“Our Message To The World Via Our Music Is Reminding The Importance Of Showing Gratitude To Your Parents, Loving Your Homeland, Protecting The Nature, Loving And Respecting Women, Respecting Your Country History And a’ncestors, And Finally Giving Individuals An Inner Power And Belief For Their Future.”
DISC REVIEW “THE GEREG”
「僕たちの音楽を通して送る世界へのメッセージ。それは両親への感謝、生まれ育った地を愛する心、自然の保護、女性への愛と敬意、母国の歴史や祖先への愛などの重要性を思い起こさせることなんだよ。そうして最終的には、リスナーそれぞれの内なる力を目覚めさせ、未来を信じられるようにしたいんだ。」
モンゴルの大草原に示現したロックの蒼き狼は、遊牧民のプライドと自然に根差す深い愛情、そして西洋文明に挑む冒険心全てを併合する誇り高き現代のハーンです。
80年代後半から90年代にかけて、ソヴィエト連邦の崩壊と共にそのサテライトであったモンゴルにも、西側からの影響が津波のように押し寄せました。そうしてモンゴルの音楽家たちは、伝統を保護しつつ否応無しに新たな波への適応を迫られたのです。
エスニックなプライドと冒険のダンス。社会的、政治的、そしてもちろん音楽的にもモンゴリアンミュージックはその両極を自らの舞踏に組み込み進化を続けて来ました。それは西欧音楽のコピペではなく、ルーツを大樹に影響の枝葉を伸ばすアジアの審美。
「”Hu” という言葉をバンド名に選んだのは、それが包括的には自然を意味するからなんだ。誰も除外することなく、世界中全ての “人間” に僕たちの音楽をシェアしたかったからね。」
まるで英雄チンギスハーンのように、登場から僅かな時間で西洋を飲み込んだ THE HU は間違いなく現代モンゴル音楽の最高傑作と言えるでしょう。
東洋と西洋、伝統と革新の過激なコントラストが世界を惹きつけたのは確かです。一つ “Yuve Yuve Yu” (“What’s Going On?)” のMV は象徴的でしょう。「偉大なモンゴルの祖先の名を抱きながら、長い間無意味に暴飲暴食を貪るだけ。裏切り者よ、跪け!」現代文明とモンゴルの大自然は皮肉と共に相対し、モンゴルの伝統楽器や彼ら自身は意図的にロックの煌びやかなイメージに彩られています。もちろん、かつてのモンゴル帝国がアジアとヨーロッパの大半を支配下に置いていたのはご存知の通り。
そう、THE HU は西洋に端を発するロック/メタルのフォーマットにありながら、ドラムス以外のクラッシックなロックインストゥルメントを極力廃しています。
官能的な西洋のアピアランスを与えられたモリンホールやトップシュールは、ギターの嗎をアグレッシブに、フォーキーに、美麗にモンゴルの流儀で世界に響かせ、さらに伝統的な喉歌ホーミーはハーモニーの恩恵を与えながらメタルのグロウルを代弁してアジアの歴史、底力を伝えるのです。そうして生まれるは異国情緒のダイナミズム。
「ホーミーとは、僕たちが誰なのか、僕たちが何を知っているのか、僕たちがどこから来たのか指し示すものさ。ホーミーは “正直な人間の地” から来ていて、それこそが僕たちにとって心地よく誇れるものなんだ。」
THE HU が提示する “Hunnu Rock” “匈奴ロック” の中で主役にも思えるホーミーは、もしかすると西洋文明に潜む欺瞞や差別を暴く “正直な” メッセージなのかも知れませんね。なぜなら彼らは、”誰も除くことなく世界中全ての人間に” 自らの音楽、モンゴルの魂を届けたいのですから。
デビューアルバムのタイトル “The Gereg” とは、モンゴル帝国のパスポートを意味しています。多くのモンゴル人にとって、ロマンチックに美化された騎馬の遊牧民や自由を謳歌するモンゴル帝国のヒーローは西洋のストーリーテラーによって描かれた征服者のフィクションなのかも知れません。
しかし、ステレオタイプなメタルファンを惹きつけるそのイメージを入り口に、THE HU は “The Gereg” をパスポートとして、モンゴル本来のスピリチュアルで愛と敬意に満ちた美しき文化、景色、音の葉を少しづつでも伝えていきたいと願っているのです。
今回弊誌では THE HU にインタビューを行うことが出来ました。「祖先から受け継がれるホーミーを僕たちは真にリスペクトしていて、このテクニックをマスターする時は光栄な気持ちになるんだよ。」一人ではなく、メンバー全員からの回答と表記して欲しいとのこと。YouTube 動画再生数は3000万を軽くオーバーするモンスター。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TAICHI NAGURA OF ENDON & KAPO OF SWARRRM !!
