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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【CROWN LANDS : APOCALYPSE】


COVER STORY : CROWN LANDS “APOCALYPSE”

“In my opinion, video games are unquestionably art, and I’d argue that it is a melting pot of many different disciplines of art coming together in a way that has the potential to be more impactful than movies, and possibly one of the highest potential forms of art.”

APOCALYPSE

カナダのプログレッシブ・ロック・デュオ、CROWN LANDS は決して安易な道を選びません。最新作 “Apocalypse” は、その姿勢を如実に示しています。ギター、ベース、ベース・ペダルを担当する Kevin Comeau と、ドラム&ボーカルを担当する Cody Bowles の2人によって制作されたレコードは、大胆でありながら統一感のあるコンセプト・アルバムとなり、彼らのサウンドをこれまで以上に広大な領域へと押し広げることになりました。
アルバムは、映画的なオープニング “Proclamation” から、疾走感あふれる “Foot Soldiers of the Syndicate”、メロディックな重厚さを湛えた “Through the Looking Glass” と “Blackstar” を経て、19分にも及ぶ壮大なクロージング・トラック “Apocalypse” へと展開していきます。つまり、この多部構成のエピック・アルバムこそ、デュオの才能を存分に発揮する場となっているのです。
「2人組であることの素晴らしさは、お互いに自由にアイデアを出し合えるし、二人以外誰も “ノー” と言ったり、他の意見を言ったりしないこと」と Bowles は語ります。 「僕たちが一緒に曲を作る時は、すべてその場でライブで作るんだ。だから、それはまさに僕たちの純粋な化学反応。色々な要素を組み合わせ、何がうまくいって何がうまくいかないのかを見極め、そこから本当に美しい錬金術が生まれるんだよね…例えば、”Apocalypse” の一節になるような、素晴らしいリフのある15秒のフレーズを見つけたら、それを別のフレーズと重ね合わせる。そうやって、すべてをライブで録音し、テストしていくんだ。
ただ、真の民主主義が欠如していることにはマイナス面もある。どちらかが譲歩しなければ何も起こらない。しかし、その制約を乗り越え、それを活かして何かを生み出すことができれば、実は強みになる」
同じようなダイナミズムは “Beardless Part One” にも影響を与え、より壮大なコーラスを作るという新たな挑戦が、アルバムの中でも特に印象的な瞬間を生み出しました。この創造的な “摩擦” は、バンドの活動を停滞させるどころか、どちらか一方だけでは到達できない高みへと彼らを押し進めているのです。
この2人編成というスタイル自体は、意図的な選択というよりは、むしろ自然発生的なものでした。Bowles は19歳頃、Comeau とのジャムセッションに参加するまで、歌ったことは一度もありませんでした。
「声が自然に出てきて、”うわ、すごい!” って思ったんだ。で、これは続けなきゃって」

CROWN LANDS の RUSH 愛、ミクマク族の遺産についてはこちら。

Bowles は生まれてからずっとドラマーで、父親の好きなバンドは RUSH でした。中学2年生になるまで、ほとんど RUSH ばかり聴いていました。初期のブルースのジャムセッションで、Comeau が足でキック・ドラムを叩いてリズムを取り始めたとき、Bowles はほとんど偶然にドラムセットを引き継ぎました。
「Kevin が “足はどうしたらいいんだ?” って言って、ベースペダルを弾き始めたんだ。それで僕は “よし、なら僕は歌ってドラムも叩こう” って思ったんだ。もうなるようになれって、ドラムを叩きながら歌を覚えたんだよな。まさに環境の産物だね」
Bowles がボーカルでよく比較されるのは、特に Geddy Lee や Robert Plant ですが、彼はそれを謙虚に受け止めつつも、その背景をきちんと理解しています。もともとのブルース・ロックの影響は、初期の頃は Steve Marriott, John Fogerty そして Plant へと彼を導きました。そこから、バンドのプログレッシブな方向転換によって、彼の鋭角的なメロディセンスがより鮮明になったのです。
「ほとんど本能的にそういう傾向が出てくる。でも、結局それは僕自身のスタイルなんだよな」
“Apocalypse” では、バンドは長年守ってきたルールの一つ、”ライブで演奏できないなら、レコーディングしない” を意識的に放棄することにしました。当時、Comeau は他の楽器に加えてベース・ギターを加えることを主張し、すぐに演奏用に特注のダブルネックベースを製作したくらいでしたが、”Apocalypse” の頃には、彼らは芸術を第一に考え、ライブでのアレンジは後から考えるという方針に完全に傾倒するようになりました。そのため、Comeau がステージで簡単に再現できない複雑なハーモニー、創造的な工夫を必要とする重層的な楽器編成、そして最終的には、ライブで楽曲を生き生きと輝かせるために2人のツアー・ミュージシャンを新たに加えるという決断に至ったのです。
「この音楽は僕たちよりも長く生き続けるだろう。芸術のために音楽を作り、ライブでどう演奏するかは、その時に考えよう」

そう、”Apocalypse” への道のりは、昨年リリースされたアンビエント・ワールドミュージックを基調とした2枚のアルバム “Ritual I” と “Ritual II” の自由に深く根ざしています。Bowles にとって、これらのアルバムは “音楽への愛がロックの枠を超えていることに気づいた” 作品でした。ユニバーサル・レーベルとの決別後、バンドは方向転換を余儀なくされていました。「レーベルもレコーディング予算もなかったけど、自分たちで曲作りやリハーサルをするスタジオはあった。そこで自分たちでレコーディングやミックスをするには、ちょっとした工夫が必要だったんだ。
“Ritual II” のレコードは、僕らがが初めてプロデュースしたレコード…そのアルバムが今年JUNOにノミネートされたのは本当に素晴らしいことだ…そのレコードの大部分が僕たちのソファでレコーディングされたというのは、ちょっとクレイジーだよね」
“Ritual I&II” は、バンドにとって音楽的に大きな転換点となり、リフと轟くドラムの代わりに、フルートと世界各国のパーカッション、それに柔らかなメロディーが採用されました。
「あれはプログ・ファンを驚かせたけど、最高だよ。人を驚かせられないとしたら、正しいことをしていないってことだと思うからね」
その芸術的な自由さは、今回のアルバムのすべてのトラックに散りばめられています。例えば、”The Fall” は Comeau が弾いていたリフから生まれました。当初、そのリフは PINK FLOYD の “Run Like Hell” に少し似すぎていると感じられましたが、軌道修正の結果、フロイドの雰囲気と、Bowles による KISS の影響を受けたドラム・アプローチが融合した楽曲が生まれました。Bowles はこの曲で Peter Chris から直接的なインスピレーションを受けたと語っています。
“Through the Looking Glass” は、壮大なコーラス・メロディーを中心に形作られました。そうして、スタジオでプロデューサーと話し合った際、Bowles が当初は却下していたドラゴンのイメージというコンセプトにたどり着いたのです。
「ずっとノーと言っていたんだ。でも、結局 “わかった、賭けに負けた” ってなった。ドラゴンの翼に乗って、僕たちは飛ぶ。まあ、それでいいか」 結局、この曲はアルバムの中でも彼のお気に入りの1曲となったのです。

19分にも及ぶタイトル曲をリードシングルとしてリリースしたことも、アルバムの他のすべての楽曲と同様に、意図的な選択でした。
「統計的に考えて、何の注目も浴びずにアルバムを丸ごとリリースしたら、誰も聴いてくれないだろう。だから、注目を浴びるようにしたんだ。インスト・アルバムを2枚出したけど、方向性を見失ったわけじゃない。僕たちはプログレッシブ・バンドだ。僕たちはプログレッシブ・ロックをやっているんだ。宇宙のドラゴンについての20分の曲もあるんだ。ただ好きなことをやっている。これが僕たちが考え出した素晴らしいストーリーだ。じっくりと味わい、読み、理解してほしいね」
レコーディングを通して二人が頼りにしたヴィンテージ機材も、アルバムの個性を形作る上で重要な役割を果たしました。Comeau はオリジナルのモーグ・シンセサイザー、古いトーラス・ペダル、ヴィンテージのレスリー・キャビネットを持ち込み、一方 Bowles はアルバムの一部を1970年代のスリンガーランド・ブラックゴールド・キットでレコーディングしました。「僕たちは間違いなくクラシックなサウンドの機材を好むんだ」
“Apocalypse” に貫かれているコンセプトは、”Fearless” の前日譚として機能し、宿敵であるシンジケートとその首領ブラックスターの起源を描いています。シンジケートの台頭、シンジケートの右腕としてブラックスターが頭角を現し、カラゴンが没落する。
「これは、シンジケートがすでにカラゴンに拠点を築き、仕事を終わらせるために戻ってきた時代。彼らは “Fearless” の惑星を破壊した後、露天掘りですべての資源を奪うんだ…シンジケートの本拠地であるブラックスターの故郷から、宇宙の資源と惑星を占領して植民地化し、略奪し、太陽系を攻撃する。そんなシンジケートのイデオロギーをめぐって内戦が勃発していくんだ。空想的に聞こえるかもしれないけど、これは僕たちの現実に根ざしている。まさに今の時代を反映しているんだ。これはつまり、普通の人がいかに簡単に過激化できるかについて…普通の人がオルタナ右翼に誘惑されることについて。だからこそ、ファンタジー要素をもっと盛り上げる必要があったんだよな。
あのエッジーなリフが “Blackstar” になったのは、怒りと凶悪さを感じさせるサウンドで、まるで彼が他の惑星を征服するモンタージュのようだったから。
社会として、僕たちは本当に不快な問題に直面している。そんな中で、僕らが愛するサイエンス・ファンタジーで語りかけることができたのは、まさに幸運だった。”Apocalypse” の根底にあるテーマは、憎しみは憎しみを生み、暴力は暴力を生むということだ。蒔いた種は必ず自分に返ってくる」

もし、Bowles が愛するビデオ・ゲームを、バンドをテーマにして無制限の予算で制作できるとしたら、どんなゲームにするのでしょうか?
「もしバンドを題材にしたビデオ・ゲームを制作できるとしたら、間違いなくオープン・ワールドの3DアクションRPGにするだろうね。独特なアートスタイル(ファイナル・ファンタジーXII ゾディアックエイジとワンダと巨像を合わせたようなイメージ)で、プレイヤーキャラクターは Fearless だ。彼は、自らの民が滅ぼされた謎を解き明かし、邪悪なシンジケートへの復讐の道を歩むことになるよ。バンドの “Fearless Chronology” に登場するキャラクターや場所、例えば Fearless が導きを求めるオラクル、凍てつく荒野、そしてもしかしたら Fearless の失われた民の生き残りであるドラゴン・ライダーなどを登場させて、バンドのストーリーをさらに掘り下げていきたいね」
ビデオ・ゲームは、CROWN LANDS の音楽制作にインスピレーションを与えているのでしょうか?
「ビデオゲームは僕の人生の様々な面やメディアとの向き合い方に影響を与えてきたけど、中でも音楽的な面で最も大きな影響を受けているんだ。メロディーの感覚は、特に幼い頃にプレイしたゼルダから大きく培われたと思う。(日本の作曲家)近藤浩治氏が、シリーズを通してハイラルの多様な風景にふさわしい、素晴らしい音楽的フックと色彩豊かなモチーフを織り交ぜる能力は、僕の心に深く刻み込まれているよ。
同様に、素晴らしいサウンド・トラックを持つ数々の名作ゲームやIPにも深く感動させられている。例えば、”ワンダと巨像”, “SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE”, “Ghost of Tsushima”, “モンスターハンター”, “スパイロ“, “シャドウマン”, “ルーンスケープ” とかだね。特に “ルーンスケープ” は、ロックの枠を超えて、変拍子を用いたプログレッシブ・ロックの世界への入り口となった。今でも、こうした名曲を口ずさむことがあるくらいでね」

