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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WIDEK : ENTRANCE INTO ETERNITY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH WIDEK !!

“I’ve always loved calmer parts in metal music. Back in 2010 I listened a lot of djent precursors and post-rock bands and I was like: Hey! I love heavy riffs and I love ambienty post-rock clean guitars. Let’s mix this!”

DISC REVIEW “ENTRANCE INTO ETERNITY”

「僕は常に Djent の単調さや類似性を避けようとしてきたんだ。当時多くの曲は “0-0-0” というリフ構成と、同じようなメロディーやパターンに基づいていたからね。だから、同じようなサウンドのバンドが多すぎたという理由で、Djent の人気が衰えた理由も理解できるよね。残念ながら、メタルコアというジャンルでも同様のことが起こっていた。もちろん、今でもトップレベルで活躍している Djent バンドはたくさんあり、僕の大好きなバンド (PERIPHERY) もその一つだよ!」
00年代末期から10年代の中盤まで、Djent は大きなムーブメントとしてヘヴィ・メタルを牽引していました。もともと、MySpace やネットの掲示板から火がついたナードでアンダーグラウンドなリズムとシュレッドの実験は、その多くが “ベッドルーム・ミュージシャン” で、プロモーションやリリースも大半が DIY で行うという、まさに SNS 時代の到来を感じさせる刹那の煌めきでした。
しかし、その “誰にでも参加できる” というムーブメントの性質は、多くの才能を輩出すると同時に、シーンを飽和させ、同じような音楽が乱立することによって衰退への道を歩むことにもつながったのです。とはいえ、もちろん Djent の代名詞であったあの重低音とポリリズミックな響きは今でもメタル・リフのそこかしこで輝きを放っていますし、何よりも真に才能あるアーティストはムーブメントの浮き沈みにかかわらず活動を続けています。
シーンの先駆けとなった PERIPHERY, ANIMALS AS LEADERS, TesseracT、そして Plini, Sithu Aye, Owane, Jacob Zytecki, David Maxim Micic…彼らには人智を超えた超絶技巧はもちろん、類稀なる個性も備わっています。ポーランドの Widek もそんなひとつの才能。
「僕はメタルの中の落ち着いた静かなパートが昔から大好きなんだよ。2010年頃、Djent の先駆けやポスト・ロックをたくさん聴いていて、”ヘヴィなリフも好きだし、アンビエントなポスト・ロックのクリーン・ギターも好きだ。これをミックスしてみよう!” って思ったんだよね。新しいジャンルではないのは分かっていたけど、当時はヘヴィでありながら落ち着いた/アンビエントなインストゥルメンタル・バンドはあまり多くなかったからね。個人的には、その方がずっと退屈じゃないと思うんだ。そして、その試みは大成功だった。誰かが僕の最初のEPを YouTube にアップロードしてくれて、最初から人気が出たんだよね!」
当時 Bandcamp の “Djent” タグをせっせと漁っていた人間で、WIDEK の名を知らない者はいないでしょう。そしてたしかに、彼の音楽は異端で、斬新で、雄弁でした。細分化と多様化が進むモダン・メタル勇躍の時を象徴するかのように、WIDEK はなんのためらいもなくメタルの重厚な技巧に、ポスト・ロックの繊細と静謐、夢見心地な壮大さ、そして幻想的で美しい世界観を組み合わせました。
重要なのは、WIDEK の音楽がいわゆる “ポスト・メタル” とはまた別のベクトルを向いていること。彼の盟友 Gru の手によるアートワークが示す通り、WIDEK の世界は宇宙と空間、次元の合間を行き来していて、だからこそ、プログレッシブで、まるで夜空を輝く星々のように息を呑むほど美しいのです。トレモロとクリーンが織りなす Djent の天の川。
「ギターは決して死んでいない。ソロ・ゲストの参加は僕の音楽の大きな部分を占めていて、曲に深みと多様性を加えてくれる。ギターソロなしでは Widek のアルバムを聴くことは不可能だと言っても過言ではないんだよ!」
同時に、彼の音楽にはシュレッドの夢が詰まっています。”Entrance into Eternity” “永遠への入り口” と名付けられたアルバムには、Gru, Sithu Aye, Morgan Thomaso, Paul Wardingham, Marco Sfogli, Bruno Henrique, Per Nilsson といった歴戦のギター勇士たちが馳せ参じ、AI 全盛の時代に人の手による驚きと興奮を存分に伝えてくれます。そう、これはギターという永遠に探索可能な “宇宙” への入り口でもあるのです。
今回弊誌では、WIDEK にインタビューを行うことができました。「僕は昔からSFや宇宙を題材にした作品が好きだったんだ!そんなロマンティックな場所から発する世界へのメッセージは、”言葉遣い、仕草、日々の選択において、お互いに優しくありましょう” というものだよ。優しい言葉一つが、誰かの1日、あるいは人生を変えることもあるからね。僕たちは、今他人がどんな困難に直面しているかを知るすべもない。だけど、一つだけできることがある。それは、優しくあること。敬意を払うことにお金はかからないけど、その意味は計り知れないんだよ」 どうぞ!!

WIDEK “ENTRANCE INTO ETERNITY” : 10/10

INTERVIEW WITH WIDEK

Q1: First of all, what kind of music did you grow up listening to?

【WIDEK】: Hi everyone!. I grew up listening to pop bands like Britney Spears, Backstreet Boys, Eiffel 65 etc. My friend had first introduced me to metal when I was 11-12 years old. He showed me Korn’s song called „Adidas”. When I listened to it for the first time, I hated it. It was so loud and „scary”to me, because I enjoyed soft melodies and pop tunes. Finally after a few forced listens (haha) I actually started to enjoy it! Later I listened to bands such as Metallica, Slipknot, System Of a Down and I loved it!

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【WIDEK】: やあ、みんな!僕はブリトニー・スピアーズ、BACKSTREET BOYS, EIFFEL 65などのポップ・バンドを聴いて育ったんだ。11~12歳の頃、友人が初めてメタルを紹介してくれてね。彼は KORN の “Adidas” という曲を聴かせてくれたんだけど、初めて聴いた時は大嫌いだった。ソフトなメロディーやポップな曲が好きだった僕にとって、それはとてもうるさくて “怖い” ものだったからね。でも、何度か無理やり聴かされた後(笑)、実際に楽しめるようになったんだ!
その後、METALLICA, SLIPKNOT, SYSTEM OF A DOWN みたいなバンドを聴いて、メタルが大好きになったんだ!

Q2: You are a great musician and guitarist, but what guitarist was your hero?

【WIDEK】: Thanks, actually I’ve never had any guitar heroes. I really admire guitarists such as Jon Petrucci, Steve Vai or Joe Satriani, but I’m a riff guy and can’t play guitar solos.

Q2: あなたは偉大なミュージシャンでギタリストですが、あなたにとってのヒーローはどんなギタリストでしたか?

【WIDEK】: ありがとう、実は僕にはギター・ヒーローがいないんだ。 John Petrucci や Steve Vai, Joe Satriani といったギタリストは本当に尊敬しているんだけど、僕はリフ派でギターソロは弾けないからね。

Q3: Poland has a strong image of black metal and death metal, but you were not involved in those scenes?

【WIDEK】: Correct – I play in different genre – post rock and djent aren’t too popular in Poland. I love the bands like Vader or Behemoth though!

Q3: ポーランドといえばブラックメタルやデスメタルのイメージが強いですが、そういったシーンとは無縁だったのですか?

【WIDEK】: その通りだよ。僕は別のジャンルで演奏しているからね。ポスト・ロックや Djent はポーランドではあまり人気がないんだよ。でも、VADER や BEHEMOTH のようなバンドは大好きだけどね!

Q4: You came out of the Djent movement, but you were clearly out of step with the rest of the artists, and your mix of heavy, technical guitar, post-rock and ambient music is truly one-of-a-kind, which is why you are still so popular even though Djent has gone down in popularity! Why did you decide to mix these two opposite elements?

【WIDEK】: Thanks! I’ve always loved calmer parts in metal music. Back in 2010 I listened a lot of djent precursors and post-rock bands and I was like: Hey! I love heavy riffs and I love ambienty post-rock clean guitars. Let’s mix this! I know it’s not a new genre, but back then there weren’t many instrumental bands that are heavy and calm/ambienty at the same time. It’s much less boring in my opinion. It was a success. Someone uploaded my first EP on youtube and it became popular from the very beginning!

Q4: あなたは Djent・ムーブメントから登場しましたが、他のアーティストとは明らかに一線を画していました。ヘヴィでテクニカルなギター、ポスト・ロック、アンビエント・ミュージックを融合させたあなたの音楽はまさに唯一無二で、だからこそ Djent の人気が衰退した今でもあなたはこれほど人気があるのでしょう​​。
なぜあなたは、この正反対の2つの要素を融合させようと思ったのですか?

【WIDEK】: ありがとう!僕はメタルの中の落ち着いた静かなパートが昔から大好きなんだよ。2010年頃、Djent の先駆けやポスト・ロックをたくさん聴いていて、”ヘヴィなリフも好きだし、アンビエントなポスト・ロックのクリーン・ギターも好きだ。これをミックスしてみよう!” って思ったんだよね。
新しいジャンルではないのは分かっていたけど、当時はヘヴィでありながら落ち着いた/アンビエントなインストゥルメンタル・バンドはあまり多くなかったからね。個人的には、その方がずっと退屈じゃないと思うんだ。そして、その試みは大成功だった。誰かが僕の最初のEPを YouTube にアップロードしてくれて、最初から人気が出たんだよね!

Q5: Djent, which was so popular, has now almost disappeared due to saturation and the proliferation of similar artists. Personally, I feel that it was a very significant movement in terms of the recognition of DIY and bedroom artists. How do you see your own relationship with the Djent movement?

【WIDEK】: I’ve always tried to avoid Djent repetitiveness and similarity. A lot of songs are based on a structure „0-0-0” riffs and same melodies/formula. I understand why Djent became less popular, because there were many bands that sounded exactly the same. Similar situation happened tothe metalcore genre. Of course there are plenty of djent bands that are still at the top and are one of my favourite bands!

Q5: かつて非常に人気を博した Djent は、シーンの飽和状態と類似アーティストの乱立により、今ではほぼ姿を消してしまいました。個人的には、DIY やベッドルーム・アーティストの認知度向上という点で、非常に重要なムーブメントだったと思っています。
あなた自身は、Djent ムーブメントとどのような関係性を築いてきたと考えていますか?

【WIDEK】: 僕は常に Djent の単調さや類似性を避けようとしてきたんだ。当時多くの曲は “0-0-0” というリフ構成と、同じようなメロディーやパターンに基づいていたからね。だから、同じようなサウンドのバンドが多すぎたという理由で、Djent の人気が衰えた理由も理解できるよね。
残念ながら、メタルコアというジャンルでも同様のことが起こっていた。もちろん、今でもトップレベルで活躍している Djent バンドはたくさんあり、僕の大好きなバンド (PERIPHERY) もその一つだよ!

Q6: You have pursued scientific and romantic themes such as space, dimension, and time. What message are you sending to the world with “Entrance into Eternity”?

【WIDEK】: I’ve always been interested in sci-fi and space genre! My message to the world is: Let’s be kind to each other―in our words, in our gestures, in our daily choices. Sometimes one kind word can change someone’s day, or even their life. We don’t know what another person is facing. But we can always choose one thing: to be kind. Respect costs nothing, but means everything.

Q6: あなたは、宇宙、次元、時間といった科学的かつロマンティックなテーマを追求してきました。 この “Entrance into Eternity” では、そこからどのようなメッセージを世界に向けて発信しているのでしょうか?