“To Me, Extreme Music In Japan Seems To Have a Spirit Kind Of “Fuck While Being Fucked” And Yeah…I Can Hear It. The Situation Is Often Forgotton Unconsciously.” By Taichi Nagura
“I’m Not Sure What The Punk / Hardcore Spirit Specifically Refers To. The Spirit Should Be Different For Each Individual.” By Kapo
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ERIC GUENTHER OF THE CONTORTIONIST !!
“After Being Established As a Band Securely In a Genre, It Takes a Lot Of Courage To Move Past That And Try To Evolve At The Risk Of Losing Fans, And That Was Always a Goal Of The Contortionist.”
KORN Embraces The Sound Of Grief, The Abyss Of The Void, And The Balance Between Darkness And Light With Their 13th Record “The Nothing”
THE GRIEF BEHIND “THE NOTHING”
「”The Nothing” は完全に悲嘆と追悼のレコードだよ。嘆きの曲もあれば、怒りの曲もある。全ては俺が経験したことだ。
俺が経験した感情や物事はまるで共謀してレコードの製作を阻んでいるかのようだった。本当に人生で最悪の年だったよ。
計画はなかったよ。青写真もなし。取り乱した男が自分の身に降りかかったただ酷い何かを理解しようとしていたんだ。正直な作品さ。実は妻の2ヶ月前に母も亡くなっているんだよ…。
だから姉以外全ての女性を人生で失っているんだ。俺はいつも音楽制作をセラピーと捉えているんだけど、だからこそ自分の人生を音楽で水に流してしまう必要があったんだ。ソロツアー、”Follow the Leader” の20周年プランが終わると、俺はひたすら音楽を書いて書いて、書きまくったんだよ。」
深淵、暗黒、虚無。その場所こそが “The Nothing” 生誕の地。そしてその場所こそ Jonathan Davis が、妻の Deven Davis を亡くした2018年の8月以来孤独に沈んでいた闇だったのです。
オープナー “The End Begins” でリスナーはそのアビスの淵を覗き込むことになります。「なぜ俺を置いていくんだ?」”終わりの始まり” で聴くことができるのは、Jonathan の嗚咽、絶望、嘆願、そして叫び。レコードのため意図的に作られた感情とは真逆の完全なリアル。”正直な作品” の言葉通り、Jonathan は今回の作品に偽りのない純粋な苦痛を反映させました。
「フェイクなエモーションなんて試したくもなかった。これはファーストテイクなんだよ。俺は時々感情的になりすぎるんだ。もちろん泣きたくなんてなかったよ。だけどそうもいかなくてね。ライブでもそうなることがある。このツアーで何回泣いたか知っているかい?俺はミスターマッチョじゃないんだ。泣きたい時は泣くんだよ。」
これほど彼が、自らに巣食う内なる悪魔を曝け出したアルバムはないでしょう。ギタリスト Brian “Head” Welch も “The Nothing” の制作が究極に直感的だったと認めています。
「Jonathan にとって作詞と作曲はまさにセラピーなんだ。苦しみを音楽と創造性に変えるようなね。彼が昨年経験したのは最悪の出来事としか言いようがないものばかりだった。こんな風に誰かを失うなんてね。だからこそ他のレコードとは別のレベルだと言える。特別で、とても生々しく、究極に本物の作品なんだよ。」
