COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【KING’S X : THREE SIDES OF ONE】


COVER STORY : KING’S X “THREE SIDES OF ONE”

“I wrote lyrics with my age in mind, so it has become sort of my mantra for what I’m doing for the rest of my life”

THREE SIDES OF ONE

これまで、KING’S X ほど見過ごされてきたバンドはいないかもしれません。ただし、dUg Pinnick, Ty Tabor, Jerry Gaskill の3人は、チャートのトップに立つことはなかったかもしれませんが、熱心なファンの心には深く刻まれ続けています。
80年代半ば、このトリオはテキサス州ヒューストンに渡り、メガフォース・レコードと契約。”Out of the Silent Planet”(1988)、”Gretchen Goes to Nebraska”(1989)、”Faith Hope Love”(1990)と、口紅とロングヘアのゴージャスな時代において、あらゆるジャンルの規範を無視した伝説のアルバムを3枚録音しました。
だからこそ、90年代初頭には、多くの仲間のロックバンドを虐殺したグランジの猛攻撃から免れることができたのかもしれません。音楽界の寵児として、また “次の大物” として、KING’S X はアトランティック・レコードに移籍し、セルフタイトルのアルバム(1992)を録音しましたが、残念ながらビルボードに並ぶほどの成功は得られませんでした。それでも彼らは、90年代から2000年代にかけて、感情を揺さぶる、音楽的に豊かなアルバムを次々と発表し続けました。
そうしてロックミュージックで最も露出の少ないバンドは、2008年に突然沈黙するまで、自らの道を歩み続けたのです。
休止中も、dUg は KXM や GRINDER BLUES で音楽を作り続け、自身の名義でレコードをリリースするなど、ゲリラ戦士として戦いを続けていました。クリエイティビティに溢れるベーシストは KING’S X の終焉を考えることはありませんでしたが、一方で、次のアルバムも必ずしも期待しているわけではありませんでした。こうして14年という長い間、KING’S X はただ沈黙を守り続けました。世界は変遷し、新しい現状が形成され、KING’S X はもはや時代の一員ではなくなったかに思われました。
しかし、14年という長い年月を経て、その門戸は開かれます。ついに彼らは再び一緒に作曲し、レコーディングすることを決断したのです。その経緯を dUg が語ります。
「72歳になるんだけど、歳を重ねた実感があるんだ。自分の年齢を意識して歌詞を書いたから、アルバムは残りの人生をどうするかという詩的なマントラのようなものになった。基本的に、私は人生が終わるまでなんとか乗り切るつもりだ。世の中が見えてきてね。友達のこと、Chris Cornell, Chester Benington, Layne Staley…死んだり自殺したりした人たちのことを考えると、ただただ痛くて、”自分は絶対にそんなことはしない” といつも思っている。人生を乗り切るためには、麻酔をかけられなければならないだろう。けど、あの世で何が起こっているのかわからないし、この世で惨めで痛い思いをしてまで、何も知らないあの世に移りたいなんて馬鹿げてる…それが私の論理なんだ。だから、アルバムはそういうところから生まれたものなんだ」

