NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OU : Ⅱ: FRAILTY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANTHONY VANACORE OF OU !!

“Yoko Kanno Is a Prolific Composer In That Area And She Is One Of My Favorite Composers, And Definitely Has an Influence In The Music Of OU.”

DISC REVIEW “Ⅱ: FRAILTY”

「最終曲の “Recall” でジェゴグを使うアイディアがあった。だからそのパートのレコーディングを手伝ってもらえないかと芸能山城組に連絡を取ったんだよ。彼らはとても親切に対応してくれたけど、残念ながら実現はしなかったね。そこで、僕の恩師のひとりであるマイケル・リプシーに連絡を取ったところ、彼がジェゴグの故郷であるインドネシア・バリ島の知り合いに連絡を取ってくれて、そこの偉大なミュージシャン、 Ida Bagus Made Widnyana がそのパートを録音してくれることになったんだ」
デビュー作で世界を驚かせた中国のプログ・メタル・アクト OU から連絡があったのは、彼らがセカンド・アルバムを制作している最中のことでした。あの芸能山城組とコンタクトを取りたい。デビュー作でインタビューを行ってくれた君に何かツテはないだろうか?と。
AKIRA のサウンド・トラックを手がけたビッグネームにツテなどあるはずがありません。しかし、なんとか彼らの期待に応えようと、コンタクト・フォームや電話などでアプローチを試みました。ありがたいことに、芸能山城組からはとても丁寧で親切な返信 (リモートではなく実際に同じ場所で演奏をしたいという哲学) をいただき、残念ながら今回のコラボレートは実現しないことになりました。
「日本のアニメの音楽には以前から興味があったよ。AKIRA の音楽は、これまでに作られたサウンドトラックの中で最も興味深いもののひとつだと思う!菅野よう子はこの分野で多作な作曲家であり、僕の好きな作曲家の一人で、間違いなく OU の音楽に影響を与えているよ」
実現こそしませんでしたがそれでも、私は OU の情熱と包容力と見識の高さに一層魅了されてしまいました。まず、AKIRA や菅野よう子、芸能山城組という日本が誇る革新的な文化に大きく影響を受けている見識の高さ。そして、中国という伝統文化の結晶から、さらにインドネシアのジェゴグ、日本文化にアプローチを試みるその情熱と包容力。まさに、多様性と寛容さが花開く現代のメタル世界、その象徴的存在でしょう。
「音楽全体のテーマとして共通しているのは、”Fragility” 脆さ。そして人間の状態というものが本当にどれほどか弱いものなのか、どれほど簡単に流されてしまうものなのかということを扱っているんだ」
実際、彼らが扱うテーマやその音楽自体も現代のメタルを体現し、今の世界を反映したもの。この暗い世界で私たちは、人間があまりに脆く弱い存在であることを再確認しています。より良き場所へ向かうはずだった世界は、人間の脆さにより挫折し、弱い人間を抑圧し排除するかつての短絡的で “簡単な” 生きづらいレールへと舞い戻ってしまいました。OU は、中国という奇妙にバランスとのれたしかし危うい国から、人間の弱さを見つめ直しています。そして同時に彼らは、かつて強さや勝利に重きを置いていたヘヴィ・メタルの世界線に、弱さや儚さの音の葉を注ぎ込んでメタルの現在地をも更新して見せました。
「STRAPPING YOUNG LAD 時代からずっと、彼の作品はほとんど全部好きだよ。特に彼のアルバムで好きなのは、”Ghost”, “Deconstruction”, Empath”, “Lightwork”, あとはすべてのライブ・アルバムだね。特に “Order of Magnitude” は素晴らしいよ」
そんな儚くも美しい “II:Frailty” において、最後のピースは Devin Townsend のプロデュースとゲスト参加に違いありません。まさにその身を挺してメタルの多様性を切り開いてきた偉人。プログ、パンク、アンビエント、ジャズ、オーケストラにアコースティックとさまざまな切り口でメタルの進化を促した Devin は、”Frailty” にミニマルで繊細な音の織物をマキシムにレイヤーしていきました。ミニマリズムとマキシマイズこそ Devin の真骨頂。爆発的なバンドの力と幽玄絶後なボーカル、そして煌びやかなシンセの海は、まさに狂おしく、夢のように波打ちます。
今回弊誌では、Anthony Vanacore にインタビューを行うことができました。21世紀の “Mandalyon” of THE GATHERING。 二度目の登場。どうぞ!!

