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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MARBIN : DIRTY HORSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DANI RABIN OF MARBIN !!

“I Feel Like The Number One Problem With Fusion Music Today Is That People With The Groove Or The Chords First And Their Melodies End Up Being Something That Fits. A Melody Is The Center. Everything Else Should Be Bent To Fit It.”

DISC REVIEW “DIRTY HORSE”

「僕たちは常にメロディから始めるんだ。コードやハーモニーはフレームだけど、結局メロディーを生み出さないとキャンバスの形がわからないからね。今のフュージョン音楽で一番問題なのは、グルーヴやコードが先にあって、メロディがその場しのぎで終わってしまうことだと思う。でもそうじゃないだろ?メロディーは中心だよ。それ以外のものは、メロディーに合わせていかなければならないんだ」
MAHAVISHNU ORCHESTRA や WEATHER REPORT, そしてもちろん Miles Davis など、かつて “エレクトリック・フュージョン” が革命的で、刺激的で、しかしキャッチーな音楽の花形だった時代は確実に存在しました。日本でも、Casiopea や T-Square がマニア以外にも愛され、運動会で当たり前に流されるという “幸せな” 時代がたしかにあった訳です。
なぜ、エレクトリック・フュージョンは廃れたのか。あの Gilad Hekselman や Avishai Cohen を輩出したジャズの黄金郷、イスラエルに現れた MARBIN のギタリスト Dani Rabin は、率直にその理由を分析します。変わってしまったのは、”メロディーだ” と。
「ファラフェル・ジャズ (ファラフェルとは中東発祥の揚げ物) と呼ばれるものは、イスラエルの音楽を戯画化し、わざわざ最大の “決まり文句” を取り上げて音楽の中に挿入し、人工的に一種のエキゾチックな雰囲気を作り出すもので、僕はいつも軽蔑しているんだ。イスラエルは人種のるつぼで、様々なバックグラウンドを持った人々が集まっている。僕は作曲家として、自分の中にある音楽をそのまま出していけば、民族的なスタンプが有機的に、そしてちょうど良い形で自分の音楽に現れてくると感じているからね」
最近のフュージョンの音楽家が思いついたメロディにコミットできないのは、それが自分を十分に表現できていないメロディだから。そう Dani は語ります。たしかに、近年ごく僅かとなったジャズ・ロックの新鋭たち、もしくはフュージョンの流れを汲んだ djent の綺羅星が、予想可能で機械的なお決まりの “クリシェ” やリズムの常套句を多用しているのはまぎれもない事実でしょう。テクニックは一級品かもしれない。でも、それは本当に心から出てきたものなのだろうか? MARBIN は “Dirty Horse” で疑問を投げかけます。
オープニングの “The Freeman Massacre” で、MARBIN の実力のほど、そして彼らが意図するメロディーの洗練化は十二分に伝わります。Dani とサックス奏者 Danny Markovitch はともに楽器の達人で、バンドはグルーヴし、シュレッドし、卓越した即興ソロを奏でていきます。フュージョンの世界ではよくワンパターンとかヌードリングという言葉を聞くものですが、彼らの色とりどりのパレットは退屈とは程遠いもの。
何より、この複雑怪奇でしかし耳を惹くメインテーマは、”ビバップは複雑なメロディとソロのシンプルなグルーヴで成り立っている。それが正しい順序” という Dani の言葉を地でいっています。”Donna Lee” ほどエキサイティングで難解なテーマであれば、ジャコパスも安心して浮かばれるというものでしょう。
一方で、二部構成のタイトルトラック “Dirty Horse” では、バンドのロマンティックな一面が浮き彫りになります。Dani と Danny のユニゾン演奏は実に美しく、目覚ましく、そして楽しい。両者が時に同調し、時に離別し、この哀愁漂う異国の旋律で付かず離れず華麗に舞う姿は、エレクトリック・フュージョンの原点を強烈に思い出させます。
さらに二部構成の楽曲は続き、”Sid Yiddish” のパート1でバンドは少しスローダウンしながら、Danny の長いスポットライトで彼らの妖艶な一面を、チベットの喉歌で幕を開けるパート2で多彩な一面を印象づけます。能天気なカントリー調から急激に悲哀を帯びる “World Of Computers” の変遷も劇的。正反対が好対照となるのが MARBIN のユニークスキル。
驚くことに、このアルバムは2021年8月にスウィートウォーター・スタジオにおいて、たった3日でレコーディングされています。これほど複雑怪奇で豊かな音楽を3日で仕上げた事実こそ、MARBIN がフュージョンの救世主であることを物語っているのかも知れませんね。MAHAVISHNU のようなレジェンドのファンも、THANK YOU SCIENTIST のような新鋭のファンも、時を超えて手を取り合い、共に愛せるような名品。もちろん、メタル・ファンは “Headless Chicken” でその溜飲を下げることでしょう。
今回弊誌では、日本通の Dani Rabin にインタビューを行うことができました。「僕がイスラエルのサウンドで本当に好きだったのは、東欧の影響とショパンのような和声進行がミックスされている音楽なんだ。というか、僕の好きな世界中の音楽には、そうした共通点が多くあるんだよね。 Piazzolla や Django Reinhardt と、僕が好きなイスラエルの音楽は、ある意味、思っている以上に近いんだよね」 どうぞ!!

MARBIN “DIRTY HORSE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MENTAL FRACTURE : DISACCORD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ORI MAZUZ OF MENTAL FRACTURE !!

“For Us, “Prog” Is Mind-Bending Music That Moves You Emotionally And Breaks Your Brain Logically. It Can Incorporate Any Genre.”

DISC REVIEW “DISACCORD”

