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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SUCCUMB : XXI】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHERI MUSRASRIK & DEREK WEBSTER OF SUCCUMB !!

“Including a Song About The Boxer Rebellion Was a Personal Choice Though It Does Have a Tie To The Album In Its Being Against Westernization And Christianity In Their Rejection Of Ancestor And Nature Deity Worship.”

DISC REVIEW “XXI”

「私には、リアルな部分でとても男性的な面があって、それが演奏するときに姿を現すことは認めるわ。そうやって生の感情や暴力的な態度を表現する自由があることに感謝しているのよ。ただ、ジェンダーを考慮することで私は男性と女性の興味深いダイナミクスを加えることができるわけだけど、だからといってジェンダーを考慮することが常に必要だとは思っていないわ」
人生の選択、クリエイティブな仕事をする上での選択、音に対する選択にかんして、SUCCUMB のボーカリスト Cheri Musrasrik は女性であることに囚われることはありません。それ以上にもはや、エクストリーム・メタル界の女性をめぐる会話は少し陳腐だと言い切る彼女の喉には、性別を超越した凄みが宿り、”The New Heavy” の旗手としてアートワークの中性神のように自信と威厳に満ち溢れています。
「ベイエリアとカナダのシーンから受けた影響を否定することはできない。この2つのシーンに共通しているのは、彼らは常にそれぞれのアートを新しい領域に押し上げる努力をしているということだよ」
超越といえば、SUCCUMB の放出するエクストリームな音像もすべてを超越しています。ベイエリア、カナダというヘヴィな音楽のエルドラドを出自にもつメンバーが集まることで、SUCCUMB は突然変異ともいえる “The New Heavy” を創造しました。洞窟で唸るブラストビートと野蛮なデスメタルから、ハードコアの衝動と五臓六腑を締め付けるノイズまでスラッシーに駆け抜ける SUCCUMB の “エクストリーム” は、最新作 “XXI” においてより混迷の色合いを増し、くぐもっていた Cheri の声を前面に押し出しました。同時に、BRUTAL TRUTH や NAPALM DEATH のようなグラインドコアから、フューネラル・ドゥームの遅重までエクストリームなサブ・ジャンルを網羅することで、遅と速、長と短、獰猛と憂鬱をまたにかける不穏な混沌を生み出すことに成功したのです。
「様々なジャンルのある種のお決まりをコピーペーストするだけでは、あまりにあからさまだし、必ずしも素晴らしい曲作りになるとは限らない。その代わりに、僕たちはそれらの異質なサウンドの間に存在する音の海溝を掘り下げようとしているんだ」
とはいえ、SUCCUMB の “クロスオーバー” は単なる “いいとこ取り” ではありません。だからこそ彼らの発する “無形の恐怖” はあまりに現代的かつ唯我独尊で、基本的はよりアンビエントで実験的なアーティストを扱うレーベル The Flenser にも認められたのでしょう。そう、このアルバムにはリアルタイムの暴力と恐怖が常に流れているのです。その源流には、環境破壊や極右の台頭、世界の分断といった彼らが今、リアルタイムで感じている怒りがありました。
「義和団の乱を選んだのは個人的な選択だけど、祖先や自然の神への崇拝を否定する西洋化やキリスト教に反対しているという点では、このアルバムの趣旨と関係があるのよね。私は太平洋の小さな島の出身なんだけど、その島は恐ろしい宣教師と彼らの間違った道徳によって、固有の文化や習慣の多くが一掃されてしまったの」
アルバムの中心にあるのは、自然や大地を守っていくことの大切さ。アルバム・タイトル “XXI” は21番目のタロットカード “The World” を指し示していますが、正位置では永遠不滅、逆位置では堕落や調和の崩壊を意味するこのカードはまさに SUCCUMB が表現したかったリアルタイム、2021年の “世界” を象徴しているのです。
特に、義和団の乱を扱った “8 Trigrams” には彼らの想いが凝縮しています。中国の文化や貿易だけでなく、自然崇拝や宗教まで制圧し植民地化した列強と、それに激しく対抗した義和団。中でも、道教の自然や四元素へのつながりと敬愛を基にした八掛結社は、先住民の文化や習慣を抑圧し軍事基地や核実験の場として使用された太平洋の島を出自にもつ Cheri にとっては共感をせずにはいられない歴史の一ページに違いありません。そうして、世界がまた抑圧を強いるならば、私たちが音楽で義和団になろう。そんな決意までも読み取れる壮絶な7分間でアルバムは幕を閉じるのです。
今回弊誌では、太平洋の島からベイエリアに移住した Cheri Musrasrik とカナダ出身 Derek Webster にインタビューを行うことができました。「90年代は音楽業界で “成功する” 可能性についての妄想を捨てるというメタル界の考え方の変化により、多くの実験が行われたんだよ。アーティストが自分たちのサウンドを進歩させるために外部のインスピレーションを求めるようになり、その結果、TYPE O NEGATIVE などのバンドが大成功を収めることになったように思えるね」どうぞ!!

SUCCUMB “XXI” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DESSIDERIUM : ARIA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEX HADDAD OF DESSIDERIUM !!

“Video Game Soundtracks Have To Be Addictive To Be Good. You Have To Be Able To Listen To Them For Hours On End And Still Enjoy It, And That’s Something I Strive For In My Own Music As Well”

DISC REVIEW “ARIA”

「あの頃の僕は全然正しい道を歩んでいなかったんだよね。自分の好きなことを追求しないことで、鬱屈とした感情を抱え、何かから逃れようと必死になっていた時期だった。それで、自分の夢に深く執着するようになったんだ。日記に記録したり、一日中夢のことを考えたりして夢はどんどん鮮明になり、離れられなくなっていったんだ」
DESSIDERIUM は、ロサンゼルスのサンタモニカの山で生まれ、アリゾナの砂漠と太陽の下で活動を続けている Alex Haddadの音楽夢日記。自らを熱狂的な音楽オタクと称する Alex は、生き甲斐である音楽を追求できずに悩み、そして自身の夢に囚われていきました。それは彼にとってある種の逃避だったのかもしれませんね。
“妄想は自己犠牲を招き、その苦しみは、外側の世界に自分の内なる感情を反映させたいという願いから、慰めを傷つきながら求めるようになる”。壮大なエクストリーム・プログ絵巻”Aria” のテーマは、アルバムの中で最もシネマティックな “Cosmic Limbs” なは反映されています。バンド名 DESSIDERIUM とは、ラテン語で “失われたものへの熱烈な欲望や憧れ” と訳される “Desiderium” が元になっています。そして彼は今、夢の中から自身の夢を取り戻しました。
「JRPG は長い間、僕の生活の一部だった。日本のロールプレイング・ゲームから得られる経験は、他の種類のゲームから得られるものとは全く別のものなんだよ。普段はゲームを楽しむためにプレイしているんだけど、JRPG はストーリー、雰囲気、アート、キャラクターとの関係、そしてもちろん音楽が好きでプレイしている。ビデオゲームという枠を超えているんだ。別世界へのバケーションのようなもので、そこまで没頭していれば、もちろん僕の書く音楽にも影響を与えているに決まっているよね」
日本のロールプレイング・ゲームの熱狂的な信者である Alex にとって、ゲーム音楽には何時間聴いても飽きない中毒性が必須です。彼の愛するゼノギアス、ファイナル・ファンタジー、ドラゴンクエストにクロノ・トリガーはそんな中毒性のある美しくも知的な音楽に満ち溢れていました。
DESSIDERIUM の音楽にも、当然その中毒性は深く刻まれています。そして彼の目指した夢の形は、狭い箱にとらわれず、ビデオゲームの作曲家、映画音楽、プログロックにインスパイアされた幻想と荘厳を、メタルのエナジーと神秘で表現して具現化されたのです。メランコリーと憧憬を伴った、まだ見ぬ時への期待と淡いノスタルジアを感じさせる蒼き夢。
「OPETH は、僕が最も影響を受けたバンドだろうな。OPETH を知ってから2年ほどは、彼らしか聴かない時期があったくらいでね。彼らの初期の作品は非常に悲劇的でロマンチックで、若くて繊細だった僕の心に深く響いたんだよ」
オープニングの “White Morning in a World She Knows” のアコースティックな憂鬱とメランコリックな美声の間には、明らかに OPETH の作品でも最も “孤独” で Alex 最愛の “My Arms, Your Hearse” の影を感じます。しかし、そこから色彩豊かなシンフォニック・プログレへと展開し、後に KRALLICE ライクなリフが黒々とした “複雑な雑音” を奏でると DESSIDERIUM の真の才能が開花していきます。さながら WILDERUN のように、DESSIDERIUM は OPETH との親和性をより高い次元、強烈な野心、多様なメタルの高みに到達するためのプラットフォームとして使用しているのです。
“Aria” が現代の多くの” プログデス” 作品と異なるのは、”The Persection Complex” が象徴するように、そのユニークで楽観的なトーンにあるとも言えます。Alex は、暗さや痛みの即効薬であるマイナースケールをあまり使用せず、より伝統的なメロディーのパレットを多様に選り分けて描いていきます。
パワー・メタル的な “ハッピー” なサウンドとまでは必ずしも言えないでしょうが、醸し出すドラゴンと魔法のファンタジックな冒険譚、その雰囲気は、ほとんどのエクストリーム・メタルバンドが触れることのできない未知の領域なのですから。そうして陰と陽のえも言われぬ対比の美学がリスナーを夢の世界に誘うのです。
今回弊誌では、Alex Haddad にインタビューを行うことができました。「スーパー・ドンキーコングを差したゲームボーイ・カラーを持ち歩き、ヘッドフォンをつないでゲームの一時停止を押すと、ゲームをプレイしなくてもサウンドトラックが流れ続けたのを鮮明に覚えているよ。僕はヒップホップのアルバムを聴いているようなふりをして、実はゲームの音楽に合わせて架空のラッパーが詩を歌うことを想像していた」もし、OPETH と YES と WINTERSUN が日本のロールプレイング・ゲームのサウンドトラックを作ったら。G(ame) 線上のアリア。そんな If の世界を実現するプロジェクト。どうぞ!!

