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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WAKE : THOUGHT FORM DESCENT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RYAN KENNEDY OF WAKE !!

“I Think We’re a Metal Band. For Better Or Worse There’s No Specifying Sub-genres For The Type Of Music We Want To Make, In My Opinion. We Play Metal.”

DISC REVIEW “THOUGHT FORM DESCENT”

「最近、僕らの音楽活動に対して “成長” や “発展” という言葉がメディアによってよく使われているけど、僕らにとっては、すべてが論理的で当たり前のステップのように感じられる。長い間同じ音楽を聴いてきて、その時々に浮かんだアイデアを形にするだけ。それが “ユニーク” かどうかはわからないけど、少なくとも自分たちを正直に表現しているとは言えると思う」
カナダの WAKE は決して同じことを繰り返すだけのバンドではなく、リリースのたびに進化を遂げているとメディアは評します。しかし彼らはただフワフワとジャンルの境を漂う根無し草などではなく、溢れ出る自らの音楽的な創造の泉を “エクストリーム” “ブルータル” とは何かを再考し再発明するための挑戦の場として活用しているのです。
「”ブルータル”、”クラッシング”、”デヴァステーティング” という言葉は、エクストリーム・ミュージックの形容詞として乱用されすぎだ。僕たちは、”ブルータル” や “エクストリーム” のアイデアはブラストビートや鋭いトライトーンだけではないことを証明したいし、もっと重要なのは “ブルータル” な要素は鋭さだけでなく受動的な緩やかさからも生み出せるんだ。そのどちらにも通じる、ユニークな衝撃を生み出すことができるというアイデアを、人々に直面させようと思ったんだ」
その結果、容赦なくヘヴィなものから絶妙な美しさまで、時に片側一車線、しばしば相互通行で同時に駆け抜けるニュアンス豊かな8曲が誕生しました。それは瞬時にリスナーの心を掴み、全ての神経を張り巡らせれことを要求します。”Thought Form Descent” は豊かな質感と緻密なレイヤーで構成され、聴くたびに奥行きを感じさせ、WAKE をナチュラルに新たな次元へと導いているのです。
「僕たちは単にメタル・バンドだと思うんだよ。良くも悪くも、僕らが作りたい音楽のタイプにサブジャンルの指定はないと僕は思っているんだ。僕らが演奏するのはメタルであり、あらゆるジャンルを網羅したメタルなんだ。僕たちの個性は、ジャンル、テンポ、音色がどうであれ、僕たちが導入するあらゆる音の要素の間に常に潜んでいるから」
重要なのは、WAKE が “クラスで一番” を目指しているわけではなく、メタル世界全体の “目覚め” を誘うことに重きを置いている点でしょう。例えば同郷の ARCHSPIRE のように、”テクニカル・デスメタル” という狭い “教室” を極め尽くして一番になる。それも名を上げる一つの方法です。しかし、WAKE はあらゆるメタル、あらゆるサブジャンルを網羅した包括的な “ヘヴィ・メタル” でメタルの革新を願うのです。故にグラインドに 端を発する彼らの旅路には、ブラックも、デスも、ドゥームも、スラッジも、プログレッシブも存在し、ポストメタルでさえ顔を覗かせていきます。
「今回は多くのアイデアが試されたけど、すぐに却下されていった。なぜなら、典型的な怒りに満ちた攻撃的な歌詞から軌道修正する必要性があったから。同時に、あまりに憂鬱で個人的なものでもないようにしたんだ。そうして僕たちは、自分たちのドリーミーな方向性を追求していったんだ」
タイトルの “Thought Form Descent” は、「心の中に一種の迷宮を作り、それを現実に物理的に顕在化させる」というアイデアに由来しています。自分自身の無意味さ、人生の虚無感に直面した主人公が現実と対立し、未知の世界に大きな意味を見いだすというもの。
明晰夢、瞑想、幽体離脱、臨死体験といった手段で、彼は未知の場所に旅立ち、良くも悪くも現実の扉の向こう側を発見します。己の生との対立、現実との対立。そうして主人公はアストラルセルフとフィジカルセルフのどちらが真の存在なのかで混乱し、2つの間を引き裂くような意識状態の中で戦っている自分に気づきます。そして最終的に彼は、両方を元に戻して絶対的な無になろうとするのです。
現実からの逃避と夢見がちなストーリー・ライン。その音楽的な具現化には、ALLEGAEON, CATTLE DECAPITATION, KHEMMIS, PRIMITIVE MAN などモダンメタルの多様を牽引するプロデューサー Dave Otero も一役買っています。彼のメタルだけでなくポップ・ミュージックとその構成を理解する能力、音楽理論の知識、リフだけでなく曲の動きとコード進行にも連動する姿勢は、”デスメタル” “ブラックメタル” をはるかに超え、同様に “超越者” である GORGUTS の Kevin Hufnagel が流麗なメロディーを奏でることでアルバムは至上の域に達しました。
今回弊誌では、ベーシスト Ryan Kennedy にインタビューを行うことができました。「たしかに僕は DARKTHRONE や MAYHEM, BATHORY などを聴いて育ったから、ブラックメタルと僕は強い感情的なつながりを持っているけど、哲学的な意味合いを持っているわけではないからね。それに、僕も歳をとったから、哲学的な傾倒がより多様化する傾向にあるしね」 どうぞ!!

WAKE “THOUGHT FORM DESCENT” : 10/10

INTERVIEW WITH RYAN KENNEDY

Q1: First of all, what kind of music were you listening to, when you were growing up?

【RYAN】: I listened to a lot of 80s and 90s metal like Metallica and Megadeth. I also listened to a lot of 90s alt rock as that was what was around where I grew up – Smashing Pumpkins, Live, all that lovely stuff.

Q1: 本誌初登場です!まずはあなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【RYAN】: METALLICA や MEGADETH みたいな、80年代、90年代のメタルをたくさん聴いて育ったよ。同時に、90年代のオルタナティブ・ロックも僕の周りにいつもあったね。SMASHING PUMPKINS, LIVE, とかそういったラブリーな音楽がね。

Q2: Why did you choose the band name Wake?

【RYAN】: It seemed like an open concept, and something that was bigger than the sum of its parts.

Q2: なぜ WAKE というバンド名を選んだのでしょう?

【RYAN】: “Wake” という言葉が、なんというかオープンなコンセプトのように思えたんだ。そして、それは部分部分の総和よりも大きなものに感じられた。

Q3: Voivod, Martyr, Cryptopsy, Augury, Gorguts, First Fragment, Archspire, etc., Canada seems like the ultimate technical death metal el dorado. On the other hand, there are bands like Spirtbox that have also made it into the mainstream, but you guys don’t belong to either of those groups, would you agree?

【RYAN】: No, I think we’re a metal band. For better or worse there’s no specifying sub-genres for the type of music we want to make, in my opinion. We play metal, and metal that runs the gamut of all its sub-genres. Our sound will always lurk between any sonic element we introduce, no matter the genre, tempo or timbre.

Q3: カナダは CRYPTOPSY や GORGUTS などテクニカルなデスメタルの楽園にも思えます。一方で、SPIRITBOX のようなバンドはメインストリームへの道を切り開いていますよね?
WAKE はそのどちらにも属していないように思えます。

【RYAN】: そうだな…僕たちは単にメタル・バンドだと思うんだよ。良くも悪くも、僕らが作りたい音楽のタイプにサブジャンルの指定はないと僕は思っているんだ。僕らが演奏するのはメタルであり、あらゆるジャンルを網羅したメタルなんだ 。
僕たちの個性は、ジャンル、テンポ、音色がどうであれ、僕たちが導入するあらゆる音の要素の間に常に潜んでいるから。

Q4: One of the interesting things I read in your interview was that you mentioned that Wake does not aim to be the best in class. For example, do you want to create something unique rather than be the best technical death or black metal band?

【RYAN】: We rarely compare ourselves to other bands. We are just trying to express ourselves as honestly as possible. There is a lot of talk about “growth” and “development” with regards to our musical output lately, but everything just feels like another logical and basic step to us. We’ve been listening to the same music for a long time and just bring to bear whatever idea hits us at any moment; I don’t know if its “unique” but at least it’s an honest representation of ourselves.

Q4: あなたのインタビューを読んでいて面白かったのは、「WAKE はクラスで一番を目指していない」 という言葉でした。
例えば、同じカナダの ARCHSPIRE のようにテクニカル・デスメタル、ブラックメタルで最速最凶を目指すよりも、包括的にユニークなメタルを作りたいということなんでしょうね?

【RYAN】: 他のバンドと自分たちを比較することはほとんどないんだよ。ただ、できる限り正直に自分たちを表現しようとしているだけなんだ。
最近、僕らの音楽活動に対して “成長” や “発展” という言葉がメディアによってよく使われているけど、僕らにとっては、すべてが論理的で当たり前のステップのように感じられる。長い間同じ音楽を聴いてきて、その時々に浮かんだアイデアを形にするだけ。それが “ユニーク” かどうかはわからないけど、少なくとも自分たちを正直に表現しているとは言えると思う。

Q5: In the metal world, words like “extreme” and “brutal” are often used, but this album seems to reinvent those words. Unlike, for example, Archspire, which is truly about ultimate speed and technique, you guys accentuate the heaviness with slow, solemn, and progressive development, don’t you?

【RYAN】: Yes, we do. Amongst many other variables. I’d describe the record as a place to reconsider what ‘extreme’ means. The words ‘brutal’, ‘crushing’, ‘devastating’ are overused adjectives for extreme music. We wanted to force people to confront the idea that ‘brutal’ or ‘extreme’ ideas aren’t just blastbeats or angular tritones, or, more importantly, ‘brutal’ elements alongside pointedly passive elements can create their own experience that can channel both and neither.

Q5: メタル世界では、ブルータルとかエクストリームといった言葉がよく使われますが、あなたたちは遅攻や荘厳、プログレッシブなやり方でその言葉を再発明していますね?

【RYAN】: その通りだよ。他の多くの要素を使いながらね。”ブルータル”、”クラッシング”、”デヴァステーティング” という言葉は、エクストリーム・ミュージックの形容詞として乱用されすぎだ。
僕たちは、”ブルータル” や “エクストリーム” のアイデアはブラストビートや鋭いトライトーンだけではないことを証明したいし、もっと重要なのは “ブルータル” な要素は鋭さだけでなく受動的な緩やかさからも生み出せるんだ。そのどちらにも通じる、ユニークな衝撃を生み出すことができるというアイデアを、人々に直面させようと思ったんだ。

Q6: Very interesting theme for the album, too! Escape from reality through dreams and astral projection. Actually, novels and anime with otherworldly themes are very popular in Japan right now, and I think that ultimately this is an expression of the desire to escape from this dark and harsh world. Why did you choose this theme?

【RYAN】: I think it came up as a result of the dreamier musical themes we’d been working on. Kyle wanted to try something different and after listening to the songs a lot he thought that type of narrative might be a good fit. A lot of ideas were tried and summarily dismissed. A good portion of the intent also comes from a need to change course from typical angry, aggressive lyrics, but also not to be too depressive or personal either. We went into our own direction.

Q6: 夢や幽体離脱で現実から逃避するという、アルバムのテーマも実に興味深いですね!
日本では、異世界ものの小説が流行っているんですが、結局は暗く厳しい現実から逃避したいという欲求のあらわれかもしれませんね?

【RYAN】: 僕たちの場合は、これまで取り組んできたドリーミーな音楽的テーマから生まれたものだと思う。カイルは何か違うことに挑戦したがっていて、曲を何度も聴いた後、このタイプの物語が合うかもしれないと思ったんだ。
今回は多くのアイデアが試されたけど、すぐに却下されていった。なぜなら、典型的な怒りに満ちた攻撃的な歌詞から軌道修正する必要性があったから。同時に、あまりに憂鬱で個人的なものでもないようにしたんだ。そうして僕たちは、自分たちの方向性を追求していったんだ。

Q7: Can you talk about the participation of Dave Otero and Kevin from Gorguts, both of whom are legends in this world?

【RYAN】: Dave Otero was our soundboard and often conductor on this record. He provided a lot of insight and a lot of constructive feedback on songwriting matters. I think he liked not having to focus too closely on engineering specifics and more on higher level, songwriting concerns. He busted out his new Dingwall bass a bunch of times and I think he had a blast helping us try out ideas while we tweaked songs in the studio. Kevin was really a late addition who we asked to add some solos into a few of our songs. I think his ability to just put them together almost immediately was nothing short of amazing.

Q7: メタル世界のレジェンド、プロデューサーの Dave Otero と GORGUTS の Kevin の参加についてお話ししていただけますか?

【RYAN】: Dave Otero は、このアルバムで僕たちのサウンドボードを握り、しばしば指揮をとってくれた。彼は、曲作りに関して多くの洞察力と建設的なフィードバックを提供してくれたね。エンジニアリングの細部にこだわりすぎることなく、より高度な、曲作りに関わることに集中するのが好きだったんだと思う。彼は新しい Dingwall ベースを何度も持ち出して、スタジオで曲を調整しながら、僕らがアイデアを試すのを楽しく手伝ってくれたね。
Kevin は後から加わったメンバーで、いくつかの曲にソロを加えてくれるように頼んだんだ。彼のソロを即座に組み立てる能力は、素晴らしいの一言に尽きるね。

Q8: it seems like you are doing music quite far from black metal now, are the roots and philosophy of black metal still important to you?

【RYAN】: No, not particularly. All of us enjoy black metal music but don’t subscribe to any specific ideological trappings of that subculture at all. I grew up listening to Darkthrone and Mayhem and Bathory and all that so it has a strong emotional connection for me; but not in a philosophical sense. I tend to be a lot more diverse in my philosophical leanings, thanks to my advanced age.

Q8: ブラックメタルのルーツや哲学は、WAKE にとって今でも重要なのでしょうか?

【RYAN】: いや、特別な思いはないよ。僕たちは皆、ブラックメタルの音楽を楽しんでいるけど、そのサブカルチャーの特定のイデオロギーに賛同しているわけでは全くないからね。
たしかに僕は DARKTHRONE や MAYHEM, BATHORY などを聴いて育ったから、ブラックメタルと僕は強い感情的なつながりを持っているけど、哲学的な意味合いを持っているわけではないからね。それに、僕も歳をとったから、哲学的な傾倒がより多様化する傾向にあるしね。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED RYAN’S LIFE

MERCYFUL FATE “MELISSA”

A classic that hasn’t ever been eclipsed, in my mind.

THE DILLINGER ESCAPE PLAN “CALCULATING INFINITY”

I spent a lot of time in a practise space learning 43% Burnt.

METALLICA “BLACK ALBUM”

The first metal record I bought with my own money.

DISSECTION “STORM OF THE LIGHTS BANE”

As ineffable a sound as I’d hope to ever achieve, musically.

THE CURE “DISINTEGRATION”

Front to back engaging and transcendent.

MESSAGE FOR JAPAN

We love Japan and it will be a dream come true when we finally get to come and play there!

日本が大好きなんだ!いつか日本でプレイできたら夢が叶うよ!

RYAN KENNEDY

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【IMPERIAL TRIUMPHANT : SPIRIT OF ECSTASY】


COVER STORY : IMPERIAL TRIUMPHANT “SPIRIT OF ECSTASY”

“I Got Into Learning About Rolls­-Royce As a Company And Learning About These Ultra Luxury Product Companies Like Rolex And Such. The Rolls-Royce Has This Hood Ornament That Is Known As The Spirit Of Ecstasy.”