「僕たちにとって “プログ” とは、感情を動かし、論理的に脳を破壊するような、心を揺さぶる音楽だよ。そして、どんなジャンルでも取り入れることができる音楽だ」
“プログレ” の沼にハマった現代のファンは、PINK FLOYD, YES, GENESIS, ELP, KING CRIMSON といった60年代後半から70年代半ばにかけての全盛期を懐かしむか、もしくは DREAM THEATER や PORCUPINE TREE, OPETH といった90年代に起こったジャンルの混交を “新しい” ものとして “寛容に” 受け入れるかのどちらかがほとんどでしょう。では、本当に新しい “ブログ” の形やアーティストが登場したとしたら、受け入れられる余地はもうこの場所に残されてはいないのでしょうか?
プログレッシブ・ミュージックは常に、あらゆる形のロック、フォーク、ジャズ、クラシック、メタルまで、幅広い音楽の領域を平等に愛おしく抱きしめる世界でした。そして実は、年月の経過と音楽地図の拡大は、そのパレットをさらに奥深く多様化しようとしています。イスラエルからオリエンタルな空気と感情の起伏を運ぶ、喜怒哀楽の交差点 MENTAL FRACTURE はまちがいなく、プログの次世代化を推し進める起爆剤です。
「僕たちは、インスピレーションを与えてくれるあらゆる音楽アーティストから、好きな要素を取り入れているんだよ。そうすることで、僕たちの感情を揺さぶる音楽言語が生まれるんだよね。ショパンのメロディーやラフマニノフのクライマックス、CAMEL や PORCUPINE TREE のメランコリー、OPETH の複雑さと激しさ、そして SNARKY PUPPY や Esperanza Spalding にインスパイアされたジャジーなハーモニーも聴くことができると思うよ」
YES や KING CRIMSON といった “プログレ” を定義したバンドの特徴。その核心に、メロディーとテンポ、そして構造の複雑さ、名人芸が据えられていたのは否定できない事実でしょう。多くの場合、それは “More is Better”、”多ければ多いほど良い” という足し算の原則に基づいていたのかもしれませんね。もちろん、それは極論で、そこだけにスポットが置かれていたわけではありませんが。
後に PORCUPINE TREE のようなアーティストが人気を得たのは、その複雑さがやり過ぎにならないよう、線引きをするタイミングを心得て、マイナスの美学を尊んだおかげであったとも言えるのではないでしょうか。そして、MENTAL FRACTURE は時代や場所を超越しながら、その音楽的な算数の巧みさで明らかに群を抜いています。
「オリエンタルな音楽は、それだけでは万人受けはしないかもしれない。だけど、メタルの中に取り入れると、聴衆の心を激しく揺さぶることができるんだよね。僕たちは、微妙な形ではあるけれど、確実にこのテイストを作曲に使っているんだよ」
“Inception of Fear” や “Clockwork” といった名曲群には、プログの先人に贈るリスペクト、90年代と中近東が混ざり合った濃密なメランコリー、現代ジャズの知的なハーモニーと共に、エスニックなパーカッションやアコースティックな響きが添えられています。それはさながら、地中海、紅海、死海という3つの海に面するイスラエルの多様な音景色。Ori Mazuz のファルセットを活用した情熱的な歌唱と、美しくも不気味でピーキーな鍵盤の響きはさながらモーゼのように、広大な “Disaccord” の海を自由自在に闊歩していくのです。
それにしても、KING CRIMSON が “Red” で達成した憂鬱な夢を前半で印象づけながら、大団円 “Hearts Of Stone” で DREAM THEATER のあの傑作 “Metropolis Pt.2” をリクリエーションするその度量はあまりに広大。決して明からさまなオリエンタル・フレーズを使用しているわけではないにもかかわらず、絶対的に感じる中東の風も白眉。
今回、弊誌では Ori Mazuz にインタビューを行うことができました。「僕たちはほぼ毎年紛争を経験していて、そのたびに、僕たちの現実がいかに愚かなものであるかを思い知らされるんだ。僕たちにできることは、ただひとつ、平和を願うことだけだ。だって僕たちは皆、結局のところ人間であり、他人の政治的野心や神の名のもとに死ぬべきでは決してないのだから。だから…僕たちの心はウクライナの人々とともにあるよ」 ネクタイにベスト、スラックスのプロモ写真、そして倒されたキングのチェス盤と沈みゆく太陽。思索に思索を重ねるような素晴らしいバンドの登場ですね。どうぞ!!

MENTAL FRACTURE “DISACCORD” : 10/10

INTERVIEW WITH ORI MAZUZ

Q1: First of all, you were born in Israel. From jazz, classical music, to metal, recently Israeli artists are leading the music scene. How does your being born and raised in Israel affect your music?

【ORI】: The Israeli music scene is extremely diverse, having a lot of great artists in many genres and styles. This means you are very likely to encounter a show by a great band that does something a bit different than what you usually listen to. Such a scene really complements our style of composition, as we love taking even the tiniest bits of inspiration from music that is sometimes completely unrelated to us stylistically.

Q1: 近年、イスラエルはジャズからメタルまで音楽シーンを牽引する国の一つとなっていますね?そういった環境はあなたたちにどんな影響を与えてきましたか?

【ORI】: イスラエルの音楽シーンは非常に多様で、様々なジャンルやスタイルの素晴らしいアーティストがたくさんいるんだよ。つまり、自分が普段聴いている音楽とはちょっと違う、素晴らしいバンドのライヴに出会える可能性が非常に高いんだよね。
こういったシーンは、僕たちの作曲スタイルにとても合っているんだ。僕たちは、時にはスタイル的に全く関係のない音楽から、ほんのわずかでもインスピレーションを得ることが大好きなんだからね。

Q2: How did Mental Fracture come to be? Where did your band name come from?

【ORI】: In 2010 Ori, Yogev and Hai were performing in a school band in Rishon LeZion. We felt that we have great chemistry. Ori was experimenting at the time with writing original music and arrangements. Inspired by bands like Dream Theater, Opeth and Porcupine Tree, we thought it would be cool to form our on progressive rock band! Philip, who studied at the same high school as Yogev and Hai, joined the band and we started composing “Genesis” and “The Mind’s Desire” together (Which were released on the 2019 EP). Although we have collected material for many years up to this day, life got in the way and we couldn’t be an active band until now, 12 years later, when we have finally released “Disaccord”.

Q2: MENTAL FRACTURE 結成の経緯を教えていただけますか?

【ORI】: 2010年、Ori, Yogev, Hai の3人は、リション・レジオンのスクールバンドで演奏していたんだ。僕たちは、素晴らしいケミストリーを感じていたよ。Ori は当時、オリジナル曲の作曲やアレンジを試行錯誤していたんだ。DREAM THEATER, OPETH, PORCUPINE TREE といったバンドに触発されて、自分たちでプログロック・バンドを結成したらクールだろうと思ったんだ!
そうして、Yogev, Hai と同じ高校で学んだ Philip がバンドに加わり、一緒に “Genesis” と “The Mind’s Desire” の作曲を始めた(これは2019年のEPでリリースされた)。今日まで長年に渡ってマテリアルを集めてきたものの、生活との両立はなかなか難しくてね。なかなかバンドとして活動することができず、12年後の今、ようやく “Disaccord” をリリースすることができたんだよ。

Q3: What is the metal/rock scene like in Israel? What’s the hardest part of being in a metal/rock band in Israel and the Middle East?

【ORI】: Israel has an amazing metal community with a variety of sub-genres. Prog is one of them, with bands like Orphaned Land, Subterranean Masquerade, Scardust and many more. The audience here loves sophisticated music and loves to get wild on live shows! The hardest part, for every musician, is to be noticed and reach this audience.

Q3: 中近東でメタルやロックをやることの難しさは何でしょうか?

【ORI】: イスラエルには、様々なサブジャンルを持つ素晴らしいメタル・コミュニティがある。プログもその一つで、ORPHANED LAND, SUBTERRANEAN MASQUERADE, SCARDUST といった素晴らしいバンドがいるんだ。
イスラエルの観客は洗練された音楽が好きで、ライブで盛り上がるのが大好きなんだよ!
ミュージシャンにとって最も難しいのは、そういった観客の目に留まり、その目に届くようになることなんだよ。

Q4: Your melodies are really attractive and engaging. Regarding the Middle East, I’ve had interviews with bands like Orphaned Land. Riverwood and Myrath. They were very oriental in their music, sometimes incorporating Middle eastern folk instruments. There is a definite oriental flavor to your music as well, would you agree? Why are Middle Eastern melodies so appealing to the world?

【ORI】: The bands mentioned really opened our minds about oriental music, as it may not appeal to everyone on its own, when incorporated in metal music it can really touch the metal audience. We are definitely using this flavor in our composition, although in a subtle way.

Q4: ORPHANED LAND, RIVERWOOD, MYRATH といった中近東のバンドは、オリエンタルなメロディーや楽器を巧みに楽曲に取り入れて人気を博しています。
あなたたちはそこまであからさまではないにしろ、中近東の憂いのようなムードが楽曲を一層素晴らしいものに引き立てていますね?

