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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VALHALORE : BEYOND THE STARS】 JAPAN TOUR 26′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LACHLAN NEATE OF VALHALORE !!

“Our goal has always been to deliver what we refer to as “The Three E’s” – Escapism, Empowerment and Entertainment. We want our music, and our live shows, to give listeners the opportunity to escape their troubles for an hour or two. We want to leave the world a more positive place than when we found it.”

DISC REVIEW “BEYOND THE STARS”

「オーストラリアには “ヨーロッパ的” なサウンドのバンドが少なかったからね。オーストラリアにいても、僕が聴きたい、観たい音楽を作って演奏したかったんだ!」
VALHALORE。ヴァルハラの伝承という、まるで北欧神話から抜け出てきたような名前の彼らは、実はオーストラリアのバンドです。太陽の日差しが降りそそぐグレート・バリアリーフと、極寒の北欧神話はあまりにも正反対ですが、だからこそ VALHALORE は欧州的なサウンドを探求しました。そこにないなら、自分たちが作ればいい。ヘヴィ・メタルの寛容さは、ルール違反を罰することなどありません。
「僕たちは常に、自分たちの音楽を通してファンに高揚感や力を与えるエネルギーをもたらすことを目指してきた。 僕たちは皆、映画やゲームのサウンドトラックから大きな影響を受けているから、日本文化からの影響も間違いなくたくさんあるよね。WINTERSUN のような和楽器を積極的に取り入れているバンドが大好きだし、僕たちもそうなんだ。”Aether” という曲では琴だって弾いたんだよ! 」
ただし、その欧州的なサウンドは実にカラフルで、魅力的。なぜなら、彼らの根底には、白夜の太陽 WINTERSUN から流れる “混血の美学” を受け継いでいるから。WINTERSUN のセルフ・タイトルと “Time” が、21世紀を代表する北欧メタルの逸品であることに疑いの余地はありませんが、その傑作の誕生に寄与したのがまさにその “混血の美学” であり、モダン・メタルらしい多様性でした。
メロデス、パワー・メタル、フォーク・メタル、シンフォニック・メタル、プログ・メタル…どのジャンルにも収まりきらない面妖でしかし起伏と驚きに満ちたオーロラの楽曲は、凄まじいシュレッドと様々な民族楽器に彩られた理知的なごった煮。VALHALORE の探求する北欧神話の宇宙には、明らかにあの “Time” と同様の美しき “混血の美学” が宿っています。
「僕たちが進歩するにつれて、Sophie のホイッスルと木管楽器は僕たちのサウンドの象徴的な側面になったんだ。ただ、大変なのは主にライブのサウンド・エンジニアかな。メタル・バンドの獰猛さに対して、穏やかなアコースティック楽器をミックスしなければならないからね!」
マンドリン、チェロ、パイプ、ホイッスルに縦笛、横笛。さらに和楽器の琴まで使用する伝統民族楽器のるつぼもまた、VALHALORE の魅力のひとつ。Sophie の操る艶やかな管楽器は、硬質な彼らの音楽を徐々に溶かして、テンポの速いメタルの嘶きに濃密なアクセントを加えていきます。
ここにのチェロとマンドリンの欧州的で荘厳な響きが加わることで、力強いメタルとオーガニックで本格的なフォークの生命が見事に重なり合います。さらに、佳曲 “Heart on the Sea” には、あの Anna Murphy が参加。ELUVEITIE で培った先駆者の威厳を見せつけながら、このジャンルの弛まぬ進化に目を細めます。そう、歴史に彩られたフォーク・メタルもまた、歴史を重ね、その文化を広げているのです。
今回弊誌では、ボーカル、チェロ、マンドリンとひとり三役の Lachlan Neate にインタビューを行うことができました。「僕たちの目標は常に、僕たちが “3つのE” と呼ぶもの、すなわちエスケープ、エンパワーメント、エンターテインメントを提供することなんだ。 僕たちの音楽、そしてライブを通して、リスナーに1時間でも2時間でも悩みから逃避する機会を与えたい。僕たちは、自分たちが今いる世界よりもポジティブな世界を後世に残したいんだ」 来日も決定。どうぞ!!

VALHALORE “BEYOND THE STARS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【UUHAI : HUMAN HERDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH UUHAI !!

“Heavy metal cannot stop wars, but it can inspire the people who will build peace. It cannot erase division, but it can create moments where division disappears. It cannot solve every problem, but it can open hearts and minds.”

DISC REVIEW “HUMAN HERDS”