DESSIDERIUM “ARIA” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CYNIC : ASCENSION CODES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PAUL MASVIDAL OF CYNIC !!

“Truly Unlimited Potential With The New Talent Out There. If Cynic Were To Continue I Could See It Acting More As a Collective In This Sense.”

DISC REVIEW “ASCENSION CODES”

「ショーン・マローンは2018年に母親を、2020年1月にはショーン・レイナートを失った。喪失感のダブルパンチで、マローンは大打撃を受けてしまったんだ。その後、パンデミックが起こった。すべてが閉鎖され、マローンの世界も閉ざされてしまった。痛みと苦しみが再び現れ、彼は光を失った…」
長年二人のショーンと人生を共にしたポール・マスヴィダルの言葉です。もちろん、2020年は人類全体にとって途方もなく困難な年として歴史に残るでしょう。しかし CYNIC の音楽を愛する人たちにとってはさらに困難な年となりました。1月に元ドラマーのショーン・レイナートが48歳で、12月にベーシストのショーン・マローンが50歳で早世。それはファンにとってまさに青天の霹靂でした。私たちでも激しいショックを受けたのです。公私ともに近しい関係にあったマスヴィダルの苦悩、そして喪失感はいかほどのものでしょう。
「神秘的な人生に身を任せることは、魂が成長するための偉大な “降伏” であり、そうすることで外界が自身に流れ込み、自分も外界に流れ込むことができるんだ。宇宙とつながるとでもいうのかな。つまり、人生に自然と起こることこそ、私たちの歩むべき道なんだ。起こることすべてが、与えられたギフトなんだよ」
しかし一人残されたマスヴィダルは、果てしない悲しみの中でも前へと進み続けます。喪失や悲劇でさえ成長のための贈り物と捉え、人生の流れに身を委ねる。死とは肉体の終わりであり魂の終わりではない。結局、人は皆量子レベルで互いにつながっているのだから。そんな彼の特殊な人生観、死生観、宇宙観は、マスヴィダルの心を泰然自若に保ち、CYNIC の新たな啓示 “Ascension Codes” をより崇高でスピリチュアルな世界へと導くことになったのです。
CYNIC とはメタル世界において、真の意味でのプログレッシブを指す言葉。トップレベルのパフォーマンス、大脳皮質に直接語りかけるような宇宙的哲学、そして実験と増殖を続ける音のエントロピー。デスメタル、プログ、エクスペリメンタル、ニューエイジ、ジャズ・フュージョンなど、CYNIC の世界は年を重ねるごとに音彩を加えながら、その色を交錯させていきました。しかし、4枚目のフル・アルバムの制作で CYNIC は、未曾有の困難に直面することになります。
「本来ならこのレコードは、”Kindly Bent to Free Us” の直後に作りたかったんだ。だけどすべてが崩壊してしまった…」
楽曲の一部は、2014年の時点で構想が練られていました。マスヴィダルによると、レイナートとマローンは、ここに収録されることになった楽曲の要素を聴いていたそうです。だからこそ彼は、亡くなった同志の思い出に敬意を表し、”Ascension Codes” “魂を昇天させるコード” というタイトルのアルバムを、ゆっくりと、慎重に、そしてマスヴィダルの言葉を借りるなら “愛と勇気を持って” 完成させたのです。
2015年にレイナートが CYNIC を脱退した後、マスヴィダルとマローンは彼の後任としてマット・リンチを起用。彼は”完璧な代役” 以上のものをバンドへともたらします。マスヴィダルはリンチのドラミングを “ハイブリッド・モダン・スタイル” と称しました。つまり、エレクトロニカなドラムン・ベースと、プログレッシブなアプローチの融合。繊細で多様な “Ascension Codes” に適役であるばかりか、絶妙な質感とリズムの地図を加えていきます。
「楽器としてのベースの役割を変える必要があったんだ。マローンのようなサウンドを期待して他の誰かを連れてくるのはフェアじゃなかったからね。私にとって彼はは現存する最も偉大なベーシストの一人であり、このレコードにおいてかけがえのない存在だった。アレンジを変えて、新しいサウンドにするしかなかったんだ」
では、マローンのベースを誰が置き換えるのか?マスヴィダルの答えは、”その必要はない” でした。”Ascension Codes” の中で聞こえるベース・ラインは、キーボード奏者のデイヴ・マッケイがシンセサイザーで演奏しています。彼はマローンの敏感なタッチを再現しつつ、CYNIC にドロドロとしたローエンドの可能性をもたらすことになります。そうしてここに、マスヴィダル曰く、”未来のリズム・セクション” が完成をみます。
「新しい才能を持った人たちは本当に無限の可能性を秘めているよ。仮に CYNIC がこれからも続いていくのであれば、そういう人たちを集めて、バンドというよりはより集合体としての役割を担うのかもしれないね」
“Ascension Codes” のビジョンを達成するために、マスヴィダルは新メンバー、アートワークやプロデュースだけでなく様々な若く才能に満ち溢れた音楽家をも多数起用しました。THE SURREALIST や DARKの活動で知られるルーパン・ガーグは、”コード・ワーカー”として、ハープのような天上のギター・テクスチャーを、EXIST のマックス・フェルペスは “ホログラフィック・レプティリアンボイス” を、オーストラリアの天才プリニは”The Winged Ones” にソロを提供しています。核となる二人のショーンを失った今、CYNIC の魂は新たな才能たちの宿り木として、死を迎えるのではなく形状を変えることにしたのかもしれません。
「コードのタイトルは、奏でられるべきサウンドを意味していてね。これらはそれぞれ、私たちの DNA に存在する、対応するコードを起動させる役割があるんだ」
様々な “仕掛け” を配し、その音の葉自体も野心的な”Ascension Codes” ですが、メインとなる9曲には爆発的な色彩とエネルギーが注ぎ込まれており、これらの楽曲には “アセンション” のための “コード” が埋め込まれているのです。”Mu-54*”、”A’va432″…だからこそ当然このレコードは全体を通して聴くべき作品です。それでも、推進力と冒険に満ち、刺激的な起伏が心を揺さぶり、数学的な配列と目まぐるしいダイナミズムが頭を悩ます “Mythical Serpents” のように、万華鏡のような激しさと折り目正しい規律の二律背反を背負った CYNIC の哲学はたしかに受け継がれています。
一方で、アルバムを締めくくるヘヴィでエセリアルな”Diamond Light Body” はリンチの非人間的なパターンを用いた非常に密度の高い楽曲で、彼らにとって新たな領域のように感じられる不可思議でメロディックなシーケンスが印象的。この曲の美しい緊迫感は否が応でも “形を変えた” CYNIC の未来を期待させてくれるでしょう。
“Ascension Codes” は、これまでの CYNIC のアルバムの中で最も謎を秘めたレコードであると同時に、前作よりもプログレッシブで重量感を伴ったサウンドが封じられています。そして失われたものを慈しみ補うかのように作品に携わるアーティストが増えたことで、アルバムの地平は広大にひろがっていきました。
多くの探求と喪失の後、CYNIC はあらゆる魂との一体感を獲得しました。それは神秘的で聖なる悟りの境地。これが最後の旅路となるのかどうかは “宇宙” のみぞ知るといったところですが、CYNIC の物語は “Ascension Codes” でひとまず完結をみます。「二人の肉体は姿を変えたけど、そのエネルギー体は永遠に宇宙を旅するような超越的音楽を私たちに与えてくれている。苦しみに直面しながらも、多くを与えてくれる創造的な存在と人生の一部を共有できた。感謝してるよ」Paul Masvidal インタビュー。日本盤は DAYMARE RECORDINGS から。ライナーは私、夏目進平が執筆。ニ度目の登場。どうぞ!!

CYNIC “ASCENSION CODES” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIRST FRAGMENT : GLOIRE ETERNELLE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PHIL TOUGAS OF FIRST FRAGMENT !!

“Japanese Power Metal Bands Like Saber Tiger, Galneryus, Versailles, etc Sing In Their Own Language And It Fits Their Music Much Like Quebec French Fits Our Own Music Best. We Will Continue To Do So.”

