EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MAX PHELPS OF EXIST !!
“I’d Say I Acquired Language From Listening To Cynic And Death Which Seeped Its Way Into Many Of My Musical Tendencies, I Listened To That Stuff a Ton Because It Spoke To Me On a Deep Level.”
DISC REVIEW “HIJACKING THE ZEITGEIST”
「Paul Masvidal はまさに師匠のような存在で、僕が初めて行ったツアーは CYNIC と一緒だったし、彼や Sean Reinert と関わるようになって、僕の世界は大きく広がった。そして僕は CYNIC と DEATH を聴くことで、今自分の音楽的傾向の多くに染み込んでいる “言語” を身につけたと言える。本当に何度も何度も聴いたからね。それは、深いレベルで彼らの音楽が僕に語りかけてきたからなんだ」
Max Phelps は今や、プログレッシブ・デスメタルの宇宙にとってなくてはならぬ存在です。それはもちろん、DEATH TO ALL の声として亡き Chuck Schuldiner の影を追い、CYNIC では Paul Masvidal をメンターとしてその師事を受けているからだけではありません。Max はその二大巨頭から受け継いだ哲学やスピリットを、自らのやり方で羽ばたかせようとしています。
「ヘヴィーとキャッチー、テクニカルとシンプル。本当にそれ自体が目的だったのかどうかはわからない。なぜなら、それが僕たちの書き方にとってごく自然なことだと思うからね。でも、そういった要素を、より伝統的な曲構成で、よりタイトで短いアレンジに落とし込むというのは、ひとつの目標だったと言えるかもしれないね」
Max はカルト・ヒーローたちの遺伝子を色濃くその身に宿しながらも、より幅広い層にアピールしたいと願っています。そしてその願いは、EXIST の最新作 “Hijacking the Zeitgeist” で成就するはずです。濃縮還元されよりコンパクトとなった曲構成、耳を惹くメロディとフックの応酬、それでいてジャンルの門番をも唸らせるテクニックと複雑性を兼ね備えたアルバムはまさに、プログレッシブ・デスメタルの前代未聞。
実は、その EXIST の新たな冒険は Max もうひとつのヒーロー RUSH の影響で幕を開けました。プログ・デスと同じくらいに RUSH を愛し、RUSH オタクと公言する Max は、このアルバムは彼らにとっての “Permanent Waves” であり、”Moving Pictures”、さらにいえば “Power Windows” であると明言しています。それらは、RUSH にとっての “プログレッシブ” が変化した瞬間。そして、RUSH により幅広いリスナーへの “窓” が開いた瞬間。
「メリーランド州出身ということで、PERIPHERY や ANIMALS AS LEADERS がスタートするのを見ることができたし(昔、地元で一緒にライヴをやったこともある)、それは本当にクールで刺激的だった。Djent という言葉は、コピー商品ばかりで過飽和になり、軽蔑的な言葉になってしまったと思う。でも、そのムーブメントを牽引していたバンドは本当に素晴らしくて、みんな自分の声を持っていた。好むと好まざるとにかかわらず、現代のギター・プレイにも非常に大きな影響を与えたと思う」
アルバムに収録された “Window to the All” が仄めかす通り、この作品はすべての人への窓となりえます。それは、プログ・デスはもちろん、RUSH のようなキャッチーなプログ・ロック、PINK FLOYD や TOOL のような浮遊するサイケデリア、そして THE CONTORTIONIST や PERIPHERY のようなポリリズミックで現代的な Djent の流れまで組み込んだ膨大なる窓。
そこで歌われるのは、人類の新たな “窓” となったインターネット、SNS への執着とそこにある欺瞞。
「多くの人が、SNS で自分と関係のない物事の状況について非常に落ち込んだり、怒ったりしているのは、それが常に自分の目の前にあるからだと思う。自分の身の回りのことや、自分が実際にコントロールできることにもっと集中した方がいいこともあるし、少なくともそこでバランスを取る方がいいのかもしれないよね」
我々はあまりにも、無関係なものごとに左右されすぎるようになりました。それはきっと、ネットという窓が常に覗きすぎているからでしょう。ヘヴィ・メタルという窓は常に開いていますが、覗こうが覗くまいがそれはリスナーの自由。楽器だって、真摯に深く取り組もうが、ネットに動画をアップするだけだろうがそれはプレイヤーの自由。そんな今の寛容なメタルのあり方を Max Phelps はきっと、世界の理想としているのです。
今回弊誌では、Max Phelps にインタビューを行うことができました。「昨年末、CYNIC で来日したとき、僕は初めて日本に行ったんだ。妻も一緒に来てくれて、東京と京都で過ごしたんだけど、本当に楽しかった。正直、今までで一番好きな旅行体験のひとつで、今はいつも日本に引っ越したいと冗談を言っているくらいだよ。日本文化が本当に好きで、僕たちが慣れ親しんでいるカオスと比べて、みんなが親切で礼儀正しく、すべてがスムーズに進んでいることが信じられなかった。また何度も訪れたいよ!」OBSCURA, EQUIPOISE, そしてエンジニアに Anup Sastry という最強の布陣。どうぞ!!
