タグ別アーカイブ: Oriental Metal

COVER STORY + INTERVIEW 【STEVEN ANDERSON : GIPSY POWER 30TH ANNIVERSARY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEVEN ANDERSON !!

“I Founded My Inspiration In The Sounds Of The Swedish Mysterious And Enchanting Forest And The Nordic Light And Through My Journeys In Eastern Europe.”

DISC REVIEW “GIPSY POWER”

「私は伝統的なギター・ヒーローの典型的なタイプではなく、自分の音楽を前進させ、新しい音楽表現の方法を探求することに重点を置いていたんだと思う。スウェーデンの神秘的で魅惑的な森の音や北欧の光、そして東欧の旅を通してインスピレーションを得ていたんだ。東欧の音楽には、速いテクニカルな部分への挑戦がある一方で、挑戦的でプログレッシブな部分も非常に多いからね」
トルコとフランスを結ぶ豪華寝台列車、オリエント急行。アガサ・クリスティのミステリーの舞台にもなったこの列車の風景は、エジプトから中東、インド、そしてヨーロッパをまたにかけたジプシーの足跡をたどる旅路にも似ています。
ジプシーの文化はその渡り鳥的な生き方を反映して、実に自由かつ多様でした。言語はもちろん、風習、食事、そして音楽。ジプシーであるロマ族に生まれ、放浪生活の中でスウィング・ジャズとジプシー民謡を天才的に融合させた巨匠、ジャンゴ・ラインハルトのオリエンタルな音楽はその象徴でしょう。
1990年代前半、そんなジプシーのエスニックでオリエンタルな音楽をメタルで復活させた若者が存在しました。スティーヴン・アンダーソン。美しく長いブロンドをなびかせたスウェーデンの若きギタリストは、デビュー作 “Gipsy Power” で当時の日本を震撼させました。紺碧の背景に、真紅の薔薇と無垢なる天使を描いたアートワークの審美性。それはまさに彼の音楽、彼のギタリズムを投影していました。
重要なのは、スティーヴンのギター哲学が、あの頃ギター世界の主役であったシュラプネルのやり方とは一線を画していた点でしょう。決して技巧が劣るわけではなく、むしろ達人の域にありながら (イングヴェイがギターを始めたきっかけ) 、ひけらかすためのド派手なシュレッド、テクニックのためのテクニックは “Gipsy Power” には存在しません。いや、もはやこの作品にそんな飛び道具は相応しくないとさえいえます。楽曲と感情がすべて。スティーヴンのそのギタリズムは、当時のギター世界において非常に稀有なものでした。
では、スティーヴンが発揮した “ジプシー・パワー” とはいったい何だったのでしょうか?その答えはきっと、ギターで乗車する “オリエント・エクスプレス”。
スティーヴンのギターは、ジミ・ヘンドリックスの精神を受け継いだハイ・エナジーなサイケデリック・ギターと、当時の最先端のギター・テクニックが衝突したビッグバン。ただし、そのビッグバンは、ブルース、ロック、フォーク、プログレッシブ、クラシックの影響に北欧から中東まで駆け抜けるオリエンタルな旅路を散りばめた万華鏡のような小宇宙。
“The Child Within” の迸る感情に何度涙を流したでしょう。”Gipsy Fly” の澄み切った高揚感に何度助けられたでしょう。”Orient Express” の挑戦と冒険心に何度心躍ったことでしょう。”‘The Scarlet Slapstick” の限りない想像力に何度想いを馳せたでしょう。
その雄弁なギター・トーンは明らかに歌声。”Gipsy Power” は少なくとも、日本に住むメタル・ファンのインスト音楽に対する考え方を変えてくれました。私たちは、まだ見ぬ北欧の空に向かって毎晩拝礼し、スティーヴンを日本に迎え入れてくれた今はなきゼロ・コーポレーションを2礼2拍手1礼で崇め奉ったものでした。
しかし、より瞑想的で神秘的でプログレッシブなセカンド・アルバム “Missa Magica” を出したあと、スティーヴンは音楽シーンから忽然と姿を消してしまいました。”Gipsy Power” の虜となった私たちは、それ以来スティーヴンをいつでも探していました。向かいのホーム、路地裏の窓、明け方の桜木町…こんなとこにいるはずもないのに。言えなかった好きという言葉も…
私たちが血眼でスティーヴンを探している間、不運なことに、彼は事故で腕を損傷していました。その後炎症を起こし、何度も結石除去術、コルチゾン注射、さまざまな鍼治療法を受けましたが状況は改善せず、スティーヴンのギターは悲しみと共に棚にしまわれていたのです。
しかし、それから10年近く経って、彼は再びギターを弾いてみようと決心し、愛機レスポールを手に取りました。それはまさに、メタルのレジリエンス、反発力で回復力。スティーヴンの新しいバンドElectric Religions は、初めての中国、珠海国際ビーチ音楽祭で3万人以上の観客の前で演奏し、中国の映画チームによってドキュメンタリーまで制作され、その作品 “The Golden Awakening Tour in China” がマカオ国際映画祭で金賞を受賞しました。
マカオでの授賞式の模様は中国とアジアで放送され、推定視聴者数は18億人(!)に上りました。スティーヴンは現地に赴き、”文化的表現によって民主主義の感覚を高める” というマニフェストに基づいて心を込めて演奏しました。そして数年の成功と3度のツアーの後、彼は GIPSY POWER をバンドとして復活させるために、Electric Religions を脱退することを選んだのです。
長年の友人であり、音楽仲間でもあるミカエル・ノルドマルクとともに、スティーヴンは GIPSY POWER をバンドとして再結成。アルバム ”Electric Threads” は、2021年11月19日、ヨーロッパの独立系音楽・エンターテインメント企業 Tempo Digital の新しいデジタル・プラットフォームにより、全世界でリリースされました。新たな相棒となったミカエル・ノルドマルクは、MIT で学んだことはもとより、あのマルセル・ヤコブにレッスンを受けた天才の一番弟子。期待が高まります。ついに、大事にしまっていた宝石箱を開ける日が訪れました。奇しくも来年は、”Gipsy Power” の30周年。私たちは、ジプシーの夢の続きを、きっと目にすることができるでしょう。「日本は私のプロとしてのキャリアの始まりでもあった。日本にはたくさんの恩があるし、今でも日本という美しく歓迎に満ちた国に行って、クラブ・ツアーをしたいと思っているんだよ」 Steven Anderson です。どうぞ!!

