰るだけだったんだ。人を呼ぶことも、友達の家に行くことも許されなかった。それで、ギターを本当に、本当に、本当に上手になろうと思ったんだ」
16歳になった POLYPHIA の Tim Henson は薬物所持で2度、法に触れてしまいました。テキサス州のように薬物犯罪が特に重く処罰される州では、尚更居場所を失います。今、28歳の Tim は、「毎日マリファナを吸える仕事に就いたんだ」と皮肉を込めて話します。「でも、”言霊” ってあるんだよね。小学校6年生のとき、”僕は Tim Hendrix。大きくなってロックスターになるんだ” って、みんなに宣言して、本当にそう思っていたんだ。だからね、意識の顕在化、決意表明。その力が本当に重要だと思うんだよ」

麻薬所持の罪で、Tim は保護観察や外出禁止処分となり、一人でいることが多くなりました。しかし、その時間をすべて使ってギターの練習を続け、貪欲に最高のミュージシャンを目指したのです。中国からの移民である母親は、息子がアメリカで得られるチャンスを最大限に生かすことを決意します。3歳のときから Tim はヴァイオリンのレッスンを受け始め、幼少期に長時間の練習に対する耐性を養いました。間違うと先生に弓で手を叩かれることもあり、決して楽しいものではありませんでしたが、彼はこの経験に感謝しています。
「多くの移民が、アメリカはチャンスの国だと考えている。だから、若いうちから何かを始めさせる親が多いんだ。乱暴な先生で、当時はかなり嫌だったけど、今思えばおかげで規律を学べたし、集中し、鍛錬し、練習することで、何事も上手になることを理解できたんだ」
10歳のある日、Tim は父親がギターを取り出すのを見ます。それまで父親がギターを弾くということを全く知らなかった彼は、その楽曲に興味をそそられました。「父親の BLACK SABBATH のコレクションから曲を選んで、耳コピを始めたんだよね。サバスは耳コピが簡単なんだ。全部Eマイナーのペンタトニックだから。そして、15歳になるころには、ヴァイオリンの気晴らしでギターを始めたのに、完全にヴァイオリンを捨てていたよ」

Tim が中学生の頃は、CHIODOS, TAKING BACK SUNDAY, FROM FIRST TO LASTなどが流行っていて、長い前髪に血行が悪くなるほどきついジーンズをはいた仲間に囲まれていました。
「年上の子たちが夢中になっていたクールなバンドだった。メロディーのいくつかは信じられないし、楽器編成も本当にユニークだと思ったんだ。ビートルズ、ジミヘン、サバスなど、古いロックしか知らなかった僕は、現代のバンドがやっていることを聴いて、特にロック的なソロとより現代的でテクニカルなリフを融合させることに、革命的な感覚を覚えたんだよね」
高校に入ると、ほとんどの同級生がシーンを卒業し、より “普通” の趣味を追求していました。しかし、Tim はまだ WHITECHAPEL を聴くことで満足していました。それでも彼は、”メインストリーム” の音楽と、それがなぜそんなに人気があるのかについて、好奇心を抑えることができなくなったのです。
「僕はメインストリームの曲を聴きに行き、なぜ多くの人々が好きなのかを理解しようとしたんだ。メタルは非常にニッチだから、僕はより多くの人に届く音楽を評価するようになっていった。何が親しみやすいのか、なぜ多くの人が共感するのか、音楽にあまり興味のない人たちでさえも。以来、その理由を分析するようになったんだ。僕自身はメインストリームの音楽に個人的に共感していたわけではなく、ただ馴染もうとしていただけなんだけどね。だけど、好きなもののために仲間はずれにされるのは、いい気分ではないからね。とはいえ、メインストリームの音楽の多くに純粋に感謝するようになったんだ」

