NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【YES : THE QUEST】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BILLY SHERWOOD OF YES !!

“There’s No Replacing Such a Giant. That Said, I Know Chris Trusted Me To Keep The Flame Burning, So To Speak, Along With The Other Guys In The Band. I Do My Best To Honor His Wishes And Push Forward With YES.”

DISC REVIEW “THE QUEST”

「Chris のような巨人に代わるものはいないよ。とはいえ僕は、Chris が僕が YES の炎を燃やし続けることを信じていたことを知っている。バンドの他のメンバーと同様にね。だから僕は、彼の遺志を尊重し、YES を前進させるために最善を尽くすだけなんだ」
Trevor Horn との一時的な再邂逅 “Fly From Here” から10年。Jon Davison をボーカルに迎えた Chris Squire 最後のスタジオ・アルバム “Heaven & Earth” から7年。結成から半世紀以上を経て、遂にオリジナル・メンバーは誰もいなくなりましたが、それでも YES の炎は赤々と燃え続けています。プログの巨人にとって22作目となる2020年代最初のアルバムは、ファンからの期待、自らのコンフォート・ゾーン、そして未来を見据えた野心そのすべてのバランスが完璧に釣り合った “探求” の結晶。
「複雑な感情だよ。本当に。もちろん、この新譜でYES が前進していることに感激しているよ。だけど、Chris が亡くなったことで、ほろ苦い気持ちもあるんだよね」
WORLD TRADE のアルバムに Chris Squire がゲスト参加を果たして以来、ボーカル、ギター、ベースに鍵盤までこなすマルチ・プレイヤー Billy Sherwood にとってベースの伝説は尊敬する兄のような存在でした。ゆえに、正式メンバーとしては数年の在籍でしたが、1989年からバンドの内外で関わり続けた YES に亡き Chris の後任として、ベーシストとして再び加入することには複雑な想いもありました。
しかし、Chris の遺志と、そして Billy の言葉を借りれば運命、宿命、何かしらの巡り合わせが彼をこのバンドへと再び誘い、その特別な場所で彼は巨人の仕事を継ぎながら、同時に YES を未来へと羽ばたかせる重要な2つの役割を果たすことになったのです。
「すべてのバンドにはリーダーがいると思うんだけど、Steve はその地位を獲得したと思うよ。 彼は長年にわたってバンドに貢献してきたからね。僕は Steve がプロデュースや、いわば “交通整理” をする機会を得たことを嬉しく思っているんだ」
バンドの内外から YES と共に歩み続けた Billy にとっても、現在の Steve Howe を核とした YES が最も “バランス” の取れたしっくりくる布陣なのかもしれませんね。パンデミックにおいて、ファイル共有やオンラインでの共同作業など非常に現代的な方法で制作された “The Quest” は、Steve Howe によってプロデュースまでなされています。1人のメンバーにこれほどその “パワー” と責任が与えられたのは、1994年に Trevor Rabin が “Talk” をプロデュースして以来のことでしょう。
それが一つの理由でしょうか。Roy Thomas Baker の繊細で抑制された “Heaven & Earth” に比べ、”The Quest” は生き生きとした躍動感に満ち溢れています。過去のマスターピースを凌ぐほどの作品かと問われれば答えは否かもしれませんが、それでも遡ることなど決して不可能な時の流れを逆流させるほどの気迫は十分です。その原動力は、やはり決して瑞々しさを失わない Steve Howe の独特なギタリズム。
久々の開幕にプレッシャーのかかるオープナー “The Ice Bridge” ですが、氷の橋は決して割れない強い意志を纏っていました。”Fanfare For The Common Man” を想起させるイントロから安定感を与えるのは Billy Sherwood。Steve Howe 独特のタイム感とギミックは火花のように飛び散り、優雅なボーカルが絶妙に加わります。明らかに、ここには YES の哲学が貫かれています。
環境問題を歌い紡ぐ Jon Davison はやはり Jon Anderson のように聴こえるというよりも、おそらくそうせざるを得ないのでしょうが、間違いなくこれまで以上に自信に満ちていて雄弁。ラストを飾る Steve と Geoff の掛け合いも含めて “Going For The One” のクライマックスのような爽快感を敷き詰めたといっても決して大げさではないはずです。
“Dare To Know” ではオーケストラが一段上の次元へ導き、ミドルテンポの “Minus The Man” では Jon と Steve の音色の甘さを存分に見せつけ、”Leave Well Alone” では Steve が大活躍する ASIA といった風情の80年代的レトロフューチャーがノスタルジアを誘います。そうしてこれまでの YES とは一味違う、70年代の映画のような懐かしさと温かみがアルバムを通して貫かれていくのです。楽曲至上主義を掲げつつ、新たなアイデア、バンドの真価、ファンの期待、そのすべてに必ずしも100%とは言わないまでも大きく応える現行 YES の魂がここにはあります。
「ファンの中に何がベストかを知っていると思っている “腕利きの将軍” はいつの時代にもいるものだけど、結局のところ、運命を決めるのはバンド自身なんだ。 僕は今の YES の一員であることを誇りに思っているし、仲間たちも同じように思っているはずだよ。ただ、現在のラインナップが、YES の歴史の中で最も長く続いているという事実は、僕にとって驚きだったよ。今後もこの方向を変える予定はないし、前に進んでいくだけさ」
Howe, Davison, White, Downs, Sherwood。例えば Jon Anderson, 例えば Rick Wakeman を期待して、もしくは最上級のテクニックを未だに忘れられず、並行世界の YES を夢見るファンが少なくないことはたしかでしょう。
しかし、2015年からバトンを受け継いだこの5人が、最高にクリエイティブで、YES の過去、現在、そして未来を奏でていることもまた事実です。瑞々しくも、Jon Anderson の小宇宙を感じさせる “The Western Edge” には、きっと彼らが今ここにいるすべての理由が詰まっているのかも知れませんね。Roger Dean による美麗なアートワークはもはや勲章。
今回弊誌では、Billy Sherwood にインタビューを行うことができました。「僕にとってプログレッシブ・ロックとは、音楽に宿る自由、表現、想像力の象徴なんだ。 ミュージシャンとしてもライターとしても、そういったものを大切にしているからね」 どうぞ!!