【ORI】: 君の挙げたバンドは、僕たちがオリエンタル・ミュージックに目覚めるきっかけとなった人たちだよ。
オリエンタルな音楽は、それだけでは万人受けはしないかもしれない。だけど、メタルの中に取り入れると、聴衆の心を激しく揺さぶることができるんだよね。僕たちは、彼らよりは微妙な形ではあるけれど、確実にこのテイストを作曲に使っているんだよ。

Q5: I have interviewed various Israeli artists, Orphaned Land, Scardust, Subterranean Masquerade, Nili Brosh, etc., and most of them mentioned their prayers for peace. Israel is a country where war is right around the corner…could you tell us your stance on the Israeli-Palestinian issue and the recent Russian aggression?

【ORI】: The Israeli-Palestinian issue is really complicated. Too complicated to the point that trying to explain any side of it in such a short format would not do it justice. We are experiencing a conflict nearly every year and each time it happens it enlightens how stupid our reality can be. The only thing we can do is to hope for peace. We are all human beings after all and we do not deserve to die for one’s political ambitions or in the name of god. Our hearts are with the people of Ukraine.

Q5: ORPHANED LAND, SUBTERRANEAN MASQUERADE, SCARDUST といったイスラエルのバンドにインタビューして感じたのは、彼らの平和に対する願いでした。まさに戦争がすぐそばにある国だからこそなんでしょうかね…

【ORI】: イスラエルとパレスチナの問題は本当に複雑なんだよ。あまりに複雑すぎて、こうした短いフォーマットで説明しようとしても、正当な評価は得られないだろうな…。
僕たちはほぼ毎年紛争を経験していて、そのたびに、僕たちの現実がいかに愚かなものであるかを思い知らされるんだ。僕たちにできることは、ただひとつ、平和を願うことだけだ。だって僕たちは皆、結局のところ人間であり、他人の政治的野心や神の名のもとに死ぬべきでは決してないのだから。だから…僕たちの心はウクライナの人々とともにあるよ。

Q6: I asked about the war because “Disaccord” seemed to me to be an album about the division of the world and its horrors. Can you tell us about the artwork Chess and the concept of the piece?

【ORI】: “Disaccord” is an album about the division between a person and themselves. Every song is telling a story about a person dealing with their cognitive dissonances. The artwork shows a chess board with only white pieces, and with the king fallen down, which symbolizes a person check-mating themselves.

Q6: 戦争について尋ねたのは、”Disaccord” “不一致、不調和” というアルバム自体、そしてチェスのアートワークが、世界の分断とその恐怖について描いていると感じたからです。

【ORI】: “Disaccord” は、他人と自分との分裂、分断をテーマにしたアルバムなんだ。すべての曲は、認知的不協和に対処する人についての物語を語っているんだよ。アートワークは白い駒だけのチェス盤で、キングが倒れていて、これはつまり人が自分自身をチェックメイトしているってことを象徴しているんだね。

Q7: Still, “Disaccord” is a really great album! I’ve rarely heard progressive music as emotional as this one! Musically, we can hear influences like Opeth, Camel, Porcupine Tree, Rush, etc. Could you please talk about your musical roots?

【ORI】: Thank you! We take what we like from every musical artist that inspires us. It creates a musical language that really moves us emotionally. Ori was classically trained on the piano, so you can hear influences in the melodies from Chopin and the drama buildup and climax of Rachmaninoff. You can hear the melancholy from Camel and Porcupine Tree and the complexity and fierceness of Opeth, and also jazzy harmonies inspired by Snarky Puppy and Esperanza Spalding. The album was self produced, mixed and mastered by Ori and Yogev, so the sound of the album is the sound of the band.

Q7: それにしても、これほどエモーショナルなプログ・ミュージックはめったにお目にかかれないですよ!
OPETH, CAMEL, PORCUPINE TREE, RUSH といったバンドからの影響に、あなたたち独自の感情的な爆発が加えられて傑出した作品となりましたね?

【ORI】: ありがとう!僕たちは、インスピレーションを与えてくれるあらゆる音楽アーティストから、好きな要素を取り入れているんだよ。そうすることで、僕たちの感情を揺さぶる音楽言語が生まれるんだよね。
Ori はクラシック音楽のピアノ教育を受けてきたから、ショパンのメロディーやラフマニノフのドラマの盛り上がり、クライマックスに影響を受けているのがわかると思う。CAMEL や PORCUPINE TREE のメランコリー、OPETH の複雑さと激しさ、そして SNARKY PUPPY やEsperanza Spalding にインスパイアされたジャジーなハーモニーも聴くことができると思う。
アルバムは Ori と Yogev によるセルフプロデュース、ミキシング、マスタリングだから、このアルバムの音がそのままバンドの音だと捉えてもらっていいと思うな。

Q8: I recently interviewed a British prog band called Azure, and they said “We See ‘Prog’ As a Genre Where Anything Can Happen, Whether It Be The Dramatic Fantasy Storytelling And Guitar Harmonies Of Iron Maiden, Or The Slithering Shred Melodies Of Steve Vai, Or Even The Sugary And Bouncy Energy Of The 1975”. So, What does “prog” mean to you?

【ORI】: For us, “Prog” is mind-bending music that moves you emotionally and breaks your brain logically. It can incorporate any genre.

Q8: 最近、英国の AZURE というバンドにインタビューを行ったのですが、彼らは “プログを何でも起こり得る音楽” と捉えていると話していましたよ。

【ORI】: 僕たちにとって “プログ” とは、感情を動かし、論理的に脳を破壊するような、心を揺さぶる音楽だよ。そして、どんなジャンルでも取り入れることができる音楽だ。

EIGHT ALBUMS THAT CHANGED MENTAL FRACTURE’S LIFE

ORPHANED LAND “MABOOL”

A mediterranean metal masterpiece, where each song has a musical narrative and climax, and shows that metal can make you feel very happy too. This album really opened my mind to oriental and jewish music.

地中海メタルの傑作。音楽的な物語とクライマックスがあり、メタルがとても幸せな気分にさせてくれることを教えてくれる。このアルバムは、僕の心をオリエンタルとジューイッシュ・ミュージックへと導いてくれた。

MAJOR PARKINSON “SONGS FROM A SOLITARY HOME”

I never thought music can be this chaotic and coherent at the same time. They craft melodies and rhythms like no other band I know of and they are my favorite band to this day.

音楽がこれほど混沌とし、同時に首尾一貫したものになるとは思ってもみなかった。他のバンドにはないメロディーとリズムを作り上げていて、今日までで一番好きなバンド。(ORI)

CELTIC FROST “TO MEGA THERION”

I made my very reluctant parents buy this early extreme metal classic when I was just 5 years old. A quarter century of
listening to extreme metal followed, as I really enjoyed it against all odds.

5歳の時、嫌がる親に無理やり買わせた、初期のエクストリーム・メタルの名作。その後、エクストリーム・メタルを聴くきっかけになったね。

DREAM THEATER “SYSTEMATIC CHAOS”

While it isn’t even my favorite album from the band today, it was my first real introduction to prog metal, and it
melted my tiny teenage mind at the time.