【WIDEK】: 僕は昔からSFや宇宙を題材にした作品が好きだったんだ!そんなロマンティックな場所から発する世界へのメッセージは、”言葉遣い、仕草、日々の選択において、お互いに優しくありましょう” というものだよ。優しい言葉一つが、誰かの1日、あるいは人生を変えることもあるからね。
僕たちは、今他人がどんな困難に直面しているかを知るすべもない。だけど、一つだけできることがある。それは、優しくあること。敬意を払うことにお金はかからないけど、その意味は計り知れないんだよ。

Q7: You have some great guitarists guesting on the album! Especially, people like Gru and Sithu Aye are heroes who have led the Djent movement together with you for many years. Some critics say that the guitar is dead, but this album shows that the guitar still has a lot of potential, would you agree?

【WIDEK】:

Q7: アルバムには素晴らしいギタリストがゲスト参加していますね! 特に Gru や Sithu Aye は、長年あなたとともに Djent ムーブメントをリードしてきたヒーローたちです。 “ギターは死んだ” という批評家もいますが、このアルバムはギターがまだ多くの可能性を秘めていることを示してくれていますね?

【WIDEK】: その通りだよ。ギターは決して死んでいない。ソロ・ゲストの参加は僕の音楽の大きな部分を占めていて、曲に深みと多様性を加えてくれる。ギターソロなしでは Widek のアルバムを聴くことは不可能だと言っても過言ではないんだよ!

FIVE ALBUMS THAT CHANGED WIDEK’S LIFE!!

Periphery “Periphery”

In Flames “Reroute to Remain”

Killswitch Engage “Alive or Just Breathing”

Korn “Untouchables”

Metallica “Black Album”

MESSAGE FOR JAPAN

Yes, I love watching anime and recently started reading manga. I’ve got many favourites in anime such as Attack on Titan, Chainsaw Man, Demon slayer and many more! I would love to visit Japan one day and feel the atmosphere. My friend visisted Tokyo last year and he was delighted!
To all my Japanese fans – thanks so much for the support and all your kind words! I plan to release a new album in October this year, fingers crossed! Stay safe!

日本のアニメを見るのが大好きで、最近は漫画も読み始めたんだ。アニメでは “進撃の巨人”, “チェンソーマン”, “鬼滅の刃” など、お気に入りの作品がたくさんあるんだよ!いつか日本に行って、その雰囲気を肌で感じてみたいな。友人が去年東京を訪れたのだけど、とても感動していたからね!
日本のファンのみんな、いつも応援と温かい言葉をありがとう!今年の10月にニューアルバムをリリースする予定なんだ。うまくいきますように!お元気で!

WIDEK

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WIDEK bandcamp

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【EXXÛL : SEALED INTO NONE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PHIL TOUGAS OF EXXÛL !!

“I got this idea from Sortilège, a french band that has greatly inspired me. The song “Délire d’un fou” has a short moment like this and the first time I heard this solo, I couldn’t believe it! This song marks probably one of the greatest moments in heavy metal history in my book. Not only that, but I couldn’t believe more bands that came after them didn’t try this either.”

DISC REVIEW “SEALED INTO NONE”

「独自の音楽で故郷ケベック州を代表することが僕の使命だと考えているんだ。また、僕の活動を通して、音楽シーンを活性化させ、仲間や友人たちがそれぞれの個性を磨き、独自のサウンドを確立していくよう、刺激を与えたいと思っているんだ。こうした思いから、僕は “TSO”(The Stygian Oathの略)というレーベルを設立したんだ」
今、メタル世界で Phil Tougas ほど多忙かつ、才能溢れる人物は他にいないかもしれません。FIRST FRAGMENT ではシュラプネルに敬意を表したフラッシーなテクニカル・デスメタルを叩きつけ、ZEICRYDEUS では MANOWAR や RUNNING WILD をベースだけで演じきり、WORM では ENSLAVED がドゥームと契ったネクロマティックな音楽を披露。Phil の多才は TSO という自身の音楽を解き放つためのレーベルを立ち上げるにまで至り、今やケベックの、いやカナダ、もっといえば世界のメタルを牽引する場所にいます。
Phil がメタル世界で一目置かれているのは、その独特で斬新な古の音楽に対するリスペクトが故でしょう。多くの “モダンな” メタル・バンドが影響を受けている GOJIRA のような “メジャー” には目もくれず、Phil は多くのマニアにとって特別な、しかしナードなバンドを追い続け、創造的な音楽を作り続けています。
例えば、ZEMETH の Junya 氏が MAGO DE OZ や RATA BLANCA, DARK MOOR といったマニアックなバンドに対する愛情を隠さないその姿に、私たち真のメタル・オタクは心を動かされ、喝采を送ります。それは、彼が私たちと同じ熱量と時間をメタルに費やした “こちら側” の人間、本物である証明だから。メタルに対する深い知識と愛情は、そのまま絶大な信頼感へと置き換わります。そしてもちろん、Phil Tougas も同様に、”こちら側” の人間です。
「僕の目標はパワー・ドゥーム・アルバムを作ることだった。速いテンポと遅いテンポを組み合わせ、ダークでスローなリフの上に高揚感のあるボーカルとシュレッディングを乗せて、独特の音楽的コントラストを生み出したかった。多くの界隈でプログレッシブ・ドゥームと見なされている MEMENTO MORI や VENI DOMINE に影響を受けたとはいえ、このアルバムを必ずしもプログレッシブ・メタル・アルバムとは考えていないよ」
こちら側の人間だからこそ、Phil は EXXÛL でメタル史に残る傑作 “Sealed into None” を生み出せたのでしょう。驚くべきことに、このアルバムは、ドゥーム・メタルとプログ・パワーという、一見仄暗く遠い場所にある音楽が見事に融合した、古めかしくも斬新で、非常に稀有な作品です。Phil が言及しているように、あの素晴らしき MEMENTO MORI はもしかすると近い場所にいたかもしれません。とはいえ、FATES WARNING の迷宮と SOLITUDE AETERNAUS の陰鬱がブラック・メタルやダンジョン・シンセを経て、これほど濃密に美しく混ざり合えるなど、誰が想像したでしょう?
「”スキャット” のアイデアは、僕に大きなインスピレーションを与えてくれたフランスのバンド、Sortilège から得たんだ。”Délire d’un fou” という曲に、まさにこのような短いパートがあり、初めてこのソロを聴いた時は信じられなかったよ!この曲は、僕にとってヘヴィ・メタルの歴史の中でも屈指の名曲となった。それだけでなく、彼らの後に続くバンドがなぜこの手法を取り入れなかったのか、不思議でならないんだよ」
そのふたつを見事に繋いだのが、Phil の “GOAT” とも評される卓越したギター・シュレッドでしょう。WORM の作品に Marty Friedman を招いたように、彼のシュラプネルやシュレッドに対する愛情もまた本物。同世代の教科書通りのギタリストたちを置き去りにする、大胆不敵でヘヴィ・メロディックな Phil の魔法は、CRIMSON GLORY の Midnight を彷彿とさせる驚異のボーカル Thomas Karam の歌声とシンクロし、ダークな深淵からメタルのスキャットをお見舞いします。SORTILEGE を聴いたことのない奴は黙ってろ!真に信頼できるのは、そんな一見さんお断りでしかし絶品のグルメを提供する通な店なのかもしれませんね。”Painkiller” や “Into the Arena” みたいな有名曲ばかり上手に弾いて再生数だけ稼いでんじゃねえ!
今回弊誌では、Phil Tougas にインタビューを行うことができました。「僕は日本のメタルも大好きだよ。SABER TIGER が大好きでね。彼らのデビュー・アルバム “Invasion” は、僕にとって歴代最高のメタル・アルバムの一つなんだ。 Anthem, Fast Draw, Loudness, Sex Machineguns から GISM, Funeral Moth, Corrupted, Viscera Infest, Anatomia, Coffins, Somnium De Lycoris。それから Galneryus, X Japan, Skywings, Versailles といった過激なパワー・メタルまで、日本のメタルはほとんど好きなんだよ」21世紀最高のメタル・アルバムのひとつ。 二度目の登場。どうぞ!!

EXXÛL “SEALED INTO NONE” : 10/10

INTERVIEW WITH PHIL TOUGAS

Q1: I interviewed you previously for First Fragment, and since then you have released works in a variety of bands! It seems that you are involved in about half of the metal released from Canada! haha! Is your creativity really never ending?

【PHIL】: I am always inspired to write music. I am not able to write every day. I must maintain a balance between writing music, performing shows, rehearsing, teaching music, running my label and spending time with friends, family, my girlfriend as well as going to shows, doing photography or playing video games. But I try to be consistent. What drives me the most is to create music that differs from what is currently being done in my province of Québec. The scene here is strong but some bands sound very similar. It is my duty to represent my province with music that offers something unique. I also do this to push my scene forward and to motivate my colleagues and friends in the scene to develop their individual sound & do the same.
This is why I also created my label TSO, which stands for The Stygian Oath. The mission statement of this label is the same as what I described above. My bands Zeicrydeus, Exxûl, Atramentus, Chthe’ilist, First Fragment & DDT are all affiliated to this label. My bandmates’ bands Dissimulator & Incandescence also put out music on this label too. As such, TSO can be considered as a collective.

Q1: 以前、FIRST FRAGMENT でインタビューさせていただきましたが、それ以来、様々なバンドで作品を発表されていますね! カナダからリリースされるメタルの約半分に関わっているような感じですね!(笑) あなたのクリエイティビティは本当に尽きることがないのでしょうか?

【PHIL】: 僕は常に音楽制作への意欲に満ち溢れているからね。もちろん、毎日作曲できるわけではないよ。作曲、ライブ活動、リハーサル、音楽指導、レーベル運営、友人や家族、恋人との時間、ライブ鑑賞、写真撮影、ビデオ・ゲームなど、様々な活動のバランスを取らなければならないと思っているからね。それでも、できる限り継続するように心がけているんだ。
僕を最も突き動かすのは、故郷ケベック州で現在行われている音楽とは一線を画す音楽を生み出すこと。この地の音楽シーンは活気に満ちているけど、似たようなサウンドのバンドも少なくないからね。だからこそ、独自の音楽で故郷ケベック州を代表することが僕の使命だと考えているんだ。また、僕の活動を通して、音楽シーンを活性化させ、仲間や友人たちがそれぞれの個性を磨き、独自のサウンドを確立していくよう、刺激を与えたいと思っているんだ。
こうした思いから、僕は “TSO”(The Stygian Oathの略)というレーベルを設立したんだ。このレーベルの理念は、まさに前述の理念と同じ。僕の所属バンドである Zeicrydeus, Exxûl, Atramentus, Chthe’ilist, First Fragment, DDTはすべてこのレーベルに所属しているんだ。僕のバンド仲間が所属する Dissimulator と Incandescence もこのレーベルから作品をリリースしているよ。だから、TSOは一種のコレクティブ(集団)とみなすことができるだろうね。

Q2: Zeicrydeus was really great too! How did you come up with the outlandish idea of lead-based black metal influenced by Manowar and Running Wild?

【PHIL】: The idea came long ago. The first song I wrote for this band was in 2018 when I was still in Eternity’s End. It didn’t fit the band so I kept the song for a heavy metal side project alongside a 2nd song. I gave up on the idea quickly however, due to the near-absence of traditional heavy metal vocalists in my province. In 2024, I decided I wanted to release these songs. I wrote more songs in the same vein and I recorded Black Metal vocals on top of them. The combination of Greek Black Metal and 80s heavy metal influences felt appropriate for me, having grown up with both. I felt I also couldn’t allow myself to repeat old ideas so I decided to put the bass at the forefront, going as far as replacing my guitar solos by bass solos. No one in black metal except Necromantia & Mortuary Drape does this. I played bass in my school orchestra for 5 years and played gigs as a bassist in my teenage years so it was great to fall in love with bass again. My last recording to feature my bass playing was on Le Dernier Crépuscule which I recorded in 2015. I did the bass on Le Dernier Crépuscule at the last minute as a necessity. On La Grande Hérésie, I could take my time and make sure to write the best bass lines and bass solos possible. I was influenced heavily by Joey Demaio of Manowar, Jens from Running Wild, Steve Harris of Iron Maiden, Flint from Cirith Ungol, Wally Voss from Joey Tafolla’s former backing band, Billy Sheehan of Mr. Big & Derek from Heir Apparent.