「メタルは新たな自由の時代に入り、様々な文化がジャンルの中で真摯に自己表現できるようになったと確信しているよ。メタルは世界の限られた場所で生まれたけど、その感情的な言語は無限大だ。強さ、闘争、アイデンティティ、そして意味の探求を語ってくれる。そうしたテーマは地球上のあらゆる文化が共有する経験。だからこそ、メタルは今、その起源をはるかに超えて広がっているんだと思う」
2025年。メタルの生命力、感染力、包容力はその可能性をますます広げています。モダン・メタルに宿る寛容さは、世界の壁を壊し、さまざまな文化を包容していきます。そうして、世界中に根を張ったメタルの種子は、その多様な音の枝葉を存分に伸ばしているのです。
モンゴルに生まれた UUHAI も、そうしたメタルの自由を謳歌するバンドのひとつ。彼らは祖先の英雄チンギス・ハーンに学んだ勇気、正義、責任、リーダーシップを噛み締めながら、共感と団結というまた別のやり方で世界を席巻しようとしています。
「Uuhai は、深い歴史的、精神的な意味を持つ力強いモンゴル語だ。僕たちの祖先が戦いや儀式、そして団結と勇気が必要な瞬間に使っていた古代の呼び声なんだ。それは単なる叫び以上のもの。それは共有された精神の声なんだ。それは単なる名前ではない。僕たちの声であり、アイデンティティであり、モンゴルの魂との繋がりなんだよ」
勇気、強さ、そして団結を象徴する古来の戦いの雄叫び、UUHAI という名前は決して偶然選ばれたわけではありません。伝統と現代を結ぶため。草原に轟いた一致団結の雄叫びを、暗い現代社会へと響かせるため。だからこそ、当然その叫びのエネルギーは彼らの音楽にも反映されています。
モンゴルから先に世界的成功を収めた THE HU はフォークとロックのバランスを巧みに取りますが、UUHAI はより断固としたメタル寄りのサウンドを追求しています。そして、彼らのデビュー・フル “Human Herds” は、まさにその真髄でしょう。タイトルの一部は英語ですが、歌詞は彼らのルーツに忠実で、すべてモンゴル語で歌われています。だからこそ、彼らの楽曲にはステップ民族の力強さがもたらされ、草原の響きを響かせる馬頭琴(モリンホール)や、世界遺産にも登録されている喉歌といった伝統的な楽器が、より一層、真実の音をもって響き渡ります。喉歌のスピリチュアルな神秘、悍馬のように力強いリフ、草原から吹き寄せるギターソロ、そして馬頭琴独特の響きが、壮大なスケールの楽曲へと溶け合います。このシンプルな二弦楽器と人に備わる声帯が、修練と創意工夫を経てメタルの包容力に包まれる時、これほどまでに緊張感と感情を呼び起こせるものなのでしょうか…まさにモンゴルは蒼き狼、メタルは白き牝鹿。
「今日、世界は様々な闘争に直面している。戦争、分断、差別、そして恐怖が多くの場所で蔓延しているんだ。こうした課題は力で解決できるものではない。理解と団結をもって立ち向かわなければならないんだよ。
こうした世界において、ヘヴィ・メタルは特別な役割を担っている。メタルは感情を隠さない。正直で、率直で、恐れることなく真実を語る。社会が沈黙に包まれたとき、メタルは声をあげられない人々の声となる。怒り、悲しみ、そしてフラストレーションを表現するだけでなく、そうした感情を強さと繋がりへと変える力も持ち合わせているんだ。
UUHAI にとって、メタルは単なる音楽ジャンルではない。メタルは人々に共通の人間性を思い出させる力であり、国境や文化を超えたメッセージを届けることができるもの。出会うことのない人々でさえ、音楽の中で同じ鼓動を感じ、一つに繋がることができるんだ」
長い歴史の中で、モンゴルの人々は自然と調和しながら生きてきました。そして、誇り高き戦士としても。母なる大地が泣く時、それは人類への警告。世界が歴史の暗黒面を忘れ去り暗雲に包まれる時、戦士は人々を守るため恐れず、怯まず、勇気を持って武器を手に取ります。ヘヴィ・メタルという剣には、どんな弾圧も抑圧も敵いません。そうして、彼らは国境も文化も超えて、古の英雄の如く世界を、そして人と自然を再びひとつにつなげるのです。Uuhai! の雄叫びとともに。
今回弊誌では、UUHAI にインタビューを行うことが出来ました。「ヘヴィ・メタルは戦争を止めることはできないけど、平和を築こうと願う人々を鼓舞することができる。分断を消し去ることはできないけど、ライブで分断が消え去る瞬間を作り出すことはできる。すべての問題を解決することはできないけど、人々の心と精神を開くことはできる」素晴らしい言葉ですね。どうぞ!!

UUHAI “HUMAN HERDS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AEPHANEMER : UTOPIE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARTIN HAMICHE OF AEPHANEMER !!

“I have always admired Joe Hisaishi, who composed the music for many Studio Ghibli films. One of my favorite pieces is Innocent from Castle in the Sky – it is pure, sincere, and beautiful. I truly admire his work.”

DISC REVIEW “UTOPIE”

「僕らにとって、フランス語で歌うことはとても自然な選択なんだ。メタルの世界では母国語で歌うバンドがますます多くなり、一般的に広く受け入れられるようになったと感じているよ。 それは今日、誠実さや信憑性の証とみなされ、高く評価されることさえあるからね」
音楽、特にメタルの優れているのは、たとえ言葉の壁やボーカル・スタイルによって歌詞が不明瞭で理解不能な場合でも、ムード、メロディ、テーマ、バイブスなどその音楽自体に伝える力が込められているところでしょう。裏を返せば、モダン・メタルの寛容さは、あらゆる異端を排除せず、壁を壊して包容し、自らの血肉としていくことができるのです。フランスの AEPHANEMER は、そうして文化の壁も、さらにはメロデスというジャンルの限界まで打ち壊し、突破していきます。
「客観的に見て、僕たちは DARK TRANQUILLITY, AMON AMARTH, ARCH ENEMY のようなサウンドではまったくない。 CHILDREN OF BODOM と比較されることがあるけれど、それでも僕らとはまったく違う雰囲気を持っているよ。 というのも、今の僕は中世、クラシック、民族音楽にインスパイアされることが多いからね。それはもはや前世代のバンドには当てはまらない特徴だよね。結局、単に音楽はそうやって進化していくということだよ」
メタルの進化に終わりはありません。そう、AEPHANEMER はメロデスの遺産をしっかりと抱きしめながら、そのサウンドを別の次元へと高めるために音楽を奏でています。”メディーヴァル・フォーク的シンフォニック・メロデス” という大げさな表現が、もしかしたら今の彼らには最もしっくりくるのかもしれませんね。それだけ、この最先端のメロデスは、映画的で、オーケストラで、壮大な音の祭典です。
2023年にベーシストの Lucie Hune が脱退し3人編成となったにもかかわらず、これだけの緻密な壮観を完成させた AEPHANEMER の才能は比類なきもの。バンド創設者でインタビューイ、 Martin Hamiche が全ての弦楽器とオーケストレーションを担当して、あの鬼才 Dan Swanö 再度の協力により、力強いメロディにフック、心を震わす激情、幻想的なムード、フランスらしい気品と格調の高さ、そして豪華絢爛な “La Rivière Souterraine” が象徴する複雑で多面的な色彩を帯びた、ダーク・フォークとネオクラシカルの煌びやかな祭典 “Utopie” が降臨することとなりました。
「僕たちのアプローチは、あきらめずに日々の小さな行動を通じて現実世界を改善する努力を続ければ、現実世界で何が起こり得るかについて、自分自身、そしておそらく他の人たちを鼓舞するためにアートを創作するというものなんだ。僕たちは、人々が僕たちの音楽からエナジーやインスピレーションを感じ、そのエネルギーを活かして生活や家庭、地域社会に前向きな変化を起こしてくれることをとても嬉しく思っているんだ。僕たちにとって、すべての生きとし生けるもののためにより良い未来を創造することは必要不可欠なこと。だからこそ僕たちの考えるユートピアとは、人類が自然や他の生命体と調和して生きる世界なんだよ」
お馴染みとなった Niklas Sundin (DARK TRANQUILLITY) の手による鮮やかなアートワーク。そこには、彼らにとっての “Utopie” “理想郷”、自然と人間が手を携え、調和して生きていく世界が描かれています。もちろん、前作 “A Dream of Wildness” のイノシシに、私たちは “もののけ姫“ の影をみましたし、久石譲の風も受け取りました。
そう、AEPHANEMER の理想郷にとって、進化し多様に共生するべきは音楽だけにとどまりません。彼らは、人も小さな行動の積み重ねでより良い世界を目指すことができる、異文化と共生し調和することができると信じてアートを生み出していますし、もちろんアシタカとサンのように文明と自然も調和して生きていく未来を見据えているのです。
今回弊誌では、ギタリスト Martin Hamiche にインタビューを行うことができました。「Marion は、僕たちが大好きな宮崎駿監督の “もののけ姫” に登場するイノシシをすぐに思い浮かべたね。 彼女は若い頃からアニメのファンで、アニメは常に彼女に創造的なインスピレーションの源となってきた。 個人的には、多くのスタジオジブリ作品の音楽を作曲した久石譲さんをずっと尊敬してきたんだ。彼の作品で好きな曲のひとつは “天空の城ラピュタ” の “Innocent”。まさに純粋で誠実で美しい音だよね。彼の作品を心から尊敬しているんだ」ギターの煌めきとドラムの技巧、そして声の獰猛は群を抜いていますね。どうぞ!!

