COVER STORY + INTERVIEW 【IBARAKI : RASHOMON】


COVER STORY : IBARAKI “RASHOMON”

“In Japan,There’s This Thing About Karoshi, Salarymen Who Work Themselves To Death. I Don’t Talk About This Much, But My Uncle Kiichi Killed Himself. His Name Is My Middle Name.”

RASHOMON

ブラックメタルがヘヴィ・メタルの境界を押し広げるトップランナーであることに疑いの余地はありません。その重苦しく凍てつくような壮大さ、悪魔のような地獄の炎、耳障りなノイズはエクストリーム・ミュージックの最暗部にありながら、ねじれた空想家が最も先鋭的で予想外の音を解き放つことができる創造の魔窟となっています。だからこそ、TRIVIUM の英雄にしてメタル世界きっての探求家 Matthew Kiichi Heafy がこの地下城に足を踏み入れるのは、ある意味必然でした。
ブラックメタル・プロジェクト IBARAKI のデビュー・アルバム “Rashomon” は、Heafy にとって10年以上に渡る努力の結晶です。ブラックメタルへの愛を常に口にしていた Heafy は、2009年にはすでにこのプロジェクトに着手することを決定していました。当初のプランは、ブラックメタル界の “門番” たちが TRIVIUM のような比較的メインストリームなバンドに関連した作品を受け入れることはないだろうと想像して、別名で活動し、純粋なセカンドウェーブの攻撃性を持つ匿名作品を作ることでした。しかし Heafy が Ihsahn と接触し彼のソロ作品を探求し始めたとき、このアプローチは劇的に変化したのです。
このアルバムの至る所で、Ihsahn からの影響は息づいています。”angL” から “Arktis” までの素晴らしき Ihsahn の落とし胤のように、IBARAKI はブラックメタルに根ざしてはいますが、はるかに広い展望を持っている創造性の塊へと変身を果たしました。Ihsahn の存在は大きく、アルバムのプロデュースだけでなく、いくつかの曲を共同で書き、ボーカルとギターで何度も登場していますが、それでも “Rashomon” は非常にユニークかつ独自の存在。ただその実験的かつ感情的な到達点という意味では、両者は同じような考え方を共有しているのです。

和を感じさせるオープナー最初の爆発的なクレッシェンドに至る道のりでは、エクストリームでニヒルなブラックメタルを作ろうという当初の計画を鮮やかに感じ取ることができます。90年代のローファイで禁欲的な美学に陥ることはありませんが、生々しい叫び声が絡みつき、鋭くどう猛なギターとともに、Heafy は内なる獣を解き放っていきます。しかし、プログレッシブなパッセージが現れると、続く “Ibaraki-Doji” では豊かなオーケストラのうねりと予想外の拍子とともに、威厳ある “皇帝” のようなシンセサイザーが厳かに響き渡ります。この作品には、トラックを通しての波と流れがあって、その満ち引きは Heafy の Heafy たる所以とも言えるダイナミズムにつながります。TRIVIUM で重さとメロディーの巧みなバランスを司る Heafy はその教訓を、全く異なる方法であるにせよ、ここでも活かしきっているのです。
例えば、”Akumu” は BEHEMOTH の Nergal を意識して書かれたにちがいない闇の威厳に満ちていますが、続く “Komorebi” には OPETH や ULVER の哀愁やアトモスフィア、静謐が佇み、そうして Gerard Way をフィーチャーした一際衝撃的な “Ronin” へと到達します。初期の MY CHEMICAL ROMANCE では、彼の絶叫が示唆されることもありましたが、このような痛烈なパフォーマンスを20年間も温めていたとは驚きの一言。
ただし、それぞれの楽曲自体にも、ローラーコースターのような緩急、重軽、硬軟のコントラストがあって、その対比の妙を Heafy のパワフルな Mikael Akerfeldt 的クリーンボーカルが激しく美しく引き出し、IBARAKI 世界のドラマ性を格段に高めていきます。もっと言えば、OPETH や ENSLAVED がその矜持ゆえに踏み込めなかった、踏み込まなかった、完全にキャッチーでドラマティックなエクストリーム・プログレッシブを実現しているのではないでしょうか。
Ihsahn の家族(妻で Peccatum のパートナーである Heidi Tveitan を含む)”Ronin” にバッキング・ボーカルで参加していて、TRIVIUM の家族、ドラマー Alex Bent、ベーシスト Paolo Gregoletto、ギタリスト Corey Beauliei も様々なトラックで登場し作品の黒色を豊かに彩ります。ポーランド語で歌う Nergal, 「俺は素戔嗚。使命はわかってる!」と日本語で吠える “Susanoo no Mikoto” と言語的にも豊かな作品。