EXIST “HIJACKING THE ZEITGEIST” : 10/10
INTERVIEW WITH MAX PHELPS
Q1: You are now the voice of Death to All and an integral part of Cynic. How does it feel to play in a legendary band that was already active when you were born?
【MAX】: I wouldn’t necessarily call myself an ‘integral part’ of Cynic, just a live contributor for the most part but yes it is pretty strange to think that the band is older than me! Both Cynic and Death are bands that I was (and still am) a huge fan of, so it’s been quite an honor and a lot of fun to work with the musicians from these bands.
Q1:あなたは今、DEATH TO ALL の声であり、CYNIC の不可欠なパートでもあります。生まれたときにはすでに活動していた伝説的なバンド、そこでプレイするのはどんな気分ですか?
【MAX】: 僕は必ずしも CYNIC の “不可欠な一部” だとは思っていないよ。大部分はただライブで貢献しているだけだからね。でもそうだね、そのふたつのバンドが僕より年上だと思うとかなり不思議な感じがするね!(笑)
CYNIC と DEATH はどちらも僕が大ファンだった(そして今も大ファンな)バンドなので、そのバンドのミュージシャンたちと一緒に仕事ができたことはとても光栄で、とても楽しいことなんだよ。
Q2: Obviously that Death or Cynic gene is present in Exist and WAIT! Are Chuck Schuldiner and Paul Masvidal mentors to you? What did you learn from their music?
【MAX】: Well I wouldn’t consider Chuck a mentor since I never had a personal relationship with him or had the opportunity to meet him. But he has been a huge influence on me as a songwriter and guitarist and was one of the reasons I started doing vocals while playing. Paul has been more like a mentor, my first tours I ever did were with Cynic and I would say that my world opened up a lot when I got involved with him and Sean Reinert. I’d say I acquired language from listening to both of those bands which seeped its way into many of my musical tendencies, I listened to that stuff a ton because it spoke to me on a deep level.
Q2: そして、DEATH や CYNIC の遺伝子はまちがいなく、あなたのバンド EXIST や WAIT に受け継がれていますね!Chuck Schuldiner と Paul Masvidal はあなたにとってメンターだと言えますか?彼らから何を学んだのでしょう?
【MAX】: Chuck とは個人的な付き合いもないし、会う機会もなかったから、師匠とは思っていない。でも、彼はソングライターとして、ギタリストとして僕に大きな影響を与えてくれたし、僕が演奏しながらボーカルを始めた理由のひとつでもあるんだよ。
一方で、Paul はまさに師匠のような存在で、僕が初めて行ったツアーは CYNIC と一緒だったし、彼や Sean Reinert と関わるようになって、僕の世界は大きく広がった。そして僕はこの2つのバンドを聴くことで、今自分の音楽的傾向の多くに染み込んでいる “言語” を身につけたと言える。本当に何度も何度も聴いたからね。それは、深いレベルで彼らの音楽が僕に語りかけてきたからなんだ。
Q3: By the way, what are your favorite albums and songs from Death and Cynic?
【MAX】: For Death I usually say Symbolic, although I have favorite songs from most of the albums (Scavenger, Philosopher, Suicide Machine, Perennial Quest, Left To Die all come to mind). Cynic, probably Focus, or at least Focus was the most impactful because it was my introduction to that and so significant to me at the time, but Traced in Air was huge for me as well. Carbon Based Anatomy has a very sentimental place in my heart as well but for different reasons since I became involved with the band when they were touring for its release.
