EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PAUL MASVIDAL OF CYNIC !!
“Chuck Gave His Life To Music And Was Always Interested In Learning New Things And Expanding His Art. I Think That Is Where We Connected As Artists. He Found In Me a Creative Young Spirit Looking To Try New Things.”
DISC REVIEW “MYTHICAL”
テクニカル/プログレッシブデスメタルの祖 DEATH がジャンルのリミットを解除したトリガーにして、CYNIC がメタルに宇宙とアトモスフィアをもたらした根源。Paul Masvidal は現代メタル史の筆頭に記載されるべき偉人です。
「Chuck はその人生を音楽に捧げ、いつも新たなことを学ぶ意欲を持ち、自身のアートを広げていったんだ。そういう点が、アーティストとしての僕たちを結びつけたんだと思う。きっと彼は僕の中にも、新たなことに挑戦する若きクリエイティブなスピリットを見つけていたんだろうな。」今は亡きデスメタルのゴッドファーザー Chuck Schuldiner の眼差しには、自身と同様に既成概念という亡霊に囚われない眩いばかりの才能が映っていたはずです。
実際、DEATH の “Human” でメタルとプログレッシブ、ジャズの垣根をやすやすと取り払った後、Paul は CYNIC をはじめ GORDIAN KNOT, ÆON SPOKE といった “器” を使い分けながら野心的な音旅を続けて来たのです。
咆哮と SF のスペーシーな融合 “Focus”、幽玄でアンビエントなアートメタルの極地 “Traced in Air” “Carbon-Based Anatomy”、そして THE BEATLES の精神を受け継ぐアビーロードメタル “Kindly Bent to Free Us”。そうしてもちろん、Paul がメスを握り執刀する音楽の臨床実験は、ソロ作品においても同様に先鋭と神秘の宇宙でした。
「分かっていたことが2つあってね。1つはアコースティックのレコードを作りたかったこと。もう1つは、ヒーリング体験を伴う新たなサウンドテクノロジーに深く興味を惹かれていたこと。」
サウンドスケープを探求するスペシャリストが “MYTHICAL” で到達したのは、音楽と治療の未知なる融合でした。
もちろん、これまでもロックとエレクトロニカを掛け合わせる実験は幾度も行われて来ましたし、ヒーリングを目的とした環境音楽も当然存在しています。
しかし Paul Masvidal が遂に発想した、シンガーソングライター的アコースティックな空間に、集中やくつろぎ、そして癒しを得るためのアイソクロニック音やバイノーラルビートを注入する試みは前代未聞でしょう。
「Lennon/McCartney を愛しているからね。彼ら二人はソングライティングにおいて、最大のインスピレーションなんだ!」
Paul が語るように、シンガーソングライターというルーツ、”家” に回帰した MASVIDAL の音楽は、THE BEATLES への愛情に満ち溢れています。仄かに RADIOHEAD も存在するでしょうか。
コード進行、旋律や歌い回しは “Fab Four” の魔法を深々と継承し、”Kindly Bent to Free Us” からメタリックな外観を取り払ったオーガニックな木造建築は居心地の良い自由で快適な空間を謳歌します。特に CYNIC のメランコリーまで濃密に反映した “Parasite” の美しさは筆舌に尽くしがたいですね。
そして、このアーティスティックな建造物にはスピリチュアルな癒しの効果も付与されています。表となり、裏となり、アルバムを通して耳に届くアイソクロニック音やバイノーラルビートは、不思議と Paul の演奏に調和し、音の治療という奇跡を実現するのです。”メタルが癌に効く” より先に、心と体に “効く” 音楽を作り上げてしまった鬼才の凄み。
「そういった “治療用トーン” や “脳を楽しませるトーン” を音楽に組み込むことができれば、音楽の効果と治癒力を高めることができると思った訳だよ。」音の葉と感情の相互作用を追求し続けるマエストロはそうして最後に大きなサプライズを用意していました。
“Isochronic Tone-Bath”。音浴、つまり音のお風呂体験。EPに用意された5曲から、Paul の演奏を剥ぎ取りヒーリングのトーンのみをレコードの最後に据えたマエストロの真の目的は、”聴く” と “感じる” の同時体験を瞑想と共にリスナーへ提供すること。そうして 「信念を曲げず、信念の元に」 進み続ける冒音者は、再度真に常識に逆らう道を進み、革命的な作品を完成へと導いたのです。
今回弊誌では、Paul Masvidal にインタビューを行うことが出来ました。「Chuck とは素晴らしい思い出が沢山あるよ。その思い出の大半は、僕を笑顔にしてくれるんだよ。僕は彼が充実した作品とインスピレーションを、これからミュージシャンとなる世代に残してくれたことが嬉しいんだ。」 きっと真の音楽は時の荒波にも色褪せません。どうぞ!!