STEVEN ANDERSON “GIPSY POWER” : 10/10

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COVER STORY + INTERVIEW 【KHALAS : ARABIC ROCK ORCHESTRA】 HARMONY IN THE PALESTINE


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ABED HATHOUT OF KHALAS !!

“Our Music Is About Celebrating Life Despite The Horrors Of Our Region, There Is No Difference Between a Girl That Go To Shout In a Demonstration And a Girl That Choose To Dance And Laugh Despite Of The Occupation, We All Resist In Our Own Way.”

DISC REVIEW “ARABIC ROCK ORHESTRA”

「僕たちがパレスチナですることは、すべて政治的なことになっちゃうけどね。ビールを買うことでさえも政治的になるんだから (笑)。 そう、僕たちの音楽は、この地域の惨状にもかかわらず、人生を謳歌するためのもの。例えば、現状を憂いデモで叫びに行く女の子と、占領されているにもかかわらず踊って笑うことを選ぶ女の子に違いはないと思うからね。だからといって、どちらか一方が他方よりパレスチナを気にかけているということではなく、僕たちは皆、それぞれのやり方で抵抗しているということなんだ」
正邪混沌。私たちは今、正義と邪悪が混沌とした世界を生きています。もちろん、善と悪は、白と黒のようにスッキリとした二元論で割り切れるものではありません。多くの場合、両者の間には曖昧な “グレー・ゾーン” が存在し、その灰色の場所で人類は互いにうまくやる術を学んできました。
とはいえ、私たちは本能的に、もしくはそうして生きる中で、暴力や抑圧の愚かさを知り、ゆるやかに、なんとなくではありながら、寛容の尊さを理解してより良い世界に近づいているはずでした。しかし、気がつくと、世界は正義が邪悪、邪悪が正義の残酷で複雑怪奇な、見通しの悪い場所になっていたのです。パレスチナの砂地にメタルの種を撒いた KHALAS は、そんな歪んだ世界を音楽で変えれられると心から信じています。音楽で人生を謳歌することこそが、世界を黒雲で覆う二極化政治に対する抵抗。
「最近はプロパガンダ・マシンと偽メディアのせいで、ORPHANED LAND ともすべてにおいて意見が一致するわけではないけれど、それでも僕たちは友人で、互いの痛みや苦しみを尊重し、理解しているんだよ」
ロシアとウクライナ。イスラエルとハマス (パレスチナ)。もはやその戦いは、SNS とメディアの戦争です。誰もが正義を叫び、誰もが邪悪を叫び、誰でも自分の “側” に引き入れようと死力を尽くしています。その裏で傷つき、無惨に死んでいく無垢の魂には一瞥もくれずに。さて、私たちは何を信じ、誰の側に立ち、誰を救えばいいのでしょうか?
「僕がパレスチナの皆を代表して発言することはできないけど、民間人に対するテロ行為や大量虐殺は、誰が行おうとも非難されるべきものだ。それが組織的な軍隊であれ、過激派グループであれ、罪のない人々、特に子どもたちが政治的な欲や腐敗の代償を払うことは決してあってはならない」
そもそも私たちは、必ずどちらかの “側” に立たなければならないのでしょうか?いえ、もし誰かの “側” に立つとすれば、それは決して正邪混沌の元凶である権力者やテロリストたちではなく、平和を願う無垢なる人たちの “側” でしょう。あまりにも暴力的で極端な “暴君” たちの裏側には、顔の見えないその何万倍もの共存を望む優しい人たちがいます。イスラエル。パレスチナ。大きな主語で、そのすべてを一括りにすることこそ愚か。そもそもが灰色である正義を、邪悪を声高に叫ぶ人々、その声の大きさに取り込まれてはいけません。
事実、パレスチナが産んだオリエンタル・メタルの雄 KHALAS の音楽は、見事に中東と西欧が融合していますし、彼ら自身、イスラエルの ORPHANED LAND とのツアーを融和と共に完遂した経歴を持ちます。つまり、溜め込んだ憎しみも武器も捨て去り溶け合うことは、決して荒唐無稽で夢見がちなお伽話というわけではないのです。ただ願うのは、共存共栄と普通の人々の平和で普通の日常のみ。
今回弊誌では、KHALAS の Abed Hathout にインタビューを行うことができました。「この状況は今に始まったことではない。過去75年間の占領下で続いてきた、終わりのない血の連鎖の新たな章なんだよ。今起きていることはすべてこの75年の結果なんだけど、政府や選挙で選ばれた人たちは、すべての人に平等な人権を与え、占領を終わらせるための非暴力的な解決、その道を歩むことを拒んでいるんだ」 どうぞ!!

KHALAS “ARABIC ROCK ORCHESTRA” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AETERNAM : HEIR OF THE RISING SUN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AETERNAM !!

“We Do Think Of War As Part Of Human History And Mainly a Great Way To Learn That Violence Is Never The Answer To Resolving Any Conflict. There’s Nothing Positive In Death Of Innocents That Benefits Humanity At Large.”