Q3: ぜひ、あなたにとっての DEATH と CYNIC お気に入りのアルバムや曲を教えてください。
【MAX】: DEATH だと、ほとんどのアルバムから好きな曲はあるけれど、一番なら “Symbolic” と答えるね。楽曲なら “Scavenger”, “Philosopher”, “Suicide Machine”, “Perennial Quest”, “Left To Die” がパッと思い浮かぶね。
CYNIC はおそらく “Focus” だろう。少なくとも “Focus” が最も衝撃的だったのは、このアルバムが僕にとっての CYNIC 入門編であり、当時の僕にとって非常に重要だったから。”Carbon Based Anatomy” も僕の心の中でとても感傷的な位置を占めているけど、それはそのリリースのためにツアーをしていた時バンドと関わるようになったからだから、理由は異なるね 。
Q4: “Hijacking the Zeitgeist” is a REALLY great album! It is heavy and technical, yet full of catchy charm that catches your ear and keeps it there! Was it one of your goals for this album to create such a dichotomy?
【MAX】: Thank you! I don’t know if the dichotomy you mention was really a goal in itself since I think that’s very natural to how I/we write, however, I would say it was a goal to try to put those elements into tighter/shorter arrangements with somewhat more traditional song structures.
Q4: それにしても、”Hijacking the Zeitgeist” は本当に素晴らしいアルバムですね!
ヘヴィーでテクニカルでありながら、耳に残るキャッチーな魅力に溢れています!こうした二律背反を生み出すことは、このアルバムの目標のひとつだったのでしょうか?
【MAX】: ありがとう!! 君が言う二律背反が、本当にそれ自体が目的だったのかどうかはわからない。なぜなら、それが僕たちの書き方にとってごく自然なことだと思うからね。でも、そういった要素を、より伝統的な曲構成で、よりタイトで短いアレンジに落とし込むというのは、ひとつの目標だったと言えるかもしれないね。
Q5: “Hijacking the Zeitgeist” is also an interesting title! With the advance of social networking and the internet, the world has become a divided place, a place of war, violence and conspiracy theories. Is it a metaphor for such a world and a wake-up call?
【MAX】: It’s definitely related to the constant presence of those themes, but more than being a wake-up call to change the world I would say the bigger message is that one doesn’t have to fully engage in all of the noise all the time. To some extent a lot of it is a distortion that feeds itself. I think a lot of people are very depressed or angry about the state of things because it’s in their face constantly… maybe it’s better sometimes to focus more on your immediate surroundings and what you actually have control over, or at least to find balance there.
Q5: “Hijacking the Zeitgeist “というタイトルも興味深いですね!ソーシャル・ネットワーキングとインターネットの進歩によって、世界は分断され、戦争や暴力、陰謀論が渦巻く場所になっています。この作品はそのような世界のメタファーであり、警鐘なのでしょうか?
【MAX】: そのようなテーマが常に存在することと関係しているのは間違いないけど、世界を変えるための警鐘というよりも、人は常にすべての雑音に完全に関与する必要はないという大きなメッセージだと言える。なぜなら、その雑音の多くはその怒り自体が糧となる歪みであるから。
多くの人が、自分と関係のない物事の状況について非常に落ち込んだり、怒ったりしているのは、それが常に自分の目の前にあるからだと思う。自分の身の回りのことや、自分が実際にコントロールできることにもっと集中した方がいいこともあるし、少なくともそこでバランスを取る方がいいのかもしれないよね。
Q6: Speaking of the times, Today, it is really easy to study guitar and music, for better or worse, through social networking, streaming, and video sites. Conversely, it is said that the world is too instant and it is harder to create truly unique players like you. Do you have any advice for young guitarists living in such an era?
【MAX】: That’s a nice compliment, to be called unique, thanks for that. I’m not convinced it’s harder to be unique now, I think it just depends on the approach and time given to building a relationship with the craft. If you just learn licks, or surface level concepts without developing your own deeper relationship with the language/concepts then sure, you might just sound like a clone of x musician, but at the end of the day I think you get what you give, if that makes sense. It might just seem like there are less unique players because things are more saturated and everyone has a platform so it’s noisy and overwhelming. As far as advice for young guitarists, I’d just say focus on what you enjoy. I don’t think there’s a wrong way to spend time playing guitar, if you want to just cover songs that’s fine, or just shred on instagram without writing songs that’s fine too. I think those that truly want to find their own voice will generally succeed if they put the energy in.