YES “THE QUEST” : 10/10

INTERVIEW WITH BILLY SHERWOOD

Q1: 1. Hi, Billy! “The Quest” is your first studio Yes album since “The Ladder” (1999). More than 20 years! How do you feel now?

【BILLY】: Mixed emotions, really. Thrilled there is forward motion for YES with this new record. It’s bittersweet however, due to Chris’ passing. I never imagined I would be in this position, playing bass with YES, but life is unpredictable so, here we are. I’m honored to be a part of such a great band and also to honor the wishes of Chris, in which we continue moving forward with YES.

Q1: “The Quest” はあなたにとって、1999年の “The Ladder” 以来20年以上ぶりの YES のアルバムですね!率直に、今はどんなお気持ちですか?

【BILLY】: 複雑な感情だよ。本当に。もちろん、この新譜でYES が前進していることに感激しているよ。だけど、Chris が亡くなったことで、ほろ苦い気持ちもあるんだよね。
自分が YES でベースを弾くという立場になるとは想像もしていなかった。だけど、人生は予測不可能なものだからね。そうして僕たちはここにいる。今は、これほど素晴らしいバンドの一員であることを光栄に思うと同時に、クリスの遺志を継いで YES を前進させていきたいと思っているよ。

Q2: You also have a big responsibility to take over from Chris Squire in YES this time now. We all know how much you respected him. Could you please talk about his passing and the responsibility of replacing him?

【BILLY】: It came as a shock when Chris called to let me know he was sick. We spoke of YES a lot and his desire for the band to continue. He knew my passion for the music and the idea of YES was strong. There’s no replacing such a giant. That said, I know Chris trusted me to keep the flame burning,so to speak, along with the other guys in the band. I do my best to honor his wishes and push forward with YES.

Q2: あなたが Chris をとてもリスペクトしていたことは、プログ世界の住人なら皆知っていましたよ…だからこそ彼の後任という重責はあなたにしか務まらないわけで…

【BILLY】: Chris が病気になったことを電話で知らせてくれたときはショックだったよ。僕たちは YES のことをよく話していたし、だからこそ僕はこのバンドを続けてほしいという彼の願いをよく理解していたんだ。 彼は、僕の音楽への情熱と YES に対するアイデアが強力であることを知っていたからね。
彼のような巨人に代わるものはいないよ。とはいえ僕は、Chris が僕が YES の炎を燃やし続けることを信じていたことを知っている。バンドの他のメンバーと同様にね。だから僕は、彼の意思を尊重し、YES を前進させるために最善を尽くすだけなんだ。

Q3: By the way, “The Quest” is a really great album! First of all, could you please tell us why you decided on this title and what it means to you?