こうした影響はやがて、Tim が2010年から活動しているバンド、POLYPHIA で作る音楽にも滲み出るようになりました。新譜 “Remember That You Will Die” は、ポップ、ファンク、EDM、Djent といった多様な絵の具をキャンバスに投影した、カルテットにとって最もカラフルでエクレクティックな作品と言えるでしょう。”オマエはいつか死ぬ。忘れるな” というタイトルは、ラテン語の格言 “Memento Mori” をロックンロールの流儀で翻訳した、羊のメタル皮を着た狼の残虐。
「人間は死が避けられないことを自認しているから、生の限られた時間を使って、永遠に存在し続けることができるものを発明しようとする。芸術家は想像力を駆使して、歴史に残るようなものを創り出すんだ。人工知能が発明され、それがアートやテクノロジーに応用されるようになると、人間の思考とコンピューターの思考のギャップを埋める方法が見つかる。 この2つをつなぐことは、最終的に人間の経験の永続性につながり、それは人間が不老不死になることに最も近いと言えるんだ。アルバムのタイトルは、このアートと結びついているんだ」
つまり、POLYPHIA の発明とはジャンルのステレオタイプを気にかけないこと。それが彼らの成功の礎です。彼らは MySpace でデスコアをイメージさせる10代の若者としてテキサスから現れたましたが、彼らをスターにしたのはそのブレイクダウンではなく、21世紀で最もジャンルを打ち破るリックをいくつも生み出したから。ファンク、マスロック、ヒップホップをミックスしたインストゥルメンタル・ジャムは、YouTube で何百万もの再生と Instagram のフォロワーを獲得しました。
「僕たちは何からでもインスピレーションを受ける。過去数枚のアルバムからギターを取り除き、ドラムとベースだけを聴くとしたら、トラップ・ビートやフューチャー・ベース・ビートが残る。もしギターを外して、演奏しているものにボーカルを加えても、やっぱりそう聴こえるだろう。つまり POLYPHIA でギターっぽいのはギターだけで、あとは人間がプログラムされたパートを演奏しているだけなんだ」

POLYPHIA にとって2013年にリリースしたシングル “Inspire” のプレイスルービデオは、最初のバイラルへの扉を開いた楽曲です。3ヶ月で25万の再生数を獲得。Tim は当時の自分たちが “天狗” になっていたと認めています。ただし、そうした “思い上がり” の顕在化が彼らを上へと押し上げて来たのは明らかな事実です。
「僕たちは間違いなくクソガキだった。子供は子供だ。高校生の頃、生活のためにツアーをするのが夢だったんだ。それから数年後、僕たちは実際にそうしていたんだから。それから、”もっと大きくなれたら、かっこいいな!” と思っていたんだ。だから “自分たちは素晴らしい。僕がキッズだったら、僕らが一番好きなバンドになるだろうね。それくらい僕たちの音楽はクールなんだ” なんてインタビューで普通に答えていたんだよ。今は歳をとって、作品に語らせたいんだ。今はもう言うことがない感じかな。僕たちはまだ自分たちがイケてると思っているけど、そのことについて愚かな雁字搦めになる必要はないってことを学んだんだ。前頭葉が発達しているときは、成長するのに時間がかかるんだよ」
ただし、過去の思い上がりに反省もあるようです。
「今はすごく練習してるよ。以前は “最もプロ意識のないプロフェッショナルなバンド” なんて言っていたけど、今は年齢も上がったし、これは自分たちの生活の一部だから、とても真剣にやっている。僕らの作品は演奏するのがとても難しいし、ファンを失望させたくはないんだ。自分たちのケツくらい自分たちで拭けないと。練習していないなんていうのは、ずいぶん前のクソみたいな発言の一つだよ」