DISC REVIEW “HEIR OF THE RISING SUN”

「歌詞を読んでみると、この作品がただの歴史の授業ではなく、詩的で、時には出来事の完全な説明というより、もっとテーマを喚起するような内容になっていることに気がつくと思うんだ。中世ビザンツ帝国の時代は北米じゃ軽視されがちだけど、歌詞の内容的にも音楽的にも大きな可能性を秘めた、取り組むべき興味深い題材だと思った」
大砲が何発も何発も都市の城壁に打ち込まれる中、ダミアヌスは深く動揺しながらも、矢を手に城壁の上に立つ。彼はすぐに聖母に祈りを捧げた後、弓を包囲者たちに向けて放つ。埃が空中に舞い上がり、大砲を操るオスマン軍の将を左に数センチ外してしまう。パニックの中、ダミアヌスは選択を迫られる。先祖の土地を捨てて去るべきか、それとも戦って死ぬべきか?ダミアヌスが戦うことを決断した数分後、大砲の弾が命中し、彼の手足は引き裂かれ骨は粉々になった。おそらく神は帝国の滅亡を望んでおられるのだろう。コンスタンティノープルの街のあちこちが限界点に達し、ノヴァローマの富を手に入れるため、オスマン帝国はついに征服不可能な都市に突入した。
「実は、この曲はウクライナ戦争が始まるずっと前に作られたものなんだ。とはいえ、僕たちは戦争を人類の歴史の一部と考え、暴力がどんな争いも解決するための答えには決してならない、そのことを学ぶために最適な方法だと考えているんだ。罪のない人々の死が、人類全体の利益となるなんてことは絶対にない。戦争にポジティブなことは何もないのだから」
この “The Fall of Constantinople” “コンスタンティノープルの陥落” は、AETERNAM の5枚目のアルバム “Heir of the Rising Sun” を締めくくる、ビザンツ帝国の終焉を描いた壮大な楽曲です。この歴史的、音楽的なクライマックスに到達するために、AETERNAM は SEPTICFLESH の映画的シンフォニー、WILDERUN の知の陶酔、AMORPHIS の旋律劇、ORPHANED LAND の異国の香りを見事に混交しています。リスナーはこのレコードで時を超え、オスマンとビザンツの時代に旅をしながら、”永遠” の名を持つバンドが提起する人類永遠の課題 “戦争” を追体験するのです。この物語は遠い昔の話しでありながら、実は過去の遺物ではありません。そろそろ私たちは、ほんの少しでも歴史から何かを学ぶべきでしょう。
「”Kasifi’s Verses” の冒頭にあるトルコ語のちょっとしたナレーションを入れると、実は5つあるんだよね。 それは、曲の中で僕たちが語る人々に対する言葉でのオマージュと見ることができるだろうね」
“Heir of the Rising Sun” で AETERNAM はアグレッシブ・メロディアスなリフの合間に、中東・北アフリカの風を受けたギターリードがオスマン帝国の誇りを見せつけ、”征服者” がコンスタンティノープルを手にするため力をつけていく様を描いていきます。もちろん、その絵巻物の情景は、モロッコに生まれ育った Achraf の歌声が肝。
そうしてアルバムは、1453年5月29日が近づくにつれそのオリエンタルなテンションを増していきます。”Beneath the Nightfall” や “Where the River Bends” におけるブラックメタルの激しい旋律、荘厳に勝利を響かせる “Nova Roma”。
一方で、”The Treacherous Hunt” では、東洋の水にグレゴリオ聖歌とシンフォニック・ブラックメタルの構造を無理なく融合させて、ビザンツ帝国の側からもストーリーを肉付けしていきます。戦争に正義などありませんし、完全に善と悪で割り切れるものでもないでしょう。AETERNAM は侵略者、被侵略者、両方の物語を描く必要があることを知っていました。英語、ギリシャ語、トルコ語、ノルウェー語、ラテン語という5つの言語を使用したメタル・アルバムなど前代未聞。しかし、それはこの壮大な “教訓” をリアルに語るため、絶対に不可欠な要素だったのです。
フィナーレにしてクライマックスのクローザーでは、大胆なメロディとスタッカート主体のリフ、ドラムが大砲のように鳴り響き、オスマントルコの攻撃を演出。しかし、途中から勇壮なギター・リフに移り変わり、ビザンツ兵の視点が強調されます。逃げ出すか、このまま街に残って死ぬか。彼は嘆きながらこう決心するのです。
「もし神の意志で街がこの夜に滅びるのなら 私は命を捧げた戦士たちの側に倒れよう」
今回弊誌では、魂のボーカル&ギター Achraf Loudiy と、創始者のドラマー Antoine Guertin にインタビューを行うことができました。「Achraf と僕が出会ったとき、彼は AETERNAM の曲にもっと東洋的なメロディーを取り入れるというアイディアを持っていたんだ。 彼はモロッコでそうしたメロディーを聴いて育ったし、彼の母親が素晴らしいシンガーであることも重要だった。家系的にもそうなんだよね」 どうぞ!!

AETERNAM “HEIR OF THE RISING SUN” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OU : ONE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANTHONY VANACORE OF OU !!

“I Am The Only Non-Chinese In The Band, But We Are a Chinese Band Through And Through. So For There To Be Chinese Lyrics And Some Chinese Sensibilities In The Music Is Just Natural.”

DISC REVIEW “ONE”