SPIRIT OF ECSTASY

2012年のデビュー以来、IMPERIAL TRIUMPHANT の Zachary Ilya Ezrin (vocals, guitars), Steve Blanco (bass, vocals, keys, theremin), Kenny Grohowski (drums) にはニューヨークの中心部に深く入り込むというミッションがあり、彼らの Bandcamp には “NY の最上階の豪華さから地下の腐ったような場所まで” と優雅に表記されています。
「ニューヨークの音の風景と、そのさまざまなダイナミクスを具現化しようとしているんだ。ニューヨークの風景には視覚的に大きな影響を受けているし、この街ならではのものだよね。この街はとても密度の高い場所だから、いろいろな意味でインスパイアされるものがたくさんあるんだ。音楽的な血統からインフラまで、あらゆる分野で歴史がある。
それに、ニューヨークには何か国家的なナショナリズムのようなものがある。移住してきた人たちも、ニューヨーカーであることを誇りにしているんだ。何が自慢なんだ?棺桶の中に住んでるんだぞ!?とか言われるけどね。ニューヨークという街に対して、みんなすごく興奮しているだよね。その中で、曲のコンセプトが生まれる。大都会のプライドと自己達成のヴェールは、探求するにはとても興味深いコンセプトだよ」

そして、メジャーからの最初の作品 “Alphaville” をリリースした後、最上階の豪華さについての考え方は、さらに深まりました。Trey Spruance (Mr. Bungle) がプロデュースし、Colin Marston が Menegroth Studios で録音した “Alphaville” は、壮大なスケールで、これまでで最大のサウンド・プロダクションとなっていたのです。メタル・コミュニティーの中でのこのレコードの評判は非常に大きく、アールデコの影響を受けた不可思議なトリオは、地元の人気者からメタルのアーカイブスにその地位を刻むまでになったのです。Century Media から2枚目のリリースとなる “Spirit of Ecstasy” でIMPERIAL TRIUMPHANT は、その場所から音楽におけるより細かい部分に焦点を当てるために、音を十分に減らすことを決めました。
「ライブでは、僕の彼女と弟の彼女にマントを着てもらって、観客にマスクを配っていた。当時、僕らの音楽でモッシュする人はいなかったから、ブルックリンの人たちがじっと見ているクラシックな雰囲気よりも、もっと良い雰囲気になる方法はないかと考えていたんだ。全員がマスクをしていれば、グループの儀式になるし、僕らもその一員になれると思ったんだよね。今はモッシュピットも増えてきたけど、それでもマスクをかぶって来る人はいて、ライヴのために華やかなコスチュームに身を包んでくれる人もいる。ライブが単なるパフォーマンスではなく、みんなで参加する儀式のようなものだと感じてもらえたらうれしいね」
弊誌2020年のインタビュー で彼らはあのマスクについてこう説明してくれました。
「あのマスクは20世紀前半のニューヨークで育まれたアールデコ運動と密接に関係しているんだ。そのムーブメントは数千年前にさかのぼり、過去と深遠で神秘的な多くのつながりを持っている。そしてそれは、かつて僕たちの一部であったものがここにあると悠久に想いを馳せる、時を超えた夢の形でもあるんだよ。つまり歴史的意義のある魅力的な美学なんだ」

栄光と黄金のマスクを手にする前に、IMPERIAL TRIUMPHANT は2005年にフロントマン Zachary Ilya Ezrin のハイスクール・プロジェクトとしてスタートしました。そして2012年、このプロジェクトは、テクニカルとメトロポリタンをベースにしたテーマを掲げ、後にその特徴的な不協和音のデスメタル・スタイルとなる何かを形成し始めたのです。トレモロピックとディミニッシュ・セブンスを支えるブラスト・ビートから、金メッキを施したアールデコ調の豪華なイメージまで、IMPERIAL TRIUMPHANT のすべては極端。 不協和音のハイゲイン、悪夢のようなサウンドスケープ、強烈なポリリズムからなるアールデコの仮初めは、今にも全世界が崩壊しそうな感覚を与えます。
2006年に “ごく普通のブラックメタルバンドとして” 結成された彼らは、さまざまな不協和やジャズの要素を取り入れて進化してきました。近年流行りの “ディソナンス系” の一歩も二歩も先を行く凄みは、3人のメンバーの音楽的背景と、より協力的なユニットになったことによる自然な結果。このサウンドの開発以来、 Ezrin は、プロジェクトの寿命と鮮度を保つものは、コラボレーションであると感じています。
「自分の中で一貫しているのは、オープンマインドを保つことだ。コラボレーションをすればするほど、より良い音楽が生まれるんだ」

そうしてニューヨークの美学をさらに追求した Ezrin は、ニューヨークの建築物とフリッツ・ラング1927年の名作映画 “メトロポリス” からインスピレーションを得ることになります。この新たな着想は、トリオのターニングポイントとなり、今や象徴的な存在となったあのコスチュームを作るきっかけとなりました。
「全てはアールデコから始まったんだ。59丁目、セントラルパーク・サウスを歩いていたら、アールデコの古い建物がたくさんあるんだよ。アールデコはニューヨークに限ったものではないけど、もともとニューヨーク的な感じがするし、ヘヴィ・メタルでは使われない。そういうものに飛び込んで、IMMORTAL やブラックメタルが冬にやったことをアールデコでやってみたらどうだろう?って考えたのさ。Steve Blanco がマスクを思いつき、そのコンセプトを発展させ、さらに追加していったんだ」
Ezrin のペダルボードには必要なものしかストックされておらず、Victory amps の V4 Kraken で身軽に移動可能。
「それは IMPERIAL TRIUMPHANT とニューヨークの音楽が一般的に持つ、身軽で包括的な性質の一部だと思う。でも、このアルバムは特に、深夜のダウンタウンのジャズ・バー、そんな場所のジャムに入り込んだような、みんながリラックスして座っているような感じにしたかったんだ」
ニューヨークは夢と現実が共生している場所。
「この街には極端な二面性があり、超高音と超低音がある。最も裕福な人々が住む場所であり、最も貧しい人々が住む場所でもある…そして、それらは互いにほんの数ブロックしか離れていないんだ。音楽的には、IMPERIAL TRIUMPHANT はニューヨークの音にインスパイアされていると言える。通りを歩いていて、サイレンが鳴り響いたり、地下鉄に乗ったり、列車が文字通りトンネルをすり抜ける音を聞いたことがあるだろう。そういうものからインスピレーションを受けて、 “ああ、これをギターで弾いてみよう” と思うんだ。なんでわざわざサンプリングするんだ?自分のギターで弾けばいいんだから」

アールデコを基調とした大都市の風景というテーマは、自然とより大きなスケールで、いわば摩天楼の高みに到達することを切望していきました。そこで、メジャーなメタル・レーベル、Century Media と手を組むことになったです。
「僕たちはかなり野心的なバンドで、その野心をサポートしてくれるレーベルが必要だったんだ。彼らは俺たちに大きなリスクを負ってくれた。ただ、僕たちがアリーナで売れまくって、金儲けしたいっていうのとは違うんだ。彼らはまず芸術的なことを考えてくれるから、結果的に彼らのリスクが報われたと言えるね」
そうして生み出された “Alphaville”はメタル世界で賞賛を浴びましたが、それは決して偶然ではありませんでした。IMPERIAL TRIUMPHANT は何年もかけて自分たちのスタイルを確立し続け、”Alphaville” はまさにその積み重ねの結果。「少しの運と多くの努力があれば、すべてのチャンスは次のチャンスにつながるんだ」
“Alphaville” が IMPERIAL TRIUMPHANT の能力のマクロに焦点を当てたことで、トリオは次の作品を書く時には何か違うことをしようと決めていました。
「”Spirit of Ecstasy” は、まずその名前にとてもインスパイアされている。ロールス・ロイスという会社について学ぶうちに、ロレックスのような超高級品会社について学ぶようになったんだ。ロールス・ロイスには、”スピリット・オブ・エクスタシー” と呼ばれるフードオーナメントがある (ボンネットに装着するエンブレム) 。ロールス・ロイスの製品には、そうしたユーザーの体験や製品のメカニズムに役立つような小さなディテールがたくさんあるんだよね。面白いコンセプトだと思ったから、そのメンタリティーを音楽に応用してみたらどうだろうと考えたのさ」

“Spirit of Ecstasy” は “Alphaville” よりもシンプルなサウンドですが、しかし、よりミクロで、彼らの細部へのこだわりは繰り返し聴くことでより一層、聴き応えを与えてくれます。
「構造的には、”Alphaville” よりもさらにシンプル。僕らは次のステップに進むために、自分たちのミクロなニッチをさらに開拓し、狭い穴にさらに入り込んで、そう、ソングライティングもさらに向上させようとしたんだ。混沌の中にある明晰さの瞬間を人々に与えようとしたんだ。僕たちは曲をすべて書き上げてから、それらをいじくりまわして、非常に細かい部分まで綿密に調べていった。すべてがあるべき姿であることを確認するために、1秒1秒レコードを見直したんだ」
こうしてニューヨーカーの努力は、異様に録音されたボーカル、サックスとギターのデュエル、風の吹くサンプルなど様々な要素を加えるという形で実を結び、すべてが特定の場所に配置され、独自の “フードオーナメント” を掲げて、”Spirit of Ecstasy” がラグジュアリーな “高級ブランド” の産物であることを示すことになりました。
「Max G (Kenny G の息子) は親しい友人で、以前は IMPERIAL TRIUMPHANT のメンバーだった。一緒にニューヨークで小さな会社を経営しているんだ。ある日の午後、ランチを食べているときに、彼にこう聞いたんだ。”僕たちの新譜にこんなパートがあるんだけど、ギターがサックスと戦うというか踊るようなデュアルソロの状況を想像している。君と君のお父さんはこのパートに興味がある?”ってね。彼はイエスと答え、父親に尋ね、父親も同意し、そして彼らは絶対的な傑作を作り上げて帰ってきてくれた。僕たちのやっていることを理解してくれる人たちと一緒に仕事をすると、より強い作品ができるんだ。彼らのような演奏は、僕には決してできないからね。ゲストを招くのは結局、音楽のためであり、他の人の才能に信頼を置くことでもある。Kenny G はモンスター・プレイヤーで、Max G はモンスター・シュレッダーだということを知らない人がいるかもしれないけどね。
僕たちのドラマーの Kenny は Alex Skolnick とフリー・インプロヴァイズのカルテットで演奏している。だから、彼にはかなり簡単に依頼できたよ。VOIVOD の Snake は、彼らも Century Media に所属しているから、”Alphaville” のためにやった VOIVOD の “Experiment” のカヴァーを彼らが気に入っていることが分かったんだ。だから、Century Media は、もし僕らがゲストを望むなら、コネクションを作ることができると言ってくれたんだ。IMPERIAL TRIUMPHANT が決してやらないことは、名前だけのゲストをアルバムに迎えること。どんなに有名な人が来ても、その人がもたらすものは、何よりもまず音楽のためになるものでなければならない。それ以降のことは、すべて飾りに過ぎない」

一方で、Ezrin のギターに対するアプローチは、それ自体が興味深いもの。クラシックからジャズ、スラッシュからブルースまで、様々なスタイルを研究してきた Ezrin は、伝統的な手法と非伝統的な手法を融合させ、既成概念にとらわれないものを作り上げています。
「例えば、チャールズ・ミンガスのような演奏スタイルからインスピレーションを得て、そこから盗むことが多いんだ。彼は指板の上で弦を曲げたり外したりして、エフェクトをかけるんだ。完璧に音を出すことにこだわらなくなれば、いくらでもクールなことができる。アンプを通さない状態でヘヴィーでファッキンなサウンドなら、ゲインたっぷりのアンプで弾くと超ヘヴィーに聞こえるはずだよね。
プレイヤーとして、ある種のパラメーターを持つことはとても楽しいことなんだ。例えば、僕のギターはEスタンダードなんだけど、それよりずっと低い音で演奏するんだ。ワミーバーを使って、ローEのずっと下の音でメロディーを作るんだ。そうすることで、より深く考え、よりクリエイティブになることができる」
IMPERIAL TRIUMPHANT は、リスナーが “Spirit of Ecstasy” を掲げたロールス・ロイスでディストピアの荒野を走り抜けるようなイメージを追求しました。スラッシュ・ヒーローの VOIVOD TESTAMENT のメンバー、そして伝説のサックス奏者 Kenny G を加えたトリオは、不協和音のデスメタルに新たなラグジュアリーと高級感を付与し、55分の長さの中でリスナーにさらなる探究心を抱かせるきっかけとなりました。
「このアルバムは、聴けば聴くほど好きになるようなレコードの一つだと思うんだ。それは非常に挑戦的なことだけど、非常にやりがいのあることだ」

参考文献: BROOKLYN VEGAN : IMPERIAL TRIUMPHANT TALK ART-DECO INSPIERD DEATH METAL

Imperial Triumphant’s Zachary Ezrin on his wild approach to guitar: “There’s tons of cool stuff you can do when you stop caring about hitting the note perfectly”

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【STANDARDS : FRUIT TOWN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARCOS MENA OF STANDARDS !!

“Fruit Is Cute! Fruit Is a Great Symbol For Our Music And When You Listen To It You Become a Citizen Of Fruit Town.”

DISC REVIEW “FRUIT TOWN”

「僕も、今世界で起こっている出来事に対して、精神的に迷うことはあるんだ。だけど、それでも僕たちが一緒になって楽しめる音楽が世界に存在できるように、作り続けていこうという気持ちになるんだよ」
クロス・タップのギタリスト Marcos Mena のキュートで陽気なメロディーに導かれ、LAのデュオ STANDARDS は、情熱のリフと白熱のドラムスを緻密なインストゥルメンタル・マス・ロックのパレットへと描き出していきます。一見、無節操なパリピの音楽にも思える “Fruit Town”。しかし、そんな LA の太陽の裏側には、マスロックを明るい日差しのもとに連れ出したい、そして世界を覆うネガティヴをポジティブな日焼けで覆いたい、そんな想いが潜んでいるのです。
「このバンドは、本当にギターリフひとつとドラムに単純化できると思うんだ。ドラムの友人と一緒に演奏するときに、ギターリフだけをカバーしたのが始まりだったと思う。ベースやボーカルがいないと物足りない部分もあるんだけど、一方でギターとドラムのシンプルさを楽しむこともできる。最近は、曲の要素をどんどん増やしているんだけど、ギターとドラムが中心であることは変わりないよ」
インストゥルメンタルでプログレッシブであるにもかかわらず、このバンドのモットーは常にキャッチーで歌いやすくあるべし。そうして、リスナーをフルーツのマスコットが踊り狂う果物の街へと誘います。新鮮で多種多様な果実の味わいや匂いは、そのまま彼らのカラフルな個性につながっているのです。
ギターとドラムスというシンプルなデュオが構築するフルーティーな島や街は、ニヤリと笑うメロンやベリーが、心地よく捻れるリフと重く癖のあるリズムに合わせて揺れ動くような異世界です。フルーツ・アイランドの砂のようにきらめく6弦のさざ波は、計算されたものでありながら、どこかのんびりとしていて、明るく、人々を笑顔にしていきます。
「どんなものでも見せ方次第で魅力的になるんだ。よりテクニカルな音楽を、キャッチーなメロディーとキュートなイメージでアピールできるよう、これからも挑戦していきたいと思っているよ」
他の新進気鋭なギタリストと比較して、ジミヘンをヒーローと仰ぎ、TERA MELOS の Nick Reinhart, LITTLE TYEBEE の Josh Martin に師事し、タッピングの魔法使い Stanley Jordan の研究に勤しんだ Marcos のギタリズムは、斬新のみに絡め取られることなく、温故知新のユニークさを宿しています。そして、これまで難解でシリアスというイメージが先行していたジャンルに、ゆるキャラのポップでキュートな親しみやすさを落とし込みました。
それは例えば、メインストリームに目配せするクールな POLYPHIA, アニメの主題歌やキャラクターを自身の音に昇華する Sithu Aye, 音楽でチルアウトを企む CHON, そしてコスプレやヒーロー物で MV を飾り立てる COVET といったマスロック、プログレッシブの新鋭たちと同様に、 このジャンルのステレオタイプを破壊してマスリスナーに届けたいという想いのあらわれに違いありません。
今回、弊誌では Marcos Mena にインタビューを行うことができました。「だって、フルーツはキュートじゃないか!だから、フルーツは僕たちの音楽の最高のシンボルなんだよ。君たちが STANDARDS の音楽を聴いた瞬間から、フルーツタウンの住人さ!」 どうぞ!!

STANDARDS “FRUIT TOWN” : 9.9/10

INTERVIEW WITH MARCOS MENA

Q1: First of all, what kind of music were you listening to, when you were growing up?

【MARCOS】: I was raised on so much, my mom really pushed classical onto me and my dad loved lots of latin and world music acts. I really loved The Beach Boys as well. When I got a bit older I really got into metal music like Disturbed, System Of A Down, Slipknot, and many more. Then as I grew older, I began paying less attention to genre and more just trying to listen to as much as I could.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【MARCOS】: 母からはクラシックを、父からはラテンやワールドミュージックをたくさん聞かされて育ったんだ。THE BEACH BOYS も大好きだったな。もう少し大きくなってからは、DISTURBED, SYSTEM OF A DOWN, SLIPKNOT といったメタル・ミュージックにのめり込んでいったね。その後、年齢が上がるにつれて、ジャンルにこだわらずに、とにかくたくさんの音楽を聴くようになったんだ。

Q2: Your guitar is very technical, but at the same time the melody is really outstanding! What guitarists were your heroes?

【MARCOS】: Thank you! I really loved Jimi Hendrix growing up, but technically got very inspired by prob guitarists Nick Reinhart, Josh Martin and tapping extraordinaire Stanley Jordan. I was actually able to study with Nick and Josh and learned quite a bit from them. Regardless of technique, I still very much enjoy keeping things as melodic as possible!

Q2: あなたのギターは、非常にテクニカルでありながら、歌心が際立っていますよね?