Jonathan は今も喪失と向き合い続けています。「今でも癒しを求めているよ。だけど対処法も学んでいるんだ。ツアーや音楽は俺の避難場所で、逃げ道で、教会なんだよ。確かに楽しいレコードではなかったけど、傑作だと感じている。精神科医に通う代わりに俺には音楽があるんだ。」
ただし、”The End Begins” のバグパイプについては実にポジティブです。「バグパイプは世界最高の楽器さ!とはいえ、全部のアルバムでやりたいって訳じゃない。特別じゃなくなっちゃうからね。だけど “Issues” のレコードを聴いてインスパイアされたんだ。俺が経験した全ての苦しみがこのインタルードに詰まっているよ。」
Jonathan は “The Nothing” の楽曲たちは、全て異なる悲しみのサイクルでステージだと主張しています。
「時間を切り取ったスナップショットみたいな感じだよ。例えば “Cold” は力強く反抗的な曲。苦しみや運命を跳ね返すようなね。一方で “The Darkness is Revealing” は不確かで疑いを抱くような楽曲だよ。つまりこのアルバムは全体が波のように押したり引いたりを繰り返すんだ。小さな、静かな、瞑想的な瞬間は、津波が砂に衝突するような騒々しいコーラスとブレイクダウンに拐われるんだ。 」
その2曲では特に顕著ですが、驚くべきことにこのダークなアルバムでそのメロディーの叙情味、ロマンチシズムは一層輝きを増しています。それはもしかすると、Jonathan がシリアルキラーや幽霊といった “死” の存在に圧倒され、魅了される一面が関連しているのかもしれません。
「俺は確かにダークな世界に魅了されてきた。ただ、年齢を重ねるに連れて “バランス” の重要性に気付き始めたんだ。俺の家ではしょっちゅうおかしな怪奇現象が起きるけど、実際は極めて平和な場所さ。つまり、光と闇の良いバランスが保たれているんだよ。俺にとって平穏とは、その2つが交わる場所にある。」
“Finally Free” は Deven Davis が長き薬物中毒との戦いから解放された安堵と悲痛を込めた葬送歌だと言及したのは James “Munky” Saffer。「中毒と戦った者を知っていれば、もしくは経験したことがあれば、もちろん俺もバンドのメンバーも大抵そうなんだけど、悪魔には贖えないって思う時もあるんだ。彼女は遂に自由になった。だからこのタイトルに決めたんだよ。」
クライマックスは KORN 史上最重とも言える “Idiosyncrasy” で訪れます。「神は俺をバカにしている。奴は笑って見ているんだ。」とそれでも彼が叫び、怒り、絶望を向けるのはしかし虚無に対してだけではなく、むしろ自分自身にでした。
“I failed”。 当然 Jonathan を責める人間など一人もいないでしょう。しかしアルバムにはクローサー “Surrender to Failure” まで、彼の “失敗” を犯してしまったという思いが貫かれています。涙を流しながら不安定に呼吸し、話し、歌い、贖罪の感情をぶちまけます。愛する人を救えなかった、上手くやれなかった。その感覚、トラウマはレコードを支配し、圧倒的な敗北感を植えつけるのです。アルバムが終わる瞬間、嗚咽の後の沈黙がその敗北感を乗り越えた証だとするのは少々希望的観測かもしれませんね。
TWENTY ONE PILOTS も手がける TNSN DVSN が情熱を注いだアートワークも素晴らしく KORN の音楽的感情的カオスと混線を反映していると Brian は語ります。
「沢山のビジュアルアートの中で俺らの目を引いたのが、このギターケーブルか何かのワイヤーのカオスだった。気に入ったと伝えたら、さらに磨きをかけ、ワイヤーで吊られた男はただ敗北し、荒廃しているように見えたんだ。何か大きなものを失えば、大きなトラウマに直面することになる。完璧なアートワークだよ。」
リリースデイトにも実は深い意味が込められています。「13枚目のレコードが13日の金曜日にリリースされる。しかも満月の日で、さらに水星逆行だ。つまり現実的にも比喩的にも、”星が並んで” いるんだよ。」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RICHARD HENSHALL OF HAKEN !!