「中国、特に北京の音楽シーンは豊かで多様性に富み、活気に満ちているよ。だけど OU は政治には関与しないんだ」
北京のジャズ・シーンで育まれた OU(オー)は、定型化した現代のプログ世界、その停滞したエネルギーに真っ向から歯向かうデビュー作 “One” でメタル異世界のルール無用を叩きつけました。
「中国に来て10年になる。私に言えることは、(このバンドの3人のメンバーも含めて)私にはここに心から愛する友人がたくさんいて、彼らは私にとってまさに家族のような存在だということなんだ」
作曲家で偉大なジャズ・ドラマーでもあるニューヨーク出身の Anthony Vanacore は、大規模な中国ツアーをきっかけに、彼の地の文化や言語に惚れ込み移住を決断します。杭州に移り、”客” ではなくその場所の人間として暮らすうち、彼は外国からみれば統制や不自由の中で暮らす人々の本来備わった人間味や優しさに触れていきました。文化が違えど、人は、個人個人はそんなには違わない。それは音楽も同じです。
「O はバンドの4人の血液型がO型だからで、その後 OU に変えたんだ。ピンイン(中国語のローマ字表記)では O と同じ発音で、”謳” という漢字が対応していて、それには “唱える” という意味があるから、このバンドにはとても合っているんだよ」
中国の “人” と触れ合いはじめた Anthony は北京音楽シーンの素晴らしさにも気づきます。そうして、クラブや本職の音楽教師から仲間を募り、数年の歳月を経て、それぞれのメンバーが特別な調味料を加える複雑な音の中華料理 OU が完成します。
目まぐるしくも自由自在のリズムから幽玄なアルペジオの残響、そして催眠術のように正直で率直なヴォーカル・パフォーマンスまで、この驚くべき料理 “One” にはプログとアンビエント、そしてメタルの旨味が詰まっています。もしかしたら、三国志を終焉に導いたのは彼らなのでしょうか。陽気さ、静謐さ、獰猛さを見事 “一つ” に調和させた OU は、さながら蒸してもよし、焼いてもよし、揚げてもよしの餃子を3000年の歴史から進化させる抜きん出た料音人だと言えるでしょう。
「私はバンド内で唯一の非中国人だけど、それでも私たちは根っからの中国のバンドなんだよね。だから、中国語の歌詞や中国的な感性が音楽に入っているのは、ごく自然なことなんだよ」
OU は、現代的なプログレッシブ・アクトへの強い愛情を示しながらも、彼ら独自のサウンドを切り開いてきました。ハイパー・ポップな HAKEN のように、OU は “Farewell 夔” や “Prejudice 豸” の重く複雑怪奇なグルーヴに、常に嫋やかで優雅なシンセの絹地を織り込んでいきます。まさに張飛、針に糸を通す。この泰山と長江のような美しくも悠久の対比は Devin Townsend や THE GATHERING のキネティックな作品にも匹敵し、さらに貂蝉のように美しく舞うしなやかな Lynn Wu の呪文はこの静謐でしかし刺激的なアートにえもいわれぬ独自性を加えています。
「アジアの伝統音楽には、欧米ではあまり知られていない、未開発の感情や質感がたくさん備わっていると思うんだ。アジアの伝統音楽が、アジア以外の国の音楽にもどんどん浸透していくのは時間の問題だと思っているよ」
実際、中国らしい Lynn の抑揚とゆらぎのある音は、OU を Inside Out のようなメジャーに引っ張る原動力となったはずです。聳え立つ “Mountain 山” では、Lynn の声をマルチトラックで聴かせながら、トラックごとに感情をエスカレートさせる絶妙なマルチバース空間を創造。一方で、”Ghost 灵” “Light 光” の幽玄なセクションで彼女のノイズは言葉ですらなく、最小限の伴奏として存在し、ビョークのような実験的アーティストの手法に似た推進力として扱われています。
他にも例えば、OU を聴いて、Enya, LEPROUS, LTE, RADIOHEAD, PORTISHHEAD, MASSIVE ATTACK といったバンドの姿が目に浮かぶのは自然な感性でしょうが、それだけでは十分ではありません。ここには東洋的な無調や不協和が西洋のモダンなポリリズムと織りなす、シルクロードのタイムマシンが洋々と乗り入れています。
もちろん、熟練したジャズ・ミュージシャンである、Anthony とベーシスト Chris Cui によるリズムのバックボーンは、タイトで整然としながらも混沌としたロックの側面を自在に謳歌。ギタリスト Jin Chan の神秘的な舞踏は二人のタクトで華麗に舞い上がります。まさに指揮者を失った兵ほどみじめなものはない。
老齢化したプログの巨人たちがいつまでも黄忠でいられる保証はありません。OU は国際的な聴衆から切り離されがちな中国にありながら、いやむしろあったからこそ、復権を願うプログ世界の、そしてアジアの希望となりました。中国では食事を少し残すのが礼儀とされていますが、”One” の音楽を一欠片でも残すことは大食漢のプログマニアには実に難しいミッションとなるでしょう。
今回弊誌では、Anthony Vanacore にインタビューを行うことができました。「私はニューヨークのフラッシングに住んでいたんだけど、この街にはかなり大きな中国人コミュニティがあってね。ツアーから戻るとその場所と交わりながら、自分の生活環境に新たな視点が生まれ、中国の文化や言語にますます魅了されるようになっていったんだ」 どうぞ!!

OU “ONE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MENTAL FRACTURE : DISACCORD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ORI MAZUZ OF MENTAL FRACTURE !!

“For Us, “Prog” Is Mind-Bending Music That Moves You Emotionally And Breaks Your Brain Logically. It Can Incorporate Any Genre.”

DISC REVIEW “DISACCORD”

