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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【KARNIVOOL : IN VERSES】


COVER STORY : KARNIVOOL “IN VERSES”

“I do hope this album can help people in the way it has helped me, and also that it may inspire and encourage some people reading this, especially those entering their mid to later years to finish that project that they’ve wanted to finish for a while.”

IN VERSES

「目的を遂げる人もいる。遂げられない人もいる。何とかやっていける人もいる…やろうとしない人もいる」
これは、伝説的なオーストラリアのプログレッシブ・メタル・バンド、KARNIVOOL 4枚目のアルバム “In Verses” のコーラスの一部です。数々の賞を受賞したアルバム “Asymmetry” 以来、バンドは長き停滞状態に陥っていました。残ったファンは、滅多にないツアーと、時折の謎めいたソーシャルメディアの投稿でなんとか生き延びてきました。しかし、ついにその待ち時間は終わりました。
13年の時を超えたアルバム “In Verses” は、最高のプログレッシブ・メタル・バンドの一つである KARNIVOOL が時とともに強くなることをリスナーに粘り強く、そして辛抱強く思い出させてくれる作品です。リフはよりラウドに、リズムはより奔放に。しかし、このアルバムを最高傑作としているのは、メロディーとフックです。長年に渡って最高のモダン・プログ作品の一つとして記憶されるに違いないこのアルバムは、長い間オーブンの中で温められてきました。キッチンに常に料理人がいたわけではないにしても。
「まあ、すべての始まりと終わりをここで説明していたら永遠になってしまうけど、本当に長かった。実際、長すぎたよ。どのアーティストにも、ここまで長い時間をかけるのはお勧めしないね!過去10年ほど、新作に取り組んでいると何度か公言してきたはずにしても。以前のアルバムはどれも、いわゆる “オリンピック周期” の4年に沿っていたので、アルバム “Asymmetry” のリリース後、2014年初頭に4枚目のアルバムの制作に着手し、最初はほぼ同じ期間でのリリースを目指していたんだ。最初の試みは2016年半ば、プロデューサーの Forrester が西海岸に来て、アルバムの半分、あるいはEPの拡張版くらいの感じでレコーディングを始めた時だったね。最終的に “In Verses” に収録された曲のほとんどは、その時点ですでに制作中だった。今にして思えば、かなり生産的で、あのセッションのおかげで曲が完成に近づいたんだ。でも、まだ準備が整っていなかったのは明らかだった。
その後の数年間は、本当に軌道に乗ろうと努力する中で、厳しい日々だった。仕事は散発的で、たとえ進歩があったとしても、それは断片的で、試練の時期、個人的な葛藤、経済的な問題、そしてバンド内の勢いと結束力の深刻な欠如に満ちていたね。何かが芽生えたとしても、すぐに消えてしまうような感じ。この時期は僕にとって個人的にも大変な時期で、砂漠へ移住することにしたんだ。これは、健康と幸福を最優先にし、自分自身を癒し、再び自分の足で立つ機会を得るという点で、僕にとって大きな決断だった。この間には実に多くのことがあり、一段落にまとめるのは不可能だけど、これまでの道のり、あらゆる試練と苦難、失敗した試み、成功、そして僕たちの人生の年月はすべて価値があったと言えるだろう。それらすべての時間と経験が、アルバムに収録された曲という最終的な形へと凝縮されていった。今振り返ってみると、曲が息を吹き込み、熟成していくには、時間と空間が必要だったのだと思うんだ」

バンドの中心人物、ギタリスト Drew Goddard は紆余曲折を経たため、勢いという要素が逆に厄介な存在となったと感じていました。皮肉なことに、勢いを排除した “In Verses” はだからこそ素晴らしく、そして完璧に練られた構成となっています。無理強いするよりも、自分たちのプロセスを信頼していたからこそ、まとまりが生まれたのです。
「方向性を事前に決めることは決してないんだ。アルバムのテーマは直感的な創作上の決断からゆっくりと、しかも長い時間をかけて浮かび上がってくるイメージのようなものさ。だから、常にプロセスを信頼するという要素があり、音の冒険心とエネルギーが僕たちの創作プロセスを突き動かし、アルバムごとに共通のテーマを提供している。でも、僕たちは同じことを繰り返すのは好きじゃない。僕自身、自分が作る音楽の中に新しいサウンドや感覚を見つけ、それがこうして生まれたことに驚きたいという欲求に突き動かされている。振り返ってみると、”In Verses” はある意味、新境地を開拓したように聞こえる一方で、過去3枚のアルバムの要素も含まれており、バンドが共に歩んできた時間をより強固なものにしている。まるで一つの章の終わりと新たな章の始まりのようにね」
アルバムが形を成していくうち、ひとつのテーマが浮かび上がりました。それはまさに、13年という長い月日を経ても彼らが貫き通したもの。諦めないこと。挑戦を続けること。
「諦めないことが鍵だと思う!僕らはどのアルバムでもすごく挑戦的だけど、今回のアルバムはこれまでで最も挑戦的だった。人生は挑戦に満ちている。僕にとって KARNIVOOL の音楽は、逆境や困難を乗り越えて勝利を収めるためのサウンドトラックのようなもの。暗いけれど、一筋の光が僕たちを前に導いてくれる。だから、アルバム制作のプロセス、そこに込められた感情を作品に反映するのは、本当に自然な流れだった。僕にとっての報われた瞬間は、2023年初頭のヨーロッパツアーの頃。心身ともに健康で、ツアー前よりもずっと良くなり、バンドの雰囲気もポジティブになった。みんなで演奏し、ツアーを楽しみ、観客からのサポートと反応を喜べるようになった。8年間ヨーロッパツアーをしていなかった後、観客からこれほどの興奮と喜びを受け取ったことは、前進し続ける大きな原動力となったんだ。その気持ちが雪だるま式に大きくなり、そこから勢いがついたと感じているよ」

オーストラリアのパースから現れたことも、彼らの個性を強くしています。パースは地球上で最も孤立した大都市の一つであり、それが KARNIVOOL を世界的な音楽業界のトレンド追及のプレッシャーから守ってきたと言えるのかもしれません。
「初期の頃は、それが間違いなく役に立った。本当に未熟な中でも、自分たちの技術を磨くことができた。下手くそだったけど、世に出なくても手探りで自分たちの “もの” を見つけることができた。戸棚の下に眠って埃をかぶっている素材がたくさんあるんだ」
Goddard は活動休止期間中、この孤立をさらに一歩進め、自己反省のために砂漠へと移住しました。
「しばらくの間、人が少ない田舎で違う意味で自分がダメなことを許したんだ。でも、孤独と孤立の間には微妙な境界線があるんだよな。僕にとって最も孤独な瞬間は、人混みの中にいた時だったような気がするよ」
その “砂漠での時間” は、広大で同時に深く個人的な感覚を持つアルバム “In Verses” のDNAに深く影響を及ぼしました。現在彼らの影響は、依然として多岐にわたります。そもそもは MESHUGGAH, TOOL, SOUNDGARDEN のホーリー・トリニティを基盤としていましたが、新作はより意外な分野から影響を受けています。モロッコ音楽の微分音的変化、J Dillaの “酔ってよろめく” ヒップホップのリズム、そしてボイジャー探査機のゴールデン・レコードまで驚くべきカラフルなインスピレーションたち。
「ボイジャーのレコードでネイティブ・アメリカンの歌を聴いて、ゾクゾクしたんだ。強烈なダイナミクスの変化、何もない状態から巨大なものへと変化し、また元に戻る。僕たちは常に、これまで聴いたことのない音程やリズムを探しているんだ」

彼らのアルバムの中で最も精緻なアレンジメントを誇る “In Verses” ですが、最も長く聴き続けられる3曲は、作品の中間部にあります。もちろん、”Ghost” と “Drone” はプログではほとんど見られないような即時性を示し、”Opal” はアルバムで最も心を揺さぶるメロディーを収録しています。しかし、”In Verses” が輝かしい作品から特別な作品へと変貌を遂げるのは、 “Animation” から始まる部分であり、KARNIVOOL があらゆるツールを巧みに使いこなしその技巧を際立たせる、スリルとサスペンスに満ちたサウンドはまさに唯一無二でしょう。
「”In Verses” の中間部は、まさに今のバンドの特徴を体現している。”Animation”, “Conversations”, “ReAnimation” は、どれも同じ音楽モチーフ、いわば同じ音楽文化から生まれたと言えるだろう。それぞれ全く異なる独立した曲でありながら、共通のテーマを共有しているんだ。同様に、”Remote Self Control” は “Aozora” の制作から生まれた曲で、他の曲から曲が生まれた例も数多くある。こうした例は、長い時間をかけて書き上げられたアルバムに、統一感を与え、ひとつに繋がっていく。そうしたディテールの追求こそがこのアルバムの鍵だ。完成してもまだ突き詰めたい、放棄したくない気持ちがあるほどにね」
“Themata” が荒削りなオルタナ・メタルの導入部で、”Sound Awake” が広がりのあるメロディアスな傑作だとすれば、”Asymmetry” は難解で不協和音に満ちた作品でした。そして、このアルバムは音色の限界を押し広げ、しかしリスナーを “Asymmetry” の “煉獄” へ置き去りにはしません。
「 “The Refusal” が大好きなんだ。”Asymmetry” で最も耳障りな曲の一つ。解決しないキーで歌われている。最後の歌詞は “これは不可能だ” で、ただ奇妙な後味を残すだけだ。”In Verses” は、色々な意味でそれに対する反応なんだ。有機的な進行ではあるけど、僕らはもう少し何かを探求している…ストレートとは言いたくないけど、もっとハーモニーがあって、もっと安定したメロディーがある」