TRIVIUM 初期のインタビューからこのジャンルへの愛を告白し、2003年の “Ember To Inferno” や2008年の “Shogun” ですでにそのサウンドの片鱗を表現していた Heafy の情熱を疑う者はほとんどいないでしょう。しかし、EMPEROR のフロントマン Ihsahn や BEHEMOTH の Nergal といった巨人をも巻き込んだ果敢な傑作の完成には、最も熱心な信者ですらきっと驚かされるはずです。10年以上の年月を経て、Heafy は黒く塗りつぶされた地面に堂々と自身の旗を立て、自身の文化的背景に基づいた曲を作ることの重要性を理解するようになりました。
「ブラックメタルは、メタルがすべて同じと言われることに対する反応であるはずなんだ。だから、ブラックメタル・ファンにとって TRIVIUM の奴がブラックメタルをやるなんてめちゃくちゃ衝撃なんだよね。それがブラックメタルの精神だよ。だからこそ、僕はこのプロジェクトに責任があるんだ」
Heafy はいかにしてメタルの最も暗い深みへの道を発見したのでしょうか?
「15歳の時、Napster にハマったんだ。今でこそ、あのプラットフォームはかなりの汚名を着せられているけど、僕はいつも新しいバンドを発見するための方法としてそれを見ていたんだ。いわば、僕にとっての “テープトレード時代” だ。最初にハマったのは IN FLAMES, CANNIBAL CORPSE, CRADLE OF FILTH の3つのバンドだった。デスメタル、メロディック・デスメタル、ブラックメタルという3つのサブジャンルを発見したのは、メタルに目覚めたばかりの僕にとって、本当にエキサイティングなことだったんだよね。
同じ頃、オーランド出身の MINDSCAR というバンドの Richie Brown という地元のミュージシャンに出会った。彼と初めて一緒に遊んだとき、彼は “Emperial Live Ceremony” の DVD(当時は VHS だったかもしれない)を見せてくれたんだ。EMPEROR ライブインロンドン。僕は即座に夢中になったよ。それから Richie はDISSECTION の PV や DIMMU BORGIR の “Enthrone Darkness Triumphant” ツアーのライブなど、彼の古いテープを全部見せてくれるようになった。アートワークと音楽を通してのストーリーテリング、シンフォニックなパッセージとエクストリームな音楽が組み合わさっていて、その鮮やかさがとても気に入ったんだよね。METALLICA, MEGADETH, TESTAMENT, SLAYER といったバンドを聴き慣れていた僕には、まるで別物のように感じたよ…」