POLYPHIA は、半分プログレッシブ・インストゥルメンタル・バンドで、半分オンライン・インフルエンサーだと言えるのかも知れませんね。バンドが2016年に “Euphoria” のビデオを公開した際、半裸のスーパー・モデルをサムネイル画像として起用したところ、400万人を数える人々にクリックバウトされました。YouTube のトップコメントにはこう書かれています。”彼らはとても賢い。美しい女性の画像を使って、騙して素晴らしいギター・バンドを発見させるなんて。ありがとう”
「POLYPHIA は意識的に2つの非常に異なるオーディエンスを一緒にしようとしたんだ。一つはギター・マニアとオタク。もうひとつは、ジャスティン・ビーバーや ONE DIRECTION のキッズだった僕らと同世代の女の子たちだ。それが目標だったんだけど、何年もかけて、自分たちではない何かになろうとすることを減らして、自分たちでいるようになったんだ。今でも男性中心だけど、ライブでは女の子がたくさんいるんだよ」
Ichika Nito、Mateus Asato、Yvette Youngといった才能あるアーティストを起用した 2018年の3rdアルバム “New Levels New Devils”。彼らのプロモ写真には、メルセデスに腰掛け、まるでクールなキッズのような格好をした4人組の姿が写っていました。テック・メタルを愛する若者たちにとって、それはある意味冒涜的な行動でしたが、Tim は当時、重要なことはクールであることと女の子にモテることだったと胸を張ります。
「2004年の “St Anger” で、METALLICA のプロモを見たんだ。彼らは全員メルセデスでリハーサルスペースに乗り付けたんだ。すげーカッコいいと思ったんだ。その時、自分たちを世界最大かつ最高のメタル・バンドと呼ぶというミームを思いついたんだよ。それに、僕らがもっとビッグになりたいと思っていた頃、ONE DIRECTION はまだ存在感を示していた。僕たちは、”よし、彼らがやっていることをやろう。明らかに女の子が好きなことだ” と思ったんだよな」

“The Most Hated” という明らかにノンギターな EP は、ファンたちの頭を悩ませ、中には逃げ出してしまった人もいました。
「あのリリースで、”俺たちが先にいたから POLYPHIA は俺たちのものだ” みたいな気取った老害的ファンを排除したんだ。彼らは僕たちの以前の作品を気に入っているから、それはそれでよかったんだ。結果として、新しいファンを獲得することができたからね。アマチュアから現在のようなバンドへと成長できたのさ。このアルバムも、半分は既存のファンのため、残りの半分は新しいファンのために作ったよ」
ボーカリストがいないことで、当初は多くのリスナーにとって眉唾ものでしたが、Tim はむしろインストであることがバンドに大きな創造性と可能性をもたらしたと考えています。
「より多才になれるし、より多くのコラボレーションが可能になるんだ。僕が本当に理想としているビジネスモデルは、EDMがすごく流行っていた2015年から16年ごろ、Zedd と Alessia Cara みたいな DJ とポップスターとのコラボも盛んで、同じ DJ があらゆるポップスターとコラボしてスターのキャリアを飛躍させるようなシステム。POLYPHIA のアイデアは DJ なんだよね。どんなシンガー、ラッパー、メタル・ボーカリスト、楽器奏者、DJ、プロデューサーともコラボできるんだ」
Chino Moreno や Steve Vai、ラッパーの Killstation や $not、ポップスターの Sophia Black など、”Remember That You Will Die” の豪華なゲスト陣を見れば、POLYPHIA の生み出したモデル・ケース、その影響力が浮き彫りとなります。