Q2: Zeicrydeus も本当に素晴らしい作品を出しましたね! その、MANOWAR や RUNNING WILD に影響を受けた “リード・ベース” のブラックメタルという突飛なアイデアはどうやって思いついたのですか?

【PHIL】: このアイデアはずっと前に思いついたものでね。このバンドのために最初に書いた曲は、僕がまだ Eternity’s End に所属していた2018年のことだった。Eternity’s End には合わなかったので、2曲目と一緒にヘヴィ・メタルのサイドプロジェクト用に取っておいたんだ。だけど、僕の住む地域には伝統的なヘヴィ・メタルのボーカリストがほとんどいなかったから、すぐにこのアイデアを諦めてしまったんだ。
2024年、その時の曲をリリースしたいと思い、同じような曲をさらに書き、その上にブラックメタルのボーカルを録音していったんだ。ギリシャのブラックメタルと80年代のヘヴィ・メタルの影響の組み合わせは、両方と共に育った僕にとってまさに適切だと感じたよ。また、そうした古いアイデアを繰り返すことは許されないと感じたので、ベースを前面に出すことに決め、ギター・ソロをベース・ソロに置き換えることさえしていった。ブラックメタルで Necromantia と Mortuary Drape 以外にこれをやっているバンドはいないからね。
僕は学校のオーケストラで5年間ベースを演奏し、10代の頃にはベーシストとしてライブもやっていたから、再びベースに夢中になれたのは素晴らしい経験だった。それまで、ベースを演奏した最後のレコーディングは、2015年に録音した “Le Dernier Crépuscule” だった。”Le Dernier Crépuscule” では、やむを得ず土壇場でベースを演奏したんだ。”La Grande Hérésie” では、時間をかけて最高のベース・ラインとベース・ソロを作曲することができたね。
ベーシストなら、MANOWAR の Joey Demaio、RUNNING WILD の Jens、IRON MAIDEN の Steve Harris、CILITH UNGOLの Flint、Joey Tafolla の元バックバンドの Wally Voss、Mr. BIG の Billy Sheehan 、HEIR APPARENT の Derek から大きな影響を受けたよ。

Q3: I also like WORM’s “Necropalace” very much. What kind of music is Necromtic Black/Doom for you?

【PHIL】: Necropalace combines the extreme doom metal sensibilities of Disembowelment, Evoken & Dolorian with black metal like early Samael, Limbonic Art, Emperor, Odium, Abigor, Enslaved as well as gothic and 80s heavy metal influences. It is very easy to tell what inspired this album on the surface. However, a more attentive listen will reveal that these similarities are only at surface-level; we crafted our song structures in a completely different manner than the bands that inspired us. We drew more from classical music than anything else to create a more cinematic experience with each song. There is also a big shrapnel records era influence on this album much like First Fragment. In fact, the last song on Necropalace, titled Witchmoon, features Marty Friedman who did a guitar solo duel alongside me that goes on for nearly 3 minutes. A must-listen for all Marty Friedman and Cacophony fans.

Q3: WORM の “Necropalace ” もとても気に入っています。その WORM の二つ名である、”Necromtic Black/Doom” とはどんな音楽ですか?

【PHIL】: “Necropalace” は、Disembowelment, Evoken, Dolorian のようなエクストリーム・ドゥーム・メタルの感性と、初期のSamael, Limbonic Art, Emperor, Odium, Abigor, Enslavedのようなブラック・メタル、そしてゴシックや80年代のヘヴィ・メタルの影響を融合させた作品なんだ。
表面上は、このアルバムのインスピレーション源は容易に分かるだろう。しかし、より注意深く聴けば、そうした類似点はまさに表面的なものに過ぎないことに気づくはずさ。僕たちは、影響を受けたバンドとは全く異なる方法で楽曲構成を構築していった。各楽曲でより映画的な体験を生み出すために、何よりもクラシック音楽からインスピレーションを得ているんだよ。また、First Fragment と同様に、このアルバムには Shrapnel Records 時代の大きな影響も見られるよね。実際、”Necropalace” の最後の曲 “Witchmoon” では、Marty Friedman が僕と3分近くにわたるギター・ソロのデュエルを繰り広げているよ。Marty Friedman と CACOPHONY のファンは必聴だね。

Q4: Now let’s talk about Exxul. For me, this album is one of the best metal albums of the 21st century!In fact, I have never heard a progressive doom album with such a strong guitar shred! Was it a fusion of shred and doom that you were aiming for with Exxul?

【PHIL】: Right from the start, my goal was to create a power doom album. I wanted to combine fast and slow tempos with soaring vocals & shredding over dark slow riffs to create a unique musical contrast. I don’t see this album as necessarily a progressive metal album, even if I was inspired by Memento Mori & Veni Domine who are considered as progressive doom in many circles. Our songs are long, sure, but it’s mostly because we play slow and we like to build things up. One thing is certain however : we don’t always rely on typical song structures. Blighted Deity for example, was written around the melody that occurs at the start of the song. This melody shows up again in the three choruses, but in a different key. It also shows up again in the 2nd solo and in the first faster-paced riff of the song midway through, then one last time at the very end of the song. The song is centered around a central theme rather than a typical compact structure. However, this was not done to appear “progressive”. This type of songwriting is necessary to effectively fuse power and doom. The only way to make “power doom” that maintains cohesion through multiple tempo changes is to use recurring motifs that sound as good when played fast or slow. These changes must be given a proper build up, too. Hence the long songs. The same process is used in “Wall Of Endless Darkness. The super slow doom riff at the beginning of the song comes back as a fast galloping power metal riff during the 2nd half of the song.
There is also a strong black metal influence on this album from the synth sounds & use of timpani and harsher rhythm guitar tones to the use of the chromatic median in our chord sequences. As a result, Sealed Into None is darker than the average epic doom album..

Q4: では、EXXÛL について話しましょう。 私にとって、このアルバムは21世紀最高のメタル・アルバムのひとつです!実際、これほどギター・シュレッドの強いプログレッシブ・ドゥームの作品は聴いたことがありません! EXXUL で目指していたのは、シュレッドとドゥームの融合だったのですか?

【PHIL】: 最初から、僕の目標はパワー・ドゥーム・アルバムを作ることだった。速いテンポと遅いテンポを組み合わせ、ダークでスローなリフの上に高揚感のあるボーカルとシュレッディングを乗せて、独特の音楽的コントラストを生み出したかった。多くの界隈でプログレッシブ・ドゥームと見なされている MEMENTO MORI や VENI DOMINE に影響を受けたとはいえ、このアルバムを必ずしもプログレッシブ・メタル・アルバムとは考えていないよ。確かに僕たちの曲は長いけれど、それは主に僕たちがゆっくりと演奏し、物事を積み上げていくのが好きだからなんだ。それでも、一つ確かなことがある。それは、僕たちが常に典型的な曲の構成に頼っているわけではないということ。
例えば、”Blighted Deity” は、曲の冒頭に出てくるメロディーを中心に作曲されている。このメロディーは3つのコーラスで再び登場するけど、キーが異なるんだ。また、2番目のソロと、曲の中盤にある最初の速いテンポのリフにも再び登場し、最後の最後にもう一度登場する。この曲は、典型的なコンパクトな構成ではなく、中心となるテーマを中心に構成されているんだよ。しかし、これは決して “プログレッシブ” に見せるためではない。パワーとドゥームを効果的に融合させるには、このような作曲スタイルが不可欠なんだ。テンポの変化を幾度も繰り返しても一貫性を保つ “パワー・ドゥーム” を作る唯一の方法は、速くても遅くても同じように響く反復的なモチーフを用いることだからね。そうした変化には、適切な “盛り上げ” も必要だ。そのため、曲は長尺になってしまうんだ。
“Wall Of Endless Darkness” でも同様の手法が用いられているよ。曲の冒頭の超スローなドゥーム・リフは、後半で疾走感あふれるパワー・メタル・リフへと変化するからね。また、このアルバムにはブラック・メタルの影響も強く見られるんだ。シンセサイザーの音色、ティンパニの使用、より荒々しいリズム・ギターの音色、そしてコード進行における半音階のメディアンの使用などがその例だよ。結果として、”Sealed Into None” は一般的なエピック・ドゥーム・アルバムよりもダークな作品となっていると思う。

Q5: What’s great about you is that you never forget the influence of legendary and underrated bands while adding new challenges and modern colors to any band. For example, First Fragment would be Elegy, Zeicrydeus would be Manowar or Running Wild, Worm would be Crimson Glory, and Exxul would be Fates Warning, Warlord, or Solitude Aeternus…Is the fusion of the past and the present your life’s work?

【PHIL】: Yes, that’s a good way to put this. I proudly wear my influences on my sleeves and create new sounds all at once. The same could be said for all great bands of the past, however. Without Yngwie, Elegy wouldn’t exist. Without Hendrix, Uli Jon Roth and Ritchie Blackmore, Yngwie wouldn’t exist. Without Judas Priest, Running Wild wouldn’t exist or even have their name. Without Rush, Fates Warning wouldn’t exist. Without Black Sabbath, Solitude Aeturnus and all metal bands wouldn’t exist. And so on.

Q5: あなたの素晴らしいところは、伝説的でありながら過小評価されているバンドの影響を決して忘れず、同時に新たな挑戦と現代的な色彩を加えている点です。
例えば、First Fragment は Elegy、Zeicrydeus は Manowar や Running Wild、Worm は Crimson Glory、Exxul は Fates Warning、Warlord、あるいは Solitude Aeternus といったところでしょうか。過去と現在を融合させることが、あなたのライフワークなのでしょうか?

【PHIL】: そうだね、それは良い言い方だね。僕は自分の影響を受けたものを堂々と表に出しつつ、同時に新しいサウンドを生み出していると思う。でもそれって、過去の偉大なバンドすべてに言えることでしょ?
Yngwie がいなければ、Elegy は存在しなかったでしょう。Jimi Hendrix, Uli Roth, Richie Blackmore がいなければ、その Yngwie は存在しなかったでしょう。JUDAS PRIEST がいなければ、RUNNING WILD は存在せず、その名前すらなかったでしょう。RUSH がいなければ、FATES WARNING は存在しなかったでしょう。BLACK SABBATH がいなければ、SOLITUDE AETERNAUS はもちろん、すべてのメタル・バンドは存在しなかったでしょう。そんな例は、他にもたくさんあるよね。

Q6: One of the most wonderful moments in Exxul is when the vocals and guitar are in sync! Not many metal bands try something like this with “Scat”, where did you get the inspiration?

【PHIL】: I got this idea from Sortilège, a french band that has greatly inspired me. The song “Délire d’un fou” has a short moment like this and the first time I heard this solo, I couldn’t believe it! This song marks probably one of the greatest moments in heavy metal history in my book. Not only that, but I couldn’t believe more bands that came after them didn’t try this either.
When I met Thomas, our vocalist, I asked him what he thought of Sortilège, as his vocals reminded me of theirs. To my surprise, he hadn’t heard them before! Because Thomas’s range is so wide, and because we do not have a 2nd guitarist to harmonize my solos, I decided to ask him to harmonize my solos. It paid off, as I think this is one of the most unique aspects of Exxûl.

Q6: EXXÛL の最も素晴らしい瞬間のひとつは、”スキャット” のようにボーカルとギターがシンクロしている時です!このような試みを行うメタル・バンドはあまり多くありませんが、インスピレーションはどこから得たのですか?