リード・シングル “Drone” はその言葉を裏付けています。推進力のある分厚いベースラインと、高らかに響くボーカルパフォーマンスが曲を牽引しますが、興味深いことに、この曲の起源は完全に機械的なものでした。
「タイトルは “Drone Commander” という機器に由来しているんだ。信号発生器なんだよ。それが生み出したドローン・サウンドが、この曲全体のベースになった。僕らはその機械にあわせて曲を書いたんだ。このトラックは、広大な西オーストラリアの砂漠の重みを響かせ、故郷ならではの壮大なロックリフに支えられている。それは、反映であり、再生でもある。”Opal” の”死がそばにあるかのように、私はじっと静かになるだろう” という歌詞も、ずっと心に留めていた。何かがひらめいて、最終的な歌詞にも反映されたんだ」
“Opal” の一部は、Goddard が KARNIVOOL と曲作りを始めた最初期に遡ります。
「中間とエンディングのリフは、実は “Themata” 時代に実家のパソコンで初めて録音した曲なんだ。そして20年後、収まる場所を見つけたんだ。より現代的にアレンジしてね。”You’ve been holding up…” で始まるヴァースは、”Asymmetry” 収録の “Aeons” からカットされた部分。曲全体が、今まで経験したことのない形でひとつにまとまった。昔からバラバラだったアイデアが、突然、ひとつの場所に収まったんだよね」
そして、ハープまで使用した深く心に響くこの曲は、バグパイプも含め、息を呑むようなクロージング “Salva” へと繋がっていきます。
「僕たちは今でもアルバムという音楽形態の価値を信じている。アルバムを最初から最後まで一つの旅として聴いてもらえれば、この曲の真髄はもっと伝わってくると思うんだ。KARNIVOOL の旅路を共に歩んでくれて、それを僕たちと共有してくれた人たちにとって、最後の2曲、”Opal” と “Salva” が何かを与えてくれるといいな… 僕自身、解放感、ある種のカタルシスを得られたからね」

“Drone” のアートワークは、灰色と白の海に浮かぶ荒涼とし傾いた船を描いていて、あるファンが “KARNIVOOL が最後にアルバムをリリースしたときは、あの船の下に水があった” とコメントしたジョークを彼らは気に入っています。つまり、”In Verses” の音楽やリリックは、そのアートワークから想像されるほど陰鬱なものではないと彼らは示唆しています。
「常に音楽主導なんだ。歌詞は音符への反応となる。だから何よりもまず、言葉の響きが重要だ。Ian は非常に即興的で、”Conversations” のような曲でそれは顕著だ。数テイクを録ると、突然彼の表情が変わる。”意味不明な言葉” を声に出して、それがやがて意味へと結晶化していく。僕らにとって、声はまず楽器であり、物語を語るのは次のステップなんだ。音楽にどう合うかが重要で、歌詞の意味は、言葉の響きによって決まることもある。発明というより発見だ。僕らは岩の中から歌を掘り出しているんだ」
THE BEATLES と MESHUGGAH は彼らのお気に入り二大バンドですが、制作のスピードは大きく違います。
「僕らの時代の4年は、ビートルズの世界では1週間くらいだろう (笑)。彼らがどうやってやったのか、わからないよ。ビートルズは MESHUGGAH と並んで僕のお気に入りのバンドだし、僕らの中でそのバランスは取れている。でも、彼らはあらゆるルールの例外なんだ」
彼らは困難を乗り越え、その努力に意味を持たせようとする勇気をリスナーに感じてほしいと願っています。そして、人生のピークを迎えた人、あるいはピークを越えた人に向けて、自らの音楽と姿勢を通して特別なメッセージを送っているのです。
「このアルバムが、誰かの力になればと願っている。僕自身を支えてくれたようにね。そして、特に中高年の人たちが、人生でずっとやりたかった作品なり、プロジェクトなりを成し遂げるきっかけになればと願っているんだ。僕はいつもこのことを考えていてね。時には辛い努力を経て、日の目を見るべき素晴らしい芸術。そんな芸術的な宝物が、世界中にたくさん眠っているはずなんだ。中高年になり、時間やお金、仕事や家族のことでアートを完成させることを諦めかけている人も多いだろう。だけどそれらは世界に残され、共有され、聞かれるに値するものであり、ハードディスクの中に永遠に埋もれてしまうべきではないんだよ。だから諦めずに、必要な助けを求め、ただ進み続けてほしい」

参考文献: NEW NOISE MAG :INTERVIEW: KARNIVOOL GUITARIST DREW GODDARD TALKS ‘IN VERSES’

MGM :KARNIVOOL: THE WAIT IS OVER – INSIDE THE 12-YEAR JOURNEY TO ‘IN VERSES’

THE MUSIC AU:Karnivool Detail The Epic Grind Behind ‘In Verses’: ‘Everyone’s Still Finding Really Beautiful Stuff On This Record’

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【PARADISE LOST : ASCENSION】 JAPAN TOUR 26′


COVER STORY : PARADISE LOST “ASCENSION”

“Ironically, miserable music is always the most fun to listen to and the most fun to write.”

ASCENSION

「雨が好きなんだ」
Nick Holmesは、惨めな気分でいる方が楽な場合が多いそうです。そして、PARADISE LOST の長いキャリアを少しでも追ってきた人なら、これは自明の理だといえます。1988年にヨークシャーのハリファックスで結成され、デスメタルとスラッジ、ドゥームの暗黒が融合した1990年のデビューアルバム “Lost Paradise” 、そしてゴシック・メタルの名となり、定義付けとなった続編 “Gothic” で世界にその名を轟かせて以来、彼らはつねに暗い雲に覆われ続けています。
彼らの最新作 “Ascension” は、だからこそ当然のように、まさにそんな、いつも通りの暗雲メタルです。つまり、PARADISE LOST は長年にわたりデスメタル、シンセ、アリーナ・ロック、スラッジ、ドゥーム、エレクトロニカなど、さまざまなジャンルを巧みに操ってきましたが、彼らの中には常にダークな芯が宿っていたのです。
「ヨークシャーがなぜ悲惨なメタルの温床になっているのかはわからない。 暗い、悪魔のような工場や天候と関係があるのかもしれない。 スウェーデンも同じだ。 スウェーデンはとてもダークなバンドを何組か育てたが、あそこは天気もよく似ているんだ!
それに、狭い街だから、僕の母の寝室の窓から MY DYING BRIDE の Aaron Stainthorpe の家が見えたくらいでね」
言い換えれば、そうした暗い気候と地理が、彼らをメタル世界において特別な存在に押し上げたのです。ヨークシャーのアンダーグラウンド・レーベル、ピースヴィルが擁する “ドゥーム・ビッグスリー” の一つとして、MY DYING BRIDE、ANATHEMAと共に彼らは、悲しみに浸り、それを鍛鉄のような重厚さで表現する、実に英国的で異端で革新的なサウンドの構築に大きく貢献してきました。
晴れも嫌い。王道も嫌い。レジリエンス、反発力といえば聞こえはよいですが、Nick Holmes は天性の天邪鬼なのかもしれません。
「ヘヴィ・メタルが好きになったのは、メタルがみんなに嫌われていたからだ。 いつも嫌われていた。 反抗的な感じがした。町中でメタルが好きな奴は2人くらいしかいなかったかもしれない。それが好きだった。 自分の小さなチームを持っているような感じだった。僕らが考えていたのはそれだけだったんだ。目が覚めて、寝る瞬間まで。メタルとデスメタルのことしか考えてなかったんだ!」