【MARCOS】: ありがとう!僕は Jimi Hendrix を愛してそだったんだ。それから、Nick Reinhart, Josh Martin そしてタッピングの名手 Stanley Jordan から技術的に非常に大きな影響を受けているね。実際に Nick と Josh に師事することができ、彼らからかなりのことを学ぶことができたよ。テクニックに関係なく、できるだけメロディックに演奏することを楽しんでいるよ。

Q3: You have toured with such distinguished talents as Polyphia, Covet, Delta Sleep, and Sithu Aye. Have they inspired you in any way?

【MARCOS】: I am always inspired by everyone we play with, I love watching bands before we play and feeling this great onstage connection. Live performances are my favorite because you can really feel the energy in the room, so I feel that everyone we’ve played with has given me the energy I need to put into my live shows.

Q3: あなたはこれまで、POLYPHIA, COVET, DELTA SLEEP, Sithu Aye といった素晴らしい才能とツアーを共にしてきました。彼らからインスパイアされることはありましたか?

【MARCOS】: 一緒に演奏するみんなからは、いつも刺激を受けているよ。演奏する前にバンドを見て、ステージ上で素晴らしいつながりを感じるのが好きなんだよね。
ライブは会場のエネルギーを感じられるから大好きさ。これまで一緒に演奏したみんなから、ライブに必要なエネルギーをもらっている気がするんだ 。

Q4: I have a simple question, why are you so obsessed with fruit? Who lives in Fruit Town and Fruit Island?

【MARCOS】: Fruit is cute! Fruit is a great symbol for our music and when you listen to it you become a citizen of Fruit Town .

Q4: 素朴な疑問なんですが、なぜあなたはこれほどフルーツにこだわっているんですか?フルーツタウンやフルーツアイランドにはいったい誰が住んでいるんでしょう?

【MARCOS】: だって、フルーツはキュートじゃないか!だから、フルーツは僕たちの音楽の最高のシンボルなんだよ。君たちが STANDARDS の音楽を聴いた瞬間から、フルーツタウンの住人さ!

Q5: Why do you work as a simple duo, guitar and drums?

【MARCOS】: I think the band can really be simplified down to a single guitar riff and drums. I think the beginnings of this came from when I’d play with drummer friends of mine and just cover guitar riffs. Without bass and vocals there were things missing, but also there was a lot to enjoy about the simplicity of guitar and drums. Recently we’ve added more and more to the song, but kept the focus on guitar and drums.

Q5: ギターとドラムスという、シンプルなデュオで活動しているのはなぜですか?

【MARCOS】: このバンドは、本当にギターリフひとつとドラムに単純化できると思うんだ。ドラムの友人と一緒に演奏するときに、ギターリフだけをカバーしたのが始まりだったと思う。ベースやボーカルがいないと物足りない部分もあるんだけど、一方でギターとドラムのシンプルさを楽しむこともできる。最近は、曲の要素をどんどん増やしているんだけど、ギターとドラムが中心であることは変わりないよ。

Q6: Those fruit characters in the artwork are so adorable! There are many such characters called “yuru-chara” in Japan. Of course, they have grown up along with the Japanese culture of anime and video games. Are you influenced by Japanese culture?

【MARCOS】: 100%! These are very fun and important to me!-Death Note, Cowboy Bebop, Naruto, Demon Slayer, Hunter X Hunter, Yu-Gi-Oh, Super Smash Bros…Not all made their way to the music but I have fond memories of all of these! I think Japanese culture has been so influential on many Americans like myself, from anime to video games to trading cards. I really like the style and have obviously incorporated many things into the imagery that goes with the music, it just works so well!

Q6: アートワークのフルーツのキャラクターはとても可愛らしいですね!日本では、こうしたかわいいキャラクターたちかま “ゆるキャラ” としてしのぎを削っているんですよ。もちろん、それらは日本のアニメやゲームとも関連しています。そうした日本の文化に影響を受けていますか?

【MARCOS】: 100%、間違いないね! デスノート、カウボーイ・ビバップ、ナルト、デーモン・スレイヤー、ハンター×ハンター、遊戯王、大乱闘スマッシュブラザーズ・・・全てが僕の音楽になったわけではないけれど、どれも思い出深いね!
こうした作品は、僕にとってとても楽しく、大切なもの。日本の文化は、アニメやゲーム、トレーディングカードなど、僕のようなギークなアメリカ人に大きな影響を与えていると思うよ。日本のスタイルがとても好きで、音楽に合わせたイメージに様々なものを取り込んでいるんだ。

Q7: Math-rock and progressive music have an image of being basically serious and esoteric, but you, Covet, Polyphia, and Sithu Aye seem intent on turning that image on its head and appealing to a variety of people while also actively incorporating melodies and mainstream music, would you agree?

【MARCOS】: I do agree! Anything can be appealing with the right presentation and I hope to keep trying to make more technical music appealing with catchy melodies and cute imagery.

Q7: マスロックやプログレッシブな音楽には、シリアスで難解なイメージがつきまといます。そんな中で、あなたや COVET, POLYPHIA, CHON, Sithu Aye といったアーティストは、そうしたイメージを変えようと努力し、より多くの人々にアピールすることを望んでいるようにも思えます。

【MARCOS】: そう思うよ。どんなものでも見せ方次第で魅力的になるんだ。よりテクニカルな音楽を、キャッチーなメロディーとキュートなイメージでアピールできるよう、これからも挑戦していきたいと思っているよ。

Q8: The world is currently in a dark situation: pandemics, wars, division, discrimination, etc. Listening to your music, I feel like I can escape from such a negative world. Are you happy that Standards’ music has that effect?

【MARCOS】: Yes very much so! I also find myself sometimes mentally lost when it comes to events that are occurring now in the world, but I think it just inspires me to keep creating so that we can have music to connect and enjoy together.

Q8: 20年代の世界は、パンデミックや戦争、人々の分断で実に暗いものとなっています。ただ、あなたの音楽を聴いていると、そんな憂鬱を忘れられるような気がしますよ。そうしたポジティブな影響をリスナーに与えることは、あなたにとってうれしいことですか?

【MARCOS】: うん、本当にうれしいよ!僕も、今世界で起こっている出来事に対して、精神的に迷うことはあるんだ。だけど、それでも僕たちが一緒になって楽しめる音楽が世界に存在できるように、作り続けていこうという気持ちになるんだよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED MARCOS’S LIFE

BEACH BOYS “PET SOUNDS”

I really appreciate this album for its groundbreaking arrangements and musically rich compositions. The genius of Brian Wilson is all over this album and the creation of the album is also an interesting story. I learned a lot from this record and will listen now and again to remind myself of how amazing music can be!

画期的なアレンジと音楽的に豊かな構成。本当に感謝しているよ。Brian Wilson の天才的な才能がこのアルバムの至る所に存在し、アルバムの制作自体も興味深い物語となっているね。このアルバムから多くのことを学んだし、音楽がいかに素晴らしいものであるかを思い出すために、これからも何度も聴くことになるだろうね。

SLIPKNOT “S.T.”

Heavy music is done completely different on this record and I think nobody can deny the raw visceral energy on this album. It really got me passionate about music and continues to inspire me with regards to the performances and musical ideas!

このアルバムでは、ヘヴィ・ミュージックが全く違ったものに仕上がっていて、生のエネルギーは誰にも否定できないものだと思う。このアルバムで音楽に対する情熱が高まり、パフォーマンスや音楽的なアイデアに関してもインスピレーションを受け続けているんだ。

DIRTY PROJECTS “SWING LO MAGELLAN”

I think my musical journey can be marked by the time I spent before hearing this album and all of the time after I had listened to every track on it over and over. This album is mostly a folk album with tinges of world music, experimental and rock and it is as unique as it is infectious. The guitar work is also very unique, taking influence from equal parts African stylings and rock and roll. A more out there listen, but a rewarding one that changed how I think about music.

僕の音楽の旅は、このアルバムを聴く前に費やした時間と、このアルバムの全曲を何度も聴いた後に費やした時間によって特徴づけられると思う。このアルバムは、ワールドミュージック、エクスペリメンタル、ロックの色合いを持つフォークアルバムで、そのユニークさと感染力の強さは折り紙付き。ギターワークも非常にユニークで、アフリカンスタイルとロックンロールの影響を等しく受けている。このアルバムは、僕の音楽に対する考え方を変えてくれた、とても価値のある作品さ。

THE 1975 “A BRIEF INQUIRY INTO ONLINE RELATIONSHIPS”

This is a more modern album that toys with the concept of genre, with each track having a unique flavor. Seeing The 1975 flex their creative muscles on this album inspired me to also play around with different sounds and genres, while still having a consistent tone. I love every track on this album so much!

ジャンルという概念にとらわれない、より現代的なアルバムで、各曲がユニークな味わいを持っている。このアルバムでThe 1975がクリエイティブな力を発揮しているのを見て、僕も様々なサウンドやジャンルで遊びつつも、一貫したトーンを持っていたいと思うようになった。このアルバムはどの曲もとても気に入っているよ。

JIMI HENDRIX “ARE YOU EXPERIENCED?”

It’s hard to find better inspiration than in the story of Jimi Hendrix. Side man turned blues and turned psychedelic hero. A shining star that burned out so quickly, but made such an impact. Are You Experienced? has blues songs, experimental and psychedelic with mind blowing guitarisms, from unique chord work to blistering solos I still find so much in this work. A true classic that got me on my way and still inspires me.

ジミ・ヘンドリックスの話ほど良いインスピレーションを見つけるのは難しい。ブルースからサイケデリック・ヒーローに転身した男。すぐに燃え尽きてしまったけど、強大なインパクトを与えた輝く星。ブルース、エクスペリメンタル、サイケデリック、ユニークなコード・ワークから強烈なソロまで、僕は今でもこの作品の中に多くのものを見出している。僕の進むべき道を示してくれた真のクラシックであり、今でも僕をインスパイアしてくれるよ。

MESSAGE FOR JAPAN

I wanna come and visit so badly! Hopefully we can come soon and play for all of you!

日本に本当に行きたいんだ!できたらすぐ行って、君たちのためにプレイしたいよ!

MARCOS MENA

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KARDASHEV : LIMINAL RITE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICO MIROLLA OF KARDASHEV !!

“Young People Will Inevitably See The Cognitive Decline Of Someone Close To Them Beit a Grandparent, Aunt, Uncle, Or Parent In Their Life At Some Point And We Wanted To Capture That Moment In An Album.”

DISC REVIEW “LIMINAL RITE”

「基本的に僕たちは、ブラックメタルよりもデスメタルやデスコアの要素が強いと思っている。例えば、歌メロにしても、メタルコアとは明らかに違うからね。それに、アトモスフェリックな要素もあるけど、アトモスフェリックなブラックメタルとは違っている。最終的に、少なくとも僕にとって KARDASHEV は、デスメタルのリフやドラムワークとシューゲイザーのカスケード・リバーブを組み合わせたものだと判断し、”Deathgaze” “デスゲイズ” と呼ぶことにしたんだ」
KARDASHEV は、デスメタルとシューゲイザーの婚姻を祝いつつ、様々なフレーバーの独特なコンビネーションを生み出し、リリースごとに革命的な進化を遂げてきました。その名に仰ぐガルダシェフ・スケールでいえば、さながらメタルのタイプⅢ、銀河文明と言えるでしょうか。セカンド・フル “Liminal Rite” で彼らは、メタルの境界線をさらに押し広げ、極端にヘヴィでありながら、繊細で壊れやすい、不可能にも思える二律背反の音楽でとめどない感情の頂きに至ったのです。
「ナレーションには、リスナーが実際に向かい合う現実の認知症の人物とストーリーをつなぐ役割を果たし、アルバムを抽象的ではなく、より現実的なものにする役割があるんだよ。若い人たちは、祖父母、叔父、叔母、親など、身近な人の認知機能が衰えていくのを必ず目にするはずで、その瞬間をアルバムに収めたいと思った」
KARDASHEV は、”デスゲイズ” という独創的なジャンルの創始者であるだけでなく、歌詞の面でもヘヴィ・メタルの常識を覆します。その高齢化とは裏腹に、これまで多くのメタル戦士が避けて通ってきた “加齢” “認知症” という重さの種類が異なるテーマを、KARDASHEV は深々と掘り下げているのです。
過去に生きるとはどういうことなのか?過度のノスタルジーはいつ強迫観念となり、現在の妨げとなり、罪悪感という牢獄となるのか? “Liminal Rite” は、過度に美化された過去がいかに現在を傷つけ、誘惑し、自己破壊の道へと導くのかを探求し警鐘を鳴らしているのです。そして、リスナーが作品と現実をより強固に結びつけられるように、彼らはメタル世界ではそう馴染みのないナレーターを導入したのです。
インタビューに答えてくれた Nico は、このアルバムが忘れられた過去を喚起することで、今一度子供を強く抱きしめたり、長年話していなかった友人に電話をしたり、昔ハマっていた趣味を再開させたリスナーがいることをうれしく思っています。ただ、過去を反芻しすぎた結果、現在の混沌に圧倒されるノスタルジアのスパイラルにはまり込み、少し強迫観念的になってしまうことを怖れています。それは認知症の優しいはじまりかもしれないのですから。実際、”Luminal Rite” は、日々の生活が徐々に現実と乖離していく老人の物語。
「僕たちはポップなメタルを書いているわけではない。それは確かだ。でも、GOJIRA や ANIMALS AS LEADERS のようなアバンギャルドでもなく、ただ感情と興奮の瞬間を積み重ねる音楽を書いているだけなんだ。それが慣習を破壊することであるならば、それはそれでよいのだけど、僕たちはただ意味のある音楽を作りたいだけなんだよ」
音楽的にも、明らかに KARDASHEV はメタルの過去や慣習を破壊していますが、それはただ吐き出される感情や興奮が積み重なっただけ。まずはエモーショナルなトーン、それから他のすべてが続く。それが KARDASHEV のやり方です。”The Approaching Of Atonement” のゴージャスなドローン、”Silvered Shadows” の緻密なレイヤー、そこから悲劇の空気がアルバムの大部分を覆い、その文脈において彼らは様々な音楽の領域をカバーしていきます。プログレッシブ・デスメタルの世界から、”Lavender Calligraphy” のようなポストメタルの音の葉へシームレスに移行する彼らの破天荒な才能は、さながらフリーフォーム・ジャズや前時代のプログレッシブ・ロックのようでもあり、流星のようなサクスフォンとシンセの海を交えながら狂気のエナジーで意図的な物語を紡いでいくのです。
中でも、ブラックメタルの喉をかきむしるような騒めき、獣のようなデスメタルの咆哮、ポストハードコアの叫び、ガラスのような高音のクリーンなど、様々なスタイルをマルチトラックで表現する Garrett が、”Glass Phantoms” で見せる痛々しいまでの怒り、やり場のない絶望に心を動かされない人はいないはずです。KARDASHEV はまぶしいほど明るい場所と、心を奪われるほど暗い場所、そしてその美醜の中間を見事に支配して、最初から最後まで、心が痛むほど美しく、事実上、完璧な作品を作り上げました。
今回弊誌では、ギタリストで中心人物 Nico Mirolla にインタビューを行うことができました。「今は、まるで数年前よりも STEM (化学、技術、工学、数学) 分野で驚くべき進歩がまったく遂げられていないかのように、”優れている” “良い” 生活のあり方にまつわる時代錯誤があるように思えるんだよね。昔の方が良かったって。さらに、ノスタルジアはとんでもない麻薬であって、対処しないままだとひどく有害なものになりかねないということに、全員が同意したんだよ」 ライブより昼間の仕事を優先するというのも、これまでにはなかったタイプのバンドかもしれませんね。TesseracT のファンにもおすすめしたい。どうぞ!!