【BILLY】: Steve came up with the title so, you would need to ask him. Personally, it means always looking to the future and wanting to see what’s over the horizon. That’s something I’ve always felt with making music, always looking to the future without fear or doubt.

Q3: それにしても、”The Quest” は素晴らしい作品ですね!まずは、この “探求” というタイトルについて説明していただけますか?

【BILLY】: このタイトルは Steve が考えたものだから、本来の意味は彼に聞くべきだろうね。
個人的には、常に未来を見すえながら、地平線の向こうに何があるのかを知りたい、そんな意味を持っているね。それは、僕が音楽を作るときにいつも感じていることで、常に恐れや疑いなく未来を見ているということなんだよね 。

Q4: With the destruction of the environment and last year’s pandemic, humanity seems to be in a critical situation. Especially the album written during the turmoil of last year seems to reflect the situation of the world, would you agree?

【BILLY】: The songs I was involved in writing are not really environmentally themed. “Minus the Man” is about A.I. and looking into the idea that eventually humans will have created a new “being” that surpasses our abilities. “The Western Edge” is about going forward and coming together as people. We have plenty that divides us, this song serves as an anthem of unity.

Q4: 近年の環境破壊や、昨年のパンデミックを見れば、人類が危機的状況にあるのは明らかです。
特にこの作品は、昨年の混乱の中で製作されたアルバムで、そういった世界の状況を反映しているようにも思えるのですが?

【BILLY】: そうだな、まあ少なくとも僕が作曲に携わった曲は、環境をテーマにしたものではないんだよね。”Minus the Man” は A.I.についての曲で、いずれ人間は自分たちの能力を超える新しい “存在” を作り出すだろうという考えに基づいている。
“The Western Edge” は、前に進むこと、そして人として団結することをテーマにしているね。僕たちを分断するものは本当にたくさんあるけれど、そんな世界でこの曲は結束のアンセムとなるように作ったんだ。

Q5: I felt that this album had a particularly strong Steve Howe flavor, or rather, he was the center of this album. Steve Howe is now also the producer, and I feel he is the core of YES now. How about that?

【BILLY】: Every band has a leader and I think Steve has earned the position. He has served the band so well over many years. That said, it’s not like there’s a power struggle internally. We all get along great and we are enjoying working and playing together. I’m happy Steve had the chance to produce and direct traffic, so to speak. I’ve been in the role of producer myself on a few occasions so, I understand the amount of work involved. I feel Steve did a great job during precarious times with the pandemic and all. I’m proud of this record and I know he is too, as we all are as a band.

Q5: このアルバムでは特に Steve Howe のテイストを強く感じましたよ。彼がこのアルバムの中心であると言いますか。
アルバムのプロデュースも手がけていますし、実際彼が今の YES の “核” なのでしょうか?

【BILLY】: すべてのバンドにはリーダーがいると思うんだけど、Steve はその地位を獲得したと思うよ。 彼は長年にわたってバンドに貢献してきたからね。とはいえ、内部で権力闘争をしているわけではもちろんないよ。みんな仲が良く、一緒に仕事や演奏を楽しんでいるんだ。
僕は Steve がプロデュースや、いわば “交通整理” をする機会を得たことを嬉しく思っているんだ。 僕自身、何度かプロデューサーの役割を果たしたことがあるから、その仕事の量は理解している。パンデミックなどの不安定な時期に、Steve は素晴らしい仕事をしてくれたと思っているんだよ。僕はこのレコードを誇りに思っているし、彼もそうだと思う。もちろん、バンドとしてもね。

Q6: YES is one of the most iconic progressive rock bands, so technique and complexity have always been in demand, but this time around, the focus seems to be more on the songs and melodies. How do you balance the expectations of your fans with what you want to do?

【BILLY】: For me, it’s all about serving the song. If that means a simple bass line, then, so be it. If it entails playing crazier, roaming, or soaring bass parts then that’s ok too. It’s all about the material; the compositions dictate the direction when considering what to play on a certain track.

Q6: YES はいわばプログレッシブ・ロックの象徴的存在で、ゆえにテクニックや複雑性が常に求められてきました。ただ、今回はより楽曲やメロディーに焦点が置かれているようにも感じますね。
ファンからの期待と、自分たちがやりたいことの折り合いはどのようにつけているんですか?