僕のお気に入りというわけでもないけど、プログメタルに初めて触れた作品。10代の小さな心を溶かしてくれたね。(PHILIP)

MAGIC PIE “THE SUFFERING JOY”

Similarly to our album Disaccord, this album discusses psychological and emotional issues of humans. Musically, it has an enormous amount of content, heavy riffs, among soft parts. I believe Magic Pie is one of the most underrated bands out there.

僕らのアルバム “Disaccord” と同様に、このアルバムも人間の心理的、感情的な問題を論じている。音楽的には、ソフトな部分の中にヘヴィなリフがあり、膨大な内容になっている。Magic Pieは最も過小評価されているバンドの一つだと思う。

HAKEN “THE MOUNTAIN”

Brilliant compositions that never get boring through the 70 minutes of the album. The sound and production are just wonderful. This album really opened up my ears to what modern prog can sound like.

70分のアルバムを通して、決して飽きさせない見事な構成。サウンドとプロダクションがとにかく素晴らしい。このアルバムでモダンなプログレとはどんなものなのか、理解したよ。(YOGEY)

PORCUPINE TREE “THE INCIDENT”

An incredible album with unique production and sound design, Gavin Harrison plays very dynamically and has a signature
sound.

ユニークなプロダクションを持つ素晴らしいアルバム。Gavin Harrison の非常にダイナミックな演奏と特徴的なサウンドデザインが秀逸。

HADORBANIM “FIRST AFTER THE SECOND”

I was really inspired by the groove of this album. Its compositions and arrangements are top notch.

本当にインスピレーションを受けたよ。このアルバムのグルーブ感、作曲と編曲は一流さ。(HAI)

MESSAGE FOR JAPAN

We love Japan and its culture and we hope to perform live for you one day! Apart from enjoying the most commonly cited cultural exports (such as games/anime/culinary styles etc.) some of us have recently discovered and fallen in love with Japanese Math Rock.

日本とその文化が大好きさ!いつかライブがやれたらいいね。ゲームやアニメ、料理はもちろん、最近は日本のマスロックにハマっているメンバーもいるんだよ。

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SUBTERRANEAN MASQUERADE : MOUNTAIN FEVER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TOMER PINK OF SUBTERRANEAN MASQUERADE !!

“We Are Rooting For Peace. That’s All We Care And Dream About. Our Music Is Made With Love For Everyone. All We Want Is Peace.”

DISC REVIEW “MOUNTAIN FEVER”

「僕たちはただ平和に根ざしている。それが僕たち全員の関心事であり、夢でもあるんだ。僕たちの音楽は、全員への愛で作られている。僕たちが望むのは平和だけなんだ」
テロと報復の連鎖。中東の火薬庫の中で苦悩するイスラエルは、進化する音楽世界のリーディング・ヒッターであり、その緊張感ゆえに平和を祈る音のピース・メイカーが現れる聖地ともなりました。ORPHANED LAND の功績を語るまでもないでしょう。そうして、地底の多様な仮面舞踏会で舞い踊る SUBTERRANEAN MASQUERADE も彼らの軌跡を追っていきます。
「特にイスラエルのシーンがあまり知られていないからこそ、比較されるのは当然のことだよね。だから僕たちは、世界中で話題になり、より多くの人が話題にしたり聴いたりするような、次のイスラエルのバンドになることを誇りと共に誓っているんだ」
ただし、エルサレムまでの道のりがすべて同じわけではありません。ORPHANED LAND がよりメタリックエスニックな世界を探求し融和を前面に押し出すなら、SUBTERRANEAN MASQUERADE はさながらアンダーグラウンドの雑多から這い出る混沌のエスニックプログレッシブ。
“Mountain Fever” では、エキゾチックなブズーキとフレームドラムの組み合わせで始まり、すぐにメタルの重量感とダブルキックの興奮を共有します。しかし、メタリックな要素は数ある色彩のひとつに過ぎず、SUBTERRANEAN MASQUERADE は混沌の中にプログレッシブな輝きを見出します。管楽器、ストリングス、トライバルドラムを使ったトレードマークとも言えるサウンドに、耳に残るメロディ、グロウル、トリプルギター、女性ゲストシンガー、そしてジャンクなインストルメンタルセクションまで地底の仮面舞踏会は千客万来。
さらに “Inwards” では、レナード・コーエンのメロディで始まり、インドの民族音楽へ危険なまでに接近し、デスメタルのカオスに陥りながら、最後は神々しいホーンセクションとサックスのソロで幕を閉じます。そのすべてを7分に収める芸当こそ、彼らの真骨頂。
「イスラエルにはヘブライ語と英語で歌うロックアーティストがたくさんいるけど、ほとんどのアーティストはガラスの天井 (目に見えない制約) を破ってはいないんだ」
と嘆くバンドのヤハウェ Tomer Pink ですが、常にイスラエルと中東の音楽の伝統に深く根ざしながら、ブラックメタルからゴスペルまでこれまで以上にバラエティに富んだ作品は、ソフトなロックから深みのあるグロウル、ささやきに叫びと刻々と変化を続ける新加入の歌い手 Vidi の歌唱も相まって、完膚なきまでに聖地の天井を突き破っているのです。
「最も重要なのは、それぞれの楽器を最高の音でレコーディングすることだった。10のスタジオを10の楽器で使うようなね」
そして “Mountain Fever” は、楽器や音楽の色彩と同様に感情までも豊富です。ゴラン高原の山中で書かれ部分的には彼の地で録音された作品は、世界を放浪するような前作 “Vagabond” と比較して、むしろ内省的で旅路への憧憬を醸し出しているようにも思えます。
そんな夢幻の祈りは、きっとコロナと隔離に苦しんだイスラエルの抑圧と解放を反映しているのでしょう。世界中すべて難民に捧げられたハモンドとゴスペルの美しき混乱 “Somewhere I Sadly Belong” は、まさに “Mountain Fever” に秘められた悲しみと抑圧を素晴らしく反映しています。
今回弊誌では、Tomer Pink にインタビューを行うことができました。「この国には幅広いスタイルがあり、多様なシーンがあり、ハングリーで努力している多くのバンドがいる。僕たちの観客のほとんどはイスラエルにはいないけど、イスラエル国外で成功すると、母国のみんなが喜んでくれて、僕たちの心も温かくなるのさ」Jens Bogren のプロダクションも見事。PAIN OF SALVATION や DIABLO SWING ORCHESTRA のファンもぜひ。どうぞ!!

SUBTERRANEAN MASQUERADE “MOUNTAIN FEVER” : 10/10

INTERVIEW WITH TOMER PINK

Q1: First of all, you were born in Israel. From jazz, classical music, to metal, recently Israeli artists are leading the music scene. How does your being born and raised in Israel affect your music?

【TOMER】: I’m not sure it affected me very much aside from those middle eastern influences which for me it’s just the soundtrack of everyday life. We are still getting all the worldwide music like everybody else does but I guess that you could say that there are more traditional elements in our music thanks to the place we live.

Q1: ジャズやクラッシック、そしてメタルまで、イスラエルは先進的な音楽世界をリードする国の一つです。
まずは、イスラエルという出自があなたに与えた影響からお話ししていただけますか?

【TOMER】: 僕にとってはただ日常生活のサウンドトラックである中近東の音楽を除けば、イスラエルという出自からあまり影響を受けたとは思えないな。僕も他の人たちと同じように世界中の音楽を聴いているだけなんだ。
ただ、僕たちが住んでいる場所のおかげで、自分たちの音楽にはより伝統的な要素が宿っているとは言えるかもしれないね。

Q2: What is the metal/rock scene like in Israel? Is it hard to keep playing rock music in Israel?