KARDASHEV “LIMINAL RITE” : 10/10

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COVER STORY 【FAITH NO MORE : ANGEL DUST 30TH ANNIVERSARY】


COVER STORY : FAITH NO MORE “ANGEL DUST”

30th ANNIVERSARY OF “ANGEL DUST”

1992年。その音楽の風景は1990年とは劇的に違っていました。NIRVANA の急成長によってアンダーグラウンド・ロックの水門は開かれ、メジャー・レーベルは MELVINS, MEAT PUPPETS, Daniel Johnston といった、80年代には1ミリも触れられなかったような Kurt Cobain が認めたアーティストにプラットフォームを与えていったのです。では、チャート上位のアーティストが全員、薄汚れた変人フリークになってしまった時、FAITH NO MORE はどうしたのでしょう? 結果は、Kerrang! が “史上最も影響力のあるアルバム” と呼んだレコードが誕生しました。それは完全な真実ではないかもしれませんが、90年代後半から2000年代にかけて、”Angel Dust” ほどポピュラーなロックに大きな影響を与えたアルバムはほとんどなく、RAGE AGAINST THE MACHINE のセルフタイトル、REFUSED の “The Shape of Punk to Come”、そして NIRVANA の “Nevermind” といった他の革新的レコードと肩を並べているのはまちがいないでしょう。
それに、FNM が Nu-Metal という “嫌われ者” のジャンルへの影響をいくら否定しようとしても、例えば “Midlife Crisis” のうなり声のラップ・ヴァースは KORN のヴォーカルの下地を作り、”Everything’s Ruined” の劇的なピアノリフと轟音のグルーヴは LINKIN PARK のプロト・タイプのよう。また、”Kindergarten” や “Crack Hitler” といったトラックにおける Patton のフリーキーなヴォーカルと、DISTURBED の象徴的な “OH WAH-AH-AH!” は直系でつながっているともいえるでしょう。そして、1年後に NIRVANA がそうするように、FNM も本能に従って、最大のヒットに続く反抗的で “アン・コマーシャル” な傑作をリリースし、嫌われること、反応を引き起こすこと、境界を広げることの大切さを今に伝えているのです。
“Angel Dust” のプロダクションは、当時の他のロックレコードよりもオールドスクール・メタルとの共通点が多く、鮮明さを犠牲にして鈍重なヘヴィネスを実現し、アルバムに独特の陰険な雰囲気を与えています。ギターはより太く、ドラムはより洞窟的で、ボーカルの一部が他のバンドに滲んでいても、演奏と個性は輝き、音楽はしばしば容赦ない音のハンマーへとシームレスに収束していくのです。本作のギターソロは METALLICA というよりは PINK FLOYD に似た傾向があり、激しいシュレッドをやめて記憶に残る構成になっているのです。

1991年に入ると、FAITH NO MORE は RIP や Kerrang! を含む多くの音楽誌でバンド・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、有名なミュージシャンとなりました。高い評価を得たアルバム “The Real Thing” のプロモーションのため、バンドは89年から2年間ツアーに出続け、プレスやファンから注目され続け、新しい曲を作るどころか息つく暇もないほどの状況でしたが、この年の彼らのスケジュールはよりリラックスしたもので、ほんの数回のショーが行われただけでした。そのため、バンドは混沌とした状況から一歩引いて、次のアルバムのアイデアを練ることができたのです。 ゆえに、”The Real Thing” が1983年という早い時期に書かれたアイデアを含んでいたのとは異なり、”Angel Dust” はこのアルバムのために書かれた新鮮なマテリアルが中心となって構成されているのです。
バンドがサンフランシスコに戻った3週間後、Bill Gould, Roddy Bottum, Mike Bordin がリハーサル・スタジオに入り、キャリアの中で最も注目すべき作品を作り上げるために作曲を開始します。
Gould は Jello Bafra や覆面デスメタルバンド BRUJERIA と付き合いながら、同時にイージーリスニングからもインスピレーションを受けていました。一方、Bottum はエレクトロニック・ポップやテクノ・サウンドからインスピレーションを得ており、もちろん、Mike Patton は休むことなくアヴァンギャルド・シーンに関わり続けていました。John Zorn と過ごし、NAKED CITY と共演し、Mr. BUNGLE のデビュー・アルバムをレコーディングしながら。
この時期バンドは、GODFLESH, WEEN, YOUNG GODS, THE SUGARCUBES, Henry Manciniに影響を受けたと語っています。”Angel Dust” のデモが届くと、Patton は孤独を感じ、様々な実験に着手し、これまでで最も創造的な歌詞を書くためのインスピレーションを得ます。Jim Martin はしかしこの新しいアイデアに難色を示し、リハーサルを放棄してトラックでラテン語の練習をするようになりました。
“RV”、”Caffeine”、”The World Is Yours” の初期バージョンは、ブラジルからの帰国時に行われたいくつかのショーと、その年の後半に行われた初の東京でのショーでセットリストに加えられました。
「ベースラインとメロディーとリズムを使った新しい曲をジャムり始めたんだ。でも、キーボードとベース、キーボードとドラム、ドラムとキーボード、そういう組み合わせが多いんだ」- Mike Bordin 1992年
より大きな予算とレコード会社から許されたより多くの自由で、FNM は1991年12月にサンフランシスコのコースト・レコーダーズ・スタジオを借り入れることになります。Matt Wallace がバンドにとって4枚目のアルバムのプロデュースに戻ってきます。
「彼は僕らに手を貸さず、ただ僕らのやりたいようにやらせてくれるんだ。彼は以前にも僕らと一緒に仕事をしているから、僕らと同じように “拷問” を受ける可能性があるし、それは心地よいことだよ」- Mike Patton 1992
「彼は良い音を出そうとするし、それが彼のすべきことだと思う。スタジオに入るまでに、自分たちのやりたいことがある程度まとまっていればいいんだけど。そうすると、彼がそれをいじくり回すのは難しくなる。バンドに5人いれば、もう十分だからね。キーボードとギターとたくさんのベースとたくさんのドラム、そのバランスを取るのは簡単なことじゃないんだ」- Mike Bordin 1992
「共同プロデューサー、エンジニア、ミキサーという立場からすると、”The Real Thing” のサウンドは薄く、圧縮されすぎで、ハイエンドが強すぎると感じていたから、自分なりには距離を置いていたんだ。それがラジオやMTVでは有利に働いたんだけど。 だから、”Angel Dust” ではより充実した、より自然なサウンドのレコードを作ろうと努力したんだ” – Matt Wallace 2012年
Wallace は “Angel Dust” のレコーディングが非常に困難な経験であったため、アルバムが完成した後休みを取り、FNM から距離を置かなければならなかったものの、その結果を誇りに思ったと語っています。
「”Angel Dust” の終わりには、こうした難しいレコードを作るために、バンド内、特に皆と Jim Martin の間でかなり激しい軋轢があり、本当に激しい論争があった。Bottum は依存症の問題と格闘していたし、レコーディング・スタジオは全く協力的でなく、僕は基本的にプロデュース、エンジニア、アシスタント・エンジニア、電話応対をしなければならず、本当にストレスの多いレコードだった。それで、このアルバムの最後に、僕は2ヶ月ほど休んで、もうしばらくこの音楽はやめるよと言ったんだ。で、そのレコードの最後に、私は彼らに言ったんだ。”いいか、君たちは新しいプロデューサーか、新しいギタリスト、あるいはその両方を見つける時期だと思う “とね」Matt Wallece 2015年

FNM の意図は、必ずしもファンを混乱させるようなアルバムを構成することではなく、自分たちとリスナーに挑戦するような知的な進化にありました。しかし、その結果は一部の人にとって不愉快なものとなったのかもしれません。彼らは、”頭の中にあるものを聞いて演奏する方法を学んだ” と告白しています。
「曲作りに関して言えば、無意識にやっていることなんだ。僕たちはミュージシャンで、バンドをやっていて、曲を書く。自然にやっていることを分析するのは難しい、本当に難題だ。特に、面白い言い方をするのは、ちょっと近すぎるから難しい。自然に見える、自然にやっていることなんだ」- Bill Gould 1992年
「このアルバムには中間がない。絶対に大ヒットするか、大失敗するかのどちらかだ」- Bill Gould 1992年
既に巨大なファン・ベースを増やすために(そして銀行に現金を入れるために)、最も簡単なことは、バンドが “The Real Thing” と同じように “Epic part 2” のアルバムを続けることでしょう。 しかし、これが FNM なのです……信じられないほど個性的な5人が一緒になって爆発的な結果を出し、決して “簡単な” ことは常にしてこなかったのですから。
FNM は常に、それがポジティブなものであれネガティブなものであれ、反応を引き起こすことを楽しんできました。BLACK SABBATH の “War Pigs” のカヴァーを演奏するよう観客が要求すると、コモドアーズの “Easy” を完璧に演奏し、大衆を見下しながらニヤリと笑う。 それが FAITH NO MORE。
つまり、”Angel Dust” の多彩な音楽性は、彼らがファンを獲得したアルバムとは明らかに一線を画していました。”The Real Thing” は、そのユニークなサウンドを分類する方法を持たないプレスによって、”ファンク・メタル” というタグを付けられ、狭い穴蔵に押し込められることになっていました。ある意味、FNM はより挑戦的なレコードを作ることで、ファンク・メタルとそれが魅了した群集から意図的に距離を置こうとしたのですが、同時にそれは、単に音楽が自然に取った方向でもあったのです。
「このファンク・メタルというものには、本当にうんざりする。俺が一番やりたくないのはファンク・メタル・バンドなんだ、俺たちはそれ以外のものになろうと思っているんだ。ファンク・メタルを演奏するバンドはすべて嫌いだし、ほとんどのバンドが同じように感じていると言ってもいい」 Bill Gould 1992年
実際、彼らはこの新譜が人々に嫌われることを確信しており、”Alienating Your Public” というタイトルにするべきだと冗談を言っていたくらいです。
「おそらくこの新譜は、ファンを混乱させ、大衆を遠ざけるために、前作より少し奇妙なものになるだろう。少なくとも、僕たちはそう非難されてきた。別に何かの主張を押し通そうとしたわけではなく、ただ僕らが書きたい音楽なんだ」 – Roddy Bottum 1992年
「僕たちは人を怒らせて喜んでいるなんて言うべきじゃない。ただ、自分たちがやりたいことをやりたいだけであって、必ずしも彼らが期待しているようなことをやりたいわけじゃないんだよな。このレコードが “The Real Thing Part II” になると期待している人は、目を覚ました方がいい!すでに怒っているファンもいる。もうすでに腹を立てているファンもいるんだ」- Mike Patton 1992年
バンドはミキシングの段階まで、Slash のレコード会社の重役に楽曲を隠していましたが、ついに “Angel Dust” を聞かせたとき、彼らも自分たちの投資の結果を信じられないほど心配していました。
「レコード会社の社長がスタジオにやってきて、こう言ったんだ。”誰も家を買わなければよかったのに” とね。 部屋の空気が一変した。あれは、現実を突きつけられるいい瞬間だった。僕の仲間の何人かはすでに家を買っていたからね」- Jim Martin 2012年
「レコード会社は完成したアルバムを聴いて、本当に怖くなった。それが、自分たちが正しいことをしたのだと知る唯一の方法だった。もし、彼らが気に入ってくれたら、何かが間違っていることになる。ミキシングを始める前は心配そうな顔がたくさんあったよ」- Roddy Bottum 1992年
「誰かが痙攣するのを見るのは素晴らしいことだと思わないか?本当に緊張しているのを見るのは素晴らしいことだと思わないかい?僕らのレコード会社でそういうことがあったんだ。彼らは僕ら一人一人に働きかけて、自分たちが何をやっているのかわかってるのか?と説得してきた。彼らは “The Real Thing” のファンを遠ざけることになると言った。理想を言えば、どこかにもうひとつ “Epic” を入れて欲しいということだ。どうやって売り出したらいいかわからないだとよ」- Mike Patton 1992年
このレコード会社の無関心、反発は、FNM を決して動揺させるものではなく、より一層 “Angel Dust” を誇りに思うようになります。
「このレコードは、僕たちをさらに一歩前進させるものだと思う。より自信に満ちたユニットとして、また、まだ学び、成長していることを示している。これは間違いなく進歩だよ。今回は、より良いレコードを作りたかっただけで、必ずしもプレスや他の人たちが並べようとするガイドラインに従う必要はなかったからね。自分たちの内面を掘り下げて、挑戦的で、対立的で、極めてユニークなものを出そうとしたんだ。僕はこの作品にとても満足しているよ」- Mike Bordin 1992年

では、これまでとは何がそんなに違っていたのでしょうか?
まずはよりシアトリカル。曲は断片的で、伝統的なヴァース/コーラス/ミドルの構成に従うのではなく、アルバムの各曲は、クラシックの序曲と同じように、音楽が激変する時に対立するセクションをしばしば持つ旅でとなります。そこには信じられないほど中毒性の高いメロディーがある一方で、激しいリフやドローン、病的なムードの変化もあったのです。Bottum はこれまでにないようなサウンドと、様々なソースからのサンプルの数々で実験をしていました。ギターソロは制限され、あるところではリフが残忍に露出し、あるところではほとんど聴こえません。ヴォーカルはより複雑で、パットンはその強大な声域をフルに使い、歌詞はより不穏で工夫されたものに化けました。結局このアルバムは、前作から完全に脱線したわけではなく、単に境界線をさらに押し広げただけだったのです。
「同じバンドがもう1枚アルバムを作っているんだ。もしみんなが少し変わったと言うなら、明らかに僕たちは何か正しいことをしているんだ。いつもと同じことをやっているんだけど、みんながそれに気づくくらいに面白くしているんだから」 – Bill Gould 1992年
「僕は “Surprise! You’re Dead” は前作の中でも特に過激なものだったと思う。このアルバムには、人々を驚かせるような極端な方向性のものが含まれている。つまり、何が不穏なのかよくわからないし、それが不穏なのだと思う。今回は自分たちのあり方を無茶苦茶に伸ばしたんだよな。それは素晴らしいことだよ。このレコードを家に持ち帰って、”これは一体何なんだ!” と思ってくれたら、僕たちは本当に嬉しい。そうなるだろうし、それはいいことだ。今回はレコード会社が少しきつめにネジを回そうとしたのは認めざるを得ない。サンプルも多いから、ちょっとビビったんだ。『おや、これにはたくさんの “サンプリング” が使われているじゃないか!ロックの聴衆はこのサンプリングに混乱すると思わないか?』ってね。あとは、『ちょっとレフトフィールドすぎる』とか、『ボーカルが役者じみてる』とかね。つまりロックじゃないってことだよ」- Mike Patton 1992