AEPHANEMER “UTOPIE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MATTIAS “IA” EKLUNDH : RESIST THE EROSION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATTIAS “IA” EKLUNDH !!

“I’ve never had world domination or fame as a goal ― just to write and perform my music, something I’ve lived off solely since I was nineteen, and something I’m incredibly grateful for. The least you can do is hug someone who supports your experimenting and songwriting.”

DISC REVIEW “RESIST THE EROSION”

「リスナーや観客がいなければ、私は一体何者なんだい?誰も聴いてくれなければ、私の音楽は空っぽのままなんだから。世界的に有名になることや名声を目標にしたことはなく、ただ自分の音楽を作り、演奏することだけが私の生きがいなんだ。私は19歳のときからこの仕事だけで生きてくることができた。そして、そのことに心から感謝しているんだよ。せめてできることは、自分の実験や作曲を応援してくれる人を抱きしめることだからね」
FREAK KITCHEN の、本当に久々となった来日公演に足を運んだ方はきっと、その会場の “温かさ” に驚かされたはずです。これほど、演者と観客の “壁” が、もっといえば観客と観客の間の “壁“ もないライブは少なくとも私は初めてでした。謎のスウェーデン語を練習させられたり、変拍子をカウントしたり、Mattias の漫談に笑い転げたり。曲の良さ、楽器の妙技はもちろん、それ以上に、人と人とが直接つながることの楽しさを心の底から実感できたライブでした。
それは、Mattias “IA” Eklundh という異能のギタリストが、誰よりもつながりを大切にしているからこそ生まれた空間でした。ライブが始まる前に観客席に姿を現し一人一人と握手をしたり、シグネイチャー・ギターの購入者を招待して一緒に写真を撮ったり。ライブ中には漫談やスウェーデン語講座で会場を盛り上げ、一体化してくれました。
顔の見えないSNSでの交流、もっと言えば引用での一方通行な “交流” がメインとなった現代世界において、Mattias は顔と顔を付き合わせたつながりを誰よりも大切にしています。それは、彼の型破りな実験に付き合い、楽しみ、応援してくれるファンがいなければ、音楽ではなくただ “音” であることを知っているから。
「”Resist The Erosion” は、プロジェクトではなくバンド形態。私の素晴らしい友人である B.C. Manjunath, Yogev Gabay, Lior Ozeri と一緒に作った作品だよ。彼らは私の音楽を驚くほど高めてくれるんだ。彼らが私と一緒に仕事をしたいと思ってくれて、素晴らしい作品を作るために本当に努力してくれたことを、とても誇りに思い、感謝しているんだよ。このアルバムは、私のアーティスト人生において常に大きなハイライトとなるだろうね」
そう、Mattias “IA” Eklundh の実験 “Freak Audio Lab” は、いつも楽しく、そして感謝に満ち溢れています。そんなラボラトリーの中でも、”Resist the Erosion” が群を抜いて印象的な、Mattias の金字塔となることは間違いないでしょう。
この Mattias のプロジェクトは、インド音楽、特にコナッコルとして知られる南インドのカルナータカ音楽への憧憬から始まりました。コナッコルは、複雑な数式に基づいた非常に入り組んだリズムと拍子で、打楽器の音節をボーカルで演奏する芸術。B.C.Manjunath は、この伝統的なインド音楽の哲学をジャズやワールドミュージックの世界に取り入れることで、その重要な担い手となっています。だからこそカルナータカ音楽に心酔する Mattias は、Manjunath から現代メタルと古代南インドの音楽スタイルを融合させたコラボレーションについて連絡を受けた際、大きな衝撃を受けたのです。
ベーシストの Lior Ozeri とドラマー/パーカッショニストの Yogev Gabay を起用し、ベテラン音楽家4人組となった Mattias のラボラトリーは、さながら John McLaughlin が全く新しいSHAKTI を結成したかのような、驚異的な10曲を生み出しました。フィボナッチの難解さで迫るコナッコルとムリダンガムの複雑怪奇が、Mattias の Djenty な8弦モダン・メタルの宇宙と出会う時、メタルとギター音楽は別の次元へと旅立ちます。きっと真のイノベーションとは、こうした純粋な情熱と好奇心から起こるのでしょう。115/16、34/4。想像を絶する複雑な拍子と、楽器同士の対位法に彩られながらも、ここには目を見張るような感情の渦と濃密なメロディが広がっています。だからこそ、”Resist the Erosion” は未曾有の景色となり、Mattias “IA” Eklundh は生涯を通したギターの科学者であるのです。
今回弊誌では、Mattias “IA” Eklundh にインタビューを行うことができました。「何よりも、停滞しないこと、新しい境地を開拓することについてだね。もちろん、私たちは奇妙な時代に生きている。特に、日々の情報攻勢に晒され、自分が今どこにいるのかさえ分からなくなってしまうような状況だ。私にとって一番良いのは、それらを無視して、自分の人生を思い通りに形作ること。家族、音楽、自然、そして何の制約もない自由な創造など、自分にとって良いものを大切にしながらね」 4度目の登場。どうぞ!!