【TOMER】: I think it’s all a matter of how strong your willpower is. There are many rock artists in Israel singing in Hebrew and english but most are not breaking the glass ceiling. We have indie rock festivals mixed with other popular music,Metal is definitely less popular but there has been a solid scene for decades and it is expanding mostly towards Extreme metal. In terms of Audience traction, it can be sometimes difficult but if you really believe in yourself and persevere you can get far. This is the advantage of a small country, when you succeed, everyone hears about you immediately. We have a wide range of styles here and a varied scene, a lot of hungry hard working bands. We are very lucky to be able to play overseas, as it’s difficult in our region to tour. Most of our audience is not in Israel, but when we succeed outside of Israel, everyone back home is happy for us and it warms our hearts.

Q2: イスラエルのメタルやロックシーンはどのような状況ですか?
あなたの国で音楽を続けることは簡単ではないのでしょうか?

【TOMER】: それは、その人の意志の強さの問題だと思うな。イスラエルにはヘブライ語と英語で歌うロックアーティストがたくさんいるけど、ほとんどのアーティストはガラスの天井 (目に見えない制約) を破ってはいないんだ。
メタルは確かに人気がないけれど、何十年も前からしっかりとしたシーンがあり、主にエクストリーム・メタルの方向へと拡大している。オーディエンスの支持という点では、時には困難なこともあるけど、自分を信じて粘り強く頑張れば、海外で成功することも不可能じゃない。
これは小さな国の利点で、成功すると誰もがすぐにそのことを耳にするだろ。この国には幅広いスタイルがあり、多様なシーンがあり、ハングリーで努力している多くのバンドがいる。この地域ではツアーをするのが難しいから、僕たちが海外で演奏できるのはとても幸運なことだよ。
僕たちの観客のほとんどはイスラエルにはいないけど、イスラエル国外で成功すると、母国のみんなが喜んでくれて、僕たちの心も温かくなるのさ。

Q3: Israel is famous for Orphaned Land and Salem, but they are more metal than you are, right? How do you feel about being compared to them?

【TOMER】: First of all, we love these guys to pieces. We have a long relationship with Orphaned Land, from their early days (me and Kobi have been working together in an EDM and Trance music label when we were young) and up until today. Matan Shmuely Played Drums on all of our Albums and Idan Amsalem contributed buzuki and a guitar solo on our track “Mangata”. We have been on the road with them for around 43 shows, we see them as brothers and we are proud of their achievements. Also Salem’s, we appreciate the musical history of our scene. Comparisons are a natural thing, especially when the rest of the Israeli scene is not very much known, so we are actually proud to be that next Israeli band that makes waves around the world and that more and more people start talking about and listening to. There were not a lot of Israeli metal/rock Bands since the 90s that got far and we are determined on being the spearhead of the next rock and metal wave from this country.

Q3: イスラエルといえば、あなたたちの他に ORPHANED LAND と SALEM が有名ですよね。
ただ、彼らはあなたたちよりももっとメタル寄りでしょう。比較されることにはどう感じていますか?

【TOMER】: まず第一に、僕たちは彼らのことを心から愛している。ORPHANED LAND とは、彼らの初期の頃(僕とギタリストの Kobi は若い頃、EDM やトランスの音楽レーベルで一緒に仕事をしていた)から今日まで、長い付き合いがあるんだよね。
Matan Shmuely は僕たちのすべてのアルバムでドラムを演奏してくれたし、Idan Amsalem は僕たちの曲 “Mangata” でブズーキとギターソロを担当してくれた。彼らとは43回の公演を共にしてきた。僕たちは彼らを兄弟のように思っており、その功績を誇りに思っているんだよ。
同じく SALEM も、僕たちのシーンの歴史にとって非常に重要なバンドだ。特にイスラエルのシーンがあまり知られていないからこそ、比較されるのは当然のことだよね。だから僕たちは、世界中で話題になり、より多くの人が話題にしたり聴いたりするような、次のイスラエルのバンドになることを誇りと共に誓っているんだ。
90年代以降、イスラエルのメタル/ロック・バンドはあまり活躍していなかったけど、僕たちはこの国の次のロック/メタル・ウェーブの先鋒になることを決意しているからね。

Q4: I really like the band name Subterranean Masquerade, why did you choose it? It seems to be the opposite of the album title “Mountain Fever”, would you agree? haha.

【TOMER】: Truth be told, I wasn’t thinking about that but you are totally right, haha. I came up with the band name around 25 years ago.. Such a long time, i can’t even remember how I came to this. I did think about changing the name into something more accessible a few times but somehow we decided to stick with this one.

Q4: SUBTERRANEAN MASQUERADE (地下の仮面舞踏会) というバンド名も大好きなんですよ。”Mountain Fever” という今回のアルバムタイトルとは真逆にも思えますが (笑)

【TOMER】: 実を言うと、全然気づいてなかったんだけど、まったくその通りだよね (笑)
このバンド名を思いついたのは、今から25年ほど前のことだよ。どうやってこの名前にしたのか覚えていないほどの大昔のことだね。もっと親しみやすい名前にしようと何度か考えたこともあったけど、まあなんだかんだこの名前でいくことにしたんだよな。

Q5: Green Carnation’s Kjetle Nordhus and Novembers Doom’s Paul Khur were out and Vidi Dolev who handles both the clean vocals, and the growls was in. Why was this change made, and what is good about Vidi?

【TOMER】: Long distance relationships are not easy, especially when everybody got few bands. Kjetle was just recording the new Green Carnation album and Paul is living in the USA, very far away from where we are. We also always knew we are a touring band and that requires dedication and time.. It’s not always working for everybody. Vidi is an old friend and a very respected musician in the Israeli music scene.. He entered those big shoes of Paul and Kjetle and worked his way into our hearts and family.

Q5: 今回は GREEN CARNATION の Kjetle Nordhus, NOVEMBERS DOOM の Paul Khur の参加はなく、Vidi Dolev がクリーンとグロウルの両者を兼任して歌っていますね?

【TOMER】: 遠距離でうまくやるのは簡単じゃないからね。特に、みんながいくつかのバンドを持っているときは。Kjetle はちょうど GREEN CARNATION のニューアルバムをレコーディングしていたし、Paul はアメリカに住んでいて、僕たちがいる場所からとても離れているんだよ。
それに、僕たちは常にツアーバンドで、そのための献身と時間が必要であることを知っていたからね…。誰もがうまくいくわけじゃないんだよ。
Vidi は古い友人で、イスラエルの音楽シーンでとても尊敬されているミュージシャンなんだ。彼は Paul と Kjetle の後任として存分な実力を発揮し、僕たちの心に家族のように入り込んでくれたんだ。

Q6: “Suspended Animation Dreams” was crazy experimental metal. “Vagabond” was more traditionally proggy than earlier albums. I think “Mountain Fever” is a mix of those two, along with your usual dose of jazz, and middle-eastern melodies, Would you agree?

【TOMER】: Yes, I totally agree. I think that Mountain Fever got something more to do with S.A.D then with Vagabond though it’s a lot more focused and mature. It is as risky and varied as that album but so much more focused and well executed.

