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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MOON TOOTH : PHOTOTROPH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK LEE OF MOON TOOTH !!

“I Liked The Idea Of Putting Something Out In The World That Might Give People Some Release From Their Anxiety And Frustration Right Now Instead Of Just Mirroring It With More Anger And Existentialism.”

DISC REVIEW “PHOTOTROPH”

「僕たちは、ロックのヒーローたちと、彼らがそれを実現するために果たさなければならなかった道のりに敬意を表しながら、何か新しいことをしようとしているんだ。 レミーならどうしただろう?ってね」
ロングアイランド出身の MOON TOOTH による目まぐるしきサード・アルバムは、過去25年間にオルタナティブ・ロックが果たしてきた奇妙で先進的な音楽の扇動に対する解答のように感じられるかもしれません。
ALICE IN CHAINS や SOUNDGARDEN にはじまり、DEFTONES の絹のような感情表現、QUEEN OF THE STONE AGE の石器時代の鼓動、MASTODON の知的な砂漠、そして TOOL の複雑怪奇なグルーヴ。”Phototroph” には、たしかにこうした瞬間が散りばめられています。しかし、”次の METALLICA になりたい” と宣言する MOON TOOTH の特異性や野心は、彼らにとっての “始まりの地” からすでに “約束の地” へと舵を切っています。
「チャック・ベリーから MOON TOOTH まで、ロックのひとつのラインをたどれるようにしたいというのが本音なんだ。他のバンドが今何をやっているかなんて、どうでもいい。僕の頭の中と心の中では、真のロックンロール・バンドでありたいんだよ」
MOON TOOTH が次の METALLICA となるために必要だったのは、”ユニーク” を超えること。METALLICA のように、他の誰もやっていないことをやること。そのために彼らは、メタル以前の音楽をもモダン・メタルで再調理して、アルバムの中でロックの歴史を一つにつなげる荒唐無稽を実現しました。
ここには、オーティス・レディングの躍動も、ヘンドリクスのリフ革命も、QUEEN のハーモニーも、クリムゾンの難解なパズルでさえ存在し、再び命を得ています。
「ギターソロを早送りで聴く?ハァ?15秒~30秒のギターソロを聴くことができないほど忙しいの? ソロを早送りするのに、なぜバンドを聴いているんだ?!?!失礼ながら、君が言うような人たちは、おそらくギターソロそのものを聴くよりも、ギターソロに反応する人の YouTube ビデオを見る方が好きなんだろうな。冗談じゃないよ!」
重要なのは、この作品にロックの不純物がひとかけらも混入してはいないことです。あの RIOT V にも所属する Nick Lee の左腕にはスリルとエモーション、それにかつて誰もがギターに期待していたスペクタクルが存分に宿っていますし、自然保護施設でも働く John Carbone の表現力、感情を高めた歌声には人知を超えた野獣が降臨。ロックの王道が忘れ去られた世界で、ロックの王道を一人、むき出しの感情、むき出しのサウンドで歩んでいます。
さらに、タイトル・トラック “Phototroph” を聴けば、RUSH を思わせる千変万化なコンポジションに、FOO FIGHTERS もたじろぐほどのアリーナ・サイズのフックを刻み込んでいることが伝わるはず。”Nymphaeaceae” では、歪んだリフの曲がりくねった迷路に THE ALLMAN BROTHERS の遺志を込め、その奥深くにボーカル・フックを丁寧に埋め込んでいます。MOON TOOTH は実験とポップのシーソーを誰よりも巧みに乗りこなすのです。
「30のアイデアのうち、この11曲がとてもうまくまとまったんだ。楽観的で希望に満ちた感じがするから。今の時代の不安やフラストレーションを、怒りや実存主義に置き換えるのではなく、そこから解放されるようなものを世に送り出したいという思いがあったんだ」
パンデミック、戦争、政治の腐敗、独裁者の台頭。混乱と混沌の20年代においても、MOON TOOTH は人間の強さを信じています。”Phototroph” “光栄養生物” と訳されるアルバム・タイトルには、希望という光に向かって進んでいく私たちの姿が重ねられています。
たしかに今、誰にとっても、”聖域” は消え去りました。しかし逆に今こそ、Nick の言葉を借りれば、これまで自覚することのなかった、目を背けていた私たち自身の “不寛容” と向かい合うチャンスなのかもしれませんね。”Phototroph” はそんな私たちの “光合成” を促すような作品ではないでしょうか。
2012年に結成された MOON TOOTH は、初期にタグ付けされたプログ・メタルというタグをいまでは取り払ったように見えます。それは彼らの音楽が十分にプログレッシブでもなく、十分にメタルでもなかったからではなく、その二つ以上のものを兼ね備えていたから。今回弊誌では、Nick Lee にインタビューを行うことができました。「人間は時に、ポジティブなことに集中したり、目標を設定してそこに向かって進んだりすることを、自分で選択しなければならないことがある。それを伝えたかったんだ」 三度目の登場。スケール感が倍増しています。どうぞ!!

MOON TOOTH “PHOTOTROPH” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MOON TOOTH : CHROMAPARAGON】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK LEE OF MOON TOOTH & RIOT !!

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Aggressive Progressive, From Prog to Sludge!! Eclectic Talented band from NYC, MOON TOOTH has just released their incredible debut full-length “Chromaparagon” !!

NYC からまたカラフルで一風変わった音楽性の素晴らしいバンドが現れました!MOON TOOTH がリリースしたデビューフルレングス “Chromaparagon” のプログレッシブでアグレッシブなサウンドは多くのロックファンを惹き付けることでしょう。
バンドを率いるギタリストの Nick はあの RIOT が亡き Mark Reale の後任として指名した新たな才能でもあります。しかし、MOON TOOTH の音楽は RIOT のトラディショナルなメタルとは大きく異なります。
アルバムオープナーの”QUEEN WOLF”を聴けば、彼らのモダンで自由なコンポジションに圧倒されるでしょう。Mathy & Heavy で実にインテレクチュアルなリフの洪水に、PEARL JAM の Eddie Vedder を髣髴とさせる表情豊かな John のボーカルが乗る楽曲は、近年のプログロックシーンでも一際異彩を放っていますね。
畳み掛けるように “Offered Blood” がアルバムの世界観を確立します。MASTODON をさらにプログレッシブにしたかのようなヘヴィーでテクニカルなリフと、時にスポークン・ワードまで駆使する John のボーカルが生み出す個性は強烈で唯一無二。この楽曲での Nick のギタープレイ、またそれに呼応する手数の多い Ray のドラムスは本当に驚異的ですね。
同時に “Little Witch”, “Chorma” のようなストレートでパンキッシュな楽曲は彼らの多彩さを物語ります。その一癖も二癖もあるオルタナティブなキャッチーさは INCUBAS を想起させますね。
また組曲となっている “Vesvius Ⅰ” “Vesvius Ⅱ” の前衛的なポストハードコアサウンドは THE MARS VOLTA の精神性と近いものを感じさせます。
アルバムを通してリズムへの拘り、複雑で大胆なアプローチはバンドの一体感を伴って MOON TOOTH のアイデンティティになっていると感じました。そして Prog-Sludge を軸としながらもその枠には一切収まりきらないエクレクティックなサウンドは見事としか言いようがないですね。
今回弊誌では Nick に MOON TOOTH, そして RIOT について語っていただきました。Shine On!!

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MMM RATING IS…

MOON TOOTH “CHROMAPARAGON” : 9.5/10

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