ゲームの世界に足を踏み入れるきっかけとなったゲームは何だったのでしょう?
「4歳の頃、”ゼルダの伝説” で、美しく広大なゲームの世界に触れたんだ。きっかけを作ってくれたのは父。父は物心ついた頃からゼルダに夢中で、当時よく夜遅くまでファミコン版の初代 “ゼルダの伝説” や “ゼルダの伝説II リンクの冒険” をプレイしていたんだよね。父が “時のオカリナ” をプレイするのを見て、僕もゲームそのものにすっかり魅了されたってわけさ。父は闇の神殿を攻略するのに苦戦していたけど、ついにセーブデータを作らせてくれたんだよね。それ以来、ゼルダ・シリーズは僕の一番好きなゲームになった」
好きなゲームのジャンルは?
「一番好きなゲームジャンルはRPGだね!進行システムが複雑で奥深いほど良いね。どんなゲームでも、常に成長していくシステムが大好きで、新しいアイテムや機能、スキル・ポイントをアンロックするためにひたすらプレイし、スキルツリーに組み込んだり、ゲーム世界を探索したりするのが楽しいんだよ。戦闘やタイミング、パズルなど、難易度が高く、ミスが許されないゲームも好みだね。
Old School RuneScape、World of Warcraft、Baldur’s Gate、Diablo、Dungeons & Dragons Online、Knights of the Old Republic など、挙げればきりがない。さらに絞り込むと、特にアクションRPGが好きでね。フロム・ソフトウェアの名作の数々、モンスター・ハンター・シリーズ、エルダースクロールズ・シリーズ、Black Myth Wukong、Black Desert、そしてもちろんゼルダ・シリーズ(厳密にはアクションRPGではないけど、個人的にはここに含めている)などだね。
強敵を倒して、ドロップ・アイテムを使ってキャラクターを成長させる時の達成感、あるいは型破りな発想で報酬が得られる巧妙にデザインされたパズルほど素晴らしいものはない。脳の特定の部分を刺激し、この上なく心地よく、決して飽きることがないんだよ!」
これまでプレイしたゲームの中で、最も難しかったゲームは何でしょう?
「これまでプレイしたゲームの中で、間違いなく “仁王2” は最も難しいゲームの一つ、いや、もしかしたら一番難しいゲームだったかもしれないね。僕はソウルライク・ゲームでもかなりの難易度を好む方で、 “SEKIRO” を2回もクリアしたくらいだけど、”仁王2″ は難易度の面で全く別次元と言える。ソウルライク・ゲームでありながら、ボスは容赦なくプレイヤーを圧倒し、非常に複雑なスキル・ポイント制の戦闘システムは、習得に非常に時間がかかる。特に、各武器に3種類の構えが用意されている点が大きな特徴で、メイン武器は11種類、遠距離武器は3種類ある。
それに加えて、戦闘には奥深い妖怪化とスキルシステムがあり、これは非常に重要でありながら、理解するのが難しい。最も基本的な敵でさえも、そのスピードと容赦ないダメージ出力を考えると、メタアニメーション・キャンセル戦術とパーフェクト・パリィが生存に不可欠となる。
これまでにないほどの挑戦を与えてくれたゲームで、だからこそ心から愛しているんだよ」

これまでプレイした中で最も美しいゲームは何でしょう?
「懐かしさ抜きで言うと、これまでプレイした中で最も美しいゲームは “ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム” だね。美しいセル・シェーディングのグラフィックと、深く彩られた手作りのオープンワールドは、プレイした瞬間から僕を完全に魅了しまたよ。もちろん、前作 “ブレス オブ ザ ワイルド” やそれ以前のゼルダ・シリーズもすべてプレイしているけど、この作品のハイラルの息を呑むような世界観と雰囲気は、本当に際立っていたね。他のどのゲームとも違って、僕をその世界そのものに引き込んでくれたんだ」
今までプレイした中で最高のゲームは?
「今までプレイした中で最高のゲームを選ぶのは本当に難しいね。あえて挙げるとすれば、”SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE” と “エルデンリング” の2つだろうか。”SEKIRO” のアクション戦闘とストーリーは、僕の意見では他に類を見ないほど素晴らしいものだよ。戦闘は、僕がこれまでプレイしたゲームの中で最も緻密で、ピクセル単位で完璧な剣戟アクションであり、ストーリーは驚くほど緻密なディテール、秘密、隠されたクエスト、そして独特の雰囲気に満ち溢れているね。源の宮、そして水生村の悲劇的な物語など、ほんのわずかな情報さえも、僕を魅了してやまないんだ。
“エルデンリング” も、環境デザインとオープン・ワールド全体の美しさ、そして半神たちがエルデンリングの欠片を巡って争う壮大な物語の深みにおいて、僕にとっては “SEKIRO” と同等の完成度を誇っている。これまでプレイしてきたソウルライク・ゲームに比べれば簡単だったけど、その圧倒的なスケールと、サウンドデザインから戦闘、世界探索に至るまで全てが一貫して素晴らしい出来栄えだったことに深く心を奪われたね。初めてプレイした時の衝撃は一生忘れられないだろう。
マップは、もう全て見尽くしたと思っても、どんどん広がっていくんだよね。どこを見てもやることが山ほどあって、バンドの練習の合間を縫って1ヶ月間部屋にこもりきりで、発売から1ヶ月以内に100%クリアしたんだ。後悔は全くないよ(笑)」
ビデオ・ゲームは、音楽と同様に芸術と言えるのでしょうか?
「僕の考えでは、音楽と同様、ビデオ・ゲームは紛れもなく芸術で、様々な芸術分野が融合したるつぼのような存在だ。映画よりも大きな影響力を持つ可能性を秘めていて、おそらく最も高い潜在能力を持つ芸術形態の一つと言えるだろう。プレイヤーが次にどこへ進むべきか、世界のどの部分や物語を解き明かすべきかを自ら発見できるというゲームの本質は、その作り込まれた世界で交流するすべての人にとって、他に類を見ない個人的な体験を生み出すからね。
僕自身のゲーム体験では、精緻に作り込まれた世界に登場するキャラクターや冒険に、まるで心の中で大切にしている現実の延長であるかのように、感情的に深く結びついている。もしこの感覚が芸術作品への愛着から生まれたものでないとしたら、一体他に何が芸術といえるのか僕には分からないよ」

参考文献: V13net:Level Up: Crown Lands Drummer & Vocalist Cody Bowles Discusses His Life as a Gamer

THE PROG REPORT :Crown Lands Interview – Apocalypse

SPILL MAG:SPILL FEATURE: APOCALYPSE – A CONVERSATION WITH CROWN LANDS’ KEVIN COMEAU & CODY BOWLES

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BYONOISEGENERATOR : SUBNORMAL DIVES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BYONOISEGENERATOR !!

Nothing is true, everything is permitted.” When we started playing this kind of avant-garde stuff, we made a conscious decision not to limit ourselves with genre boundaries. We began with pure experimentation, and we’re still sticking to that approach.

DISC REVIEW “SUBNORMAL DIVES”

「”正しい音楽などは決してない。すべてが許される”。こういうアヴァンギャルドな音楽を演奏し始めた時、僕たちはジャンルの枠にとらわれないことを意識的に決めたんだ。純粋な実験から始め、今もその姿勢を貫いているよ。初期の作品はデス/グラインドコア寄りだったけど、最新作は新メンバーの Dima と Semyon がもたらしたマス・コアの影響がより強くなっているね。
とはいえ、バンドの方向性は常に、最強に極めて激しい音楽を作ることにある。なぜなら、身体を動かすことは、強くて若々しくいる秘訣だからね」
混沌とした時代には混沌とした音楽がよく映える。実際、ロシアの ByoNoiseGenerator のカオスほど、2020年代のサウンド・トラックといえる音楽は他にないでしょう。
狂気じみたテクニカル・デスメタル、轟音のグラインド・コア、難解な数式のマス・コア、カウボーイ・ビバップのサウンドトラックに煙立ち込めるジャズクラブを、無機質な工業用装置で加工処理したかのような BNG の混沌にルールはありません。そう、ルール無用ですべてが許されるこの時代に、彼らの音楽はあまりにもフィットしているように思えます。
「すべてはデスメタルとその派生ジャンルから始まったんだよね。その後、グラインド・コアやマス・コアの要素をより多く取り入れるようになったんだ。僕たちはそうしたジャンルを音楽的に心から愛しているけど、凶悪な音楽に典型的に見られる歌詞のテーマからは意図的に距離を置いていてね。僕たちの音楽が、デスメタルの誇張された残虐性や、グラインド・コアによく見られる社会政治的なメッセージと結びつくことは望んでいないんだ」
とはいえ、彼らの混沌は決して戦争や抑圧といった暴力の渦に巻かれているわけではありません。むしろ、そうした狂気から距離を置き、音楽的な挑戦や寛容さが極まってたどり着いた場所こそが圧倒的なカオスだっただけ。彼らが生み出す怪物や肉塊、そして官能さえ、実は音楽のみに集約しているのです。
「John Zorn を知ったのは比較的遅い時期だったんだよね。ネット上で僕たちの音楽と彼の音楽を比較する人が出始めたのがきっかけだったんだ。当初は、Chris Potter, Ben Wendel, Michael Brecker といったサックス奏者から影響を受けていたんだよ」
近年、サックスの響きをメタルに持ち込むバンドが増えていますが、BNG に RIVERS OF NIHIL や SLEEP TOKEN のような洗練された音色を期待するのは大間違いです。ByoNoiseGeneratorは、その名の通り、純粋な聴覚的狂気を詰め込んだ混沌を投下するのみ。グルーヴ感のあるスラム・ブレイクダウン、PRIMUS 風のギター・ファンク、頭蓋骨を粉砕するグラインドコアが、フリーフォーム・ジャズの暴力的な流れと混濁し、目まぐるしくその姿を変化させていきます。
3分にも満たないトラックに山ほどの音楽ジャンル詰め込み、インテンスを高めるその姿勢はまさに NAKED CITY の遺伝子そのもの。”ジャズ・グラインド”。複雑極まりないと同時に爆発的なエネルギーを秘めた BNG の楽曲は、狂気じみた拍子と魅惑的な官能のスウィングを見事に結びつけました。この陶酔的でしかしサブリミナルなノイズの荒波で踊ることこそ、2020年代に課せられた私たちの使命なのかもしれませんね。
今回弊誌では、ByoNoiseGenerator にインタビューを行うことができました。「でも真面目な話、この名前もコンセプト全体も、僕らのドラマーがロシアのサウナで亜酸化窒素を吸っていた時に、ちょっと狂った頭で思いついたものなんだよね。だから、その狂ったコンセプトが自然と僕たちの芸術的アイデンティティの一部になったというわけだよ」どうぞ!!