Q6: “Suspended Animation Dreams” はクレイジーで実験的な作品で、”Vagabond” はよりトラディショナルなプログ的作品でした。
“Mountain Fever” はトレードマークのジャズや中東のメロディーを保ちながら、その両者を巧みにミックスしたようなアルバムですよね?

【TOMER】: 全く同感だよ。”Mountain Fever” は、 “Vagabond” よりも “Suspended Animation Dreams” に通じるものがあると思うんだけど、もっと集中していて成熟しているよね。このアルバムは、”S.A.D.” と同じようにリスキーで多様性に富んでいるけど、よりフォーカスされていて内容も良いよね。

Q7: Percussion and other ethnic instruments are an important part of the album. What are some of the difficulties in combining metal and traditional music?

【TOMER】: It’s all about colors and about how to glue it all together. We have been working very hard on the arrangements for this album, really knit picking every moment of it. Tha main challenge was recording each instrument the best way , meaning, we had to use about 10 different studios to make it the best sounding arrangement possible, for example, the room we recorded the violins at, was not necessarily the best room for percussions, so we went to a different studio to record the percussions and so on. Everything had to be very accurate in the way of recording, otherwise we would be having a lot of trouble mixing into one texture which makes sense. On the other hand, we didn’t want the mix to sound like 10 different rooms, so after recording all the ethnic instruments we actually reamped the guitars to glue it all better. Everything had to work as a macro, but in order to do it, the pre production was full of ants work.

Q7: パーカッションやブズーキなど、エスニックな伝統楽器もアルバムでは重要な役割を果たしていますね。メタルと伝統音楽をミックスする際、気をつけていることはありますか?

【TOMER】: すべては色彩と、それをどうやって接着するかということなんだ。今回のアルバムでは、アレンジに非常に力を入れており、一瞬一瞬を大切にしているんだよ。
最も重要なのは、それぞれの楽器を最高の音でレコーディングすることだった。10のスタジオを10の楽器で使うようなね。例えば、バイオリンを録音した部屋が必ずしもパーカッションに最適な部屋ではなかったら、パーカッションを録音するために別のスタジオに行くというように、すべての録音方法を正確に行う必要があったからね。
その一方で、ミックスが10の異なる部屋のように聞こえるのは避けたかったから、民族楽器をすべて録音した後、ギターを実際にリアンプして、すべてを糊付けしたんだよ。すべてがマクロとして機能しなければならないのだけど、だからこそプリプロダクションは蟻地獄のような作業だったよね。

Q8: Israel and Palestine are on the verge of war. What is the band’s stance on religious and racial tensions?

【TOMER】: We are rooting for peace. That’s all we care and dream about. Our music is made with love for everyone. All we want is peace.

Q8: 最後に、イスラエルとパレスチナは今にも戦端を開きそうな緊迫した状況にあります。あの難しい問題について、バンドのスタンスを教えていただけますか?

【TOMER】: 僕たちはただ平和に根ざしている。それが僕たち全員の関心事であり、夢でもあるんだ。僕たちの音楽は、全員への愛で作られている。僕たちが望むのは平和だけなんだ。

THREE ALBUMS THAT CHANGED TOMER’S LIFE 

JETHRO TULL “AQUALUNG”

PINK FLOYD “DARK SIDE OF THE MOON”

DAVID BOWIE “ZIGGY STARDUST”

MESSAGE FOR JAPAN

We are very grateful to anyone who takes the time to listen to our music. Life is short and it’s not obvious at all you chose to press play. We hope to come to Japan as soon as possible. Until then – we wish you health and happiness Arigatō gozaimashita!

時間をとって僕たちの音楽を聴いてくれるすべての人に感謝を。人生は短く、プレイボタンを押して僕たちの音楽選んだのは全く当たり前のことではないからね。一日も早く日本に行きたいと思っているよ。それまで、みんなの健康と幸せを祈っているよ。ありがとうございます。

TOMER PINK

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SCARDUST : STRANGERS】SONIC STARDUST FROM ISRAEL


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SCARDUST !!

“The Name Holds Two Opposites. The Scar Dust Is The Trauma, It Is Ugly And It Hurts. But When You Join Both Words Together It Sounds Like Stardust, Which Is Something Ethereal And Beautiful.”

DISC REVIEW “STRANGERS”

「イスラエルには小さいながらもとてもパワフルで、最高のメタルバンドが集まっているのよ。ORPHANED LAND, WALKWAYS, SUBTERRANEAN MASQUERADE といった有名なバンドは氷山の一角に過ぎないの。」
米国と欧州、そして中東の交差点イスラエル。時に火薬庫にもなり得る複雑なその地で、音を宗教とするアーティストたちは、現実社会よりも容易に文化間の距離を縮めています。
デビューフル “Sands of Time” があの Prog 誌から “Extraordinary” という絶賛を浴びた SCARDUST も、イスラエルが生んだ極上の架け橋の一つ。世界に散らばるインスピレーションの結晶を集めながら、プログメタル無限の可能性を追求していくのです。
「僕はシンフォニックメタルというのは、プログロックの歴史を紐解けばその延長だと考えることが出来ると思っているんだ。」
バンドの専任コンポーザー、アレンジャー Orr Didi は、クラッシックとロックの甘やかな婚姻から始まったプログロックの起源が、現在のシンフォニックメタルへと続いている、そう主張します。実際、SCARDUST の音楽は荘厳なクワイアやストリングスのクラシカルな響きを抱きしめながら、メタルに宿るアグレッション、複雑な不合理、そしてテクニックの洪水をもしっかりとその身に受け止めているのです。
「優れたテクニックを持つことは、このジャンルには不可欠な要素だと思っているの。」
中でも、驚異的なハイトーンからグロウル、ラップにスキャットまで、ありったけの情趣を注ぎながら自由を謳歌する Noa Gruman の千変万化な詩情はあまりに独特に、楽曲の表情をコントロールしていきます。
実際、Russell Allen と Floor Jansen, そして Whitney Huston がディズニーの魔法で溶け合ったその歌の万華鏡は、JINJER の Tatiana Shmaylyuk に匹敵するほどユニークを極め、”テクニックとは肉体的なプロセスでありながら、心、身体、魂、表現を一つに結びつけ、感情的な側面を最終的な形に持っていくことを目的としているんだ” のギタリスト Yadin の言葉を実践しています。
「イスラエルに最高のオーディエンスがいることは確かなんだけど、その人数は決して多くないから母国よりも遠く遠く離れた世界を対象に音楽を演奏し、作らねばならないと理解しなきゃいけないんだよ。それがある意味もどかしい部分ではあるんだけどね。」
アートとエモーションの粋を極めた絶佳のメタルオペラを創造していながら、母国以外での活動に力を入れなければバンドを維持できないもどかしさ。その中で感じた疎外感や孤独は乗り越える野心を伴って最新作 “Strangers” へと投影されました。
散りばめられた楽曲の断片を組み込みながら驚異のテクニックでレコードへと導く “Overture For The Estranged”。そこから描かれる10曲のプログメタルドラマは、DREAM THEATER や SYMPHONY X の迷宮組曲に EPICA や NIGHTWISH のシンフォニーを集成した新世界。興味深いことに、その10曲はそれぞれが対になるパートナー曲を有して、5つの魅惑のストーリーを裏と表から語り尽くしていくのです。
ORPHANED LAND を手がけた Yonatan Kossov と Jens Bogren のプロダクションチームも、ドイツのハーディーガーディー奏者 Patty Gurdy も、40人の学生コーラス隊も、ダンスを誘う煌びやかなアンサンブルも、すべてはこの耽美でしかしゴージャスなメタル交響曲を嫋やかに彩ります。特に、SYMPHONY X から LANA LANE へとバトンが渡る “Tantibus Ⅱ” の扇情力は筆舌に尽くしがたい秘宝。
今回弊誌では、Noa, Yadin, Orr の3人にインタビューを行うことが出来ました。「SCARDUST には2つの相反するものが込められているの。スカーとダスト (傷の結晶) はトラウマで、醜くて痛いわよね。だけどこの2つの言葉を一緒にすると、スターダストのように聞こえて、それはエセリアルで美しい何かへと変化するのよ。」 どうぞ!!