【PHIL】: このアイデアは、僕に大きなインスピレーションを与えてくれたフランスのバンド、Sortilège から得たんだ。”Délire d’un fou” という曲に、まさにこのような短いパートがあり、初めてこのソロを聴いた時は信じられなかったよ!この曲は、僕にとってヘヴィ・メタルの歴史の中でも屈指の名曲となった。それだけでなく、彼らの後に続くバンドがなぜこの手法を取り入れなかったのか、不思議でならないんだよ。
ボーカルの Thomas に会った時、彼の歌声が Sortilège を彷彿とさせたので、Sortilègeについてどう思うか尋ねてみたんだ。すると驚いたことに、彼は Sortilège を聴いたことがなかったんだよ!Thomas の音域が非常に広いこと、そして僕のソロにハーモニーをつけてくれるセカンド・ギタリストがいないことを考えると、彼の歌でソロのハーモニーをつけることがしっくりきたんだよね。これが大成功で、EXXÛL の最もユニークな特徴の一つになったと思っているよ。

Q7: Dream Theater and Gojira began to win Grammy awards. In an age when listeners’ attention spans are so short and instant content is so easily consumed, why is music like your’s that is complex, long, and requires many practice beginning to be reevaluated?

【PHIL】: You just reminded me that I am so out of touch with mainstream metal bands of the current age. I don’t think I’ve even listened to one single Gojira song all the way through. I am aware we don’t fit the current industry’s norms, especially here in Québec, but I honestly don’t really think about it. Our songs ended up being long simply because we do like to play slow.

Q7: DREAM THEATER や GOJIRA がグラミー賞を受賞し始めた時代。
リスナーの集中力が短く、コンテンツが簡単に消費される現代において、複雑で長く、多くの練習を必要とする、あなたも含めたそうした音楽が再評価され始めているのはなぜでしょうか?

【PHIL】: 今改めて気づかされたけど、僕は今の主流メタル・バンドの動向には全く疎い。GOJIRA の曲を最初から最後まで聴いたことすら一度もないと思う。特にここケベックでは、僕たちが今の音楽業界の常識に合わないことは自覚しているけど、正直あまり気にしていない。僕たちの曲が長くなるのは、単純にゆっくり演奏するのが好きだからなんだ。

Q8: I feel that there now exists an important role for metal fantasy as an escape from the dark world. I believe that Japanese anime and video games, and music also play such a role. You are really knowledgeable about metal and music, so much, but is there any influence from Japanese culture and music?

【PHIL】: I am a big fan of Fromsoft’s works. Their video games are very fun and immersive, but more importantly, they have taught me about perseverance & discipline in a new, interesting way. These games are perhaps a reflection of a man that wanted to convey that it is possible to overcome seemingly impossible odds imposed by society.
Of course, I am a big fan of Japanese metal. I love Saber Tiger. Their debut album invasion is one of my all-time favorite metal albums. I like most Japan metal, from Anthem, Fast Draw, Loudness, Sex Machineguns to GISM, Funeral Moth, Corrupted, Viscera Infest, Anatomia, Coffins, Somnium De Lycoris and more over the top power metal like Galneryus, X Japan, Skywings & Versailles
My friends in Devilmaster also introduced me to Japanese hardcore punk. My conclusion is that Japanese punk bands make British & American punk bands sound like The Beach Boys.

Q8: メタル・ファンタジーは、暗い世界からの逃避手段として、今や重要な役割を担っていると感じています。そして、日本のアニメやゲーム、音楽も同様の役割を担っていると思います。あなたはメタルや音楽について非常に詳しいですが、日本の文化や音楽からの影響はありますか?

【PHIL】: 僕はフロム・ソフトウェアの作品の大ファンなんだ。彼らのゲームはとても楽しく没入感があるんだけど、それ以上に、忍耐力と規律について、斬新で興味深い方法で教えてくれるよね。そうしたゲームは、社会が課す一見不可能な困難、それを乗り越えることが可能だと伝えようとした誰かの意思を反映しているのかもしれないね。
もちろん、僕は日本のメタルも大好きだよ。SABER TIGER が大好きでね。彼らのデビュー・アルバム “Invasion” は、僕にとって歴代最高のメタル・アルバムの一つなんだ。 Anthem, Fast Draw, Loudness, Sex Machineguns から GISM, Funeral Moth, Corrupted, Viscera Infest, Anatomia, Coffins, Somnium De Lycoris。それから Galneryus, X Japan, Skywings, Versailles といった過激なパワー・メタルまで、日本のメタルはほとんど好きなんだよ。
Devil Master の友人たちも、僕に日本のハードコア・パンクを紹介してくれるんだ。僕の結論は、日本のパンク・バンドは、イギリスやアメリカのパンク・バンドをビーチ・ボーイズのように聞こえさせてくれるということだね。

PHIL’S PLAYLIST !!

I really recommend checking the latest Cryptic Shift album and the last Hexenbrett album. Otherwise, the recent works from Demon Bitch, Void (Lafayette), Fortress and the upcoming Concilium album are all very good releases. I also recommend keeping an eye on my fellow Québécois compatriots Noor & Bloodstone who will put out new albums soon.

Cryptic Shift の最新アルバムと Hexenbrett の最新アルバムはぜひチェックしてほしいね。その他にも、Demon Bitch, Void (Lafayette), Fortress の最近の作品や、近日発売予定の Concilium のアルバムも素晴らしいリリースだよ。また、同じケベック出身の Noor & Bloodstone も近々ニューアルバムをリリース予定なので、ぜひ注目してほしいな!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SOEN : RELIANCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARTIN LOPEZ OF SOEN !!

“Progressive music should evolve, not just technically, but emotionally otherwise it stops being progressive and very often complexity can be “in the way” of emotion.”

DISC REVIEW “RELIANCE”

「誰かとの比較は避けられないし、僕たちはそれをネガティブなものとして捉えてはいないよ。”Reliance“ はより直接的で拡大した音楽なので、アリーナ・ロックやメタルとの関連性が自然と強く出てくるよね。だけど、僕たちの意図は特定のバンドに似せようとしたのではなく、明確かつ誠実に音楽を伝えたいというものだった。もし楽曲が人々の心に深く響くなら、それは僕たちにとって大きな喜びだ。だけど、それが目的で曲作りをしているわけではないんだよ」
2010年、かつて OPETH と AMON AMARTH というビッグ・バンドに所属していた名ドラマー Martin Lopez は、自身の新しいバンドを立ち上げました。SOEN と名付けられたこのバンドは、非常に優れたミュージシャン集団 (あの Steve DiGiorgio も在籍) で、Lopez はそのサウンドを “メロディアスでヘヴィ、複雑で、他のどのサウンドとも全く異なる” と表現していました。しかし、そんな彼の意図とは裏腹に、SOEN のサウンドは常に誰かと比較される運命にありました。
初期のアルバム “Cognitive” や “Tellurian” では TOOL と比較されることが多かったものの、SOEN は明らかにクローン以上の存在であり、Lopez の出自である OPETH や KATATONIA のプログ・メタル的な血肉にナイーブで心に迫るメロディを加えて見事な化学反応を起こしていました。近年は初期のアルバムのようなオルタナティブな複雑さ、プログレッシブな紆余曲折は減退しましたが、一方でメタリック & グルーヴィーでありながらアトモスフェリックという SOEN 独自の世界観は伸張。重要なのは、そこにいつも、心を震わせるメロディの泉が存在すること。
そうして、歌の力が戻りつつあるメタル世界で、SOEN は堂々たるプログレッシブ・アリーナ・メタルの実現へと舵を切りました。DISTURBED や NICKELBACK のグルーヴィーでシンガロングを誘うコーラスと、プログレッシブでナイーブな感情の共存。Joel Ekelof の歌声は、脂が乗り切ってまさに今が旬。
「依存は心地よいものだけど、同時に危険なものでもある。このアルバムは、答えを与えることではなく、僕たちが何に、そしてなぜ依存するのかを振り返ることを促しているよ。幸せを探し求めるとき、僕らは依存を恐れながらも受け入れなければならないだろう。ただ、何に頼るのかについては、非常に慎重にならなければならないと思う」
そんな両極を抱きしめたアルバムで SOEN がテーマとしたのは “Reliance” “依存”。SNS の発達により、私たちは見知らぬ誰かと共感しながら、何かの “推し” にかつてより深く依存するようになりました。もちろん、辛い現実を生きていく中で、幸福感や満たされた感覚を得るため好きなものに依存することは、ある意味でライフハックなのかもしれません。しかし、盲目的に “推し” に依存し、”推し” を全肯定することで、自己という最も重要な存在が消えてしまってはいないだろうか? SOEN は盲信的な依存が当たり前となった世界で、依存を恐れ、自分の頭で慎重に考慮することを促しています。
“Primal” では “無意識にスマホをスクロールしている” とか “SNSは暴力的なポルノ” といった表現が使われ、”Drifter” では “アルゴリズムを操る奴らに振り回されるな” といった辛辣な言葉が飛び出します。そもそも、あなたが依存しているのは “推し” なのでしょうか?ひょっとすると、あなたが依存しているのは “推し” ではなく、SNS そのものなのかもしれません。もしそうだとしたら、あなたが孤独を感じ、誰かと少しでも共感したいだけなのだとしたら、SOEN のアリーナ・メタルで共に歌えばいい。もちろん、進化した感情でプログレッシブに思考を巡らせながら。
今回弊誌では、Martin Lopez にインタビューを行うことができました。「音楽のトレンドは移り変わるけど、感情は残り続ける。僕たちが始めた頃は、たしかにテクニックと複雑さが非常に際立っていて、それは刺激的なことだったよね。でも今は、アトモスフィア、ダイナミクス、そして傷つきやすさにもっと居場所があって、僕たちはそれを歓迎しているんだよ。プログレッシブ・ミュージックは、テクニックだけでなく、感情面でも進化するべきなんだ。そうでなければ、複雑さが感情の “邪魔” になってしまう。よくあることだけど、それはもうプログレッシブな音楽とは呼べないからね」 3度目の登場。どうぞ!!

SOEN “RELIANCE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VIANOVA : HIT IT!】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEX KERSKI OF VIANOVA !!

“I mean our goal is to make something that is not fully Metal, so if that’s an issue with someone i guess they can just listen to something else. It’s totally fine to have different preferences.”

DISC REVIEW “HIT IT!”

「僕らはこのアルバムを宣伝するためにソーシャルメディアをたくさん使ってきた。 個人的には、これからのバンドがTiktokやinstagramを使って自分たちを売り込むのをたくさん見てきたし、そんなに新しいことではないんだ。BRING ME THE HORIZON や SUICIDE SILENCE のようなメタルコア・バンドの多くが、昔myspaceでビッグになったことを考えればね。 正直なところ、それらはツールでしかなくて、親和性があるかどうかは、それをどう使いたいかによるような気がする。僕らはある程度力になっていると感じるけどね。自分たちでプロモをやることで、バンド外部の人に頼らなくてすむから。昔、それで嫌な思いをしたからね。僕らは自分たちの音楽が良くて、それをライブで演奏できれば、それでいいんだ」
ソーシャルメディア時代において、簡潔さと大げさな表現は注目を集める上で最も重要な手段です。例えば TikTokで人気を博したいなら、気まぐれなユーザーの集中力の持続時間を捉えるために、アルゴリズムを巧みに操れるかどうかが成功の鍵となります。ヘヴィ・メタルは確実に、リスナーのアテンション・タイムを捉えるだけの表現力がありながら、やっと近年、SNS を自在に操れるようになったようです。
デビューアルバムのリリース時点でSpotifyの月間リスナー数18万6000人を誇る VIANOVA は、アルゴリズムの攻略法を熟知しているバンドと言えるでしょう。ドイツ出身の4人組は、ペレストロイカ時代のソ連のディスコにいるかのような恰好で注目を集め、SNS には彼らのミーム動画が溢れかえっています。しかしもちろん、バイラルを得られるのはその確かな才能があってこそ。
「”Hit It!” の場合、可能なかぎり自然な感じで融合できるように努めたんだ。 もし僕たちの多様性が本物だと思うなら、君や他の人たちは、僕たちが取り入れているジャンルに対する純粋な評価と興奮を感じ取ることができるのかもしれないね。 よく比較されるTWELVE FOOT NINJA のようなバンドも、自分たちが取り入れている非メタル音楽を深く理解し、愛していると思うけど、彼らの曲では時にそうした要素が水と油のように構成全体でより分離しているため、もう少し切り離されているように感じるのかもしれないね」
VIANOVA のデビュー・アルバムとなる “Hit It!” は、ファンク、ヒップホップ、ソウル、ハードコア、ハイパーポップといったあまりにも多様なジャンルを融合させ、Djent なグルーヴがそのサウンドを支えています。熱狂的なエネルギー、ブルーノ・マーズ的ポップなセンス、ポスト・ハードコアのエッジ、そしてジャンルのメルティング・ポットが到達したのは、PERIPHERY や CLOSURE IN MOSCOW が統合失調症に冒されたかのような混沌。しかしその混沌は常に変化し続け、驚くほど精巧に自然に作られていて、それぞれのジャンルがあまりにも真に迫っています。
「僕らは伝統を守ろうとしているわけではないので、ジャンルの門番は気にしていないよ。 僕らのゴールはメタルっぽくないものを作ることなんだから、それが気になる人は他の曲を聴けばいいと思う。 曲の方向性に腹を立てる人がいるのは、僕にとっては奇妙なことなんだ。 今は素晴らしいバンドがたくさんいるから、非建設的なコメントを打つよりも、もっとクラシックなメタルバンドを探した方がきっと時間を有効に使えるような気がするけど、人それぞれなんだろうね」
メタルと非メタル。彼らの核融合が真に迫っているのは、楽曲の中でアイデアから次のアイデアへと飛び移るのではなく、ジャンルの実験を一曲ずつ丁寧に行っていく傾向があるからかもしれませんね。だからこそ、アルゴリズムで捉えたミーム的な奇抜さよりも、熟考された対比が際立っていくのです。こうした瞬間こそが VIANOVA の真骨頂であり、大胆にメタルを壊し、大胆にメタルを再構築していくのでしょう。メタルには TikTok で羽ばたく瞬間的な表現力がありますが、もちろん、インスタントなアテンション・スパンには収まりきらない魅力もあるのですから。
今回弊誌では、ボーカル Alexander Kerski にインタビューを行うことができました。「僕らのベーシスト、Raoul はクラシック・プログの大ファンなんだ。 OPETH, PAIN OF SALVATION, BETWEEN THE BURIED AND ME, PROTEST THE HERO をよく聴いていたよ」 どうぞ!!

