COVER STORY : CROWN LANDS “APOCALYPSE”
“In my opinion, video games are unquestionably art, and I’d argue that it is a melting pot of many different disciplines of art coming together in a way that has the potential to be more impactful than movies, and possibly one of the highest potential forms of art.”
APOCALYPSE
カナダのプログレッシブ・ロック・デュオ、CROWN LANDS は決して安易な道を選びません。最新作 “Apocalypse” は、その姿勢を如実に示しています。ギター、ベース、ベース・ペダルを担当する Kevin Comeau と、ドラム&ボーカルを担当する Cody Bowles の2人によって制作されたレコードは、大胆でありながら統一感のあるコンセプト・アルバムとなり、彼らのサウンドをこれまで以上に広大な領域へと押し広げることになりました。
アルバムは、映画的なオープニング “Proclamation” から、疾走感あふれる “Foot Soldiers of the Syndicate”、メロディックな重厚さを湛えた “Through the Looking Glass” と “Blackstar” を経て、19分にも及ぶ壮大なクロージング・トラック “Apocalypse” へと展開していきます。つまり、この多部構成のエピック・アルバムこそ、デュオの才能を存分に発揮する場となっているのです。
「2人組であることの素晴らしさは、お互いに自由にアイデアを出し合えるし、二人以外誰も “ノー” と言ったり、他の意見を言ったりしないこと」と Bowles は語ります。 「僕たちが一緒に曲を作る時は、すべてその場でライブで作るんだ。だから、それはまさに僕たちの純粋な化学反応。色々な要素を組み合わせ、何がうまくいって何がうまくいかないのかを見極め、そこから本当に美しい錬金術が生まれるんだよね…例えば、”Apocalypse” の一節になるような、素晴らしいリフのある15秒のフレーズを見つけたら、それを別のフレーズと重ね合わせる。そうやって、すべてをライブで録音し、テストしていくんだ。
ただ、真の民主主義が欠如していることにはマイナス面もある。どちらかが譲歩しなければ何も起こらない。しかし、その制約を乗り越え、それを活かして何かを生み出すことができれば、実は強みになる」
同じようなダイナミズムは “Beardless Part One” にも影響を与え、より壮大なコーラスを作るという新たな挑戦が、アルバムの中でも特に印象的な瞬間を生み出しました。この創造的な “摩擦” は、バンドの活動を停滞させるどころか、どちらか一方だけでは到達できない高みへと彼らを押し進めているのです。
この2人編成というスタイル自体は、意図的な選択というよりは、むしろ自然発生的なものでした。Bowles は19歳頃、Comeau とのジャムセッションに参加するまで、歌ったことは一度もありませんでした。
「声が自然に出てきて、”うわ、すごい!” って思ったんだ。で、これは続けなきゃって」
CROWN LANDS の RUSH 愛、ミクマク族の遺産についてはこちら。
Bowles は生まれてからずっとドラマーで、父親の好きなバンドは RUSH でした。中学2年生になるまで、ほとんど RUSH ばかり聴いていました。初期のブルースのジャムセッションで、Comeau が足でキック・ドラムを叩いてリズムを取り始めたとき、Bowles はほとんど偶然にドラムセットを引き継ぎました。
「Kevin が “足はどうしたらいいんだ?” って言って、ベースペダルを弾き始めたんだ。それで僕は “よし、なら僕は歌ってドラムも叩こう” って思ったんだ。もうなるようになれって、ドラムを叩きながら歌を覚えたんだよな。まさに環境の産物だね」
Bowles がボーカルでよく比較されるのは、特に Geddy Lee や Robert Plant ですが、彼はそれを謙虚に受け止めつつも、その背景をきちんと理解しています。もともとのブルース・ロックの影響は、初期の頃は Steve Marriott, John Fogerty そして Plant へと彼を導きました。そこから、バンドのプログレッシブな方向転換によって、彼の鋭角的なメロディセンスがより鮮明になったのです。
「ほとんど本能的にそういう傾向が出てくる。でも、結局それは僕自身のスタイルなんだよな」
“Apocalypse” では、バンドは長年守ってきたルールの一つ、”ライブで演奏できないなら、レコーディングしない” を意識的に放棄することにしました。当時、Comeau は他の楽器に加えてベース・ギターを加えることを主張し、すぐに演奏用に特注のダブルネックベースを製作したくらいでしたが、”Apocalypse” の頃には、彼らは芸術を第一に考え、ライブでのアレンジは後から考えるという方針に完全に傾倒するようになりました。そのため、Comeau がステージで簡単に再現できない複雑なハーモニー、創造的な工夫を必要とする重層的な楽器編成、そして最終的には、ライブで楽曲を生き生きと輝かせるために2人のツアー・ミュージシャンを新たに加えるという決断に至ったのです。