MASVIDAL “MYTHICAL” : 10/10
INTERVIEW WITH PAUL MASVIDAL
Q1: Hi, Paul! First of all, how was Cynic Japan Tour with Cyclamen and Plini? Actually, lot’s of Japanese fans were really excited to see the legend, finally!
【PAUL】: The Japan tour was a dream come true. It was Cynic’s first time there, and we couldn’t have asked for a better reception from Japanese audiences. The vibe was tremendous!
Q1: まずは、CYCLAMEN, PLINI と共演した CYNIC 日本ツアーの感想からお話ししていただけますか? 日本のファンは、遂に伝説をみることが出来てとても興奮していましたよ。
【PAUL】: あの日本ツアーはまさに夢が叶ったって感じだったね。CYNIC にとって初めての日本ツアーだったんだ。
あれ程の歓迎を日本のオーディエンスから受けるなんてね!素晴らしいヴァイブだったよ!
Q2: After the Tour, Cynic and Sean Reinert decided to go another way. Could you tell us about the decision as much as you can?
【PAUL】: Having a working relationship with a life long friend deteriorate in such a way is eye opening and it put me in touch with regions of sadness in my heart I didn’t know existed. Reinert was going through personal difficulties for many years, and unfortunately those closest to him felt the brunt of that pain. The year prior to our Japan tour, I was trying to separate from him gently and quietly, but unfortunately he didn’t want to go in such a way. When the whole situation unfolded, I felt sad cause I knew he was suffering terribly and didn’t know how to make a skillful change. Ultimately, I choose not to argue with reality and trust that matters unfolded exactly as they needed. I’m grateful for the great music we made together, and that he’s been able to find a new life for himself outside of Cynic. He needed that, and Cynic has been able to move forward.
Q2: 日本ツアーの後、CYNIC は長年ドラマーを務めた Sean Reinart と別々の道を歩むことになりました。
出来るだけで構いません。あの決断についてお話ししていただけますか?
【PAUL】: 生涯の友人とこんな風に仕事上の関係を悪化させるのは、ショッキングだったし、存在さえ知らなかった心の中の悲しみの場所に触れることになったね。
Reinart は何年も個人的な問題に苦しめられていて、だから彼と親しい人たちは、その苦しみに焼かれるような思いをしていたんだ。日本ツアーの一年前に、僕は優しく、静かに彼と距離を置こうとしたんだよ。だけど残念ながら、彼はそうなることを望まなかったんだ。
引き返せない所まで問題が発展してしまった時、僕は悲しかったね。だって僕は彼が酷く苦しんでいるのを知っていたけど、状況を上手く改善する方法が分からなかったんだから。それで最終的に僕は、現実と葛藤しないことを選んで、この問題は何か必要性があってこのように発展したんだと信じることにしたんだよ。
僕たちが共に作った偉大な音楽に感謝しているし、彼が CYNIC から離れた場所で新たな人生を見つけられたことにもね。彼にはそれが必要だったんだよ。そうして CYNIC も前に進むことが出来るんだ。
Q3: Last year, we could hear Cynic’s great new song “Humanoid”. That was the first one with Matt Lynch on drums, and it seems he fit’s very well with Cynic, right? Anyway, is there any plan to making Cynic’s new record?
【PAUL】: Sean Malone and I are working with Matt Lynch on the new album. It’s very exciting new music for us. I suspect it will be coming out sometime mid next year.
Q3: 昨年 CYNIC は、新たなドラマー Matt Lynch をフィーチャーした素晴らしい新曲 “Humanoid” をリリースしましたね。アルバムにも期待が高まりますが。
【PAUL】: Sean Malone と僕は新たなアルバムで Matt Lynch と仕事をしているよ。僕たちにとってとてもエキサイティングな新しい音楽だよ。来年の中ごろにはリリースしたいと考えているよ。
Q4: OK, let’s talk about your solo record “Mythical”. When I heard “Kindly Bent to Free Us”, I think you are modern day’s Lennon/Mccartney, and after hearing “Mythical”, I believe it strongly. Actually, are they one of your inspirations?
【PAUL】: Thank you so much. That is the biggest complement I could ever receive and I am deeply humbled by it. I love Lennon/McCartney. They are two of my biggest songwriting inspirations!
Q4: では、あなたのソロ作品 “Mythical” について話しましょう。
CYNIC の “Kindly Bent to Free Us” を聴いた時、あなたは現代の Lennon/McCartney だと感じたのですが、”Mythical” を聴いた後それは確信に変わりました。
【PAUL】: 本当にありがとう。その表現は最上級の賛辞だし、実に恐れ多いような気もするね。Lennon/McCartney を愛しているからね。
彼ら二人はソングライティングにおいて、最大のインスピレーションなんだ!