Anyone who attended FREAK KITCHEN’s first concert in Japan in a long time was surely surprised by the warmth of the venue. At least for me, it was the first time I’d ever experienced a live performance where there was such a clear barrier between the performers and the audience, and even between the audience members themselves. We were made to practice some mysterious Swedish, counted out odd time signatures, and laughed our heads off at Mattias’s comedy routines. The quality of the songs and the virtuosity of the instruments were undeniable, but more than that, it was a concert where I truly felt the joy of direct human connection.
It was an atmosphere born out of the extraordinary guitarist Mattias “IA” Eklundh, who values ​​connections more than anyone else. He appeared in the audience before the show to shake hands with each person, and invited those who purchased his signature guitar to take photos with him. During the show, he livened up the venue with comedy routines and Swedish language lessons, bringing the audience together. In today’s world, where faceless social media interactions and, even more so, one-way “interactions” based on quotes are the norm, Mattias values ​​face-to-face connections more than anyone else. He knows that without fans who engage with, enjoy, and support his unconventional experiments, it’s just “sound,” not music.
Mattias “IA” Eklundh’s “Freak Audio Lab” experiments are always joyful and filled with gratitude. Even within this lab, “Resist the Erosion” stands out as a monumental achievement.
Mattias’s project was born out of his admiration for Indian music, particularly the South Indian Carnatic music known as Konakkol. Konakkol is an art of vocally playing percussion syllables with highly intricate rhythms and signatures based on complex mathematical formulas. B.C. Manjunath has become a key advocate for this traditional Indian musical philosophy, incorporating it into the worlds of jazz and world music. That’s why Mattias, a lover of Carnatic music, was so thrilled when Manjunath contacted him about a collaboration that would fuse modern metal with ancient South Indian musical styles. Mattias’s laboratory, now a quartet of veteran musicians with bassist Lior Ozeri and drummer/percussionist Yogev Gabay, has produced 10 astounding tracks that sound like John McLaughlin had formed a whole new SHAKTI. When the Fibonacci-esque intricacies of the konakkol and mridangam meet Mattias’s djenty, eight-string modern metal universe, metal and guitar music are transported to another dimension. True innovation truly comes from pure passion and curiosity. 115/16, 34/4. Though colored by incredibly complex time signatures and instrumental counterpoint, there’s a swirl of stunning emotion and dense melody unfolding here. That’s what makes “Resist the Erosion” such an unprecedented landscape, and why Mattias “IA” Eklundh is a lifelong guitar scientist.
This time, we had the pleasure of interviewing Mattias “IA” Eklundh. This is his fourth appearance. Enjoy!!

FREAK AUDIO LAB “RESIST THE EROSION” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NYTT LAND : SONGS OF THE SHAMAN】 JAPAN TOUR 25′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANATOLY PAKHALENKO OF NYTT LAND !!

“Throat singing is a real treasure, the heritage of our indigenous peoples. We use throat singing in our music quite actively, as it is an incredible magic and it is our connection with our ancestors.”

DISC REVIEW “SONGS OF SHAMAN”

「私たちにとってシベリアで暮らすのは、世界のどの地域よりもずっと簡単なんだ。 ここは私たちの祖国であり、祖先の土地であり、自分たちのルーツを大切にして、伝統を守ることが重要なんだよ。 私たちはアジア人で、ライフスタイルの面では非常に保守的だ。 フランス、ノルウェー、セルビアなど、他の国や大都市への移住を何度も勧められよ。でも、私たちはそんなことはしたくない。 どこまでも続く美しい草原、山々、森といった生まれ育った土地を離れることは、私たちにとって大きなストレスになる。 ここが私たちの人生のすべてであり、私たちが生まれた場所であり、先祖が生まれた場所であり、私たちの一部であり、だからこそ私たちはここに住んでいるのだよ」
シベリアの大地に深く根を張る NYTT LAND の作品は、2021年の “Ritual” を皮切りに、北欧のフォーク・ミュージックからシベリアの伝統をより深く表現するダークな音楽へと徐々に移行し、最新アルバム “Songs Of The Shaman” で頂点を極めました。
満州・ツングース民族のシャーマニズム的な歌や呪文を、彼ら自身の言語と伝統楽器を用いて解釈することで NYTT LAND は自らの古代文化を守り、より幅広いオーディエンスに届けることを目指しています。NYTT LAND の音楽を聴けば、かつてシベリアに広がっていた風景や営みが心に深く刻まれるような感覚を覚えます。それは、まさに太古の昔からもたらされた音のささやき。 これはもはや、地球上で最も古い文化を巡る魅力的な旅。そして、”Songs Of The Shaman” でその旅路の鮮やかさは一段と際立っています。
「ホーミーはシベリアとモンゴルの先住民の伝統的な歌唱法なんだ。こうした伝統的な歌い方は、世界中のどこを探しても見つからない。もし誰かが、バイキングの間でのどを使った歌い方があったという話をしたら、その人の顔にツバを吐いてもいいだろう。現在では、喉歌をヨーロッパ民族のものとすることが非常にポピュラーになっているけど、これはまったくのナンセンスだよ。喉歌は、先住民族の遺産であり、真の宝なんだ。私たちが非常によく喉歌を使うのは、喉歌が信じられないような魔法であり、祖先とのつながりでもあるからなんだ」
伝統的なシャーマニズムの歌と呪文を解釈した NYTT LAND の音楽。すべての曲は原語で録音され、喉歌や太鼓などの非常に古い音楽技法が用いられています。そうして彼らは、イントネーションとリズムからも生まれる魔法の力を逃さないようにしています。降霊術、呪文、祝福…古代の魔法は、慎重に選択され、有害な呪いは意図的に排除されていきました。NYTT LANDは聴く者すべてを、精霊たちが今も支配し、神々でさえも恐れる時空の秘境、音楽の旅へと誘います。
そうしてこの音の旅は、原始的な人間性に対する理解を何よりも深めてくれるはずです。真っ暗な草原の夜空の下、焚き火のそばに座り、シャーマンが祖先、星々、そこに宿る神々、そしてこの極寒の地を形作る岩や川についての物語を紡ぐのをただ聞いている。そしてシャーマンが炎の中で喉歌を歌い踊る姿に目を奪われる…そこに広がるのは民俗神話の荘厳なる世界。
そう、NYTT LAND こそ古の草原を旅する真の音楽遊牧民。そしてもちろん、この原始と神話、古代の再来は、NYTT LAND が祖先、土地、ルーツと伝統を心から大切にしてきたからこそ成り立っているのです。
今回弊誌では、Anatoly Pakhalenko にインタビューを行うことができました。妻 Natalia とのユニット。「私たちはメタルを演奏するのではなく、伝統的な儀式のフォークロアとその音楽における解釈を研究しているんだ。 そう、私たちの聴衆の一部は間違いなくメタル・ヘッズで、それはクールなことだ。 これは、私たちの音楽がすべての人の魂に触れ、ある種の感情を呼び起こすことを意味している」 ARKONA との来日も決定。どうぞ!!