「この音楽は僕たちよりも長く生き続けるだろう。芸術のために音楽を作り、ライブでどう演奏するかは、その時に考えよう」
そう、”Apocalypse” への道のりは、昨年リリースされたアンビエント・ワールドミュージックを基調とした2枚のアルバム “Ritual I” と “Ritual II” の自由に深く根ざしています。Bowles にとって、これらのアルバムは “音楽への愛がロックの枠を超えていることに気づいた” 作品でした。ユニバーサル・レーベルとの決別後、バンドは方向転換を余儀なくされていました。「レーベルもレコーディング予算もなかったけど、自分たちで曲作りやリハーサルをするスタジオはあった。そこで自分たちでレコーディングやミックスをするには、ちょっとした工夫が必要だったんだ。
“Ritual II” のレコードは、僕らがが初めてプロデュースしたレコード…そのアルバムが今年JUNOにノミネートされたのは本当に素晴らしいことだ…そのレコードの大部分が僕たちのソファでレコーディングされたというのは、ちょっとクレイジーだよね」
“Ritual I&II” は、バンドにとって音楽的に大きな転換点となり、リフと轟くドラムの代わりに、フルートと世界各国のパーカッション、それに柔らかなメロディーが採用されました。
「あれはプログ・ファンを驚かせたけど、最高だよ。人を驚かせられないとしたら、正しいことをしていないってことだと思うからね」
その芸術的な自由さは、今回のアルバムのすべてのトラックに散りばめられています。例えば、”The Fall” は Comeau が弾いていたリフから生まれました。当初、そのリフは PINK FLOYD の “Run Like Hell” に少し似すぎていると感じられましたが、軌道修正の結果、フロイドの雰囲気と、Bowles による KISS の影響を受けたドラム・アプローチが融合した楽曲が生まれました。Bowles はこの曲で Peter Chris から直接的なインスピレーションを受けたと語っています。
“Through the Looking Glass” は、壮大なコーラス・メロディーを中心に形作られました。そうして、スタジオでプロデューサーと話し合った際、Bowles が当初は却下していたドラゴンのイメージというコンセプトにたどり着いたのです。
「ずっとノーと言っていたんだ。でも、結局 “わかった、賭けに負けた” ってなった。ドラゴンの翼に乗って、僕たちは飛ぶ。まあ、それでいいか」 結局、この曲はアルバムの中でも彼のお気に入りの1曲となったのです。
19分にも及ぶタイトル曲をリードシングルとしてリリースしたことも、アルバムの他のすべての楽曲と同様に、意図的な選択でした。
「統計的に考えて、何の注目も浴びずにアルバムを丸ごとリリースしたら、誰も聴いてくれないだろう。だから、注目を浴びるようにしたんだ。インスト・アルバムを2枚出したけど、方向性を見失ったわけじゃない。僕たちはプログレッシブ・バンドだ。僕たちはプログレッシブ・ロックをやっているんだ。宇宙のドラゴンについての20分の曲もあるんだ。ただ好きなことをやっている。これが僕たちが考え出した素晴らしいストーリーだ。じっくりと味わい、読み、理解してほしいね」
レコーディングを通して二人が頼りにしたヴィンテージ機材も、アルバムの個性を形作る上で重要な役割を果たしました。Comeau はオリジナルのモーグ・シンセサイザー、古いトーラス・ペダル、ヴィンテージのレスリー・キャビネットを持ち込み、一方 Bowles はアルバムの一部を1970年代のスリンガーランド・ブラックゴールド・キットでレコーディングしました。「僕たちは間違いなくクラシックなサウンドの機材を好むんだ」
“Apocalypse” に貫かれているコンセプトは、”Fearless” の前日譚として機能し、宿敵であるシンジケートとその首領ブラックスターの起源を描いています。シンジケートの台頭、シンジケートの右腕としてブラックスターが頭角を現し、カラゴンが没落する。
「これは、シンジケートがすでにカラゴンに拠点を築き、仕事を終わらせるために戻ってきた時代。彼らは “Fearless” の惑星を破壊した後、露天掘りですべての資源を奪うんだ…シンジケートの本拠地であるブラックスターの故郷から、宇宙の資源と惑星を占領して植民地化し、略奪し、太陽系を攻撃する。そんなシンジケートのイデオロギーをめぐって内戦が勃発していくんだ。空想的に聞こえるかもしれないけど、これは僕たちの現実に根ざしている。まさに今の時代を反映しているんだ。これはつまり、普通の人がいかに簡単に過激化できるかについて…普通の人がオルタナ右翼に誘惑されることについて。だからこそ、ファンタジー要素をもっと盛り上げる必要があったんだよな。
あのエッジーなリフが “Blackstar” になったのは、怒りと凶悪さを感じさせるサウンドで、まるで彼が他の惑星を征服するモンタージュのようだったから。
社会として、僕たちは本当に不快な問題に直面している。そんな中で、僕らが愛するサイエンス・ファンタジーで語りかけることができたのは、まさに幸運だった。”Apocalypse” の根底にあるテーマは、憎しみは憎しみを生み、暴力は暴力を生むということだ。蒔いた種は必ず自分に返ってくる」
もし、Bowles が愛するビデオ・ゲームを、バンドをテーマにして無制限の予算で制作できるとしたら、どんなゲームにするのでしょうか?