OU “Ⅱ: FRAILTY” : 10/10

INTERVIEW WITH ANTHONY VANACORE

Q1: First of all, I was surprised that you wanted to collaborate with Geino Yamashiro Gumi, even though it didn’t end up happening. You were also interested in traditional instruments like Jegog?

【ANTHONY】: Originally I had the idea of using Jegog in the final track, “Recall”, so I reached out to them to see if they could help me record the parts. They responded and were very kind, but unfortunately they weren’t able to do it. I reached out to one of my former teachers, Michael Lipsey, and he put me in touch with someone he knows from Bali Indonesia, where the jegog originates from, and a great musician there named Ida Bagus Made Widnyana was able to record the parts for me.

Q1: まず、結果的に実現しなかったとはいえ、芸能山城組とのコラボレーションを希望していたことに驚きました。ジェゴグのような伝統楽器にも興味があったのですか?

【ANTHONY】: 元々、最終曲の “Recall” でジェゴグを使うアイディアがあった。だからそのパートのレコーディングを手伝ってもらえないかと彼らに連絡を取ったんだよ。彼らはとても親切に対応してくれたけど、残念ながら実現はしなかったね。
そこで、僕の恩師のひとりであるマイケル・リプシーに連絡を取ったところ、彼がジェゴグの故郷であるインドネシア・バリ島の知り合いに連絡を取ってくれて、そこの偉大なミュージシャン、 Ida Bagus Made Widnyana がそのパートを録音してくれることになったんだ。

Q2: Geinoh Yamashiro Gumi is also known for its collaboration with Akira. Were you also interested in subcultures such as Japanese anime, video games and music?

【ANTHONY】: Yes, I’ve been interested in music from Japanese anime for quite a while. The music to Akira I think is one of the most interesting soundtracks ever created! Yoko Kanno is a prolific composer in that area and she is one of my favorite composers, and definitely has an influence in the music of OU.

Q2: 芸能山城組は AKIRA の音楽を担当したことでも知られています。日本のアニメやゲーム、音楽などのサブカルチャーにも興味があったんですね?

【ANTHONY】: そうだね。日本のアニメの音楽には以前から興味があったよ。AKIRA の音楽は、これまでに作られたサウンドトラックの中で最も興味深いもののひとつだと思う!菅野よう子はこの分野で多作な作曲家であり、僕の好きな作曲家の一人で、間違いなく OU の音楽に影響を与えているよ。

Q3: Well, now that you’ve done that, “II: Frailty” is a really great album! First of all, could you tell us why you chose this album title?

【ANTHONY】: I guess a common thread found thematically throughout the music is fragility and just how frail the human condition really is, just about how easily it can be swept away.

Q3: それにしても “II:Frailty” は本当に素晴らしいアルバムですね!まず、このアルバム・タイトルを選んだ理由から教えていただけますか?

【ANTHONY】: このアルバム、その音楽全体のテーマとして共通しているのは、”Fragility” 脆さ。そして人間の状態というものが本当にどれほどか弱いものなのか、どれほど簡単に流されてしまうものなのかということを扱っているんだ。

Q4: “Frailty” is a word that means fragility, weakness, and transience, and such elements are often thought of as basically the opposite of metal. However, this album perfectly embodies that fragility in metal! This is truly an album that conveys the breadth of metal and that metal is not only about strength and triumph, would you agree?

【ANTHONY】: I think if you want to interpret it that way, it’s great! I’d rather let people interpret the music in their own way.

Q4: “Frailty” とは、脆さ、弱さ、はかなさなどを意味する言葉で、そうした要素は基本的にメタルとは対極にあると思われがちです。しかし、このアルバムはメタルにおける “脆さ” を完璧に体現していますね。
メタルの幅の広さを伝えるアルバムで、メタルは強さや勝利だけではないことを証明しています。

【ANTHONY】: その解釈は素晴らしいことだと思う!ただ、僕はむしろ、人々が自分なりの方法で音楽を解釈することに任せたいんだよ。

Q5: I felt that there were more traditional Chinese melodies scattered in this piece than in your debut work. Many Chinese melodies are fragile and beautiful, Did you use more Chinese melodies because they were in sync with the theme of this album?

【ANTHONY】: There will always be some melodic fragments here and there that subconsciously came from Chinese melodies. Anything that is written is always written because it seems the natural thing to do, or the song just wants it to be that way.