NYTT LAND “SONGS OF THE SHAMAN” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ARKONA : KOB’】 JAPAN TOUR 25′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARIA “MASHA SCREAM” ARKHIPOVA OF ARKONA !!

“As a result, Slavic paganism became a part of my life, and subsequently I began to convey my worldview through my music.”

DISC REVIEW “KOB'”

「古代スラブのペイガニズムは私たちの歴史であり、過去であり、取り返しのつかない、しかしどうしようもなく説得力のあるテーマだ。私たちのルーツに戻り、多神教的な宇宙とそのさまざまな顔、解釈、そして数多くの神々や要素という形での現れと相互作用しながら、自然の法則のみに従って動くその世界そのものに真に没頭するよう教えてくれる。 私の意識はこのテーマに完全に没頭し、その結果、スラブ多神教は私の生活の一部となり、その後、私は音楽を通して自分の世界観を伝えるようになった」
ロシアの ARKONA (Аркона) は、ペイガン・メタルとフォーク・メタルの定義と革新を今もなお追求し続けています。ダークなプロダクション、ブラック・メタルとプログレッシブ・メタルの融合、強烈で内臓をえぐるようなパフォーマンス、そして物憂げで重々しいギターワークと民族色豊かな管楽器の響き。そうした言語をも超越した ARKONA のパフォーマンスは、自らが生まれ育った母なるロシアの厳しくも美しい大地と、ルーツである古代スラブのペイガニズムに捧げられています。
「ARKONA は非常に多様で、バンド結成20年の間に、私たちの音楽は大きな変化を遂げた。昔の、のんきで陽気で、荒々しく正直で、エネルギッシュでありながら儀式的な神秘に満ちたフォーク時代の ARKONA と、新しい、暗くて絶望的で、骨抜きで死の息吹が漂い、混沌の果てしない抱擁の中で勝利する ARKONA の両方のファンがいることは素晴らしいことだ。 誰もが自分自身のアルコナを選ぶことを勧めるよ。そして、1枚のアルバムに焦点を当てるには、あまりにも私たちは多面的で広大だ」
ARKONA の音楽は、彼らが崇拝するスラブ多神教のごとく多様で千変万化。初期の “Yarilo” や “Stenka Na Stenku” のようにある種牧歌的で楽しくしかしどこか憂いを帯び、直情的でパワフルなスラブ音楽の祭典はもちろん ARKONA の原点。一方で、近年の大作路線、難解で神秘的、死と混沌のプログレッシブ・ブラックにも彼らのペイガニズムは儀式として根付いています。
そして何より、今回のインタビューイでありボーカリスト Maria “Masha Scream” Arkhipova の哲学と人類の現代、そして未来観という深く暗い領域はどの時代の ARKONA においても紡がれていて、ペイガンの伝統、その光の中で音楽を描き出していくのです。
「ARKONA が結成されたとき、私はすでに熱狂的なメタル・ファンだったので、あるリハーサルで生々しく過激なヴォーカル・スタイルで歌ってみたところ、すぐに夢中になったの。 その結果、私はすぐにこの新しい、自発的な能力を自分の仕事に取り入れることにした。当時は、同じような声のテクニックを持つ女性ヴォーカリストのことをほとんど知らなかったから、だれかの真似をしたわけじゃない。 すべてが自然に起こったんだよ」
古代スラブの神話を語る時、Masha のスクリームやグロウルはストーリーに大きな抑揚を生み出します。その個性、存在感、そして圧倒的な音域は人智を超えた未知の恐怖と神性を ARKONA の音楽へともたらします。比較的自由で穏やかだったソ連崩壊後に声楽を学び、まだ女性スクリーマーがほとんど存在しなかった90年代後半からスクリームを追求し続ける彼女の声は、今や当たり前となったメタル世界の女性たちを力強く後押しし、今ではメタル世界最高の女性スクリーマーのひとりと言われるまでになりました。そうして、Masha の声は、人類が長らく忘れてしまった過去の知恵、太古の生活を蘇らせます。戦争、疫病、宗教的信念、環境問題によって社会が自らの墓穴を掘る中で、ARKONA は本物の疫病が現代を生きる強欲な人類自身であると太古の森から警告を発していくのです。
今回弊誌では、Maria “Masha Scream” Arkhipova にインタビューを行うことができました。「どんな状況でも、メタルは私たちを団結させてくれる。あなたが前の質問で、ヘヴィ・メタルは国際的な現象となり、政治や支配者層が私たちを陥れようとしているあらゆる汚物を超越する、と指摘したのは正しんだよ」 来日決定!どうぞ!!

ARKONA “KOB'” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KORYPHEUS : GILGAMESH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDY GUSHIN OF KORYPHEUS !!