「僕たちにとって “プログ” とは、感情を動かし、論理的に脳を破壊するような、心を揺さぶる音楽だよ。そして、どんなジャンルでも取り入れることができる音楽だ」
“プログレ” の沼にハマった現代のファンは、PINK FLOYD, YES, GENESIS, ELP, KING CRIMSON といった60年代後半から70年代半ばにかけての全盛期を懐かしむか、もしくは DREAM THEATER や PORCUPINE TREE, OPETH といった90年代に起こったジャンルの混交を “新しい” ものとして “寛容に” 受け入れるかのどちらかがほとんどでしょう。では、本当に新しい “ブログ” の形やアーティストが登場したとしたら、受け入れられる余地はもうこの場所に残されてはいないのでしょうか?
プログレッシブ・ミュージックは常に、あらゆる形のロック、フォーク、ジャズ、クラシック、メタルまで、幅広い音楽の領域を平等に愛おしく抱きしめる世界でした。そして実は、年月の経過と音楽地図の拡大は、そのパレットをさらに奥深く多様化しようとしています。イスラエルからオリエンタルな空気と感情の起伏を運ぶ、喜怒哀楽の交差点 MENTAL FRACTURE はまちがいなく、プログの次世代化を推し進める起爆剤です。
「僕たちは、インスピレーションを与えてくれるあらゆる音楽アーティストから、好きな要素を取り入れているんだよ。そうすることで、僕たちの感情を揺さぶる音楽言語が生まれるんだよね。ショパンのメロディーやラフマニノフのクライマックス、CAMEL や PORCUPINE TREE のメランコリー、OPETH の複雑さと激しさ、そして SNARKY PUPPY や Esperanza Spalding にインスパイアされたジャジーなハーモニーも聴くことができると思うよ」
YES や KING CRIMSON といった “プログレ” を定義したバンドの特徴。その核心に、メロディーとテンポ、そして構造の複雑さ、名人芸が据えられていたのは否定できない事実でしょう。多くの場合、それは “More is Better”、”多ければ多いほど良い” という足し算の原則に基づいていたのかもしれませんね。もちろん、それは極論で、そこだけにスポットが置かれていたわけではありませんが。
後に PORCUPINE TREE のようなアーティストが人気を得たのは、その複雑さがやり過ぎにならないよう、線引きをするタイミングを心得て、マイナスの美学を尊んだおかげであったとも言えるのではないでしょうか。そして、MENTAL FRACTURE は時代や場所を超越しながら、その音楽的な算数の巧みさで明らかに群を抜いています。
「オリエンタルな音楽は、それだけでは万人受けはしないかもしれない。だけど、メタルの中に取り入れると、聴衆の心を激しく揺さぶることができるんだよね。僕たちは、微妙な形ではあるけれど、確実にこのテイストを作曲に使っているんだよ」
“Inception of Fear” や “Clockwork” といった名曲群には、プログの先人に贈るリスペクト、90年代と中近東が混ざり合った濃密なメランコリー、現代ジャズの知的なハーモニーと共に、エスニックなパーカッションやアコースティックな響きが添えられています。それはさながら、地中海、紅海、死海という3つの海に面するイスラエルの多様な音景色。Ori Mazuz のファルセットを活用した情熱的な歌唱と、美しくも不気味でピーキーな鍵盤の響きはさながらモーゼのように、広大な “Disaccord” の海を自由自在に闊歩していくのです。
それにしても、KING CRIMSON が “Red” で達成した憂鬱な夢を前半で印象づけながら、大団円 “Hearts Of Stone” で DREAM THEATER のあの傑作 “Metropolis Pt.2” をリクリエーションするその度量はあまりに広大。決して明からさまなオリエンタル・フレーズを使用しているわけではないにもかかわらず、絶対的に感じる中東の風も白眉。
今回、弊誌では Ori Mazuz にインタビューを行うことができました。「僕たちはほぼ毎年紛争を経験していて、そのたびに、僕たちの現実がいかに愚かなものであるかを思い知らされるんだ。僕たちにできることは、ただひとつ、平和を願うことだけだ。だって僕たちは皆、結局のところ人間であり、他人の政治的野心や神の名のもとに死ぬべきでは決してないのだから。だから…僕たちの心はウクライナの人々とともにあるよ」 ネクタイにベスト、スラックスのプロモ写真、そして倒されたキングのチェス盤と沈みゆく太陽。思索に思索を重ねるような素晴らしいバンドの登場ですね。どうぞ!!

MENTAL FRACTURE “DISACCORD” : 10/10

INTERVIEW WITH ORI MAZUZ

Q1: First of all, you were born in Israel. From jazz, classical music, to metal, recently Israeli artists are leading the music scene. How does your being born and raised in Israel affect your music?

【ORI】: The Israeli music scene is extremely diverse, having a lot of great artists in many genres and styles. This means you are very likely to encounter a show by a great band that does something a bit different than what you usually listen to. Such a scene really complements our style of composition, as we love taking even the tiniest bits of inspiration from music that is sometimes completely unrelated to us stylistically.

Q1: 近年、イスラエルはジャズからメタルまで音楽シーンを牽引する国の一つとなっていますね?そういった環境はあなたたちにどんな影響を与えてきましたか?

【ORI】: イスラエルの音楽シーンは非常に多様で、様々なジャンルやスタイルの素晴らしいアーティストがたくさんいるんだよ。つまり、自分が普段聴いている音楽とはちょっと違う、素晴らしいバンドのライヴに出会える可能性が非常に高いんだよね。
こういったシーンは、僕たちの作曲スタイルにとても合っているんだ。僕たちは、時にはスタイル的に全く関係のない音楽から、ほんのわずかでもインスピレーションを得ることが大好きなんだからね。

Q2: How did Mental Fracture come to be? Where did your band name come from?

【ORI】: In 2010 Ori, Yogev and Hai were performing in a school band in Rishon LeZion. We felt that we have great chemistry. Ori was experimenting at the time with writing original music and arrangements. Inspired by bands like Dream Theater, Opeth and Porcupine Tree, we thought it would be cool to form our on progressive rock band! Philip, who studied at the same high school as Yogev and Hai, joined the band and we started composing “Genesis” and “The Mind’s Desire” together (Which were released on the 2019 EP). Although we have collected material for many years up to this day, life got in the way and we couldn’t be an active band until now, 12 years later, when we have finally released “Disaccord”.

Q2: MENTAL FRACTURE 結成の経緯を教えていただけますか?

【ORI】: 2010年、Ori, Yogev, Hai の3人は、リション・レジオンのスクールバンドで演奏していたんだ。僕たちは、素晴らしいケミストリーを感じていたよ。Ori は当時、オリジナル曲の作曲やアレンジを試行錯誤していたんだ。DREAM THEATER, OPETH, PORCUPINE TREE といったバンドに触発されて、自分たちでプログロック・バンドを結成したらクールだろうと思ったんだ!
そうして、Yogev, Hai と同じ高校で学んだ Philip がバンドに加わり、一緒に “Genesis” と “The Mind’s Desire” の作曲を始めた(これは2019年のEPでリリースされた)。今日まで長年に渡ってマテリアルを集めてきたものの、生活との両立はなかなか難しくてね。なかなかバンドとして活動することができず、12年後の今、ようやく “Disaccord” をリリースすることができたんだよ。

Q3: What is the metal/rock scene like in Israel? What’s the hardest part of being in a metal/rock band in Israel and the Middle East?

【ORI】: Israel has an amazing metal community with a variety of sub-genres. Prog is one of them, with bands like Orphaned Land, Subterranean Masquerade, Scardust and many more. The audience here loves sophisticated music and loves to get wild on live shows! The hardest part, for every musician, is to be noticed and reach this audience.

Q3: 中近東でメタルやロックをやることの難しさは何でしょうか?

【ORI】: イスラエルには、様々なサブジャンルを持つ素晴らしいメタル・コミュニティがある。プログもその一つで、ORPHANED LAND, SUBTERRANEAN MASQUERADE, SCARDUST といった素晴らしいバンドがいるんだ。
イスラエルの観客は洗練された音楽が好きで、ライブで盛り上がるのが大好きなんだよ!
ミュージシャンにとって最も難しいのは、そういった観客の目に留まり、その目に届くようになることなんだよ。

Q4: Your melodies are really attractive and engaging. Regarding the Middle East, I’ve had interviews with bands like Orphaned Land. Riverwood and Myrath. They were very oriental in their music, sometimes incorporating Middle eastern folk instruments. There is a definite oriental flavor to your music as well, would you agree? Why are Middle Eastern melodies so appealing to the world?