その小さなチームは活動を続ける中で、Ville Valo のようなダークな音楽の実践者たちに多大な影響を与えるようになり、CRADLE OF FILTH, OPETH, GREEN LUNG, GATECREEPER など、様々に多くのバンドが PARADISE LOST の悲しみや暗がりにインスピレーションを見出してきたのです。
“Ascension” でその陰鬱さは、かつてよりも年老いた、今の Nick Holmes によって表現されています。
「人生、不幸、幸福、死、そしてそれらに伴うあらゆることを、50代半ばの男の視点から見ているんだ。僕が最後にアルバムを作ったのはいつだったか分からないが、それって40代後半の男の視点とは正反対なんだ。50歳になってから、時間がどこへ消えるのか分からなくなってしまった。本当に恐ろしい。学校の6週間の休暇は永遠に続くように感じたよね?でも今は6週間なんて一瞬だ!
ただ、人生観はあまり変わっていない。音楽も歌詞も相変わらず悲惨だ。物事に対してかなりシニカルなところがある。昔からずっとそうだ。死ぬのが特に怖くない。若い頃は怖かったけど、今は特に気にしない。だから、そこは変化だね(笑)。物事に対して…静かに楽観的になるのが好きなんだと思う。でも、歌詞でそれを表現することはあまりないけどね!」
ただし、皮肉たっぷりのユーモアのセンスも持ち合わせている Nick は、実は同世代の中ではかなりエネルギッシュで元気なほうだと自認しています。
「周りの人たちは、僕よりずっと暗くて嫌味な人が多いことに気づいた。仲の良い友達の多くが、本当にそういう風になって、すごく意地悪になった。実は僕はそこまでひどい人間じゃないと思うんだ」
暗い時代だからこそ、PARADISE LOST にファンは今も悲惨さを期待しているのかもしれません。
「人々は僕らがもっと惨めになることを期待しているはずだ (笑)。”Ascension” というアルバムのタイトルは、地上から天国までの道中で、より良い場所に昇っていくという信念と、死という報酬をテーマにしている。実生活では、人は多くの場合、人生唯一の報酬が死であるという事実にもかかわらず、生まれたときからより良い場所に到達しようと努力し、なぜかより良い人間になろうと努力するよね」

PARADISE LOST がどこへ行こうとも、たとえ曲自体は変わっても、あのほとんど喜劇的なまでの悲惨さはずっと付きまとってきました。圧倒的な初期を経て、彼らは1993年の “Icon” と大ヒットを記録した続編 “Draconian Times” でスタジアム・ゴスメタルに転向し、1998年の当時物議を醸した “One Second” とそれに続く “Host” では DEPECHE MODE 風のエレクトロニクスを披露。髪を切り、ギターを削ぎ落としました。そうして近年は、彼らのトレードマーク・サウンドに初期のエッジを融合させる才能を発揮しています。今や彼らは “完全に元に戻った” と Nick は言いますが、いずれにせよ、PARADISE LOST の個性は常にそこにあったのです。
「僕たちは今でもデスメタル・キッズなんだ。そのルーツは決して消えたことはない。髪型をちょっといじっていた頃でさえ、その頃は棚上げになっていただけで、今は確実に復活しているんだ。
僕はダークな映画が好きなんだ。僕はいつも同じ作品を勧めるんだけど、”The Hereditary 継承” だ。あの作品が公開されてから何年も経つけど、僕はまだあの映画を、現代ホラーの文脈において、本当にある意味不気味なものの一種のベンチマーク映画だと考えているからね。ヘヴィ・メタルにハマる前はホラーが好きで、だから VENOM のようなハードなバンドには自然とハマっていった。でも、あの頃のデスメタル・キッズは僕の中に今でもまだいるし、Greg の中にもいる。それは決して消えることはないんだ」

しかし、人々はそうした彼らのメタル魂を見抜けていませんでした。ある時期、彼らを終わった存在、つまりルーツから大きく離れすぎていると見なす者も多く存在したのです。文字通り、まさに “Believe In Nothing” の時代。
「奇妙な時代だった。インターネットもなかった。でも、もしネットがあったらネガティブなコメントが殺到して、サーバーがダウンしていただろう。
僕たちはかなり混乱していた。蜂がたくさん描かれたアルバム・カバーは覚えている。デザイン会社と仕事をしていたんだ。確か、OASIS の最初の数枚のアルバムをデザインした会社だったと思う。OASIS にとっては素晴らしい仕事だったけど、僕たちにとっては…とにかく奇妙な時代だった。あのカバーは、俺たちの脳内で何が起こっていたかを象徴しているような感じだったね。
今なら気楽にふらりと別の音楽に立ち寄って、普段の領域から少し外れたことをすることもできる。でも当時は、メタルを作るならメタルだけしか許されないような感じだった。それ以外のものを作ると、呪われてしまったんだ!
僕らのオリジナリティは演奏スタイルに現れることが非常に多い。 メタルは “創造性” に関してガラスの天井があり、ファンもあまり実験的なことを好まない傾向があったからね。でも僕にとっては、本当に曲がすべてなんだ。 力強い詩とコーラスがある良い曲を聴きたいんだ。 ギターの神様やヴォーカル・ジムナスティックスなどには興味がない。 最後はいい曲がいつも勝つんだから」
とはいえ、そうしたメタルにとっての異端な作品を残したことを、彼らは後悔してはいません。
「バンドを続けるのは散髪のようなもので、髪型を試行錯誤し続けても、最終的には若い頃と同じ髪型になる。つまり、失ったと思っていた興味が再び燃え上がり、また戻ってくるんだよな。
特に音楽の分野では、主にここ10年で、僕たちは戻ってきたような気がするね。古いサウンドや昔のデスメタルやドゥームメタルのバンドに対する新たな愛と懐かしさを本当に見つけたんだ。そして、この10年でそれを取り戻した。僕たちが “Host” を作ったとき、おそらくその頃、人生のより実験的な領域にいたんだよな。でも、そうだね、過ちではないよ。僕たちは常に直感に従い、自分の心に従い、その時に正しいと感じたことを書き、記録してきたんだよ」

“Icon” と “Draconian Times” のまさにアイコニックなゴシック・メタルこそが、PARADISE LOST の雛形だと考えている人は多いでしょう。
「”Icon” を(30周年を記念して)再レコーディングした時、実際にまた歌ったり演奏したりした。そうすることで、あのアルバムを作った頃、若い頃、どんなふうに曲を書いていたかを思い出したんだよな。ある意味、すごく刺激的だったし、このアルバムでは曲作りへのアプローチも変えたから。今、あのアルバムの何かをそのまま真似しようとしたわけではないんだけどアプローチが少し変わって、それがこのアルバムの多くの曲の形を作るのに役立ったんだ。もちろんあれからたくさんのことを経験して、たくさんのことを学んできたから同じじゃない。でも、あのアルバムのおかげで、”ちょっと待って。あの頃の雰囲気に近い曲を何曲か作ってみよう” って思えるようになったんだ。でも、このアルバムには “Shades Of God” の要素もあるんだよ。これは僕たちがずっと大好きだったアルバムだけど、あまり注目されていなかったからね」
PARADISE LOST がそうした時代の変化の中で、翻弄されながらも生き残ってこられたのは、”悲惨の達人” という評判を堅持しているからでしょう。その評判は決して揺らぐことはありません。
「VENOM が結成された頃は、彼らのことを何も知らなかった。”At War With Satan” を聴いて、すごく気に入ったんだ。”こいつらは一体誰だ?” って感じだったけど、頼りになるのは写真1枚だけだったからね。今は情報が豊富にあるから、謎は完全に消え失せている。どれだけミステリアスであろうとも、誰かがテスコで猫砂を買っているところを写真に撮るだろう」
35年経った今、Nick はバンドの揺るぎない成功の理由を “自分たちがやっていることを愛しているから”
であり、引退など考えたこともないと語ります。

「9時5時のちゃんとした仕事なんてしたことない。これがずっと僕たちの仕事で、僕たちの完全な中心なんだ。そして、この仕事がなくなったことは一度もない。だって、気を散らすものが何もなかったからね。 “ああ、こっちの方が稼げるんだ” って思えるような高給の仕事に就いて解散して、お酒とかが恋しくなって3年後にまた再結成するなんてこともないんだ」
こんなに長い間、陰鬱な音楽をやり続けられるのは、それが自分の知っている全てだからだと Nick は誇らしげに語ります。
「ある種、悲惨さが重なり合っているような感じだけど、その悲惨さの中に希望の光がある。映画を観て、すべてが暗くて悲惨なのに、誰かがその状況から抜け出す方法を見つけそうになるのを見るのが好きなんだ。でも、扉が閉まってしまい、もう逃げ場がない。そういうかすかな希望の光がほのめかされるのが好きなんだ。だから、曲全体を通して、実はすごく前向きな歌詞を入れることもある。そうすると、観客は “ちょっと待って、これ、前向きでいい感じ…いや、違う。いや、消えてしまった。また暗くなってしまった” って思うんだ」
“Ascension” もまさに暗さの中に救いがあり、しかしその救いが脆くも消えさって暗闇に戻る…そんなアルバムです。結局、PARADISE LOST はいつの時代も自然体の PARADISE LOST そのものなのです。
「僕たちにとっては自然なことさ。でも、光はちゃんとある。メランコリックに感じられるなら、それはある意味正しい道を進んでいるということ。必ずしも惨めな気分になりたいわけではないが、少しのメランコリーと少しの希望のきらめきがあっても構わない。名前は出さないけど、いくつかバンドを知っているけど、外見はすごく明るくて、自分たちも明るいバンドだとアピールしてる。でも、裏では今まで会った中で一番悲惨な奴らだよ!
僕らも明るくなったとは言わないけど、もう40歳も過ぎたしね。だから、もうあとは死ぬことしか考えられない!でも皮肉なことに、悲惨な音楽はいつだって聴いていて一番楽しいし、書いていて一番楽しいんだ」

来日公演の詳細はこちら。Evoken de Valhall Production

日本盤のご購入はこちら。Ward Records

参考文献 : KERRANG! :“We were laughing at one of the titles because it was so miserable”: Paradise Lost on three decades of turning woe into iconic metal

WIKI METAL :Paradise Lost Interview: Nick Holmes talks about the band’s 37-year career.