Q5: When you appeared to the scene, you were one of the young guitar hero with high musicianship. But gradually, you have changed your musical direction to more singer and songwriter way. Do you agree that?
【PAUL】: Yes. I grew up listening to singer songwriters as a child, and this is essentially a return to my roots. It’s like a full circle back home. I still play electric guitar and a new Cynic record will eventually surface but I am most certainly interested in stripping away the layers now with this work and returning “home”.
Q5: あなたがシーンに登場した時は、高いテクニックを備えたギターヒーローとして注目を集めていましたね。
ただ、徐々にシンガー、そしてソングライターとしての方向性によりフォーカスしているようにも思えます。
【PAUL】: そうだね。子供の頃はシンガーソングライターを聴いて育ったんだ。だからまあ、そのルーツに回帰するのは必然とも言えるだろうね。一周して家に帰るようなものさ。
今でもエレキギターはプレイするし、新しい CYNIC のレコードでもその成果は見られるはずだよ。だけどね、今最も僕が興味を持っているのは、ソロ作品のようにそういった人工的なレイヤーを剥ぎ取って、”家” に戻ることなんだよ。
Q6: The is the EP, the first of a trio called “Mythical Human Vessel”. Does the storyline and concept relate to your spiritualism and Buddhism?
【PAUL】: These songs are an attempt at accessing truth in the most direct and honest way possible. I had a particular story in mind but I want people to experience it and make of it what they will without any narrative framework that I might impose on it. In a sense, the story is going to be different for everyone and I love that. My personal interpretation is just that–personal–and ultimately beside the point. What matters is the emotional response that it evokes for each listener. But I do think it’s helpful to think of it this way: The three EPs chart an emotional progression: a Beginning, a Middle and an End.
Q6: “Mythical” は “Mythical Human Vessel” というトリロジーの第1作のようですね?
【PAUL】: ソロ作品の楽曲は、真実に対して最もダイレクトに、正直な方法でアクセスする試みだと言えるだろうね。
あるストーリーは頭の中にあるんだよ。だけど、僕はリスナーにこの作品を実際に体験して欲しいんだ。僕が説明を加えると狭いフレームの中で体験せざるを得なくなってしまうからね。
だからある意味では、このストーリーは全員が違うように解釈出来ると言えるだろうね。僕はそういうのが好きなんだよ。
つまり、僕の解釈はただ個人的なもので、究極的にはその狙いから的が外れている訳だよ。重要なのはそれぞれのリスナーの感情を喚起することなんだからね。
ただこういう風にヒントを出せば理解の手助けにはなるだろうね。この3つの EP は感情の進行を表すチャート、図表のようなものなんだ。始まり、中盤、そして終わりのね。
Q7: Actually, mixing Rock and electronic have experimented for years, but there have been never happened the experience of an acoustic singer-songwriter record with isochronic tones. You are the first person, right? Where did the inspiration come from?
【PAUL】: Indeed, I suspect this may be the first time these two worlds have merged in such a way. I knew two things, I wanted to make an acoustic record and I have also been deeply interested in new technologies using sound to experiment with healing. I began exploring binaural beats and Isochronic tones and working with material on Dr. Stephane Pigeon’s site, mynoise.net. Due to the acoustic material having so much to do with emotional transparency, I knew that if I could incorporate these therapeutic tones brain-entrainment tones into the music I would increase the effects of the music and it’s healing properties. Thankfully Dr. Pigeon loved the material and helped to program the tones for each song. Isochronic’s are fascinating in that there’s an interactive component with how our mind can work with the frequencies to facilitate our own healing. It’s truly a powerful medicine and I’m grateful it’s found a home on these records. I also included on each album, an ‘Isochronic Tone-Bath’ which is the tones of the first 5 songs without the music. So in a way you ‘hear/feel’ the songs again, but as a singular tone-bath experience.
Q7: ロックとエレクトロニカを融合する実験はこれまで何年も行われてきましたが、あなたのようにアコースティックのシンガーソングライターテイストとアイソクロニック音 (集中やくつろぎを得るための等時間隔トーン) をミックスするアーティストは存在しませんよね?