SCARDUST “STRANGERS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NILI BROSH : SPECTRUM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NILI BROSH !!

“There Are So Many More Professional Women Guitarists Kicking Ass Out There. I’d Rather Think Of It As “Everyone’s Era”, Where Gender, Race, Ethnicity (Or Genre!) Doesn’t Matter…I Hope The Era I Live In Is The One Where The Music Is What Matters.”

DISC REVIEW “SPECTRUM”

「プロフェッショナルの女性ギタリストがどんどん増えてきているわよね。だけどむしろ私は、性別、人種、民族、そしてジャンルでさえ関係ない “みんなの時代” だと思っているのよ…私の生きている時代は、音楽が大事な時代であってほしいわね。」
ある時は Tony MacAlpine の頼れる相棒、ある時は Ethan Brosh の美しき妹、ある時はシルクドソレイユのファイヤーギター、ある時は DETHKLOK の怪物、ある時は IRON MAIDENS のマーレイポジション。
多様性が特別ではなくなった “みんなの時代” において、イスラエルの血をひくギタープリマ Nili Brosh は培った音の百面相をソロキャリアへと集約し、性別、人種、民族、そしてジャンルの壁さえ取り払うのです。
「アルバムのジャンルに関係なく、それが音楽であるならば一つになって機能することを証明したかったのよ。だから文字通りスペクトラム (あいまいな境界を持ちながら連続している現象) というタイトルにしたの。私たちがまったくかけ離れていると思っている音楽でも、実際はいつも何かしら繋がっているのよ。」
地中海のバージンビーチからセーヌの流れ、日本の寺社仏閣、そしてマンハッタンの夜景を1日で堪能することは不可能でしょうが、Nili の “Spectrum” は時間も空間も歪ませてそのすべてを44分に凝縮した音の旅行記です。プログレッシブな音の葉はもちろん、R&B にジャズ、ワールドミュージックにエレクトロニカなダンスまで描き出す Nili のスペクトラムは万華鏡の色彩と超次元を纏います。
特筆すべきは、テクニックのためのインストアルバムが横行する中、”Spectrum” が音楽のためのインストアルバムを貫いている点でしょう。オープナー “Cartagena” から大きな驚きを伴って眼前に広がる南欧のエスニックな風景も、Nili にしてみればキャンパスを完成へ導くための美しき当然の手法。幼少時にクラッシックギターを習得した彼女が奏でれば、鳴り響くスパニッシュギターの情熱も感傷も一層際立ちますね。
“Andalusian Fantasy” では Al Di Meora のファンタジアに匹敵する南欧の熱き風を運んでくれますし、さらにそこからアコーディオン、ジプシーヴァイオリンでたたみ掛けるエスノダンスは Nili にしか作り得ないドラマティック極まる幻想に違いありません。
Larry Carlton のブルージーな表現力とエレクトロニカを抱きしめた “Solace” はアルバムの分岐点。日本音階をスリリングなハードフュージョンに組み込んだ “Retractable Intent”, プログとダンスビートのシネマティックなワルツ “Djentrification” とレコードは、彼女の出自である中東のオリエンタルな響きを織り込みながら幾重にもそのスペクトラムを拡大していきます。
EDM や ヒップホップといったギターミュージックから遠いと思われる場所でさえ、Nili は平等に優しく抱擁します。ただ、その無限に広がる地平は音楽であるという一点でのみ強固に優雅に繋がっているのです。それにしても彼女のシーケンシャルな音の階段には夢がありますね。鬼才 Alex Argento のプログラミングも見事。
今回弊誌では、Nili Brosh にインタビューを行うことができました。「音楽は音楽自身で語るべきだと信じてきたから、私にできることはお手本になって最善の努力をすることだけなの。もし私が女性だからという理由で私と私の音楽を尊重してくれない人がいるとしたら、それはその人の責任よ。」 どうぞ!!

NILI BROSH “SPECTRUM” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DISTORTED HARMONY : A WAY OUT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YOAV EFRON OF DISTORTED HARMONY !!

“We Started As Classic Prog Metal, Evolved And Matured Into a Much More Modern Prog Act And I See No Need Or Desire To Add Oriental Elements Into Our Music.”

DISC REVIEW “A WAY OUT”

イスラエルに響く”歪のハーモニー” は世界へと波動する。プログメタルの過去と未来に干渉するクロノトリガー DISTORTED HARMONY は、その最新作 “A Way Out” で無謬のミッシングリンクを提示します。
まさにクラッシックプログメタルの “ユートピア”、”Utopia” でデビューを果たして以来、新世紀の象徴 Jens Bogren をサウンドエンジニアに据えたバンドはより多様でリッチなモダンプログの領域を探求し、温故知新のエキサイティングな融和をシーンにもたらしています。
確かに彼らの方法論は “歪” なのかも知れませんね。なぜなら、同じ “プログメタル” という看板を掲げていながら、クラッシックなレジェンドとモダンな新世代の音楽性、概念には時に多くの共通項を見出せない場合さえ存在しているからです。
しかし、クラッシックなプログメタルを出発点とする DISTORTED HARMONY は自らの豊潤なるルーツと向き合いながら、刺激的な現在、未来の空気をその音楽に反映しています。
「正直僕にはもう耐えられなかったんだ。プログメタルの “一般的な構成” のみと対峙するのは退屈になってしまったんだ。」実際、前作 “Chain Reaction” リリース時のインタビューでバンドのマスターマインド Yoav Efron はそう語っています。そうして彼らが辿り着いた “トリガー” は、Djent, エレクトロニカ、アトモスフェリックといったフレッシュなモダンプログレッシブの領域だったのです。
Amit と Yoel、2人の新たなギタープレイヤーを加え6人編成となった DISTORTED HARMONY が放つ “A Way Out” は、そうしてバンド史上最も鋭くヘヴィー、ダークでパーソナルな感情を宿すマイルストーンに仕上がりました。
EDMの煌びやかなシンセサウンドに導かれるオープナー “Downfall” はアルバムへのシンプルな招待状。小気味よい Djenty なリフエージ、ポリリズムの海に浮かび流れる甘く伸びやかなボーカルメロディーはまさしくバンドが到達した至高のクロノクロス。
よりエピカルな “Awaken” は、一際顕著に交差する時流のコントラストを浮かび上がらせます。ピアノとクリーンギターを使用したジャジーでシアトリカルな世界観は Devin Townsend の遺伝子を脈々と受け継ぎ、同時に繊細なデジタルビートとアトモスフェリックなシンセサウンドがリスナーのイメージを現代へと連れ戻すのです。
後半のアップデートされた Djenty なリフワークと DREAM THEATER ライクなシーケンスフレーズのせめぎ合いも、エスカレートするテクニックの時間旅行を象徴していますね。
そしてこの濃密なタイムトラベルにおいて、特筆すべきは深遠なるディープボイスから甘美で伸びやかなハイノートまで司る Michael Rose のエモーショナルな歌唱と表現力でしょう。
DREAM THEATER の “Awake” を KARNIVOOL や PORCUPINE TREE のセオリー、アトモスフィアでモダンにアップデートしたかのようなメランコリックな秀曲 “Puppets on Strings”, “For Easter” を経て辿り着く “A Way Out Of Here” は、Michael の才能を最大限まで活用しプログレッシブポップの領域を探求した感情の放出、叫びに違いありませんね。固定観念、支配から目覚め芽吹く自我。それはもしかするとバンドの進化した音楽性にもリンクしているのでしょうか。
そうしてアルバムは、高揚感に満ちた “We Are Free”, 荘厳なる “Someday” でその幕を閉じました。希望、喜び、解放、自由。そこに一筋の不安と寂寞を残しながら。
今回弊誌では、キーボードマエストロ Yoav Efron にインタビューを行うことが出来ました。「僕はあんなに小さな小さなシーンにもかかわらず、非常に豊かで多様なイスラエルのシーンにはいつも驚かされているんだよ。」どうぞ!!