たしかに、”Three Sides of One” は、一見すると瞑想的な作品に見えます。
「まあ、メンバーはレコードを作りたくなかったんだ。なぜなら、作るなら今まで作ったどの作品よりも良いものでなければならなかったから。これまでは、自分たちがやったアルバムのレパートリーに加えるべきものがあるとは感じていなかったんだ。だから、14年かかってようやく “よし、これはいけるぞ” と思えたんだ。私自身は、初日から準備万端だった。14年の間に、いくつかのサイド・プロジェクトを立ち上げたり、いろいろなことをやっていたからね。私が持ち込んだ曲は27曲で、全部新曲だし、Jerry と Tyも何曲か持ち込んでいて、それも全部新曲だ。それで、リストに載っているものを全部、十分な量になるまで実際に覚えていったんだ」
アルバムのタイトル、”Three Sides of One” は3人が共有する生来のケミストリーを表現しています。
「いつもは、アルバムの名前は決まっているんだけど、今回は誰も思いつかなかったんだよね。それで、マネージャーが “Three Sides of Truth” と言ったんだけど、私は、なら “Three Sides of One” はどうだろうと思って、みんなが、ああ、それならいいと言って。そして、そこから出発したんだよ。しばらくすると、子供を持つのと同じで、名前はそれほど重要ではなくなるものだ (笑)」
アルバムには、歳を重ねた3人の自然な姿がさながら年輪のごとく刻まれています。
「Jerry は、基本的に臨死体験から多くの曲を書いている。そして Ty は、今の生活を観察して曲を書いた。私も同じで、72歳になるんだけど、世界が今までの人生とは違って見えてきたんだ。だって、今まで生きてきた距離に比べたら、もうそんなに長くは生きられないんだとやっとわかったからね。そして、そのことについて話したり歌ったりしたかったんだよね。70歳を迎えて、私にとって一番大きなことは、今の世界をどう見ているかを詩的に歌詞にすること、そして同時に自分の周りで起こっていることを書くことだった。政治や人々が憎しみ合う様子など、でたらめなことが起きていることは分かっていたんだ。それを歌うんだけど、ただ説教しているように聞こえたり、すでに聞いたことのあるようなことを言ったりしないように、工夫しているつもりなんだ。
今は、言葉に気をつけないと、アメリカでは自動的に批判される。私は問題を解決するのが好きなんだ。私の問題は、直せないものを直そうとすること。私はいつも、なぜ世界がうまくいかないのかを論理的に解明しようとしてきた。ある意味、人は全員とは分かり合えないというのが結論なのかもしれない。だから、年齢は私たち全員に影響を与えたと思うんだ。また、Jerry はバンドに曲を提出することはあまりない。でも実際は、彼の曲が全員の中で一番いい曲だと思うこともあるんだ。だから曲を持ってきてと言ったんだ。自分たちのアルバムにするために、本当に頭を使ったんだよ」

dUg は今回、”慣れ親しんだバンドでありながら、新しいバンドにいるような気がする” という言葉を残しています。
「新しいバンドに入ったという感じではなく、自分たちを再発見したという感じだと思う。なんというか、”自分は実はいいやつなんだ” と気づくような感覚なんだ。わかるかな?結局、スタジオからずっと離れていて、演奏し始めると、疑心暗鬼になるんだよね。つまり、私たちはいつも自分たちのやることなすこと全部が嫌で、本当のアーティストらしく、自分の芸術に対して否定的なんだ。でも今回は、最初に作った曲のとき、スタジオに行ってベーシックなトラックを聴いたら、生まれて初めて “おお、すごいな!” 思ったのを覚えているよ。やっとわかったよ…と。私たちの演奏には、欠点ばかりに気を取られていて気づかなかった何かがあるんだよな。だから、とてもエキサイティングで、もっともっと探求したくなったんだ」
その新たなマインドは、アルバムの歌詞の内容にも表れています。
「絶望的に見える世界の状況も、人類に何らかの救済や和解があることを願いつつ、それが歌詞に深く刻み込まれている。まあ、自分の周りで起こっていることを考えただけなんだけど。”Give It Up” は、私の気持ちを代弁してくれているような気がするね。私はライトが消えるまで、絶対に諦めない。Layne, Chris, Chester…友達が自殺していくのを見てきたんだ。クリスが死んだ頃にこの歌詞を書いていて、思ったんだよ。”ライトが消えるまで、絶対にあきらめないぞ” と。だって、死後の世界に何があるのかわからないし、そこを好きになれないかもしれないから。だから死ぬことは考えないよ。今できることを精一杯やりたい。最後に麻酔をかけられるまで、ずっとここにいたい。これが私の知っているすべてで、終わるまで乗り切るつもり。それが私にとっての知恵だから。それ以外のことは、他の人が決めることだけどね」