“With The Digital Revolution And The Advent Of Streaming, The Musical Market Has Become Extremely Oversaturated, Which Can Often Make It a Little Overwhelming When Looking For New Music. However I Do Think There’s Wealth Of Great Music Out There If You Dig Deep Enough. I’m Always Hugely Appreciative That Anyone Gives Their Precious Time To Listen To Our Music, Especially Since There’s Some Much Amazing Stuff Out There.”
DISC REVIEW “THE COCOON”
「作曲に関して僕たちは、これがプログなのかメタルなのか考えすぎて特定の方向性へ舵を切ったりはしないようにしているよ。特定の影響に重きを置かないことが重要なんだ。ただ自分たちが聴きたい音楽を書いて、ただ望むのはファンが楽しんでくれることだけなのさ。」
今年の Progressive Music Awards で “UK Band of the Year” を獲得したもはやプログレッシブ世界を代表するバンド HAKEN。精密と重猛の並行世界を実現するプログ最後の希望を牽引するギターヴァーチュオーゾ Richard Henshall は、ソロプロジェクトの船出に “The Cocoon” 実験の “繭” の名を与えました。
Richard が RADIOHEAD を引き合いに出した様に、プログレッシブの言霊が例えばブラックメタル、スラッジ、オルタナティブ、ジャズといった異世界によりフィットするようにも思える現代において、クラッシックなプログの鼓動を21世紀にアップデートする HAKEN のレトロフューチャーな音楽観は実に貴重で尊い孤高です。プログサウンドの海に漂うアンビエント、djent, ソウル、ジャズ、ミニマリズム、シンセポップの漂流物は、音の航海を退屈から程遠い冒険へと導いています。
「ここ何年か、HAKEN は作曲の面で以前よりもメンバー間のコラボレートが増えているんだ。だから “The Cocoon” をリリースする完璧なタイミングに思えたんだよ。」
2013年のマイルストーン “Mountain” を境に、歌詞、そして音楽の面でもコラボレートを進めてきた HAKEN はバンドとして絶対的な完成の域へと達しています。ただし、故に創立者 Richard でさえ、創造物全てを吐き出すことはもはや許されないほどに高潔な存在へと進化したのかもしれませんね。だからこそこの “繭” の羽化は Richard 自身の解放であり、自由な羽ばたきです。
「ピアノは僕が初めて恋に落ちた楽器だし、創造性の解放を求める時しばしば重点を置く楽器でもあるんだよ。同時に、家にあったアコースティックギターでギターの基礎を学んで行ったんだ。」
不穏なピアノの絶景から荒れ狂ポリリズムギターの雪崩へと繭を開くオープナー “Pupa” はプレイヤー、コンポーザーの両面から Richard のユーティリティー性を描写する絶佳の招待状です。
演奏者としてのハイブリッドな才能は続くタイトルトラック “Cocoon” で一層露わになります。「僕は BON IVER や James Blake の大ファンなんだけど、彼らからボコーダーのインスピレーションを得たんだよ。」Richard を歌の地平へと駆り立てたのは、真のプログレッシブを音楽面、テクノロジーの面でも開拓するコンテンポラリーなアーティストでした。
「作曲やレコーディングにおいて、音楽の境界を少しでも広げるなら、僕はモダンなテクノロジーも楽しんで使用しているんだ。」その言葉は CHON のチルグルーヴを帆に受ける “Silken Chains”、アンビエントやエレクトロニカを存分に抱きしめた風光 “Limbo”、hip-hop を咀嚼する “Lunar Room” が証明しています。
同時に “Cocoon” の繭は彼の中の “ジャズ” を開花させました。敬愛する DREAM THEATER のトリッキーで複雑怪奇な遺伝子を受け継ぎながら、Eric Dolphy のサクスフォンで21世紀のプログメタル異常者を演じる Richard の異能、インテンスのダンスは THANK YOU SCIENTIST と肩を並べます。