DISTORTED HARMONY “A WAY OUT” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ORPHANED LAND : UNSUNG PROPHETS & DEAD MESSIAHS】JAPAN TOUR 2018 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHEN BALBUS OF ORPHANED LAND !!

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Israel Based Middle-East’s Oriental Metal King, Orphaned Land Shows Their Protest & Anger To “Big Machine” With Their Newest Record “Unsung Prophets & Dead Messiahs” !!

DISC REVIEW “UNSUNG PROPHETS & DEAD MESSIAHS”

オリエンタルメタルの創始者にして、愛と平和の伝道師。イスラエルの至宝 ORPHANED LAND が偏見の鎖を断ち切る最新作 “Unsung Prophets & Dead Messiahs” をリリースしました!!複雑で荘厳、そして何より怒れる正義のアルバムは、世界を支配する全ての権力、不条理に対する強烈なプロテストとなるはずです。
90年代初頭からまさに “孤立した地” イスラエルで生を受けた ORPHANED LAND は、自らの地理的、文化的出自と真っ直ぐに向き合いながら不屈の精神でその活動を続けて来ました。
あのドキュメンタリー映画 “グローバルメタル” で驚愕と共に世界が発見した、西洋を起源とするメタルのフレームに中東のオリエンタルなフレーバーや民族楽器を持ち込む独特の手法は勿論正直で真摯なバンドの象徴だと言えますね。しかし、それ以上にアラビアを起源とするユダヤ、イスラム、キリスト三つの大宗教の融和を願い貫かれるバンドの高潔なるスピリットこそが多くのファンを魅了する理由なのかも知れません。
バンドが掲げるその崇高な理念が結実した傑作 “All is One” から5年のインターバルを経てリリースされた “Unsung Prophets & Dead Messiahs” は、祈りと願いで満たされた前作とは異なりより具体的に人の革新を促すアルバムだと言えるでしょう。
バンドはこれだけ政治、戦争、経済が危機に面する世界で沈黙を貫く世論に疑問を投げかけます。この状況はプラトンの “洞窟の比喩” ではないかと。残念ながら民衆は抜け出す努力を嫌い、暗い日常でも耐え時にはそれにしがみつきます。事実、キリストからガンジー、キング牧師、ケネディ大統領まで世界を救う “預言者”、もしくは “メシア” といった存在の多くは変革を起こす前に暗殺されて “歌い続ける” ことも叶わなかったのですから。
沈黙、停滞への義憤を宿すアルバムは、ギターと民族楽器を操る Yossi Sassi 脱退後初のアルバムともなりました。とは言え、当然 ORPHANED LAND に停滞などは似合いません。
「バンドにメインコンポーザーは存在しないよ。誰もが作曲していて、僕たちは各自のリフを巧妙にマッシュアップしているんだ。さながら大きなジグソーパズルのようにね。」 と Chen が語るように、より奔放で展開の妙を増したエピカルな楽曲群に大黒柱不在の影は感じられませんね。
さらに思索を進めれば、「”All is One” では確かに僕たちは意図的にグロウルを避けていたね。だけど、”Unsung Prophets & Dead Messiahs” では、全ての側面でただ音楽にメッセージを語らせることにしたんだ。」 という言葉に目が止まるはずです。
怒りや嘆きがプログレッシブなデスメタルのムードへと幾分か変換された作風は確かに過去の “Mabool” や “The Never Ending Way of ORwarriOR” を想起させますが、同時にここには未だ前作で開花した祈りのオーケストレーションやシンフォニックなコーラスも華麗に息づいており、結果としてそのキャリアを集約したかのような進化を遂げたと言えるのかも知れませんね。
女性ボーカルと壮麗なストリングスが誘うオープナー “The Cave” はその進化の象徴。極上のエモーションを湛える当代きっての歌い手 Kobi Farhi が時に壮大なクワイアと、時に自らの凶暴なグロウルと繰り広げるコール & レスポンスは、コントラストの魔法、異国のメロディーとシンセサイザーの響きに抱かれオリエンタルメタルを一際尊きメタルオペラの高みへと導きます。
8分間の観劇の一方で、RAMMSTEIN を思わせるダンサブル & キャッチーな “We Do Not Resist” は、エレクトロニカとオーケストレーションの海原を中東の民族楽器がまるでモーゼのように闊歩する異端でしかし印象的な楽曲。コンパクトで強靭なデザインは確かに新機軸。ダイナミックで一切予定調和のない冒頭の2曲でリスナーは自らの “洞窟” から抜け出るはずです。
さらに PORCUPINE TREE や GENESIS, PINK FLOYD の面影を宿すプログレッシブメランコリックな “Chains Fall to Gravity” では Kobi の名唱とレジェンド Steve Hackett の名演を同時に堪能出来る佳曲。まるで演歌のような一期一会の熱唱が生み出す情念は、いつしか Steve の左手へと乗り移りブルースの優しさでリスナーを繋ぐ頑なな鎖を断ち切って行くのです。Jens Bogren のしなやかなサウンドデザインも相変わらずお見事。
BLIND GUARDIAN の Hansi Kursch がトレードマークのメロディーで色香を漂わせるトラディショナルなメタルアンセム “Like Orpheus”、AT THE GATES の Tomas Lindberg が唸りを上げるコンテンポラリーな “Only the Dead Have Seen the End of War” まで ORPHANED LAND はそうやって思想や人種、宗教のみならず音楽の世代やジャンルも繋いでいるのかも知れませんね。
今回弊誌ではギターと木琴、さらにブズーキ、サズ等の民族楽器を扱う Chen Balbus にインタビューを行うことが出来ました! 「影響力は僕たちが望むほど大きくはないんだよ。だけどね、一つくらいは希望が必要でしょ?」 4月の来日も決定しています。どうぞ!!

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ORPHANED LAND “UNSUNG PROPHETS & DEAD MESSIAHS” : 9.8/10

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