「もしバンドを題材にしたビデオ・ゲームを制作できるとしたら、間違いなくオープン・ワールドの3DアクションRPGにするだろうね。独特なアートスタイル(ファイナル・ファンタジーXII ゾディアックエイジとワンダと巨像を合わせたようなイメージ)で、プレイヤーキャラクターは Fearless だ。彼は、自らの民が滅ぼされた謎を解き明かし、邪悪なシンジケートへの復讐の道を歩むことになるよ。バンドの “Fearless Chronology” に登場するキャラクターや場所、例えば Fearless が導きを求めるオラクル、凍てつく荒野、そしてもしかしたら Fearless の失われた民の生き残りであるドラゴン・ライダーなどを登場させて、バンドのストーリーをさらに掘り下げていきたいね」
ビデオ・ゲームは、CROWN LANDS の音楽制作にインスピレーションを与えているのでしょうか?
「ビデオゲームは僕の人生の様々な面やメディアとの向き合い方に影響を与えてきたけど、中でも音楽的な面で最も大きな影響を受けているんだ。メロディーの感覚は、特に幼い頃にプレイしたゼルダから大きく培われたと思う。(日本の作曲家)近藤浩治氏が、シリーズを通してハイラルの多様な風景にふさわしい、素晴らしい音楽的フックと色彩豊かなモチーフを織り交ぜる能力は、僕の心に深く刻み込まれているよ。
同様に、素晴らしいサウンド・トラックを持つ数々の名作ゲームやIPにも深く感動させられている。例えば、”ワンダと巨像”, “SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE”, “Ghost of Tsushima”, “モンスターハンター”, “スパイロ“, “シャドウマン”, “ルーンスケープ” とかだね。特に “ルーンスケープ” は、ロックの枠を超えて、変拍子を用いたプログレッシブ・ロックの世界への入り口となった。今でも、こうした名曲を口ずさむことがあるくらいでね」
ゲームの世界に足を踏み入れるきっかけとなったゲームは何だったのでしょう?
「4歳の頃、”ゼルダの伝説” で、美しく広大なゲームの世界に触れたんだ。きっかけを作ってくれたのは父。父は物心ついた頃からゼルダに夢中で、当時よく夜遅くまでファミコン版の初代 “ゼルダの伝説” や “ゼルダの伝説II リンクの冒険” をプレイしていたんだよね。父が “時のオカリナ” をプレイするのを見て、僕もゲームそのものにすっかり魅了されたってわけさ。父は闇の神殿を攻略するのに苦戦していたけど、ついにセーブデータを作らせてくれたんだよね。それ以来、ゼルダ・シリーズは僕の一番好きなゲームになった」
好きなゲームのジャンルは?
「一番好きなゲームジャンルはRPGだね!進行システムが複雑で奥深いほど良いね。どんなゲームでも、常に成長していくシステムが大好きで、新しいアイテムや機能、スキル・ポイントをアンロックするためにひたすらプレイし、スキルツリーに組み込んだり、ゲーム世界を探索したりするのが楽しいんだよ。戦闘やタイミング、パズルなど、難易度が高く、ミスが許されないゲームも好みだね。
Old School RuneScape、World of Warcraft、Baldur’s Gate、Diablo、Dungeons & Dragons Online、Knights of the Old Republic など、挙げればきりがない。さらに絞り込むと、特にアクションRPGが好きでね。フロム・ソフトウェアの名作の数々、モンスター・ハンター・シリーズ、エルダースクロールズ・シリーズ、Black Myth Wukong、Black Desert、そしてもちろんゼルダ・シリーズ(厳密にはアクションRPGではないけど、個人的にはここに含めている)などだね。
強敵を倒して、ドロップ・アイテムを使ってキャラクターを成長させる時の達成感、あるいは型破りな発想で報酬が得られる巧妙にデザインされたパズルほど素晴らしいものはない。脳の特定の部分を刺激し、この上なく心地よく、決して飽きることがないんだよ!」
これまでプレイしたゲームの中で、最も難しかったゲームは何でしょう?