【BILLY】: 僕にとっては、曲に貢献することがすべてなんだ。 それがシンプルなベースラインを意味するのであれば、それはそれで構わない。 それが、よりクレイジーで、唸りを上げたり、舞い上がったりするようなベース・パートを演奏することであれば、それもいいだろうね。
結局、楽曲のマテリアルがすべてなんだ。YES では、楽曲で何を演奏するかを考えるときは、作曲者が方向性を決定するんだよ。

Q7: Jon Anderson and Rick Wakeman, the faces of YES are still active, and many fans want to see them when they think of YES, maybe. Do you continue to work with this group because Jon Davison and Geoff Downs are such a great fit for YES?

【BILLY】: I’ve had the honor to play with YES for many years now and served the band in many different capacities. I’ve played in three different line-ups and in my opinion, each version was unique and great in their own way. The same can be said for this current line-up for YES. YES is ever-evolving and I’m grateful to play a role in that evolution. I have the deepest respect for my bandmates, past and present. There will always be “Armchair Generals” who think they know what’s best but, at the end of the day, the band decides it’s own destiny. I’m proud to be a part of YES as it is now and I know my comrades feel the same way. It came as a surprise to me, the fact that this current line-up is the longest running version of YES in its history. There are no plans of altering its course going forward. Destiny, fate, call it what you will…. here we are.

Q7: Jon Anderson や Rick Wakeman といった YES の “顔” は現在でも精力的に活動しています。ゆえに、YES の音楽に彼らが必要だと考えるファンも少なくないでしょう。
それでも、Jon Davison, Geoff Downs と YES を続けているのは、彼らが現在の YES によりフィットしているからですか?

【BILLY】: 僕は光栄にも、長年にわたって YES と一緒に演奏する機会に恵まれ、様々な立場でバンドに貢献してきたと思う。3つの異なるラインナップで演奏してきたけど、僕の意見では、どのバージョンも独自のアイデアがあって素晴らしかったよ。 そして、現在の YES のラインアップにも同じことが言えるだろうね。
YESは常に進化し続けていて、その進化の一端を担えることに感謝しているんだ。 過去も現在も、バンドメイトには深い敬意を払っているよ。ファンの中に何がベストかを知っていると思っている “腕利きの将軍” はいつの時代にもいるものだけど、結局のところ、運命を決めるのはバンド自身なんだ。
僕は今の YES の一員であることを誇りに思っているし、仲間たちも同じように思っているはずだよ。ただ、現在のラインナップが、YES の歴史の中で最も長く続いているという事実は、僕にとって驚きだったよ。今後もこの方向を変える予定はないし、前に進んでいくだけさ。 運命、宿命、好きなように呼んでくれていいよ….とにかく僕たちはここにいるんだ。

Q8: You are still very active these days, playing solo, World Trade, Circa, The Prog Collective, Arc of Life, etc. I can feel your desire to keep the prog torch burning, right?

【BILLY】: For me, progressive rock stands for musical freedom, expression, and imagination. I’m all about those things as a musician and writer.

Q8: あなたは YES 以外にも、ソロ、WORLD TRADE, CIRCA, THE PROG COLLECTIVE, ARC OF LIFE など最近でも精力的に活動を続けていますね。プログの灯火を灯し続けるという気持ちが伝わってきます。

【BILLY】: 僕にとってプログレッシブ・ロックとは、音楽に宿る自由、表現、想像力の象徴なんだ。 ミュージシャンとしてもライターとしても、そういったものを大切にしているからね。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED BILLY’S LIFE

YES “TALES FROM TOPOGRAPHIC OCEANS”

PINK FLOYD “THE WALL”

WEATHER REPORT “HEAVY WEATHER”

GENTLE GIANT “THE POWER AND GLORY”

KING CRIMSON “RED”

MESSAGE FOR JAPAN

I look forward to returning to Japan once again! I truly love going there because the people are so wonderful. The spirit of Japan is unique and something I’ve been touched deeply by. Thanks to all the YES Fans in Japan…. looking forward to seeing you all at the next round of YES shows !!!

もう一度、日本に戻れることを楽しみにしているよ!日本の人々はとても素晴らしいから、日本に行くのが本当に好きなんだ。日本のスピリットはユニークで、僕はずっと深く感銘を受けてきた。日本の YES ファンの皆さん、ありがとう!…. 次の YES のショーで皆に会えることを楽しみにしているよ!!

BILLY SHERWOOD

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