“Swipe Up” は時代を反映した楽曲。
「この曲は Jerry がジョン・ボーナムのスイッチを入れているね。インターネットや iPhone を利用しているときの体験がテーマになっているんだ。私たちはただスワイプし続けるだけで、アルゴリズムが自分だけの小さな世界の中で欲しいものを与えてくれる。だから、この曲は全部それについて歌っているんだ。iPhoneの小さな世界で生きていることについて」
テクノロジーの進歩は、音楽全般に対して悪影響を及ぼしているのでしょうか?
「進歩が起これば芸術も変わる。そういう観点では考えていないよ。例えば、最初のドラムマシンが登場した時、多くのドラマーが職を失った。しかし、突然、ドラムマシンのような安定性とタイミングを持った機械が登場したことで、私たちは皆変わり、クリックトラックで演奏するようになり、ドラマーはより良くなったんだ。オールドスクールはまだ存在して、まだレコードを買い、CDを買っている人もいるけど、新しい世界では音楽の見方や聴き方が違うよね? 彼らは iPhone で音楽を聴くし、彼らが好きな音楽も全然違う。それが “彼ら” の音楽なんだよ。
私が若い頃、THE ALLMAN BROTHERS を聴いていたら、親が “そんなのブルースじゃない” と言うようなものさ。よく、”BB KING を聴きなさい” と言われたものだよ。つまり、進歩とは、そこから何を学ぶか、そして自分の芸術をどのように変化させるかということなんだ。私は、すべてのことをポジティブにとらえるようにしている。難しいけどね。ナップスターが登場したとき、みんなが我々の音楽を配り始めて、それは最悪だった。それで、私たちはひどい目に遭ったよ。でもね、それでどうなったか?私たちは、人々が買ってくれるような素晴らしい商品を作る方法を学ばなければならなかったし、人々が私たちのライブを見に来るような良いコンサートをやらなければならなくなった。自分に起こることはすべて、自分なりの方法で適応していくしかないんだ。あの出来事で泣く人がいるなんて、そんなの戯言だ。泣いてばかりじゃダメだ。立ち上がって、やり遂げるんだ」

ネットがもたらしたものとその弊害にも言及します。
「人との関係において私が常に念頭に置いているのは、相手の行動を理解し、自分の気持ちを明確にして、争いのない方法でお互いに共存できるようにすることなんだ。私はいつも、平和を作るための新しい方法を探している。昔、このことを歌にしたことがあってね。私の人生は、どうやって人と良い友達になるかの積み重ねだった。彼らを知り、彼らを理解し、彼らを愛するようになることのね。
私は、人と一緒にいて、同意したり、反対したりして、みんながうまくやっていけることに心地よさを感じていたし、そのことに満足していた。だけど突然、アルゴリズムが入ってきて、みんながYouTube やスマホなどを見ていると、ビッグブラザーが私たちの行動をすべて見ていて、私たちの好みをフィード、与えてくるようになった。それが始まって10年ほど経ったよね。遂に私たちは、スマホの向こうに同じ現実を持っている人は一人もいないというところまで導かれてしまった。一人もね。一つの信念に溺れるまでとことん与えられる。そして、突然、誰も信用できなくなり、それぞれが快適で同じ意見を持つ人だけが集まる洞穴の”部族”に戻ってしまうんだ。
インターネットがもたらしたもの、それは私たちが原始人だった頃のような “部族”を生み出したということなんだ。
私には出口がわからない。今のところ、出口は見えないよ。たとえコンピュータを全部止められても、私たちにはすでに強固な”部族”がある。そのどれもが外部からの影響を受けないようになっているんだよ。変えることができる唯一のものは、洪水や宇宙人の侵路で、全員が警戒心を捨てて人類のために戦い、何か統一的な危機が訪れることしかないよね」
アルバムのクローサー “Everything Everywhere” はまさに完璧なエンディングです。
「ビートルズのようなサウンドの曲を書きたかったんだ (笑)。観客たちが叫びながら歌っているような感じで、私のアンセムという感じ。大勢の人が手を挙げて歌っているのを見れたらいいなと思うんだ。そうしたら気持ちいいからね。この曲には真実の要素が含まれていると思う。なぜなら、私たちは皆、愛を探しているから。愛には、たわごとをかき分け、すべてを癒し、すべてを乗り越える力がある。この曲は私の家路であり、私の癒しだから」