【ORI】: The bands mentioned really opened our minds about oriental music, as it may not appeal to everyone on its own, when incorporated in metal music it can really touch the metal audience. We are definitely using this flavor in our composition, although in a subtle way.

Q4: ORPHANED LAND, RIVERWOOD, MYRATH といった中近東のバンドは、オリエンタルなメロディーや楽器を巧みに楽曲に取り入れて人気を博しています。
あなたたちはそこまであからさまではないにしろ、中近東の憂いのようなムードが楽曲を一層素晴らしいものに引き立てていますね?

【ORI】: 君の挙げたバンドは、僕たちがオリエンタル・ミュージックに目覚めるきっかけとなった人たちだよ。
オリエンタルな音楽は、それだけでは万人受けはしないかもしれない。だけど、メタルの中に取り入れると、聴衆の心を激しく揺さぶることができるんだよね。僕たちは、彼らよりは微妙な形ではあるけれど、確実にこのテイストを作曲に使っているんだよ。

Q5: I have interviewed various Israeli artists, Orphaned Land, Scardust, Subterranean Masquerade, Nili Brosh, etc., and most of them mentioned their prayers for peace. Israel is a country where war is right around the corner…could you tell us your stance on the Israeli-Palestinian issue and the recent Russian aggression?

【ORI】: The Israeli-Palestinian issue is really complicated. Too complicated to the point that trying to explain any side of it in such a short format would not do it justice. We are experiencing a conflict nearly every year and each time it happens it enlightens how stupid our reality can be. The only thing we can do is to hope for peace. We are all human beings after all and we do not deserve to die for one’s political ambitions or in the name of god. Our hearts are with the people of Ukraine.

Q5: ORPHANED LAND, SUBTERRANEAN MASQUERADE, SCARDUST といったイスラエルのバンドにインタビューして感じたのは、彼らの平和に対する願いでした。まさに戦争がすぐそばにある国だからこそなんでしょうかね…

【ORI】: イスラエルとパレスチナの問題は本当に複雑なんだよ。あまりに複雑すぎて、こうした短いフォーマットで説明しようとしても、正当な評価は得られないだろうな…。
僕たちはほぼ毎年紛争を経験していて、そのたびに、僕たちの現実がいかに愚かなものであるかを思い知らされるんだ。僕たちにできることは、ただひとつ、平和を願うことだけだ。だって僕たちは皆、結局のところ人間であり、他人の政治的野心や神の名のもとに死ぬべきでは決してないのだから。だから…僕たちの心はウクライナの人々とともにあるよ。

Q6: I asked about the war because “Disaccord” seemed to me to be an album about the division of the world and its horrors. Can you tell us about the artwork Chess and the concept of the piece?

【ORI】: “Disaccord” is an album about the division between a person and themselves. Every song is telling a story about a person dealing with their cognitive dissonances. The artwork shows a chess board with only white pieces, and with the king fallen down, which symbolizes a person check-mating themselves.

Q6: 戦争について尋ねたのは、”Disaccord” “不一致、不調和” というアルバム自体、そしてチェスのアートワークが、世界の分断とその恐怖について描いていると感じたからです。

【ORI】: “Disaccord” は、他人と自分との分裂、分断をテーマにしたアルバムなんだ。すべての曲は、認知的不協和に対処する人についての物語を語っているんだよ。アートワークは白い駒だけのチェス盤で、キングが倒れていて、これはつまり人が自分自身をチェックメイトしているってことを象徴しているんだね。

Q7: Still, “Disaccord” is a really great album! I’ve rarely heard progressive music as emotional as this one! Musically, we can hear influences like Opeth, Camel, Porcupine Tree, Rush, etc. Could you please talk about your musical roots?

【ORI】: Thank you! We take what we like from every musical artist that inspires us. It creates a musical language that really moves us emotionally. Ori was classically trained on the piano, so you can hear influences in the melodies from Chopin and the drama buildup and climax of Rachmaninoff. You can hear the melancholy from Camel and Porcupine Tree and the complexity and fierceness of Opeth, and also jazzy harmonies inspired by Snarky Puppy and Esperanza Spalding. The album was self produced, mixed and mastered by Ori and Yogev, so the sound of the album is the sound of the band.

Q7: それにしても、これほどエモーショナルなプログ・ミュージックはめったにお目にかかれないですよ!
OPETH, CAMEL, PORCUPINE TREE, RUSH といったバンドからの影響に、あなたたち独自の感情的な爆発が加えられて傑出した作品となりましたね?

【ORI】: ありがとう!僕たちは、インスピレーションを与えてくれるあらゆる音楽アーティストから、好きな要素を取り入れているんだよ。そうすることで、僕たちの感情を揺さぶる音楽言語が生まれるんだよね。
Ori はクラシック音楽のピアノ教育を受けてきたから、ショパンのメロディーやラフマニノフのドラマの盛り上がり、クライマックスに影響を受けているのがわかると思う。CAMEL や PORCUPINE TREE のメランコリー、OPETH の複雑さと激しさ、そして SNARKY PUPPY やEsperanza Spalding にインスパイアされたジャジーなハーモニーも聴くことができると思う。
アルバムは Ori と Yogev によるセルフプロデュース、ミキシング、マスタリングだから、このアルバムの音がそのままバンドの音だと捉えてもらっていいと思うな。

Q8: I recently interviewed a British prog band called Azure, and they said “We See ‘Prog’ As a Genre Where Anything Can Happen, Whether It Be The Dramatic Fantasy Storytelling And Guitar Harmonies Of Iron Maiden, Or The Slithering Shred Melodies Of Steve Vai, Or Even The Sugary And Bouncy Energy Of The 1975”. So, What does “prog” mean to you?

【ORI】: For us, “Prog” is mind-bending music that moves you emotionally and breaks your brain logically. It can incorporate any genre.

