EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MASAYA MIFUNE OF ROTH BART BARON !!
Imaginative Rock band from Tokyo, ROTH BART BARON has just released their newest album “ATOM” with incredible soundscape and creativity !!
着々と世界における評価も高めつつある、才気溢れる東京出身の2人組 ROTH BART BARON が 2nd アルバム “ATOM” をリリースしました!!
THE NATIONAL, Sufjan Stevens を手がけた Jonathan Low をサウンドエンジニアに、Kurt Vile, WAR ON DRUGS を手がけた Brian McTear を数曲のプロデューサーとして迎え制作されたデビューアルバム “ロットバルトバロンの氷河期” は壮大で美麗、日本のみならず世界でも Bon Iver や SIGUR ROS などと比較されつつ絶賛されました。USインディー/フォークからポストロックまで取り込み、バンジョーやフィドル、和太鼓まで使用した実験性も話題になりましたね。
それから1年半。完成した新作 “ATOM” は、想像力を掻き立てる豊かなサウンドスケープが、見事に詩、世界観と調和した素晴らしい作品に仕上がりました。
今回レコーディングを行ったのは、彼らがリスペクトを公言している GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR の Mauro Pezzente が所有するモントリオールのスタジオ。ARCADE FIRE や Owen Pallett もレコーディングを行ったその場所で、RBB は大胆にも現地のミュージシャンたちとセッションを重ね、アルバムに起用します。カナディアンインディーのポップでありながら実験的なフワフワとした空気が合ったのでしょう。ARCADE FIRE のアルバムにも参加したヴァイオリ二スト Jessica Moss を筆頭に、ストリングス、管楽器、パーカッションなど様々な楽器が構築する壮大なサウンドによって、私たちはその音に美しい景色や情景を見ることが出来ます。そしてそこに、懐かしい日本の原風景や悠久の歴史を感じさせるような、彼ら独特のポップなメロディーと神々しいボーカルを乗せることで “ATOM” は世界のどこにも存在しない強い光を放つ作品に昇華したと言えるのではないでしょうか。
また今回は SF, ファンタジーがテーマの1つとなっています。ターミネーターやロボコップのような古き良きハリウッドのSF映画をインスピレーションの源として、レトロフューチャーな世界観を見事に構築していますね。ビンテージシンセサイザーの大胆な使用は本当にアルバムの良いアクセントとなっています。世界的にも、エレクトロ新世代によるレトロウェーブリバイバルの波が起きています。勿論 Pitchfork, NME といった大手メディアが発信する音楽やトレンドだけが音楽ではありませんが、世界を見据えた時、そういった部分で日本は一歩遅れていると言わざるを得ません。トレンドをしっかり踏まえつつ、自由に自分たちのサウンドを追求する ROTH BART BARON にかかる期待は大きいですね。
今回弊誌では、ボーカルとギターを担当する三船雅也さんに話を聞くことが出来ました。どうぞ!!
MMM RATING IS…
ROTH BART BARON “ATOM” : 9,5/10
【INTERVIEW WITH MASAYA MIFUNE】
Q1: 初インタビューです。まずは ROTH BART BARON(以下 ROTH) 結成の経緯とバンド名の由来を教えていただけますか? お二人は中学からのご友人だそうですね?
【MIFUNE】: ROTH BART BARONはチャイコフスキーのバレエ『白鳥の湖』のキャラクターの名前です。僕が幼稚園児のときにお遊戯会の演目でその役を演じることになったんです。みんなは華々しく舞踏会で踊っているのに僕だけが悪役なのがとても印象に残っていたんです。ドラムの中原とは中学校からの友達です。その時は音楽をやろうなんて夢にも思わなかったのですが、ある時再会して音楽で遊んでいるうちにこうなりました。
Q2: デビューアルバム “ロットバルトバロンの氷河期” はメディアや音楽ファンから注目を浴び、非常に高い評価を得ましたね。
実際、日本どころか世界のどこにも存在しない独特で唯一無二の素晴らしい音楽だと思いました。音から風景が見えるような感覚。今振り返ってみて、”ロットバルトバロンの氷河期” は ROTH にとってどのようなアルバムですか? 制作時に、ここまで大きな注目を浴びると思っていましたか?