BYONOISEGENERATOR “SUBNORMAL DIVES” : 10/10

INTERVIEW WITH BYONOISEGENERATOR

Q1: First of all, what kind of music did you grow up listening to?

【BNG】: We all started from very different places. For about half of the band, childhood happened at a time when the internet wasn’t that widespread yet, so we listened to whatever we could get our hands on.
Anything from heavy/thrash/death metal to punk rock. For example, our guitarist got into heavy music and picked up the guitar after hearing a Static-X track while playing Need for Speed.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【BNG】: メンバーそれぞれ、音楽のルーツは大きく異なるよ。バンド・メンバーの約半数は、インターネットがまだそれほど普及していなかった時代に幼少期を過ごしたので、その時手に入るものは何でも聴いていたよ。
ヘヴィ・メタル、スラッシュ・メタル、デスメタルからパンク・ロックまで、あらゆるジャンルを聴いていたね。例えば、ギタリストは “Need for Speed” をプレイ中に Static-X の曲を聴いてヘヴィ・ミュージックにハマり、ギターを手に取ったんだ。

Q2: Are you connected to the Russian metal scene? Or have you been targeting bands outside the country?

【BNG】: Even though we don’t play shows that often, we stay connected to the Russian metal scene ― we keep in touch with a lot of musicians and bands.
We also try to stay connected with bands outside the country. We’ve got a lot of great memories and friendships from our European tour.

Q2: 地元ロシアのメタル・シーンとの繋がりはあるんですか?それとも、国外により目を向けているんですか?

【BNG】: ライブ活動はそれほど頻繁には行っていないんだけど、ロシアのメタル・シーンとは繋がりを保っているよ。多くのミュージシャンやバンドと連絡を取り合っているんだ。
同時に、国外のバンドとも繋がりを保つようにしているよ。ヨーロッパ・ツアーでは、たくさんの素晴らしい思い出と友情が生まれたんだ。

Q3: ByoNoiseGenerator is exactly the right name for your music, why did you decide on this name?

【BNG】: As you pointed out ― it fits our music, so that’s why we picked it.
But seriously, both the name and the whole concept came from our drummer’s slightly deranged mind while he was inhaling nitrous oxide in a Russian sauna. So yeah, it kind of naturally became part of our artistic identity.

Q3: ByoNoiseGenerator というバンド名は、まさにあなたの音楽にぴったりですね。なぜこの名前を選んだのですか?

【BNG】: 君が言う通り、僕たちの音楽に合っているからこそ、この名前を選んだんだ。
でも真面目な話、この名前もコンセプト全体も、僕らのドラマーがロシアのサウナで亜酸化窒素を吸っていた時に、ちょっと狂った頭で思いついたものなんだよね。だから、その狂ったコンセプトが自然と僕たちの芸術的アイデンティティの一部になったというわけだよ。

Q4: Still, I’ve never heard music as chaotic as yours!Technical grindcore, free jazz, Primus-like grooves with Mr. Bungle-like progressive developments. Why did you decide to make such chaotic, avant-garde music?

【BNG】: “Nothing is true, everything is permitted.”
When we started playing this kind of avant-garde stuff, we made a conscious decision not to limit ourselves with genre boundaries. We began with pure experimentation, and we’re still sticking to that approach.
Our earlier releases leaned more towards death/grind, while the latest one has a stronger mathcore influence, brought in by our newer members Dima and Semyon.
Overall though, the band’s direction has always been about creating максимально intense music ― because physical exercise keeps you strong and young.

Q4: それにしても、あなたたちほどカオスな音楽は聴いたことがありません!
テクニカル・グラインドコア、フリージャズ、PRIMUS のようなグルーヴに Mr. Bungle のようなプログレッシブな展開。なぜこんなにカオスでアヴァンギャルドな音楽を作ろうと思ったのですか?

【BNG】: 「正しい音楽などは決してない。すべてが許される」
こういうアヴァンギャルドな音楽を演奏し始めた時、僕たちはジャンルの枠にとらわれないことを意識的に決めたんだ。純粋な実験から始め、今もその姿勢を貫いているよ。
初期の作品はデス/グラインドコア寄りだったけど、最新作は新メンバーの Dima と Semyon がもたらしたマス・コアの影響がより強くなっているね。
とはいえ、バンドの方向性は常に、最強に極めて激しい音楽を作ることにある。なぜなら、身体を動かすことは、強くて若々しくいる秘訣だからね。

Q5: Many people must feel John Zorn’s genes when they listen to your music.In fact, does his music and use of the saxophone influence you?

【BNG】: We actually discovered Zorn relatively late. It happened after people online started comparing our music to his.
Initially, we were more influenced by sax players like Chris Potter, Ben Wendel, and Michael Brecker.
That said, John Zorn had a huge impact on our sax player Shela in his early years. He learned improvisation and phrasing largely through studying Zorn and Naked City.
So yeah ― the answer isn’t entirely straightforward, as you can see.

Q5: あなたたちの音楽を聴くと、John Zorn の影響を感じる人も多いのではないでしょうか。実際、彼の音楽やサックスの使い方は、あなたたちに影響を与えていますか?

【BNG】: 実は、John Zorn を知ったのは比較的遅い時期だったんだよね。ネット上で僕たちの音楽と彼の音楽を比較する人が出始めたのがきっかけだったんだ。
当初は、Chris Potter, Ben Wendel, Michael Brecker といったサックス奏者から影響を受けていたんだよ。
とはいえ、John Zorn は、サックス奏者の Shela が若い頃に大きな影響を受けている。Shela は Zorn と NAKED CITY を研究することで、即興演奏やフレージングを多く学んだんだ。
だから、メンバーによって異なるんだよね。

Q6: Interestingly, your music reminded me of the soundtrack to the Japanese anime Cowboy Bebap.It’s strange that grindcore reminds me of such music (lol), but do you actually have any Japanese anime, video games, or music influences?

【BNG】: Japanese culture hasn’t directly influenced our music, but it’s worth mentioning that we all grew up watching iconic anime and films like Evangelion, Berserk, Tetsuo: The Iron Man.
All of that stuff feels incredibly weird and mesmerizing ― at least from a European perspective. Maybe our music creates a similar feeling for listeners.

Q6: 面白いことに、あなたの音楽は日本のアニメ “カウボーイ・ビバップ” のサウンドトラックを想起させますよ。グラインドコアがそんな音楽を連想させるなんて不思議ですが(笑)。
そうした、日本のアニメやゲーム、音楽から影響を受けたことはありますか?

【BNG】: 日本の文化が直接僕たちの音楽に影響を与えたわけではないけど、僕たちは皆、”エヴァンゲリオン”, “ベルセルク”, “鉄男” といった名作アニメや映画を見て育ったことは特筆すべきだろうね。そうした作品は、少なくともヨーロッパの視点から見ると、信じられないほど奇妙でだけど魅惑的なんだ。
もしかしたら、僕たちの音楽もリスナーに同じような感覚を与えているのかもしれないね。

Q7: Originally, grindcore and death metal were two separate things, but in recent years the two have come closer together, with a proliferation of bands that are now being referred to as death grind. You also combine the impulse and sociality of hardcore with the complexity and technique of death metal, which do you consider more your roots?

【BNG】: Like we said earlier, it all started with death metal and its variations. Later, we began incorporating more grind and mathcore elements.
We genuinely love all these genres musically, but we deliberately distance ourselves from the typical lyrical themes associated with them.
We don’t want our music to be tied to the exaggerated brutality of death metal or the socio-political messaging often found in grindcore.

Q7: 元々、グラインド・コアとデスメタルは別々のジャンルでしたが、近年は両者が接近して “デス・グラインド” と呼ばれるバンドが増えています。
BNG もまた、ハードコアの衝動と社会性に、デスメタルの複雑さとテクニックを融合させていますが、どちらがよりあなたのルーツだと考えていますか?

【BNG】: 先ほども述べたように、すべてはデスメタルとその派生ジャンルから始まったんだよね。その後、グラインド・コアやマス・コアの要素をより多く取り入れるようになったんだ。
僕たちはそうしたジャンルを音楽的に心から愛しているけど、凶悪な音楽に典型的に見られる歌詞のテーマからは意図的に距離を置いていてね。
僕たちの音楽が、デスメタルの誇張された残虐性や、グラインド・コアによく見られる社会政治的なメッセージと結びつくことは望んでいないんだ。

Q8: Since 2020, pandemic happened, divisions are growing, and your country is at war. What can heavy music do in such a dark world?

【BNG】: We believe heavy music should keep doing what it has always done ― bringing people together, giving them a way to release emotions and energy, and helping them get through all this darkness.

Q8: 2020年以降、パンデミックが発生し、分断が深まり、遂にはあなたの国は戦争状態にあります。このような暗い世界で、ヘヴィ・ミュージックは何ができるでしょうか?

【BNG】: 僕たちは、ヘヴィ・ミュージックはこれまで通り、人々を結びつけ、感情やエネルギーを発散させる手段を提供し、この暗闇を乗り越える手助けをし続けるべきだと信じているよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED BNG’S LIFE!!

The Tony Danza Tapdance Extravaganza “Danza III”

the album that got me into mathcore (Halo)

Metallica “Master of Puppets”

the album that got me into heavy music (Tim)

Pink Floyd “The Wall”

because I like worms (Shela)

Yüth Forever “Freudian Slip”

such an underrated album that takes the best from nu metal, math metal, and metalcore and delivers it in a full-force blast of aggression, anxiety, and depression — just hits you straight in the face (M1t)

Foetopsy “In the Bathroom”

Almighty Jon Engman completely changed my drumming (Nox)

MESSAGE FOR JAPAN

We’re really happy that people in Japan are interested in what we do. Hopefully, one day we’ll get to visit your country, play a couple of shows, and fulfill our vocalist’s childhood dream!

日本のみんなが僕たちの音楽に興味を持ってくれたことを、本当に嬉しく思うよ。いつか日本に行けることを願っている。君たちの国でライブを行い、ボーカリストの幼い頃からの夢を叶えたいね!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WIDEK : ENTRANCE INTO ETERNITY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH WIDEK !!

“I’ve always loved calmer parts in metal music. Back in 2010 I listened a lot of djent precursors and post-rock bands and I was like: Hey! I love heavy riffs and I love ambienty post-rock clean guitars. Let’s mix this!”