DISC REVIEW “GLOIRE ETERNELLE”

「ARCHSPIRE の音楽は、正確で、数学的で、冷たく、残忍で、容赦なく、人間離れした速さで、怒りに満ちていて、極めてよく計算されている。対して FIRST FRAGMENT の音楽は、折衷的で、有機的で、時に緻密で、時に即興的で、陽気で、時に楽しくて痛快で、時に悲劇的でメランコリックなんだ。だから私は FIRST FRAGMENT を “エクストリーム・ネオクラシカル・メタル” と呼び、ARCHSPIRE を”テクニカル・デスメタル” と呼んでいる」
現在、メタル世界で最高峰のテクニック、そしてシュレッド・ファンタジーをもたらす場所がカナダであることは疑う余地もありません。先日インタビューを行った ARCHSPIRE がメカニカルな技術革新の最先端にいるとすれば、FIRST FRAGMENT はシュレッドのロマンを今に伝える黄金の化石なのかもしれませんね。奇しくも同日にリリースされた “Bleed The Future” と “Gloire Éternelle” は、正反対の特性を掲げながら、テクニカルなエクストリーム・メタルの歩みを何十歩、何百歩と進めた点でやはり同じ未来を見つめています。
「2007年のことを思い出してほしい。ケベック州のモントリオール地域では、デスメタル、ブラック・メタル、デスコアが主流だった。今でもそうだけど、その時期はさらにその傾向が強かったんだよね。だから私のようなエッジの効いた矛盾した人間にとっては、フラストレーションの溜まる時代だったよ」
VOIDCEREMONY, EQUIPOISE, ETERNITY’S END, FUNEBRARUM, ATRAMENTUS…。おそらくメタル世界でも最も多忙なギタリストとして知られる Phil Tougas は、MARTYR, CRYPTOPSY, AUGURY などが闊歩するテクデスの聖地ケベックに生まれ、だからこそ別の道を進むことを決意します。91年生まれ、まだ30歳にもかかわらず、Yngwie Malmsteen, RACER X, CACOPHONY, Tony Macalpine, Joey Tafolla (!!) といったシュラプネルの綺羅星にどっぷりと浸かりながらそのギターの鋭利を研ぎ澄ませていきました。
一方で、同世代に同じ趣味のプレイヤーがいなかったことから、MORBID ANGEL や NECROPHAGIST といったエクストリームの涅槃にも開眼し、FATES WARNING や ELEGY (!!) のプログ・パワーまで吸収した Phil は、FIRST FRAGMENT で “エクストリーム・ネオクラシカル・メタル” を創造するに至ります。グロウルを使えばデスメタルなのかい?という問いかけとともに。
「私たちのリフはすべて、ネオクラシカルなパワーメタルのコード進行で構成されている。デスメタルは砕け散り、重く、邪悪で残忍だ。FIRST FRAGMENT はインテンスの高い音楽だけど、これらの特徴はどれも持っていないし、その気もないんだよね。ゆえに、デスメタルではない」
バロックやロマン派のクラシック音楽から、フラメンコ、ジャズ、スウィングやファンク、ネオクラシカルなパワーメタル、デスメタル、プログレッシブ・メタル.。ジャンルを踊るように融合させ、大きなうねりを呼び起こすという点で、FIRST FRAGMENT の右に出るバンドはいないでしょう。そしてその華麗な舞踏会を彩るのが、Phil Tougas, Nick Miller, Dominic “Forest” Lapointe のシュレッド三銃士。
「ソロ・セクション自体は、通常のツイン・ギターではなく、私が “トリプル・リード・アタック” と呼んでいるものなんだ。このアルバムでは、ベースがギターの役割を果たし、ベースがギタリストと同じ数のソロを演奏し、合計30のベース・ソロを演奏するという、メタル・バンドの中でも珍しいことを成し遂げている」 の言葉通り、すべての弦楽器が平等に、鮮やかに、驚異的な指板のタップダンスを踊り尽くします。特筆すべきはリードが放つ揺らぎやエモーション、そしてサプライズで、近年大半を占めるレールの上を滑らかに進むようなソロイズムとは明らかに一線を画しています。例えば、RACER X や CACOPHONY が絶対的な楽曲、リード、プロダクションばかりを誇っていたかと言えば答えは否かもしれません。しかし、あの時代のギタリズムには予測不能のびっくり箱が無数に用意されていました。FIRST FRAGMENT にも宿る同様のシュレッド・ファンタジーは、アルバムのテーマと同じく音の輪廻転成を信じさせるに十分でしょう。
「SABER TIGER, GALNERYUS, VERSAILLES といった日本のパワーメタル・バンドは日本語で歌っていて、それはケベックのフランス語が私たちの音楽に一番合っているように、彼らの音楽にも合っているよね」
アルバム全編をフランス語で歌うエクストリーム・メタルという意味でも、FIRST FRAGMENT は文字通り “はじめてのカケラ” だと言えます。彼らの母語に潜む哀愁とラテンの響きは、アルバムの根幹をなすフラメンコとクラシカルな響きと絶妙に混ざり合い、ELEGY が “Spanish Inquisition” で成し遂げた夢幻回廊の奇跡を現代のメタル世界へと呼び戻すのです。
今回弊誌では、Phil Tougas にインタビューを行うことができました。「Tony MacAlpine, Joey Tafolla, ELEGY の Henk Van Der Laars。この3人のギタリストは今でも私の最大のヒーローだと思う」まさにメタル温故知新の最高峰。エルドラドならぬシュレッドラド。どうぞ!!

FIRST FRAGMENT “GLOIRE ETERNELLE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RIVERS OF NIHIL : THE WORK】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRODY UTTLEY OF RIVERS OF NIHIL !!

“It Is Absolutely Possible To Have The Singular Focus Of Your Idealized Art, You Just Have To Be Willing To Put Off All Of The Things That We’ve Been Raised To Believe Are Necessary Components Of What Makes a Life Fulfilling And Meaningful.”

DISC REVIEW “THE WORK”

「ロックダウンは、閉じこもって腰を据え、これまで以上にクリエイティブな作業に没頭する絶好の機会となったんだ。当時、世界で起こっていたすべてのことを考えると、もう二度とバンドとして一緒に音楽を演奏することはないだろうと思えてね。だから、ある意味では最後のアルバムになると思って書いていたのかもしれないよね」
ペンシルバニア RIVERS OF NIHIL は、本質的な意味でのプログレッシブな要素と、付け焼き刃とは正反対のクリーンな歌唱を着実に取り入れ、シーンの中で傑出した存在となったエクストリーム・メタル・アンサンブル。2018年の “Where Owls Know My Name” でプログレッシブ・デスメタルの最先端を書き換えた彼らは、最期を意識し不退転の決意で臨んだ “The Work” においてまさに堅忍不抜、パンデミックという冬の情景を誰よりも克明に、さながら名作映画ように深々と映し出してみせました。
「”The Work” は間違いなく四部作の終わりを告げる作品なんだ。僕たちのこれまでの4枚のレコードは、それぞれ季節を表していてね。”The Conscious Seed of Light” は春、 “Monarchy” は夏、”Owls” は秋、そして “The Work” は冬なんだよ。冬というのは心の状態も表している。長い間、落ち込んだり、絶望したり、不安になったりする心の状態は、アメリカの北東部で経験する冬とよく似ているんだ」
最も困難で予測不能な季節。冬に託されたそんなイメージは、そのまま “The Work” の音楽にも当てはまります。冷たく機械的な極端さと、有機的な暖かさや適切に配置されたメロディが絶妙に混交した “Owls” がある意味万人受けする秋だとすれば、野心的で、瞑想的で、変化に富んだ超越的な “The Work” はすべてを受け入れるために時間を要する冬の難解そのものなのかも知れません。厳しくて冷たい不可解な世界。しかし最後に到達するのは肉体的、精神的、感情的な満足感です。
「自分の理想とする芸術に集中することは絶対に可能だよ。ただ、自分の完璧な芸術的ビジョンにすべてを捧げたいのであれば、人生を充実させ、意味のあるものにするために必要であると信じられてきたすべてのものを喜んで捨てなければならないんだ」
アルバムに込められたメッセージは、リスナーに内省を促し、人生をより本質的な価値のある、意味のあるものにしていくこと。”The Work” “仕事” とはいったいなんのための仕事なのか。自分の人生を生きるという、簡単なようで実に難しい不可能にも思える命題こそ彼らの魂。それがパンデミックであれ、大統領選であれ、アートワークの分断された世界においても、黙々と光の中で音楽を作り続けたのがインタビューの回答者である Brody Uttley であり、RIVERS OF NIHIL でした。つまり、パンデミック、冬という厳しい季節においても、不撓不屈の精神さえあれば心の充足、魂の浄化は必ず得られるのです。
「多くのバンドが、よりプログレッシブなサウンドに向かうにつれて、ヘヴィーな瞬間、その激しさを失っていく傾向があると思うんだ。でもその要素を完全に捨ててしまうのは愚かなことだよ。というのも、僕たちはヘヴィーな要素を “絵画” の “色” として使うことに長けているからね。僕たちは “プログレッシブ” というものを自分たちのやり方で表現したかったんだ」
冒頭の “The Tower (Theme from The Work)” は、そのテーマと音楽の両方で、アルバムの本質を伝えます。荘厳で幽玄なピアノに始まり、悲しくも不吉な歌詞が寒々としたジャズ・メタルの世界を彩ります。アレンジにも工夫が施され、サックスやパーカッションといった “アウトサイド・メタル” な音色が心に残る響きを加えていきます。ボーカリスト Jake Dieffenbach が、最終的にトレードマークであるグロウルへ到達するまでの RIVERSIDE にも似た穏やかな不安感が、何よりもこの冬のアルバムを完璧に表現しているでしょうか。
実際、このアルバムには穏やかに、緩やかに、内省的で多面的なダイナミズムの断片が散りばめられています。ほとんどラジオ・フレンドリーと言えるほどポップで、ストレートなリズムにクラシック・ロックのギターソロまで認めた “Wait”、AYREON や PINK FLOYD のサイケデリックな宇宙に “Tower 2″ のアコースティックな響き。一方で、”Dreaming Black Clockwork” や “Focus” には NINE INCH NAILS を想起させるインダストリアルで凶暴な冷酷と混沌が封じられています。
クライマックスはアルバムの最後を飾るトリロジー。繊細で、ミニマルで、アンビエントで、爆発すれば荘厳壮大、咽び泣く音の壁、ディストピア的邪悪なノイズの連射。Brody が最近の愛聴盤に MOGWAI や DEAFHEAVEN, RADIOHEAD を挙げているのは、アルバムを紐解くためのちょっとしたヒントなのかもしれません。ポスト・ロックやポスト・メタルをデスメタルの側から解釈したようなダイナミズムと激情の26分は、このバンドがどれほどすべてを投げ打ってアートに捧げているのか、変化を恐れない人間たちなのか、それを証明するに十分な音のメッセージだと言えるでしょう。
今回弊誌では、リード・ギタリストでキーボードもこなす Brody Uttley にインタビューを行うことができました。「典型的な人生の青写真に従わない人は真のヒーローで、僕にとって常に刺激的な存在なんだ」 二度目の登場。どうぞ!!

