EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JIM GREY OF CALIGULA’S HORSE !!
Brisbane’s Progressive Metal Outfit Caligula’s Horse Will Take The listeners Into Unique Sonic Worlds With Ambitious Conceptual Record “In Contact” !!
DISC REVIEW “IN CONTACT”
躍動感に満ちたオーストラリアの清新なるオルタナティブ/プログレッシブシーンを象徴する鼓動 CALIGULA’S HORSE が、アートの本質と真髄を提示する新作 “In Contact” をリリースしました!!南半球から流動する多様でモダンなソニックウェーブは、逸群なるミュージシャンシップを伴って世界へと浸透して行きます。
狂気のローマ皇帝カリグラが、自身の愛馬を執政官に任命しようとした愚かな逸話をバンド名に冠するブリズベンの5人組は、しかしその名に相反する稀代の駿馬。”From Tool to Dream Theater” と例えられるように、オルタナティブとプログレッシブの狭間で揺蕩うそのサウンドコンセプトは、同郷 KARNIVOOL の美麗なアトモスフィア、Djent のコンテンポラリーなデザインをも伴って、プログメタルのデフォルトを再定義するような野心と瑞々しさに満ち溢れています。
加えて特筆すべきは、彼らのストーリーテリングの才能です。勿論、ファンタジックなプログレッシブワールドにおいて、コンセプトやテーマを巧みに描く能力は必修技能にも思えます。
しかし、 前作 “Bloom” で日本の木花咲耶姫にインスピレーションを受けて書かれた “Daughter of the Mountain” のポジティブな光彩を挙げるまでもなく、ボーカリスト Jim Grey の詩人としてのタレントを軸としたバンドが、その分野において卓越していることは明らかな事実であり強みだと言えますね。
“In Contact” で彼らが描くファンタジーは、芸術と創造性をテーマとする様々な時空と人物の物語です。古に人類が共有しながら、今ではすっかり忘れてしまった夢の欠片。異なる世界線においてアーティスト達は、記憶の狭間にその感覚を呼び覚まし具現化することで、崇高なるアートを生み出しています。つまり、4人のアーティストを主人公とした4章から成るアルバムは、非常にパーソナルで同時にグローバルなコンセプトイメージを掲げ伝えているのです。
アルバムオープナー、”Dream the Dead” はよりディープでダーク、複雑な世界観を有する最高傑作への招待状です。ギタリスト Sam Vallen のメズマライズで数学的なリフワーク、陰を備えたスペーシーなアルペジオ、そして John Petrucci の壮絶なピッキングを受け継ぐピーキーかつメロディックなリードプレイは、アルバムの冒頭からアグレッションとアトモスフィアを行き来し、目まぐるしくも完璧に作品のディレクションを主張します。続く “Will’s Song” のオーガニックな淫美と複雑難解なリズムデザインに LEPROUS の最新作を想起するファンも多いでしょう。
さらに、スタイリッシュなシンコペーションの合間を縫うように歌い紡ぐ、Jim の浮遊するハーモニー、ファルセットは、神々しさすら纏って芸術家の苦悩、産みの苦しみを劇的に伝えます。
事実、この楽曲を起点とする第一章 “To the Wind” は、インスピレーションや創造性と引換にアーティストが失う健全な人生、ドラッグやアルコール、精神疾患がアートに信頼性や価値をもたらすという不健全な神話について憂慮し警鐘を鳴らしているのです。
実際、Jim の幅広い表現力、そして2010年以降のプログシーンに欠かせない豊潤なポップセンスは、Daniel Tompkins, Einar Solberg, Ross Jennings と並んで新世代の代表格だと言えるはずです。エレクトロビートを巧みにミックスした “Love Conquers All”, よりオーガニックな “Capulet” といった緩やかなバラードで聴ける凛としたボーカルパフォーマンスに加えて、その証明の極めつけは “Inertia and the Weapon of the Wall” でしょう。
第三章、狂気の詩人を主人公とした物語 “Ink” に組み込まれた楽曲は、驚くことに3分間のスポークンワード。詩人の章で語られる長尺のポエトリーリーディングは、大胆なアイデアと豊かな表情を礎とする天賦の才の確かな証です。
アルバムのクライマックスは15分を超える “Graves” で訪れます。作曲に数ヶ月を要したという崇高で完璧なるエピックは、聖歌隊でテクニックを養った Jim の祈るような歌声、さらには耽美なクワイアが実に印象的。Plini を想起させるマスジャズスタイルのギターと共に展開する透明で清廉なサウンドスケープは、しかし徐々に激しさの熱を帯びて行きます。
Jørgen Munkeby のカミソリサックスを合図として Djent のエキサイトメントを加えたバンドは、そうして混沌と興奮の中で突如事切れるように演奏を停止するのです。まるで作品に自身の全てを注いだ芸術家のように。
Forrester Savell, Jens Bogen, そして Sam のサウンドチーム、さらには新メンバーも完璧にハマったバンドの最高到達点。今回弊誌では、Jim Grey にインタビューを行うことが出来ました。2度目の登場です。今回はプログメタルと言わずオルタナティブと呼称している点にも注目です。どうぞ!!
