EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROBIN STAPS OF THE OCEAN !!
“I Don’t Have Any Delusions That Music Could Have a Real Direct Effect On Environmental Policies, But We Can Raise Awareness In The People That Listen To Our Music, And These People In The End Have a Vote.”
DISC REVIEW “PHANEROZOIC Ⅰ: PALAEOZOIC”
「MASTODON が “白鯨” の作者 Melville についての文学の教室なら THE OCEAN は地球科学の教室だろう。」”地球の地質に対するドイツからの賛歌” と讃えられるポストメタルの研究者 THE OCEAN は、全てのアートの母である自然とその摂理を音のビジュアルプレゼンテーションとして誰よりも濃密に響かせます。
アルバムや楽曲タイトル、リリックにサウンドスケープ。時にマジカル、時に険しい自然のイメージを知性的なメタルのフレームへと織り込み、エモーショナルで革新的なポストメタルの森羅万象を司るドイツの賢人は、そのディスコグラフィーさえも変化を繰り返す地球環境のクロニクルとしてメタルの図書館へと寄贈します。
2007年にリリースした二枚組 “Precambrian” は、地球が誕生し生命を育むまでの先カンブリア時代を縦横無尽に描き、シーンが求めるエピックの使者としてバンドをポストメタルの旗手へと導きました。そして11年の後にリリースする最新作 “Phanerozoic” は先カンブリアが終焉を迎え、肉眼で見える生物が跋扈する顕生代を綴った太古の続編となりました。
“Phanerozoic” も “Precambrian” と同様に長編ダブルアルバム。先立って今回リリースされた “Phanerozoic 1: Palaeozoic” は古生代、中生代、新生代と3つの時期に分類される顕生代の中から最初期の古生代を扱ったパートとなります。そしてその古生代自体もさらに6つの時代に分けられ、アルバムに収録された7曲 (カンブリア紀は2曲) がそれぞれの時代を描く実に学術的な構成となっているのです。
ただ THE OCEAN が今回、5度の大量絶滅を経験した顕生代を取り上げたのには、理由がありました。「僕は音楽が直接、環境問題に対するポリシーに影響を与えるなんて妄想は持っていないんだ。だけどね、僕たちの音楽を聴く人の関心を高めることは出来ると思っているよ。」バンドのマスターマインド Robin が語るように、アルバムは暗に現代における地球環境の変化、気温上昇に対する警告、注意喚起の意味を背負っているのです。
「パート1に収録されることとなった楽曲たちは、全てヘヴィーで荒涼としたヴァイブを持つという点で非常に首尾一貫しているね。」と語る Robin。実際、前作 “Pelagial” のしなやかな旋律と展開から距離を置き、重厚で哀愁に満ちたミッドテンポのコアへと帰結する “Phanerozoic 1: Palaeozoic” は年代的にも、哲学的にも、そして音楽的にも完璧なる “Precambrian” の続章です。
アルバムの全体的な審美性はまさしくポストメタルのアート、ダイナミズムへと傾倒しながら、ミニマルで装飾を削ぎ落としたスタイリングという意味ではよりソリッドな構築術への移行も伺えます。一方で意思を持たないしかし残酷な自然の暴走さえ巧みに操るコンポージングの妙、斬新的なモチーフは “Thinking Man’s Metal” を受け継ぐ思慮深きバンドのプログレッシブな精神を見事に体現していますね。
ボーカリスト Loïc Rossetti のメロディックな絶唱と獰猛な叫びは、楽器が奏でる構成美、ハーモニーへと荒波のように打ち寄せ絶滅する生命の苦痛を映し出し、アイルランドで収録した Paul Seidel のパーカッションは SIGUR ROSにも似た残響の刹那をレコードに封じます。創立以来40人ものメンバーが出入りする THE OCEAN にとって、新旧メンバーが噛み合い貢献を果たすコレクティブなプロセスは実は未知の領域でした。
そうして Jens Bogren の鮮やかな手腕は、暖かみのあるアナログシンセ、ピアノ、ヴァイオリンにチェロ、そしてゲスト参加を果たした KATATONIA の Jonas Renkse の歌声までをも完璧に制御し、ポストメタルの”境界の超越”、ポストモダニティーの多様性を提示しながらジクソーパズルのピースのように適材適所でアルバムのオーケストレーションを担ってみせました。
今回弊誌では、メタルシーンの賢者 Robin Staps にインタビューを行うことが出来ました。「もしかしたら、とても虚しい、非直接的で、即効性のないアプローチかも知れないね。だけどこれが僕たちに出来る精一杯だし、民主的なやり方ってものさ。僕たちは全く政治的なバンドではないけど、今は昔よりも幅広いオーディエンスにリーチ出来るようになったから、そのリーチを意味のある内容の拡散で使用したいと望んでいるんだ。」ぜひ耳を傾けてみてください。どうぞ!!
THE OCEAN “PHANEROZOIC Ⅰ: PALAEOZOIC” : 10/10
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