他の作品よりも優れていなければ、必ずしもアルバムを作る必要はないということは、14年経った今、この作品はこれまでやってきたことをすべて上回るということなのでしょうか?
「ああ、そうだね、このアルバムは今までのどの作品よりも優れているね。というのも、私たちは43年間バンドとして活動してきたわけだから、何をするにしても、すでにやったことよりも良くなければならない。あらゆる意味でそう思っているよ。例えば、子供にマーカーを持たせて、 “毎日、壁に直線を引きなさい” と言うと、50歳か60歳になる頃には、その直線があまりにもまっすぐで、びっくりするくらいになるはずだ。だから、私が考えるに、自分のやっていることを続けていれば、必ず良くなる。それは当たり前のことなんだよ。
ZZ TOP や MESHUGGAH など、私たちと同じくらい長く活動しているバンドを観に行って、20年、30年前に書かれたものを今聴くと、”ああ、同じ曲なのに、どうしてこんなに素晴らしく良く聞こえるんだろう” と思うことがある。だから、私たちも同様に良くなっていると思う。曲作りに関しては、とにかく曲を作り続けて、みんながそれを気に入ってくれることを祈るしかないけどね。でも、シンプルな曲の書き方や、複雑な曲の書き方を学び、それを成功させるために、あらゆる方法で限界に挑戦し続けているんだ。それでも、誰かがつまらないと文句を言うかもしれない。だから、結局は、自分の頭の中に何があるのか、そして、世界中が納得するような曲を書きたいと思ったときに何をやり遂げることができるのか、ということなんだ。たとえそれが、おそらく実現することのない盲目的なファンタジーであっても、それは私の目標であり、実行するだけでもやりがいがあるんだ。つまり、人に伝わろうが伝わらなかろうが、音楽をやり続けること、それが僕にとって最も意味のあることなんだ」
心の中で、KING’S Xはもう二度とレコードを作らないかもしれないと思ったことはあるのでしょうか?
「本当に考えなかったよ。唯一、もう二度とレコードを作らないかもと考えたのは、Jerry が初めて心臓発作を起こしたとき。彼の奥さんからメールが来て、”Jerry が心臓発作を起こした。生きられる確率は50/50″ と。それを見て、私はベッドから飛び起き、”ああ、大変だ…私たちはもう終わってしまうのか” と思ったよ。”全世界で最高の親友の一人がいなくなるのか?バンドができなくなるのか?私が持っているもの、私たちが持っているもの、すべてを失ってしまうのか?” とね。その時に書いたのが “Ain’t That The Truth” で、これはソロアルバムの “Naked” に収録された。1週間後くらいに書いたんだけど、1行目に50/50の可能性みたいなのがあって、すごく影響を受けたんだよね。それ以外は、KING’S X の終わりを意識することはないね。だから、考えたこともないんだと思う。すごい。そう考えると、ちょっとクレイジーだよね!」