DISC REVIEW “ENTRANCE INTO ETERNITY”

「僕は常に Djent の単調さや類似性を避けようとしてきたんだ。当時多くの曲は “0-0-0” というリフ構成と、同じようなメロディーやパターンに基づいていたからね。だから、同じようなサウンドのバンドが多すぎたという理由で、Djent の人気が衰えた理由も理解できるよね。残念ながら、メタルコアというジャンルでも同様のことが起こっていた。もちろん、今でもトップレベルで活躍している Djent バンドはたくさんあり、僕の大好きなバンド (PERIPHERY) もその一つだよ!」
00年代末期から10年代の中盤まで、Djent は大きなムーブメントとしてヘヴィ・メタルを牽引していました。もともと、MySpace やネットの掲示板から火がついたナードでアンダーグラウンドなリズムとシュレッドの実験は、その多くが “ベッドルーム・ミュージシャン” で、プロモーションやリリースも大半が DIY で行うという、まさに SNS 時代の到来を感じさせる刹那の煌めきでした。
しかし、その “誰にでも参加できる” というムーブメントの性質は、多くの才能を輩出すると同時に、シーンを飽和させ、同じような音楽が乱立することによって衰退への道を歩むことにもつながったのです。とはいえ、もちろん Djent の代名詞であったあの重低音とポリリズミックな響きは今でもメタル・リフのそこかしこで輝きを放っていますし、何よりも真に才能あるアーティストはムーブメントの浮き沈みにかかわらず活動を続けています。
シーンの先駆けとなった PERIPHERY, ANIMALS AS LEADERS, TesseracT、そして Plini, Sithu Aye, Owane, Jacob Zytecki, David Maxim Micic…彼らには人智を超えた超絶技巧はもちろん、類稀なる個性も備わっています。ポーランドの Widek もそんなひとつの才能。
「僕はメタルの中の落ち着いた静かなパートが昔から大好きなんだよ。2010年頃、Djent の先駆けやポスト・ロックをたくさん聴いていて、”ヘヴィなリフも好きだし、アンビエントなポスト・ロックのクリーン・ギターも好きだ。これをミックスしてみよう!” って思ったんだよね。新しいジャンルではないのは分かっていたけど、当時はヘヴィでありながら落ち着いた/アンビエントなインストゥルメンタル・バンドはあまり多くなかったからね。個人的には、その方がずっと退屈じゃないと思うんだ。そして、その試みは大成功だった。誰かが僕の最初のEPを YouTube にアップロードしてくれて、最初から人気が出たんだよね!」
当時 Bandcamp の “Djent” タグをせっせと漁っていた人間で、WIDEK の名を知らない者はいないでしょう。そしてたしかに、彼の音楽は異端で、斬新で、雄弁でした。細分化と多様化が進むモダン・メタル勇躍の時を象徴するかのように、WIDEK はなんのためらいもなくメタルの重厚な技巧に、ポスト・ロックの繊細と静謐、夢見心地な壮大さ、そして幻想的で美しい世界観を組み合わせました。
重要なのは、WIDEK の音楽がいわゆる “ポスト・メタル” とはまた別のベクトルを向いていること。彼の盟友 Gru の手によるアートワークが示す通り、WIDEK の世界は宇宙と空間、次元の合間を行き来していて、だからこそ、プログレッシブで、まるで夜空を輝く星々のように息を呑むほど美しいのです。トレモロとクリーンが織りなす Djent の天の川。
「ギターは決して死んでいない。ソロ・ゲストの参加は僕の音楽の大きな部分を占めていて、曲に深みと多様性を加えてくれる。ギターソロなしでは Widek のアルバムを聴くことは不可能だと言っても過言ではないんだよ!」
同時に、彼の音楽にはシュレッドの夢が詰まっています。”Entrance into Eternity” “永遠への入り口” と名付けられたアルバムには、Gru, Sithu Aye, Morgan Thomaso, Paul Wardingham, Marco Sfogli, Bruno Henrique, Per Nilsson といった歴戦のギター勇士たちが馳せ参じ、AI 全盛の時代に人の手による驚きと興奮を存分に伝えてくれます。そう、これはギターという永遠に探索可能な “宇宙” への入り口でもあるのです。
今回弊誌では、WIDEK にインタビューを行うことができました。「僕は昔からSFや宇宙を題材にした作品が好きだったんだ!そんなロマンティックな場所から発する世界へのメッセージは、”言葉遣い、仕草、日々の選択において、お互いに優しくありましょう” というものだよ。優しい言葉一つが、誰かの1日、あるいは人生を変えることもあるからね。僕たちは、今他人がどんな困難に直面しているかを知るすべもない。だけど、一つだけできることがある。それは、優しくあること。敬意を払うことにお金はかからないけど、その意味は計り知れないんだよ」 どうぞ!!

WIDEK “ENTRANCE INTO ETERNITY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【EXXÛL : SEALED INTO NONE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PHIL TOUGAS OF EXXÛL !!

“I got this idea from Sortilège, a french band that has greatly inspired me. The song “Délire d’un fou” has a short moment like this and the first time I heard this solo, I couldn’t believe it! This song marks probably one of the greatest moments in heavy metal history in my book. Not only that, but I couldn’t believe more bands that came after them didn’t try this either.”

DISC REVIEW “SEALED INTO NONE”

「独自の音楽で故郷ケベック州を代表することが僕の使命だと考えているんだ。また、僕の活動を通して、音楽シーンを活性化させ、仲間や友人たちがそれぞれの個性を磨き、独自のサウンドを確立していくよう、刺激を与えたいと思っているんだ。こうした思いから、僕は “TSO”(The Stygian Oathの略)というレーベルを設立したんだ」
今、メタル世界で Phil Tougas ほど多忙かつ、才能溢れる人物は他にいないかもしれません。FIRST FRAGMENT ではシュラプネルに敬意を表したフラッシーなテクニカル・デスメタルを叩きつけ、ZEICRYDEUS では MANOWAR や RUNNING WILD をベースだけで演じきり、WORM では ENSLAVED がドゥームと契ったネクロマティックな音楽を披露。Phil の多才は TSO という自身の音楽を解き放つためのレーベルを立ち上げるにまで至り、今やケベックの、いやカナダ、もっといえば世界のメタルを牽引する場所にいます。
Phil がメタル世界で一目置かれているのは、その独特で斬新な古の音楽に対するリスペクトが故でしょう。多くの “モダンな” メタル・バンドが影響を受けている GOJIRA のような “メジャー” には目もくれず、Phil は多くのマニアにとって特別な、しかしナードなバンドを追い続け、創造的な音楽を作り続けています。
例えば、ZEMETH の Junya 氏が MAGO DE OZ や RATA BLANCA, DARK MOOR といったマニアックなバンドに対する愛情を隠さないその姿に、私たち真のメタル・オタクは心を動かされ、喝采を送ります。それは、彼が私たちと同じ熱量と時間をメタルに費やした “こちら側” の人間、本物である証明だから。メタルに対する深い知識と愛情は、そのまま絶大な信頼感へと置き換わります。そしてもちろん、Phil Tougas も同様に、”こちら側” の人間です。
「僕の目標はパワー・ドゥーム・アルバムを作ることだった。速いテンポと遅いテンポを組み合わせ、ダークでスローなリフの上に高揚感のあるボーカルとシュレッディングを乗せて、独特の音楽的コントラストを生み出したかった。多くの界隈でプログレッシブ・ドゥームと見なされている MEMENTO MORI や VENI DOMINE に影響を受けたとはいえ、このアルバムを必ずしもプログレッシブ・メタル・アルバムとは考えていないよ」
こちら側の人間だからこそ、Phil は EXXÛL でメタル史に残る傑作 “Sealed into None” を生み出せたのでしょう。驚くべきことに、このアルバムは、ドゥーム・メタルとプログ・パワーという、一見仄暗く遠い場所にある音楽が見事に融合した、古めかしくも斬新で、非常に稀有な作品です。Phil が言及しているように、あの素晴らしき MEMENTO MORI はもしかすると近い場所にいたかもしれません。とはいえ、FATES WARNING の迷宮と SOLITUDE AETERNAUS の陰鬱がブラック・メタルやダンジョン・シンセを経て、これほど濃密に美しく混ざり合えるなど、誰が想像したでしょう?
「”スキャット” のアイデアは、僕に大きなインスピレーションを与えてくれたフランスのバンド、Sortilège から得たんだ。”Délire d’un fou” という曲に、まさにこのような短いパートがあり、初めてこのソロを聴いた時は信じられなかったよ!この曲は、僕にとってヘヴィ・メタルの歴史の中でも屈指の名曲となった。それだけでなく、彼らの後に続くバンドがなぜこの手法を取り入れなかったのか、不思議でならないんだよ」
そのふたつを見事に繋いだのが、Phil の “GOAT” とも評される卓越したギター・シュレッドでしょう。WORM の作品に Marty Friedman を招いたように、彼のシュラプネルやシュレッドに対する愛情もまた本物。同世代の教科書通りのギタリストたちを置き去りにする、大胆不敵でヘヴィ・メロディックな Phil の魔法は、CRIMSON GLORY の Midnight を彷彿とさせる驚異のボーカル Thomas Karam の歌声とシンクロし、ダークな深淵からメタルのスキャットをお見舞いします。SORTILEGE を聴いたことのない奴は黙ってろ!真に信頼できるのは、そんな一見さんお断りでしかし絶品のグルメを提供する通な店なのかもしれませんね。”Painkiller” や “Into the Arena” みたいな有名曲ばかり上手に弾いて再生数だけ稼いでんじゃねえ!
今回弊誌では、Phil Tougas にインタビューを行うことができました。「僕は日本のメタルも大好きだよ。SABER TIGER が大好きでね。彼らのデビュー・アルバム “Invasion” は、僕にとって歴代最高のメタル・アルバムの一つなんだ。 Anthem, Fast Draw, Loudness, Sex Machineguns から GISM, Funeral Moth, Corrupted, Viscera Infest, Anatomia, Coffins, Somnium De Lycoris。それから Galneryus, X Japan, Skywings, Versailles といった過激なパワー・メタルまで、日本のメタルはほとんど好きなんだよ」21世紀最高のメタル・アルバムのひとつ。 二度目の登場。どうぞ!!

EXXÛL “SEALED INTO NONE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SOEN : RELIANCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARTIN LOPEZ OF SOEN !!

“Progressive music should evolve, not just technically, but emotionally otherwise it stops being progressive and very often complexity can be “in the way” of emotion.”