RIVERS OF NIHIL “THE WORK” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【CARCASS : TORN ARTERIES】


COVER STORY : CARCASS “TORN ARTERIES”

“We’ve Always Been Self-referential. There Are Links Like That Between Every Album. It’s Just This Lovecraft-ian Mythos That Carcass Has Built, This Multiverse. There Are Bookends On Either End Of What Carcass Does, And We Have To Fit Within Those Parameters”

VEGE-HEARTS

CARCASS の “Torn Arteries” は、2021年にリリースされるエクストリーム・メタル作品の中でも最も期待されている作品の一つでしょう。しかし、Jeff Walker は、ファンの一部がこの作品を気に入らないことを想定しています。
「実は、このアルバムに対する反発を期待しているんだ」
Jeff のその予想は、コロナ・ウイルスに関連した数え切れないほどの混乱、それが一つの要因となっています。”Torn Arteries” は、リバプールの残虐王にとって再結成後2作目、通算7作目、8年ぶりのフルアルバムで、当初は2020年に発売される予定でした。しかし、グルーヴと暴力的に満ちたリードシングル “Under the Scalpel Blade” がリリースされた直後、パンデミックによってその計画は吹き飛ばされ、アルバムは1年以上も棚上げされてしまいました。
その長い “待ち時間” は、ただでさえモダン・メタル時代に降臨した野蛮で濃密な最高のカムバック・レコード “Surgical Steel” からの8年間で上がりきっていたハードルの高さをさらに押し上げてしまいました。ゆえにJeff は、ネット上の荒らしがこの作品について何かしら文句をつけること、そんな反発はすでに織り込み済みなのです。
「”Surgical Steel” は非常に評判が良かったから、今回反発があることはわかっているんだよ。だからある意味、”Torn Arteries” は “2番目に難しいアルバム” なんだよね。個人的には、多少のネガティブな意見も覚悟しているよ…」
Bill Steer も楽観的でありながら慎重です。
「このアルバムは “Surgical Steel” よりも優れていると感じているけど、同様に、今回はより多くの非難を浴びることを覚悟しているんだ。以前のように、人々を驚かせることはできないからね。
2013年に長い間休んでいたのに、レコードを出すと聞いた人たちは、当然のことながら、”ああ、これはくだらないものになるだろうな” というような想像をしてたわけで。だから、”Surgical Steel” が比較的良いものであることがわかったとき、多くの人はある種のショックを受けたんだ。でも、あんなことはもう二度とないんだよ」
実際、あの魔法のような “Surgical Steel” の制作にあたって、Jeff はファンが期待している “Necroticism” や “Heartwork” のような作品にしようと意識したのでしょうか、それとも自然にそうなったのでしょうか?
「自然に出てきたものだよ。あまり意図的に考えたわけではないんだ。正直に言うと、50曲を録音たけど、それらは非常にバラエティに富んでいて、その中で意図的に CARCASS のある時代やスタイルを選んだわけではないんだよ。意図的にそれをやるとすぐに CARCASS のように聞こえてしまうんだよね。
腰を据えて古いアルバムを聴いたわけではなく、自然と自分たちの音楽を演奏するようになっているんだ。だから、”Heartwork” や “Necroticism”, “Swansong” あるいは “Symphonies” や “Reek” に似ているところがあったとしても、それは純粋に偶然の産物なんだよな。ある意味で、あのアルバムは俺たちの過去を固めたものだ。俺たちがやってきたことを再現しようと意図的に試みたものではなくね。そうなったのは偶然の産物だよ。ある意味では、自分たちのバックカタログを集約して、1枚のアルバムに圧縮したようなものかな」

パンデミックは、断裂した動脈から血が溢れ出るのを大幅に遅らせました。1年半の間、どんな想いで Jeff はリバプールに籠っていたのでしょうか?
「最初は家のリフォームをしていたんだけど、すぐに飽きてしまったよ。ちょっと情熱が冷めてしまったね。最終的にはそこにたどり着くだろうが。80歳になっているかもしれないけどね。俺は解体は得意だが、建設や装飾にはそれほど熱心ではないということに気づいたよ。自転車にも少し乗っているし、歩くことも増えた。
不思議なもので、年齢を重ねると1日の時間が足りなくなるものなんだけど、俺は今、何もしないことの専門家のようさ。この暑さの中では、肉体労働をする気にもなれないしね。CARCASS の強制的な休止も、最初は悪くなかったんだけど、長引いていて、正直なところ終わりが見えないんだよね」
Bill Steer は、常に自分のギタープレイを新たな分野に押し進めてきました。グラインドコアのパイオニアであるNAPALM DEATH での冒険や、印象的な CARCASS の作品群、FIREBIRD, GENTLEMANS PISTOLS, ANGEL WITCH におけるストーナー、リフ・ロック、クラシック・メタルの表現まで、彼のギタースキルは80年代半ばに登場して以来、変化を遂げながら注目を集めてきたのです。ゆえに、このパンデミックの過ごし方も彼らしいものでした。
「エレクトリック・ギターよりもアコースティック・ギターを弾くことが多かったね。それは、エレキの場合観客に届くということを、ある程度想定していたからだと思うんだ。エレクトリック・ギターはそのために発明されたのだからね。だから、小さなアコースティック・ギターを手にすることは、より意味のあることだったんだよ。
ここには私と2つの小さな部屋があるだけだ。深い監禁状態が続いている間、私はこの楽器を選んでいたと言っても過言ではないだろうな。最近になって、またエレキ・ギターを手にするようになったんだ。非常に新鮮な気分だよ。アコースティックではできないことがたくさんあるからね」

誰にとっても予測のできない、日常とはかけ離れた事態。Jeff は自身の抱える病気との戦いも気にかける必要がありました。
「レーベルからは2020年にリリースするというオプションも与えられていたんだけど、俺が延期するという経営判断を下したんだ。振り返ってみればそうすべきだったのだけど、つまり、去年リリースすることもできたわけだよ。
ただ、明らかに俺はこのパンデミックがこれほど長引くとは思っていなかった。豚インフルエンザも鳥インフルエンザも、俺たちの生活にはほとんど影響を与えなかっただろ?半年くらいで終わるだろうと思っていたんだけど、明らかに間違っていたね。俺には動脈瘤の治療も必要だったし。でも正直なところ、これが8年後に発売されても問題はなかったと思うよ。今のままのサウンドさ。古くなることはない。ただ、CARCASS のサウンドなんだよ。
もちろん、実際に聴いてみると、もっとこうすればよかったと思うこともいくつかあるけど、リスナーにとっては劇的に何かが変わるわけではなく、ちょっとした微調整に過ぎないんだ。だから、俺たちはアルバムをベッドに置いて、それで終わりにしたんだよ。FEAR FACTORY のように、何かを作り直すようなことはしていないさ。すでに十分な時間を費やしているのからな」
それにしても、8年は長い長い “待ち時間” でした。
「Bill と Dan は、2015年頃からジャムを始めたんだよ。その頃には、”SURGICAL STEEL” のプロモーションも一段落して、ちゃんとした曲を作ってスタジオに入りたいと思っていたんだよ。でも、SLAYER のツアーのオファーがあったんだ。それからもずっとオファーを受け続けていてね。とても魅力的で、オファーが来たら断るのは難しいんだが、俺たちはレコーディングをしたくてたまらなかった。1回のセッションですべてを行うことは無理だから、ギグの前後にもレコーディングをを行っていたよ。
基本的にバンドはずっと仕事を続けていたから、パンデミックで強制的な休止期間があったのは良かったと思うよ。でも、1年以上も一緒に演奏していないから、今はちょっとヤバいね。俺たちは錆びついているかもな」