HEAVY MUSIC HQ: PARADISE LOST INTERVIEW

LOUDER SOUND:”I liked heavy metal because everyone hated it.” Paradise Lost’s Nick Holmes on dodging plant pots, nearly-severed fingers and why nu metal ruined metal

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TIBERIUS : SINGING FOR COMPANY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAHAN TABRIZI OF TIBERIUS !!

“I think as a band, we very much try to be as authentic as we possibly can be, in a world of bands trying to be scary, masculine and tough, we’re just not like that as people, we like to think we’re cutting through the noise by being different and being honest about who we are.”

DISC REVIEW “SINGING FOR COMPANY”

「バンドとして、僕たちは可能な限り本物で、信頼できる存在であろうと努めているんだ。怖くて男らしく、タフであろうとするバンドの世界の中で、僕たちはどう考えてもそういう人間じゃない。僕たちはメタルのステレオタイプとは違っていて、自分たちがどんな人間かについて正直であることで、雑音を跳ね除けられると思いたいんだ」
ヘヴィ・メタルは男のもの。タフで強いもの。悪魔と死体の音楽。そんなステレオタイプは、21世紀に入って変わろうとしています。今では、女性のアーティストは少なくありませんし、死体や悪魔、剣と鎧のファンタジーだけではなく、内省的でパーソナルなテーマを扱うバンドも増えてきました。
そんなメタル世界で、スコットランドの新鋭 TIBERIUS はありのままの自分を見せることこそ、今のヘヴィ・メタルのあるべき姿だと信じています。なぜなら、ヘヴィ・メタルは正直な音楽だから。弱さを抱きしめる音楽だから。許しの音楽だから。そして、強い人間など、実はこの世界には存在しない、それこそ非現実的なファンタジーだから。
「僕たちは明るい色が大好きでね! 2018年に “Dissipate” のビデオ撮影でこの色にバイブスして、それ以来、ライブの演出やアートワーク、あるいは僕のピンクとブルーのギターを通して、この色をバンドの一貫したテーマにしてきたんだ!」
そんな TIBERIUS の、いやヘヴィ・メタルの現在地が如実にあらわれたミュージック・ビデオこそ、”Mosaic” だといえるでしょう。これほど、メンバー全員が幸せそうに、自然な笑顔でメタルを奏でるMVがこれまであったでしょうか?これほど、ピンクやブルーのビビッドカラーが映えるバンドがこれまで存在したでしょうか?これほど、ポジティブで、優しく、高揚感あふれる楽曲がこれまで聴けたでしょうか?
そう、TIBERIUS はメタルのステレオタイプを、そして閉塞感あふれる現代の暗がりを、”ありのままの自分” を見せることで打ち破り、正直で寛容な “より良い世界” を目指そうとしているのです。だからこそ、彼らは “Singing for Company”、仲間のために声を上げて歌います。
「複雑なリズムや曲の構成、テクニックを、リスナーにとって親しみやすいものにしているというだけで、”プログレとしては物足りない” と考える批評家もいる。一方で、”パワー・メタルとしては重すぎる” “激しすぎる” と考える人もいる。僕はそれを誇りに思っているんだ。もし君が心を開いてくれさえすれば、僕たちは誰にとっても何かを与えることができるし、もし君が心を開かないのなら、それは君の損失となる!」
ゆえに、彼らの音楽自体もメタルのステレオタイプで推し量ることは不可能。欧州版 AVENGED SEVENFOLD、あるいは IRON MAIDEN と LEPROUS の婚姻などと評される彼らの音楽は、パワー・メタルというには複雑すぎる、激しすぎる。プログ・メタルと呼ぶには高揚感がありすぎる…そんな批評家の声を浴びることもありました。しかし、それは逆に言えば前代未聞、唯一無二なる彼らの個性。メタルに加わる新たな魅力。そうした “異端” をも、心を開けば好奇心の新たな翼となる…TIBERIUS は自身の特異な音楽を通して、音楽の力で、世界に寛容さと許しの本質、そして何より笑顔を届けるのです。
今回弊誌では、ギタリスト Jahan Tabrizi にインタビューを行うことができました。「日本文化は間違いなく僕に影響を与えている。僕は子供の頃から X Japan の大ファンで、最近では The Gazette、The Back Horn、MIYAVI、LOUDNESS といった J-ROCK もよく聴いているので、おそらくそれらのいくつかが長年にわたって僕のソングライティングに浸透しているのだろうね」笑顔のメタル。 どうぞ!!

TIBERIUS “SINGING FOR COMPANY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VALHALORE : BEYOND THE STARS】 JAPAN TOUR 26′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LACHLAN NEATE OF VALHALORE !!

“Our goal has always been to deliver what we refer to as “The Three E’s” – Escapism, Empowerment and Entertainment. We want our music, and our live shows, to give listeners the opportunity to escape their troubles for an hour or two. We want to leave the world a more positive place than when we found it.”

DISC REVIEW “BEYOND THE STARS”

「オーストラリアには “ヨーロッパ的” なサウンドのバンドが少なかったからね。オーストラリアにいても、僕が聴きたい、観たい音楽を作って演奏したかったんだ!」
VALHALORE。ヴァルハラの伝承という、まるで北欧神話から抜け出てきたような名前の彼らは、実はオーストラリアのバンドです。太陽の日差しが降りそそぐグレート・バリアリーフと、極寒の北欧神話はあまりにも正反対ですが、だからこそ VALHALORE は欧州的なサウンドを探求しました。そこにないなら、自分たちが作ればいい。ヘヴィ・メタルの寛容さは、ルール違反を罰することなどありません。
「僕たちは常に、自分たちの音楽を通してファンに高揚感や力を与えるエネルギーをもたらすことを目指してきた。 僕たちは皆、映画やゲームのサウンドトラックから大きな影響を受けているから、日本文化からの影響も間違いなくたくさんあるよね。WINTERSUN のような和楽器を積極的に取り入れているバンドが大好きだし、僕たちもそうなんだ。”Aether” という曲では琴だって弾いたんだよ! 」
ただし、その欧州的なサウンドは実にカラフルで、魅力的。なぜなら、彼らの根底には、白夜の太陽 WINTERSUN から流れる “混血の美学” を受け継いでいるから。WINTERSUN のセルフ・タイトルと “Time” が、21世紀を代表する北欧メタルの逸品であることに疑いの余地はありませんが、その傑作の誕生に寄与したのがまさにその “混血の美学” であり、モダン・メタルらしい多様性でした。
メロデス、パワー・メタル、フォーク・メタル、シンフォニック・メタル、プログ・メタル…どのジャンルにも収まりきらない面妖でしかし起伏と驚きに満ちたオーロラの楽曲は、凄まじいシュレッドと様々な民族楽器に彩られた理知的なごった煮。VALHALORE の探求する北欧神話の宇宙には、明らかにあの “Time” と同様の美しき “混血の美学” が宿っています。
「僕たちが進歩するにつれて、Sophie のホイッスルと木管楽器は僕たちのサウンドの象徴的な側面になったんだ。ただ、大変なのは主にライブのサウンド・エンジニアかな。メタル・バンドの獰猛さに対して、穏やかなアコースティック楽器をミックスしなければならないからね!」
マンドリン、チェロ、パイプ、ホイッスルに縦笛、横笛。さらに和楽器の琴まで使用する伝統民族楽器のるつぼもまた、VALHALORE の魅力のひとつ。Sophie の操る艶やかな管楽器は、硬質な彼らの音楽を徐々に溶かして、テンポの速いメタルの嘶きに濃密なアクセントを加えていきます。
ここにのチェロとマンドリンの欧州的で荘厳な響きが加わることで、力強いメタルとオーガニックで本格的なフォークの生命が見事に重なり合います。さらに、佳曲 “Heart on the Sea” には、あの Anna Murphy が参加。ELUVEITIE で培った先駆者の威厳を見せつけながら、このジャンルの弛まぬ進化に目を細めます。そう、歴史に彩られたフォーク・メタルもまた、歴史を重ね、その文化を広げているのです。
今回弊誌では、ボーカル、チェロ、マンドリンとひとり三役の Lachlan Neate にインタビューを行うことができました。「僕たちの目標は常に、僕たちが “3つのE” と呼ぶもの、すなわちエスケープ、エンパワーメント、エンターテインメントを提供することなんだ。 僕たちの音楽、そしてライブを通して、リスナーに1時間でも2時間でも悩みから逃避する機会を与えたい。僕たちは、自分たちが今いる世界よりもポジティブな世界を後世に残したいんだ」 来日も決定。どうぞ!!

