EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YURI LAMPOCHKIN OF THE KOREA !!
“Right Now, We Are Feeling Like Musicians On Titanic, Who Continued To Play For The People In Their Darkest Hour, But We Want To Let Our Music Speak For Us.”
DISC REVIEW “VORRATOKON”
「僕たちのような音楽が流行りはじめたのは、00年代にローカルなバンドがメタルコアや Nu-metal に影響されたヘヴィな音楽を演奏し始めたのが最初だったと思う。ただ、国境を越えて音楽を届けるには常に問題があったんだけど、ストリーミング産業、特に Spotify や Apple Music といった大手が登場すると、それがずっと簡単になったね」
古くは ARIA や GORKY PARK、長じて EPIDEMIA や ABOMINABLE PUTRIDITY など、ロシアにはメタルの血脈が途切れることなく流れ続けています。ただし、その血管が大動脈となり脈打ちはじめたのは、00年代の後半、メタルコアや djent の影響を受けたテクニカルで現代的なメタルが根付いてからでした。モダン・メタルの多様な創造性は、ギタリスト Yuri Lampochkin 曰く “あらゆる音楽を聴く” ロシアの人たちの心にも感染して、瑞々しい生命力を滾らせていったのです。
仮面のデスコア怪人 SLAUGHTER TO PREVAIL のワールド・ワイドな活躍はもちろん、ギターヒーローとして揺るぎない地位を獲得した Sergey Gorvin、独自のオリエンタル・メタルコアでプログレッシブのモーゼとなった SHOKRAN、複雑怪奇と美麗のマトリョーシカ ABSTRACT DEVIATION など、10年代初頭、我々は芸術的 “おそロシア” の虜となっていきました。THE KOREA もそんな文脈の中で光を放つバンドの1つ。当時、Bandcamp で “Djent” タグを熱心に漁っていた人なら知らない者はいないでしょう。
「音楽で最も感動的なことのひとつは、常に新しい方法を探して、美しいもの、本当にパワフルなものを作り、自分の音や自分の音楽の感じ方を常に進化させることなんだ。僕たちは当時からその感覚を持っていて、今もそれが THE KOREA の原動力になっているんだよ。個人的に影響を受けたのは、これでもだいぶ絞っているんだけど、Jim Root, Jaco Pastorius, Ian Paice, Chester Bennington, Misha Mansoor といったところだね」
THE KOREA が唯一無二なのは、djent と Nu-metal という台風並みの瞬間風速を記録したメタル世界の徒花を、包括的なグルーヴ・メタルと捉え両者の垣根を取り払ったところでしょう。Jaco Pastosius や Ian Paice といったロックやジャズの教科書をしっかりと学びながら、まさにパワフルで美しい “新しい方法” をサンクトペテルブルクで創造しました。
莫大な情報と自由が存在する “西側” の国々でさえ、ハイパーテクニカルな LIMP BIZKIT や 拍子記号に狂った SLIPKNOT、やたらと暴力的な LINKIN PAPK なる “もしも” は考えもしなかったにもかかわらず。そんな “If” の世界を彩るは、雪に政府に閉ざされたロシアの哀しき旋律、それにトリップホップの無垢なる実験。
「僕たちの楽曲 “モノクローム(Монохром)”では、世界における暴力、特に戦争に終止符を打つことについて話している。戦争はもう、僕たちの生活の中にあってはならないことで、世界中の人々がそれに気づき、互いに争うことをやめるべきなんだよね。この曲は1年以上前に書かれたものなんだけど、まさか最近の出来事とこうして結びついていくなんて、僕たちには想像もつかなかったよ」
ロシア語で “耳を傾ける” を意味する最新作 “Vorratokon” はそんな彼らの集大成。戦争を引き起こしたロシアの中にも平和と反戦を願う “優しい” 人たちが存在すること。我々はそんな小さな声にもしっかりと傾聴すべき。奇しくもそんな祈りがタイトルから伝わってくるようです。
「僕たちの国にとって、残酷と不正のトピックは特に重要なんだよ。だけどロシアの社会は、明らかな問題を認識して解決し始めるレベルにもまだ達していないんだ…」
かつて、弊誌のインタビューで同じくロシア出身のチェンバー・デュオ IAMTHEMORNING はこう語ってくれました。もしかしたら、ロシアの中には戦争賛同者が想像以上に多く存在しているのかもしれません。しかし、その一つの意見を切り取ってロシアの総意のように発信するのは明らかに間違いです。
「俺たちは残忍な音楽を演奏しビデオには武器も出る。だけどどんな戦争にも反対だ。ウクライナで起こっていることにとても傷ついている。どうかロシア国民全体を共犯者だと思わないで欲しい。皆の頭上に美しい、平和な空が広がりますように」
SLAUGHTER TO PREVAIL、Alex Terrible の言葉です。こんな考えのロシア人もまた少なくないはずです。政治はともかく、少なくとも音楽の、芸術の世界では Yuri の願い通り私たちは “壁” を作るべきではないでしょう。
今回弊誌では、Yuri Lampochkin にインタビューを行うことができました。「今、僕たちはタイタニック号のミュージシャンのように、最も暗い時にいる人々のために演奏を続けているような気分なんだ…僕たちの音楽が僕たちの心を代弁してくれたらいいんだけどね」こんな時期に、こんな状況で本当によくここまで語ってくれたと思います。どうぞ!!