2022年はバンドが1992年にリリースしたセルフタイトルのレコードから30周年にあたりました。
「まあ、Sam Taylor との最後のレコードだったわけで、それはそれで意味があった。それまでは、KING’S Xのサウンドを最大限に追求していたと思うんだ。最初の3枚は、インスピレーションを受けたものを何でも書いて、自分自身を見つけようとしていたし、自分自身のサウンドを見つけようとしていたから、いろんな意味で実験的だったと思うんだ。でも、4枚目のアルバムになると、ある程度定まってきたよね。曲作りに関して言えば、”The World Around Me” のような曲は、私が “バックス・バニーのリフ” と呼んでいるもので、ああいうカートゥーンのサウンドが好きなんだ。あのレコードが完成したとき、私たちは気に入っていたし、サウンド的にも良かったと思うんだけど、バンドにとってはひとつの終わりであり、ある種のサウンドの終わりでもあったんだ。Sam Taylor が抜けた後、次のアルバムは “Dogman” で、Brendan O’braien は “このアルバムに何を求めているんだ” と言ったんだ…”ライブで鳴っているような音を出したいんだ。ロックバンドのようなサウンドにしたいんだ” と答えたね。だから “Dogman” では、Brendan はすべてのレイヤーを取り払って、ただひたすらレコードを作らせてくれたんだ」
KING’S X はメジャーレーベルであるアトランティック・レコードから初めて作品をリリースしたバンドでもあります。
「我々はレコード会社からプレッシャーを感じたことはない。なぜなら、我々はレコード会社に “勝手にしろ” と言えるくらい反抗的だから (笑)。私たちはいつもそうだったんだ。アトランティックの子会社だったメガフォースに所属していたんだけど、”Over My Head” が出たときに、彼らが我々に電話してきて言ったんだ。”ラジオで流れてヒットしそうな曲を書くと、いつもその真ん中に何かを入れて、すべてを台無しにするのはなぜだ?”って。こう答えたよ。 “それが私たちの音楽の書き方だからな。ピクニックの真ん中に列車の事故を置いたり、その逆が好きなんだ” ってね。だから、私たちのことを説明したり、カテゴリーに入れたりするのは苦労したよ。ある時期、私たちは音楽業界の寵児で、誰もが私たちが大成することを応援していた。でも、要するに、世の中は茶色いコーラを飲み続けるということなんだ。透明なコーラの味がまったく同じであっても、未知の味に乗り換えることはないでしょう。茶色のコーラを飲み続けるんだ。私に言わせれば、何百万も売り上げているバンドのほとんどは、自分のやりたいことをやっていない。そのようなバンドは、もう一度、本当のことをやりたいと願っているんだ」

反抗的といえば、dUg はかつてキリスト教という “権威” にも牙を剥いています。”Let It Rain” の歌詞はまさにそんな dUg の心情を反映した楽曲。”世界の終わりか新しい始まりか?救世主は?神々は? 今こそ私たちを救ってはくれないのか? 誰もが権利を主張し誰もが戦いたがっている 誰もが自分を正当化して だから雨を降らせよう 恐れを洗い流すために”
「ゲイであることを公表したとき、ハードロック・コミュニティからの反発はなかったんだ。私は声明を出したり、プレス発表をしたことはなくてね。ただ、メジャーなクリスチャン雑誌のインタビューを受けたんだ。彼らが延々と話すから、私はただ思ったんだ。”クリスチャンの偽善にはうんざりだ。私はゲイだと言って、それで終わりにしよう” とね。
今日、それは問題ではない。誰からも反発されたこともないしね。ただし、あの記事が出たときは別だった。KING’S Xのレコードがキリスト教系の店で販売禁止になったんだ。その時、私たちは “素晴らしい!これでキリスト教の汚名から逃れられる”と思った。なぜか、KING’S Xはクリスチャン・バンドと思われていたからね。当時の私たちの信仰がそうだったからかもしれないけど、今はもう誰もそうではない。イエス・キリストは救世主ではないからね。70歳になったとき、世界を見渡してみたんだ。人々にはもっと思いやりと愛が必要だと思った。”雨を降らせて恐怖を洗い流せ” というのは、いい例えだよ。つまり、私たちが問題を抱えているのは、私たちが恐怖を恐れているから。立ち上がり、”怖がるのをやめよう!” と歌う、それが私の仕事なんだ」
しかし、dUg が3歳の時、連れ去られた宇宙人はキリストのようだったとも。
「3歳だって記憶しているのは、母がまだ一緒に住んでいたから。母は私が3歳のとき去ったからね。私が寝ていると、その人が部屋に入ってきたんだ。長いブロンドの髪の毛でローブを着て、それに銀色のベルトを巻いていた。すごく背が高かったのを覚えてる。足に巻き付けるサンダルを履いていたよ。裏口から外に出て、舞い上がったのを覚えてる。私は目が覚めたばかりだったが、外はとても明るかった。その時点で何かおかしいって思って、その人物から離れようとあばれたんだ。ようやく、彼は私の手を放した。次に覚えているのは、母の膝の上にいたこと。それって、ずっと、クレイジーで馬鹿げたことだと考えていた。でも40を過ぎたとき、”Ancient Aliens” を見ていて、わかったんだ。彼らは、人間がコミュニケーションを取ったり、拉致されたという4つのエイリアンのタイプについて話していた。その一つ、Nordic と呼ばれているエイリアンが、まさに彼だった。それまでは、夢を見てたんだって思ってた。でも、40年が経ち、理解したよ。私は拉致されたんだ」