ただし、Jeff のそんな皮肉の数々とは対照的に、”Torn Arteries” はバンドのハードコア・ファンのために作られた作品に思え、CARCASS の “腐りきった” 遺産の痕跡がそこかしこに散りばめられています。
ブラストの慟哭 “Under the Scalpel Blade” は、1993年のランドマーク “Heartwork” のグロテスク&プログレッシブな飢餓感を彷彿とさせますし、タイトル曲 “Torn Arteries” では、当然のように手術台での惨事を口にする Jeff がいます。”自然発生的な冠動脈梗塞/椎骨の一過性虚血発作”。しかし、同時に彼は “In God We Trust” で気候変動の恐ろしさを発するする際にも同様に厳しい表情を浮かべており、処刑の物語である “Dance of Ixtab (Psychopomp & Circumstance March No.1) ” では Death & Roll のグルーヴの上で絞首刑の再現を試みています。
CARCASS は長い間、デスメタルや自身に対するメタ的なアプローチを続けながら、自らのレガシーを維持しているのかも知れませんね。1989年のアルバム “Symphony of Sickness” が2年後の “Necroticism: Descanting the Insalubrious” に収録された “Symposium of Sickness” へ受け継がれたことを覚えているファンも多いでしょう。”Torn Arteries” は、その自己言及的な慣習をしっかりと踏まえています。アルバム・タイトル “Torn Arteries” は、オリジナル・ドラマーの Ken Owen が作った古いデモにちなんでいますし、”Wake Up and Smell the Carcass” は、90年代にバンドが制作した同名のビデオ・コンピレーションにヒントを得ています。
「バンドとは何かという本質的なテーゼから、どこまでも逸脱することはできないよ。それを怠慢だとは思わないし、盗作だとも思わない。相互に関連づけておくのがクールなのさ」
もちろん、”Eleanor Rigor Mortis” は、THE BEATLES の “Eleanor Rigby” にちなんだタイトルですが、CARCASS が BEATLES に言及したのはこれが初めてではありません。”Heartwork” の “Buried Dreams” には、”All you need is hate” という一節が登場していました。
「”Eleanor Rigor Mortis” は多分、行き過ぎたジョークだと思うよ。これは初期の頃に考えていたタイトルで、当時はちょっと安っぽすぎると思っていたんだよな。でも、気に入っていたからこそ、また引っ張り出してきたんだよ。考えたのが Ken だったのか Bill だったのかかはわからない。1986年の時点ではやり過ぎだったかもしれないけどね。
ただ、今の多くの人は、これが BEATLES の引用であることを理解できないと思うよ。理解できると思うなら、それは若い世代の平均的な文化的知性を過大評価しているんだ。BEATLES を聴いたことがない世代もいる。BEATLES を知っていることで、俺たちは自分の年齢を明かしているのさ。
俺たちは、若者と同じ芸術的感情を共有しているとは思ってないからな。自分のために音楽を作っているし、もう50歳を超えた。ティーンエイジャーや20代半ばの人々など、幅広い層にアピールしようとは思っていないから」
音楽的に、THE BEATLES と CARCASS の “Eleanor” はこれ以上ないほどに離れています。しかし、どちらもそれぞれの方法で、死について考えています。
「”Eleanor Rigby” は、とても陰鬱な曲だ。俺たちの曲は、陰鬱ではないと思うけどそれでも十分に病的だ。でもとてもコミカルで皮肉な曲だとも思うよ。変態的で、奇妙で、ひねくれたラブソングなんだよ。死体愛好家のことではないだろう。いや、もしかしたらそうかもしれない。死体への性的虐待の歌かもな」

“Eleanor Rigor Mortis” は初期に作られた楽曲のタイトルで、”Wake Up And Smell The Larcass” も90年代のビデオ・コンピレーションで使われていました。音楽的にも初期とのつながりは存在するのでしょうか。
「俺たちはいつも自己言及的だよ。どのアルバムにもそういったリンクがある。CARCASS が構築したラヴクラフト的な神話、つまり多元宇宙のようなものさ。でも俺たちがやっていることの両端にはブックエンドがあって、そのパラメーターの中に収まらなければならないんだ。
“Wake Up and Smell the Carcass” は基本的には “Caveat Emptor” という曲が始まる前の音楽の部分のタイトルなんだ。俺とってその部分は、”Symphony of Sickness” の “Ruptured in Purulence” のイントロのようなものを、キックアップしてグルーヴィーに、そしてモダンにしたものだ。このタイトルを付けないこともできたんだが、2つの独立した作品であるというアイデアが気に入ったからね。”Wake Up and Smell the Carcass” は、明らかに完全な曲ではなく、3つのリフで構成されている、”Caveat Emptor” のきっかけとなったものだ」
CARCASS の “パラメーター” で欠かせないのが医学的なリリックの数々。これはどこまで医学的に “正確” なのでしょうか?
「CARCASS を聴いて、医者や病理学者、獣医になった人や、肉を食べるのをやめた人に会ったことがある。彼らの中の誰かなら、これが正確かどうか確かめることができるかもしれないな」
“Dance of ixtab” の “you’re so jugular vane” のように、アルバムの中にはグロテスクなダジャレがいくつも登場します。
「誰かが言ったことややったことを繰り返したり、決まりきったことを避けているんだ。そうすれば、結果的に賢く聞こえるようになる。見た目ほど賢くはないが、俺たちは他の人からの盗用を意図的に避けているんだ。真似したくないんだよな。
俺は、そうやって歌詞を書いている。リフを書くのと同じで、メモを取って貯めているんだ。そして、それらを文学的な散弾銃のカートリッジに装填して、紙に向かって撃ち、何が刺さるかを見るんだよ。”Torn Arteries” の歌詞を書き出すときは、ほとんど1回のセッションで完成したね。ベルギーのサウンドマンのところに行って、デモを持って彼と1週間過ごして、ひたすら歌詞を書き続けた。これまでにやったことのないことさ。今までは、いつも素材の大部分を書き、時間をかけて微調整していたんだ。でも今回は、その異なるアプローチが気に入ったんだよな」
アートワークの “ベジタブル・ハート” はまさにその意表を突いた “異なるアプローチ” を象徴しています。
「これまでにやったことのない、白を基調としたとてもクリーンなデザインだよ。邪悪さやデスメタルらしさはないけど、コーヒーテーブル・ブックのような清潔感が気に入っている」
異なるアプローチといえば、”Flesh Ripping Sonic Torment Limited” のような構造は、これまでと異なるアプローチの典型でしょう。10分を超えるバンド史上最も長い曲で、中間部にはドゥーミーなクリーンセクションやブルージーなチャグも備えています。
「ある意味 “放り投げた” というか。意図的に長い曲を作り、できるだけ多くのリフを詰め込もうとしたんだよ。まあ、笑いのためとは言わないが、そこまで不遜ではないし、投げやりでもない。もちろん、良い曲にしたいと思っているからな。MERCYFUL FATE の影響を受けているかも知れないね。
ただ、過去に “Necroticism” のいくつかの曲でそうしようとはしたんだ。10分を超えたことはなかったと思うけど。”Surgical Steel” では、”Mount of Execution” はどのくらいだったかな、9分? 特に “Mount” が面白いのは、演奏していてもそれほど長く感じないことなんだよな。”Flesh Ripping” がそうなのか、そうでないのかはまだわからないけどね。リフの数を数えてみたら、18個か19個あった。多いような気がするんだが、必ずしもそうではないんだよな」