VALHALORE “BEYOND THE STARS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【UUHAI : HUMAN HERDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH UUHAI !!

“Heavy metal cannot stop wars, but it can inspire the people who will build peace. It cannot erase division, but it can create moments where division disappears. It cannot solve every problem, but it can open hearts and minds.”

DISC REVIEW “HUMAN HERDS”

「メタルは新たな自由の時代に入り、様々な文化がジャンルの中で真摯に自己表現できるようになったと確信しているよ。メタルは世界の限られた場所で生まれたけど、その感情的な言語は無限大だ。強さ、闘争、アイデンティティ、そして意味の探求を語ってくれる。そうしたテーマは地球上のあらゆる文化が共有する経験。だからこそ、メタルは今、その起源をはるかに超えて広がっているんだと思う」
2025年。メタルの生命力、感染力、包容力はその可能性をますます広げています。モダン・メタルに宿る寛容さは、世界の壁を壊し、さまざまな文化を包容していきます。そうして、世界中に根を張ったメタルの種子は、その多様な音の枝葉を存分に伸ばしているのです。
モンゴルに生まれた UUHAI も、そうしたメタルの自由を謳歌するバンドのひとつ。彼らは祖先の英雄チンギス・ハーンに学んだ勇気、正義、責任、リーダーシップを噛み締めながら、共感と団結というまた別のやり方で世界を席巻しようとしています。
「Uuhai は、深い歴史的、精神的な意味を持つ力強いモンゴル語だ。僕たちの祖先が戦いや儀式、そして団結と勇気が必要な瞬間に使っていた古代の呼び声なんだ。それは単なる叫び以上のもの。それは共有された精神の声なんだ。それは単なる名前ではない。僕たちの声であり、アイデンティティであり、モンゴルの魂との繋がりなんだよ」
勇気、強さ、そして団結を象徴する古来の戦いの雄叫び、UUHAI という名前は決して偶然選ばれたわけではありません。伝統と現代を結ぶため。草原に轟いた一致団結の雄叫びを、暗い現代社会へと響かせるため。だからこそ、当然その叫びのエネルギーは彼らの音楽にも反映されています。
モンゴルから先に世界的成功を収めた THE HU はフォークとロックのバランスを巧みに取りますが、UUHAI はより断固としたメタル寄りのサウンドを追求しています。そして、彼らのデビュー・フル “Human Herds” は、まさにその真髄でしょう。タイトルの一部は英語ですが、歌詞は彼らのルーツに忠実で、すべてモンゴル語で歌われています。だからこそ、彼らの楽曲にはステップ民族の力強さがもたらされ、草原の響きを響かせる馬頭琴(モリンホール)や、世界遺産にも登録されている喉歌といった伝統的な楽器が、より一層、真実の音をもって響き渡ります。喉歌のスピリチュアルな神秘、悍馬のように力強いリフ、草原から吹き寄せるギターソロ、そして馬頭琴独特の響きが、壮大なスケールの楽曲へと溶け合います。このシンプルな二弦楽器と人に備わる声帯が、修練と創意工夫を経てメタルの包容力に包まれる時、これほどまでに緊張感と感情を呼び起こせるものなのでしょうか…まさにモンゴルは蒼き狼、メタルは白き牝鹿。
「今日、世界は様々な闘争に直面している。戦争、分断、差別、そして恐怖が多くの場所で蔓延しているんだ。こうした課題は力で解決できるものではない。理解と団結をもって立ち向かわなければならないんだよ。
こうした世界において、ヘヴィ・メタルは特別な役割を担っている。メタルは感情を隠さない。正直で、率直で、恐れることなく真実を語る。社会が沈黙に包まれたとき、メタルは声をあげられない人々の声となる。怒り、悲しみ、そしてフラストレーションを表現するだけでなく、そうした感情を強さと繋がりへと変える力も持ち合わせているんだ。
UUHAI にとって、メタルは単なる音楽ジャンルではない。メタルは人々に共通の人間性を思い出させる力であり、国境や文化を超えたメッセージを届けることができるもの。出会うことのない人々でさえ、音楽の中で同じ鼓動を感じ、一つに繋がることができるんだ」
長い歴史の中で、モンゴルの人々は自然と調和しながら生きてきました。そして、誇り高き戦士としても。母なる大地が泣く時、それは人類への警告。世界が歴史の暗黒面を忘れ去り暗雲に包まれる時、戦士は人々を守るため恐れず、怯まず、勇気を持って武器を手に取ります。ヘヴィ・メタルという剣には、どんな弾圧も抑圧も敵いません。そうして、彼らは国境も文化も超えて、古の英雄の如く世界を、そして人と自然を再びひとつにつなげるのです。Uuhai! の雄叫びとともに。
今回弊誌では、UUHAI にインタビューを行うことが出来ました。「ヘヴィ・メタルは戦争を止めることはできないけど、平和を築こうと願う人々を鼓舞することができる。分断を消し去ることはできないけど、ライブで分断が消え去る瞬間を作り出すことはできる。すべての問題を解決することはできないけど、人々の心と精神を開くことはできる」素晴らしい言葉ですね。どうぞ!!

UUHAI “HUMAN HERDS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AEPHANEMER : UTOPIE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARTIN HAMICHE OF AEPHANEMER !!

“I have always admired Joe Hisaishi, who composed the music for many Studio Ghibli films. One of my favorite pieces is Innocent from Castle in the Sky – it is pure, sincere, and beautiful. I truly admire his work.”

DISC REVIEW “UTOPIE”

「僕らにとって、フランス語で歌うことはとても自然な選択なんだ。メタルの世界では母国語で歌うバンドがますます多くなり、一般的に広く受け入れられるようになったと感じているよ。 それは今日、誠実さや信憑性の証とみなされ、高く評価されることさえあるからね」
音楽、特にメタルの優れているのは、たとえ言葉の壁やボーカル・スタイルによって歌詞が不明瞭で理解不能な場合でも、ムード、メロディ、テーマ、バイブスなどその音楽自体に伝える力が込められているところでしょう。裏を返せば、モダン・メタルの寛容さは、あらゆる異端を排除せず、壁を壊して包容し、自らの血肉としていくことができるのです。フランスの AEPHANEMER は、そうして文化の壁も、さらにはメロデスというジャンルの限界まで打ち壊し、突破していきます。
「客観的に見て、僕たちは DARK TRANQUILLITY, AMON AMARTH, ARCH ENEMY のようなサウンドではまったくない。 CHILDREN OF BODOM と比較されることがあるけれど、それでも僕らとはまったく違う雰囲気を持っているよ。 というのも、今の僕は中世、クラシック、民族音楽にインスパイアされることが多いからね。それはもはや前世代のバンドには当てはまらない特徴だよね。結局、単に音楽はそうやって進化していくということだよ」
メタルの進化に終わりはありません。そう、AEPHANEMER はメロデスの遺産をしっかりと抱きしめながら、そのサウンドを別の次元へと高めるために音楽を奏でています。”メディーヴァル・フォーク的シンフォニック・メロデス” という大げさな表現が、もしかしたら今の彼らには最もしっくりくるのかもしれませんね。それだけ、この最先端のメロデスは、映画的で、オーケストラで、壮大な音の祭典です。
2023年にベーシストの Lucie Hune が脱退し3人編成となったにもかかわらず、これだけの緻密な壮観を完成させた AEPHANEMER の才能は比類なきもの。バンド創設者でインタビューイ、 Martin Hamiche が全ての弦楽器とオーケストレーションを担当して、あの鬼才 Dan Swanö 再度の協力により、力強いメロディにフック、心を震わす激情、幻想的なムード、フランスらしい気品と格調の高さ、そして豪華絢爛な “La Rivière Souterraine” が象徴する複雑で多面的な色彩を帯びた、ダーク・フォークとネオクラシカルの煌びやかな祭典 “Utopie” が降臨することとなりました。
「僕たちのアプローチは、あきらめずに日々の小さな行動を通じて現実世界を改善する努力を続ければ、現実世界で何が起こり得るかについて、自分自身、そしておそらく他の人たちを鼓舞するためにアートを創作するというものなんだ。僕たちは、人々が僕たちの音楽からエナジーやインスピレーションを感じ、そのエネルギーを活かして生活や家庭、地域社会に前向きな変化を起こしてくれることをとても嬉しく思っているんだ。僕たちにとって、すべての生きとし生けるもののためにより良い未来を創造することは必要不可欠なこと。だからこそ僕たちの考えるユートピアとは、人類が自然や他の生命体と調和して生きる世界なんだよ」
お馴染みとなった Niklas Sundin (DARK TRANQUILLITY) の手による鮮やかなアートワーク。そこには、彼らにとっての “Utopie” “理想郷”、自然と人間が手を携え、調和して生きていく世界が描かれています。もちろん、前作 “A Dream of Wildness” のイノシシに、私たちは “もののけ姫“ の影をみましたし、久石譲の風も受け取りました。
そう、AEPHANEMER の理想郷にとって、進化し多様に共生するべきは音楽だけにとどまりません。彼らは、人も小さな行動の積み重ねでより良い世界を目指すことができる、異文化と共生し調和することができると信じてアートを生み出していますし、もちろんアシタカとサンのように文明と自然も調和して生きていく未来を見据えているのです。
今回弊誌では、ギタリスト Martin Hamiche にインタビューを行うことができました。「Marion は、僕たちが大好きな宮崎駿監督の “もののけ姫” に登場するイノシシをすぐに思い浮かべたね。 彼女は若い頃からアニメのファンで、アニメは常に彼女に創造的なインスピレーションの源となってきた。 個人的には、多くのスタジオジブリ作品の音楽を作曲した久石譲さんをずっと尊敬してきたんだ。彼の作品で好きな曲のひとつは “天空の城ラピュタ” の “Innocent”。まさに純粋で誠実で美しい音だよね。彼の作品を心から尊敬しているんだ」ギターの煌めきとドラムの技巧、そして声の獰猛は群を抜いていますね。どうぞ!!