「これまでプレイしたゲームの中で、間違いなく “仁王2” は最も難しいゲームの一つ、いや、もしかしたら一番難しいゲームだったかもしれないね。僕はソウルライク・ゲームでもかなりの難易度を好む方で、 “SEKIRO” を2回もクリアしたくらいだけど、”仁王2″ は難易度の面で全く別次元と言える。ソウルライク・ゲームでありながら、ボスは容赦なくプレイヤーを圧倒し、非常に複雑なスキル・ポイント制の戦闘システムは、習得に非常に時間がかかる。特に、各武器に3種類の構えが用意されている点が大きな特徴で、メイン武器は11種類、遠距離武器は3種類ある。
それに加えて、戦闘には奥深い妖怪化とスキルシステムがあり、これは非常に重要でありながら、理解するのが難しい。最も基本的な敵でさえも、そのスピードと容赦ないダメージ出力を考えると、メタアニメーション・キャンセル戦術とパーフェクト・パリィが生存に不可欠となる。
これまでにないほどの挑戦を与えてくれたゲームで、だからこそ心から愛しているんだよ」
これまでプレイした中で最も美しいゲームは何でしょう?
「懐かしさ抜きで言うと、これまでプレイした中で最も美しいゲームは “ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム” だね。美しいセル・シェーディングのグラフィックと、深く彩られた手作りのオープンワールドは、プレイした瞬間から僕を完全に魅了しまたよ。もちろん、前作 “ブレス オブ ザ ワイルド” やそれ以前のゼルダ・シリーズもすべてプレイしているけど、この作品のハイラルの息を呑むような世界観と雰囲気は、本当に際立っていたね。他のどのゲームとも違って、僕をその世界そのものに引き込んでくれたんだ」
今までプレイした中で最高のゲームは?
「今までプレイした中で最高のゲームを選ぶのは本当に難しいね。あえて挙げるとすれば、”SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE” と “エルデンリング” の2つだろうか。”SEKIRO” のアクション戦闘とストーリーは、僕の意見では他に類を見ないほど素晴らしいものだよ。戦闘は、僕がこれまでプレイしたゲームの中で最も緻密で、ピクセル単位で完璧な剣戟アクションであり、ストーリーは驚くほど緻密なディテール、秘密、隠されたクエスト、そして独特の雰囲気に満ち溢れているね。源の宮、そして水生村の悲劇的な物語など、ほんのわずかな情報さえも、僕を魅了してやまないんだ。
“エルデンリング” も、環境デザインとオープン・ワールド全体の美しさ、そして半神たちがエルデンリングの欠片を巡って争う壮大な物語の深みにおいて、僕にとっては “SEKIRO” と同等の完成度を誇っている。これまでプレイしてきたソウルライク・ゲームに比べれば簡単だったけど、その圧倒的なスケールと、サウンドデザインから戦闘、世界探索に至るまで全てが一貫して素晴らしい出来栄えだったことに深く心を奪われたね。初めてプレイした時の衝撃は一生忘れられないだろう。
マップは、もう全て見尽くしたと思っても、どんどん広がっていくんだよね。どこを見てもやることが山ほどあって、バンドの練習の合間を縫って1ヶ月間部屋にこもりきりで、発売から1ヶ月以内に100%クリアしたんだ。後悔は全くないよ(笑)」
ビデオ・ゲームは、音楽と同様に芸術と言えるのでしょうか?
「僕の考えでは、音楽と同様、ビデオ・ゲームは紛れもなく芸術で、様々な芸術分野が融合したるつぼのような存在だ。映画よりも大きな影響力を持つ可能性を秘めていて、おそらく最も高い潜在能力を持つ芸術形態の一つと言えるだろう。プレイヤーが次にどこへ進むべきか、世界のどの部分や物語を解き明かすべきかを自ら発見できるというゲームの本質は、その作り込まれた世界で交流するすべての人にとって、他に類を見ない個人的な体験を生み出すからね。
僕自身のゲーム体験では、精緻に作り込まれた世界に登場するキャラクターや冒険に、まるで心の中で大切にしている現実の延長であるかのように、感情的に深く結びついている。もしこの感覚が芸術作品への愛着から生まれたものでないとしたら、一体他に何が芸術といえるのか僕には分からないよ」
参考文献: V13net:Level Up: Crown Lands Drummer & Vocalist Cody Bowles Discusses His Life as a Gamer
THE PROG REPORT :Crown Lands Interview – Apocalypse
SPILL MAG:SPILL FEATURE: APOCALYPSE – A CONVERSATION WITH CROWN LANDS’ KEVIN COMEAU & CODY BOWLES








