「僕は別バンド NOVA COLLECTIVE ではよりジャズの方向を目指していて、HAKEN はもちろんプログメタルの領域にあるね。だからこのソロプロジェクトで両方の影響を等しく祝えるのはクールだよね。」
そうして、彼の中のジャズとプログメタルを並列に並べたパラレルワールド “Twisted Shadows” はまさしく現在の Richard を投影した交差する音影だと言えるでしょう。”Djent Reinhardt” よろしくメタルとジャズを交互に繰り出す Richard の両刃は、鍵盤の魔術師 Jordan Rudess のロックなアグレッションとしなやかに同化し未曾有のカタルシスを創出します。さらに HAKEN の盟友 Ross Jennings の憂いを帯びた “ゴキブリ王” の歌唱と LEPROUS を想起させるシンコペーションのリズムを伴った楽曲は、21世紀プログメタルの理想形とも言える多様性と冒険心を具現化していくのです。
David Maxim Micic, Marco Sfogli といったモダンギターヒーロー、新進気鋭 BENT KNEE のメンバー、さらに CYNIC の新ドラマーに任命された Matt Lynch の参加によって、”The Cocoon” が一際強力な現代プログレッシブの怪気炎、目眩く桃源郷となっていることを付け加えて置きましょう。
今回弊誌では、Richard Henshall にインタビューを行うことができました。「僕はいつだって貴重な時間を割いて僕たちの音楽を聴いてくれる誰にでも大きな感謝を捧げているんだよ。だって世界は素晴らしい音楽に充ちていて、その中から選んでくれているんだからね。」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PHIL RIND OF SACRED REICH !!
“Slayer And Metallica Have Always Been Our Main Musical Influences. I Think They Are Two Of The All-Time Great Metal Bands. The Success The Metallica Has Had Is Mind Blowing!”
DISC REVIEW “AWAKENING”
「SLAYER と METALLICA はいつだって俺らにとってメインの音楽的影響だったね。彼らは全時代のメタルバンドの中でも最も偉大な2つのバンドだと思う。」
オールドスラッシュ復権の年。POSSESSED や DEATH ANGEL, FLOTSAM AND JETSAM, OVERKILL が圧倒的な作品で先陣を切り、EXHORDER, HEATHEN, DARK ANGEL といった古豪の帰還も控える今年のスラッシュワールドは間違いなく高まる期待感と熱情に支配されています。”伝説” と呼ばれたカルトなヒーローたちの同時多発的再臨は、再び押し寄せる鋭利な波の震源地となっているのです。
興味深いことに、永遠の氷河が溶け出すように長い眠りから目覚めたスラッシュの魂は、大半が SLAYER や METALLICA の血脈を直に受け継いだ “第2世代” の英傑でした。中でも、最も復活作が期待されたバンドの一つが SACRED REICH だと言えるでしょう。
80年代初頭から中頃にかけて、アリゾナで “第1世代” の太陽を全身に浴びたヤングガンズは、しかし先達の真似事に終わらない独自の道を模索します。アグレッシブかつダークなデビューフル “Ignorance” からすでに、ベイエリアとは一線を画すハードコアな一面を垣間見せていた彼らは、南米におけるアメリカ帝国主義を痛烈に皮肉った EP “Surf Nicaragua” でその政治性を開花させます。時代の変遷と共に、音楽的にもファンクやグルーヴの領域まで探求した彼らは、以降一貫してその政治的風刺、アメリカンドリームのダークサイドを描き続けたのです。
2000年の活動休止、2006年のリユニオンを経て、MACHINE HEAD を離脱したオリジナルドラマー Dave McClain を加えた SACRED REICH は不死鳥のスピリットで実に23年ぶりとなる復活作 “Awakening” を世に送り出しました。ニカラグアでの波乗りは、30年の時を超えメタルの津波となってリスナーへと襲いかかります。
オープナー “Awakening” で Wiley Arnett のクラッシックかつ独特なシュレッドとリフパンチの少し奇妙な応酬が繰り広げられると世界は SACRED REICH の帰還を確信します。ただし、同時に23年の時が刻んだ変化と進化の証も感じられるはずです。