AEPHANEMER “UTOPIE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DORMANT ORDEAL : TOOTH AND NAIL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MACIEJ NIESCIORUK OF DORMANT ORDEAL !!

“I always liked intelligent intensity, something that can be enjoyed both live and at home.”

DISC REVIEW “TOOTH AND NAIL”

「このアルバムの目標は異なるものの調和だった。 スピードとブルータリティを維持しながら、よりシンプルな曲にして、テクニカルなリフを減らしたかったんだ。同じことを繰り返さないようね。このアルバムは、真のエクストリームなジャンル・ファンにとってはソフトすぎるし、メロディーを求める人にとっては激しすぎるという意見を耳にしているよ。そうして、誰もレッテルを貼れないような音楽を作ることができて、僕はとても満足なんだ」
テクデス・シーンと結びつけられることも多い、ポーランドの新星 DORMANT ORDEAL。しかし、彼らはそうしたテクニカル合戦、スピード競争から距離を置こうとしています。少なくとも、あの Willowtip からリリースされた4枚目のアルバム “Tooth and Nail” は、DEFEATED SANITY や ARCHSPIRE とは異なる場所にいることはたしかでしょう。なぜなら、彼らは技巧や速度を超越した、総合芸術としての攻撃性と獰猛さを追求しているから。
「ポーランドのブラックメタル・シーンはかなり充実しているし、ポスト・ブラックメタル・シーンはさらに混雑している。だから、いくつかの形容詞に絞り込んで表現するのはかなり難しいけど、激しく、凶暴で、機械的でありながら、一貫した知性があるという君の説明は好きだ。僕はいつも知的な激しさが好きで、ライブでも家でも楽しめるようなものが好きなんだ」
VADER に端を発するポーランドの凶暴なる音の流れは、BEHEMOTH, DECAPITATED, BATUSHKA, Mgła、そしてこの DORMANT ORDEAL という多種多様な地獄の業火を生み出してきました。彼らの炎は灼熱でありながら冷徹で、それ以上に一貫した知性と冒険への野心が漲っています。今回のインタビューイ Maciej が語るように、ライブでは当然そのエネルギーに圧倒されますが、同時に家でじっくりと腰を落ち着けて聴く時でも何かしらの新たな発見や好奇心をそそる展開が待ち受けている。そんなポーランド・エクストリーム世界の哲学を今に体現したバンドこそ、DORMANT ORDEAL なのです。
「”To fight tooth and nail” とは、全力で戦う、あらゆる手段を使う覚悟がある、簡単にはあきらめないという慣用句だ。 リリックでは、戦争のような外的なものであれ、憂鬱や自信喪失のような内面に向けられたものであれ、戦いや闘争という主題に触れている。 アートワークについては、上記のすべてを要約する試みだったよ」
“Tooth and Nail” というタイトルもふさわしく、DORMANT ORDEAL はこの作品で容赦のないブラック/デスメタルの集中砲火を届けます。周囲のすべてが破壊されていく中、塹壕の中で縮こまるような感覚。安全地帯から出ようとするたびに、容赦ない砲撃の波が再びリスナーをシェルターへと押し戻します。
そうした圧倒的で容赦のない音攻の中で彼らは、様々なスタイルを融合させながら、しかしいずれのスタイルにも完全には染まらない独自のエクストリーム・メタルを生み出しました。テクニカルなセンスが光るリフの猛攻にも、テクデスらしいフレットボードを駆け回るヒロイックな表現はありません。不協和音とメロディーの二律背反は必需品ではなく秘密兵器となり、何者にも染まらない DORMANT ORDEAL 独自の凶暴を生み出しました。
DECAPITATED のごとき激しいリズムの非人間的異変は、Mgła や BEHEMOTH を彷彿とさせるブラックメタルのエッジと溶け合い、そこにアンビエントなタッチが加わることで、ポーランドらしい強烈な中毒性と痛烈なまでに生々しいサウンドを実現。アートワークから内容まで、”Tooth and Nail” は DORMANT ORDEAL の真髄を体現しています。バンドの唯一の創設メンバーと別れるのは容易なことではありませんが、諦めずに死に物狂いの苦闘で乗り越えて、傑作にたどりつきました。揺るがぬ決意と、困難なに立ち向かうことこそメタルの真骨頂。不条理に全力で戦いぬけと、DORMANT ORDEAL は叫び続けます。
今回弊誌では、Maciej Nieścioruk にインタビューを行うことができました。「1993年に MEGADETH, METALLICA, それに SEPULTURA と CANNIVAL CORPSE を初めて聴いたときからすべてが始まったんだ。 その後、メタルのダムが決壊し、バンドはより残忍であればあるほど良くなった。とにかく、アグレッションと生々しい獰猛さを愛しているんだ。この数十年の間に僕の好みは大きく進化したけど、90年代にリリースされたこうしたのアルバムには今でも思い入れがあるね」 どうぞ!!

DORMANT ORDEAL “TOOTH AND NAIL” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【THE PRETTY WILD : ZERO.POINT.GENESIS】


COVER STORY : THE PRETTY WILD “zero.point.genesis”

“The Paranormal Is Normal For Us”

zero.point.genesis”

ラスベガスを拠点とする姉妹デュオ、THE PRETTY WILD は、トラウマ、神秘主義、そして女性の怒りを、神話的でジャンルを超越した探求に込めています。そうして、Sumerian Recordsよりリリースされたデビュー・フルアルバム “zero.point.genesis” は、未知への幻想的な欲求を体現した作品群となったのです。
Jyl と Jules の Wylde 姉妹は、超常現象のテーマと彼女たち反骨精神を織り交ぜ、今や実験精神の代名詞となっています。昨年、画期的なシングル “sLeepwAlkeR” をリリースして以来、彼女たちはメタル・シーンで躍進を続け、女性らしさと激しさのバランスを力強く取りながら、他のアーティストとは一線を画す存在感を発揮しています。
デビューアルバムのリリース後も、姉妹にはタイトなスケジュールが待っています。来年2月から3月にかけて、SLEEP THEORY の2026年ヨーロッパツアーのサポートツアーに出る予定。また、Welcome To Rockville と Inkcarceration でフェスデビューを果たしたふたりは、2026年にはSonic Temple、Download、Vainstream Rockfest のステージでも世界をを席巻する予定なのです。
SLEEP THEORY との公演では、デビュー・アルバムを全曲演奏する予定ですが、Jules と Jyl はこの記念碑的なリリースの現実をまだ実感できていないと語る。
「レコードを手にするまでは、本当にリアルで、すごく直感的に感じられることはないと思う。でも、その時になって初めて、何かが腑に落ちるかもしれない」
「このアルバムは、私たちが曲作りに着手する前から、自分たちの中で取り組んで体現してきたたくさんのものの集大成。だから、それが現実に形になるのを見るのは、本当に信じられない気持ちだよ」
むき出しの脆さと神聖なエネルギーに突き動かされた “zero.point.genesis” は、恐れを知らない精神を伝えています。”PARADOX” や “hALf aLiVE” といった自由奔放なトラックを通して、Wylde 姉妹は神秘と深い自己省察の両方を体現しているのです。
「このアルバムは、多くの点で、女性らしさが芽生えていく作品なの」と Jyl は語ります。 「姉妹として、私たちが互いに自信を深め、エネルギーを持ち、それを維持していくのは、本当に素晴らしい進化だった。他の女性たちにも同じように感じてもらえるように、有害な女性らしさを捨て去り、協力的なエネルギーを真に受け入れ、力を合わせれば、もっと力強くなれることを実感できたんだ」