Bill Steer は “Torn Arteries” に影響を与えた10枚のアルバムを挙げているのですが、その筆頭は奇遇にも MERCYFUL FATE の “Melissa” です。
「あのアルバムには “Satan’s Fall” が入っているからね。あんなにエッジの効いた曲を他に知らないよ。JUDAS PRIEST, URIAH HEEP, SCORPIONS の影響はたしかに感じるんだけど、それを遥か彼方に進めている。だから彼らが好きなんだ。
他にこの作品に影響を与えたのは、SAXON の “Wheels of Steel”, JUDAS PRIEST の “Killing Machine”, RAVEN の “Rock Untill You Drop”, SCORPIONS の “Lovedrive”, NAZARETH, WARGASM, ZOETROPE, それに BLUE MURDER のファースト・アルバムだね。あのアルバムは音楽的にヤバいね。クラッシック・ロックを基調にしたパワートリオだけど、John Sykes は彼が WHITESNAKE で打ち立てたアイデンティティーを、別のステージに運んだんだよ」
不遜といえばレコードの中で最も不遜な瞬間は、”In God We Trust” でのハンドクラップのセクションでしょう。 Jeff が説明します。
「メロトロンやピアノ、タンバリンなどのパーカッションを加えることで、過去にはバンドメンバー間で激しい議論があったと思う。誰かが抗議のために部屋から出て行ったかもしれない。でも、誰かがアイデアを持っているなら、それを試してみようと思うよ。いいと思ったら、やってみようってね。
ハンド・クラップについては、スタジオでのちょっとした楽しみかな。”Dance of Ixtab” のイントロでの足踏みとハンド・クラップもそうだけど、これはそれほど大きな音でミックスされていないかもしれないね。俺たちはただ、笑いとちょっとした楽しみのために試してみたのさ。そうじゃなきゃ、スタジオで干からびちまう。もちろん、CATHEDRAL がハンド・クラップを発明したわけではないけど、ヘヴィー・ミュージックにおいては、彼らを参考にしているよ」
“Necroticism” といえば、1991年にリリースされたあのアルバムの30周年から2週間後に、”Torn Arteries” がリリースされました。ノスタルジックな趣向にも思えます。
「俺は知らなかったし、気にもしていなかったよ。俺は、バンドが何かの20周年を祝うとか、あまりにも無意味なことだと思うぜ。”なんてこった……よくやった! もう20年もやってるのか!” …それがどうしたんだ?
まあでも、皮肉なことに、俺らが “Torn Arteries” でやっていることのいくつかには、ちょっとしたノスタルジアがあるんだ。正直なところ、それもさっきの自己言及の話なんだけど、自分たちの系譜というかね。ファースト・アルバム “Reek of Putrefaction” に戻って、Dビートを使っているんだ。そうやって、影響を受けたのは自分たちの過去のものかもしれない。だから、俺たちがそこまで先進的だとは言わないよ。ただ、必ずしも自分たちの過去を完全に焼き直しているわけではないんだよね。このアルバムはノスタルジックなものではないと思うけど、俺らは過去をとても意識しているし、そうしなければならない。それがこのアルバムに強さを与えていると思う」

ノスタルジアといえば、脳血栓症でプレイが難しくなったオリジナル・ドラマー Ken Owen について、”Surgical Steel” で彼らはこう語っていました。
「信頼性を高めるためにも、バンドの歴史を維持するためにも、Ken に全体の一部であると感じてもらうことは重要だと思う。CARCASS は俺や Bill と同じように彼のバンドでもあったから、彼を歴史から消し去ることはできないんだよ。アルバムで彼がドラムを叩けないからといって、彼を無視するわけにはいかないんだ。彼がドラムを叩いていなくても、ドラムや歌詞、アイデアの中に彼の存在を感じることができるのは、彼が CARCASS のコンセプトの一部だからだ。CARCASS で当たり前のように使っているアイデアの多くは、彼から生まれたものなんだ。
彼は15年前に昏睡状態に陥り、2度の脳手術を受けた。もう二度とドラムは叩けないよ。なぜ、人々は彼が奇跡的な回復を遂げることができると考えるのだろうか?彼は回復して、可能な限り健康な状態に戻った。だけど完全に回復することはないんだ…」
Jeff にとって唯一残された相棒ともいえる Bill Steer はどういった存在なのでしょうか。
「CARCASS を機能させるために、お互いに何かを引き出しているんだ。Hetfield と Ulrich のような関係だよな。あの二人の関係を見れば、本当は愛し合っていないのに共依存していることがわかるだろ?Hetfield は Ulrich にできないことをテーブルにもたらし、その逆もある。それは俺と Bill も同じなんだ。Bill のリズムは Hetfield。ビジネス志向で意欲的な俺は Ulrichだよ」
あの METALLICA に例えても違和感がないほど、今の CARCASS はメタル世界である種の “権威となっています。
「トム・ハンクスがビバリー・ヒルズでパーティーを開いていて、友人たちに “Reek Of Putrefaction” を聞かせていたという記事を何年も前に雑誌で読んだことを覚えているよ。もしかしたら、どこかの軟弱者が勘違いして、(デスメタル・ファンとして知られる)ジム・キャリーのことを言ったのかもしれないがね。あるいは、私の記憶がそうさせたのかもしれない。とにかく、俺の中のナルシストは、それが自分の運命だと思い込んでいる。でも、俺たちが他とは違うことをしたからこそ、人々や他のバンドに影響を与えたんだと思うよ。別に褒められたことではないけど、まあ、それはそれで大きなことだよね」
Jeff の言葉を借りれば Nu-metal も CARCASS の副産物、もしくは副作用でしかありません。
「別に手柄にするわけじゃないが、俺たちがBにダウンチューニングして、それをメタルの世界に広めたようなものだ。Bにチューニングした人は他にもいただろうけど、誰も思い浮かばないからな。それは、Nu-metal のような悲惨な副作用をもたらしたけど。
だから、ある面では、俺たちにも責任があるような気がしてるんだ。みんな Ross Robinson と一緒に仕事をしていて、彼は CARCASS のファンだったんだから。彼らの多くはBにチューニングしていたけど、なぜそうしているのか半分もわかっていないんじゃないか」

つまり、Jeff が2008年に EMPEROR を見たのは、もっと言えば CARCASS から “逃げて” いるように見えた Bill を動かせたのは本当に僥倖でした。
「LAで EMPEROR が演奏しているのを見て、Bill にメールで “失礼かもしれないけど、本当に CARCASS の再結成を考えるべきだ” と言ったんだ。俺はその時 BRUJERIA と演奏していたんどけど、プロモーターから CARCASS について聞かれてね。自分のバンドに需要があるのに、なぜ俺は雇われているのかという気持ちが湧いてきたんだ。ちょうど Michael Amott も俺に声をかけてきていたしね。それで、俺と Michael は Bill に相談し始めたんだ。人生で一度も見たことのないような金額のオファーを受けていた。結局俺たちは、CARCASS が人々にとってどれほど重要な存在であるかを知らなかったんだ」
自身が貴重な存在だと知りながらも、Jeff は “Kelly’s meat emporium” を “Under The Scalpel Blade” と同様自虐的に “ストック・カーカス” “過去の亡霊” と称しているようです。バンドの自己言及的な手法の自然な延長線上にあるようにも思えますが。
「”ストック・カーカス” というのは、Bill がリフをリハーサル・ルームに持ち込んだときに言ったことに過ぎない。非常にストレートな、高速スラッシュの CARCASS の曲なんだ。
俺らがこの曲を “ストック・カーカス” と呼ぶのは、皮肉なことだ。でもそう、この曲は “Reek of Putrefaction” 以来、ギターのリードがない曲の一つなんだ。俺が言わなければ気づかなかっただろう? 1996年の “Swansong” が気に入らない理由が、アルバムに速いパートが全くないことだと皆に気づかれなかったのと同じだ。アルバムの中で最も速いビートは、”Child’s Play” で “Children of the Grave” のペースになるときだ。それがいつも不思議なんだ。誰も “このアルバムはブラストビートがないから最悪だ” とは言わない・・・というか、誰も聴こうとしないんだよな、アレを」
実は、Jeff にとって “Swansong” は思い入れの深いアルバムでした。
「”Reek Of Putrefaction” や “Heartwork” と同じくらい、”Swansong” には思い入れがある。このアルバムに悪意を持ったことはない。このアルバムはかなり評判が悪いと思われているんだけど、現実にセールスはそうじゃないことを示しているし、ファンは概してこのアルバムを気に入っているという事実もある。というか、”Reek Of Putrefaction” よりも悪いアルバムだと言われることは、想像の範囲を超えているからね」
つまり、どの時代にいくつ否定的な意見が寄せられようとも、CARCASS は CARCASS であり続けます。
「21世紀になってからのことだと思うんだけど、人々がフォーラムや何かにコメントできるようになった。そうすると、それが事実上のムードになるようなんだよな。人々はインターネット上でポジティブな言葉を入力しないからな。
面白いことに、80年代には、誰もわざわざ紙にペンを走らせ、切手を払って、最も嫌いなバンドに手紙を送り、なぜそのバンドが嫌いなのかという高説を説こうとはしなかったんだ。だけど今では、ただタップしているだけで、自分の意見が空虚な世界で重要であると信じてしまう。クレイジーなことさ。でもそれが現実なんだよ」

参考文献:REVOLVER:CARCASS’ JEFF WALKER ON BAND’S GRISLY “MULTIVERSE,” SAVAGE NEW ‘TORN ARTERIES’ LP

REVOLVER:CARCASS’ BILL STEER: 5 CRIMINALLY UNDERRATED GUITAR HEROES YOU NEED TO KNOW

LOUDERSOUND:Jeff Walker: “Tom Hanks used to play Carcass to his friends”

RADIOMETAL: Jeff Walker Interview

BLOOKLYNVEGAN:Carcass’ Bill Steer talks 10 albums that influenced their new LP ‘Torn Arteries’

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PESTILENCE : EXITIVM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PATRICK MAMELI OF PESTILENCE !!