THE KOREA “VORRATOKON” : 9.9/10
INTERVIEW WITH YURI LAMPOCHKIN
Q1: First of all, what kind of music were you listening to, when you were growing up?
【YURI】: All sorts of. From the classics like Metallica or Rammstein, to the more modern at the time bands like Slipknot or Limp Bizkit. In Russia, there was always a big amount of people listening to all kinds of music, so it’s not only about heavy genres, we always liked different styles like trip-hop, jazz or hip-hop. But heavy music always has a special place in our hearts.
Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?
【YURI】: いろんな種類の音楽を聴いてきたよ。METALLICA や RAMMSTEIN のようなクラシックなものから、SLIPKNOT や LIMP BIZKIT のような当時としてはモダンなバンドまでね。
ロシアでは昔からあらゆる音楽を聴く人が多かったから、ヘヴィなジャンルだけでなく、トリップホップやジャズ、ヒップホップなど、さまざまなスタイルが好きだったね。でも、ヘヴィミュージックはいつも僕らの心の中で特別な位置を占めているんだ。
Q2: What inspired you to start playing guitar? Who was your guitar hero at that time?
【YURI】: There is always something unique about every musician’s story. We are five people that have it’s own musical roots and influences, but if we can have something in common around us – there is definitely seeing favourite bands playing live, listening to music all night long and the idea of creating something ourselves. That’s one of the most inspiring things about music – you are always looking for new ways to create something beautiful, something truly powerful, constantly evolving your own sound and the way you feel your own music. We have that feeling then and it drives us even now. About personalities – there are always too many of them, but here’s just a few – Jim Root, Jaco Pastorius, Ian Paice, Chester Bennington, Misha Mansoor.
Q2: ギターをはじめたきっかけは何でしたか?あなたにとって、当時のギターヒーローは誰でしたか?
【YURI】: どのミュージシャンにも必ず何かユニークなストーリーがあるよね。だから、僕たち5人にも5人分のストーリーがある。でも、もし僕らの周りに共通するものがあるとすれば、それは間違いなく好きなバンドのライブを見ること、一晩中音楽を聴くこと、そして自分たちで何かを作り上げるということだろうね。
音楽で最も感動的なことのひとつは、常に新しい方法を探して、美しいもの、本当にパワフルなものを作り、自分の音や自分の音楽の感じ方を常に進化させることなんだ。僕たちは当時からその感覚を持っていて、今もそれが THE KOREA の原動力になっているんだよ。
個人的に影響を受けたのは、これでもだいぶ絞っているんだけど、Jim Root, Jaco Pastorius, Ian Paice, Chester Bennington, Misha Mansoor といったところだね。
Q3: How did The Korea come to be? What’s the meaning behind your band name The Korea?
【YURI】: There’s a little story about that – at the beginning, when the band started playing, our guitarist Alexander needed to submit the band name to the rehearsal schedule. He was a big Deftones fan at the time, so he just took the name from one of their songs, “Korea”, and so the band got its name. Thing with “The” happened with soft rebranding in 2010 with EP “Песочный Человек”. Bands often get their names through accident, so we’re not an exception here.
Q3: THE KOREA はどのように誕生したのですか?バンド名に込められた意味を教えてください。
【YURI】: それについてはちょっとした物語があるんだ。バンドが演奏を始めた当初、ギタリストの Alexander はリハーサル・スケジュールにバンド名を提出する必要があった。彼は当時 DEFTONES の大ファンだったから、彼らの曲の一つである “Korea” からそのまま名前を取って、バンド名にしたんだよ。
2010年にEP “Песочный Человек” でソフト・ブランディングを行い、”The” がつくことになった。バンド名の由来は偶然の産物であることが多く、僕たちもその例外ではなかったんだ 。
Q4: Russia has never been a metal powerhouse, but with the rise of djent and deathcore, you guys, as well as Shokran, Sergey Gorvin, Slaughter to Prevail, and other great bands, have emerged. Why was that?
【YURI】: Russia has always had a very strong and big underground scene, especially when it comes to metal. It began in the 00s when local bands started playing really heavy stuff influenced by metalcore and nu-metal, but there were always trouble bringing music beyond the border, but when the streaming industry came up, especially with giants like Spotify and Apple Music it became a much easier task.
Q4: ロシアは決してメタル大国という印象はありませんでしたが、djent やデスコアの台頭により、あなた方をはじめ、SHOKRAN, SLAUGHTER TO PREVAIL, Sergey Gorvin など、テクニカルで素晴らしいバンドが多く現れましたね?