「大半はポジティブで励ますようなアルバムなんだ。」ボーカル/ベースを兼任し、SACRED REICH の推進力とも言える Phil Rind は、アートワークやレノンへの愛が示すように、長い空白の間チベット仏教に心酔しスピリチュアルな世界の見方を身につけました。憎しみを捨て去り前へと進む断捨離の心は、時に ANTHRAX の Joey Belladonna を想起させるほどメロディックに歌い上げる新たな武装を Phil へと施し、以前よりも飛躍的にワイドなパフォーマンスをその身に宿すこととなったのです。
吐き捨てる叫けびと伸びやかな歌唱のコントラストが際立つ “Divide & Conquer” はその新武装が最も輝く瞬間でしょう。さらに IRON MAIDEN の誇り高きツインリードを受け継いだエピック “Salvation”、スラッシュアタック “Manifest Reality”、バンドの軌跡である PANTERA のグルーヴをモダンに昇華した “Death Valley”、ハードコアパンクとの架け橋 “Revolution” などアルバムは “メタルの領域” において Phil の言葉通り成熟を遂げ実にバラエティーに富んでいます。
もちろん、デビューフルほどの無鉄砲な突進力やエナジーは存在しませんが、きっと同様に年齢を重ね成熟を遂げたリスナーにとって居心地の良い恐怖を運ぶレコードではあるはずです。何より、ここには Phil が最も憧れる METALLICA と同種の耳に絡みつく “危険な” フックが溢れているのですから。併せて百戦錬磨、Dave McClain の華麗なタム回しが作品に素晴らしきアクセントをもたらしていることも付け加えておきましょう。
今回弊誌では Phil Rind にインタビューを行うことが出来ました。「俺は今こそ音楽にとって偉大な時だと思っているし、生きるのに最良の時代さ。」 新鋭 IRON REGAN とのスプリットも躍動感がありましたね。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRIS BAY OF FREEDOM CALL !!
“We Just Used The Word “Metal“ For This Common Threat. In This Moment We Got This Vision. If All People Around The World Would Be Metal Fans…We Would Have Peace On Earth!”
DISC REVIEW “M.E.T.A.L.”
「今日の世界において全ての元凶の一つは、全員が共通の価値観やバランスの上で生きていないことなんだ。異なる興味、宗教間の行き違い、そして政治家は金の亡者さ。だから僕たちは “メタル” という言葉を共通点に提案したんだ。もし世界中全ての人たちがメタルファンだったら…きっと世界に平和をもたらすことができるはずさ。」
白砂糖に蜜を敷きつめたウルトラブライトなメロディー、劇画的王道ファンタジーな世界観、そしてディフォルメを加えたユーモアの精神。FREEDOM CALL は自らが掲げる “ハッピーメタル” のクルセイダーとして20年ものキャリアを積み上げてきました。
十字軍の魔法は、マスターマインド Chris Bay の演奏者、メロディーメイカー、そしてプロデューサーとしての卓越した能力を三叉撃として発動しています。
例えば SAXON 中期の快作 “Metalhead” のキーボードを聴けば Chris のマルチな才能と音算能力が伝わるはずです。さらに、根からはオールドスクールを、葉脈からはコンテンポラリーを吸収したポップの大樹 “Chasing the Sun” で花開いた光の音の葉は、メロディーの騎士に相応しい壮麗と華美を誇っていたのですから。
「”車輪の再発明” を行うつもりはないんだよ。音楽において最も重要な部分は、リスナーを心地よくすることなんだから。例え1人でも FREEDOM CALL の楽曲を聴いて幸せになってくれる人がいるなら、僕は完全に満足なんだ。」
ポジティブに振り切れたハッピーメタルの真髄は全てがこの言葉に集約しています。メタルをただキャッチーの極みへと誘う Chris の大願は、そうして10枚目の記念碑 “M.E.T.A.L.” で完璧に実現へ至ることとなりました。
メタルの数字である “666” を敢えて避け、エンジェルナンバー “111” をタイトルへと掲げたメタルとゴスペルの白き調和 “111 – The Number of the Angels” で FREEDOM CALL はリスナーを “ハッピーメタル” の領域へと巧みに誘い込みます。