VIANOVA “HIT IT!” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【KARNIVOOL : IN VERSES】


COVER STORY : KARNIVOOL “IN VERSES”

“I do hope this album can help people in the way it has helped me, and also that it may inspire and encourage some people reading this, especially those entering their mid to later years to finish that project that they’ve wanted to finish for a while.”

IN VERSES

「目的を遂げる人もいる。遂げられない人もいる。何とかやっていける人もいる…やろうとしない人もいる」
これは、伝説的なオーストラリアのプログレッシブ・メタル・バンド、KARNIVOOL 4枚目のアルバム “In Verses” のコーラスの一部です。数々の賞を受賞したアルバム “Asymmetry” 以来、バンドは長き停滞状態に陥っていました。残ったファンは、滅多にないツアーと、時折の謎めいたソーシャルメディアの投稿でなんとか生き延びてきました。しかし、ついにその待ち時間は終わりました。
13年の時を超えたアルバム “In Verses” は、最高のプログレッシブ・メタル・バンドの一つである KARNIVOOL が時とともに強くなることをリスナーに粘り強く、そして辛抱強く思い出させてくれる作品です。リフはよりラウドに、リズムはより奔放に。しかし、このアルバムを最高傑作としているのは、メロディーとフックです。長年に渡って最高のモダン・プログ作品の一つとして記憶されるに違いないこのアルバムは、長い間オーブンの中で温められてきました。キッチンに常に料理人がいたわけではないにしても。
「まあ、すべての始まりと終わりをここで説明していたら永遠になってしまうけど、本当に長かった。実際、長すぎたよ。どのアーティストにも、ここまで長い時間をかけるのはお勧めしないね!過去10年ほど、新作に取り組んでいると何度か公言してきたはずにしても。以前のアルバムはどれも、いわゆる “オリンピック周期” の4年に沿っていたので、アルバム “Asymmetry” のリリース後、2014年初頭に4枚目のアルバムの制作に着手し、最初はほぼ同じ期間でのリリースを目指していたんだ。最初の試みは2016年半ば、プロデューサーの Forrester が西海岸に来て、アルバムの半分、あるいはEPの拡張版くらいの感じでレコーディングを始めた時だったね。最終的に “In Verses” に収録された曲のほとんどは、その時点ですでに制作中だった。今にして思えば、かなり生産的で、あのセッションのおかげで曲が完成に近づいたんだ。でも、まだ準備が整っていなかったのは明らかだった。
その後の数年間は、本当に軌道に乗ろうと努力する中で、厳しい日々だった。仕事は散発的で、たとえ進歩があったとしても、それは断片的で、試練の時期、個人的な葛藤、経済的な問題、そしてバンド内の勢いと結束力の深刻な欠如に満ちていたね。何かが芽生えたとしても、すぐに消えてしまうような感じ。この時期は僕にとって個人的にも大変な時期で、砂漠へ移住することにしたんだ。これは、健康と幸福を最優先にし、自分自身を癒し、再び自分の足で立つ機会を得るという点で、僕にとって大きな決断だった。この間には実に多くのことがあり、一段落にまとめるのは不可能だけど、これまでの道のり、あらゆる試練と苦難、失敗した試み、成功、そして僕たちの人生の年月はすべて価値があったと言えるだろう。それらすべての時間と経験が、アルバムに収録された曲という最終的な形へと凝縮されていった。今振り返ってみると、曲が息を吹き込み、熟成していくには、時間と空間が必要だったのだと思うんだ」

バンドの中心人物、ギタリスト Drew Goddard は紆余曲折を経たため、勢いという要素が逆に厄介な存在となったと感じていました。皮肉なことに、勢いを排除した “In Verses” はだからこそ素晴らしく、そして完璧に練られた構成となっています。無理強いするよりも、自分たちのプロセスを信頼していたからこそ、まとまりが生まれたのです。
「方向性を事前に決めることは決してないんだ。アルバムのテーマは直感的な創作上の決断からゆっくりと、しかも長い時間をかけて浮かび上がってくるイメージのようなものさ。だから、常にプロセスを信頼するという要素があり、音の冒険心とエネルギーが僕たちの創作プロセスを突き動かし、アルバムごとに共通のテーマを提供している。でも、僕たちは同じことを繰り返すのは好きじゃない。僕自身、自分が作る音楽の中に新しいサウンドや感覚を見つけ、それがこうして生まれたことに驚きたいという欲求に突き動かされている。振り返ってみると、”In Verses” はある意味、新境地を開拓したように聞こえる一方で、過去3枚のアルバムの要素も含まれており、バンドが共に歩んできた時間をより強固なものにしている。まるで一つの章の終わりと新たな章の始まりのようにね」
アルバムが形を成していくうち、ひとつのテーマが浮かび上がりました。それはまさに、13年という長い月日を経ても彼らが貫き通したもの。諦めないこと。挑戦を続けること。
「諦めないことが鍵だと思う!僕らはどのアルバムでもすごく挑戦的だけど、今回のアルバムはこれまでで最も挑戦的だった。人生は挑戦に満ちている。僕にとって KARNIVOOL の音楽は、逆境や困難を乗り越えて勝利を収めるためのサウンドトラックのようなもの。暗いけれど、一筋の光が僕たちを前に導いてくれる。だから、アルバム制作のプロセス、そこに込められた感情を作品に反映するのは、本当に自然な流れだった。僕にとっての報われた瞬間は、2023年初頭のヨーロッパツアーの頃。心身ともに健康で、ツアー前よりもずっと良くなり、バンドの雰囲気もポジティブになった。みんなで演奏し、ツアーを楽しみ、観客からのサポートと反応を喜べるようになった。8年間ヨーロッパツアーをしていなかった後、観客からこれほどの興奮と喜びを受け取ったことは、前進し続ける大きな原動力となったんだ。その気持ちが雪だるま式に大きくなり、そこから勢いがついたと感じているよ」

オーストラリアのパースから現れたことも、彼らの個性を強くしています。パースは地球上で最も孤立した大都市の一つであり、それが KARNIVOOL を世界的な音楽業界のトレンド追及のプレッシャーから守ってきたと言えるのかもしれません。
「初期の頃は、それが間違いなく役に立った。本当に未熟な中でも、自分たちの技術を磨くことができた。下手くそだったけど、世に出なくても手探りで自分たちの “もの” を見つけることができた。戸棚の下に眠って埃をかぶっている素材がたくさんあるんだ」
Goddard は活動休止期間中、この孤立をさらに一歩進め、自己反省のために砂漠へと移住しました。
「しばらくの間、人が少ない田舎で違う意味で自分がダメなことを許したんだ。でも、孤独と孤立の間には微妙な境界線があるんだよな。僕にとって最も孤独な瞬間は、人混みの中にいた時だったような気がするよ」
その “砂漠での時間” は、広大で同時に深く個人的な感覚を持つアルバム “In Verses” のDNAに深く影響を及ぼしました。現在彼らの影響は、依然として多岐にわたります。そもそもは MESHUGGAH, TOOL, SOUNDGARDEN のホーリー・トリニティを基盤としていましたが、新作はより意外な分野から影響を受けています。モロッコ音楽の微分音的変化、J Dillaの “酔ってよろめく” ヒップホップのリズム、そしてボイジャー探査機のゴールデン・レコードまで驚くべきカラフルなインスピレーションたち。
「ボイジャーのレコードでネイティブ・アメリカンの歌を聴いて、ゾクゾクしたんだ。強烈なダイナミクスの変化、何もない状態から巨大なものへと変化し、また元に戻る。僕たちは常に、これまで聴いたことのない音程やリズムを探しているんだ」

彼らのアルバムの中で最も精緻なアレンジメントを誇る “In Verses” ですが、最も長く聴き続けられる3曲は、作品の中間部にあります。もちろん、”Ghost” と “Drone” はプログではほとんど見られないような即時性を示し、”Opal” はアルバムで最も心を揺さぶるメロディーを収録しています。しかし、”In Verses” が輝かしい作品から特別な作品へと変貌を遂げるのは、 “Animation” から始まる部分であり、KARNIVOOL があらゆるツールを巧みに使いこなしその技巧を際立たせる、スリルとサスペンスに満ちたサウンドはまさに唯一無二でしょう。
「”In Verses” の中間部は、まさに今のバンドの特徴を体現している。”Animation”, “Conversations”, “ReAnimation” は、どれも同じ音楽モチーフ、いわば同じ音楽文化から生まれたと言えるだろう。それぞれ全く異なる独立した曲でありながら、共通のテーマを共有しているんだ。同様に、”Remote Self Control” は “Aozora” の制作から生まれた曲で、他の曲から曲が生まれた例も数多くある。こうした例は、長い時間をかけて書き上げられたアルバムに、統一感を与え、ひとつに繋がっていく。そうしたディテールの追求こそがこのアルバムの鍵だ。完成してもまだ突き詰めたい、放棄したくない気持ちがあるほどにね」
“Themata” が荒削りなオルタナ・メタルの導入部で、”Sound Awake” が広がりのあるメロディアスな傑作だとすれば、”Asymmetry” は難解で不協和音に満ちた作品でした。そして、このアルバムは音色の限界を押し広げ、しかしリスナーを “Asymmetry” の “煉獄” へ置き去りにはしません。
「 “The Refusal” が大好きなんだ。”Asymmetry” で最も耳障りな曲の一つ。解決しないキーで歌われている。最後の歌詞は “これは不可能だ” で、ただ奇妙な後味を残すだけだ。”In Verses” は、色々な意味でそれに対する反応なんだ。有機的な進行ではあるけど、僕らはもう少し何かを探求している…ストレートとは言いたくないけど、もっとハーモニーがあって、もっと安定したメロディーがある」