“Since August I am serving in the army. So we stopped writing new music. However, before that we managed to record 2 new songs and were about to record the third one in September but…”

DISC REVIEW “GILGAMESH”

「僕たちはロシアの SLAUGHTER TO PREVAIL とのツアー、その経験から距離を置こうとしているんだ。ああした協力は、今では不可能だよ。8月から僕は兵役に就いているんだ。だから、僕らは新曲を作ることをやめざるを得なかった。なんとか、その前に2曲の新曲をレコーディングすることができて、9月には3曲目をレコーディングしようとしていたんだけどね…」
戦争に巻き込まれること…それは私たちが享受し、人生の糧としている “文化” の破壊にもつながります。ウクライナの素晴らしきプログレッシブ・メタルコア KORYPHEUS は、ロシアの侵略によって多くを失いました。SLAUGHTER TO PREVAIL は決して侵略を肯定しているバンドではありませんが (というより、Alex Terrible は当局による逮捕の可能性もあって、アメリカに居を移している)、それでも彼らはロシアのバンドと協力することは今や不可能だといいます。メタルの寛容さや壁を壊す力も、非道の戦争には抗えません。
そして何より、ボーカリスト Andy Gushin が祖国を守るため兵役についたことで、バンドの未来さえ暗礁に乗り上げようとしているのです。それでも、KORYPHEUS はドローンとミサイルが飛び交うキーウの防空壕から見事なアルバムを届けてみせました。それはきっと、音楽家としての誇りと使命がもたらしたもの。
「子供の頃から神話が好きだった。 ギルガメシュは最古の叙事詩だ。 後の多くの登場人物、神話、英雄のルーツはメソポタミアにある。でも、このアルバムは古代の神話をテーマにしているわけではないんだ。 実際、僕たちの脳の奥深くに根付いていて、自分たちの行動や潜在意識に影響を与えている原型というものがある。それは過去と現在が出会う場所だ。僕たちはアマテラスのことも知っているよ。とても興味深いよね」
そんな KORYPHEUS が自らの “叫び” を音に乗せるため、選んだテーマは様々な神話をベースにしていました。”Gilgamesh”, “Odysseus” そして “Icarus”。神話上の人物を想起させるタイトルの数々は、古代の英雄譚に巣食う人の傲慢さ、そして悲劇へとつながり、そのアルバムを通じた人間の業はそのまま彼らが今直面している現代の悪夢へと通じているのです。
「メソポタミアは文明発祥の地。 古代のルーツを知ることは重要だ。僕たちは今でも、メソポタミアの文化と音楽は広い意味で自分たちのものだと感じているんだ。Yossi のことは、ORPHANED LAND とツアーをする予定だったから知っているんだよ。 戦争のせいで実現しなかったんだ」
JINJER, IGNEA など活気あふれるウクライナのプログ/メタルコア世界においても、KORYPHEUS が放つ異世界感は明らかに際立っています。それは、彼らがメソポタミアという人類の素晴らしさ、そして愚かさすべての始まりの地を大きな柱としているから。もちろん、彼らの音楽は PERIPHERY や GOJIRA のように実に新鮮でモダンで知的で重くダイナミックですが、同時にそこにはメソポタミアが育んだ太古の響きとドラマが潜んでいます。そうして彼らは、遥か昔の神話を現代に重ねるように、その音楽でも過去と現在を見事に出会わせていくのです。愚かな歴史は繰り返すのかもしれませんが、歴史から学べるのもまた、人間の良さなのですから。
今回弊誌では、Andy Gushin にインタビューを行うことができました。「キーウの状況はあまりよくないよ。 毎日、この都市はドローンやミサイルで攻撃されているんだ。だから、多くの人が安全を求めて防空壕に逃げ込んでいる。一方で、このような事態に嫌気がさし、危険を無視して家に留まり閉じこもっている人もいるんだ」ヘヴィ・メタルの轟音でも戦争の足音はかき消せないかもしれませんが、それでも私たちはこの優しい音楽と共に “浅はか” な思考回路を捨て去り、様々な世界に共感して文化を、そして平和を守っていくべきでしょう…どうぞ!!

KORYPHEUS “GILGAMESH” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MAWIZA : ÜL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AWKA OF MAWIZA !!

“Our Song Wingkawnoamestá Is Based On The Dance Of The Wemul (Deer). It Has a Syncopated Rhythm Because This Animal Has The Wisdom To Confuse Its Predators, It Even Makes a False Step.”

DISC REVIEW “ÜL”