【MIFUNE】: “ロットバルトバロンの氷河期”を出したことで多くの人に気づいてもらえるようになったのはバンドにとってとても良かったと思います。僕らは自分が良いと思う音楽に向かって一生懸命になっていただけで、正直作っている時はこれで有名なスターになりたいだの、人に注目されたいというのは考えてはいなかったです。
これでアルバムを作れるチャンスも最後かもしれないし、好きなエンジニアと好きなフィラデルフィアのスタジオで一曲でもいいから自分のサウンドを追求したいと思っていました。自分の理想を叶えないまま人生を終えたくはありませんでしたしね。でもアルバムを聴いた人が喜んでくれるといいなとか、驚いてくれるといいなとは思っていました。
“氷河期” には製作中幸運にも?アメリカで何十年ぶりという大寒波に襲われたのですが、そのシンとした夜の空気のサウンドが閉じ込められています。まさしくこの世のどこでもない雪に閉ざされた環境で作ったアルバムでしたね。
Q3: 待望のセカンドアルバム “ATOM” がリリースされましたね。前作よりもSF、ファンタジーの感覚が強いように感じましたが、”ATOM” というタイトルには手塚治さんの鉄腕アトムを意識した部分もあるのでしょうか? 三船さんの歌詞や楽曲タイトルのセンスには星新一さんに近いものを感じたりします。
【MIFUNE】: “ATOM” というタイトルは舶来の言葉ですが日本の誰もが簡単に読むことができます。 手塚治虫のATOMは死んだ息子の身代わりに作られ捨てられた悲しいロボットが活躍するという誰もが知っているお話です。そのおかげでとても親しみを感じていました。
“核”とか”コア”といった意味ですが、2015年現在の日本ではATOMという言葉はとてもデリケートな言葉になってしまいました。言葉は人間の考え方一つで良くも悪くも解釈できる、 この無味無臭でシンプルな言葉がとても気に入ったんです。 あと、今作のテーマの一つがSFだったので”もしもROTH BART BARONが世界を牛耳る悪の大企業だとしたらこのシンプルな社名だったら面白いんじゃないか”と思ってつけました。
星新一さんはまともに読んだことがありません。
Q4:”Glass Shower”, “X-MAS” では特に顕著ですが、ビンテージシンセの使用によるレトロフューチャー感が素晴らしいですね。アナログとデジタルが混在した時代の映画やそのテーマ曲を想起させてくれます。懐かしさと新しさ、そして ROTH らしさが見事にミックスされていますね。80~90年代のカルチャーは ROTH にとってどういった存在なのでしょう? 源流の1つと言えるのでしょうか?
【MIFUNE】: シンセサイザーはSolinaというオーケストラのストリングスを再現した古いシンセで、joy divisionなどで使われたりした素晴らしい楽器です。まるでこの世のものじゃない音がして、弾いた瞬間に幽霊に取りつかれたように背筋がぞくっとなるんです。
実際にちゃんとした記憶があるのは90年代後半、appleがカラフルなimacを発売したあたりが自分の育った景色だという印象があります。 80年代、90年代前半は少しおぼろげにどこか懐かしいような、映画や音楽で思い出す時代 です。その時代の残り香を感じられるハリウッドSF映画、例えばターミネーター、ロボコップ、ネバーエンディングストーリーなどを夢中になって見ていました。だから当時の コンピューターグラフィックスとアナログが複雑にミックスされた毒々しいあの映像体験 や街の景色は自分にとって避けては通れないような気がします。
Q5: 今作は前作以上に壮大でナチュラルなサウンドが素晴らしいですね。カナダのモントリオールでレコーディングを行ったそうですが、なぜその場所を選んだのですか?