どのようなレコードが、Heafey のサブジャンルへの愛を形成したのでしょう?
「これらのアルバムは、最後の2枚を除いて、僕がブラックメタルにハマり始めた頃のもの。まず最初に、ストックホルムの MORK GRYNING の2001年の “Maelstrom Chaos”。このレコードはプロダクションとスタイルの面で僕にとても影響を与えている。このアルバムに収録されている “My Friends” という曲はとても奇妙で、”ブラック・メタルではない” と感じると同時に、とてもブラックメタルだと感じるんだ。
ウメオの NAGLFAR による2003年の “Sheol”。ストックホルムの DARK FUNERAL による2001年の “Diabolis Interium”。彼らは半伝統的なオールドスクール・サウンドにこだわっている。プロダクションに重点を置いていることが、僕にとって意味があったんだ。1995年、DISSECTION による “Storm Of The Light’s Bane”。1997年のオスロの OLD MAN’S CHILD による “The Pagan Prosperity”、DIMMU BORGIR の別バンドのGALDER。信じられないほどメロディアスで、バロックとネオクラシカルを同時に表現している。1997年の DIMMU BORGIR の “Enthroned Darkness Triumphant”。もちろん、1997年の EMPEROR の “Anthems To The Welkin At Dusk” と1996年の SATERICON の “Nemesis Divina” も名盤だ。これらは僕の “ブラックメタル少年時代” のアルバムなんだよ。
それから、ENSLAVED による2012年の “RIITIIR”、BEHEMOTH による2014年の “The Satanist” だ。”The Satanist” は新しいし、人々は基本的にノルウェーとスウェーデンのバンドをこのジャンルの “リーダー” として見る傾向があるけれど、この作品はブラックメタル史上最高のレコードのトップ10に入るよ」
Heafey は、ブラック・メタルの物語が、魂を震わせるサウンドを高めていると指摘します。
「ブラックメタルにのめり込んでいくうちに、なぜ彼らがああいった見た目をしているのか、なぜ曲やアートワークがこうなっているのかが分かってきて、本当にいろいろなもので構成されていることで好きになったんだ。彼らはもともとはスラッシュに傾倒していたんだけど、その後、クラシック音楽の要素やスカンジナビア民謡など、さまざまな影響を持ち込むようになった。そういう民俗的なストーリーは本当に魅力的だと思うんだ。
TRIVIUM の初期の曲で、”Oskoreia” という北欧の伝説にまつわる曲がある。白い顔をした幽霊の騎兵が超高音で叫び、人々の魂を奪っていくというものなんだけど、これは僕がどれだけブラックメタルの伝説にハマっていたかを示しているね。あらゆる本を読み、あらゆるバンドについて調べ、あらゆるシャツやCDを手に入れていたからね。このアルバムのターニングポイントは、Ihsahn と話していて、”もし僕がスカンジナビア人だったら、ThorとRagnarok について書けたのに…” と言った時だったんだ。
彼は2つのことを教えてくれた。1つは、僕にもルーツが存在すること、もう1つは、自分の日本的な面をもっと見るべきだということ。背中にタトゥーしている神道の八岐大蛇(やまたのおろち)のようなものを参考にできるとわかったとき、状況が一変したんだよね」

IBARAKI の既成概念にとらわれないアプローチに道を開いた先駆者は誰にあたるのでしょう?
「ブラックメタルのパイオニアたちは、メタルは商業的になりすぎて、同じようなことばかりやって言っていると言っていた。この音楽はその対抗策だったんだ。でも、その後、自分が作ったものに固執すると、結局、それをまた別のものに変えるための反抗が必要になるんだ。EMPEROR は、僕がこのジャンルを発見したときの最大のバンドのひとつだった。TRIVIUM のどこにブラックメタルがあるのかと聞かれたとき、僕はいつも、サウンド面では必ずしもそうではないけれど、EMPEROR は僕にすべてのレコードを前とは異なるものにする自信を与えてくれたと説明してきたんだ。
“In The Nightside Eclipse” にはじまり, “Anthems To The Welkin At Dusk”, “IX Equilibrium”, Prometheus”, “The Discipline Of Fire & Demise” まで、彼らはそれが可能であることを証明してくれた。ULVER の “Perdition City” はブラックメタルではないけれど、正反対であるからゆえに、ブラックメタルとして非常に重要なレコードなんだ。WARDRUNA もそうだ。あのバンドはブラックメタルとは似ても似つかないけど、同じ素材を使っているから、同じように重要だと感じる。一方で、BEHEMOTH の “The Satanist” は、このジャンルに回帰しているにもかかわらず、とても異なっているように感じられた作品だね。僕にとっては、”O Father O Satan O Sun!” が BEHEMOTH の曲の中で一番メロディが良いんだよ!
そして、Ihsahn の2010年のソロ・アルバム “Eremita” を聴くと、まるで初めて “Anthems” を聴いた時のような感覚になる。あのレコードがきっかけで、IBARAKI が別名義から自分名義のプロジェクトにシフトしたんだ」
教会の焼き討ち、ファシスト思想、殺人など、ブラックメタルの残忍な裏の顔はたしかに問題視されています。
「正直なところ、若い頃は、ブラックメタルの暗さに惹かれたんだ。別に肯定も宣伝もしているわけではないんだけど、音楽的な対立でバンドメンバーが殺し合うようなジャンルがあったというのは、若い人には絶対に響いてしまうと思うんだよ。だけど大人になってみると、このジャンルには人種差別や偏見に固執する、本当に問題のある側面があることがわかってくるし、それは僕が強く反対していることでもある。最初に若さゆえの “目隠し” が取れたとき、”信じられない!” と思う反面、”なんてこった、これが見えてなかったなんて!”とも思ったものだよ。でも、それは僕がブラックメタルを書き直す手伝いをしたいということでもあるんだ。
“Rashomon” の制作を終えた頃、(COVIDの無知が原因で)世界中で反アジアの感情が高まっていたんだ。だから、このアルバムは、日本の文化にスポットを当てて、その物語についてもっと知ろうと思ってもらえるようにするためのミッションだと考えるようになった。そして、中国や韓国の物語、ヨーロッパの物語、アフリカの物語など、地球上に学びのボキャブラリーを広げていきたいんだよ。僕にとって “Rashomon” は、ブラックメタルについて僕が好きなものを維持し、そうでないものを超越するための作品なんだ」