「僕たちはヘヴィ・メタルやロックの自由の叫びから、大きな力とエネルギーを見出したんだ。これは偶然ではないと感じているよ。自然とその精霊はメタルの力に気づいている。マプチェの知識では、マプ(土地)は最も身近なエネルギーを使うと言われている。MAWIZA は土地に仕える者だからね」
チリ・アルゼンチンに暮らす先住民、マプチェ族。マプは土地、チェは人を意味し、文字通り自らの生まれ育った土地を守りながら生きる人々。インカ帝国にも、スペインにも屈することなく独立を貫き続けた誇り高きマプチェの民は、その土地の自然とスピリチュアリティを何よりも大切にしています。そしてその自然や精霊から得られる大きな力、エンパワーメントがメタルとシンクロすることに MAWIZA は気づいたのです。自由の叫びと共に。
「僕たちの言語、マプズグン(土地の言語)は、19世紀末に抑圧されたため、現在復活の過程にあるんだ。マプズグンでフルアルバムをリリースすることは、それ自体がマプチェ復興のための活動であり、僕たちから奪われた場所を取り戻す行為でもある。
僕たちは、先住民の視点から現代の楽器を使用し、メタルを通じてこの活動を実践することで、エンパワーメント、力を得ている。それが、このアルバムで表現しようとしたものなんだ。
僕たちはマプチェの論理に基づいて音楽を構成しているから、自然、鳥、動物のリズム、海洋のパターンを模倣した音が聴こえるだろうね」
19世紀末、”アラウカニア制圧作戦” でスペインから独立したチリ政府に併合されたマプチェ族。以降彼らは、ピノチェトや国軍、大企業、もしくはヨーロッパから移住したチリのエリートから差別や迫害を受け、抑圧され、共に生き育てた自然を奪われていきました。マプズグンという彼らの言葉さえも奪われてしまいました。
いつの世も、植民者、征服者にとって先住民とは “なかったこと” にしたい存在です。それでも、マプチェとメタルには並外れた回復力、反発力、レジリエンスが宿っていました。MAWIZA はマプチェの言葉で歌い、マプチェのメタルを奏でることで、民族の復興を願っているのです。
「マプチェのリズムは先祖から受け継がれたもの。僕たちは、こうしたダンスを動物、風、海から学んだんだ。それはマプチェの民のコミュニティによって異なるんだよ。例えば、僕たちの曲 “Wingkawnoamestá” は、ウェムル(鹿)のダンスを基にしている。鹿は捕食者を混乱させる知恵を持ち、偽のステップを踏むため、シンコペーションのリズムが特徴となっているよ。実際、自然はメタルだよ」
そう自然はメタル。マプチェ復興の強い意志が込められた MAWIZA の最新作 “ÜL” には、雷のような轟音、風や海と地を揺るがすグルーヴ、情熱の炎と先祖から受け継いだ知恵とスピリチュアリティが織り込まれています。”ÜL” の詠唱はまさに土地の声。”Wingkawnoam” はインダストリアルで現代的なビートで進行しますが、その音はマプチェの儀式用ドラム “Kultxung” で叩き出されています。 Kultxung は神聖な楽器。シャーマンがこのドラムを叩くとき、彼らは空のエネルギーを受け取り、それを大地に伝えると言われています。
そうして彼らはシャーマンの言葉、先祖の夢託により、鹿のステップをプログレッシブなリズムに落とし込みました。自然の力である鹿を自らに見立て、植民者たちの目を撹乱するために。そう、マプチェの土地は今でも自然との共存とは程遠い開発業者の侵食に脅かされています。それでも、MAWIZA は先祖や長老から受け継いだ知恵、そして自然とメタルのエンパワーメントで力強い抵抗を続けていきます。彼らが紡ぐのは、血に飢えた征服者の目ではなく、土地と生きる先住民の目から見た歴史。
今回弊誌では、ボーカリスト Awka にインタビューを行うことができました。「MAWIZA とは “山” を意味する。現在僕たちが住むピクン・マプ(北部の土地)では、アンデス山脈が圧倒的な規模で広がっていてね。毎日、太陽がアンデスの背後から昇る光景は息をのむほど美しいものだ。冬には雪に覆われ、時にはピューマが山から下りてくる。森と山は多くの命が交わる場所。そこでは水、滝、多様な樹種、薬草、動物が共存しているんだよ」GOJIRA の Joe Duplantier もゲスト参加。どうぞ!!

MAWIZA “ÜL” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IMPUREZA : ALCÁZARES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LIONEL CANO MUNOZ OF IMPUREZA !!

“Metal And Flamenco…Two Worlds That Seem To Be Opposites, But Which Share The Same Intensity, The Same Pain, The Same Rebellion. It’s This Mixture That Forged The Guitarist I Became.”

DISC REVIEW “ALCÁZARES”

「非常に美しい進化だと思うよ。メタルはついに、これまで以上にユニバーサルなものになりつつあるんだからね。各言語には歴史、色、文化があり、それを使用する者にリズムを与える。スペイン語は、僕たちの歌詞に特有の音楽性をもたらし、ドラマチックで激しく暴力的な側面を与え、メタルの力とフラメンコの強度を自然に融合させてくれるんだ」
BLOODYWOOD や THE HU の台頭により、メタルに宿る生命力、包容力、感染力がついに可視化されました。今やメタルに第三世界はありません。その大いなる寛容さで様々な地域、様々な人々の文化を暖かく包み込み、メタルの咆哮と旋律に共感を誘います。
“ヒスパニック・メタル” を標榜する IMPUREZA も、そんなユニバーサルなモダン・メタル世界を象徴するバンドのひとつ。フランスとスペインの伝統の炎…その熱き血潮で鍛えられた IMPUREZA は、エクストリーム・メタルとフラメンコの情熱的で激しい融合を20年もの長きに渡って、追求してきました。そして今、イベリア半島のアイデンティティを刃物のように操り、自らのルーツをメタルの中に浸透させた彼らの勇気に遂に時代が追いついたのです。
「僕はフラメンコとメタルという、非常に強力な2つの世界の間で育ったんだ。家ではパコ・デ・ルシア、カマロン・デ・ラ・イスラといったスペインのギター音楽を聴いていたんだよ。一方で、METALLICA, PANTERA, SLAYER, MORBID ANGEL, TESTAMENT, NILE などにも完全に浸っていた。一見対立する二つの世界だけど、同じ情熱、同じ苦悩、同じ反逆の精神を共有しているんだよ。このふたつのミックスが、ギタリストとしての僕を形作ったんだ」
そう、一見交わらないように思える様々な道を交わらせるのがメタルの力。しかし、そもそもフラメンコとメタルには、情熱、苦悩、そして逆境を跳ね返す回復力といった多くの共通項が存在しました。だからこそ、今回のインタビューイでありイベリアのギター・ヒーローLionel Cano Muñoz は PANTERA とパコ・デ・ルシアを同時に愛することができたのです。
「フラメンコには深い、悲劇的で、感情的、本能的な精神がある。メタルには、この解放的な音楽の力を通じて、僕たちの中に埋もれたエネルギーをアウトプットする能力がある。ただしふたつとも複雑な音楽で、多くの厳格さを必要とする。勇気は、この絶対的な誠実さから生まれてくるんだ」
とはいえ、これほど精巧で、荘厳で、ドラマティックなヒスパニック・メタルはまさに前人未到の領域。誰も踏み入れたことのない場所を開拓するためには勇気が必要です。そして、NILE や BEHEMOTH のように凶悪でありながら、OPETH のように挑戦的で、パコ・デ・ルシアのように革命的で苦悩と歓喜に満ちた “La Orden del Yelmo Negro” は、絶対的な勇気の歌。あの Jacob Hansen 指揮の下、見事に練られたクラシカルなストリングスとリズミックなパーカッションが、メタルの “レコンキスタ”、再征服を誇り高く宣言します。そしてもちろん、フレットレス・ベースの嗎はプログレッシブなデスメタルの矜持。
「スペインの歴史には、その偉大さと衰退の両方が刻まれている。政治的、宗教的、さらには神秘的な対立が多くの不幸の根源だけど、そうしたテーマは僕たちの創作に無限のインスピレーションを与えてくれる。僕たちは戦争を美化しようとしているわけではなく、その精神的、文化的、人間的な共鳴を探求しているんだ。戦争は確かに暴力的なものだけど、同時に深くて象徴的なものだと思う」
常にイベリアの歴史を物語ながら、ある種の教訓をもたらしてきた現代の吟遊詩人 IMPUREZA。今回のアルバム “Alcázares” で彼らは、血と死が今よりもはるかに近くにあった中世、レコンキスタをテーマに選びました。キリストとイスラム…血塗られた歴史と神秘が交錯する宗教と戦いのストーリー。争いから始まった文化と人の流動性はいつしか成熟され、洗練され、多様な背景を持つ人々を生み出し、ルネサンスの下地にもなりました。血と死に導かれたレコンキスタはまさに、メタルとフラメンコの “不純な” 婚姻にも似て、多文化共生、異文化共鳴の始まりでもあったのです。
今回弊誌では、Lionel Cano Muñoz にインタビューを行うことができました。「メタルは世界を変えることができない。それはたしかだ。だけど、ニュース、本、映画とは全く異なるチャンネルを通じて物語を伝えることならできる。そうやって、いつも僕たちに “逃避” する場所を与えてくれるんだ。メタルはおそらくこの世界におけるユニバーサルな言語であり、表現における最高の武器なんだ!」どうぞ!!