リード・シングル “Drone” はその言葉を裏付けています。推進力のある分厚いベースラインと、高らかに響くボーカルパフォーマンスが曲を牽引しますが、興味深いことに、この曲の起源は完全に機械的なものでした。
「タイトルは “Drone Commander” という機器に由来しているんだ。信号発生器なんだよ。それが生み出したドローン・サウンドが、この曲全体のベースになった。僕らはその機械にあわせて曲を書いたんだ。このトラックは、広大な西オーストラリアの砂漠の重みを響かせ、故郷ならではの壮大なロックリフに支えられている。それは、反映であり、再生でもある。”Opal” の”死がそばにあるかのように、私はじっと静かになるだろう” という歌詞も、ずっと心に留めていた。何かがひらめいて、最終的な歌詞にも反映されたんだ」
“Opal” の一部は、Goddard が KARNIVOOL と曲作りを始めた最初期に遡ります。
「中間とエンディングのリフは、実は “Themata” 時代に実家のパソコンで初めて録音した曲なんだ。そして20年後、収まる場所を見つけたんだ。より現代的にアレンジしてね。”You’ve been holding up…” で始まるヴァースは、”Asymmetry” 収録の “Aeons” からカットされた部分。曲全体が、今まで経験したことのない形でひとつにまとまった。昔からバラバラだったアイデアが、突然、ひとつの場所に収まったんだよね」
そして、ハープまで使用した深く心に響くこの曲は、バグパイプも含め、息を呑むようなクロージング “Salva” へと繋がっていきます。
「僕たちは今でもアルバムという音楽形態の価値を信じている。アルバムを最初から最後まで一つの旅として聴いてもらえれば、この曲の真髄はもっと伝わってくると思うんだ。KARNIVOOL の旅路を共に歩んでくれて、それを僕たちと共有してくれた人たちにとって、最後の2曲、”Opal” と “Salva” が何かを与えてくれるといいな… 僕自身、解放感、ある種のカタルシスを得られたからね」

“Drone” のアートワークは、灰色と白の海に浮かぶ荒涼とし傾いた船を描いていて、あるファンが “KARNIVOOL が最後にアルバムをリリースしたときは、あの船の下に水があった” とコメントしたジョークを彼らは気に入っています。つまり、”In Verses” の音楽やリリックは、そのアートワークから想像されるほど陰鬱なものではないと彼らは示唆しています。
「常に音楽主導なんだ。歌詞は音符への反応となる。だから何よりもまず、言葉の響きが重要だ。Ian は非常に即興的で、”Conversations” のような曲でそれは顕著だ。数テイクを録ると、突然彼の表情が変わる。”意味不明な言葉” を声に出して、それがやがて意味へと結晶化していく。僕らにとって、声はまず楽器であり、物語を語るのは次のステップなんだ。音楽にどう合うかが重要で、歌詞の意味は、言葉の響きによって決まることもある。発明というより発見だ。僕らは岩の中から歌を掘り出しているんだ」
THE BEATLES と MESHUGGAH は彼らのお気に入り二大バンドですが、制作のスピードは大きく違います。
「僕らの時代の4年は、ビートルズの世界では1週間くらいだろう (笑)。彼らがどうやってやったのか、わからないよ。ビートルズは MESHUGGAH と並んで僕のお気に入りのバンドだし、僕らの中でそのバランスは取れている。でも、彼らはあらゆるルールの例外なんだ」
彼らは困難を乗り越え、その努力に意味を持たせようとする勇気をリスナーに感じてほしいと願っています。そして、人生のピークを迎えた人、あるいはピークを越えた人に向けて、自らの音楽と姿勢を通して特別なメッセージを送っているのです。
「このアルバムが、誰かの力になればと願っている。僕自身を支えてくれたようにね。そして、特に中高年の人たちが、人生でずっとやりたかった作品なり、プロジェクトなりを成し遂げるきっかけになればと願っているんだ。僕はいつもこのことを考えていてね。時には辛い努力を経て、日の目を見るべき素晴らしい芸術。そんな芸術的な宝物が、世界中にたくさん眠っているはずなんだ。中高年になり、時間やお金、仕事や家族のことでアートを完成させることを諦めかけている人も多いだろう。だけどそれらは世界に残され、共有され、聞かれるに値するものであり、ハードディスクの中に永遠に埋もれてしまうべきではないんだよ。だから諦めずに、必要な助けを求め、ただ進み続けてほしい」

参考文献: NEW NOISE MAG :INTERVIEW: KARNIVOOL GUITARIST DREW GODDARD TALKS ‘IN VERSES’

MGM :KARNIVOOL: THE WAIT IS OVER – INSIDE THE 12-YEAR JOURNEY TO ‘IN VERSES’

THE MUSIC AU:Karnivool Detail The Epic Grind Behind ‘In Verses’: ‘Everyone’s Still Finding Really Beautiful Stuff On This Record’

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【PARADISE LOST : ASCENSION】 JAPAN TOUR 26′


COVER STORY : PARADISE LOST “ASCENSION”

“Ironically, miserable music is always the most fun to listen to and the most fun to write.”

ASCENSION

「雨が好きなんだ」
Nick Holmesは、惨めな気分でいる方が楽な場合が多いそうです。そして、PARADISE LOST の長いキャリアを少しでも追ってきた人なら、これは自明の理だといえます。1988年にヨークシャーのハリファックスで結成され、デスメタルとスラッジ、ドゥームの暗黒が融合した1990年のデビューアルバム “Lost Paradise” 、そしてゴシック・メタルの名となり、定義付けとなった続編 “Gothic” で世界にその名を轟かせて以来、彼らはつねに暗い雲に覆われ続けています。
彼らの最新作 “Ascension” は、だからこそ当然のように、まさにそんな、いつも通りの暗雲メタルです。つまり、PARADISE LOST は長年にわたりデスメタル、シンセ、アリーナ・ロック、スラッジ、ドゥーム、エレクトロニカなど、さまざまなジャンルを巧みに操ってきましたが、彼らの中には常にダークな芯が宿っていたのです。
「ヨークシャーがなぜ悲惨なメタルの温床になっているのかはわからない。 暗い、悪魔のような工場や天候と関係があるのかもしれない。 スウェーデンも同じだ。 スウェーデンはとてもダークなバンドを何組か育てたが、あそこは天気もよく似ているんだ!
それに、狭い街だから、僕の母の寝室の窓から MY DYING BRIDE の Aaron Stainthorpe の家が見えたくらいでね」
言い換えれば、そうした暗い気候と地理が、彼らをメタル世界において特別な存在に押し上げたのです。ヨークシャーのアンダーグラウンド・レーベル、ピースヴィルが擁する “ドゥーム・ビッグスリー” の一つとして、MY DYING BRIDE、ANATHEMAと共に彼らは、悲しみに浸り、それを鍛鉄のような重厚さで表現する、実に英国的で異端で革新的なサウンドの構築に大きく貢献してきました。
晴れも嫌い。王道も嫌い。レジリエンス、反発力といえば聞こえはよいですが、Nick Holmes は天性の天邪鬼なのかもしれません。
「ヘヴィ・メタルが好きになったのは、メタルがみんなに嫌われていたからだ。 いつも嫌われていた。 反抗的な感じがした。町中でメタルが好きな奴は2人くらいしかいなかったかもしれない。それが好きだった。 自分の小さなチームを持っているような感じだった。僕らが考えていたのはそれだけだったんだ。目が覚めて、寝る瞬間まで。メタルとデスメタルのことしか考えてなかったんだ!」

その小さなチームは活動を続ける中で、Ville Valo のようなダークな音楽の実践者たちに多大な影響を与えるようになり、CRADLE OF FILTH, OPETH, GREEN LUNG, GATECREEPER など、様々に多くのバンドが PARADISE LOST の悲しみや暗がりにインスピレーションを見出してきたのです。
“Ascension” でその陰鬱さは、かつてよりも年老いた、今の Nick Holmes によって表現されています。
「人生、不幸、幸福、死、そしてそれらに伴うあらゆることを、50代半ばの男の視点から見ているんだ。僕が最後にアルバムを作ったのはいつだったか分からないが、それって40代後半の男の視点とは正反対なんだ。50歳になってから、時間がどこへ消えるのか分からなくなってしまった。本当に恐ろしい。学校の6週間の休暇は永遠に続くように感じたよね?でも今は6週間なんて一瞬だ!
ただ、人生観はあまり変わっていない。音楽も歌詞も相変わらず悲惨だ。物事に対してかなりシニカルなところがある。昔からずっとそうだ。死ぬのが特に怖くない。若い頃は怖かったけど、今は特に気にしない。だから、そこは変化だね(笑)。物事に対して…静かに楽観的になるのが好きなんだと思う。でも、歌詞でそれを表現することはあまりないけどね!」
ただし、皮肉たっぷりのユーモアのセンスも持ち合わせている Nick は、実は同世代の中ではかなりエネルギッシュで元気なほうだと自認しています。
「周りの人たちは、僕よりずっと暗くて嫌味な人が多いことに気づいた。仲の良い友達の多くが、本当にそういう風になって、すごく意地悪になった。実は僕はそこまでひどい人間じゃないと思うんだ」
暗い時代だからこそ、PARADISE LOST にファンは今も悲惨さを期待しているのかもしれません。
「人々は僕らがもっと惨めになることを期待しているはずだ (笑)。”Ascension” というアルバムのタイトルは、地上から天国までの道中で、より良い場所に昇っていくという信念と、死という報酬をテーマにしている。実生活では、人は多くの場合、人生唯一の報酬が死であるという事実にもかかわらず、生まれたときからより良い場所に到達しようと努力し、なぜかより良い人間になろうと努力するよね」

PARADISE LOST がどこへ行こうとも、たとえ曲自体は変わっても、あのほとんど喜劇的なまでの悲惨さはずっと付きまとってきました。圧倒的な初期を経て、彼らは1993年の “Icon” と大ヒットを記録した続編 “Draconian Times” でスタジアム・ゴスメタルに転向し、1998年の当時物議を醸した “One Second” とそれに続く “Host” では DEPECHE MODE 風のエレクトロニクスを披露。髪を切り、ギターを削ぎ落としました。そうして近年は、彼らのトレードマーク・サウンドに初期のエッジを融合させる才能を発揮しています。今や彼らは “完全に元に戻った” と Nick は言いますが、いずれにせよ、PARADISE LOST の個性は常にそこにあったのです。
「僕たちは今でもデスメタル・キッズなんだ。そのルーツは決して消えたことはない。髪型をちょっといじっていた頃でさえ、その頃は棚上げになっていただけで、今は確実に復活しているんだ。
僕はダークな映画が好きなんだ。僕はいつも同じ作品を勧めるんだけど、”The Hereditary 継承” だ。あの作品が公開されてから何年も経つけど、僕はまだあの映画を、現代ホラーの文脈において、本当にある意味不気味なものの一種のベンチマーク映画だと考えているからね。ヘヴィ・メタルにハマる前はホラーが好きで、だから VENOM のようなハードなバンドには自然とハマっていった。でも、あの頃のデスメタル・キッズは僕の中に今でもまだいるし、Greg の中にもいる。それは決して消えることはないんだ」