Q8: 最近、英国の AZURE というバンドにインタビューを行ったのですが、彼らは “プログを何でも起こり得る音楽” と捉えていると話していましたよ。

【ORI】: 僕たちにとって “プログ” とは、感情を動かし、論理的に脳を破壊するような、心を揺さぶる音楽だよ。そして、どんなジャンルでも取り入れることができる音楽だ。

EIGHT ALBUMS THAT CHANGED MENTAL FRACTURE’S LIFE

ORPHANED LAND “MABOOL”

A mediterranean metal masterpiece, where each song has a musical narrative and climax, and shows that metal can make you feel very happy too. This album really opened my mind to oriental and jewish music.

地中海メタルの傑作。音楽的な物語とクライマックスがあり、メタルがとても幸せな気分にさせてくれることを教えてくれる。このアルバムは、僕の心をオリエンタルとジューイッシュ・ミュージックへと導いてくれた。

MAJOR PARKINSON “SONGS FROM A SOLITARY HOME”

I never thought music can be this chaotic and coherent at the same time. They craft melodies and rhythms like no other band I know of and they are my favorite band to this day.

音楽がこれほど混沌とし、同時に首尾一貫したものになるとは思ってもみなかった。他のバンドにはないメロディーとリズムを作り上げていて、今日までで一番好きなバンド。(ORI)

CELTIC FROST “TO MEGA THERION”

I made my very reluctant parents buy this early extreme metal classic when I was just 5 years old. A quarter century of
listening to extreme metal followed, as I really enjoyed it against all odds.

5歳の時、嫌がる親に無理やり買わせた、初期のエクストリーム・メタルの名作。その後、エクストリーム・メタルを聴くきっかけになったね。

DREAM THEATER “SYSTEMATIC CHAOS”

While it isn’t even my favorite album from the band today, it was my first real introduction to prog metal, and it
melted my tiny teenage mind at the time.

僕のお気に入りというわけでもないけど、プログメタルに初めて触れた作品。10代の小さな心を溶かしてくれたね。(PHILIP)

MAGIC PIE “THE SUFFERING JOY”

Similarly to our album Disaccord, this album discusses psychological and emotional issues of humans. Musically, it has an enormous amount of content, heavy riffs, among soft parts. I believe Magic Pie is one of the most underrated bands out there.

僕らのアルバム “Disaccord” と同様に、このアルバムも人間の心理的、感情的な問題を論じている。音楽的には、ソフトな部分の中にヘヴィなリフがあり、膨大な内容になっている。Magic Pieは最も過小評価されているバンドの一つだと思う。

HAKEN “THE MOUNTAIN”

Brilliant compositions that never get boring through the 70 minutes of the album. The sound and production are just wonderful. This album really opened up my ears to what modern prog can sound like.

70分のアルバムを通して、決して飽きさせない見事な構成。サウンドとプロダクションがとにかく素晴らしい。このアルバムでモダンなプログレとはどんなものなのか、理解したよ。(YOGEY)

PORCUPINE TREE “THE INCIDENT”

An incredible album with unique production and sound design, Gavin Harrison plays very dynamically and has a signature
sound.

ユニークなプロダクションを持つ素晴らしいアルバム。Gavin Harrison の非常にダイナミックな演奏と特徴的なサウンドデザインが秀逸。

HADORBANIM “FIRST AFTER THE SECOND”

I was really inspired by the groove of this album. Its compositions and arrangements are top notch.

本当にインスピレーションを受けたよ。このアルバムのグルーブ感、作曲と編曲は一流さ。(HAI)

MESSAGE FOR JAPAN

We love Japan and its culture and we hope to perform live for you one day! Apart from enjoying the most commonly cited cultural exports (such as games/anime/culinary styles etc.) some of us have recently discovered and fallen in love with Japanese Math Rock.

日本とその文化が大好きさ!いつかライブがやれたらいいね。ゲームやアニメ、料理はもちろん、最近は日本のマスロックにハマっているメンバーもいるんだよ。

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RIVERWOOD : SHADOWS AND FLAMES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MAHMOUD NADER OF RIVERWOOD !!

“Egypt Has a Lot To Offer. Egypt Has More Than Just Pop/Rap/Hiphop And The True Sound Of The Deserts Of Egypt Can’t Be More Clear Than In Metal Music.”

DISC REVIEW “SHADOWS AND FLAMES”