IMPUREZA “ALCÁZARES” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DARKASIDE : DECADE OF CRISIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOSHUA MAYUM OF DARKASIDE !!

“Kakarot Is My Favorite Hero, He Is a Force That Knows No Fear, He Always Challenges Himself And Fights For Others That Need Help, As a Kid I Always Wanted To Be Like Goku And Stand Up For Others”

DISC REVIEW “DECADE OF CRISIS”

「カカロットが僕の一番好きなヒーローなんだ。彼は恐れを知らない存在で、常に自分自身に挑戦し、助けを必要とする他者のために戦う。子供の頃、僕は常に悟空のように他者のために立ち上がることを望んでいたんだよ」
誰にでも、幼いころに勇気や優しさをもらったヒーローはいるはずです。もしかしたら、そうしたヒーローから “生き方” のお手本を示してもらった人もいるかもしれませんね。パプア・ニューギニアで抑圧をうけるブーゲンビルの DARKASIDE は、恐れ知らずで、自分に挑戦し、弱いもののために立ち上がる生き方をドラゴンボールの悟空から受け継ぎました。そう、もちろんメタルも誰かのヒーローになれるのです。
「この曲はブーゲンビルの人々に対して、危機を乗り越えて戦った人々や命を落とした人々の犠牲を忘れないよう、また現在も独立のために戦っている人々へのメッセージとリマインダーなんだ。抑圧と弾圧の下でも、ブーゲンビルの人々は互いを支え合い、教育、仕事、ビジネスに努力し、自己を向上させることで、この不条理を克服しなければならないことをね。現在のパプア・ニューギニア政府は、ブーゲンビルが資源(金、銅、カカオなど)に富むため、僕たちの島を富と収入の源と見なし、独立を渋っているんだ」
世界でも最も文化的・人種的・言語的に多様な国の一つといわれる異色の地、パプア・ニューギニアの中でもブーゲンビルはさらに異色の地です。首都ポートモレスビーのあるニューギニア島から離れた場所にあるブーゲンビル島は、鉱物や海洋資源が豊富。その資源は国の主な収入源のひとつとなっています。特に巨大なパングナ鉱山は国の生命線。しかし、政府によるその利益の分配が不公平だとブーゲンビル人は怒り、独立を求めています。内戦まで発展したそのブーゲンビル危機の裏側には、肌の色、言葉、文化の違いで抑圧を受け続けたブーゲンビルの人々の怒り、反骨精神、逆境を乗り越える回復力が存在しました。そしてその回復力は、まさにヘヴィ・メタルに宿る力。
“Decade of Crisis” はそのブーゲンビル危機をテーマとした楽曲です。ただし、DARKASIDE は争いや暴力による解決を求めているわけではありません。友と互いに支え合って高め合い、己を磨き、自己実現を果たしていく中で、権利を主張し譲歩を求める。それはまさにドラゴンボールの修行と武道会。そして、不条理を跳ね退けた先に待っているのは、きっと悟空とベジータのように互いを認め合う心なのかもしれませんね。
「僕たちはメタルを愛しているけど、僕たちはパプア・ニューギニア人であり、より具体的にはブーゲンビル人だ。僕たちは地元の伝統、文化、民話、言語(トク・ピジン/ナシオ)も大切にしているんだよ。こうした文化すべてが非常に重要で、可能な限り自然にメタル・ジャンル(カナカ・メタル)と融合させようと努めているよ。伝統とメタルは、それぞれの地域にとってリアルで忠実なものだから、よく調和するんだ。だから、人々は BLOODYWOOD や SEPULTURA の音楽スタイルに共感するんだよ」
重要なのは、DARKASIDE が理想だけを語る絵に描いた餅、机上の空論のような存在では決してないことです。彼らの音楽には明らかに、人を惹きつける何かがあります。Nu-metal と伝統音楽の類稀なる蜜月。BLOODYWOOD が蒔いたリズミックでフォーキッシュなメタルの種は今、世界中で芽吹こうとしています。そう、世界各地の文化、音楽、言語を吸収するセルのような力こそ、メタルの生命力にして真骨頂。今やメタルに第三世界はありません。ゆえに、そんなモダン・メタルの申し子ともいえる DARKASIDE が、5年後に BLOODYWOOD と肩を並べていたとしても決して不思議ではないのです。
今回弊誌では、フロントマン Joshua Mayum にインタビューを行うことができました。「メタルは、男女の関係について歌ったり、派手なライフスタイルや富を追求したり、この世界の快楽に浸るためのものではない。この音楽は、正義と平等を求める戦いの叫びであり、僕たちが日常の生活で直面する現実の状況と闘い続けるための武器なんだよ」 どうぞ!!

DARKASIDE “DECADE OF CRISIS” : 10/10

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