CALIGULA’S HORSE “IN CONTACT” : 9.7/10
INTERVIEW WITH JIM GREY
PHOTO BY DAVID HARRIS
Q1: This is our second interview with Caligula’s Horse. This time, could you tell us about yourself, at first? What kind of music were you listening to, when you were growing up?
【JIM】: Good to chat with you again! I started out as a singer quite young – at the age of 9 in a Cathedral choir here in our home town of Brisbane. It was a pretty gruelling rehearsal schedule, every morning before school, for hours after school on Friday evenings, often singing weddings on Saturdays, and two services each Sunday.
At the time it felt very difficult, but in hindsight I wouldn’t give up the time I spent there for the world. It was where I developed a great deal of my fundamental singing technique, as well as training my ear, which has been hugely important in terms of writing and performing with Caligula’s Horse.
In terms of music I listened to, I didn’t really get into alternative music until I was 13/14 – one of the first albums I really connected with was “Neon Ballroom” by the Aussie band silverchair.
Q1: 本誌2度目の登場となります。今回はまず、あなたの音楽的なバックグラウンドから伺えますか?
【JIM】: また君と話せて嬉しいよ!僕はまだとても若い頃からシンガーとして活動を始めたんだよ。ホームタウンのブリズベンにある聖歌隊で9歳の頃から歌い始めたんだ。リハーサルのスケジュールはとても厳しくてね。毎朝学校に行く前と、金曜の夜学校が終わってからの数時間練習し、そして土曜日はしばしば、日曜には一日に2回もウエディングで歌っていたね。
当時は、とても大変だと感じていたけど、振り返ってみるとギブアップしないで良かったと思うよ。そこで僕の歌唱テクニックの基礎となる重要な部分を養ったんだからね。それに耳も鍛えられたね。CALIGULA’S HORSE で作曲とパフォーマンスを行うに当たって、それは本当に重要な意味を持ったんだ。
僕は13, 14の頃に初めてオルタナティブな音楽にのめり込んだんだ。最初に入れ込んだアルバムの一つが、オーストラリアが生んだ SILVERCHAIR の “Neon Ballroom” だったね。
Q2: So, what inspired you to start band and composition? Who was your hero at that time?
【JIM】: When it comes to rock singing, I was a huge Maynard James Keenan fan at the very beginning, but over time that influence became less and less as I found my own voice. I’ve taken influence from a really broad range of vocalists and experiences, too many to name, but suffice to say I try to learn something from every singer I listen to, especially singers that I’m lucky enough to tour with.
Q2: そこから、あなたをロックシンガーへと駆り立てたもの、そして当時のヒーローについて話していただけますか?
【JIM】: ロックについて言えば、そもそもは Maynard James Keenan の大ファンだったんだよ。ただ時が経つにつれて、僕の声の中にある彼の影響はどんどんと少なくなっていったんだ。
というのも、僕は本当に幅広いボーカリストからの影響や経験を取り入れていったからね。多すぎて名前も挙げられないくらいにね。敢えて言うなら、耳にする全てのシンガーから何かしら学ぼうとして来たね。特に、幸運にもツアーを共にすることの出来たシンガー達からね。
Q3: Let’s talk about your newest record “In Contact”. In our previous interview, Jim told us “Bloom” was more positive, more celebratory record. I feel “In Contact” may be the counter, it’s heavier, darker record than “Bloom”. Do you agree that?