DISC REVIEW “RELIANCE”

「誰かとの比較は避けられないし、僕たちはそれをネガティブなものとして捉えてはいないよ。”Reliance“ はより直接的で拡大した音楽なので、アリーナ・ロックやメタルとの関連性が自然と強く出てくるよね。だけど、僕たちの意図は特定のバンドに似せようとしたのではなく、明確かつ誠実に音楽を伝えたいというものだった。もし楽曲が人々の心に深く響くなら、それは僕たちにとって大きな喜びだ。だけど、それが目的で曲作りをしているわけではないんだよ」
2010年、かつて OPETH と AMON AMARTH というビッグ・バンドに所属していた名ドラマー Martin Lopez は、自身の新しいバンドを立ち上げました。SOEN と名付けられたこのバンドは、非常に優れたミュージシャン集団 (あの Steve DiGiorgio も在籍) で、Lopez はそのサウンドを “メロディアスでヘヴィ、複雑で、他のどのサウンドとも全く異なる” と表現していました。しかし、そんな彼の意図とは裏腹に、SOEN のサウンドは常に誰かと比較される運命にありました。
初期のアルバム “Cognitive” や “Tellurian” では TOOL と比較されることが多かったものの、SOEN は明らかにクローン以上の存在であり、Lopez の出自である OPETH や KATATONIA のプログ・メタル的な血肉にナイーブで心に迫るメロディを加えて見事な化学反応を起こしていました。近年は初期のアルバムのようなオルタナティブな複雑さ、プログレッシブな紆余曲折は減退しましたが、一方でメタリック & グルーヴィーでありながらアトモスフェリックという SOEN 独自の世界観は伸張。重要なのは、そこにいつも、心を震わせるメロディの泉が存在すること。
そうして、歌の力が戻りつつあるメタル世界で、SOEN は堂々たるプログレッシブ・アリーナ・メタルの実現へと舵を切りました。DISTURBED や NICKELBACK のグルーヴィーでシンガロングを誘うコーラスと、プログレッシブでナイーブな感情の共存。Joel Ekelof の歌声は、脂が乗り切ってまさに今が旬。
「依存は心地よいものだけど、同時に危険なものでもある。このアルバムは、答えを与えることではなく、僕たちが何に、そしてなぜ依存するのかを振り返ることを促しているよ。幸せを探し求めるとき、僕らは依存を恐れながらも受け入れなければならないだろう。ただ、何に頼るのかについては、非常に慎重にならなければならないと思う」
そんな両極を抱きしめたアルバムで SOEN がテーマとしたのは “Reliance” “依存”。SNS の発達により、私たちは見知らぬ誰かと共感しながら、何かの “推し” にかつてより深く依存するようになりました。もちろん、辛い現実を生きていく中で、幸福感や満たされた感覚を得るため好きなものに依存することは、ある意味でライフハックなのかもしれません。しかし、盲目的に “推し” に依存し、”推し” を全肯定することで、自己という最も重要な存在が消えてしまってはいないだろうか? SOEN は盲信的な依存が当たり前となった世界で、依存を恐れ、自分の頭で慎重に考慮することを促しています。
“Primal” では “無意識にスマホをスクロールしている” とか “SNSは暴力的なポルノ” といった表現が使われ、”Drifter” では “アルゴリズムを操る奴らに振り回されるな” といった辛辣な言葉が飛び出します。そもそも、あなたが依存しているのは “推し” なのでしょうか?ひょっとすると、あなたが依存しているのは “推し” ではなく、SNS そのものなのかもしれません。もしそうだとしたら、あなたが孤独を感じ、誰かと少しでも共感したいだけなのだとしたら、SOEN のアリーナ・メタルで共に歌えばいい。もちろん、進化した感情でプログレッシブに思考を巡らせながら。
今回弊誌では、Martin Lopez にインタビューを行うことができました。「音楽のトレンドは移り変わるけど、感情は残り続ける。僕たちが始めた頃は、たしかにテクニックと複雑さが非常に際立っていて、それは刺激的なことだったよね。でも今は、アトモスフィア、ダイナミクス、そして傷つきやすさにもっと居場所があって、僕たちはそれを歓迎しているんだよ。プログレッシブ・ミュージックは、テクニックだけでなく、感情面でも進化するべきなんだ。そうでなければ、複雑さが感情の “邪魔” になってしまう。よくあることだけど、それはもうプログレッシブな音楽とは呼べないからね」 3度目の登場。どうぞ!!

SOEN “RELIANCE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VIANOVA : HIT IT!】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEX KERSKI OF VIANOVA !!

“I mean our goal is to make something that is not fully Metal, so if that’s an issue with someone i guess they can just listen to something else. It’s totally fine to have different preferences.”

DISC REVIEW “HIT IT!”

「僕らはこのアルバムを宣伝するためにソーシャルメディアをたくさん使ってきた。 個人的には、これからのバンドがTiktokやinstagramを使って自分たちを売り込むのをたくさん見てきたし、そんなに新しいことではないんだ。BRING ME THE HORIZON や SUICIDE SILENCE のようなメタルコア・バンドの多くが、昔myspaceでビッグになったことを考えればね。 正直なところ、それらはツールでしかなくて、親和性があるかどうかは、それをどう使いたいかによるような気がする。僕らはある程度力になっていると感じるけどね。自分たちでプロモをやることで、バンド外部の人に頼らなくてすむから。昔、それで嫌な思いをしたからね。僕らは自分たちの音楽が良くて、それをライブで演奏できれば、それでいいんだ」
ソーシャルメディア時代において、簡潔さと大げさな表現は注目を集める上で最も重要な手段です。例えば TikTokで人気を博したいなら、気まぐれなユーザーの集中力の持続時間を捉えるために、アルゴリズムを巧みに操れるかどうかが成功の鍵となります。ヘヴィ・メタルは確実に、リスナーのアテンション・タイムを捉えるだけの表現力がありながら、やっと近年、SNS を自在に操れるようになったようです。
デビューアルバムのリリース時点でSpotifyの月間リスナー数18万6000人を誇る VIANOVA は、アルゴリズムの攻略法を熟知しているバンドと言えるでしょう。ドイツ出身の4人組は、ペレストロイカ時代のソ連のディスコにいるかのような恰好で注目を集め、SNS には彼らのミーム動画が溢れかえっています。しかしもちろん、バイラルを得られるのはその確かな才能があってこそ。
「”Hit It!” の場合、可能なかぎり自然な感じで融合できるように努めたんだ。 もし僕たちの多様性が本物だと思うなら、君や他の人たちは、僕たちが取り入れているジャンルに対する純粋な評価と興奮を感じ取ることができるのかもしれないね。 よく比較されるTWELVE FOOT NINJA のようなバンドも、自分たちが取り入れている非メタル音楽を深く理解し、愛していると思うけど、彼らの曲では時にそうした要素が水と油のように構成全体でより分離しているため、もう少し切り離されているように感じるのかもしれないね」
VIANOVA のデビュー・アルバムとなる “Hit It!” は、ファンク、ヒップホップ、ソウル、ハードコア、ハイパーポップといったあまりにも多様なジャンルを融合させ、Djent なグルーヴがそのサウンドを支えています。熱狂的なエネルギー、ブルーノ・マーズ的ポップなセンス、ポスト・ハードコアのエッジ、そしてジャンルのメルティング・ポットが到達したのは、PERIPHERY や CLOSURE IN MOSCOW が統合失調症に冒されたかのような混沌。しかしその混沌は常に変化し続け、驚くほど精巧に自然に作られていて、それぞれのジャンルがあまりにも真に迫っています。
「僕らは伝統を守ろうとしているわけではないので、ジャンルの門番は気にしていないよ。 僕らのゴールはメタルっぽくないものを作ることなんだから、それが気になる人は他の曲を聴けばいいと思う。 曲の方向性に腹を立てる人がいるのは、僕にとっては奇妙なことなんだ。 今は素晴らしいバンドがたくさんいるから、非建設的なコメントを打つよりも、もっとクラシックなメタルバンドを探した方がきっと時間を有効に使えるような気がするけど、人それぞれなんだろうね」
メタルと非メタル。彼らの核融合が真に迫っているのは、楽曲の中でアイデアから次のアイデアへと飛び移るのではなく、ジャンルの実験を一曲ずつ丁寧に行っていく傾向があるからかもしれませんね。だからこそ、アルゴリズムで捉えたミーム的な奇抜さよりも、熟考された対比が際立っていくのです。こうした瞬間こそが VIANOVA の真骨頂であり、大胆にメタルを壊し、大胆にメタルを再構築していくのでしょう。メタルには TikTok で羽ばたく瞬間的な表現力がありますが、もちろん、インスタントなアテンション・スパンには収まりきらない魅力もあるのですから。
今回弊誌では、ボーカル Alexander Kerski にインタビューを行うことができました。「僕らのベーシスト、Raoul はクラシック・プログの大ファンなんだ。 OPETH, PAIN OF SALVATION, BETWEEN THE BURIED AND ME, PROTEST THE HERO をよく聴いていたよ」 どうぞ!!

VIANOVA “HIT IT!” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【KARNIVOOL : IN VERSES】


COVER STORY : KARNIVOOL “IN VERSES”

“I do hope this album can help people in the way it has helped me, and also that it may inspire and encourage some people reading this, especially those entering their mid to later years to finish that project that they’ve wanted to finish for a while.”

IN VERSES

「目的を遂げる人もいる。遂げられない人もいる。何とかやっていける人もいる…やろうとしない人もいる」
これは、伝説的なオーストラリアのプログレッシブ・メタル・バンド、KARNIVOOL 4枚目のアルバム “In Verses” のコーラスの一部です。数々の賞を受賞したアルバム “Asymmetry” 以来、バンドは長き停滞状態に陥っていました。残ったファンは、滅多にないツアーと、時折の謎めいたソーシャルメディアの投稿でなんとか生き延びてきました。しかし、ついにその待ち時間は終わりました。
13年の時を超えたアルバム “In Verses” は、最高のプログレッシブ・メタル・バンドの一つである KARNIVOOL が時とともに強くなることをリスナーに粘り強く、そして辛抱強く思い出させてくれる作品です。リフはよりラウドに、リズムはより奔放に。しかし、このアルバムを最高傑作としているのは、メロディーとフックです。長年に渡って最高のモダン・プログ作品の一つとして記憶されるに違いないこのアルバムは、長い間オーブンの中で温められてきました。キッチンに常に料理人がいたわけではないにしても。
「まあ、すべての始まりと終わりをここで説明していたら永遠になってしまうけど、本当に長かった。実際、長すぎたよ。どのアーティストにも、ここまで長い時間をかけるのはお勧めしないね!過去10年ほど、新作に取り組んでいると何度か公言してきたはずにしても。以前のアルバムはどれも、いわゆる “オリンピック周期” の4年に沿っていたので、アルバム “Asymmetry” のリリース後、2014年初頭に4枚目のアルバムの制作に着手し、最初はほぼ同じ期間でのリリースを目指していたんだ。最初の試みは2016年半ば、プロデューサーの Forrester が西海岸に来て、アルバムの半分、あるいはEPの拡張版くらいの感じでレコーディングを始めた時だったね。最終的に “In Verses” に収録された曲のほとんどは、その時点ですでに制作中だった。今にして思えば、かなり生産的で、あのセッションのおかげで曲が完成に近づいたんだ。でも、まだ準備が整っていなかったのは明らかだった。
その後の数年間は、本当に軌道に乗ろうと努力する中で、厳しい日々だった。仕事は散発的で、たとえ進歩があったとしても、それは断片的で、試練の時期、個人的な葛藤、経済的な問題、そしてバンド内の勢いと結束力の深刻な欠如に満ちていたね。何かが芽生えたとしても、すぐに消えてしまうような感じ。この時期は僕にとって個人的にも大変な時期で、砂漠へ移住することにしたんだ。これは、健康と幸福を最優先にし、自分自身を癒し、再び自分の足で立つ機会を得るという点で、僕にとって大きな決断だった。この間には実に多くのことがあり、一段落にまとめるのは不可能だけど、これまでの道のり、あらゆる試練と苦難、失敗した試み、成功、そして僕たちの人生の年月はすべて価値があったと言えるだろう。それらすべての時間と経験が、アルバムに収録された曲という最終的な形へと凝縮されていった。今振り返ってみると、曲が息を吹き込み、熟成していくには、時間と空間が必要だったのだと思うんだ」