Q6: ネットといえば、今はSNSやストリーミング、動画サイトなどで、良くも悪くもギターや音楽の勉強が本当に簡単にできる時代です。
逆にインスタントな世界になりすぎて、あなたのような本当に個性的なプレイヤーが生まれにくくなっているとも言われています。そんな時代に生きる若いギタリストに何かアドバイスはありますか?
【MAX】: ユニークと言われるのは嬉しい褒め言葉だよ!ありがとう!ただ僕は今の時代も、個性的であることが難しいとは思っていない。ただ、技術との関係を築くためのアプローチと時間次第だと思う。
もし、その言語やコンセプトと自分との深い関係を築くことなく、ただリリックや表面的なコンセプトを学ぶだけなら、確かに他のミュージシャンのクローンのように聞こえるかもしれない。現代は物事が飽和状態で、誰もがプラットフォームを持っているため、騒がしく圧倒されてしまう。それで個性的なプレイヤーが少ないように見えるだけかもしれないね。
若いギタリストへのアドバイスとしては、とにかく自分が楽しめることに集中すること。僕はギターに費やす時間は、どんな時間でも無駄じゃないと思っているから。曲をカバーするだけでもいいし、曲を書かずにインスタグラムでシュレッドするのもいい。本当に自分の声を見つけたい人は、エネルギーを注げば大体成功すると思うよ。
Q7: So, the world is dominated by the instant culture of social networking and clippings, and few young people will bother to take the time and trouble to pursue a epic and complex prog. So, What was it that drove you guys to the prog in such a situation?
【MAX】: Well, most of us have been progging since before social media, haha (except for our drummer who’s a bit younger). I don’t know, I think it’s just reflective of the artists we were into coming up. Opeth, Tool, Yes, Rush etc etc etc. It’s naturally how we think. Why we all gravitated towards that, I don’t know, but I think there will always be at least some people with interest in proggy kind of music.
Q7: ただ、世の中はSNSやクリッピングといったインスタントな文化に支配され、わざわざ時間と手間をかけて壮大で複雑なプログを追求する若者はもうほとんどいませんよね。そんな中で、あなたたちを今でもプログに駆り立てるものは何なのでしょう?
【MAX】: まあ、僕らのほとんどはソーシャルメディア以前からプログをやっているからね。よくわからないけど、それは僕らが夢中になっていたアーティストを反映しているんだと思う。OPETH, TOOL, YES, RUSH みたいな人たちだよ。
自然とそう考えるようになったんだ。なぜ僕たちがみんなそっちに引き寄せられたのかはわからないけど、少なくともプログのような音楽に興味を持つ人は常にいると思うよ。
Q8: You guys have some polyrhythmic moments, sometimes Meshuggah-like, as well as prog-death riffs, what are your thoughts on the Djent movement?
【MAX】: Well yeah we’re definitely HUGE Meshuggah fans. I think we’re all pretty cool with the djent movement. We’ve never considered ourselves a part of it directly and I feel like we always had a bit of a different aesthetic since we also were coming more from death metal and more traditional metal, but being from Maryland we had the privilege of watching both Periphery and Animals as Leaders get their starts (we even played some local shows with them back in the day) and that was really cool and inspiring. I think the djent thing got oversaturated with all the copycats and it became a dirty word, but the bands that were driving the movement were really awesome and all had their own voices. Like it or not, I would argue that it had a very significant imprint on modern guitar playing as well.
Q8: あなたたちは、プログレッシブ・デスだけでなく、時には MESHUGGAH のようなポリリズムの瞬間もあります。彼らの息子である、Djent ムーブメントについてはどう思いますか?
【MAX】: そうだね、僕らは間違いなく MESHUGGAH の大ファンだよ。僕らはみんな、Djent をとてもクールだと思っているよ。たしかに僕らはデスメタルや伝統的なメタルから入ってきているから、自分たちを直接その一部だと考えたことはないし、常に少し違った美学を持っていたように思う。でも、メリーランド州出身ということで、PERIPHERY や ANIMALS AS LEADERS がスタートするのを見ることができたし(昔、地元で一緒にライヴをやったこともある)、それは本当にクールで刺激的だった。
Djent という言葉は、コピー商品ばかりで過飽和になり、軽蔑的な言葉になってしまったと思う。でも、そのムーブメントを牽引していたバンドは本当に素晴らしくて、みんな自分の声を持っていた。好むと好まざるとにかかわらず、現代のギター・プレイにも非常に大きな影響を与えたと思う。