日本にルーツを持つ Heafy が、日本のゲーム文化に惹かれていったのはある意味自然な成り行きでした。
「4歳くらいのときに “マリオ1” が発売されたから、その頃からゲーム機で遊んでいたね。僕はずっと “任天堂キッズ” で、マリオのゲームばかりやっていたよ…。それからスーファミで “ドンキーコング”、”ファイナルファンタジー”、もちろん “スーパーマリオワールド”、”ゴールデンアイ 007″…。”ゴールデンアイ” のおかげで、シューティングゲームにハマり始めた。あと、1997年に発売された “ファイナルファンタジーVII” は、今でも一番好きなゲームだよ。それから “コール オブ デューティ” にハマったね。
ゲームは常に身近にあって、ゲームや音楽に関するインタビューも多く受けるようになった。その中で、僕が好きなゲームは常に “ファイナルファンタジー” だったことに気づかされていったね。あのゲームの音楽はとてもメタルなんだ。メタルの要素もあるし、ロックの要素も、クラシック音楽の要素も、エレクトロニックの要素もある。それらはすべて、後に僕が愛するようになるものだった。だから、ファイナルファンタジーが僕の好きなものをすべて植え付けてくれたのだと思う。音楽は何でもあり。エレクトロニック、クラシック、ロックに映画のような音楽。僕の音楽にあるドラマのような壮大な要素も、ゲームからきているのだと思うね」
愛する日本のビデオゲームのストーリーや背景にも、そんな伝承の数々は必ず存在しています。だからこそ、自身のルーツである日本の伝承をブラックメタルに込めた Heafy。さらにその世界は、子供のための絵本にまで広がっていきます。絵本に付属のCDは、IBARAKI とは別物で、Heafy が作詞・作曲・演奏した心地よいアコースティックソング。この貴重な物語をより多くの方法で体験してもらえるよう、本を補完するための音楽CDとなっています。
「”Ibaraki And Friends” は、僕が幼少期に親しんだ物語が詰まった本。日本の民話は、ビデオゲーム、アニメ、映画、歌など、今日ある多くの素晴らしい物語の根底にあるんだよ。日本人の母親が教えてくれた日本の古典的な物語。その中に登場する多くの伝説的ヒーロー、神秘的な生き物を見開きで紹介している。猿と人と鳥のハイブリッドである天狗、八岐大蛇、九尾の狐などが、イラストレーターの鮮やかなイラストと妻の美しいデザインによって描かれているんだ。
何年もの間、僕はできるだけ多くの日本の物語を研究し、そのうちのいくつかを体に彫ってきた。そして、TRIVIUM、IBARAKI、そして今回の “Ibaraki And Friends” の曲の中でそのテーマを探求しているんだ。こういった日本の素晴らしい物語の探求を通して、読者が日本の文化についてもっと学びたくなり、そして周辺のアジア諸国の文化をもっと学びたいと思い、世界中の物語について学ぶ意欲を広げ、僕たちが地球上で共有するべき多くの文化に対する好奇心を刺激できればと思っているんだよ」