“It Is Not a Secret I love Allan Holdsworth, Tribal Tech, Chick Corea And Steve Coleman. They Opened Up My Musical Horizons.”

DISC REVIEW “EXITIVM”

「私はどのカテゴリーにも属したくなかった。ありとあらゆるルールで自分を制限してしまうからね。DEATH がテクニカルだったのは、Sean と Paul がバンドに加わった時だけだよね。加えて私たちも、決して “スーパー・テクニカルだとは思われていなかったけど、このジャンルに新しいスタイルを生み出したのはたしかだよ」
DEATH, CYNIC, ATHEIST, NOCTURNUS, ATROCITY, GORGUTS, DEMILICH。80年代後半から90年代初頭にかけて、デスメタルやスラッシュメタルを独自の牙で咀嚼し、突然変異の魔物を生み出す “奇妙な” メタルの波がエクストリーム・ミュージックの歴史を変えました。
POSSESSED に端を発した彼らの異端は、決して現代のいわゆるテクニカル・デスメタル “Tech-metal” のように、レールに乗ったシュレッドが飛び交う狂喜乱舞の硬質な宴ではなく、存在自体が阿鼻叫喚で突拍子も無いアイデアを現実にしてしまう魑魅魍魎の無礼講だったのです。そこにルールは存在しませんでした。
「私が Allan Holdsworth, TRIBAL TECH, Chick Corea, Steve Coleman を愛しているのは秘密でもなんでもないよ。彼らが私の音楽的な地平線を広げてくれたんだ」
オランダから新たなメタルの感染爆発を呼んだ疫病 PESTILENCE の無礼講は、実に粋な演出でした。そして彼らはその “傾奇者” の精神を今に至るまで貫き通しています。ジャズとメタルの蜜月といえば、まず CYNIC を思い浮かべるファンも多いでしょう。しかし、89年にリリースされた PESTILENCE の2ndアルバム “Consuming Impulse” を聴けば、奇抜なリフの発明のそばにジャズや現代音楽の知性が投影されていることに気づくはずです。その場所から、シンセサイザーやインタルードを活用したシアトリカルとも言える傑作 “Testimony of the Ancients”, アトモスフェリックなホールズワース・イズムを継承した “Spheres” と彼らの世界は広がっていきました。
「私が過去に一緒に仕事をしたほとんどの音楽家たちは、他に自分のバンドやプロジェクトなどに専念していることを理解してほしいと思うんだ。彼らは、1枚のアルバムと1回のツアーのためこのバンドに滞在し、その後は自分の仕事をするために去っていくというわけさ」
それでも PESTILENCE をソロプロジェクトではなくバンドであると断言する奇才 Patrick Mameli。実際、流動的なメンバーを利用しながら休止と再開を繰り返すペストの脅威は、時を経るごとに増しているようにも感じられます。15年の眠りから目覚めプログデスの威厳を示した “Resurrection Macabre”、8弦ギターの導入で難解と異端を極めた “Doctrine”、ファンの長年の忠誠に報いた “Hadeon”。ex-CYNIC の Tony Choy, DARKANE の Peter Wildore, 長年の相棒 Patrick Uterwijk といった達人たちの恩恵にも恵まれて、PESTILENCE に聴く価値のない作品など一枚たりとも存在しないのです。
「たしかに、シンセやサウンドスケープの使い方は “Testimony of the Ancients” と似ている部分もあるかもしれない。だからといって同じような音楽だとは言えないだろうな。私が今使っているシンセやコードは、あの時よりより進化していて、音楽的な有効性が高いのだから」
そんな彼らの現在地が “Exitivm”。ラテン語で “破壊” と名づけられたアルバムは、再度過去を破壊して新たな音の葉を紡ぎ出す再創造の楽典。”Testimony of the Ancients” で選択されたギターの歪みとキーボードを多用したアプローチの質感、”Spheres” のアトモスフェリックなコード・ヴォイシングを受け継ぎながら、楽曲をコンパクトでグルーヴィーに保ち、その偏執的でしかし弾力に満ちた不安の塊は、環境破壊、精神の破壊、民主主義の破壊を扱った “Exitivm” なテーマと素晴らしく調和していくのです。ex-GOD DETHRONED のドラマー Michiel van der Plicht によるシャープでブルータルなドラミングが、このソリッドな作品の本質を代弁していますね。
今回弊誌では、Patrick Mameil にインタビューを行うことができました。「ようやく、政府がクリエイティブな人々、音楽家、画家、表現者に対してどれほど無関心であるかを悟ったよ。私たちはかなり長い間、資金援助も何もない状態で監禁されていたんだからね。Chuck (Schuldiner) が言うように、まさに彼ら権力の “Secret Face” (DEATH の楽曲、”Human” 収録) 秘密の顔を示していたと思うよ」 どうぞ!!

PESTILENCE “EXITIVM” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DHARMA (達磨樂隊) : BHAISAJYAGURU】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JACK OF DHARMA 達磨樂隊 !!

“Chthonic Uses Political Music To Let The World Know Taiwan, We Want To Change The World With Faith.”

WHEN MANTRA MEETS METAL

台湾・台中 – 1月の土曜日の夜、観客は耳をつんざくようなリフを期待した。
黒服を着たメタル・バンドのメンバーは、コンサート・ホールの巨大なアンプの色とマッチしていた。しかし、異彩を放つメンバーが一人。頭を剃り、宗教上の伝統的なオレンジのローブを身にまとった仏教の尼僧がメンバーの中に入っていたのだ。
台湾の仏教メタルバンド、DAHRMA 達磨楽団のメンバーであるミャオ・ベンさん(50歳)。彼女が、ゴシック・メイク、死神のローブ、偽の血をまとった他のメンバーのとなりに立つと、対照的な光景か広がる。控えめに言ってもメタル世界には異色の存在。「伝統的な人々にメタルと仏教の融合を説明するためには、本当に準備をしなければならないわ。」
「最初にメタルを聞いたときは受け入れがたいと思ったけど、彼らのコンサートに参加してからは、美しいメロディーがあるし、何よりバンドの情熱に感動したの。森の中の寺院で静かに歌うことを好む、台湾の伝統的な信者からは反対の声も上がっているけれどね。DAHRMA はその壁を割るような和音が、音楽的にも精神的にも宗教と合っているの」

ミャオはギターの音が鳴り響く中で儀式の鐘を鳴らす。そして9人の修道女と一緒にパフォーマンスのオープニングに参加し、3人のギタリストがステージに上がる前に経典を読みきかせる。
ミャオ・ベンによると、彼女は昨年、かつての同級生を通じて台北のドラム指導者でバンドの創始者でもあるジャック・タンと知り合ったそうだ。彼女が DAHRMA に参加したのは、メタルが台湾の若い人たちと信仰を結びつけてくれると思ったからだという。
「少しずつでも受け入れてもらえるようになるのではないでしょうか。」
2017年には、台湾にある4,000の仏教団体のうち、最大の4つを含むできるだけ多くの仏教団体を訪問するようになった。長い黒髪とスペックを持つジャック・タンは、仏教とメタルをミックスするという彼の計画が誰をも怒らせないことを確認したかった。歌詞は僧侶や尼僧のように唱えられ、暴力的なメタルのテーマは意図的に避けている。
「俺たちは意味のあるチャントを選ぶ。大きな音で邪悪なものを追い払うためにね。」
仏教徒の中には、信仰と音楽のジャンルが精神的に合うかどうか疑問を持つ人もいたが、彼のメタルとマントラの融合に反対する団体はないという。
ジャックはずっと「オルタナティブなことをしたい」という気持ちを持っていたという。16年前にチベット仏教の音楽を聴いたとき、それが最終的に自分のメタルにおける使命になることを知った。そして彼は台湾の小さなメタルシーンから同じように熱狂的なメンバーを集めたのだ。
リードギタリストのアンディ・リンは、敬虔な父親のもとで仏教寺院に通い、経典を読みながら育ったため、今では歌詞に最適なマントラを選ぶことができるようになった。
リード・シンガーのジョー・ヘンリーは38歳のカナダ人で、大学のルームメイトの勧めで2005年に台湾に移住し、その1年後にドラマーの創設者と出会う。彼は他の仕事のストレスを和らげるためにバンドに参加したが、DAHRMA の歌詞を学ぶうちに、キリスト教から仏教へと改宗し、今ではこの場所を “避難所” と呼んでいる。
台湾内務省のデータによると、人口の35%にあたる約800万人の台湾人が仏教徒である。デビュー EP “BHAISAJYAGURU” が世界を変える。

DHARMA “BHAISAJYAGURU” : 10/10

LA TIMES:This is what happens when a Buddhist nun joins a heavy metal band

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE BEAST OF NOD : MULTIVERSAL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH THE BEAST OF NOD !!

“Some Of Paul’s Favorites Are Yu Yu Hakusho, Hunter x Hunter, And One Piece. He Is Also a Very Big Fan Of Zelda, Final Fantasy, And Castlevania Games, Often Wearing a Zelda Shirt On Stage.”