しかし、人々はそうした彼らのメタル魂を見抜けていませんでした。ある時期、彼らを終わった存在、つまりルーツから大きく離れすぎていると見なす者も多く存在したのです。文字通り、まさに “Believe In Nothing” の時代。
「奇妙な時代だった。インターネットもなかった。でも、もしネットがあったらネガティブなコメントが殺到して、サーバーがダウンしていただろう。
僕たちはかなり混乱していた。蜂がたくさん描かれたアルバム・カバーは覚えている。デザイン会社と仕事をしていたんだ。確か、OASIS の最初の数枚のアルバムをデザインした会社だったと思う。OASIS にとっては素晴らしい仕事だったけど、僕たちにとっては…とにかく奇妙な時代だった。あのカバーは、俺たちの脳内で何が起こっていたかを象徴しているような感じだったね。
今なら気楽にふらりと別の音楽に立ち寄って、普段の領域から少し外れたことをすることもできる。でも当時は、メタルを作るならメタルだけしか許されないような感じだった。それ以外のものを作ると、呪われてしまったんだ!
僕らのオリジナリティは演奏スタイルに現れることが非常に多い。 メタルは “創造性” に関してガラスの天井があり、ファンもあまり実験的なことを好まない傾向があったからね。でも僕にとっては、本当に曲がすべてなんだ。 力強い詩とコーラスがある良い曲を聴きたいんだ。 ギターの神様やヴォーカル・ジムナスティックスなどには興味がない。 最後はいい曲がいつも勝つんだから」
とはいえ、そうしたメタルにとっての異端な作品を残したことを、彼らは後悔してはいません。
「バンドを続けるのは散髪のようなもので、髪型を試行錯誤し続けても、最終的には若い頃と同じ髪型になる。つまり、失ったと思っていた興味が再び燃え上がり、また戻ってくるんだよな。
特に音楽の分野では、主にここ10年で、僕たちは戻ってきたような気がするね。古いサウンドや昔のデスメタルやドゥームメタルのバンドに対する新たな愛と懐かしさを本当に見つけたんだ。そして、この10年でそれを取り戻した。僕たちが “Host” を作ったとき、おそらくその頃、人生のより実験的な領域にいたんだよな。でも、そうだね、過ちではないよ。僕たちは常に直感に従い、自分の心に従い、その時に正しいと感じたことを書き、記録してきたんだよ」

“Icon” と “Draconian Times” のまさにアイコニックなゴシック・メタルこそが、PARADISE LOST の雛形だと考えている人は多いでしょう。
「”Icon” を(30周年を記念して)再レコーディングした時、実際にまた歌ったり演奏したりした。そうすることで、あのアルバムを作った頃、若い頃、どんなふうに曲を書いていたかを思い出したんだよな。ある意味、すごく刺激的だったし、このアルバムでは曲作りへのアプローチも変えたから。今、あのアルバムの何かをそのまま真似しようとしたわけではないんだけどアプローチが少し変わって、それがこのアルバムの多くの曲の形を作るのに役立ったんだ。もちろんあれからたくさんのことを経験して、たくさんのことを学んできたから同じじゃない。でも、あのアルバムのおかげで、”ちょっと待って。あの頃の雰囲気に近い曲を何曲か作ってみよう” って思えるようになったんだ。でも、このアルバムには “Shades Of God” の要素もあるんだよ。これは僕たちがずっと大好きだったアルバムだけど、あまり注目されていなかったからね」
PARADISE LOST がそうした時代の変化の中で、翻弄されながらも生き残ってこられたのは、”悲惨の達人” という評判を堅持しているからでしょう。その評判は決して揺らぐことはありません。
「VENOM が結成された頃は、彼らのことを何も知らなかった。”At War With Satan” を聴いて、すごく気に入ったんだ。”こいつらは一体誰だ?” って感じだったけど、頼りになるのは写真1枚だけだったからね。今は情報が豊富にあるから、謎は完全に消え失せている。どれだけミステリアスであろうとも、誰かがテスコで猫砂を買っているところを写真に撮るだろう」
35年経った今、Nick はバンドの揺るぎない成功の理由を “自分たちがやっていることを愛しているから”
であり、引退など考えたこともないと語ります。

「9時5時のちゃんとした仕事なんてしたことない。これがずっと僕たちの仕事で、僕たちの完全な中心なんだ。そして、この仕事がなくなったことは一度もない。だって、気を散らすものが何もなかったからね。 “ああ、こっちの方が稼げるんだ” って思えるような高給の仕事に就いて解散して、お酒とかが恋しくなって3年後にまた再結成するなんてこともないんだ」
こんなに長い間、陰鬱な音楽をやり続けられるのは、それが自分の知っている全てだからだと Nick は誇らしげに語ります。
「ある種、悲惨さが重なり合っているような感じだけど、その悲惨さの中に希望の光がある。映画を観て、すべてが暗くて悲惨なのに、誰かがその状況から抜け出す方法を見つけそうになるのを見るのが好きなんだ。でも、扉が閉まってしまい、もう逃げ場がない。そういうかすかな希望の光がほのめかされるのが好きなんだ。だから、曲全体を通して、実はすごく前向きな歌詞を入れることもある。そうすると、観客は “ちょっと待って、これ、前向きでいい感じ…いや、違う。いや、消えてしまった。また暗くなってしまった” って思うんだ」
“Ascension” もまさに暗さの中に救いがあり、しかしその救いが脆くも消えさって暗闇に戻る…そんなアルバムです。結局、PARADISE LOST はいつの時代も自然体の PARADISE LOST そのものなのです。
「僕たちにとっては自然なことさ。でも、光はちゃんとある。メランコリックに感じられるなら、それはある意味正しい道を進んでいるということ。必ずしも惨めな気分になりたいわけではないが、少しのメランコリーと少しの希望のきらめきがあっても構わない。名前は出さないけど、いくつかバンドを知っているけど、外見はすごく明るくて、自分たちも明るいバンドだとアピールしてる。でも、裏では今まで会った中で一番悲惨な奴らだよ!
僕らも明るくなったとは言わないけど、もう40歳も過ぎたしね。だから、もうあとは死ぬことしか考えられない!でも皮肉なことに、悲惨な音楽はいつだって聴いていて一番楽しいし、書いていて一番楽しいんだ」

来日公演の詳細はこちら。Evoken de Valhall Production

日本盤のご購入はこちら。Ward Records

参考文献 : KERRANG! :“We were laughing at one of the titles because it was so miserable”: Paradise Lost on three decades of turning woe into iconic metal

WIKI METAL :Paradise Lost Interview: Nick Holmes talks about the band’s 37-year career.

HEAVY MUSIC HQ: PARADISE LOST INTERVIEW

LOUDER SOUND:”I liked heavy metal because everyone hated it.” Paradise Lost’s Nick Holmes on dodging plant pots, nearly-severed fingers and why nu metal ruined metal

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TIBERIUS : SINGING FOR COMPANY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAHAN TABRIZI OF TIBERIUS !!

“I think as a band, we very much try to be as authentic as we possibly can be, in a world of bands trying to be scary, masculine and tough, we’re just not like that as people, we like to think we’re cutting through the noise by being different and being honest about who we are.”

DISC REVIEW “SINGING FOR COMPANY”

「バンドとして、僕たちは可能な限り本物で、信頼できる存在であろうと努めているんだ。怖くて男らしく、タフであろうとするバンドの世界の中で、僕たちはどう考えてもそういう人間じゃない。僕たちはメタルのステレオタイプとは違っていて、自分たちがどんな人間かについて正直であることで、雑音を跳ね除けられると思いたいんだ」
ヘヴィ・メタルは男のもの。タフで強いもの。悪魔と死体の音楽。そんなステレオタイプは、21世紀に入って変わろうとしています。今では、女性のアーティストは少なくありませんし、死体や悪魔、剣と鎧のファンタジーだけではなく、内省的でパーソナルなテーマを扱うバンドも増えてきました。
そんなメタル世界で、スコットランドの新鋭 TIBERIUS はありのままの自分を見せることこそ、今のヘヴィ・メタルのあるべき姿だと信じています。なぜなら、ヘヴィ・メタルは正直な音楽だから。弱さを抱きしめる音楽だから。許しの音楽だから。そして、強い人間など、実はこの世界には存在しない、それこそ非現実的なファンタジーだから。
「僕たちは明るい色が大好きでね! 2018年に “Dissipate” のビデオ撮影でこの色にバイブスして、それ以来、ライブの演出やアートワーク、あるいは僕のピンクとブルーのギターを通して、この色をバンドの一貫したテーマにしてきたんだ!」
そんな TIBERIUS の、いやヘヴィ・メタルの現在地が如実にあらわれたミュージック・ビデオこそ、”Mosaic” だといえるでしょう。これほど、メンバー全員が幸せそうに、自然な笑顔でメタルを奏でるMVがこれまであったでしょうか?これほど、ピンクやブルーのビビッドカラーが映えるバンドがこれまで存在したでしょうか?これほど、ポジティブで、優しく、高揚感あふれる楽曲がこれまで聴けたでしょうか?
そう、TIBERIUS はメタルのステレオタイプを、そして閉塞感あふれる現代の暗がりを、”ありのままの自分” を見せることで打ち破り、正直で寛容な “より良い世界” を目指そうとしているのです。だからこそ、彼らは “Singing for Company”、仲間のために声を上げて歌います。
「複雑なリズムや曲の構成、テクニックを、リスナーにとって親しみやすいものにしているというだけで、”プログレとしては物足りない” と考える批評家もいる。一方で、”パワー・メタルとしては重すぎる” “激しすぎる” と考える人もいる。僕はそれを誇りに思っているんだ。もし君が心を開いてくれさえすれば、僕たちは誰にとっても何かを与えることができるし、もし君が心を開かないのなら、それは君の損失となる!」
ゆえに、彼らの音楽自体もメタルのステレオタイプで推し量ることは不可能。欧州版 AVENGED SEVENFOLD、あるいは IRON MAIDEN と LEPROUS の婚姻などと評される彼らの音楽は、パワー・メタルというには複雑すぎる、激しすぎる。プログ・メタルと呼ぶには高揚感がありすぎる…そんな批評家の声を浴びることもありました。しかし、それは逆に言えば前代未聞、唯一無二なる彼らの個性。メタルに加わる新たな魅力。そうした “異端” をも、心を開けば好奇心の新たな翼となる…TIBERIUS は自身の特異な音楽を通して、音楽の力で、世界に寛容さと許しの本質、そして何より笑顔を届けるのです。
今回弊誌では、ギタリスト Jahan Tabrizi にインタビューを行うことができました。「日本文化は間違いなく僕に影響を与えている。僕は子供の頃から X Japan の大ファンで、最近では The Gazette、The Back Horn、MIYAVI、LOUDNESS といった J-ROCK もよく聴いているので、おそらくそれらのいくつかが長年にわたって僕のソングライティングに浸透しているのだろうね」笑顔のメタル。 どうぞ!!

TIBERIUS “SINGING FOR COMPANY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VALHALORE : BEYOND THE STARS】 JAPAN TOUR 26′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LACHLAN NEATE OF VALHALORE !!

“Our goal has always been to deliver what we refer to as “The Three E’s” – Escapism, Empowerment and Entertainment. We want our music, and our live shows, to give listeners the opportunity to escape their troubles for an hour or two. We want to leave the world a more positive place than when we found it.”