【JIM】: It’s definitely heavier! But it wasn’t as much of an intentional approach as with Bloom – this time the sound of the album was very much informed by the story and characters, how their arcs were progressing. Those stories are told as much by the music as the lyrics. The concept tended towards darker or more emotional themes lyrically, and so the music became part of that shape.
Q3: では、最新作 “In Contact” について話しましょう。前回のインタビューであなたは前作 “Bloom” について非常にポジティブなレコードだと語ってくれました。今回はそのカウンターにも思えるダークでヘヴィーな作品ですね?
【JIM】: 間違いなくよりヘヴィーになったね!ただ、これは特に “Bloom” を意識して取ったアプローチという訳ではないんだよ。今回のアルバムのサウンドは、ストーリーとキャラクターが展開するアーク(ストーリーライン)に左右されているんだ。
つまり、彼らのストーリーは歌詞と同様に音楽でも語られている訳だよ。歌詞のコンセプトはよりダーク、もしくはよりエモーショナルなテーマへと向かっているね。だから自然と音楽もそういったムードを形作ったのさ。
Q4: Jim also told us “Bloom” wasn’t concept album. But “In Contact” is consisted in four separate chapters and it’s an album full of deeply personal stories. Could you tell us about the meaning behind the title “In Contact”, and themes of album?
【JIM】: The album’s name came about when we were trying to sum up the interconnecting themes that appeared in each story – the artists in each chapter are tangentially connected by the theme of “reach”. They’re all reaching for something in their lives, be it sobriety, or family, or improving their lives and the lives of others.
What they don’t know, is that in the world these characters exist in, every piece of art created by human beings is an attempt to recall a dream we all shared. Something we’ve all forgotten, and artists unknowingly seem to have themes from this dream on the tip of their tongues and articulate it through their inspiration and art. So we realised that all of these artists are not just connected to each other, but to all people, and especially to this shared dream. They are all in contact with one another, despite their differences, and despite being far removed from each other both geographically and in terms of time. So the title is very much tied into the story!
Q4: 前作 “Bloom” のインタビューであなたは、アルバムはコンセプト作品ではないと語っていましたが、今回は仰るように、4章から成る深くパーソナルなストーリーが存在していますね?
【JIM】: アルバムのタイトルは、4つの各ストーリーに登場する相互に関連するテーマをまとめようとしたときに思いついたんだ。各章の主人公であるアーティストたちは、”リーチ” というテーマで接線的に結びついているんだよ。つまり、彼らは全て人生で何かにたどり着こうとしている訳なんだ。それは、真面目に生きることかも知れないし、家族のため、他人のため、もしくは人生をより良くすることかも知れないね。
アーティスト達が気づいていないのは、彼らが存在する世界において、人間によって創造されたすべての芸術作品は僕たち一人一人が共有していた夢を思い出す試みだということなんだ。それは僕たちがすっかり忘れてしまったものなんだけど、でもアーティスト達は無意識のうちにこの夢のテーマが喉から出かかっていて、インスピレーションと芸術を通してそれを明確に表現しているんだよ。
だから、僕たちは、アーティストのすべてがただお互いにつながっているのではなく、すべての人と、特にこの共通の夢でつながっていることに気付いたんだ。
彼らは、その違いにもかかわらず、それに地理的にも時間的にも離れているにもかかわらず、お互いに “In Contact” 接触しているんだよ。だからタイトルは非常にストーリーに結びついているんだ!
Q5: Regarding story telling, the album includes three minutes spoken words, “Inertia and the Weapon of the Wall”. Off course, Spoken words is not special expression for prog band, but three minutes seem to be very long. When does “In Contact” compared with “Shakespearean metal”, what’s your perspective about that?
【JIM】: Haha, I don’t agree with that at all. The spoken word piece is very much just lyrical storytelling, and is best described as a piece of modern spoken word poetry. The piece nestles into the story quite nicely, as it occurs during “Ink”, the third chapter, which is centred around a poet. So it seemed appropriate to do so, as strange as it may be.
Q5: ストーリーと言えば、アルバムには3分間のスポークンワードも収録されていますね。勿論、プログワールドにおいてスポークンワードは特に珍しい表現方法ではありませんが、それでも3分間は大胆なアプローチです。
今回、芸術家にフォーカスしたこともあり、”シェイクスピアのメタル” と例えられることに関してはどう思いますか?