ただし、ここに描かれているのは遥か昔の日本だけではありません。Heafy にとって、IBARAKI は単に日本の神話や民話にインスパイアされたアルバムというよりも、日本らしい “本音と建前” のように、想像上のものと文字通りのもの、現実と想像の両方の妖怪が存在する作品なのです。
「日本には、死ぬほど働くサラリーマンがたくさんいて、”過労死” というものがある。これはあまり話さないんだけど、僕の叔父の喜一は自殺したんだ。彼の名前は僕のミドルネームになっているんだけどね。彼は日本で警察官をしていて、家族もいた。家に帰ると、母が泣きじゃくっていたのを覚えているよ。なぜ彼が死ななければならなかったのか、その理由を探ってみたくなったんだ。日本は自殺が多いんだよ。表面的には幸せそうに見えるんだけど、実はそうじゃない。
母に相談したところ、僕が自分に課しているのと同じようなプレッシャーや不安感を日本の人たちも抱いているってわかったんだ。音楽を仕事にすることは夢の国だと思われているけど、実際はそうではない。このアルバムで、そのテーマを追求したかったんだ」
IBARAKIにユニークな美学と影響を与えたのは、日本の豊かな神話と民俗学だけではなかったのです。そう考えれば、この国に住む当事者である私たちは、”悪夢”, “魂の崩壊” といった楽曲のタイトルにも共感するところは必ずあるはずです。そしてそれは、Heafy 自身のアイデンティティについて考えるきっかけとなり、アメリカでの最近の悲劇、反アジアの暴力と偏見の増加について熟考する機会にもなりました。
「アメリカにおけるアジア人に対する暴力、人々の心の狭さによるアジア人へ殺人。ハーフだから白人でいいという感覚はなかったけど、今、このことについて話すことが重要だと感じているんだ。すべてのものには、その背後に豊かで素晴らしい、美しい文化がある。あらゆる文明、あらゆる文化、あらゆる生活の歩みがそう。だから、アジアのメタルヘッズやアジアの音楽ファンが、少しでも誇りを感じられるようになればいいと思う。”ここが私の出身地だ” “これが私の出自だよ” と言えるのは素晴らしいことだ」

ブラックゲイズ、ブラックンロール、DSBM。近年、ブラックメタルの “黒” にも様々な色合いが滲み出るようになりました。
「サブジャンルが大好きなんだ。メタルで一番好きなものの一つだ。以前は自分がとても精通していると思っていたけれど、今はたくさんありすぎて僕でも全部が何なのか分からないのがクールだね。食べ物や、もっと伝統的な音楽、ドラムのビート、ギターの奏法、ゲーム、漫画、映画などを分類するような感じで、とにかく楽しいんだよ。例えば、GHOSTEMANE は Baader Meinhof というブラックメタルのプロジェクトを持っているんだけど、GHOSTEMANE の最新作ではブラックメタルの断片を混ぜてきているよね。CARPENTER BRUT はエレクトロニック・アーティストでありながら、ブラックメタルを聴いているような気分にさせてくれる。
IBARAKI が今後、さらにサブジャンルを開拓していく可能性はあるかって? 僕が Ihsahn と Candlelight Records に送った一番最初のブラックメタルの曲を振り返ってみると、それは本物のオールドスクールのセカンドウェーブのように聴こえるんだ。そして今、僕はここにいる。いつか1991年のブラックメタルみたいな音楽を作りたいと思うかもしれない。あるいは1997年のような。あるいは全く新しいものを。マジック:ザ・ギャザリングのサウンドトラックや “Elder Scrolls Reimagined” のような他のプロジェクトに関しては、自分が何をしなければならないか分かっているけど、でも、IBARAKI と TRIVIUM では、常に “瓶の中の稲妻” を捕獲できるかどうかということなんだよ」
THE RUINS OF BEVERAST から PANOPTICON, NOCTULE まで、ブラックメタルは多くのアーティストが独自の道を歩んできました。
「他のジャンルのレイヤーと複雑さに対して、ブラックメタルのプロジェクトは一人の人間で成り立っているものが多い。EMPEROR, BEHEMOTH, ULVER, DARKTHRONE のようなバンドでさえ、一人の主要メンバーのビジョンを中心に展開する傾向がある。TRIVIUM では、常に自分たちが作りたいと思うレコードを作ってきたけど、それでも4人でひとつの頭脳として、常に考えているよね。
IBARAKI は、この12年間、誰のことも考えずに100%自分の好きなように音楽を作ってきて、イントロとアウトロを除いたトラックリストはその間の自分の成長を時系列で追ったものでもあるんだよ。それはとても自由なことで、次作がどうなるかとても楽しみだね。”東欧のダニー・エルフマン” 的なものがあって、それをもっと追求するかもしれない。あるいは、日本から伝統的な製法で作られた三味線を送ってもらったから、独学で弾き方を勉強して、1曲か2曲、あるいは全曲、僕が三味線を弾いて日本語で歌っているかもしれないね!」