DISC REVIEW “BEYOND THE STARS”

「オーストラリアには “ヨーロッパ的” なサウンドのバンドが少なかったからね。オーストラリアにいても、僕が聴きたい、観たい音楽を作って演奏したかったんだ!」
VALHALORE。ヴァルハラの伝承という、まるで北欧神話から抜け出てきたような名前の彼らは、実はオーストラリアのバンドです。太陽の日差しが降りそそぐグレート・バリアリーフと、極寒の北欧神話はあまりにも正反対ですが、だからこそ VALHALORE は欧州的なサウンドを探求しました。そこにないなら、自分たちが作ればいい。ヘヴィ・メタルの寛容さは、ルール違反を罰することなどありません。
「僕たちは常に、自分たちの音楽を通してファンに高揚感や力を与えるエネルギーをもたらすことを目指してきた。 僕たちは皆、映画やゲームのサウンドトラックから大きな影響を受けているから、日本文化からの影響も間違いなくたくさんあるよね。WINTERSUN のような和楽器を積極的に取り入れているバンドが大好きだし、僕たちもそうなんだ。”Aether” という曲では琴だって弾いたんだよ! 」
ただし、その欧州的なサウンドは実にカラフルで、魅力的。なぜなら、彼らの根底には、白夜の太陽 WINTERSUN から流れる “混血の美学” を受け継いでいるから。WINTERSUN のセルフ・タイトルと “Time” が、21世紀を代表する北欧メタルの逸品であることに疑いの余地はありませんが、その傑作の誕生に寄与したのがまさにその “混血の美学” であり、モダン・メタルらしい多様性でした。
メロデス、パワー・メタル、フォーク・メタル、シンフォニック・メタル、プログ・メタル…どのジャンルにも収まりきらない面妖でしかし起伏と驚きに満ちたオーロラの楽曲は、凄まじいシュレッドと様々な民族楽器に彩られた理知的なごった煮。VALHALORE の探求する北欧神話の宇宙には、明らかにあの “Time” と同様の美しき “混血の美学” が宿っています。
「僕たちが進歩するにつれて、Sophie のホイッスルと木管楽器は僕たちのサウンドの象徴的な側面になったんだ。ただ、大変なのは主にライブのサウンド・エンジニアかな。メタル・バンドの獰猛さに対して、穏やかなアコースティック楽器をミックスしなければならないからね!」
マンドリン、チェロ、パイプ、ホイッスルに縦笛、横笛。さらに和楽器の琴まで使用する伝統民族楽器のるつぼもまた、VALHALORE の魅力のひとつ。Sophie の操る艶やかな管楽器は、硬質な彼らの音楽を徐々に溶かして、テンポの速いメタルの嘶きに濃密なアクセントを加えていきます。
ここにのチェロとマンドリンの欧州的で荘厳な響きが加わることで、力強いメタルとオーガニックで本格的なフォークの生命が見事に重なり合います。さらに、佳曲 “Heart on the Sea” には、あの Anna Murphy が参加。ELUVEITIE で培った先駆者の威厳を見せつけながら、このジャンルの弛まぬ進化に目を細めます。そう、歴史に彩られたフォーク・メタルもまた、歴史を重ね、その文化を広げているのです。
今回弊誌では、ボーカル、チェロ、マンドリンとひとり三役の Lachlan Neate にインタビューを行うことができました。「僕たちの目標は常に、僕たちが “3つのE” と呼ぶもの、すなわちエスケープ、エンパワーメント、エンターテインメントを提供することなんだ。 僕たちの音楽、そしてライブを通して、リスナーに1時間でも2時間でも悩みから逃避する機会を与えたい。僕たちは、自分たちが今いる世界よりもポジティブな世界を後世に残したいんだ」 来日も決定。どうぞ!!

VALHALORE “BEYOND THE STARS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【UUHAI : HUMAN HERDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH UUHAI !!

“Heavy metal cannot stop wars, but it can inspire the people who will build peace. It cannot erase division, but it can create moments where division disappears. It cannot solve every problem, but it can open hearts and minds.”

DISC REVIEW “HUMAN HERDS”

「メタルは新たな自由の時代に入り、様々な文化がジャンルの中で真摯に自己表現できるようになったと確信しているよ。メタルは世界の限られた場所で生まれたけど、その感情的な言語は無限大だ。強さ、闘争、アイデンティティ、そして意味の探求を語ってくれる。そうしたテーマは地球上のあらゆる文化が共有する経験。だからこそ、メタルは今、その起源をはるかに超えて広がっているんだと思う」
2025年。メタルの生命力、感染力、包容力はその可能性をますます広げています。モダン・メタルに宿る寛容さは、世界の壁を壊し、さまざまな文化を包容していきます。そうして、世界中に根を張ったメタルの種子は、その多様な音の枝葉を存分に伸ばしているのです。
モンゴルに生まれた UUHAI も、そうしたメタルの自由を謳歌するバンドのひとつ。彼らは祖先の英雄チンギス・ハーンに学んだ勇気、正義、責任、リーダーシップを噛み締めながら、共感と団結というまた別のやり方で世界を席巻しようとしています。
「Uuhai は、深い歴史的、精神的な意味を持つ力強いモンゴル語だ。僕たちの祖先が戦いや儀式、そして団結と勇気が必要な瞬間に使っていた古代の呼び声なんだ。それは単なる叫び以上のもの。それは共有された精神の声なんだ。それは単なる名前ではない。僕たちの声であり、アイデンティティであり、モンゴルの魂との繋がりなんだよ」
勇気、強さ、そして団結を象徴する古来の戦いの雄叫び、UUHAI という名前は決して偶然選ばれたわけではありません。伝統と現代を結ぶため。草原に轟いた一致団結の雄叫びを、暗い現代社会へと響かせるため。だからこそ、当然その叫びのエネルギーは彼らの音楽にも反映されています。
モンゴルから先に世界的成功を収めた THE HU はフォークとロックのバランスを巧みに取りますが、UUHAI はより断固としたメタル寄りのサウンドを追求しています。そして、彼らのデビュー・フル “Human Herds” は、まさにその真髄でしょう。タイトルの一部は英語ですが、歌詞は彼らのルーツに忠実で、すべてモンゴル語で歌われています。だからこそ、彼らの楽曲にはステップ民族の力強さがもたらされ、草原の響きを響かせる馬頭琴(モリンホール)や、世界遺産にも登録されている喉歌といった伝統的な楽器が、より一層、真実の音をもって響き渡ります。喉歌のスピリチュアルな神秘、悍馬のように力強いリフ、草原から吹き寄せるギターソロ、そして馬頭琴独特の響きが、壮大なスケールの楽曲へと溶け合います。このシンプルな二弦楽器と人に備わる声帯が、修練と創意工夫を経てメタルの包容力に包まれる時、これほどまでに緊張感と感情を呼び起こせるものなのでしょうか…まさにモンゴルは蒼き狼、メタルは白き牝鹿。
「今日、世界は様々な闘争に直面している。戦争、分断、差別、そして恐怖が多くの場所で蔓延しているんだ。こうした課題は力で解決できるものではない。理解と団結をもって立ち向かわなければならないんだよ。
こうした世界において、ヘヴィ・メタルは特別な役割を担っている。メタルは感情を隠さない。正直で、率直で、恐れることなく真実を語る。社会が沈黙に包まれたとき、メタルは声をあげられない人々の声となる。怒り、悲しみ、そしてフラストレーションを表現するだけでなく、そうした感情を強さと繋がりへと変える力も持ち合わせているんだ。
UUHAI にとって、メタルは単なる音楽ジャンルではない。メタルは人々に共通の人間性を思い出させる力であり、国境や文化を超えたメッセージを届けることができるもの。出会うことのない人々でさえ、音楽の中で同じ鼓動を感じ、一つに繋がることができるんだ」
長い歴史の中で、モンゴルの人々は自然と調和しながら生きてきました。そして、誇り高き戦士としても。母なる大地が泣く時、それは人類への警告。世界が歴史の暗黒面を忘れ去り暗雲に包まれる時、戦士は人々を守るため恐れず、怯まず、勇気を持って武器を手に取ります。ヘヴィ・メタルという剣には、どんな弾圧も抑圧も敵いません。そうして、彼らは国境も文化も超えて、古の英雄の如く世界を、そして人と自然を再びひとつにつなげるのです。Uuhai! の雄叫びとともに。
今回弊誌では、UUHAI にインタビューを行うことが出来ました。「ヘヴィ・メタルは戦争を止めることはできないけど、平和を築こうと願う人々を鼓舞することができる。分断を消し去ることはできないけど、ライブで分断が消え去る瞬間を作り出すことはできる。すべての問題を解決することはできないけど、人々の心と精神を開くことはできる」素晴らしい言葉ですね。どうぞ!!

UUHAI “HUMAN HERDS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AEPHANEMER : UTOPIE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARTIN HAMICHE OF AEPHANEMER !!

“I have always admired Joe Hisaishi, who composed the music for many Studio Ghibli films. One of my favorite pieces is Innocent from Castle in the Sky – it is pure, sincere, and beautiful. I truly admire his work.”

DISC REVIEW “UTOPIE”

「僕らにとって、フランス語で歌うことはとても自然な選択なんだ。メタルの世界では母国語で歌うバンドがますます多くなり、一般的に広く受け入れられるようになったと感じているよ。 それは今日、誠実さや信憑性の証とみなされ、高く評価されることさえあるからね」
音楽、特にメタルの優れているのは、たとえ言葉の壁やボーカル・スタイルによって歌詞が不明瞭で理解不能な場合でも、ムード、メロディ、テーマ、バイブスなどその音楽自体に伝える力が込められているところでしょう。裏を返せば、モダン・メタルの寛容さは、あらゆる異端を排除せず、壁を壊して包容し、自らの血肉としていくことができるのです。フランスの AEPHANEMER は、そうして文化の壁も、さらにはメロデスというジャンルの限界まで打ち壊し、突破していきます。
「客観的に見て、僕たちは DARK TRANQUILLITY, AMON AMARTH, ARCH ENEMY のようなサウンドではまったくない。 CHILDREN OF BODOM と比較されることがあるけれど、それでも僕らとはまったく違う雰囲気を持っているよ。 というのも、今の僕は中世、クラシック、民族音楽にインスパイアされることが多いからね。それはもはや前世代のバンドには当てはまらない特徴だよね。結局、単に音楽はそうやって進化していくということだよ」
メタルの進化に終わりはありません。そう、AEPHANEMER はメロデスの遺産をしっかりと抱きしめながら、そのサウンドを別の次元へと高めるために音楽を奏でています。”メディーヴァル・フォーク的シンフォニック・メロデス” という大げさな表現が、もしかしたら今の彼らには最もしっくりくるのかもしれませんね。それだけ、この最先端のメロデスは、映画的で、オーケストラで、壮大な音の祭典です。
2023年にベーシストの Lucie Hune が脱退し3人編成となったにもかかわらず、これだけの緻密な壮観を完成させた AEPHANEMER の才能は比類なきもの。バンド創設者でインタビューイ、 Martin Hamiche が全ての弦楽器とオーケストレーションを担当して、あの鬼才 Dan Swanö 再度の協力により、力強いメロディにフック、心を震わす激情、幻想的なムード、フランスらしい気品と格調の高さ、そして豪華絢爛な “La Rivière Souterraine” が象徴する複雑で多面的な色彩を帯びた、ダーク・フォークとネオクラシカルの煌びやかな祭典 “Utopie” が降臨することとなりました。
「僕たちのアプローチは、あきらめずに日々の小さな行動を通じて現実世界を改善する努力を続ければ、現実世界で何が起こり得るかについて、自分自身、そしておそらく他の人たちを鼓舞するためにアートを創作するというものなんだ。僕たちは、人々が僕たちの音楽からエナジーやインスピレーションを感じ、そのエネルギーを活かして生活や家庭、地域社会に前向きな変化を起こしてくれることをとても嬉しく思っているんだ。僕たちにとって、すべての生きとし生けるもののためにより良い未来を創造することは必要不可欠なこと。だからこそ僕たちの考えるユートピアとは、人類が自然や他の生命体と調和して生きる世界なんだよ」
お馴染みとなった Niklas Sundin (DARK TRANQUILLITY) の手による鮮やかなアートワーク。そこには、彼らにとっての “Utopie” “理想郷”、自然と人間が手を携え、調和して生きていく世界が描かれています。もちろん、前作 “A Dream of Wildness” のイノシシに、私たちは “もののけ姫“ の影をみましたし、久石譲の風も受け取りました。
そう、AEPHANEMER の理想郷にとって、進化し多様に共生するべきは音楽だけにとどまりません。彼らは、人も小さな行動の積み重ねでより良い世界を目指すことができる、異文化と共生し調和することができると信じてアートを生み出していますし、もちろんアシタカとサンのように文明と自然も調和して生きていく未来を見据えているのです。
今回弊誌では、ギタリスト Martin Hamiche にインタビューを行うことができました。「Marion は、僕たちが大好きな宮崎駿監督の “もののけ姫” に登場するイノシシをすぐに思い浮かべたね。 彼女は若い頃からアニメのファンで、アニメは常に彼女に創造的なインスピレーションの源となってきた。 個人的には、多くのスタジオジブリ作品の音楽を作曲した久石譲さんをずっと尊敬してきたんだ。彼の作品で好きな曲のひとつは “天空の城ラピュタ” の “Innocent”。まさに純粋で誠実で美しい音だよね。彼の作品を心から尊敬しているんだ」ギターの煌めきとドラムの技巧、そして声の獰猛は群を抜いていますね。どうぞ!!

AEPHANEMER “UTOPIE” : 10/10

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