「シンガーというのは俳優と同じだ。人は歌手の言うことをそんなに真剣に受け止めるべきではない」- Roddy Bottum 1992年
加入して初の “The Real Thing” のプロモーション・ツアー中、Patton が新しい生活スタイルになかなか馴染めなかったことは周知の通り。 彼のあらゆるものに対する嫌悪感は明らかでした。 彼は仲間のバンドメンバーやプレスに擦り寄り、甘やかされたガキ大将のように振る舞い、Mr.Bungle に集中するためにいつでもバンドを脱退することを示唆し続けていたのです。
「あの頃は、受けるべきではないインタビューにたくさん答えていた時期だったんだ。FAITH NO MORE にうんざりしていたんだ。誰もアルバムを買ってくれないし、ただツアーを続けるだけだった。幻滅したんだ。ツアーをしていると、バンドとしてネズミのような生活をしているような感覚に陥ることがある。一時的に忙しくさせられたり、バカにされたり。ポン引きが売春婦を扱うように扱われるんだ。そして、その一員になりたくないと思えば、フラストレーションが溜まる。僕は這ってでも逃げ出したかった」
しかし、1991年になると変化が待っていました。Patton は徐々に FNM の一員であることに納得し、自分の役割に満足していくようになります。まだひねくれ者ではありましたが、だんだん大人になってきたのです。
「人間関係も、初めのうちは、いろいろなことを我慢している。でも、しばらくすると、そういうのが全部なくなって、一緒にいて落ち着くんようになる。たぶん、そういうことなんだと思う。相手の前でオナラや罵声を浴びせる方法を学ぶんだ。それが健全なんだ。いつも何かを恐れていたら、何もできない。みんなが少し楽になれば、どんなアイデアでも引き出せるし、それを操作したり、レイプしたり、バカにしたり、何でもできるようになる。でも、それでも……いいんだ。なぜなら、そうやってクソが作られるからだ。僕はそう確信している」- Mike Patton 1993
「どんなバンドなのか分からなかった。僕らはデフォルトでハードロック・バンドになった。それは偶然だった。でも美しいのは、僕ら全員が大事なことを知っていたことだ。僕たちはお互いに顔を見合わせて、どんなに悪くなっても、どんなにペットの猿になったとしても、どんなにペットのファンク・メタル・ロック・バンドになったとしても、それに対処しなければならない他の4人がいるんだと言うことができたから。そして、それぞれの人がそれぞれのやり方で、それに対処していた。僕がバンドに残ることに何の疑問も抱いたことはなかった。このアルバムのための曲作りを始め、確信に変わった。”The Real Thing” の時は他の誰かの音楽、他の誰かのバンドのようで、義務的なもののように感じていた」
「このアルバムの前にも、僕はアイデアを投げかけていた。それが愚かな勇気であれ何であれ、僕はいつも勇気をもっていたんだ。ただ、しばらくは誰かと一緒に刑務所にいたような気分だった。そして今、僕たちはちょっと奇妙な方法で友達になっているんだ」- Mike Patton 1994
Patton の外見の変化も明らかで、1992年の最初のプロモショットでは、ヘアメタル的なイメージは消え、シリアスなフロントマンの外見に変わっていることが確認できます。しかし、最も顕著な変化は彼の声。”The Real Thing” で彼に大きな注目をもたらしたファンク由来の鼻声は消え、ラップもなくなります。彼の歌声は、その声帯を駆使した極限のサウンドを聴かせてくれるようになったのです。うなり声、叫び声、悲鳴、激しい息づかい…数え上げたらきりがないほどに。
小便を飲む、タンポンを食べる、暴れる、叫ぶ、侮辱する、冗談を言う、歌詞を書く、1989年の暗い面を持つ。彼は、世界中のやんちゃで好奇心旺盛で歪んだ若者の定義となり、ただ地獄を見るために何でもやってみるという人物に見えました。しかし、そこからの Patton 最大の躍進は、FAITH NO MORE のメンバーとして幸せになったことか大きな要因でしょう。
「最初は果実が熟していなかったんだ。実は、バンドについて知りたいこともあったし、知りたくないこともたくさんあったから、それを無視していたんだ。問題に直面するよりも、無視する方がずっと簡単だと思ったんだ。 好戦的で反感を買うのは、本能なんだよ。全体が地獄に向かってスパイラルしているような不安定な状況に入った時、もう少しかき混ぜるんだ。このLPで、ようやく全員が同じ方向にスパイラルすることができたんだ」
歌の中のキャラクターになりきり、怒りを吐き出すのはセラピーになるのでしょうか?
「いや、怒りを公にするのは良いことではないから。作詞家やシンガーには、常に “自分の内面を投影している” という神話があるけど、そんなの嘘っぱちだ。歌い手は最悪だ。僕らは楽器の後ろに隠れることができないんだ……」Mike Patton 1992
Matt Wallece は、”The Real Thing” から “Angel Dust” へと成長を遂げた Patton に畏敬の念を抱きました。
「僕にとって、Patton の中の大きな変化は、”The Real Thing” の間、彼はまだ100% FNM にコミットしていなかったということにある。これは僕の読みで、間違っているかもしれないけど、彼が自分を守る方法、自分がまだ Mr. BUNGLE の一部だと感じる方法は、”The Real Thing” でほとんど別の人格になり、それによって、”ああ、僕はこのバンドにいるけど、本当は一員ではない” と簡単に言えるようにすることだったんだろう。でも、”Angel Dust” になってから彼は曲の成り立ちにずっと関わっていて、作曲中もその場にいたし、アレンジの指導もしていた。つまり、自分の声を楽器として使い、深く歌い、声域のあらゆるスペクトルを使うようになれたんだ。彼はチベットの詠唱やエスキモーの鼻歌など、あらゆるものを聴いていて、ヘヴィロックやオルタナティブ、プログレッシブ・バンドの文脈の中で、自分のボーカルがどうあるべきかというアイデアをレコードに持ち込んでいたんだ。このアルバムの後、多くのバンドが彼の後を追ったんだよ。でも、Patton は臆することなく、異なるボーカル・アプローチや歌詞、中にはかなり挑戦的な歌詞にも挑戦していたからね。彼が前面に出てきて旗手になったのは、本当に見事なことだと思ったよ。あれはスリルだった。あのレコード全体がスリルだったんだ」- Matt Wallece 2015年
1988年に Patton が FNM に参加したとき、”The Real Things” の音楽はすでに完成しており、彼は2週間の間に付随するメロディと歌詞を書き上げただけでした。”Edge Of the World” や “Zombie Eaters” の曲で試みたキャラクターの発明やロールプレイは、今や本格的な芸術形式となっています。
「歌詞を通して自分自身を明らかにする義務はないと思うんだ。というか、立ち位置が違う。歌詞がスリーブに印刷されているのは残念なことだよ。世間は啓示を期待しているのだから。歌詞は、僕たちの過去や人生について何かを語っているはずで、そして、歌詞を通してそのようなつながりを持つことは、ほとんど危険なことなんだ」- Mike Patton 1992年

Jim Martin と他の4人のメンバーとの間に亀裂が入ったのは、アルバム制作の最中でした。
「僕は何も違うことをしようとはしていない。ただ、僕が見たとおりの、あるべき姿でこれらの曲を演奏しようとしているだけだ。自分たちを再発明しているわけではない、そう断言できる。だから、”新しいことをする” なんてたわごとを持ち込まないようにね」Jim Martin 1992年
FNM は、自分たちの音楽がどのようなものであるべきかについての相反する個性やアイデアから常に成功を収めてきました。こうしたありえないような組み合わせが、常に素晴らしい結果を生んできたのです。
Martin の “Angel Dust” に対する態度は最初から緊張していて、曲からレコーディング、アルバム・タイトルに至るまで、すべてに納得がいかないようでした。リハーサルが始まる数週間前に彼の父親が亡くなり、バンドは彼のためにスタジオをサンフランシスコからオークランドに移したのですが、それでも Martin は参加しないことに決めたのです。
「バンドのメンバーも僕も、”一時中断して、数ヶ月後に再集結して、お父さんを悼んで落ち着く時間を作ろうよ” と言っていたんだけど、彼はもっとマッチョな人生観を持っていて、”いや、僕のプライベートな話はいいから、このアルバムを作ろう” って言ったんだ。それでバンドはオークランドにリハーサル場所を確保したんだけど…」- Matt Wallece 2015年
そのため、Martin は自宅でギター・パートを作り込むことになりました。
「変なテンションになるんだよ。彼は家で作業しているけど、僕たちが曲を作るときはギターも含めて全部をイメージするんだから。でも、彼が初日からそこにいなかったら、彼の心を読むことは期待できないでしょ?」。Bill Gould 1992年
「Martin と僕は両極端なんだ。天秤のバランスを保つために、僕が僕の方向に進めば進むほど、彼は彼の方向に進まなければならない。もし、彼が今のままで、僕がさらに進み続ければ、物事はおかしくなってしまう。だから、現状では、僕たちは少し微妙な関係になっているけど、これから解決していくだろうね」Roddy Bottum 1993年
曲作りに参加していなかったため、Martin は他のメンバーがどのような方向に進んでいるのか理解することが難しく、「とても作為的で、バンドが一生懸命になりすぎている」と感じていたのです。「自分がどこにフィットするのか理解するのに時間がかかったよ」とも。そのため、Gould はアルバムの一部でギターを弾いています。
「唯一苦労したのは、ギター・パートだった。Martin は僕らがやっていることをあまり理解していなかったから、ちょっとパニックになってしまって、自分たちでやってしまったんだ。いくつかのギター・パートは、ベースの Gould が演奏したんだ」 Mike Patton 1992年
「ギター・パートは僕のもので、すべてのトラックで僕がギターを弾いている。曲作りとアレンジにはかなり貢献した。Gould は “Midlife Crisis” と “Midnite Cowboy” に少しフワッとした感じのギターを加えてくれた。”The Real Thing” に続くという変なプレッシャーがあり、その結果、アルバム “Angel Dust” は僕が必要だと思う以上に音楽的に作り込まれたものになってしまった。僕はこのアルバムをもっとスタジオで作りたかったし、Gould はスタジオに入る前に最後の一手まで釘付けにしておきたかったんだ。僕は時間をかけて作りたかったんだけど、マネージメントとレコード会社は急いで作りたかったんだよ」 Jim Martin 2012年
「Martin はこのレコードを “ゲイ・ディスコ” と呼び続けた。何か演奏するたびに、”これはゲイ・ディスコの集まりだ” と言うんだ。で、僕は言ったんだ。”おい、もしお前がそのクソデカいギターを入れたら、それは “ゲイ・ディスコ” じゃなくなるだろう。だから、このプロジェクトに参加する必要があるんだ” ってね。それで、彼はギターのパートを担当するんだけど、翌日にはバンドがやってきて、そうじゃなくて彼に Jim Martin のままでやってほしいと思っていたんだ。だから、怒鳴り合いや意見の相違がたくさんあった。かなり醜かったね」- Matt Wallece 2015年
レコーディングはさらに拷問のようで、バンドと Martin の溝はエスカレートし、怒りが爆発していきました。
「最初から不愉快な経験だった! とても不愉快だったけど、これまで FNM とレコードを作ってきた経験と大差はない。いつもとても不愉快な経験だった。多くの人が子分を味方につけるために奔走し、愚かなゲームをして、状況を煙に巻く」 Jim Martin 1992年
“Angel Dust” のすべてが Martin を怒らせたわけではなく、彼は Patton のボーカルと歌詞をとても褒めています。 また、ギターが以前の FNM のレコードよりもずっと目立たなくなっていますが、それも全体のテイストには合っています。この作品でギターが脚光を浴びると、あるところでは非常に激しく、またあるところでは楽しくメロディアス。”Angel Dust” はソロが少ないものの、ギターのリフやメロディーはとても良いのです。
「曲作りに携わるときは、ギターのために書く。いつもそうしていればいいんだけど、今回のアルバムではキーボード・パートを先に書いていることが多かったから、それに合わせてギター・ラインを書こうとすると、”タフ” になってしまうんだよな。それは確かにチャレンジングなことで、いろいろと試行錯誤の末、結局は最もシンプルなものを使うことになるんだ」- Jim Martin 1992年

“Angel Dust” というタイトルは Bottum のアイデアで、レコーディングの早い段階で決まりました。薬物そのものとの関連はなく、「本当に恐ろしい薬物のための本当に美しい名前」というアイデアが気に入ったのです。
アルバムのジャケットは、Werner Krutein による飛翔前の白鷺の写真。裏面は Mark Burnstein による屠殺場に吊るされた牛の頭と肉の写真。美とグロテスクの極限を表現したタイトルとイメージは、彼らの音楽の中に完璧なまでに映し出されています。
「バンドそのもの、バンドの音、レコードの音、収録曲、タイトル、ジャケットなど、幅の広いものから狭いものまで、ここにはいろいろな要素がある。このバンドは多くの要素を持っていると思うんだ。重いものもあれば、美しいものもある。このアルバムは、アグレッシブで不穏なものもあれば、とても落ち着くものもあり、バランスがとれていると思う。レコードのタイトルは、もしドラッグに詳しくなければ、美しく聞こえるだろう。美しいようで恐ろしいものなんだ。表ジャケットは美しいもので、裏ジャケと合わせると不穏なものになる。そういうものにしたかったんだよ。レコードのジャケットとレイアウトは自分たちでデザインして自分たちで組み立てたんだ」” – Mike Bordin 1992年
当時、Martin はこのレコードのタイトルにも反対していましたが、2012年にさらに説明し、赤の広場にいるロシア兵にバンドの頭を重ねた写真を担当した経緯も語っています。
「このアイデアは Bottum のもので、他の誰も関わっていないんだ。彼は、フロントが鳥、バックが肉用ロッカー、そしてタイトルがエンジェルダストという基本的なコンセプトを持ってやってきた。問題は、”どうやってそのアイデアをレコードジャケットに反映させるかだった。”The Real Thing” と “Introduce Yourself” はレコード会社が考案しデザインしたジャケットで、僕たちは単にそのツケを払ったというだけのこと。これは芸術的な表現の機会であり、最終的に僕たちのうちの誰かが、誰もが納得するようなアイディアを持っていただけなんだ。スリーブにロシア軍を入れるというアイデアは、当時ハマっていた THE POGUES のアルバム “Rum Sodomy and The Lash” にインスパイアされたもの。結局、僕たちはリソースをコントロールし、人材を活用し、クリエイティブなコントロールを維持することができたんだ」 Jim Martin 2012年

1. Land of Sunshine
ワーキングタイトル : The Funk Song
「大好きだ、本当に高揚感がある。ほとんど天使のようだ」- Roddy Bottum 1992年
“Angel Dust” のオープニング・トラックは、FNM の伝統であるアップビートで騒々しいエネルギーの爆発。 Patton はこの曲を “グロテスクでポジティブな曲” と表現しています。歌詞は十分に楽しいにもかかわらず、ヴォーカルは皮肉なトーンで表現されているのです。
3日間寝ないでコーヒーを飲み、深夜のテレビ番組に没頭し、フォーチュン・クッキーを何袋も買って睡眠不足の実験中に思いついたのがこの曲の歌詞。 “Angel Dust” のなかでも特に誇りに思う歌詞の一つです。
「アメリカでは、深夜にセミナーやサイエントロジー、伝道のテレビ番組が放送されている。これは大掛かりな詐欺で素晴らしい。30分のコマーシャルでセミナーを全部買わせようとする。そしてもちろん、俺の本当のヒーロー、伝道師のロバート・ティルトンのような奴らのことを歌っている。ロバート・ティルトンには、何ものも、そして誰も触れることができないよ。彼はかなりの人物だ。テレビの上に手を置いてください、テレビの力であなたを癒しますと頼む。テレビの悪霊を使って、悪魔の頭を切り落とすために。ダラスに行ったら、彼の教会を訪ねよう!」 – Mike Patton
Patton は歌詞の一部をテレビ局のアナウンサーのような深い声で叫び、この曲の捕食的資本主義のインチキに対する批判に個性を与えています。最初の歌詞は、明るい未来への漠然とした約束で埋め尽くされていますが、最終的に、この曲のメインテーマである “弱者が利用される” ことに踏み込むのは2番目のヴァースで、彼はサイエントロジストの性格診断から直接引用したセリフを口にしているのです。
「感情的な音楽は、あなたにかなりの影響を与えますか?」
「あなたはよく遊び半分で歌ったり口笛を吹いたりしますか?」
自分の笑い声が響く中、Patton はコーラスを歌います。
「人生は価値あるものに見えますか?」
2. Caffeine
ワーキング・タイトル:Triplet
ギターはブルータル、キーボードはアトモスフェリックで夢のよう、ドラムはワルツの拍子を難なくこなす。Patton は唸り声と爆音の間を行き来し、あちこちで厳しい囁きも聞かせています。
歌詞は、Patton の睡眠遮断実験中に書かれたもので、3日目には幻覚を見るようになり、彼が唯一使用を認めた覚せい剤に敬意を表しています。
3. Midlife Crisis
ワーキング・タイトル : Madonna
“Midlife Crisis” は軽妙なラップで始まり、ジャジーでアル・ジャロウ風の弧を描いて上昇し、純粋なハードコアの接近戦で激突。歌詞は、中流階級で、安全で快適な繭を作り上げた、”安全な遊び人” のような人たちを非難し、なじります。Simon & Garfankel “セシリア” をサンプリングして作られた魅力的なグルーヴを持つこの曲は、”Epic” といくつか類似点があります。どちらもシンプルなベースライン、ラップのヴァース、そしてかなり難解な歌詞の内容を持っており、アルバムの中でも特に楽しい曲の一つであることは間違いありません。バンドはインタビューで、この歌詞がマドンナにインスパイアされたものであることや、有名人の下らない自己中心的な性質についてだと話しています。
「君は完璧だ、そう、その通りだ。でも、私がいなければ、あなたはあなたでしかない。
君の生理中の心/ 二人のための十分な出血はない」
自己執着というテーマは、歌詞にも反映されており、ほとんど間違いなく抽象的なオナニーの引用で満たされています。
Gouldは1998年、この曲の作曲過程についてこう語っています。
「この曲はみんなに責任がある。キーボードのパートから始まったんだ…みんなが僕らが次のレコードを出すのを待っていて、世界制覇を約束していた時期だった。で、彼らの目には、僕らが少し反抗的に映ったようで、それがある意味歌詞に反映されていると思うんだ。僕の立場からすると、全体が1音しかないような、でも歌になるような曲をやりたかった。だから、ベースパートが1つだけで変わらないものにしたかったんだ。レコーディングして初めて、プロデューサーが僕の意図を理解してくれたんだけど、当時は自分の足を撃つようなものだと思ったよ……」- Bill Gould1998年
Patton は歌詞の内容を少し話しています。
「この曲は、たくさんの観察とたくさんの推測に基づいている。でも、ある意味、マドンナのことを歌っているんだ…テレビや雑誌で彼女のイメージに溢れていた時期だったと思うし、彼女のやり方は僕に語りかけてくるようなところがある…まるで彼女がある種の問題を経験しているようなね。ちょっと自暴自棄になってるみたいなんだよ」- Mike Patton 1992年
4. RV
ワーキング・タイトル : Country & Western
このアルバムの中で最も不思議な曲の一つで、最初に書かれた曲の一つで。完璧なカントリー&ウエスタンの小曲をFNMの作法に合うように醜くねじ曲げたもの。
「最初は僕がピアノでやっていたんだけど、Gould と一緒に遊び始めて、ブラジルのツアーの時に完成させて、ライブで演奏するようになったんだ」- Roddy Bottum 1992年
Patton が自分の歌詞を伝えるために、キャラクターになりきった最も分かりやすい例で、この場合は嫌な中年で貧乏な白人です。
「この曲の歌詞は本当にめちゃくちゃで、ホワイト・トラッシュ (貧乏な白人) の武勇伝なんだ。 多くの曲はキャラクター・スケッチみたいなものだよ。僕はそれが悪いとは思わない。多くの人がそのことで僕に文句を言いたくなるかもしれないけどね」- Mike Patton 1992年
「R.V.とはレクリエーショナル・ビークルのことだ。アメリカの典型的な文化で、人々は休日はキャラバンに住んでいる。我々は彼らを “ホワイトトラッシュ” と呼んでいる。アメリカでは、誰もがR.V.に住んでいる人を知っている。この人たちは見下されているが、誰もが社会の一員であることを知っている。このような人々はたいてい太っていて、一日中テレビを見て、テレビを見ながら夕食を食べている。R.V.という歌は、あの豚たちの名誉の象徴のようなもの。私の家族もそうだ。一日中キャラバンの中にいて、”もう誰も英語を話さない” と文句を言うような人たち。誰も彼らの話を聞いてあげないから、独り言ばかり言っている」 – Mike Patton 1992年
5. Smaller and Smaller
ワーキング・タイトル : Arabian Song
キャッチーなキーボードのメロディーと雰囲気のあるストリングス、動悸のするリズムに研ぎ澄まされたギター、サンプリングに歌声と鳴き声の間を行き来するボーカル。他に類を見ないほど、お馴染みのFNM 成分が全て揃っています。
「退屈な曲だ。自分が何をやっているのかよくわからなかった。曲全体が中東のように聞こえたから、頭の中で聞こえる音を見つけるまで、指板を上下させた。僕はいつもそうしている。あまり教育を受けているプレイヤーではないからね」- Jim Martin 1992年
搾取される労働者階級のための革命の歌でしょうか。中盤にはサンプルをふんだんに使ったセクションがあり、特にネイティブ・インディアンの聖歌が素晴らしく配置されています。
「…Shameless culture rape。僕たちはインディアンの聖歌を取り上げて、それをめちゃくちゃにすることに決めたんだ。”ダンス・ウィズ・ウルブズ” の美学のようなものさ」 – Mike Patton 1992年
「僕らにとって FNM は2つの異なるバンドのようなもので、1つは音楽を作って録音するために存在し、もう1つは70~90分のセットを出来るだけパワフルなものにしようとするライブバンドなんだ。なぜか、僕らの曲はいわゆる “ミドルテンポ” …つまり、速くはないけれどバラードでもない曲に惹かれる傾向があるんだよね。聴いている分にはいいんだけど、ライブで演奏するとなると、ミドルテンポの曲が多すぎると、僕らもお客さんも本当に退屈してしまう。そうなったら、もう最悪だ。最悪の悪夢は、セットの途中で勢いがなくなってしまうことだ…その時点でハード・ワークになってしまい、楽しみが減ってしまう。”Smaller and Smaller” はかなり壮大なコンセプトではあるけれど、ライブでやるには長すぎるし、地道すぎる気がした。それに、実を言うと、この曲には他の曲ほど思い入れがなかったんだ……」- Bill Gould 2012年
6. Everything’s Ruined
ワーキング・タイトル|Carpenter’s Song
多幸感あふれるコーラスとメランコリックなヴァースという、対照的なムードを持つ素晴らしい曲。また、唯一ギターソロが全編にわたってフィーチャーされている曲のひとつでもあります。
「このアルバムには、とても奇妙な曲がいくつかある。その多くは絶望的で、とても不穏な雰囲気を持っている。”Everything’s Ruined” はその良い例だ。この曲は、このアルバムに収録されている曲の中でも、よりストレートなロックの一つ。前作の “Surprise You’re Dead” と聴き比べてみてほしいね。僕らがどう変化したかがわかると思う。自分たちがイメージしているものを演奏するのが上手くなっているんだ」 – Mike Patton 1992年
7. Malpractice
ワーキング・タイトル : Patton’s Song
「これはデスメタルの映画音楽だ」Patton のみによって書かれた、恐ろしくて映画的な楽曲。複雑なセクションを持つ彼らしい手法で、一撃必殺のインダストリアル・メタルと不気味なオルゴールがミックスされている。完璧な音楽的悪夢。
1992年、Patton は FNM での作曲スタイルについてこう語っています。
「僕たちは任天堂キッズだから、スタジオに入るとダイヤルを回してボタンを押すだけなんだ。Mr. BUNGLE は基本的に曲の作り方を知らないんだ。だから、ヴァース/コーラス/ヴァース/コーラスという直線的な曲の上に何かを乗せようとするのは、僕にとって奇妙なこと。それはそれでいいんだけど、何をするにももっともっと時間をかけて、もっともっと打ち込んでいこうと心に誓っている」- Mike Patton 1992年
この歌詞は、Pattonのひねくれたキャラクターが繰り広げる、手術のゴシック・ホラー。
「そうだな、ある女性が外科医のところに行って手術を受けているんだけど、彼女は自分の中に入ってくる外科医の手が好きなんだと気づく、という内容の曲を書いたことがある。彼女は治すことに興味もなく、ただ誰かの手が自分の中に入ってくるのを望んでいるんだ。彼女はそれの中毒になるんだ」- Mike Patton 1992年