バンドの中心人物、ギタリスト Drew Goddard は紆余曲折を経たため、勢いという要素が逆に厄介な存在となったと感じていました。皮肉なことに、勢いを排除した “In Verses” はだからこそ素晴らしく、そして完璧に練られた構成となっています。無理強いするよりも、自分たちのプロセスを信頼していたからこそ、まとまりが生まれたのです。
「方向性を事前に決めることは決してないんだ。アルバムのテーマは直感的な創作上の決断からゆっくりと、しかも長い時間をかけて浮かび上がってくるイメージのようなものさ。だから、常にプロセスを信頼するという要素があり、音の冒険心とエネルギーが僕たちの創作プロセスを突き動かし、アルバムごとに共通のテーマを提供している。でも、僕たちは同じことを繰り返すのは好きじゃない。僕自身、自分が作る音楽の中に新しいサウンドや感覚を見つけ、それがこうして生まれたことに驚きたいという欲求に突き動かされている。振り返ってみると、”In Verses” はある意味、新境地を開拓したように聞こえる一方で、過去3枚のアルバムの要素も含まれており、バンドが共に歩んできた時間をより強固なものにしている。まるで一つの章の終わりと新たな章の始まりのようにね」
アルバムが形を成していくうち、ひとつのテーマが浮かび上がりました。それはまさに、13年という長い月日を経ても彼らが貫き通したもの。諦めないこと。挑戦を続けること。
「諦めないことが鍵だと思う!僕らはどのアルバムでもすごく挑戦的だけど、今回のアルバムはこれまでで最も挑戦的だった。人生は挑戦に満ちている。僕にとって KARNIVOOL の音楽は、逆境や困難を乗り越えて勝利を収めるためのサウンドトラックのようなもの。暗いけれど、一筋の光が僕たちを前に導いてくれる。だから、アルバム制作のプロセス、そこに込められた感情を作品に反映するのは、本当に自然な流れだった。僕にとっての報われた瞬間は、2023年初頭のヨーロッパツアーの頃。心身ともに健康で、ツアー前よりもずっと良くなり、バンドの雰囲気もポジティブになった。みんなで演奏し、ツアーを楽しみ、観客からのサポートと反応を喜べるようになった。8年間ヨーロッパツアーをしていなかった後、観客からこれほどの興奮と喜びを受け取ったことは、前進し続ける大きな原動力となったんだ。その気持ちが雪だるま式に大きくなり、そこから勢いがついたと感じているよ」

オーストラリアのパースから現れたことも、彼らの個性を強くしています。パースは地球上で最も孤立した大都市の一つであり、それが KARNIVOOL を世界的な音楽業界のトレンド追及のプレッシャーから守ってきたと言えるのかもしれません。
「初期の頃は、それが間違いなく役に立った。本当に未熟な中でも、自分たちの技術を磨くことができた。下手くそだったけど、世に出なくても手探りで自分たちの “もの” を見つけることができた。戸棚の下に眠って埃をかぶっている素材がたくさんあるんだ」
Goddard は活動休止期間中、この孤立をさらに一歩進め、自己反省のために砂漠へと移住しました。
「しばらくの間、人が少ない田舎で違う意味で自分がダメなことを許したんだ。でも、孤独と孤立の間には微妙な境界線があるんだよな。僕にとって最も孤独な瞬間は、人混みの中にいた時だったような気がするよ」
その “砂漠での時間” は、広大で同時に深く個人的な感覚を持つアルバム “In Verses” のDNAに深く影響を及ぼしました。現在彼らの影響は、依然として多岐にわたります。そもそもは MESHUGGAH, TOOL, SOUNDGARDEN のホーリー・トリニティを基盤としていましたが、新作はより意外な分野から影響を受けています。モロッコ音楽の微分音的変化、J Dillaの “酔ってよろめく” ヒップホップのリズム、そしてボイジャー探査機のゴールデン・レコードまで驚くべきカラフルなインスピレーションたち。
「ボイジャーのレコードでネイティブ・アメリカンの歌を聴いて、ゾクゾクしたんだ。強烈なダイナミクスの変化、何もない状態から巨大なものへと変化し、また元に戻る。僕たちは常に、これまで聴いたことのない音程やリズムを探しているんだ」

彼らのアルバムの中で最も精緻なアレンジメントを誇る “In Verses” ですが、最も長く聴き続けられる3曲は、作品の中間部にあります。もちろん、”Ghost” と “Drone” はプログではほとんど見られないような即時性を示し、”Opal” はアルバムで最も心を揺さぶるメロディーを収録しています。しかし、”In Verses” が輝かしい作品から特別な作品へと変貌を遂げるのは、 “Animation” から始まる部分であり、KARNIVOOL があらゆるツールを巧みに使いこなしその技巧を際立たせる、スリルとサスペンスに満ちたサウンドはまさに唯一無二でしょう。
「”In Verses” の中間部は、まさに今のバンドの特徴を体現している。”Animation”, “Conversations”, “ReAnimation” は、どれも同じ音楽モチーフ、いわば同じ音楽文化から生まれたと言えるだろう。それぞれ全く異なる独立した曲でありながら、共通のテーマを共有しているんだ。同様に、”Remote Self Control” は “Aozora” の制作から生まれた曲で、他の曲から曲が生まれた例も数多くある。こうした例は、長い時間をかけて書き上げられたアルバムに、統一感を与え、ひとつに繋がっていく。そうしたディテールの追求こそがこのアルバムの鍵だ。完成してもまだ突き詰めたい、放棄したくない気持ちがあるほどにね」
“Themata” が荒削りなオルタナ・メタルの導入部で、”Sound Awake” が広がりのあるメロディアスな傑作だとすれば、”Asymmetry” は難解で不協和音に満ちた作品でした。そして、このアルバムは音色の限界を押し広げ、しかしリスナーを “Asymmetry” の “煉獄” へ置き去りにはしません。
「 “The Refusal” が大好きなんだ。”Asymmetry” で最も耳障りな曲の一つ。解決しないキーで歌われている。最後の歌詞は “これは不可能だ” で、ただ奇妙な後味を残すだけだ。”In Verses” は、色々な意味でそれに対する反応なんだ。有機的な進行ではあるけど、僕らはもう少し何かを探求している…ストレートとは言いたくないけど、もっとハーモニーがあって、もっと安定したメロディーがある」

リード・シングル “Drone” はその言葉を裏付けています。推進力のある分厚いベースラインと、高らかに響くボーカルパフォーマンスが曲を牽引しますが、興味深いことに、この曲の起源は完全に機械的なものでした。
「タイトルは “Drone Commander” という機器に由来しているんだ。信号発生器なんだよ。それが生み出したドローン・サウンドが、この曲全体のベースになった。僕らはその機械にあわせて曲を書いたんだ。このトラックは、広大な西オーストラリアの砂漠の重みを響かせ、故郷ならではの壮大なロックリフに支えられている。それは、反映であり、再生でもある。”Opal” の”死がそばにあるかのように、私はじっと静かになるだろう” という歌詞も、ずっと心に留めていた。何かがひらめいて、最終的な歌詞にも反映されたんだ」
“Opal” の一部は、Goddard が KARNIVOOL と曲作りを始めた最初期に遡ります。
「中間とエンディングのリフは、実は “Themata” 時代に実家のパソコンで初めて録音した曲なんだ。そして20年後、収まる場所を見つけたんだ。より現代的にアレンジしてね。”You’ve been holding up…” で始まるヴァースは、”Asymmetry” 収録の “Aeons” からカットされた部分。曲全体が、今まで経験したことのない形でひとつにまとまった。昔からバラバラだったアイデアが、突然、ひとつの場所に収まったんだよね」
そして、ハープまで使用した深く心に響くこの曲は、バグパイプも含め、息を呑むようなクロージング “Salva” へと繋がっていきます。
「僕たちは今でもアルバムという音楽形態の価値を信じている。アルバムを最初から最後まで一つの旅として聴いてもらえれば、この曲の真髄はもっと伝わってくると思うんだ。KARNIVOOL の旅路を共に歩んでくれて、それを僕たちと共有してくれた人たちにとって、最後の2曲、”Opal” と “Salva” が何かを与えてくれるといいな… 僕自身、解放感、ある種のカタルシスを得られたからね」

“Drone” のアートワークは、灰色と白の海に浮かぶ荒涼とし傾いた船を描いていて、あるファンが “KARNIVOOL が最後にアルバムをリリースしたときは、あの船の下に水があった” とコメントしたジョークを彼らは気に入っています。つまり、”In Verses” の音楽やリリックは、そのアートワークから想像されるほど陰鬱なものではないと彼らは示唆しています。
「常に音楽主導なんだ。歌詞は音符への反応となる。だから何よりもまず、言葉の響きが重要だ。Ian は非常に即興的で、”Conversations” のような曲でそれは顕著だ。数テイクを録ると、突然彼の表情が変わる。”意味不明な言葉” を声に出して、それがやがて意味へと結晶化していく。僕らにとって、声はまず楽器であり、物語を語るのは次のステップなんだ。音楽にどう合うかが重要で、歌詞の意味は、言葉の響きによって決まることもある。発明というより発見だ。僕らは岩の中から歌を掘り出しているんだ」
THE BEATLES と MESHUGGAH は彼らのお気に入り二大バンドですが、制作のスピードは大きく違います。
「僕らの時代の4年は、ビートルズの世界では1週間くらいだろう (笑)。彼らがどうやってやったのか、わからないよ。ビートルズは MESHUGGAH と並んで僕のお気に入りのバンドだし、僕らの中でそのバランスは取れている。でも、彼らはあらゆるルールの例外なんだ」
彼らは困難を乗り越え、その努力に意味を持たせようとする勇気をリスナーに感じてほしいと願っています。そして、人生のピークを迎えた人、あるいはピークを越えた人に向けて、自らの音楽と姿勢を通して特別なメッセージを送っているのです。
「このアルバムが、誰かの力になればと願っている。僕自身を支えてくれたようにね。そして、特に中高年の人たちが、人生でずっとやりたかった作品なり、プロジェクトなりを成し遂げるきっかけになればと願っているんだ。僕はいつもこのことを考えていてね。時には辛い努力を経て、日の目を見るべき素晴らしい芸術。そんな芸術的な宝物が、世界中にたくさん眠っているはずなんだ。中高年になり、時間やお金、仕事や家族のことでアートを完成させることを諦めかけている人も多いだろう。だけどそれらは世界に残され、共有され、聞かれるに値するものであり、ハードディスクの中に永遠に埋もれてしまうべきではないんだよ。だから諦めずに、必要な助けを求め、ただ進み続けてほしい」

参考文献: NEW NOISE MAG :INTERVIEW: KARNIVOOL GUITARIST DREW GODDARD TALKS ‘IN VERSES’

MGM :KARNIVOOL: THE WAIT IS OVER – INSIDE THE 12-YEAR JOURNEY TO ‘IN VERSES’

THE MUSIC AU:Karnivool Detail The Epic Grind Behind ‘In Verses’: ‘Everyone’s Still Finding Really Beautiful Stuff On This Record’

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【PARADISE LOST : ASCENSION】 JAPAN TOUR 26′


COVER STORY : PARADISE LOST “ASCENSION”

“Ironically, miserable music is always the most fun to listen to and the most fun to write.”