【JIM】: はは(笑)それについては全く同意できないね。このスポークンワードは実に単なる叙情的なストーリーテリングであり、モダンな詩として表現されているんだよ。
このパートは、詩人を中心として語られる第3章 “インク” において、物語の中にぴったりと収められている訳さ。だから確かに変わっているかも知れないけど、そうするのが適切だと思ったんだ。
Q6: This is your first release with newcomers Adrian Goleby and Josh Griffin, who replace Zac Greensill and Geoff Irish. I feel “In Contact” is the most “Guitar Shredding” record in your works. Does it relate to this Line-up change?
【JIM】: It relates more to the story content, and to the experiences we were having in life around the time of writing and recording the album. Our goal is to reflect ourselves in our music to the best of our ability so a lot of who we are at a certain time ends up on the album. In terms of the change in sound, the addition of Josh Griffin to the lineup has opened up a whole new world in terms of writing, since he’s such a reliable drummer and a consummate musician. The two new guys have fit in to the group perfectly.
Q6: “In Contact” は、新メンバー Adrian Goleby, Josh Griffin が加入して初のアルバムとなりました。よりギターシュレッドが前面に押し出された作品だと感じたのですが、それはラインナップの変更と関係していますか?
【JIM】: その部分も実はストーリーに拠る部分が大きいんだ。それに、アルバムのライティング、レコーディング期間に僕たちが生活の中で経験したことにもね。
僕たちのゴールは、僕たちの能力を全て引き出して、自分たち自身を音楽の中に反映することなんだ。だからその時々の僕たちの姿がアルバムには詰め込まれているんだよ。
サウンドの変化について言えば、Josh Griffin がラインナップに加わったことは、ライティングに関してまさに新世界への扉を開いたね。と言うのも、彼は実に信頼の置ける完成されたミュージシャンだからね。新しい2人のメンバーは完璧にバンドへとフィットしているよ。
Q7: I think “In Contact” is one of the year’s best prog record. It’s so eclectic, diverse impressive, sometimes heavy, sometimes pop, sometimes modern and sometimes retro. 16 minutes epic, “Graves” seems to be symbol of the record. Also, Jørgen Munkeby of Shining featured in the song. Caligula’s Horse and Munkeby have some common points, right?
【JIM】: Thanks! I’m glad you think so. Yeah, we toured Europe with Jørgen and the guys in Shining back on the Bloom tour in 2015. He’s a great dude and an incredible artist, it was a real treat to have him appear on Graves. We’re particularly proud of that track!
Q7: 16分のエピック “Graves” はまさに多様で印象的なこの作品の象徴です。Jørgen Munkeby のサックスがフィーチャーされていますが、彼とバンドとは共通する部分が多そうですね?
【JIM】: ありがとう!君がそう感じてくれて嬉しいよ。そうだね、僕たちと Jørgen、そして彼のバンド SHINING は、2015年に “Bloom” のツアーで共にヨーロッパを廻ったんだ。
彼は素晴らしい人物で、驚異的なアーティストだよ。彼を “Graves” にフィーチャー出来て本当に嬉しかったよ。僕たちは特にこの楽曲を誇りに思っているんだ!
Q8: Forrester Savell, Sam, and Jens Bogen seem to be perfect sound production team. How was the experience working with them?
【JIM】: Don’t forget Caleb James! Caleb mixed “The Hands are the Hardest” (which may be one of my personal favourites from the album). The guys were really great, very responsive to our artistic brief in terms of the direction we wanted the album to go mix-wise. In terms of their skills, I think the quality of the album’s production speaks for itself!
Q8: Forrester Savell, Sam, そして Jens Bogen のサウンドプロダクションも完璧にハマりましたね?
【JIM】: Caleb James を忘れないで欲しいね! 彼は “The Hands are the Hardest” のミキシングを担当したんだ。この楽曲は個人的なフェイバリットの一つかも知れないね。
とにかくサウンドチームは本当に素晴らしかったよ。僕たちのアーティスティックな信条にとても敏感だったね。
方向性に関して言えば、僕たちはアルバムをよりミックスされたものにしたかったんだ。そして彼らのスキルに関しては、アルバムのプロダクションが全てを語っていると思うよ!