EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DENNIS MIKULA OF GHOST BATH !!
The Most Mysterious Black Metal 2nd Generation, Ghost Bath Mixed DSBM And Japanese Video Game Music With Their Newest Album “Starmourner” !!
DISC REVIEW “STARMOURNER”
インパクトと芸術性、そして崇高さを内包する多種多彩なブラックメタル第二世代の中でも、一際ミステリアスな存在として異彩を放つ GHOST BATH。彼らがリリースした最新作 “Starmourner” は、DEAFHEAVEN や ALCEST, LITURGY が押し広げたジャンルの壁をさらに拡張する、遠大な可能性に満ちた作品に仕上がりました。
GHOST BATH は当初、中国出身のバンドだと考えられていました。メンバーの顔を伏せた上で “鬼浴” と名乗り、アルバムをリリースしたレーベル、そしてバンドのロケーションも中国としていたのですからそれも当然です。しかしインタビューにもあるように、実際はノースダコタに拠点を置くアメリカのバンドだったのです。
Bandcamp にロケーションを要求された時、”No Location” が受け入れられなかったため、地球の反対側にある中国を何となく選んだら中国のレーベルからコンタクトが来たというのがどうやら真相のようですね。Dennis はそういった一連の流れについて「人間よりも音楽それ自体により直接コネクトして欲しかった」からと説明してくれました。
しかし、2ndアルバム “Moonlover” のヒットとそれに伴うメガレーベル Nuclear Blast との契約により全てを秘匿することが困難になったバンドは、メンバーの顔写真とロケーション、そして首謀者 Dennis Mikula の名前だけは明らかにすることとなったのです。(とは言え現在でも公式にはその名前は “Nameless” とされていますが。)
そういった経緯を経てリリースされた3rdアルバム “Starmourner” は、インタビューで Dennis が語ってくれた通り、”Moonlover” を序章とするトリロジーの第2章。バンド名が象徴するように、DSBM (デプレッシブスイサイダルブラックメタル) を自称する GHOST BATH ですが、天国や天使にフォーカスしたというアルバムはポジティブでハッピーとさえ言えるサウンドを前面に押し出し、デプレッシブなムードと夢幻に対比させた異例のブラックメタル作品となりました。
作品は天駆けるピアノが流麗な旋律を紡ぐ “Astral” でその幕を開けます。他のブラックメタル第二世代と比較して GHOST BATH をさらに特異な存在としているのは、明瞭でキャッチーなメロディーがアルバムの主役となっている点でしょう。”Seraphic” のパワーメタル的とさえ言える優美で凛々しいメロディーの洪水と、そのカウンターパートとして示されるダークでヒステリックなブラストの海原が手を取り合い創造する類希なるカタルシスは決定的にユニークで、バンドの新たなチャプターの始まりを告げています。
勿論、アルバムには DEAFHEAVEN に通じるようなインディー、シューゲイズからの影響も存在します。”Luminescence” を聴けば GHOST BATH がパワーメタルの手法を周到にその光の世界へと取り入れていることが伝わるでしょう。同様のチャレンジを試みる ASTRONOID と現在ツアーを行っていることは、決して偶然ではありません。
アルバムを語る時、Dennis の日本に対する愛情を欠かすことは出来ませんね。実は以前弊誌に登場いただいた時点で、日本に新婚旅行で訪れることを誇らしげに伝えてくれていた Dennis。すでに簡単な日常会話はマスターしており、本気でこの国に移住を考えていると言うのですから、日本のメタルファンにとってそれは大きな、そして喜ばしいサプライズに違いありません。
Dennis の日本とその文化に対する真情は “Celestial” に結実しています。彼が愛してやまない、日本のロールプレイングゲームに起因する勇壮なファンファーレがブラックメタルのタッチで描かれた時、リスナーはノスタルジーと共に生じる多幸感、恍惚感が新鮮な情動であることに気づくでしょう。その場所からさらに楽曲は、ULVER が “Perdition City” で見せたシンセワークとアトモスフィアを伴って静謐でプラトニックな “Angelic” へと歩みを進めて行くのです。その神聖なまでに巧みな構成力はまさに別世界の高みにあると言えるでしょう。
「ブラックメタルとゲーム音楽を融合させる。」 “Thrones”, “Elysian” と聴き進める内に、リスナーはその野望が完遂されたことを知るでしょう。そこには “Final Fantasy”、”ゼルダの伝説” といった私たちのクラッシックが見事に GHOST BATH のブラックメタルとして新たな生を与えられているのですから。今回も Dennis がほぼ1人で制作したアルバムは、狂気とアトモスフィア、耽美と悲愴を携えた、新鮮で文字通りプログレッシブな音楽として世界に衝撃を与えることでしょう。
70分を超える壮大な神曲は、ジブリの世界観を宿し、不思議に悲哀を称えた鍵盤とドラムスのピース “Ode” で静かに幕を閉じます。
今回弊誌では、Dennis Mikula にインタビューを行うことが出来ました。6月には Ward Records から日本盤の発売も決まっています。どうぞ!!
GHOST BATH “STARMOURNER” : 9.7/10
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