記念碑としてリアルなメタルアルバムを目指した作品において、タイトルトラック “M.E.T.A.L.” はまさにメタルの予想可能性、完成された様式を現代的に具現化した楽曲でしょう。Brian May の遺伝子を引き継いだギターの魔法はクラッシックな隠し味。実際、「新曲を全部シンガロングするのが聴きたいね。」 という Chris の言葉は伊達ではありません。一聴しただけで全て口ずさみたくなるほど、”M.E.T.A.L.” の “11” 曲は突き抜けてキャッチー&ハッピーです。
ただし、人生を変えたアルバムに ELP, SUPERTRAMP が含まれていることからも、楽曲の豊富なバラエティーやフックが他の平面的なメタルレコードとは異なることが伝わるはずです。「ただメタルを書いて生み出し続ける “メタルマシーン” みたいにはなりたくないからね。」 “Sail Away” を筆頭に、キーボードやシンセサイザーのエフェクトが醸し出す音の風景も時に神々しい奇跡、無類のドラマを演出します。
そして何より、ソロアルバムの影響は絶大でした。”The Ace of the Unicorn” などは特に顕著ですが、「おそらく、両方の感覚があるんだろうな。僕は間違いなくオールドスクールなソングライターなんだけど、同時にモダンな音楽にも合わせていこうとしているからね。」 の言葉が示す通り、メンバーの変遷と共に再生を果たした FREEDOM CALL のポップセンスはモダンにアップデートされていて、典型的なロック/メタルのイヤーキャンディーにメインストリームの計算された洗練を巧みに練り込んでいるのです。
もちろん、FREEDOM CALL に宿る “光” の正体とは、”Keeper” を継ぐ者の使命であるメジャーキー、メジャーコードの完璧なる支配でしょう。陽光と哀愁のコントラストこそドイツの誇り。ダーク&シンフォニックに統一された前作 “Master of Light” はむしろ異端でした。しかしそれ以上にコンテンポラリーな音の葉までも抱きしめるポジティブなスピリットこそが核心なのかもしれませんね。
それにしても、FREEDOM CALL 然り、MAJESTICA 然り、FROZEN CROWN 然り、GLORYHAMMER 然り、TWILIGHT FORCE 然り、今年は推進力と旋律の二重奏が革命的なメロディックパワーメタルの快作が多数降臨していますね。
今回弊誌では、Chris Bay にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちは “ハッピーメタル” の十字軍で、自らが光の…マスターなんだから。」どうぞ!!
“After 13 Years Wait, Tool’s Fearless Return “Fear Inoculum” Is Not a Reformation But a Reinvention, Not Only a Look Back At The Past, But Also a Go Forward, Towards The Future.”
BIG READ: TIMELINE OF TOOL
1992: “OPIATE”
あの時点では、バンドのヴァイブは異なるものだった。音楽的に、俺らはただバンドとして自分たちの個性、パーソナリティーを見つけ出そうとしていたんだよ。あの頃のドラミングを聴くとやり過ぎだと思うこともある。」 そう Danny Carey が語れば、「L.A. に住むことで溜まった鬱憤を音楽で晴らそうとしていたね。だからあの頃の音楽は、感情的で解き放たれたプライマルスクリームなんだよ。俺は Joni Mitchell と SWANS の大ファンだったから、よりパーソナルで心に響く歌詞を目指していたんだ。」と Maynard James Keenan は語ります。
宗教や因果応報を描いた Maynard のリリックは異端の証。若さに牽引されたアグレッション、清新な表現力の躍動と、未だシンプルな設計にもかかわらずプログレッシブなヒントを覗かせるアレンジメント。”アートメタル” と謳われたデビュー EP “Opiate” には原始的な TOOL のスタンダードが確かに散りばめられていたのです。
面白い事に、Adam の担任教師は Tom Morello の母親で、Maynard と Tom は一時期バンドをやっていました。さらに Danny は Tom の紹介で TOOL に加入しています。確かにカリフォルニアから新たな何かが始まる予感はあったのです。NIRVANA のビッグセールスが後押ししたのは間違いありません。業界のハイエナたちは次の “ビッグシング” を血眼で探していました。そうして全てはこの27分から始まりました。