8. Kindergarten
ワーキング・タイトル : F Sharp
予想外のメジャーからマイナーへのコードを配置することで、FNM のソングライティングをひねり出す好例。この曲では、Gould が音を奇妙な形にひねっていく素晴らしいベースソロがあります。
9. Be Aggressive
ワーキング・タイトル : I Swallow
ハモンド・オルガン、ド迫力のベースライン、ワウワウ・ギターが特徴的。コーラスはシュガーヒル・ギャングの1983年の曲 “Winner Is” から引用していて、チアリーダー(バンドの女友達)が「B-E A-G-G-R-E-S-I-V-E 」という今では不滅のフレーズを唱えているという、かなり倒錯した内容です。Roddy Bottum はこの年、ゲイであることを告白。
「”Be Aggressive” のいいところは、同性愛的なマッチョな曲なのに、FNMのリスナーの多くは、男性ではなく女性がひざまずいて飲み込んでいる姿を想像することだろう。かなり過激だろう?ゲイっぽい歌だと思った?それがいいところなんだ。ある人は “なんだこれは!” と声を上げるだろうし、ある人は気味悪がるだろうし」- Roddy Bottum 1992年
10. A Small Victory
ワーキング・タイトル : Japanese
オリエンタルなキーボードとギターのデュエットがメロディックな螺旋を描く、野心的でドラマチックな曲。メイン・ボーカルのラインは “Angel Dust” の中では最も “The Real Thing” の声に近いでしょう。
「あの曲では、プログラム、ストリングス、ピアノとは対照的に、音源は “マテリアル” だった。そのほとんどは DAT プレーヤーで、外を歩きながら録音したもので、それをキーボードそのものに入れ込んだんだ」- Roddy Bottum
Patton は、この曲が父親との関係について歌ったものであることを明かしています。「父がコーチをしていたから、僕の人生最初の16年間は勝つことばかり考えていたようだ。でもね、僕は勝ち続けられないとわかったんだよ。畜生!」
11. Crack Hitler
ワーキングタイトル: Action Adventure
FNM の中で最も映画に近い曲。パットンの圧縮され歪んだメガホンの効果は、後に続く全ての Nu-metal バンドが真似をすることになります。イントロのサンプルは、リオデジャネイロ・ガレアン国際空港のフライトアナウンスを読むブラジル人女優イリス・レティエリで、この人の声に Patton は惚れ込んだのです。彼女はこの曲を聴いた後、バンドを訴えようとしましたが、失敗に終わります。
「ブラジルでかなり有名なこの女性の声をサンプリングしたんだ。彼女は Varig 航空のフライトのアナウンスをしていて、僕たちはその声が本当に好きだったし、彼女の声は僕たちのブラジルでの経験をすべて集約しているようなものだった。それで彼女を録音して、その声を使ったんだけど、今になって、彼女の声を無断で使ったとして訴えられているんだ」- Roddy Bottum 1992年
この曲の歌詞は、またしても Patton の別人物。「ヒトラーのようになった麻薬ディーラーの話なんだ。ドラッグの影響でヒトラーのような気分になった黒人のね。この曲は、バンドがシナリオを視覚化することによって曲のアイデアを発展させていった例だ。例えば、事前に曲のビジュアルイメージを考えておくこともあったよ。例えば、ヒトラーの口髭を生やしたクラック・ディーラーがスーパーマンキャップをかぶって、路地を走りながら警官を撃っているようなイメージ。そのビジュアルイメージを音楽的に解釈するんだ。それがバンドが曲を作るときのやり方なんだ」- 1992年
12. Jizzlobber
ワーキングタイトル : Jim’s Song
「素晴らしい曲だ。拷問された魂のようなもの」 – Mike Patton 1992年
Jim Martin の血に飢えたメタル曲は、アンセム的なドラム、”サイコ” なキーボードのリフで始まり、Martin の最も残忍なギタークランチに乗せて Patton が言葉を吐き出していき、Gould によって作曲された壮大なチャーチオルガンのエピローグで終わります。
「アルバムに自分の曲を入れたかったし、本当に恐ろしくて醜いものを書きたかったんだ。このタイトルは僕が考えたジョークで、僕は本当の意味での “ギタージジー” な音楽は好きではないからだ。もちろん、サトリアーニやヴァイみたいな演奏はどうやってもできない。あの人たちは全く別の楽器を弾いているような気がするんだ」- Jim Martin 1992年
歌詞の内容は、パットンが繰り返し見る投獄された悪夢を扱ったもの。
「刑務所に入ることへの恐怖を歌っているんだ。いつかそうなることは分かっているんだ…。一度行ったことがあるけど、いつかすごく長い間行くような気がするんだ」- Mike Patton 1992年
13. Midnight Cowboy
「イージーリスニングが好きな Gould のアイデアで、僕も好きなんだ。この曲は本当にハイパーな美しい曲で、聴くのに苦労するほどだ。エレベーターで聴くようなソフトな音楽が、ヘビーな音楽であることもあると思うんだ。ラウドロックにはない深遠さと力強さがある」 – Roddy Bottum 1992年
最後のトラックは、1969年に公開された同名の映画からジョン・バリーのテーマをカバーしたもので、陶酔させられる。この曲もデジタルサウンドとは一線を画し、Bottum はアコーディオンを使ってリードメロディーを演奏しています。
「”Midnight Cowboy” のカバーには本当に満足している。これからは、イージーリスニングが主流になる。もうすぐエレベーターのための音楽のEPを出す予定なんだ」- Roddy Bottum 1992年

参考文献: ANGEL DUST 25 | MAKING OF THE ALBUM

FAITH NO MORE’S ‘ANGEL DUST’: 10 THINGS YOU DIDN’T KNOW ABOUT ALT-METAL CLASSIC

Faith No More’s Angel Dust & The Art Of Following Up A Phenomenon

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GOSPEL : THE LOSER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADAM DOOLING OF GOSPEL !!

“I Think Both Hardcore And Prog Are High Energy Forms Of Music. It Makes Sense To Me That You Could Play Progressive Rock Loose And Fast Like Punk…Or Play Punk With Odd Chords And Scales Like Prog.”

DISC REVIEW “THE LOSER”

「バンドが一度終わったのは、自分たちが燃え尽きてしまったからだよ。一生懸命やってもうまくいかなかった。当時のリスナーは今とは違って、このバンドを好きではなかったんだ。喧嘩も多かったし、ツアーやいつも一緒にいることにも疲れていたんだ。若い頃は問題を解決できるほど成熟していなかったし、みんな生活の安定を望んでいた。だから、一度バンドが終わると、また演奏できるようになるまで GOSPEL を振り返ることはなかったんだ」
本来あるべき姿を失ってもなおとどまり続けるのもバンドであれば、一瞬の煌めきを残し閃光のように消え去るのもまたバンド。ひとつ確かなことは、GOSPEL が描いた美しき肖像画は時の試練に耐え、虚ろでねじ曲げられた虚構のアートとは明らかに一線を画していることでしょう。
「僕たちは宗教家や宗教的なバンドではなく、その逆なんだ。子供の頃、カトリックの学校に通っていたから、宗教や権威に反抗したくなったんだ。GOSPEL という名前は、社会が神聖視するものを破壊することを意味したんだよ。それに、みんなが覚えてくれるシンプルな名前でもある。ゴスペルの定義が “原則と信念” であるならば、僕たちはその原則と信念に疑問を投げかけたいんだ。それを覆したいんだ。なぜなら僕たちはパンクバンドなんだから!!」
2005年。ブルックリンを拠点とするこの4人組は、突如としてアンダーグラウンドのスクリーモ・シーンに参入し、このジャンルに新たな高みを築いただけでなく、シーンの “原則と信念” を破壊する偉大なる自由を残しました。バンド唯一の遺産であった “The Moon is a Dead World” は8曲からなるユニークな迷宮で、その反抗という名の魔法によってプログとハードコアの境界を鮮やかに消し去ったのです。しかし、登場するやいなや、彼らは姿を消しました。
「今日、誰もが音楽を説明するための基準点、またはレッテルやジャンルを必要としている。でも GOSPEL の音楽は、僕らにとってはただラウドでヘヴィでヘンテコなだけなんだ。僕たちは今日スクリーモと呼ばれるアンダーグラウンドのハードコアシーンからやってきて、奇妙なロックを演奏しているだけ」
熱狂的なカルトファンを持ち、プログレッシブ/ハードコアの頂点に立つ可能性を秘めたバンドは、自分たちが “これ以上ないもの” を作り上げたことを悟り、あまりにも潔く幕を閉じることを選びました。しかし、スタジオの外で充実した生活を送っていた彼らは、どこかで何かが足りないとも感じていました。そうして友人の結婚式で再会した彼らは、17年の隠遁の後、ラウドでヘヴィでヘンテコな待望の2ndアルバムを作る必要があると決意したのです。
「僕はハードコアもプログもハイ・エナジーな音楽だと思うんだ。だから、プログをパンクのようにルーズに速く演奏したり、パンクをプログのように変則的なコードとスケールで演奏するのは理にかなっていると思う。それに、僕らには4人で演奏しているときにのみ機能する、非常に特殊な演奏スタイルがある。僕たちの楽器が僕たちの個性を反映しているようなものでね。GOSPEL とはこの4人が一緒に演奏しているときの音なんだ」
ダンボールに殴り書きされた “敗者” の文字は、彼ら自身のことなのでしょうか? 少なくとも、長い間待ちわびていたリスナーにとって、”The Loser” はすべての期待に応えた傑作であり、GOSPEL は再び勝者の地位へと返り咲いたにちがいありません。
解散後も衰えるどころか、むしろ、そのケミストリーはこれまで以上に強烈強力。GOSPEL といえば Vincent Roseboom の千変万化なパーカッションですが、彼は期待通りバンドを支えるエンジンとして、迷宮を支配する猛烈なフィルの数々を配置。Adam Dooling の悲痛な叫びは痛みと感情を増して、よりハスキーなトーンで眼前に迫ります。
プログレッシブ・ロックへの移行が顕著になり、従来のスクリーモからは若干離れたものの、サウンドは前作と同様にフレッシュで活気に満ちています。彼らのルーツである70年代のプログ・ロック は、CITY OF CATERPILLAR や CIRCLE TAKES THE SQUARE のようなポストロックを抱いたスクリーモが使用するパレットよりもさらに直接摂取するのが難しく、ひとつ間違えばピント外れでダサい音楽にもなりかねません。
しかし、”The Loser” はレトロスタイルのオルガンと薄暗い電子ピアノの爆音へ果敢に挑み、その幻想的な広がりとハードコアな獰猛との間でえもしれない緊張感を醸し出すことに成功しています。17年前に私たちが目にした、知的に濁った陽気な騒動はかくも完璧に研磨され、洗練され、本来あるべき姿の完成品として届けられたのです。
今回弊誌では Adam Dooling にインタビューを行うことができました。「僕は2017年に日本に短期滞在していたんだ。2017年の1月から5月まで、淡路島で4ヶ月間、日本に住んでいたんだよ!ガーデナーの研修生として働き、日本のガーデニングを学んでいたんだ。その時僕は ALPHA キャンパスの寮に住んでいたんだけど、素晴らしい先生がいてね。彼女は “関西のオバチャン” と自称していたよ」どうぞ!!

GOSPEL “THE LOSER” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MOON TOOTH : PHOTOTROPH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK LEE OF MOON TOOTH !!

“I Liked The Idea Of Putting Something Out In The World That Might Give People Some Release From Their Anxiety And Frustration Right Now Instead Of Just Mirroring It With More Anger And Existentialism.”

