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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JYOCHO : 美しい終末サイクル (THE BEAUTIFUL CYCLE OF TERMINAL)】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAIJIRO NAKAGAWA OF JYOCHO !!

“We Are Influenced By Cycle Or Rule What We Can Not Perceive In Our Daily Life. Off Course, Individuals, As Well As Society, The Country, And The Earth, The Universe Are Both Influenced By One Law And Cycle.”

DISC REVIEW “美しい終末サイクル”

「サイクルという、法則という、我々では感知できない様なものに普段生きていると左右されています。個人は勿論、社会や国もそうだし、この地球も、この宇宙も、一つの法則やサイクルによって左右されています。この時代になり、それをわたしたちで哲学し検証する必要性が更に増して来たと感じました。 “美しい終末サイクル” は、わたしの哲学となり得るものです。」
生と死、光と陰、始まりと終わり、複雑とポップ、オーガニックとメカニカル。情緒という “いのち” を紡ぎ続けるギタリスト、だいじろーと JYOCHO の導く螺旋のサイクルは、森羅万象の両極を紐解く美しのメッセージです。
“祈りでは届かない距離”、”碧い家で僕ら暮らす”、そして “互いの宇宙”。これまで2枚のミニアルバムと1枚の EP をリリースして来た現代社会の語り部 JYOCHO。
渾淆するプログレッシブ、マスロック、ポストロック、ポップの仮初めの営みを、まるで心理学と幾何学の両極から検証し哲学するような絶佳のサウンドスケープには深い説得力とエモーションの煌めきが備わっています。
そして、様々なコントラストが彩った彼らのファーストサークルは、初のフルアルバム “美しい終末サイクル” で完結と共に新たな螺旋を描き始めるのです。
音楽的にも、確かにこの作品は終着と出発のレコードです。始まりのミニアルバム “祈りでは届かない距離” 収録の “family”, “太陽と暮してきた” を、成熟と団結深めた現行メンバーで試みた再録はその象徴かも知れませんね。
「五人の温度感や揺らぎが確実に音源として落とし込まれた瞬間だと確信しています。」インタビューでだいじろーも語るように、揺らぎ、テンションといった耳よりも心に聴こえる響きとグルーヴは、”バンド” への移行と共に明らかにその鮮やかさを増しています。
もちろん、”安い命”、”碧い家” と密に繋がる “つづくいのち” もこれまでの集大成と言えるのかも知れませんね。降り注ぐ多幸感と幽かな寂寞。フルートやアコースティックギターの膨よかなチェンバーオーケストラは、テクニックもエモーションもすっかり飲み込みロックのグルーヴとダイナミズムを濃密に体現するのです。
一方で、エモと激情がスパークする “Aporia”、自らのギターホライズンを心ゆくまで再び掘り下げる “sugoi kawaii JYOCHO”、内省的でダークな実験部屋 “my room”, “my rule” といったエクレクティックな新機軸、出発の息吹は、さながらリスナーが螺旋階段を下るうち次々遭遇する魅惑の扉。開くたびに知の好奇心と感情をくすぐる未知との遭遇は、どこまでも続くようにも思えます。
しかしこの終末サイクルにも終わりは訪れます。哲学するアルバムを締めくくる、”こわかった” の抱える恐怖は現代社会が抱える闇の部分とも重なります。
張り巡らされたインターネット、SNS の糸は感情までも追体験可能な世界を構築しつつあります。感動、興奮、喜び、悲しみまで、全てのハードルが下がってしまった現代で、JYOCHO が見せる景色、紡ぐ音楽は異質でしかしきっとセラピーのように安らかに世界へと浸透していくはずです。
今回弊誌では、だいじろーさんにインタビューを行うことが出来ました。「是非たくさんの人に、JYOCHOという素晴らしい “いのち” が届き、心に浸透してくれることを祈っております。」12/7には Ichika 率いる Ichikoro とのツーマン、そして来年はワンマンツアーも控えています。3度目の登場。どうぞ!!

JYOCHO “美しい終末サイクル” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JYOCHO : 互いの宇宙 (A PARALLEL UNIVERSE)】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAIJIRO OF JYOCHO !!

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Japanese Math/Post-Rock Icon, Daijiro Of Jyocho Has Just Released The Most Imaginative, Delicate, and Emotional Record To Date “A Parallel Universe” !!