Q5: この作品には、デビュー作よりも中国の伝統的な旋律が散りばめられているように感じました。中国のメロディーは儚く美しいものが多いのですが、このアルバムのテーマとシンクロしていますよね?

【ANTHONY】: 無意識のうちに中国の音楽に由来するメロディーの断片があちこちに必ず出てくるんだよ。僕が書いたものはいつも、そうするのが自然だと思えたからそう書かれている。楽曲もただそうあってほしいと思ったから書かれたものなんだ。

Q6: What surprised me was that Devin Townsend produced the album and even guested on it! How did Devin get involved?

【ANTHONY】: Devin was an idea that came from the head of InsideOut, Thomas Waber. He reached out to him and Devin was down to be a part of it! It was one of the great honors of my life to work with him, he’s a truly incredible human being.

Q6: 驚いたのは、Devin Townsend がアルバムをプロデュースし、ゲスト参加まで果たしていることです!

【ANTHONY】: Devin の参加は、Inside Out の代表であるトーマス・ウェーバーのアイデアから生まれたんだ。彼がアプローチしてくれたんだけど、ぜひこの作品に参加したいと言ってくれた!彼と一緒に仕事ができたことは、僕の人生の中で大きな栄誉のひとつだね。彼は本当に素晴らしい人間だよ。

Q7: Devin is a truly diverse artist who straddles metal, prog, ambient, and acoustic, and has a great affinity for the diverse music of the OU. Which of his works do you particularly like or refer to?

【ANTHONY】: I love almost all of his work, all the way from the Strapping Young Lad days. Some my favorite albums of his include Ghost, Deconstruction, Empath, Lightwork, all the live albums especially Order of Magnitude.

Q7: Devin はメタル、プログ、アンビエント、アコースティックにまたがる実に多様なアーティストで、OU の多様な音楽とも親和性が高いですよね。
彼の作品の中で特に好きなもの、参考にしているものはどれですか?

【ANTHONY】: STRAPPING YOUNG LAD 時代からずっと、彼の作品はほとんど全部好きだよ。特に彼のアルバムで好きなのは、”Ghost”, “Deconstruction”, Empath”, “Lightwork”, あとはすべてのライブ・アルバムだね。特に “Order of Magnitude” は素晴らしいよ。

Q8: Perhaps your music would be described as prog-metal. Many of the prog giants are old and have passed away. Meanwhile, the world is dominated by the instant culture of social networking and clippings, and few young people will bother to take the time and trouble to pursue a epic and complex prog. So, What was it that drove you guys to the prog in such a situation?

【ANTHONY】: It was simply to realize music that was in your heart and do everything you could do to make it a reality. Whether it is accepted or not on a scale commercially that makes it viable to earn money or make a living from, in many ways that is out of your hands. So simply to realize music that you believe in with all your heart, that in itself is the most important to me.

Q8: おそらく OU の音楽はプログ・メタルと表現されるでしょう。プログの巨人の多くは高齢となり、他界した人も少なくありません。
一方で、世の中はSNSやクリッピングのインスタント文化に支配され、わざわざ時間と手間をかけて壮大で複雑なプログを追求する若者は少なくなりました。そんな中、あなたたちをプログに駆り立てるものは何なのでしょうか?

【ANTHONY】: プログに駆り立てるもの。それは単純に、自分の心の中にある音楽を実現し、それを実現するためにできることをすべてやるという決意だね。それが商業的に受け入れられるかどうか、それでお金を稼いだり生計を立てたりできる規模になるかどうかは、いろんな意味で自分たちの手には負えない。だから、自分が心から信じられる音楽を実現すること、それ自体が僕にとって最も重要なことなんだ。

ANTHONY’S PLAYLIST: FIVE ALBUMS !!

Plini “Mirage”

Tigran Hamasyan “The Kingdom”

The Gathering “If_then_else”

Sejin Bae “Direction”

Joe Henderson “In ’n Out”

MESSAGE FOR JAPAN

We hope to visit Japan in the near future!! One of my beloved drum teachers, Gene Jackson, lives in Tokyo, if you want to see one of the greatest drummers of all time I recommend you to check out his gigs!!! ありがとうございます!!!

近い将来、日本を訪れたいと思っているよ!僕の大好きなドラムの先生の一人、Gene Jackson が東京に住んでいるからね!歴史上最高のドラマーの一人だから、ぜひライブを見てほしいね。ありがとうございます!!!

ANTHONY VANACORE

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