【MIFUNE】: 家のスタジオでデモソングを作っていた時に、これはどうしてもストリングスがいるし沢山の楽器が必要だということになってしまったんです。
モントリオールのバンドの多くはとても実験的で不思議なサウンドを鳴らします。カナダの寒い大自然を感じさせるし、それでいてちゃんとポップなサウンドを持っています。ストリングスのアレンジもヨーロッパ的要素があって、彼らはどうしてこんなサウンドが作られるのかとても興味が湧いてきたんです。モントリオールにはGodspeed You! Black Emperorの本拠地とも言えるスタジオがあるんですが、彼らの持つノイジーでディストーションのかかったストリングスサウンドがこのアルバムにピッタリだと思ったんです。快く引き受けてくれたのでそこにしました。
Q6: アルバムでは、現地カナダのミュージシャンを多数起用し、様々な楽器を使用しています。日本人ミュージシャンとの違いを感じましたか? また ROTH は2人組ですが、例えばパーマネントなメンバーを何人か加えるという方法論を考えたことはありますか?
【MIFUNE】: 日本人だから、カナダ人だからと言って人を分けるのは好きではないのですが、その町並み、風土、食べ物、生き様は地域によって違いが出るのは自然なことだと思います。違いはあったほうが面白いですしね。現地のミュージシャンから受ける感じは日本のそれとは全然違います。
これはなかなか言葉で伝えることが難しいですが、日本の人は良くも悪くも真面目で、”型”を大事にし過ぎるきらいがあります。僕らのロックミュージックにはこの”型”が曲の持つ 空気を台無しにしてしまう時があるのです。一方で僕らがセッションしたカナダのミュージシャンはアイデアが型にはまらない自由な発想で曲に向かってくれるのです。
このバンドの良い所は良いアイデアは誰のでも採用するという所です。 別に二人でいることに固執しているわけではありません。 実際、ライブで演奏してくれているサポートメンバーは共に長いツアーを経験して、一つのチームのようになっています。このバンドは生き物のように形を変えて行くのだと思います。
Q7: 音楽的には例えば Godspeed You! Black Emperorのようなシンフォニックなポストロックだったり、ニール・ヤングのようなアコースティックでフォーキーなテイストだったり、ノイズだったり、そういったエクレクティックで実験的要素も勿論 ROTH の魅力ですが、同時に”電気の花嫁” のようなどこか懐かしさや切なさを感じさせる日本的でキャッチーなメロディーも ROTH の重要な要素ですよね? 三船さんの美しく揺らぐボーカルと相俟って非常に心を揺さぶられます。 特にリスペクトしているシンガー、メロディーメイカーはいますか? またポップと実験性のバランスについてはどう考えていますか?
【MIFUNE】: Neil Youngはもちろん尊敬しています。彼は古いものと新しいものとのバランスを常に考え、いくつになっても挑戦しようとしている姿勢はいつも励みになります、また同時に負けていられないという思いにさせてくれます。あとはScott Walker、Sufjan Stevens、Jeff Buckleyもとても大好きなシンガーです。
僕のコンピューターの中には滅茶苦茶な実験音しか入っていないゴミのようなトラックがいくつもあります。でもその他人が聞いたらゴミでしかないような実験から曲のアイデアが生まれるんです。
そうやって作っていく音楽はなぜか自然と歌と混ざり合いバンドの形になってゆきます。あまり実験的になりすぎて自分の世界だけに入ってしまい、聴く側の人間のことを考えていないものはあまり好きではないです。音楽にとって一番良いバランスを考えて作るようにしています。歩幅を合わせるといったほうが近いかもしれません。
Q8: 以前、吉田ヨウヘイさんにインタビューを行う機会があったのですが、ROTH や 森は生きているについて”音楽に関する考え方で近いところはあまりないような気もするので、尊敬している仲の良い友達” と答えていただきました(笑)
森は生きているは残念ながら解散を表明しましたが、実験的でありながらキャッチーという文脈で一緒に紹介されることも多いと思います。彼らについてはどう思っていますか? また海外でも国内でも他に共感を覚えるアーティストはいますか?
【MIFUNE】: 岡田拓郎も吉田ヨウヘイも素晴らしいソングライターです、同年代で音楽に真摯に向き合っていて、形は違えどそれぞれの目標に向けて頑張っています。心の奥でお互いを尊敬しているので僕らはしょっちゅう馴れ合わなくても良い関係が作れていると思います。
Bo Ningenは以前フジロックでライブをみましたが素晴らしいパフォーマンスでした。尊敬する先輩バンドです。
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