特にあの7弦楽器のパイオニアは、グランド・フィナーレ “Ego Death” の最後に登場し、歪んだソロで POLYPHIA の地平を切り裂きます。POLYPHIA にとってこれは記念碑的な出来事であり、Tim はあっけからんと “興奮している” と主張しますが、ここにも POLYPHIA 座右の銘である “気にかけない” が浸透しています。
「2020年に、Steve が NAMM ショーでオープニングをやってくれと頼んできたんだ。その後、僕らは DiMarzio のパーティに行って酔っ払って、彼に “ねぇ、僕らの曲で弾いてくれない?” って頼んだんだよ。そしたら、彼は “もちろん!” って感じだった。数年後、曲ができて、彼にメールを送ったんだ。そして “Ego Death” が完成したんだ」
例え Steve Vaiのような有名人であっても、POLYPHIA はアンチソロ、メロディ優先のビジョンを維持するためにその演奏に手を加えています。最近のインタビューで Vai は切り刻まれたギターソロに驚いたと語っています。
「通常、俺が誰かのために何かを弾くとき、依頼者はそのままの形で受け取るんだ。でも POLYPHIA はとてもクリエイティブで、何かを操作するのが好きなヤツらだ。ただ、最初に聴いたときはあまりに違っていたから、もしかしたら、俺のやったことが気に入らないのかもしれない!と思ったんだ (笑)」
このアルバムでの限界を超えたギター・プレイに対して、Tim は指板のコミュニティで使われているある言葉に異議を唱えています。
「僕たちがやっていることを “シュレッド” とは呼ばないよ。だって、それぞれの曲で1つか2つのモチーフがって、それがたくさんの音符に広がってから、メインのモチーフに戻ることに気づくでしょ?みんな、シュレッド “という言葉の周りで踊っているんだよ。80年代にスーパー・クールだったものを、今の時代にそのまま再現したってクールな訳ないよ。だって時代が違うから。大半のギターインストには緩やかな死を与えるべきかもね。僕たちはたくさんの音を弾くためのシュレッドではなく、音楽を補完するための正しい音を弾いているんだ。しかも、より速くね。メタル・バンドは儲からないからクールじゃない。ギターが中心になっているものは、文字通りソロにソロを重ねただけのものばかりだ。僕たちは確かにソロにソロを重ねたレコードを作ったけど、その間にフックもあったんだ」

“Playing God” では初めてナイロン弦のギターを使い、トラップ・ビートと溶け合わせました。
「フラメンコやボサノバをよく聴くわけじゃない。この曲をアル・ディ・メオラやパコ・デ・ルシアと比較する人もいるけど、僕は聴いたことがないからね。ただ、最近、ハーモニック・マイナーを再発見してね。このギターで弾くとそんな感じになるんだよ。それに、作曲する時は、最も”裸”の状態で完璧な音を出すべきだ。ナイロン弦で良いサウンドなら、どんな楽器に移行しても良いものになる。ただし、エレキより正確に弾かなければならないし、指の肉は安定してあるべき場所に正確に置かなければならないんだ」
Chino Moreno が参加した “Bloodbath” では、オールドスクールなギターソロを Scott が披露しています。
「Scott のソロの中では一番好きなんだ。彼は Dimebag や Wes Hauch、そして FACELESS “Planetary Duality” を少しチャネリングしたと思う。ALLUVIAL のアルバム “Sarcoma” での彼のギター・ワークはすごいよ。めちゃくちゃ聴いたよ」
TikTok やボカロが元となった “ABC” も POLYPHIA のアンテナの敏感さを証明しています。
「今、TikTok にアクセスすると、AC/DCの”Thunderstruck”をプレイする子供がいたりする。それにみんなが狂喜乱舞しているんだ。長い間、ラジオには存在しなかったギターソロを子供たちが発見したんだよ!それは素晴らしいことだ」
つまり、POLYPHIA のアンテナが倒れることはありません。
「先日、BRING ME THE HORIZON のライブを観に行ったんだけど、すごく衝撃的だったよ。僕たちはずっとメモを取りながら見ていたんだ。その前の週は MESHUGGAH を観たんだ。僕はあらゆる種類の音楽を純粋に評価しているからね。僕はポジティブなエネルギーしか持っていないんだ。自分がポジティブに感じた音楽を聴いた時と同じように、子供たちが僕たちの音楽を聴いてくれることを願っているよ。そして、その子供たちが成長して、ドープなことをするようになればいいな」


参考文献: KERRANG!: “The power of manifestation is really important”: How Polyphia’s Tim Henson became the guitar hero metal needs

GUITAR.com: “We were little pieces of shit”: Polyphia on teenage fame and making music with Steve Vai

GUITAR WORLD: Tim Henson and Scott LePage on how Polyphia made the wildest guitar album of 2022: “We were like, ‘F**k. Did we just blow out Steve Vai’s speakers?’”