DISC REVIEW “MULTIVERSAL”

「僕たちの音楽はすべて、同じ多元宇宙と、その中のキャラクターや出来事をテーマにしているんだ。宇宙の運命がかかった銀河間の紛争に備える必要から始まり、その紛争に参加し、悪の存在であるカオスが解き放たれて宇宙を終わらせる。その後、新しい多元宇宙の誕生に移り、多元宇宙の守護者が設立され、次の潜在的な脅威が紹介されていくよ」
ベイエリアの銀河系間デスメタル・バンド THE BEAST OF NOD は、その”多次元宇宙” という壮大なアルバム・タイトルからして無限の可能性を秘めています。戦争とサバイバルをテーマとした銀河系 SF の大作として、いくつもの宇宙にまたがる未曾有のドラマがメタルサウンドで描かれるカタルシス。間違いなく、このインターギャラクシーな獣の野心は、メタル世界を多次元の “目覚め” へと誘うはずです。
「幽遊白書、ハンター×ハンター、ワンピースなどは大のお気に入りだね。また、ゼルダ、ファイナルファンタジー、悪魔城ドラキュラといったゲームの大ファンでもあり、ライブ・ステージではよくゼルダのTシャツを着ているよ」
原子物理学者で MIT の博士号を持つギタリスト Dr. Gore と、バイオテック業界で働いていて、生物学と化学のバックグラウンドを持っている Paul Buckley を中心人物とする THE BEAST OF NOD は、その学問的知識の泉とゲームやアニメへの愛情を自らのメタル作品へと惜しみなく注ぎ込んでいます。
Land of Nod の伝承の敵ヴァンパイアに焦点を当てた、アクション満載の SFメタルデビュー作 “Vampira” には、悪魔城ドラキュラやロックマンに影響を受けたと思われるコミックブックが付属していました。そうしてリスナーは、宇宙の運命がかかった銀河間の紛争、悪の存在であるカオスと宇宙の終焉、新たな多元宇宙の誕生へより深く没頭して理解することが可能となったのです。ある意味、あの素晴らしき DETHKLOK は彼らの雛形でしょう。
「Joe Satriani は、Dr. Gore が本格的にギターを弾き始めた頃に最も影響を受けたミュージシャンの一人なんだ。サッチ以外で影響を受けたのは、Reb Beach、Tosin Abasi、そして Yngwie Malmsteen だろうね。また、バッハをはじめとするバロック音楽の作曲家にも大きな影響を受けているよ」
SFやコミックだけでなく、”Multiversal” はギタリストの天国としても充分に野心的です。Joe Satriani, Michael Angelo Batio, ABIOTIC の John Matos, WORMHOLE の Sanjay Kumar, EQUIPOISE の Nick Padovani, BLEAK FLESH の Matias Quiroz、さらに Michael Angelo Batio, Joe Satriani といった大御所までがゲストとしてシュレッドを繰り広げる作品には、さながらアステロイドベルトのように印象的なシュレッドが所狭しと敷きつめられています。まさにシュレッドの小宇宙。
「”Tech-death” の領域に入ることで、より速く、より複雑な音楽を演奏するというチャレンジを楽しむことができたし、プログの影響を受けることで、よりユニークなサウンドを開発することができたと思う」
何より、宇宙から降りそそぐ聴覚の電磁波は絶対的です。指さばきが音速を超える複雑怪奇なギターリフ、異次元で巨大なグルーヴのスペクトル、地球外のエイリアン・ボーカル、近未来的な空間を演出するシンセサイザー。BETWEEN THE BURIED AND ME のプログレッシブな審美眼、BORN OF OSIRIS のアトモスフェリックな美宇宙、THE HUMAN ABSTRACT のクラシカルな素粒子、ANIMALS AS LEADERS のユニークな星間風、そのすべてはダークマターのようにアグレッシブに結合して、THE BEAST OF NOD という巨大な宇宙船までリスナーをトラクター・ビームで誘導していくのです。
今回弊誌では、THE BEAST OF NOD にインタビューを行うことができました。「僕たちは自分たちをインターギャラクティック・デスメタル・バンドと呼んでいるんだけど、作家や映画だけでなく、アニメやコミックにも大きな影響を受けているんだ」どうぞ!!

THE BEAST OF NOD “MULTIVERSAL” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AD NAUSEAM : IMPERATIVE IMPERCEPTIBLE IMPULSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AD NAUSEAM !!

“We Would Like To Contribute Bringing Metal Music Sound Approach To a Different Level In The Future. There Are Many Listeners That, Like Us, Are Deeply Tired By The Fake Plastic Sounding Records That Are Trending Since The Last 20 Years.”

DISC REVIEW “IMPERATIVE IMPERCEPTIBLE IMPULSE”

「将来的には、メタルのサウンド・アプローチを別のレベルに引き上げることに貢献したいと考えているよ。僕たちと同じように、過去20年間のトレンドである偽のプラスチック・サウンドのレコードに深く疲れている多くのリスナーがいるからね」
機械化されたダンス・ミュージックも、そのバカげた単調さも、そんな音楽を使うクラブも、すべてが100% 大嫌いなんだ。アナログの録音を極めたエンジニア、かの Steve Albini はかつてそう言い放ちました。デジタルに支配された我々は、たしかに繊細で温もりのある生のレコード、その音響を忘れつつあるのかもしれません。それは、耳に鮮やかな添加物にまみれた、メタル世界も同様でしょう。
「ここ数年、メタルの中で音質の平均値が大きく下がっているから、僕たちのようなアルバムは目立ちやすいんだろうな。例えば、ダイナミクスを重要視している作品はほとんどないよね」
近年、その実験精神とこだわり抜いたコンセプトで注目を集めるイタリアのメタルシーン。中でも、”吐き気がするまで追求する” をバンド名に掲げる AD NAUSEAM の献身はもはや狂気の域でしょう。現状に不満があるなら、自ら創造する。ここには、大げさで滑稽な偽物のプロダクションは存在しません。アーティスト本人がエンジニアリングを学び、専用のスタジオ・マシン、キャビネット、アンプ、ドラムキット、さらにはマイクの設計にまで趣向を凝らしたスタジオを建設。すべてはただ、自らが心地良いと感じるサウンドを構築するためだけに、AD NAUSEAM は途方もない労力を注ぎ込んだのです。チューニングも既存のものとはかけ離れています。
「いくつかのオーケストラ・パート( “Sub Specie Aeternitatis” の最後と “Inexorably Ousted Sente” の最初)は、60以上のヴァイオリンを重ねて、彼自身が1つずつ録音したものなんだよ」
6年の歳月をかけて制作された最新作 “Imperative Imperceptible Impulse”。Bandcamp で販売されている “フル・ダイナミック・レンジ” のアルバムを聴けば、この作品が現代のメタル・サウンドとは全く趣を異にする音の葉を響かせることに気づくはずです。
全体の音量は隅々まで見渡せるようにコントロールされ、さながら精巧なタペストリーのごとくすべての楽器が入念に折り重ねられています。ドラムの幽霊音、ギターの息遣い、そしてベースの呪詛まで、生々しく肉感的な三次元の重苦しいオーケストラは、そうしてリスナーの部屋までライブの興奮を運んで来るのです。実際、その録音手法はクラッシックの原理。
「メタルに様々なジャンルのダークな不純物を加えて溶かしたいという本質的な衝動は、最初は不十分な試みだったけど、たしかにそこにあったんだ。新しいものを作るには、自分の限界から一歩踏み出さなければならないことを理解するべきさ」
アルバムは、例えば LITURGY, 例えば KRALLICE, 例えば IMPERIAL TRUMPHANT といった今メタルシーンを牽引する複雑怪奇な NYC の魑魅魍魎とシンクロし、奇しくも同じ方向を向いています。デスメタルやブラックメタルと、ジャズや現代音楽の不協和な錬金術。ただし、NYC の新鋭たちが意図的にラフでアンダーグラウンドなイメージをそのサウンドに残しているのに対し、AD NAUSEAM の合成法は実に緻密で繊細。
テクニックの粋を尽くしながらギターソロさえ存在しないダークな音の不純物は、奇抜に躍動しながらもすべてが正確無比な譜面の中へパズルのように収まります。それは、NEUROSIS とGORGUTS の踊る地獄のの祭典でしょうか。ストラヴィンスキーはひとつのキーワードでしょう。マスコアやテクデスの洗礼も浴びながら、ヌルヌルと蠢く百鬼夜行が奏でる呪詛は、そうしてリスナーを吐き気がするまで何度もリピートへと誘うのです。
彼らにいわせれば、単なるリフの連続ではなく、音が過去を参照したり、未来を予測したりする秩序。不調和によって和声が得られ、不協和音によって旋律が得られるような音楽。真のアヴァンギャルド。
今回弊誌では、AD NAUSEAM にインタビューを行うことができました。「このアルバムは、18年間の研究と実験の結果なんだ。Steve Albini のサウンド哲学は、僕たちの哲学ととても近いものがある。自分よりも優れた人から学ぼうとするのは自然なことだよ。そして、彼はおそらくこの業界で最高の人だ」 どうぞ!!

AD NAUSEAM “IMPERATIVE IMPERCEPTIBLE IMPULSE” : 10/10

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