DISC REVIEW “PHOTOTROPH”

「僕たちは、ロックのヒーローたちと、彼らがそれを実現するために果たさなければならなかった道のりに敬意を表しながら、何か新しいことをしようとしているんだ。 レミーならどうしただろう?ってね」
ロングアイランド出身の MOON TOOTH による目まぐるしきサード・アルバムは、過去25年間にオルタナティブ・ロックが果たしてきた奇妙で先進的な音楽の扇動に対する解答のように感じられるかもしれません。
ALICE IN CHAINS や SOUNDGARDEN にはじまり、DEFTONES の絹のような感情表現、QUEEN OF THE STONE AGE の石器時代の鼓動、MASTODON の知的な砂漠、そして TOOL の複雑怪奇なグルーヴ。”Phototroph” には、たしかにこうした瞬間が散りばめられています。しかし、”次の METALLICA になりたい” と宣言する MOON TOOTH の特異性や野心は、彼らにとっての “始まりの地” からすでに “約束の地” へと舵を切っています。
「チャック・ベリーから MOON TOOTH まで、ロックのひとつのラインをたどれるようにしたいというのが本音なんだ。他のバンドが今何をやっているかなんて、どうでもいい。僕の頭の中と心の中では、真のロックンロール・バンドでありたいんだよ」
MOON TOOTH が次の METALLICA となるために必要だったのは、”ユニーク” を超えること。METALLICA のように、他の誰もやっていないことをやること。そのために彼らは、メタル以前の音楽をもモダン・メタルで再調理して、アルバムの中でロックの歴史を一つにつなげる荒唐無稽を実現しました。
ここには、オーティス・レディングの躍動も、ヘンドリクスのリフ革命も、QUEEN のハーモニーも、クリムゾンの難解なパズルでさえ存在し、再び命を得ています。
「ギターソロを早送りで聴く?ハァ?15秒~30秒のギターソロを聴くことができないほど忙しいの? ソロを早送りするのに、なぜバンドを聴いているんだ?!?!失礼ながら、君が言うような人たちは、おそらくギターソロそのものを聴くよりも、ギターソロに反応する人の YouTube ビデオを見る方が好きなんだろうな。冗談じゃないよ!」
重要なのは、この作品にロックの不純物がひとかけらも混入してはいないことです。あの RIOT V にも所属する Nick Lee の左腕にはスリルとエモーション、それにかつて誰もがギターに期待していたスペクタクルが存分に宿っていますし、自然保護施設でも働く John Carbone の表現力、感情を高めた歌声には人知を超えた野獣が降臨。ロックの王道が忘れ去られた世界で、ロックの王道を一人、むき出しの感情、むき出しのサウンドで歩んでいます。
さらに、タイトル・トラック “Phototroph” を聴けば、RUSH を思わせる千変万化なコンポジションに、FOO FIGHTERS もたじろぐほどのアリーナ・サイズのフックを刻み込んでいることが伝わるはず。”Nymphaeaceae” では、歪んだリフの曲がりくねった迷路に THE ALLMAN BROTHERS の遺志を込め、その奥深くにボーカル・フックを丁寧に埋め込んでいます。MOON TOOTH は実験とポップのシーソーを誰よりも巧みに乗りこなすのです。
「30のアイデアのうち、この11曲がとてもうまくまとまったんだ。楽観的で希望に満ちた感じがするから。今の時代の不安やフラストレーションを、怒りや実存主義に置き換えるのではなく、そこから解放されるようなものを世に送り出したいという思いがあったんだ」
パンデミック、戦争、政治の腐敗、独裁者の台頭。混乱と混沌の20年代においても、MOON TOOTH は人間の強さを信じています。”Phototroph” “光栄養生物” と訳されるアルバム・タイトルには、希望という光に向かって進んでいく私たちの姿が重ねられています。
たしかに今、誰にとっても、”聖域” は消え去りました。しかし逆に今こそ、Nick の言葉を借りれば、これまで自覚することのなかった、目を背けていた私たち自身の “不寛容” と向かい合うチャンスなのかもしれませんね。”Phototroph” はそんな私たちの “光合成” を促すような作品ではないでしょうか。
2012年に結成された MOON TOOTH は、初期にタグ付けされたプログ・メタルというタグをいまでは取り払ったように見えます。それは彼らの音楽が十分にプログレッシブでもなく、十分にメタルでもなかったからではなく、その二つ以上のものを兼ね備えていたから。今回弊誌では、Nick Lee にインタビューを行うことができました。「人間は時に、ポジティブなことに集中したり、目標を設定してそこに向かって進んだりすることを、自分で選択しなければならないことがある。それを伝えたかったんだ」 三度目の登場。スケール感が倍増しています。どうぞ!!

MOON TOOTH “PHOTOTROPH” : 10/10

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COVER STORY + INTERVIEW 【IBARAKI : RASHOMON】


COVER STORY : IBARAKI “RASHOMON”

“In Japan,There’s This Thing About Karoshi, Salarymen Who Work Themselves To Death. I Don’t Talk About This Much, But My Uncle Kiichi Killed Himself. His Name Is My Middle Name.”

RASHOMON

ブラックメタルがヘヴィ・メタルの境界を押し広げるトップランナーであることに疑いの余地はありません。その重苦しく凍てつくような壮大さ、悪魔のような地獄の炎、耳障りなノイズはエクストリーム・ミュージックの最暗部にありながら、ねじれた空想家が最も先鋭的で予想外の音を解き放つことができる創造の魔窟となっています。だからこそ、TRIVIUM の英雄にしてメタル世界きっての探求家 Matthew Kiichi Heafy がこの地下城に足を踏み入れるのは、ある意味必然でした。
ブラックメタル・プロジェクト IBARAKI のデビュー・アルバム “Rashomon” は、Heafy にとって10年以上に渡る努力の結晶です。ブラックメタルへの愛を常に口にしていた Heafy は、2009年にはすでにこのプロジェクトに着手することを決定していました。当初のプランは、ブラックメタル界の “門番” たちが TRIVIUM のような比較的メインストリームなバンドに関連した作品を受け入れることはないだろうと想像して、別名で活動し、純粋なセカンドウェーブの攻撃性を持つ匿名作品を作ることでした。しかし Heafy が Ihsahn と接触し彼のソロ作品を探求し始めたとき、このアプローチは劇的に変化したのです。
このアルバムの至る所で、Ihsahn からの影響は息づいています。”angL” から “Arktis” までの素晴らしき Ihsahn の落とし胤のように、IBARAKI はブラックメタルに根ざしてはいますが、はるかに広い展望を持っている創造性の塊へと変身を果たしました。Ihsahn の存在は大きく、アルバムのプロデュースだけでなく、いくつかの曲を共同で書き、ボーカルとギターで何度も登場していますが、それでも “Rashomon” は非常にユニークかつ独自の存在。ただその実験的かつ感情的な到達点という意味では、両者は同じような考え方を共有しているのです。

和を感じさせるオープナー最初の爆発的なクレッシェンドに至る道のりでは、エクストリームでニヒルなブラックメタルを作ろうという当初の計画を鮮やかに感じ取ることができます。90年代のローファイで禁欲的な美学に陥ることはありませんが、生々しい叫び声が絡みつき、鋭くどう猛なギターとともに、Heafy は内なる獣を解き放っていきます。しかし、プログレッシブなパッセージが現れると、続く “Ibaraki-Doji” では豊かなオーケストラのうねりと予想外の拍子とともに、威厳ある “皇帝” のようなシンセサイザーが厳かに響き渡ります。この作品には、トラックを通しての波と流れがあって、その満ち引きは Heafy の Heafy たる所以とも言えるダイナミズムにつながります。TRIVIUM で重さとメロディーの巧みなバランスを司る Heafy はその教訓を、全く異なる方法であるにせよ、ここでも活かしきっているのです。
例えば、”Akumu” は BEHEMOTH の Nergal を意識して書かれたにちがいない闇の威厳に満ちていますが、続く “Komorebi” には OPETH や ULVER の哀愁やアトモスフィア、静謐が佇み、そうして Gerard Way をフィーチャーした一際衝撃的な “Ronin” へと到達します。初期の MY CHEMICAL ROMANCE では、彼の絶叫が示唆されることもありましたが、このような痛烈なパフォーマンスを20年間も温めていたとは驚きの一言。
ただし、それぞれの楽曲自体にも、ローラーコースターのような緩急、重軽、硬軟のコントラストがあって、その対比の妙を Heafy のパワフルな Mikael Akerfeldt 的クリーンボーカルが激しく美しく引き出し、IBARAKI 世界のドラマ性を格段に高めていきます。もっと言えば、OPETH や ENSLAVED がその矜持ゆえに踏み込めなかった、踏み込まなかった、完全にキャッチーでドラマティックなエクストリーム・プログレッシブを実現しているのではないでしょうか。
Ihsahn の家族(妻で Peccatum のパートナーである Heidi Tveitan を含む)”Ronin” にバッキング・ボーカルで参加していて、TRIVIUM の家族、ドラマー Alex Bent、ベーシスト Paolo Gregoletto、ギタリスト Corey Beauliei も様々なトラックで登場し作品の黒色を豊かに彩ります。ポーランド語で歌う Nergal, 「俺は素戔嗚。使命はわかってる!」と日本語で吠える “Susanoo no Mikoto” と言語的にも豊かな作品。


TRIVIUM 初期のインタビューからこのジャンルへの愛を告白し、2003年の “Ember To Inferno” や2008年の “Shogun” ですでにそのサウンドの片鱗を表現していた Heafy の情熱を疑う者はほとんどいないでしょう。しかし、EMPEROR のフロントマン Ihsahn や BEHEMOTH の Nergal といった巨人をも巻き込んだ果敢な傑作の完成には、最も熱心な信者ですらきっと驚かされるはずです。10年以上の年月を経て、Heafy は黒く塗りつぶされた地面に堂々と自身の旗を立て、自身の文化的背景に基づいた曲を作ることの重要性を理解するようになりました。
「ブラックメタルは、メタルがすべて同じと言われることに対する反応であるはずなんだ。だから、ブラックメタル・ファンにとって TRIVIUM の奴がブラックメタルをやるなんてめちゃくちゃ衝撃なんだよね。それがブラックメタルの精神だよ。だからこそ、僕はこのプロジェクトに責任があるんだ」
Heafy はいかにしてメタルの最も暗い深みへの道を発見したのでしょうか?
「15歳の時、Napster にハマったんだ。今でこそ、あのプラットフォームはかなりの汚名を着せられているけど、僕はいつも新しいバンドを発見するための方法としてそれを見ていたんだ。いわば、僕にとっての “テープトレード時代” だ。最初にハマったのは IN FLAMES, CANNIBAL CORPSE, CRADLE OF FILTH の3つのバンドだった。デスメタル、メロディック・デスメタル、ブラックメタルという3つのサブジャンルを発見したのは、メタルに目覚めたばかりの僕にとって、本当にエキサイティングなことだったんだよね。
同じ頃、オーランド出身の MINDSCAR というバンドの Richie Brown という地元のミュージシャンに出会った。彼と初めて一緒に遊んだとき、彼は “Emperial Live Ceremony” の DVD(当時は VHS だったかもしれない)を見せてくれたんだ。EMPEROR ライブインロンドン。僕は即座に夢中になったよ。それから Richie はDISSECTION の PV や DIMMU BORGIR の “Enthrone Darkness Triumphant” ツアーのライブなど、彼の古いテープを全部見せてくれるようになった。アートワークと音楽を通してのストーリーテリング、シンフォニックなパッセージとエクストリームな音楽が組み合わさっていて、その鮮やかさがとても気に入ったんだよね。METALLICA, MEGADETH, TESTAMENT, SLAYER といったバンドを聴き慣れていた僕には、まるで別物のように感じたよ…」

どのようなレコードが、Heafey のサブジャンルへの愛を形成したのでしょう?
「これらのアルバムは、最後の2枚を除いて、僕がブラックメタルにハマり始めた頃のもの。まず最初に、ストックホルムの MORK GRYNING の2001年の “Maelstrom Chaos”。このレコードはプロダクションとスタイルの面で僕にとても影響を与えている。このアルバムに収録されている “My Friends” という曲はとても奇妙で、”ブラック・メタルではない” と感じると同時に、とてもブラックメタルだと感じるんだ。
ウメオの NAGLFAR による2003年の “Sheol”。ストックホルムの DARK FUNERAL による2001年の “Diabolis Interium”。彼らは半伝統的なオールドスクール・サウンドにこだわっている。プロダクションに重点を置いていることが、僕にとって意味があったんだ。1995年、DISSECTION による “Storm Of The Light’s Bane”。1997年のオスロの OLD MAN’S CHILD による “The Pagan Prosperity”、DIMMU BORGIR の別バンドのGALDER。信じられないほどメロディアスで、バロックとネオクラシカルを同時に表現している。1997年の DIMMU BORGIR の “Enthroned Darkness Triumphant”。もちろん、1997年の EMPEROR の “Anthems To The Welkin At Dusk” と1996年の SATERICON の “Nemesis Divina” も名盤だ。これらは僕の “ブラックメタル少年時代” のアルバムなんだよ。
それから、ENSLAVED による2012年の “RIITIIR”、BEHEMOTH による2014年の “The Satanist” だ。”The Satanist” は新しいし、人々は基本的にノルウェーとスウェーデンのバンドをこのジャンルの “リーダー” として見る傾向があるけれど、この作品はブラックメタル史上最高のレコードのトップ10に入るよ」
Heafey は、ブラック・メタルの物語が、魂を震わせるサウンドを高めていると指摘します。
「ブラックメタルにのめり込んでいくうちに、なぜ彼らがああいった見た目をしているのか、なぜ曲やアートワークがこうなっているのかが分かってきて、本当にいろいろなもので構成されていることで好きになったんだ。彼らはもともとはスラッシュに傾倒していたんだけど、その後、クラシック音楽の要素やスカンジナビア民謡など、さまざまな影響を持ち込むようになった。そういう民俗的なストーリーは本当に魅力的だと思うんだ。
TRIVIUM の初期の曲で、”Oskoreia” という北欧の伝説にまつわる曲がある。白い顔をした幽霊の騎兵が超高音で叫び、人々の魂を奪っていくというものなんだけど、これは僕がどれだけブラックメタルの伝説にハマっていたかを示しているね。あらゆる本を読み、あらゆるバンドについて調べ、あらゆるシャツやCDを手に入れていたからね。このアルバムのターニングポイントは、Ihsahn と話していて、”もし僕がスカンジナビア人だったら、ThorとRagnarok について書けたのに…” と言った時だったんだ。
彼は2つのことを教えてくれた。1つは、僕にもルーツが存在すること、もう1つは、自分の日本的な面をもっと見るべきだということ。背中にタトゥーしている神道の八岐大蛇(やまたのおろち)のようなものを参考にできるとわかったとき、状況が一変したんだよね」

IBARAKI の既成概念にとらわれないアプローチに道を開いた先駆者は誰にあたるのでしょう?
「ブラックメタルのパイオニアたちは、メタルは商業的になりすぎて、同じようなことばかりやって言っていると言っていた。この音楽はその対抗策だったんだ。でも、その後、自分が作ったものに固執すると、結局、それをまた別のものに変えるための反抗が必要になるんだ。EMPEROR は、僕がこのジャンルを発見したときの最大のバンドのひとつだった。TRIVIUM のどこにブラックメタルがあるのかと聞かれたとき、僕はいつも、サウンド面では必ずしもそうではないけれど、EMPEROR は僕にすべてのレコードを前とは異なるものにする自信を与えてくれたと説明してきたんだ。
“In The Nightside Eclipse” にはじまり, “Anthems To The Welkin At Dusk”, “IX Equilibrium”, Prometheus”, “The Discipline Of Fire & Demise” まで、彼らはそれが可能であることを証明してくれた。ULVER の “Perdition City” はブラックメタルではないけれど、正反対であるからゆえに、ブラックメタルとして非常に重要なレコードなんだ。WARDRUNA もそうだ。あのバンドはブラックメタルとは似ても似つかないけど、同じ素材を使っているから、同じように重要だと感じる。一方で、BEHEMOTH の “The Satanist” は、このジャンルに回帰しているにもかかわらず、とても異なっているように感じられた作品だね。僕にとっては、”O Father O Satan O Sun!” が BEHEMOTH の曲の中で一番メロディが良いんだよ!
そして、Ihsahn の2010年のソロ・アルバム “Eremita” を聴くと、まるで初めて “Anthems” を聴いた時のような感覚になる。あのレコードがきっかけで、IBARAKI が別名義から自分名義のプロジェクトにシフトしたんだ」
教会の焼き討ち、ファシスト思想、殺人など、ブラックメタルの残忍な裏の顔はたしかに問題視されています。
「正直なところ、若い頃は、ブラックメタルの暗さに惹かれたんだ。別に肯定も宣伝もしているわけではないんだけど、音楽的な対立でバンドメンバーが殺し合うようなジャンルがあったというのは、若い人には絶対に響いてしまうと思うんだよ。だけど大人になってみると、このジャンルには人種差別や偏見に固執する、本当に問題のある側面があることがわかってくるし、それは僕が強く反対していることでもある。最初に若さゆえの “目隠し” が取れたとき、”信じられない!” と思う反面、”なんてこった、これが見えてなかったなんて!”とも思ったものだよ。でも、それは僕がブラックメタルを書き直す手伝いをしたいということでもあるんだ。
“Rashomon” の制作を終えた頃、(COVIDの無知が原因で)世界中で反アジアの感情が高まっていたんだ。だから、このアルバムは、日本の文化にスポットを当てて、その物語についてもっと知ろうと思ってもらえるようにするためのミッションだと考えるようになった。そして、中国や韓国の物語、ヨーロッパの物語、アフリカの物語など、地球上に学びのボキャブラリーを広げていきたいんだよ。僕にとって “Rashomon” は、ブラックメタルについて僕が好きなものを維持し、そうでないものを超越するための作品なんだ」