ASCENSION

「雨が好きなんだ」
Nick Holmesは、惨めな気分でいる方が楽な場合が多いそうです。そして、PARADISE LOST の長いキャリアを少しでも追ってきた人なら、これは自明の理だといえます。1988年にヨークシャーのハリファックスで結成され、デスメタルとスラッジ、ドゥームの暗黒が融合した1990年のデビューアルバム “Lost Paradise” 、そしてゴシック・メタルの名となり、定義付けとなった続編 “Gothic” で世界にその名を轟かせて以来、彼らはつねに暗い雲に覆われ続けています。
彼らの最新作 “Ascension” は、だからこそ当然のように、まさにそんな、いつも通りの暗雲メタルです。つまり、PARADISE LOST は長年にわたりデスメタル、シンセ、アリーナ・ロック、スラッジ、ドゥーム、エレクトロニカなど、さまざまなジャンルを巧みに操ってきましたが、彼らの中には常にダークな芯が宿っていたのです。
「ヨークシャーがなぜ悲惨なメタルの温床になっているのかはわからない。 暗い、悪魔のような工場や天候と関係があるのかもしれない。 スウェーデンも同じだ。 スウェーデンはとてもダークなバンドを何組か育てたが、あそこは天気もよく似ているんだ!
それに、狭い街だから、僕の母の寝室の窓から MY DYING BRIDE の Aaron Stainthorpe の家が見えたくらいでね」
言い換えれば、そうした暗い気候と地理が、彼らをメタル世界において特別な存在に押し上げたのです。ヨークシャーのアンダーグラウンド・レーベル、ピースヴィルが擁する “ドゥーム・ビッグスリー” の一つとして、MY DYING BRIDE、ANATHEMAと共に彼らは、悲しみに浸り、それを鍛鉄のような重厚さで表現する、実に英国的で異端で革新的なサウンドの構築に大きく貢献してきました。
晴れも嫌い。王道も嫌い。レジリエンス、反発力といえば聞こえはよいですが、Nick Holmes は天性の天邪鬼なのかもしれません。
「ヘヴィ・メタルが好きになったのは、メタルがみんなに嫌われていたからだ。 いつも嫌われていた。 反抗的な感じがした。町中でメタルが好きな奴は2人くらいしかいなかったかもしれない。それが好きだった。 自分の小さなチームを持っているような感じだった。僕らが考えていたのはそれだけだったんだ。目が覚めて、寝る瞬間まで。メタルとデスメタルのことしか考えてなかったんだ!」

その小さなチームは活動を続ける中で、Ville Valo のようなダークな音楽の実践者たちに多大な影響を与えるようになり、CRADLE OF FILTH, OPETH, GREEN LUNG, GATECREEPER など、様々に多くのバンドが PARADISE LOST の悲しみや暗がりにインスピレーションを見出してきたのです。
“Ascension” でその陰鬱さは、かつてよりも年老いた、今の Nick Holmes によって表現されています。
「人生、不幸、幸福、死、そしてそれらに伴うあらゆることを、50代半ばの男の視点から見ているんだ。僕が最後にアルバムを作ったのはいつだったか分からないが、それって40代後半の男の視点とは正反対なんだ。50歳になってから、時間がどこへ消えるのか分からなくなってしまった。本当に恐ろしい。学校の6週間の休暇は永遠に続くように感じたよね?でも今は6週間なんて一瞬だ!
ただ、人生観はあまり変わっていない。音楽も歌詞も相変わらず悲惨だ。物事に対してかなりシニカルなところがある。昔からずっとそうだ。死ぬのが特に怖くない。若い頃は怖かったけど、今は特に気にしない。だから、そこは変化だね(笑)。物事に対して…静かに楽観的になるのが好きなんだと思う。でも、歌詞でそれを表現することはあまりないけどね!」
ただし、皮肉たっぷりのユーモアのセンスも持ち合わせている Nick は、実は同世代の中ではかなりエネルギッシュで元気なほうだと自認しています。
「周りの人たちは、僕よりずっと暗くて嫌味な人が多いことに気づいた。仲の良い友達の多くが、本当にそういう風になって、すごく意地悪になった。実は僕はそこまでひどい人間じゃないと思うんだ」
暗い時代だからこそ、PARADISE LOST にファンは今も悲惨さを期待しているのかもしれません。
「人々は僕らがもっと惨めになることを期待しているはずだ (笑)。”Ascension” というアルバムのタイトルは、地上から天国までの道中で、より良い場所に昇っていくという信念と、死という報酬をテーマにしている。実生活では、人は多くの場合、人生唯一の報酬が死であるという事実にもかかわらず、生まれたときからより良い場所に到達しようと努力し、なぜかより良い人間になろうと努力するよね」

PARADISE LOST がどこへ行こうとも、たとえ曲自体は変わっても、あのほとんど喜劇的なまでの悲惨さはずっと付きまとってきました。圧倒的な初期を経て、彼らは1993年の “Icon” と大ヒットを記録した続編 “Draconian Times” でスタジアム・ゴスメタルに転向し、1998年の当時物議を醸した “One Second” とそれに続く “Host” では DEPECHE MODE 風のエレクトロニクスを披露。髪を切り、ギターを削ぎ落としました。そうして近年は、彼らのトレードマーク・サウンドに初期のエッジを融合させる才能を発揮しています。今や彼らは “完全に元に戻った” と Nick は言いますが、いずれにせよ、PARADISE LOST の個性は常にそこにあったのです。
「僕たちは今でもデスメタル・キッズなんだ。そのルーツは決して消えたことはない。髪型をちょっといじっていた頃でさえ、その頃は棚上げになっていただけで、今は確実に復活しているんだ。
僕はダークな映画が好きなんだ。僕はいつも同じ作品を勧めるんだけど、”The Hereditary 継承” だ。あの作品が公開されてから何年も経つけど、僕はまだあの映画を、現代ホラーの文脈において、本当にある意味不気味なものの一種のベンチマーク映画だと考えているからね。ヘヴィ・メタルにハマる前はホラーが好きで、だから VENOM のようなハードなバンドには自然とハマっていった。でも、あの頃のデスメタル・キッズは僕の中に今でもまだいるし、Greg の中にもいる。それは決して消えることはないんだ」

しかし、人々はそうした彼らのメタル魂を見抜けていませんでした。ある時期、彼らを終わった存在、つまりルーツから大きく離れすぎていると見なす者も多く存在したのです。文字通り、まさに “Believe In Nothing” の時代。
「奇妙な時代だった。インターネットもなかった。でも、もしネットがあったらネガティブなコメントが殺到して、サーバーがダウンしていただろう。
僕たちはかなり混乱していた。蜂がたくさん描かれたアルバム・カバーは覚えている。デザイン会社と仕事をしていたんだ。確か、OASIS の最初の数枚のアルバムをデザインした会社だったと思う。OASIS にとっては素晴らしい仕事だったけど、僕たちにとっては…とにかく奇妙な時代だった。あのカバーは、俺たちの脳内で何が起こっていたかを象徴しているような感じだったね。
今なら気楽にふらりと別の音楽に立ち寄って、普段の領域から少し外れたことをすることもできる。でも当時は、メタルを作るならメタルだけしか許されないような感じだった。それ以外のものを作ると、呪われてしまったんだ!
僕らのオリジナリティは演奏スタイルに現れることが非常に多い。 メタルは “創造性” に関してガラスの天井があり、ファンもあまり実験的なことを好まない傾向があったからね。でも僕にとっては、本当に曲がすべてなんだ。 力強い詩とコーラスがある良い曲を聴きたいんだ。 ギターの神様やヴォーカル・ジムナスティックスなどには興味がない。 最後はいい曲がいつも勝つんだから」
とはいえ、そうしたメタルにとっての異端な作品を残したことを、彼らは後悔してはいません。
「バンドを続けるのは散髪のようなもので、髪型を試行錯誤し続けても、最終的には若い頃と同じ髪型になる。つまり、失ったと思っていた興味が再び燃え上がり、また戻ってくるんだよな。
特に音楽の分野では、主にここ10年で、僕たちは戻ってきたような気がするね。古いサウンドや昔のデスメタルやドゥームメタルのバンドに対する新たな愛と懐かしさを本当に見つけたんだ。そして、この10年でそれを取り戻した。僕たちが “Host” を作ったとき、おそらくその頃、人生のより実験的な領域にいたんだよな。でも、そうだね、過ちではないよ。僕たちは常に直感に従い、自分の心に従い、その時に正しいと感じたことを書き、記録してきたんだよ」

“Icon” と “Draconian Times” のまさにアイコニックなゴシック・メタルこそが、PARADISE LOST の雛形だと考えている人は多いでしょう。
「”Icon” を(30周年を記念して)再レコーディングした時、実際にまた歌ったり演奏したりした。そうすることで、あのアルバムを作った頃、若い頃、どんなふうに曲を書いていたかを思い出したんだよな。ある意味、すごく刺激的だったし、このアルバムでは曲作りへのアプローチも変えたから。今、あのアルバムの何かをそのまま真似しようとしたわけではないんだけどアプローチが少し変わって、それがこのアルバムの多くの曲の形を作るのに役立ったんだ。もちろんあれからたくさんのことを経験して、たくさんのことを学んできたから同じじゃない。でも、あのアルバムのおかげで、”ちょっと待って。あの頃の雰囲気に近い曲を何曲か作ってみよう” って思えるようになったんだ。でも、このアルバムには “Shades Of God” の要素もあるんだよ。これは僕たちがずっと大好きだったアルバムだけど、あまり注目されていなかったからね」
PARADISE LOST がそうした時代の変化の中で、翻弄されながらも生き残ってこられたのは、”悲惨の達人” という評判を堅持しているからでしょう。その評判は決して揺らぐことはありません。
「VENOM が結成された頃は、彼らのことを何も知らなかった。”At War With Satan” を聴いて、すごく気に入ったんだ。”こいつらは一体誰だ?” って感じだったけど、頼りになるのは写真1枚だけだったからね。今は情報が豊富にあるから、謎は完全に消え失せている。どれだけミステリアスであろうとも、誰かがテスコで猫砂を買っているところを写真に撮るだろう」
35年経った今、Nick はバンドの揺るぎない成功の理由を “自分たちがやっていることを愛しているから”
であり、引退など考えたこともないと語ります。