DISC REVIEW “互いの宇宙”

「JYOCHO は自由な存在です。聞きたい時、あなたが必要な時に聞いてください。」 もはや宇宙コンビニの看板は不要でしょう。日本随一のギターシェフ、だいじろー氏が京都から世界へ和の “情緒” を伝える集合体 JYOCHO。アニメ “伊藤潤二『コレクション』” のエンディングテーマを含む “互いの宇宙 e.p” には、”鮮度” を何よりも愛おしむ料音人の拘りと力量が思うままに詰め込まれています。
デビュー作 “祈りでは届かない距離” から程なくして届けられた前作 “碧い家で僕ら暮らす” には、確かな変化と進化の証が封じ込められていました。童話やお伽噺、夢のある空想の物語から、よりリアルで自然体な世界観へとシフトした作品は、”碧い家” すなわち地球に暮らす私たちの刹那性とそれでも守るべきものについて、住人たちへナチュラルに寄り添い対話をはかります。
rionos から猫田ねたこに引き継がれたボーカルは変化の象徴かも知れませんね。「少年ぽい質感の声が好み」 とだいじろー氏が語るように2人の声質は共に中性的なイメージを特徴とします。ただし、rionos のドリーミーで凛とした歌唱に対して、猫田ねたこの紡ぐ歌は時に繊細で危うい印象を与えます。”悪いベクトルで良すぎない” 彼女の持つ不安定な人間らしさは JYOCHO の定めた新たな方向性とリンクしながら心地よい感情の揺らぎをリスナーへと届けるのです。
現実の大地へと降り立った JYOCHO にはその楽曲にも変化が訪れました。”情緒”、日本的な侘び寂びと歌心により焦点を定めたのは、大海へと漕ぎ出す彼らにとっては必然だったのでしょう。もちろん、トレードマークの数学的なリズムやテクニカルなフレーズは変わらず存在していますが、より自然でオーガニックに楽曲の一部として溶け込んだ目眩くプログレッシブな要素は、バンドの一体感と共に楽曲第一主義の立場を鮮明に知らしめているのです。
“互いの宇宙 e.p.” にはさらに鮮度を増した JYOCHO の今が込められています。
だいじろー氏と伊藤潤二氏、2人の宇宙を昇華する試みは、謀らずしも “互い” の意味を深く掘り下げることへと繋がりました。全てが “互い” で成り立つ宇宙。マクロの視点で世界を俯瞰した結果、だいじろー氏が感じたものはミクロの自分自身と孤独、寂寞でした。
その感情が見事に反映されたタイトルトラック “互いの宇宙”。繊細なドラムワークと美麗なアトモスフィアは斯くも見事に複雑なリズムを隠し通し、ピアノのアンビエンスとだいじろー氏の豊かなオブリガートは、桜の花びらの如く徐々に楽曲を淡く色付け、咲き誇り、そして儚く散るのです。猫田ねたこが強弱やシンコペーションで生み出すメロディーのバリエーションも全てはキャッチーなサウンドスケープのために広がる宇宙の一部分。
特にだいじろー氏の有機的なギターは狭義のマスロックから飛び出して、お気に入りにも挙げている Vahagni のフラメンコやジャズ、現代音楽まで包括したさらなる高みへと達しているように感じます。
もしかしたら、ここに収録された4つの楽曲はそのまま春夏秋冬を、”情緒” を表現しているのかもしれませんね。受け取り方は自由です。確かに言えるのは、”互いの宇宙 e.p.” は円環であるという事実でしょう。「一つのテーマから派生させて、また一つに帰還させるという方法をとりました。」 とだいじろー氏が語るように、作品には共通して流れる歌詞やメロディーが存在します。
寂寞と微かな希望を内包した “互いの宇宙” を起点に、フルートの躍動感を陽の光に重ねた壮大な JYOCHO 流ポストロック “pure circle”, 郷愁のマスエモ絵巻 “ユークリッド”、そしてアコースティックの響きが胸に迫る “互いの定義” まで、印象的な一つのテーマが千々に形を変え純粋な円環を流動する様はまさしく圧巻です。見方を変えれば、この EP 自体が18分の巨大なエピックと言えるのかも知れませんね。
相変わらずだいじろー氏は感覚でした。ただし、その瞬間の積み重ねは、悠久にも思える音楽との対話、思考の末に生まれた唯一無二の感覚なのです。彼がこの作品に落とし込んだ孤独や寂寞は、もしかしたら “互い” を感じる対象が究極的には音楽だけだからなのかも知れません。
今回弊誌では、だいじろー氏にインタビューを行うことが出来ました。「JYOCHOは、触れた人によって形を変える仕組みを持たせています。」 SNSにアップされる演奏動画も、楽曲へ繋がることがあり見逃せませんね。どうぞ!!