ニューアルバムのサウンドについて、Jules はこう語っています「私たちはクリエイティブな面で成長し、様々な方法で自分たちを追い込んできたと思う。色々なことに挑戦したよ。楽器編成だけでなく、ボーカル・パート、そして楽曲の成熟度や深みといった点でも、様々な領域に挑戦していった」
このアルバムは崩壊と再生のアルバムだと Jyl は表現しています。
「完全なコンセプトアルバムだよ。多くのテーマは、体系的なプログラム、社会的なプログラム、そうした規範を覆すことから生まれている。プログラムされている時は、それが自分にとってどれほど病的だったり、惨めだったりするのか気づかないんだよね。それが当たり前になってしまっているから。それが健康的ではなかった、自分には向いていなかったと気づき始めるまで、そこから引き離されるまで、そのことに気づかない。そしてそこから抜け出すと、過去の自分への悲しみに苛まれる部分があり、このアルバムの大部分はその悲しみを探求しているんだ。特に女性としての力。女性らしさを失わずに生きるためのロールモデルは、私の意見では、これまであまり多くなかったからね」
アルバムには、時代を超えた神話がインスピレーションを与えていると Jules が付け加えます。
「作品の多くは、少し古風だけど時代を超えた文学の世界から着想を得ているの。多くの曲で悲劇に触れたり、ギリシャ神話やローマ神話に触れたり。そういったクールで時代を超越した作品が、私たちに影響を与えてきたんだよね。コンセプト・アルバムについて言えば、BRING ME THE HORIZON の “NeX GEn”、あれは素晴らしいアルバムね。私たちはあのアルバムの大ファンなの。聴いている人をその世界に引き込み、12曲、14曲、15曲も続けて聴けるような感覚にさせてくれるのは、本当に素晴らしいと思う」

このアルバムは、個人的な要素が込められていると同時に、真摯な作品でもあります。姉妹は、このアルバムをここ数年で自分たちについて深めてきた理解、そのすべての集大成だと表現しています。このプロジェクトは意図的に多層的な構成になっていますが、真の女性らしさを受け入れ、探求を学ぶことが、このアルバムの大きな目的となっているのです。
「アルバム全体が神秘主義に根ざしていることは周知の事実だよ」と Jyl は語ります。「アルバムは、自分自身を取り戻し、自分の影と向き合い、多くの内なる子供心に向き合い、そして、体系的に見て、女性たちの育てられ方の多くが必ずしもお互いや社会のためになっていないことに気づくことについて…でも、誰かの気持ちを理解し、その気持ちに寄り添うまで、有害だと気づかないようなことがたくさんあるんだよね。このアルバムには、まさにその反発のエネルギーが詰まっているの」
全11曲を通して、”zero.point.genesis” は劇的な要素と、怒りと、魅力を鋭く織り交ぜたサウンドを融合させ、サウンド的にも精神的にも束縛されることを拒むアルバムとなりました。そしてヴァンパイアのような “living ded” であれ、ダークでロマンチックな “AFTERLIFE (feat. Magnolia Park)” であれ、このアルバムに収録されているすべての曲は、それぞれが独自の物語として際立っているのです。
映画、演劇、そして超常現象から音楽的インスピレーションを得ている THE PRETTY WYLDE の楽曲はどれも、それぞれが独自の映画的世界観を紡いでいます。神話や超自然的な伝説に深く影響を受けたふたりは、そうした物語を独自の不気味で神秘的なな芸術性に取り入れているのです。
「自分が経験しているありふれた日常の出来事を、より大きな神話の弧へと結びつけていくんだ」と Jyl は言います。「そうやって、物事の中に多くの類似点を見出していく。神話は、自分が経験している辛いことに対処するための教科書だと感じることがあるんだよね」

“Button Eyes” のビジュアルも実にシアトリカルで革命的。作曲中、すでにビジュアルやミュージックビデオのことを考えているのでしょうか?
「Jules は演劇の世界出身だから」 と Jyl は胸を張ります。「特に私たちの場合は、ただ歌を歌うのではなく、曲全体を通して風景を思い描いて書いて、演奏しているんだ。ファッションから舞台装置まで、私たちが作り上げている世界観を思い描いてね。だから、聴いてくれる人たちは、私たちがエネルギッシュに表現しようとしている芸術的な空間に引き込まれる。商業的な枠組みの中では、そうするのは難しいこともあるけどね。でも、私たちは自分たちのやり方を見つけているよ。特にこの次の作品では、その世界観がより現実のものになると思う」
つまり、THE PRETTY WILD は音楽を超えた総合芸術だと Jules は考えています。
「これからファッションの要素をもっと深く掘り下げていくつもり。私たちにとってアートとは、音楽以上の深い意味を持っているの。それは、私たちが築き上げている精神や世界観についても同じ。そして、その要素の多くは、ビデオやファッション、ヘアメイクといったクリエイティブな決断を通して表現されるの。どの時代をチャネリングするか、バロックの要素を取り入れているかどうか、クラシックの要素を混ぜているか、Nu-metal とミックスしているか…そうやって考えながらね。これはちょっと面白い組み合わせよね」
Jules に “叫び方” を教えたのは Jyl でした。
「実は、Jyl がスタジオで叫ぶ方法を教えてくれたんだ。初めて曲の中で本気で叫んだのは “Sleepwalker” の時だった。だから今、”Sleepwalker” を聴き返すと、ああ、もっとうまくできたはずって思うんだよね。でも、ちょっと面白かったよ。それから、ハーシュなボーカルに関しては、私たち二人とも似たような感じになることが多いのよね。でも、私は低音パートをシャウトすることが多いのに対して、Jyl は高音パート、ザラザラした感じの部分を多用する傾向にあるかな」
Jyl が “Sleepwalker” に込められたメッセージを伝えます。
「この曲の芸術的なメッセージは、女性が怒りと甘さを同時に抱えているという二面性だと思う。だから、音楽にはその両方が必要だったんだ。みんな “メロディックなクリーンボーカルを作るのは本当に難しい” って言うんだけど、私たちは “なんとかするよ” って感じなんだよね」

クラシック音楽は、メタルコア、Nu-metal と並んで THE PRETTY WILD の大きなインスピレーションとなっていると Jyl は語ります。
「クラシック音楽はずっと私たちの共通のテーマ。クラシック音楽は私たちのホームベースだから、THE PRETTY WILD にクラシック音楽を取り入れる必要があったのよ。当然のことだった。それから、私はダークポップが大好きで、ダークポップのメロディーも、ダークポップの構造も大好きなの。私にとって、オルタナティブ・ダークポップはまさにバイブス。そして Jules は間違いなくメタルシーンに根ざしている。だから、すべてがうまく機能したんだよ」
同じ精神を共有していると感じているアーティストは誰でしょう?Jyl と Jules が答えます。
「ジャック・ホワイトが好き。THE CIVIL WARS にはいつも大きな影響を受けているよ。サウンド的には、最小限の楽器編成で観客を惹きつけている。彼らのエネルギーには、そうさせる特別な力があるよね。それは間違いなく大きなインスピレーションだよ。私は何でも聴きくかな」
「明らかにメインストリームと言えるのは、LINKIN PARK の美学と Nu-metal だね。彼らは真に様々なジャンルを融合させ、その後シーンを築き上げた他のバンドと共に、パイオニア的存在となった。Jyl が言ったように、私たちは様々な理由で、実に様々なバンドやアーティストが融合した存在なので、単純にどれかを切り離して考えるのは難しいんだよね」
バンドの音楽的アイデンティティに関して言えば、THE PRETTY WILD は社会や業界の基準に従わず、常に自分自身に忠実であり続けることと同義になっています。だからこそ、意外なことに今日ではダーク・メタルコアで知られるこの姉妹は、当初はオルタナティブ・カントリー・アーティストとして音楽シーンに登場していたのです。
“y’allternative(ヤオールオルタナティブ)” というジャンルの先駆者である THE PRETTY WILD は、2022年に “XANAX & CHAMPAGNE” や “Eastwood” といったカントリーのシングルでデビューしました。しかし、この姉妹はカントリーからメタルへの旅は必然だったと考えています。
「自分たちが伝統的なジャンルにおいて、伝統的ではないことに気づいたんだ」と Jyl は説明します。「当時、自分たちがカントリーのシーンにいた頃は、あまりにも多くのルールを破ろうとしていた。それが当時の私たちにとっては本物だったから。でも、”自分たちに抵抗する人たちのエネルギーに囲まれたくない” と気づいたんだよね。そうして、より多様なメタルに根ざした、より共鳴するものを見つけたんだ」