「9時5時のちゃんとした仕事なんてしたことない。これがずっと僕たちの仕事で、僕たちの完全な中心なんだ。そして、この仕事がなくなったことは一度もない。だって、気を散らすものが何もなかったからね。 “ああ、こっちの方が稼げるんだ” って思えるような高給の仕事に就いて解散して、お酒とかが恋しくなって3年後にまた再結成するなんてこともないんだ」
こんなに長い間、陰鬱な音楽をやり続けられるのは、それが自分の知っている全てだからだと Nick は誇らしげに語ります。
「ある種、悲惨さが重なり合っているような感じだけど、その悲惨さの中に希望の光がある。映画を観て、すべてが暗くて悲惨なのに、誰かがその状況から抜け出す方法を見つけそうになるのを見るのが好きなんだ。でも、扉が閉まってしまい、もう逃げ場がない。そういうかすかな希望の光がほのめかされるのが好きなんだ。だから、曲全体を通して、実はすごく前向きな歌詞を入れることもある。そうすると、観客は “ちょっと待って、これ、前向きでいい感じ…いや、違う。いや、消えてしまった。また暗くなってしまった” って思うんだ」
“Ascension” もまさに暗さの中に救いがあり、しかしその救いが脆くも消えさって暗闇に戻る…そんなアルバムです。結局、PARADISE LOST はいつの時代も自然体の PARADISE LOST そのものなのです。
「僕たちにとっては自然なことさ。でも、光はちゃんとある。メランコリックに感じられるなら、それはある意味正しい道を進んでいるということ。必ずしも惨めな気分になりたいわけではないが、少しのメランコリーと少しの希望のきらめきがあっても構わない。名前は出さないけど、いくつかバンドを知っているけど、外見はすごく明るくて、自分たちも明るいバンドだとアピールしてる。でも、裏では今まで会った中で一番悲惨な奴らだよ!
僕らも明るくなったとは言わないけど、もう40歳も過ぎたしね。だから、もうあとは死ぬことしか考えられない!でも皮肉なことに、悲惨な音楽はいつだって聴いていて一番楽しいし、書いていて一番楽しいんだ」

来日公演の詳細はこちら。Evoken de Valhall Production

日本盤のご購入はこちら。Ward Records

参考文献 : KERRANG! :“We were laughing at one of the titles because it was so miserable”: Paradise Lost on three decades of turning woe into iconic metal

WIKI METAL :Paradise Lost Interview: Nick Holmes talks about the band’s 37-year career.

HEAVY MUSIC HQ: PARADISE LOST INTERVIEW

LOUDER SOUND:”I liked heavy metal because everyone hated it.” Paradise Lost’s Nick Holmes on dodging plant pots, nearly-severed fingers and why nu metal ruined metal

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TIBERIUS : SINGING FOR COMPANY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAHAN TABRIZI OF TIBERIUS !!

“I think as a band, we very much try to be as authentic as we possibly can be, in a world of bands trying to be scary, masculine and tough, we’re just not like that as people, we like to think we’re cutting through the noise by being different and being honest about who we are.”

DISC REVIEW “SINGING FOR COMPANY”

「バンドとして、僕たちは可能な限り本物で、信頼できる存在であろうと努めているんだ。怖くて男らしく、タフであろうとするバンドの世界の中で、僕たちはどう考えてもそういう人間じゃない。僕たちはメタルのステレオタイプとは違っていて、自分たちがどんな人間かについて正直であることで、雑音を跳ね除けられると思いたいんだ」
ヘヴィ・メタルは男のもの。タフで強いもの。悪魔と死体の音楽。そんなステレオタイプは、21世紀に入って変わろうとしています。今では、女性のアーティストは少なくありませんし、死体や悪魔、剣と鎧のファンタジーだけではなく、内省的でパーソナルなテーマを扱うバンドも増えてきました。
そんなメタル世界で、スコットランドの新鋭 TIBERIUS はありのままの自分を見せることこそ、今のヘヴィ・メタルのあるべき姿だと信じています。なぜなら、ヘヴィ・メタルは正直な音楽だから。弱さを抱きしめる音楽だから。許しの音楽だから。そして、強い人間など、実はこの世界には存在しない、それこそ非現実的なファンタジーだから。
「僕たちは明るい色が大好きでね! 2018年に “Dissipate” のビデオ撮影でこの色にバイブスして、それ以来、ライブの演出やアートワーク、あるいは僕のピンクとブルーのギターを通して、この色をバンドの一貫したテーマにしてきたんだ!」
そんな TIBERIUS の、いやヘヴィ・メタルの現在地が如実にあらわれたミュージック・ビデオこそ、”Mosaic” だといえるでしょう。これほど、メンバー全員が幸せそうに、自然な笑顔でメタルを奏でるMVがこれまであったでしょうか?これほど、ピンクやブルーのビビッドカラーが映えるバンドがこれまで存在したでしょうか?これほど、ポジティブで、優しく、高揚感あふれる楽曲がこれまで聴けたでしょうか?
そう、TIBERIUS はメタルのステレオタイプを、そして閉塞感あふれる現代の暗がりを、”ありのままの自分” を見せることで打ち破り、正直で寛容な “より良い世界” を目指そうとしているのです。だからこそ、彼らは “Singing for Company”、仲間のために声を上げて歌います。
「複雑なリズムや曲の構成、テクニックを、リスナーにとって親しみやすいものにしているというだけで、”プログレとしては物足りない” と考える批評家もいる。一方で、”パワー・メタルとしては重すぎる” “激しすぎる” と考える人もいる。僕はそれを誇りに思っているんだ。もし君が心を開いてくれさえすれば、僕たちは誰にとっても何かを与えることができるし、もし君が心を開かないのなら、それは君の損失となる!」
ゆえに、彼らの音楽自体もメタルのステレオタイプで推し量ることは不可能。欧州版 AVENGED SEVENFOLD、あるいは IRON MAIDEN と LEPROUS の婚姻などと評される彼らの音楽は、パワー・メタルというには複雑すぎる、激しすぎる。プログ・メタルと呼ぶには高揚感がありすぎる…そんな批評家の声を浴びることもありました。しかし、それは逆に言えば前代未聞、唯一無二なる彼らの個性。メタルに加わる新たな魅力。そうした “異端” をも、心を開けば好奇心の新たな翼となる…TIBERIUS は自身の特異な音楽を通して、音楽の力で、世界に寛容さと許しの本質、そして何より笑顔を届けるのです。
今回弊誌では、ギタリスト Jahan Tabrizi にインタビューを行うことができました。「日本文化は間違いなく僕に影響を与えている。僕は子供の頃から X Japan の大ファンで、最近では The Gazette、The Back Horn、MIYAVI、LOUDNESS といった J-ROCK もよく聴いているので、おそらくそれらのいくつかが長年にわたって僕のソングライティングに浸透しているのだろうね」笑顔のメタル。 どうぞ!!

TIBERIUS “SINGING FOR COMPANY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VALHALORE : BEYOND THE STARS】 JAPAN TOUR 26′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LACHLAN NEATE OF VALHALORE !!

“Our goal has always been to deliver what we refer to as “The Three E’s” – Escapism, Empowerment and Entertainment. We want our music, and our live shows, to give listeners the opportunity to escape their troubles for an hour or two. We want to leave the world a more positive place than when we found it.”

DISC REVIEW “BEYOND THE STARS”

「オーストラリアには “ヨーロッパ的” なサウンドのバンドが少なかったからね。オーストラリアにいても、僕が聴きたい、観たい音楽を作って演奏したかったんだ!」
VALHALORE。ヴァルハラの伝承という、まるで北欧神話から抜け出てきたような名前の彼らは、実はオーストラリアのバンドです。太陽の日差しが降りそそぐグレート・バリアリーフと、極寒の北欧神話はあまりにも正反対ですが、だからこそ VALHALORE は欧州的なサウンドを探求しました。そこにないなら、自分たちが作ればいい。ヘヴィ・メタルの寛容さは、ルール違反を罰することなどありません。
「僕たちは常に、自分たちの音楽を通してファンに高揚感や力を与えるエネルギーをもたらすことを目指してきた。 僕たちは皆、映画やゲームのサウンドトラックから大きな影響を受けているから、日本文化からの影響も間違いなくたくさんあるよね。WINTERSUN のような和楽器を積極的に取り入れているバンドが大好きだし、僕たちもそうなんだ。”Aether” という曲では琴だって弾いたんだよ! 」
ただし、その欧州的なサウンドは実にカラフルで、魅力的。なぜなら、彼らの根底には、白夜の太陽 WINTERSUN から流れる “混血の美学” を受け継いでいるから。WINTERSUN のセルフ・タイトルと “Time” が、21世紀を代表する北欧メタルの逸品であることに疑いの余地はありませんが、その傑作の誕生に寄与したのがまさにその “混血の美学” であり、モダン・メタルらしい多様性でした。
メロデス、パワー・メタル、フォーク・メタル、シンフォニック・メタル、プログ・メタル…どのジャンルにも収まりきらない面妖でしかし起伏と驚きに満ちたオーロラの楽曲は、凄まじいシュレッドと様々な民族楽器に彩られた理知的なごった煮。VALHALORE の探求する北欧神話の宇宙には、明らかにあの “Time” と同様の美しき “混血の美学” が宿っています。
「僕たちが進歩するにつれて、Sophie のホイッスルと木管楽器は僕たちのサウンドの象徴的な側面になったんだ。ただ、大変なのは主にライブのサウンド・エンジニアかな。メタル・バンドの獰猛さに対して、穏やかなアコースティック楽器をミックスしなければならないからね!」
マンドリン、チェロ、パイプ、ホイッスルに縦笛、横笛。さらに和楽器の琴まで使用する伝統民族楽器のるつぼもまた、VALHALORE の魅力のひとつ。Sophie の操る艶やかな管楽器は、硬質な彼らの音楽を徐々に溶かして、テンポの速いメタルの嘶きに濃密なアクセントを加えていきます。
ここにのチェロとマンドリンの欧州的で荘厳な響きが加わることで、力強いメタルとオーガニックで本格的なフォークの生命が見事に重なり合います。さらに、佳曲 “Heart on the Sea” には、あの Anna Murphy が参加。ELUVEITIE で培った先駆者の威厳を見せつけながら、このジャンルの弛まぬ進化に目を細めます。そう、歴史に彩られたフォーク・メタルもまた、歴史を重ね、その文化を広げているのです。
今回弊誌では、ボーカル、チェロ、マンドリンとひとり三役の Lachlan Neate にインタビューを行うことができました。「僕たちの目標は常に、僕たちが “3つのE” と呼ぶもの、すなわちエスケープ、エンパワーメント、エンターテインメントを提供することなんだ。 僕たちの音楽、そしてライブを通して、リスナーに1時間でも2時間でも悩みから逃避する機会を与えたい。僕たちは、自分たちが今いる世界よりもポジティブな世界を後世に残したいんだ」 来日も決定。どうぞ!!

VALHALORE “BEYOND THE STARS” : 9.9/10

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