「オリエンタルなメロディーが世界中を魅了する理由。それはやはり、魔法のように西洋のメロディーと異なっているからだと思うよ。オリエンタルなメロディーは常に貴重なもので、西洋人の耳にはとても珍しいものだ。だからこそ、メタルとのミックスは、中近東の文化を紹介するとてもユニークで重要な方法なんだよね」
メタルの生命力、感染力を語るとき、中近東の魔法のようなバンドたちはその完璧なる象徴だと言えるでしょう。モダン・メタルの深遠なる世界がいかに寛容で多様であるかは、イスラエルの ORPHANED LAND とチュニジアの MYRATH、さらに BLAAKYUM, SCARAB のカラフルかつエキゾチックな冒険を見れば自ずと伝わるはずです。そしてもう一つ、エジプトのアレキサンドリアを拠点とする RIVERWOOD の名前を我々はそのリストに加えなければなりません。
「故郷アレクサンドリアと同様に、僕たちの音楽も様々な文化を融合することに力点を置いている。僕たちの音楽には、アラビア文化、西洋の近代文化、スカンジナビア、北欧、そして多くの民族楽器が登場する。これこそが RIVERWOOD のメインテーマでもあるんだよね。ヘッドフォンやスピーカーから遠く離れた場所へ、リスナーの想像力をかきたてるような作品にしたいね」
人口520万人が暮らすエジプト第二の都市アレクサンドリア。地中海の真珠と呼ばれる美しき港湾都市は、ギリシア・ローマ文明、エジプト文明、そしてイスラーム文明が時と共に融合した文化の交差点でもあります。RIVERWOOD の音楽は、そんな彼らの故郷にも似てまさに “世界の結び目” のような色彩豊かな寛容さを誇っているのです。
「基本的に、エジプトには様々な音楽が存在する。ポップ、ラップ、ヒップホップ…だけどエジプトの砂漠、その真のサウンドを伝えるのにメタル以上のものはないんだよ」
砂漠の音を伝えるのにメタル以上のものはない。おそらく、彼らの言葉は真実でしょう。メタルには、砂漠の雄大、過酷、孤独、無情、そして絶景と神秘を伝えるだけの音の葉が備わっています。
RIVERWOOD の場合、彼らが愛する KAMELOT に似てシンフォニックなプログレッシブ・メタルを演じながら、劇中に伝統楽器やフォークミュージック、そして中近東のオリエンタルなメロディーを織り交ぜて砂漠の声を代弁していきます。主役を務める歌い手は素晴らしき Mahmoud Nader その人。彼の熱砂の歌声は、メタルのエクストリーム・サイドからシネマティックな情景描写まで、舞台を多様で情熱的な劇場へと導いていくのです。
「メタル・シーンは長い間、体制に悩まされてきたけど、今は正直言ってそうじゃない。今の唯一の課題は観客の文化で、観客の好みが何十年もかけてロック/メタルからモダン・ポップにシフトしてきたことが、僕にとっては常に奇妙で脅威に思えるんだ。誤解しないでほしいんだけど、例えば Spotify のトレンドを見てほしいんだ…まあでも結局のところ、誰もが自分の好きなものを愛する自由を持っているんだよ」
二枚組のアルバムとも言える75分の壮大な “Shadows and Flames” で語られるのは、新バビロニア興亡の物語。さながら、ネブカドネザル2世のバビロン捕囚のようにメインストリームな音楽世界に淘汰されつつあるハードロック/メタルの民ですが、RIVERWOOD はそんな音楽におけるバビロンの横暴も長くは続かないことを砂漠のメタルで熱く証明してくれます。
最も長い楽曲は12分半の “Blood and Wine” で、リスナーの時間、場所、ムードを刻々と変化させるアラジンの壺。荘厳壮大、絢爛豪華。シンフォニックで、アグレッシブで、エキゾチックで、シアトリカル。”The Shadow” というダークでミステリアスな小曲を挟み、10分超の “Sands of Time” は砂漠の中の異形、ピラミッドへとリスナーを惹き込んでいきます。ハーディー・ガーディーを前面に押し出した7分のロマン “Queen of the Dark” のプログレッシブでフォーキーな面持ちはアルバムの絶妙なアクセント。
“Shadows and Flames” に収録されている楽曲はそれぞれ長さが非常に独特で、1分をやっと超えるような非常に短い作品もあれば10分の作品も存在し、中間がありません。これは非常に挑戦的なやり方で、バンドが作曲能力に大きな自信を持ったエジプトの宝石であることを、ルールのない常識越えのアルバム全体でしっかりと証明していますね。
今回弊誌では、Mahmoud Nader にインタビューを行うことができました。「インスピレーションは中世のビデオゲームから得ている。バンド名の “Riverwood” は、Helgen のドラゴンの攻撃から逃れて、最初に行く村。Skyrim ファンなら共感してくれるはずだよ (笑)」どうぞ!!

RIVERWOOD “SHADOWS AND FLAMES” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MYRATH : LEGACY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ELYES BOUCHOUCHA OF MYRATH !!

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Oriental Metal master from Tunisia, MYRATH has just released long awaited new record, masterpiece called “Legacy” !!

DISC REVIEW “LEGACY”

北アフリカ、チュニジアの空気を世界に伝えるオリエンタルメタルバンド MYRATH が、5年という長いインターバルの後に傑作 “Legacy” をリリースしました!!
アフリカ大陸という、現時点でシーンの注目が最も薄い地域から現れた MYRATH のサウンドは非常にエピカルで印象的なプログ / パワーメタル。例えば、SYMPHONY X がクラッシックを、DREAM THEATER がプログロックやフュージョンを屋台骨としているように MYRATH はチュニジアのトラディショナルなフォーク音楽をそのインスピレーションの源にしているのです。
バンド名 MYRATH を英訳した “Legacy” をタイトルに冠したアルバムは、以前の作品よりもメッセージ性が強く、キャッチーで、リスナーの魂に訴えかけるような1枚に仕上がりました。オリエンタルメタルの旗手 ORPHANED LAND にも言えることですが、所謂形骸化したプログレッシブという枠から脱却し、その先を見据えた作品のようにも思えますね。
チュニジアで起こったジャスミン革命にインスピレーションを得た、アルバムオープナー “Jasmin” と壮大なPVを伴う “Believer” の流れは、まさにその新しい彼らの魅力を凝縮したものだと言えるでしょう。弾圧に屈せず信念を貫く。楽曲は実際に動乱を経験した彼らだからこその説得力に満ちていますね。
音楽的には、非常に扇情的でドラマティック。雄々しく突き進むミッドテンポの曲調の中、ストリングスやキーボードの美しい音色が異国の色を添え MYRATH の個性を主張します。チュニジア由来のオリエンタルなメロディーを力強くエモーショナルに歌い上げる Zaher Zorgatti の歌唱は、”Believer” は勿論、アルバムを通して実に見事で傑出しています。特に美しすぎるバラード “I Want To Die” での名演は彼の評判を一層高めることでしょう。
また、Jens Bogren をミックスに、ADAGIO の Kevin Codfelt をプロデューサーに迎え、磨き上げられたモダンなプロダクションはさながらアラビアの芸術建築のようですね。
楽器隊の個性もアルバムの大きな魅力の1つとなっています。アルバムのオーケストレーションまで担当したキーボーディスト Elyes の豊かな才能は “Endure the Silence” のカサブランカピアノにも現れていますね。新加入 Morgan Berthet のドラミングはエネルギッシュかつタイト。バンドのダイナモとして十二分に機能することを証明しています。勿論、ギタリスト Malek Ben Arbia の Yngwie を想起させる煙が出るようなシュレッドも健在!今年のプログメタル必聴盤であることは間違いないでしょう。
今回弊誌では、キーボーディストの Elyes Bouchoucha にインタビューを行うことが出来ました。実はフランス、ソルボンヌ大卒の英才でもあります。どうぞ!

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MYRATH “LEGACY” : 9.9/10

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