サウンドは進化を遂げてきたものの、この二人の特徴であるリリカルな詩情と骨太なストーリーテリングの感覚は、カントリー/オルタナティブ時代からずっと変わっていません。Jules は、当時のレーベルを離れて以来、オルタナティブ・シーンから離れたことが、自分たちにとってプラスに働いたと語ります。
「私たちは普通じゃないのが普通なの。私たちは、あのシーンの人たちより、クリエイティブに奇抜なことをすることができたんだ。そして、それが今の、よりヘヴィなトーンへと進化し始めた。それはずっと私の興味の対象だったから。私はかなり若い頃からずっとメタルに夢中だったんだけど、Jyl はもっとダークでガーリーなポップなジャンルから来ている。だから、私たちの曲の多くには、ヘヴィなブレイクダウンやクラシカルな要素がある一方で、ポップなコーラスにはダークなコンセプトが盛り込まれている。陳腐に聞こえるかもしれないけど、そうした多様性が今の私たちを形作ったんだ」
今、THE PRETTY WILD は型破りで社会の流れに逆らうことを目指す、揺るぎない音楽的精神で進んでいます。ルールを破ること、いや、ジャンルの壁を壊すことを恐れない姉妹は、自分たちにある “内面を見つめる能力” こそが、メタル・シーンの他のアーティストたちと一線を画すものだと言います。
「何が起こっているのか、ある程度は把握していなければならないんだ」と Jules は言います。「でも、コンセプトやアイデアを思いついたり、曲をカットしたりする時は、あまり深く考えないんだ。スタジオはとてもプライベートな空間で、もちろん防音対策も万全で、他のことは考えない。だから、ただ自分が作りたいものを作り、それを心から誇りに思えるんだ。もちろん、それを人に見せたい気持ちはあるけれど、何よりもまず、自分のために音楽を作っているからね」

Jyl がこう付け加えます。「ルールに気を配ることはできるけど、最終的には自分の感覚に従うしかない。ルールを学ぶことは大切。でも、もしそれが自分のすべきことではないと感じたり、何か違うものが必要だと感じたら、その感覚に身を任せればいいんだよ。
いつもみんなに “予想外のことが起こることを期待して” と言っている。私たちは常に、まるでクリエイティブ・マシンみたいに、情熱とエネルギーとアイデアを次々と生み出していて、それが止まることはないんだよ。
だから、私たちの頭の中にあるものを現実のものにし、私たちが恋に落ちたこの世界を描き、みんなに届けられることを、本当に楽しみにしているんだ。
そして、正直に言って、周りの人たち、特に女性たちにインスピレーションを与えたいと思っているの。違った考え方をすることで、感情を大切にすることで、女性が大きな創造力を持っていることに気づくことができる。それが私たちにとって本当に大切なことなんだ。そして、それを実際に見せ、実証し、現実のものにしていくのよ!」
最終的に、THE PRETTY WILD は、彼女たちの名前が象徴するもの、つまり美しさと怒り、光と闇、意志と大胆さを体現しています。そうしてこの姉妹は、デュオの初となるフル・アルバムを通して、彼女たちは未知なるものを信じ、壁を壊し、リスナーにも縛られないことを望んでいるのです。
「特に女性なら、自分の直感に耳を傾け、感情を受け入れるべきだよ。だって、それがあなたのスーパーパワーだから」と Jyl は言います。「そして、このアルバムは最終的に、女性が直感と感情全てを取り戻し、自分の感情を表現することを恐れないことをテーマとしているの。同じ言葉、同じ音楽の中で、美しさと怒りを表現することはできる。それは何も悪いことじゃない。健全なことなのよ」
最後に、このアルバムはふたりにとってどんな存在となるのでしょう?
「まるでビッグバンの瞬間のように、この無形のものが誕生したんだ。創造性が強迫的に爆発しているんだよね。最初から最後まで、まるで旅のようで、アルバムは私たちを様々な場所へと連れて行ってくれる。混沌としているけど、それがバンドの起源なの。
アルバム全体を通して、社会によって自分自身から切り離せと言われてきた部分を取り戻すことについて歌っている。だからこそ、このアルバムは混沌としていて、生々しく、叫び声のような、それでいて美しいものでもあるんだ。なぜなら、切り離されたものを再び統合した時、そこに美しさが生まれるから。多くの人は闇を見て怖がると思うけど、私たちは真っ逆さまに闇に飛び込むの。そうすれば、もう闇を恐れなくなるからね。闇は私たちをコントロールできなる。その価値観を得た日が新たな人生の誕生日であり、世界へと自分自身を導くための、新しい知覚レンズなんだと思うよ」

参考文献: NEW NOISE MAG:INTERVIEW: THE PRETTY WILD TALK ‘ZERO.POINT.GENESIS’

HARDBEAT :Interview with The Pretty Wild

v13net:METALThe Pretty Wild: “When people can take you into this world and you feel like you’re there for 12, 14, 15 tracks, it’s really admirable…”

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MORS PRINCIPIUM EST : DARKNESS INVISIBLE】JAPAN TOUR 26′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VILLE VILJANEN OF MORS PRINCIPIUM EST !!

“When we started, we just wanted to make melodic death metal. We did not want to sound exactly like some other band, so maybe that is one reason. But I guess our songwriters just wanted to write songs the way we have done.”

DISC REVIEW “DARKNESS INVISIBLE”

「結成当初は、ただメロディック・デスメタルを作りたかったんだ。ただ、他のバンドと同じようなサウンドにはしたくなかった。それがテクニカルになった理由のひとつかもね。このバンドの歴代のソングライターたちは、そうして僕らがやってきたように、テクニカルな曲を書いていきたかっただけなんだと思う」
メロデス始まりの地、イエテボリから少し離れたフィンランド。彼の地もまた、メロデスを牽引した重要な場所のひとつであるだけでなく、より革命的なメロデスを生み出したと OMNIUM GATHERUM のインタビューにて記しました。AMORPHIS とカレワラの奇跡的な邂逅は、後のフィンランドのメロデス世界に “個性的である” ことを運命づけたとも言えます。CHILDIEN OF BODOM, OMNIUM GATHERUM、そして最近の BRYMIR までフィンランドのメロデスは、それぞれステレオタイプとは異なる並外れた個性を持って戦ってきました。
MORS PRINCIPIUM EST もそんなフィンランドの綺羅星のひとつ。彼らの個性は、激烈なデスメタルに、ハイパー・メロディックでウルトラ・テクニカルな冷気を吹き込むことでした。
「僕にとっては、どのアルバムも特別だよ。 それぞれのアルバムがなければ、僕らはここにいなかったし、”Darkness Invisible” というアルバムもなかっただろうからね。でもそうだね、このアルバムにはファースト・アルバムからの影響もあるけど、新しいアルバムからの影響もあると思う」
古のメタル・ファンにとって、そんなフィンランドの冷気と冷徹の洗礼を存分に浴びたのが、デビュー作 “Inhumanity” であり、名作 “The Unborn”, “Liberation = Termination” だったのです。当時のギター・チームが脱退し、Andy Gillion というメロデス・シュレッド・マシンを得て、MORS PRINCIPIUM EST は荘厳シンフォニックな要素も加えながらさらに飛翔。Gillion を失うも、黄金のギター・チーム、そしてほぼオリジナル・メンバーが復帰して最新作 “Darkness Invisible” が完成を見たのです。そうして、今回のインタビューイ、バンドの首領 Ville Viljanen が語る通り、アルバムは初期と後期の完璧なる融合、MPE 集大成ともいえる傑作に仕上がったのです。
“Of Death” と “Venator”、開幕の二連撃から我々は、Jori Haukio のメカニカルかつ抒情的なシュレッドに “Liberation = Termination” の影を見ます。そうして、牧歌的なインタルードを挟んで押し寄せる、中盤の威風堂々たるドラマティシズムに我々はただ圧倒されるのみ。近年の耽美と荘厳で磨き抜かれた初期の激情と慟哭は、狂おしいまでにフィンランドの風を運び、リスナーに北欧のカタルシスを届けるのです。そう、彼らの個性はもはやフィンランドの秘宝。
今回弊誌では、ボーカリスト Ville Viljanen にインタビューを行うことができました。「メロデスは以前ほど人気がなかったり、他のジャンルほど人気がなかったりするかもしれないのはたしかだ。それでも今でも必要とされているし、求められていると思う。僕たちが演奏を続けているのは、ただメロデスを演奏するのが楽しいからなんだ」 来日も決定!どうぞ!!

MORS PRINCIPIUM EST “DARKNESS INVISIBLE” : 10/10

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