【YURI】: ロシアは、特にメタルに関しては、常に非常に強力で大きなアンダーグラウンドシーンが存在したよ。でも、僕たちのような音楽が流行りはじめたのは、00年代にローカルなバンドがメタルコアや Nu-metal に影響されたヘヴィな音楽を演奏し始めたのが最初だったと思う。
ただ、国境を越えて音楽を届けるには常に問題があったんだけど、ストリーミング産業、特にSpotify や Apple Music といった大手が登場すると、それがずっと簡単になったね。
Q5: The interesting thing about you guys is that there is a strong Nu-metal influence in the djent. Is there an intention to combine the two?
【YURI】: In our opinion, djent has always had a strong groove-metal influence as nu-metal, and it’s inevitable that sometimes these genres will cross paths even in our music. We are constantly experimenting with our band sound, embedding new ideas so the results can surprise even us.
Q5: あなた方の面白いところは、djent の中に Nu-metal の影響が強く出ている部分だと思います。この2つを融合させようという意図はあるのでしょうか?
【YURI】: 僕たちの考えでは、djent は常に Nu-metal と同様にグルーヴ・メタルに強い影響を受けているから、僕たちの音楽の中でもこれら2つのジャンルが交差することはある意味必然だと思うんだ。
僕たちは常にバンド・サウンドを実験し、新しいアイデアを埋め込んでいるから、その結果は僕たち自身をも驚かせることになるんだよ。
Q6: Russian is a difficult language, so it’s hard to understand what you guys are singing about, for example, what themes are you dealing with in this wonderful newest piece, “Vorratokon”?
【YURI】: Yes, we’re definitely understand that songs language can make a strong barrier for the people from other countries, but for us the Russian language is something that’s a part of our identity as a band. For us, Vorratokon is a whole world, where we explore various themes, for example, our song Monochrome (Монохром), in which we talk about putting an end to violence in the world, especially wars. This is something we should not have in our lives anymore and people all around the world should notice it and stop fighting each other. This song was written more than a year ago, and we cannot imagine the way it will be connected to recent events.
Q6: ロシア語はなかなか敷居の高い言語なので、あなた方が何を歌っているのか理解するのは難しいのですが、例えば、この素晴らしい最新作 “Vorratokon” ではどのようなテーマを扱っているのでしょうか?
【YURI】: そうだね。僕たちもロシア語で歌うことが、他の国の人たちにとって大きな壁になっていることは理解しているんだ。だけどね、僕たちにとってロシア語は、バンドとしてのアイデンティティの一部なんだよね。
例えば、僕たちの楽曲 “モノクローム(Монохром)”では、世界における暴力、特に戦争に終止符を打つことについて話している。戦争はもう、僕たちの生活の中にあってはならないことで、世界中の人々がそれに気づき、互いに争うことをやめるべきなんだよね。この曲は1年以上前に書かれたものなんだけど、まさか最近の出来事とこうして結びついていくなんて、僕たちには想像もつかなかったよ。
Q7: Let me ask you about the war in Ukraine. Alex from Slaughter to Prevail recently sent out a message saying that he is absolutely against any war, what do you guys think about this war? Also, unfortunately, Russia is becoming isolated from the rest of the world not only in politics, but also in sports and the arts. Do you think politics and the rest should be kept separate?
【YURI】: As musicians, we played a large amount of concerts in different countries and cities, we have met a large amount of people with different political, religious and social views, many of them are our friends, so as a band it’s our position – music should always stay out of politics, so as sports. We want to play our music for everyone, everywhere, bring happiness to those who are sad and make people come together, because music is not a thing to use as a weapon, it’s always been a thing that can make different people feel connected to something beautiful. But when it comes to politics – people are always divided, and the last thing we want to do is to start dividing our listeners with it. Right now, we are feeling like musicians on Titanic, who continued to play for the people in their darkest hour, but we want to let our music speak for us.
Q7: ウクライナでの戦争についてお聞きします。SLAUGHTER TO PREVAIL の Alex が最近、どんな戦争にも絶対反対だとメッセージを送っていましたが、率直に皆さんはこの戦争についてどう思っていますか?
また、ロシアは政治だけでなく、スポーツや芸術の分野でも世界から孤立しつつあります。政治とそれ以外は分けて考えるべきだと思いますか?
【YURI】: 音楽家として、僕たちは様々な国や都市で多くのコンサートを行い、異なる政治的、宗教的、社会的見解を持つ多くの人々に出会い、その多くは僕たちの友人となった。だからバンドとしての僕たちの立場は、音楽は常に政治から離れなければならないというものだよ。スポーツも同じさ。なぜなら、音楽は決して武器として使うものではなく、さまざまな人々に何か美しいものとのつながりを感じさせることができるものだから。
だけど、政治となると……人々は常に分裂しているよね。僕たちが一番やりたくないことは、音楽に政治を持ち込んでリスナーを分裂させ始めることなんだ。だからあまり多くを語りたくはない。今、僕たちはタイタニック号のミュージシャンのように、最も暗い時にいる人々のために演奏を続けているような気分なんだ…僕たちの音楽が僕たちの心を代弁してくれたらいいんだけどね。