【PAUL】: その通りだよ。このようなやり方でその2つの世界を繋いだのはおそらく僕が初めてだろうね。分かっていたことが2つあってね。1つはアコースティックのレコードを作りたかったこと。もう1つは、ヒーリング体験を伴う新たなサウンドテクノロジーに深く興味を惹かれていたこと。僕はバイノーラルビートとアイソクロニック音の探究を始め、Dr. Stephane Pigeon のサイト のマテリアルを使用してみたんだ。
アコースティックのマテリアルは感情の透明性に大きく関係しているから、そういった “治療用トーン” や “脳を楽しませるトーン” を音楽に組み込むことができれば、音楽の効果と治癒力を高めることができると思った訳だよ。ありがたいことに、Stephane 博士は僕のマテリアルを気に入って、それぞれの曲にそのトーンをプログラムする手助けをしてくれたね。
アイソクロニックは魅力的だよ。癒しを容易にするために、僕たちの心がどのように周波数と連携することが出来るのかというインタラクティブな成分という意味でね。それは本当に強力な薬で、僕のソロ作品たちに “家” が見つかったことに感謝しているんだ。
同時に僕は各アルバムで、最初の5曲から音楽を抜いてアイソクロニック音だけを抽出した6曲目 “Isochronic Tone-Bath” “音のお風呂体験” を含めたんだ。 だから、ある意味リスナーは楽曲を再度 ‘聞く/感じる” 体験が出来て、同時に “音のお風呂” に入浴することも出来るんだ。
Q8: So, 18 years have passed since Chuck Schuldiner passed away. Maybe, Death was the first time we knew your name. Definitely, “Human” never gets old after many years. Could you please talk about memory with Chuck and musical journey with “Godfather of Death metal”?
【PAUL】: Amazing, it’s been 18 years! I first met Chuck when I was 17, through the underground tape trading community. We became fast friends and I somehow knew we would eventually make music together, even back then. Chuck gave his life to music and was always interested in learning new things and expanding his art. I think that is where we connected as artists. He found in me a creative young spirit looking to try new things. He also gave me a huge opportunity and essentially ushered me into the world of being a working musician, all because he believed in me. That alone, meant so much to me as a young musician trying to find a way into the music industry. I have so many fantastic memories with Chuck, many of which bring a smile to my face. I’m glad he was able to leave behind a substantial body of work and inspiration for generations of musicians to come.
Q8: Chuck Schuldiner が亡くなって18年が経ちましたね。DEATH はあなたを最初に世界へと紹介したバンドで、”Human” は長い月日を経ても色褪せることはありません。
【PAUL】: 信じられないね!18年も経つんだよ!Chuck に初めて会ったのは17の時だったね。アンダーグラウンドのテープトレードのコミュニティーでね。僕たちはすぐに友人となり、振り返ってみればその時僕はいつか彼と音楽を作るだろうと朧げに知っていたような気がするね。
Chuck はその人生を音楽に捧げ、いつも新たなことを学ぶ意欲を持ち、自身のアートを広げていったんだ。そういう点が、アーティストとしての僕たちを結びつけたんだと思う。きっと彼は僕の中にも、新たなことに挑戦する若きクリエイティブなスピリットを見つけていたんだろうな。
それに彼は僕に大きなチャンスを与えてくれて、ミュージシャンとしてこの世界で仕事をしていくために欠かせないことの案内役を買って出てくれたんだ。Chuck とは素晴らしい思い出が沢山あるよ。その思い出の大半は、僕を笑顔にしてくれるんだ。僕は彼が充実した作品とインスピレーションを、これからミュージシャンとなる世代に残してくれたことが嬉しいんだよ。
Q9: Master, Gordian Knot, Æon Spoke…so many things I’d love to ask, haha. But Cynic released “Focus” GTR book recently. It means, actually, “Focus” is milestone of technical/prog metal, and changed metal world. Looking back now, what’s the record to you?
【PAUL】: Focus for me is about self determination. It’s also about listening to your instincts and trusting yourself. Cynic had an uphill battle with Focus because not a lot of people seemed to understand the music, and at times we felt like outsiders on a different planet. Ultimately all these things became our legacy and it was because we decided to stick to our guns and make a record that we believed in, not what everyone else told us to make. We truly went against the grain and I’m grateful for that.
Q9: CYNIC としては、先日 “Focus” の GTR Book を発売しましたね。間違いなくあの作品は、テクニカル/プログメタルにとってマイルストーンとなりましたし、メタルの世界を変えました。
今振り返ってみて、”Focus” はあなたにとってどんな作品ですか?
【PAUL】: “Focus” は僕にとって自己決定の作品だね。それに、本能に耳を傾け、自分自身を信頼することでもあるね。当時、多くの人が “Focus” の音楽を理解しているようには見えなかったから、CYNIC は “Focus” で苦戦を強いられて、時に僕たちは別の惑星に来た部外者のようにも感じていたんだ。
だけど最終的には、そういったこと全てが僕たちの遺産、レガシーとなったんだ。だからこそ、僕たちは信念を曲げず、信念の元にレコードを作ると決めたんだからね。みんなが僕たちに勧めるような音楽ではなくね。僕たちは真に常識に逆らう道を進み、そう出来たことに感謝しているんだ。
FIVE ALBUMS THAT CHANGED PAUL’S LIFE
That is difficult to answer cause there’s so many from different periods of my life, but here’s some consistent faves!