宗教は dUg にとっていつしか虐待へと変わっていました。
「ゲイは忌み嫌われる存在で、神はそれを聖霊への冒涜以外の何ものでもないと嫌ってる。聖書によれば、男は他の男と寝てはならない。私はずっとそう言われてきたけど、でも同性愛者だ。
だから、誰にも言えなかったんだよ。ある時、”じゃあ、イエスがしたようにやってみよう” と決心したね。3日間断食して、自分を”ストレート”に変えてくれるよう神様にお願いしようと思ったんだ。田舎のトレーラーに座って、2日間断食して、食べずに水だけ飲んでたよ。祈って、祈って、泣いて、神が私を変えてくれるように懇願したけど、私は何も変化を感じなかった。そして、私は立ち止まって、”あきらめます” と言ったんだ。心の奥底にあったのは、人々が言う『神をあきらめるな』『神はまだ終わっていない』『神を待たねばならない』『神のタイミングで物事を得ることはできない』という聖句のことだった。だからその時は、何をやってもうまくいかないのは、すべて自分のせいだと思った。
ほら、私にとって宗教は抑圧的なものでしかなかったから。宗教は私に何もさせてくれなかった。4、5歳の頃、教会で曾祖母と一緒に最前列に座って、牧師が “踊ったり、酒を飲んだり、夕バコを吸ったりしたら、地獄に落ちるぞ。悪魔がお前を捕まえるぞ” と叫んでいるのを聞いたのを憶えている。悪魔がやってきて私を苦しめるんじゃないかと、子どもの私は毎晩死ぬほど怖くてベッドに入った。悪夢にうなされ、叫びながら目を覚ましたものだよ。
つまり私にとっては、宗教は虐待だった。他の人はそうではないし、私はそれでいいと思う。でも、私にとっては、そうなんだ。誰かが、”ああ、神はあなたを愛し、あなたの罪のために死んだ” と言ってきたら、心の中で “くたばれ” と言いたくなる。でもその代わりに、他のみんなにそうであってほしいと思うように、その人が誰で、何を信じているかを受け入れて、その人を愛するだけだよ。
私は、多くの、多くの、多くの、多くの、真の信者がいると信じているし、彼らを賞賛し、拍手を送るよ。だけどね、宗教でお金を要求する人たちはみんな、デタラメで、うそつきさ。彼らは、人からお金を搾り取る方法を見つけた、ナルシストの集団だ。私は彼らに嫌悪感を抱いている。そして、それを信じていた人たち、今も信じている人たちに対して、悲しみを覚えるんだ。嫌悪感ではなく、悲しみなんだよね。さらに悲しいことに、私は彼らが受け入れないようなタイプの人間だから、離れていなければならないんだよね。それが悲しいんだ。でも、それが人生なんだよね」