日本にルーツを持つ Heafy が、日本のゲーム文化に惹かれていったのはある意味自然な成り行きでした。
「4歳くらいのときに “マリオ1” が発売されたから、その頃からゲーム機で遊んでいたね。僕はずっと “任天堂キッズ” で、マリオのゲームばかりやっていたよ…。それからスーファミで “ドンキーコング”、”ファイナルファンタジー”、もちろん “スーパーマリオワールド”、”ゴールデンアイ 007″…。”ゴールデンアイ” のおかげで、シューティングゲームにハマり始めた。あと、1997年に発売された “ファイナルファンタジーVII” は、今でも一番好きなゲームだよ。それから “コール オブ デューティ” にハマったね。
ゲームは常に身近にあって、ゲームや音楽に関するインタビューも多く受けるようになった。その中で、僕が好きなゲームは常に “ファイナルファンタジー” だったことに気づかされていったね。あのゲームの音楽はとてもメタルなんだ。メタルの要素もあるし、ロックの要素も、クラシック音楽の要素も、エレクトロニックの要素もある。それらはすべて、後に僕が愛するようになるものだった。だから、ファイナルファンタジーが僕の好きなものをすべて植え付けてくれたのだと思う。音楽は何でもあり。エレクトロニック、クラシック、ロックに映画のような音楽。僕の音楽にあるドラマのような壮大な要素も、ゲームからきているのだと思うね」
愛する日本のビデオゲームのストーリーや背景にも、そんな伝承の数々は必ず存在しています。だからこそ、自身のルーツである日本の伝承をブラックメタルに込めた Heafy。さらにその世界は、子供のための絵本にまで広がっていきます。絵本に付属のCDは、IBARAKI とは別物で、Heafy が作詞・作曲・演奏した心地よいアコースティックソング。この貴重な物語をより多くの方法で体験してもらえるよう、本を補完するための音楽CDとなっています。
「”Ibaraki And Friends” は、僕が幼少期に親しんだ物語が詰まった本。日本の民話は、ビデオゲーム、アニメ、映画、歌など、今日ある多くの素晴らしい物語の根底にあるんだよ。日本人の母親が教えてくれた日本の古典的な物語。その中に登場する多くの伝説的ヒーロー、神秘的な生き物を見開きで紹介している。猿と人と鳥のハイブリッドである天狗、八岐大蛇、九尾の狐などが、イラストレーターの鮮やかなイラストと妻の美しいデザインによって描かれているんだ。
何年もの間、僕はできるだけ多くの日本の物語を研究し、そのうちのいくつかを体に彫ってきた。そして、TRIVIUM、IBARAKI、そして今回の “Ibaraki And Friends” の曲の中でそのテーマを探求しているんだ。こういった日本の素晴らしい物語の探求を通して、読者が日本の文化についてもっと学びたくなり、そして周辺のアジア諸国の文化をもっと学びたいと思い、世界中の物語について学ぶ意欲を広げ、僕たちが地球上で共有するべき多くの文化に対する好奇心を刺激できればと思っているんだよ」

ただし、ここに描かれているのは遥か昔の日本だけではありません。Heafy にとって、IBARAKI は単に日本の神話や民話にインスパイアされたアルバムというよりも、日本らしい “本音と建前” のように、想像上のものと文字通りのもの、現実と想像の両方の妖怪が存在する作品なのです。
「日本には、死ぬほど働くサラリーマンがたくさんいて、”過労死” というものがある。これはあまり話さないんだけど、僕の叔父の喜一は自殺したんだ。彼の名前は僕のミドルネームになっているんだけどね。彼は日本で警察官をしていて、家族もいた。家に帰ると、母が泣きじゃくっていたのを覚えているよ。なぜ彼が死ななければならなかったのか、その理由を探ってみたくなったんだ。日本は自殺が多いんだよ。表面的には幸せそうに見えるんだけど、実はそうじゃない。
母に相談したところ、僕が自分に課しているのと同じようなプレッシャーや不安感を日本の人たちも抱いているってわかったんだ。音楽を仕事にすることは夢の国だと思われているけど、実際はそうではない。このアルバムで、そのテーマを追求したかったんだ」
IBARAKIにユニークな美学と影響を与えたのは、日本の豊かな神話と民俗学だけではなかったのです。そう考えれば、この国に住む当事者である私たちは、”悪夢”, “魂の崩壊” といった楽曲のタイトルにも共感するところは必ずあるはずです。そしてそれは、Heafy 自身のアイデンティティについて考えるきっかけとなり、アメリカでの最近の悲劇、反アジアの暴力と偏見の増加について熟考する機会にもなりました。
「アメリカにおけるアジア人に対する暴力、人々の心の狭さによるアジア人へ殺人。ハーフだから白人でいいという感覚はなかったけど、今、このことについて話すことが重要だと感じているんだ。すべてのものには、その背後に豊かで素晴らしい、美しい文化がある。あらゆる文明、あらゆる文化、あらゆる生活の歩みがそう。だから、アジアのメタルヘッズやアジアの音楽ファンが、少しでも誇りを感じられるようになればいいと思う。”ここが私の出身地だ” “これが私の出自だよ” と言えるのは素晴らしいことだ」

ブラックゲイズ、ブラックンロール、DSBM。近年、ブラックメタルの “黒” にも様々な色合いが滲み出るようになりました。
「サブジャンルが大好きなんだ。メタルで一番好きなものの一つだ。以前は自分がとても精通していると思っていたけれど、今はたくさんありすぎて僕でも全部が何なのか分からないのがクールだね。食べ物や、もっと伝統的な音楽、ドラムのビート、ギターの奏法、ゲーム、漫画、映画などを分類するような感じで、とにかく楽しいんだよ。例えば、GHOSTEMANE は Baader Meinhof というブラックメタルのプロジェクトを持っているんだけど、GHOSTEMANE の最新作ではブラックメタルの断片を混ぜてきているよね。CARPENTER BRUT はエレクトロニック・アーティストでありながら、ブラックメタルを聴いているような気分にさせてくれる。
IBARAKI が今後、さらにサブジャンルを開拓していく可能性はあるかって? 僕が Ihsahn と Candlelight Records に送った一番最初のブラックメタルの曲を振り返ってみると、それは本物のオールドスクールのセカンドウェーブのように聴こえるんだ。そして今、僕はここにいる。いつか1991年のブラックメタルみたいな音楽を作りたいと思うかもしれない。あるいは1997年のような。あるいは全く新しいものを。マジック:ザ・ギャザリングのサウンドトラックや “Elder Scrolls Reimagined” のような他のプロジェクトに関しては、自分が何をしなければならないか分かっているけど、でも、IBARAKI と TRIVIUM では、常に “瓶の中の稲妻” を捕獲できるかどうかということなんだよ」
THE RUINS OF BEVERAST から PANOPTICON, NOCTULE まで、ブラックメタルは多くのアーティストが独自の道を歩んできました。
「他のジャンルのレイヤーと複雑さに対して、ブラックメタルのプロジェクトは一人の人間で成り立っているものが多い。EMPEROR, BEHEMOTH, ULVER, DARKTHRONE のようなバンドでさえ、一人の主要メンバーのビジョンを中心に展開する傾向がある。TRIVIUM では、常に自分たちが作りたいと思うレコードを作ってきたけど、それでも4人でひとつの頭脳として、常に考えているよね。
IBARAKI は、この12年間、誰のことも考えずに100%自分の好きなように音楽を作ってきて、イントロとアウトロを除いたトラックリストはその間の自分の成長を時系列で追ったものでもあるんだよ。それはとても自由なことで、次作がどうなるかとても楽しみだね。”東欧のダニー・エルフマン” 的なものがあって、それをもっと追求するかもしれない。あるいは、日本から伝統的な製法で作られた三味線を送ってもらったから、独学で弾き方を勉強して、1曲か2曲、あるいは全曲、僕が三味線を弾いて日本語で歌っているかもしれないね!」

特にメタルにおいては、厳しい顔をしたファンという門番の審判を超えなければなりません。
「ブラックメタルにおける門番は常に存在すると思う。自分がそうだったから、その考え方は理解できる。16歳の時、僕は超ロングヘアで、XLの長袖 DIMMU BORGIR のシャツとカットオフの白い戦闘服、戦闘ブーツを着て、トラックの窓を開けてブラックメタルを鳴らしながら高校に通っていたんだ。学校の友達はポップパンク、ハードコア、エモだったんだけど、僕は “歌のあるものは全部クソだ” と思っていた。”音楽はノルウェー産でなければ、最悪だ!” と思っていた。でも、今は Ihsahn と Nergal に注目している。ブラックメタル界の偉大な2人は、伝統的なブラックメタルとは違うことをやってきた。IBARAKI が TRIVIUM の人の音楽だからといって、聴かないという人は必ずいるはずだ。でも、それはそれでいいんだ。
だけど僕は、このジャンルを愛し、理解し、どんなエリートよりも深く知り、このジャンルの中で育ってきたからこそ、ブラックメタルを扱うことができる。創造性を大胆に飛躍させる必要があるんだ。2005年の TRIVIUM でも、 “Ascendancy Part 2” を作るのはきっと簡単だっただろうが、僕は正反対のアルバム “The Crusade” を作ることを選んだね。それが僕やリスナーを不快にさせるのなら、むしろそれは良いことだよ!」
新しい世代が音楽的、社会的、政治的な状況を変化させる中、ブラックメタルにはどのような未来が待っているのでしょうか?
「ブラックメタルには明るい未来があると信じている。デンマークの Møl のようなバンドがやっていること、僕らがここでやっていること、もっと大きな意味では Ihsahn のようなこのジャンルのパイオニアだった人が、80年代のメタルのような曲とサックスソロやクリーンジャズのパートが入ったレコードを作っているのを見ると、僕らはすでに未来にいると感じる。ブラックメタルには常にサブジャンルが存在し、その裏側には厄介なものもあって、僕らがやっていることがブラックメタルだとは思っていない人たちもいる。でも、僕は気にしない。
結局のところ、伝統主義者をなだめたり、何かを維持しようとするのではなく、人々は常に自分たちが聴きたいもの、演奏したいものを作る必要があると信じているんだ。何かを書こうとするとき、その輪の中に入ってしまうと、物事が作為的になってしまう危険性があるんだ。アメリカのロック・ラジオ向けに組み立て式のロックを作っているバンドがたくさんあるのと同じようにね」

参考文献: KERRANG!:Matt Heafy’s guide to black metal

IBARAKI: BIO

ULTIMATE GUITAR:Trivium Frontman Matt Heafy Explains What Video Games Mean to Him, Reveals His Favorite Game Ever

日本盤のご購入はこちら。WARD RECORDS

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SAIDAN : ONRYO Ⅱ: HER SPIRIT ETERNAL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SAIDAN !!

“America Used To Have an Obsession With Remaking The Famous Japanese Horror Films, And To Me, They Were Never Scary, Because It Placed Those Stories In Our Culture. To Me What Makes Japanese Horror Stand Out, And What Makes It Scarier, Is The Differences In Our Surroundings, And Cultures.”

DISC REVIEW “ONRYO Ⅱ: HER SPIRIT ETERNAL”

「当初はバンド名に、宗教的な意味合いから英語の “Altar” (祭壇) を使おうと考えていたんだ。でも、その名前を使ったバンドはすでにたくさんあるし、日本をテーマにしたものを書き始めていたから、”Saidan” の方がしっくりくるかなと思ったんだよね」
ナッシュビルから登場した USBM の雄、SAIDAN のメンバー Saidan と Shadosai は、日本文化への大きな愛と興味を持ち続けています。例えば、TRIVIUM の Matt Heafy がそうであるように、日本の神話、芸術、大衆文化において恐怖の概念がどのように表現され、それがいかに西洋の手法、恐怖と異なるのかに彼らもまた着目しているのです。
もちろんこれまでも、日本のフォルクローレ、その表層をテーマとした海外のバンドは少なからず存在しました。しかし、Matt の IBARAKI や アルゼンチンの IER、そして SAIDAN のように、日本の民俗的伝承や日常の深層までふみこんで音に委ねるアーティストが近年増えています。これぞメタル好奇心の生命力と感染力のたまもの。
「アメリカはかつて、日本の有名なホラー映画をリメイクすることに執着していたよね。でも、僕にとってそれは決して怖いものではなかったんだ。だから、日本のホラーを際立たせ、より怖くしているのは、おそらく僕たちを取り巻く環境と文化の違いだと思うんだ」
人間が持つ恐怖の感情は、おそらくその対象が未知のものであればあるほど増大する。そういった意味からも、およそ恐怖や狂気、死を描くブラックメタルのテーマとして西洋には馴染みの薄い日本の怪談を選ぶことはなるほど、理にかなっています。ただし、興味深いことに SAIDAN は、精神疾患や社会病質といった見えざる恐怖を引き起こす日本の悪霊、幽霊、妖怪、呪いと西洋の魔女を恐怖のスープでコトコトと煮込んで混交させているのです。
「BALZAC, LOUDNESS, DOG inThe PWO, X Japan、ANTHEM, 神聖かまってちゃんといったバンドにね。そして、Mrs.GREEN APPLE、DISH//、PassCode、Dizzy Sunfist、YOASOBI みたいな新しいグループにも影響を受けている。その他にもたくさんの日本のアーティストが、僕の作品作りに大きな影響を与えてくれているよ」
驚くべきことに、SAIDAN の異文化交流は恐怖だけではありません。まさに日本との架け橋となるべく、彼らは日本のロックやポップス、メタルからの影響まで大胆に料理して、鍋の中へと放り込みました。それはさながら恐怖を際立たせるためのイヤー・キャンディー。それとも生への渇望でしょうか。”Onryo” のサウンドや構成はブラックメタルであるにもかかわらず、生き生きとした、喜びさえ感じさせる多幸感のスパイスが用意されているのです。
「日本のポップスには独自のスタイルとフィーリングがあるんだよね。コード進行やメロディーも独特で、本物の楽器が使われている。一方、アメリカのポピュラー音楽は、ほぼ100% “フェイク” なんだ」
ポップでフレンドリーなリフ、ダンスホールのリズム、叫び声と極北のアンビエンスの奇妙な組み合わせでハイテンションな “Kissed by Lunar’s Silvery Gleam” で幕を開けるアルバムは、とてつもなく多くの音楽を提供してくれる怨霊の玉手箱。J-Rock、J-Pop, パンク、ポスト・ブラック…そしてドリーミーなシューゲイザーまで、あらゆる影響を SAIDAN のスタイルに取り込み、それがどんなに矛盾していても必死ですべてを成立させていきます。この包括的な精神は、他の楽曲にも波及し、エネルギッシュでポップなリフ、チャギーなリズム、冷たいアンビエンス、苦悶の叫び、神々しき多幸感、儚さと喪失感、つまり黒さと白さが等しく溢れかえっているのです。
重要なのは、ただポップであるのではなく、生々しく肉感的ブラックメタルの嗚咽に沿ってメロディックであることでしょう。シンセのキラキラとあいまって “Queen of the Haunted Dell” には COB の華やかささえ感じますし、”Yuki Onna” の素晴らしきJ-POP感も出色。
今回弊誌では、SAIDAN にインタビューを行うことができました。「日本の怪談やホラー映画について書き始めたのは、それらを読んだり見たりすることで、当時の人生で起こっていたすべてのことを忘れることができたからなんだ。西洋の音楽の中では、日本の怪談をテーマとしたストーリーはほとんど語られていない気がしたしね」 どうぞ!!

SAIDAN “ONRYO Ⅱ: HER SPIRIT ETERNAL” 9.9/10

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