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JYOCHO “互いの宇宙” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JYOCHO: 祈りでは届かない距離 (A PRAYER IN VAIN)】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAIJIRO OF JYOCHO !!

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One Of The Most Talented Guitar Player From Japan, Daijiro Nakagawa With JYOCHO Has Just Released Very Impressing Math-Rock Meets J-Pop Record “A Prayer In Vain” !!

DISC REVIEW “祈りでは届かない距離”

Math-Rock という東洋が主たる発信地の魅力的で、しかし曖昧なジャンルにおいて、宇宙コンビニが果たした役割は非常に大きなものでした。短いキャリアで閃光のように強い輝きを放ったバンドは、時に幾何学的、時に有機的な美しきサウンドスケープに、日本らしいポピュラーミュージックの色合いを添え、ジャンルの曖昧さを逆手に取って Math-Rock の可能性を証明し、世界中から大きな賞賛を浴びたのです。
バンドの解散から一年半。リーダーでギタリストのだいじろー氏が JYOCHO というプロジェクト名でリリースしたデビュー作 “祈りでは届かない距離” は、さらに研ぎ澄まされたそのポップセンス、多様でカラフルな音楽性、高いミュージシャンシップを滑らかに溶け合わせ、今度は自身の可能性を証明したレコードとなりました。
JYOCHO とはすなはち”情緒”。インタビューにもあるように、日本らしい四季のような感情の変化を世界に伝えたいという想いで名付けられた JYOCHO はまさにこのカラフルなレコードを体現しています。
アルバムオープナー、”family” は宇宙コンビニと JYOCHO を繋ぐミッシングリンクのような存在です。クリーンでピュア、しかしテクニカル。宇宙コンビニ時代からだいじろー氏のトレードマークとも言えるマスマティカルなギターフレーズに導かれたリスナーは、流れ来るフルートの美しく雅な響きに驚きを覚えるでしょう。アルバムを通してこのフルートの音色は、JYOCHO の唯一無二の世界観”情緒”を醸し出すことに大いに貢献していますね。
確かにジャジーなリズムパターン、複雑なコンポジション、繊細なギターフレーズは Math-Rock のアイデンティティーを主張しますが、楽曲へと自然に溶け込み寄り添い、ただ深化を促すジグソーパズルのピースとして存在しているようにも思えます。
実際、ポップスの領域へと繋がるような、rionos の中性的でイノセントな歌声、メロディーが JYOCHO, そして “祈りでは届かない距離” を特別な存在にしていることは明らかです。
だいじろー氏が原点だと語る出身地、京都を想いながら作られたであろう “故郷” は、その Post-Rock 的なサウンドスケープを背景に歌い紡がれる rionos の優しく、懐かしく、実にエモーショナルなボーカルが、リスナーの心へフワリフワリと侵入し様々な感情を喚起します。勿論、そこに情緒を感じるファンも多いでしょう。
とは言え、アルバムにはロック的なスリルも当然存在します。”太陽と暮らしてきた” の変拍子、ギターとフルートのユニゾン、そして対位法的インプロヴァイズは実にエキサイティングで JYOCHO という集団のミュージシャンシップの高さを見せつけています。だいじろー氏のギターにより深く耳を傾ければ、タッピング以外にも、ベンドやアルペジオ、ハーモニクスの使用法が卓越していることにも気づくはずです。人生を変えたアルバムを見れば分かる通り、驚異的なアコースティックギタリストから影響を受け、右手の五本指をも自在に操る彼の奏法はロックのフィールドにおいては実に異端で革新です。
こうした JYOCHO の楽器とボーカルの素晴らしいバランス、見事な調和は、rionos の歌声にも相まって、偶然にも、”祈り”を捧げるアーティスト Cocco の名作群 “クムイウタ” や “ラプンツェル” を想起させる瞬間が存在します。確かに世界は “祈りでは届かない距離” で隔てられていますが、それでも私たちは”気づく”必要がありますし、”調和”へと向かうべきでしょう。
今回弊誌では、だいじろー氏にインタビューを行うことが出来ました。読者のみなさまにも”気づいて”いただければ幸いです。どうぞ!!

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JYOCHO “祈りでは届かない距離” : 10/10

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