自身では、KING’S X のサウンドをどのように “カテゴライズ” しているのでしょうか?
「私たちはスリーピースのロック・バンド。ただそれだけだよ。パンクの曲も、ロックの曲も、ファンクの曲も、同じように演奏できるんだ。ドラム、ギター、ベースさえあれば、どんな曲でも演奏できる。私たちは本当に良いリズムセクションが根底にあって、それが KING’S Xのマジックだと思う。お互いのニュアンスの中で演奏する。音楽だけではなくてね。実際、KING’S Xは、私がこれまで演奏してきたバンドの中で唯一、みんながお互いの話をよく聞いているバンドなんだ。今まで一緒に演奏した他のバンドでは、周りを見渡すとみんな話を聞いていない。お互いの言うことを聞かないし、私の言うことも聞かない。でも私たちは皆、自分たちのやっていることに耳を傾けていて、その結果、違いを見分けることができるんだ」
最近では、”ロックは死んだ” というミームも使い古されてきたようです。
「ロックは死んでいない。ただ、怠け者が外に出て音楽を探さなくなっただけだ。GRETA VAN FLEETの曲は最低だけど、でも、ああした音楽を再現している子供たちがいる。20代の若者たちがサバスや BON JOVI を同時に吸収して、本物の何かを作り出しているんだ。問題は、それをやるための場所がないことだ。彼らを拾ってくれるレコード会社もない。MTVもない。新しいロックを聴かせるFMラジオもない。誰も彼らにチャンスを与えようとしないから、みんなツアーに出ている。そういうバンドを見に行くと、会場は満員になるんだけど、誰もそのことを知らない。”ロックは死んだ” 論者たちに言いたいのは、”おい、泣くなよ。彼らはそこにいるんだ。決して変わっていない。YouTube や Tik-Tok で見るような天才たちが素晴らしい音楽をやっているんだから、そこにいるんだよ” とね。私たちが子供だったころは、MTV はあったけど、Tik-Tok や YouTube がない時代だった。だから、まったく新しい世界、新しい世代の子供たちがいて、世界に対して違う見方をしていて、私が経験することのない違う経験をしている。才能はこれからも変わらず現れるだろう。ロックは決して止まらない」

dUg は世界的に名の知れたロックスターですが、決して裕福な暮らしを送っているわけではありません。
「金がなければサイドプロジェクトをやるだけだ。レコード契約を結んで、2、3ヶ月の間、支払いをするんだ。私たちは誰も9時から5時までの仕事には就いていない。でも、私たちにできることは何なのか。私たちは市場において価値があるから、クリニックとかそういうことができる。手書きの歌詞を作ることもできる。黒い紙に銀色のインクで書き出し、サインと日付を入れるんだ。何百枚も書いたよ…それでうまくいく。それに、この歳になると、ソーシャル・セキュリティーを受けることができる。3年ほど前に社会保障を受け始めたんだ。社会保険で家賃が払えるから、心配することはなくなった。それ以外のことは、自分でできる。街角でギターを弾けば、5ドルが手に入る。友だちに電話して、”お金がないんだ。今日、ご飯を食べさせてくれないか?” と言えば、OK! となる。それに、私にはシグネチャー・ペダルと、シグネチャー・ベースがあって、みんな買ってくれるんだ。だから、時々、6ヶ月分の小切手をもらって、助かっているよ」
ロックの精神は健在でも、同時代の多くのアーティストが降参したり撤退する中で、KING’S Xが長生きできたのはなぜでしょう?
「バカだからだよ (笑)。どんな困難にも負けず、自分たちのやるべきことをやり続けたし、今もそうだ。そして、ステージに上がると、世界に対して私たちが立ち向かうことになる。このバンドは誰も解散するつもりがない。私はこのバンドを辞めないし、Ty も Jerry も辞めない。誰も辞めないよ、だってバンドを解散させる責任を取るつもりはないんだから。私たちはそんなことするつもりはない。そんな愚かなことをするには私たちは優秀すぎるんだ。だから、誰かが死ぬしかないんだ、それでおしまい。この3人のいない KING’S Xは存在しない。それはあり得ないよ。もちろん、KING’S Xのトリビュート作品は常に存在しうるし、もし私が生きていれば、それに出演することもあるかもしれない。でも、私と Ty と Jerry のいない KING’S Xは存在しないだろうし、それは私の心の中で感じていることなんだ。他の人は違う意見を持っているかもしれないけど、これが私の気持ちなんだ」

参考文献: VW MUSIC:An Interview with dUg Pinnick of King’s X

DEFENDER OF THE FAITH:dUg Pinnick (King’s X) Interview

BLABBERMOUTH:DOUG PINNICK Says KING’S X Has ‘Never Been Profitable’: ‘We All Have To Do Outside Things To Make Ends Meet’

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