特にメタルにおいては、厳しい顔をしたファンという門番の審判を超えなければなりません。
「ブラックメタルにおける門番は常に存在すると思う。自分がそうだったから、その考え方は理解できる。16歳の時、僕は超ロングヘアで、XLの長袖 DIMMU BORGIR のシャツとカットオフの白い戦闘服、戦闘ブーツを着て、トラックの窓を開けてブラックメタルを鳴らしながら高校に通っていたんだ。学校の友達はポップパンク、ハードコア、エモだったんだけど、僕は “歌のあるものは全部クソだ” と思っていた。”音楽はノルウェー産でなければ、最悪だ!” と思っていた。でも、今は Ihsahn と Nergal に注目している。ブラックメタル界の偉大な2人は、伝統的なブラックメタルとは違うことをやってきた。IBARAKI が TRIVIUM の人の音楽だからといって、聴かないという人は必ずいるはずだ。でも、それはそれでいいんだ。
だけど僕は、このジャンルを愛し、理解し、どんなエリートよりも深く知り、このジャンルの中で育ってきたからこそ、ブラックメタルを扱うことができる。創造性を大胆に飛躍させる必要があるんだ。2005年の TRIVIUM でも、 “Ascendancy Part 2” を作るのはきっと簡単だっただろうが、僕は正反対のアルバム “The Crusade” を作ることを選んだね。それが僕やリスナーを不快にさせるのなら、むしろそれは良いことだよ!」
新しい世代が音楽的、社会的、政治的な状況を変化させる中、ブラックメタルにはどのような未来が待っているのでしょうか?
「ブラックメタルには明るい未来があると信じている。デンマークの Møl のようなバンドがやっていること、僕らがここでやっていること、もっと大きな意味では Ihsahn のようなこのジャンルのパイオニアだった人が、80年代のメタルのような曲とサックスソロやクリーンジャズのパートが入ったレコードを作っているのを見ると、僕らはすでに未来にいると感じる。ブラックメタルには常にサブジャンルが存在し、その裏側には厄介なものもあって、僕らがやっていることがブラックメタルだとは思っていない人たちもいる。でも、僕は気にしない。
結局のところ、伝統主義者をなだめたり、何かを維持しようとするのではなく、人々は常に自分たちが聴きたいもの、演奏したいものを作る必要があると信じているんだ。何かを書こうとするとき、その輪の中に入ってしまうと、物事が作為的になってしまう危険性があるんだ。アメリカのロック・ラジオ向けに組み立て式のロックを作っているバンドがたくさんあるのと同じようにね」

参考文献: KERRANG!:Matt Heafy’s guide to black metal

IBARAKI: BIO

ULTIMATE GUITAR:Trivium Frontman Matt Heafy Explains What Video Games Mean to Him, Reveals His Favorite Game Ever

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