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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【CONJURER : PATHOS】


COVER STORY : CONJURER “PATHOS”

Me And Dan Have Always Talked About Wanting To Take That Extreme, Roadburn Sound, And Trying To Distil It Into Something More Accessible.

PATHOS

「すでにこのバンドは、僕らの誰もが可能だと考えていたよりも遠くに来ている…これは客観的に見て、今まで誰も作ったことのないベスト・アルバムだ。何が起こるか予想できるようなバンドにはなりたくないんだ」
メタル世界で今、最も謙虚で、しかし目覚ましい成長を遂げたバンドこそ CONJURER。誇りを込めて、彼らは自らの音の葉を “リフ・ミュージック” と呼んでいます。ロックダウンを経て、ドラマー Jan Krause の脱退を受け入れたミッドランドの英傑は、驚異的なセカンドアルバム “Páthos” で、”Neo-New Wave of British Heavy Metal” の旗手の座をたぐりよせました。過去2年半の残酷な現実の後、彼らは再び英国で最も需要のある輸出品 “ヘヴィ・メタル” の担い手として夢を生きているのです。
CONJURER は謙虚なバンドです。彼らは、1ミリも我慢できないロックスター志望者でもなければ、”自分のブランド” を築こうとする計算高いソーシャルメディア・パーソナリティでもありません。ただ、私たちと同じ、生粋のメタルヘッズというだけ。デビュー作 “Mire” が様々な媒体で満点の評価をさらったのは、センセーショナルで見出しを飾るようなハイコンセプト、ギミックのおかげではなく、その息苦しいほどドロドロした楽曲を地下室や裏部屋で何百回も演奏して練り上げたからこそ、メタルヘッズの心に響くものとなったのです。会場が大きくなり、世界中でブッキングされる今でも、ギタリストの Dan Nightingale はステージから降りると、その非現実的な光景を噛み締めます。
「僕らにはイメージもないし、裏話もないし、カルト的な人気もない。僕らはただメタルが好きな、信じられないほど退屈な4人組で、それでもどうにかここまで来た。もちろん、音楽に共鳴してくれなければ、こんなことにはならなかっただろうし、ファンにはとても感謝している。でも、裏を返せば僕らがやっていることだけを好きでいてくれる人たちがいて、そのおかげでこれほどの成果を達成できるなんて、今でも正気の沙汰とは思えないよ。だから、みんなに乾杯!変人たちよ!」

7月1日にリリースされた CONJURER のセカンド・アルバム “Páthos” は、メガレーベルNuclear Blast と契約して以来初の作品。そして、ベーシストの Conor Marshall と共に書いた初の楽曲群でもあります。言うまでもなく、2022年にリリースされるメタルの中で最も期待されている作品のひとつであることは間違いありません。フロントマンの Brady Deeprose は、まだそんなバンドの躍進を信じられないと語ります。
「”Mire” のマスターを提出したら、レーベルがアルバム・タイトル、ミュージック・ビデオ、アートワークを要求してきたのを覚えているよ。僕たちはただ “なんだ!?自分たちが何をやっているのか、まったくわからない!” って混乱していた。4年経って、地元のバンド、つまり仲間の何人かが集まったバンドから、正当なヘッドライン・アクトにステップアップすることがどういうことかやっとわかりはじめたよ。より大きな経験、成熟、認識。それが僕らの姿なんだ。つまり、僕たちは初めて正当なバンドになったようなものなんだ。これが始まりって感じだよ….」
ESOTERIC の Greg Chandler と共にバーミンガムの The Priory と、Excalibur Cottage と名付けたノーザンプトンの邸宅の間でレコーディングを完了させた CONJURER。3日間にわたるレコーディングは、マイクの不具合により中止となり、Brady はマイクの交換のためにロンドンに緊急帰郷することになりました。さらにドラマーの Jan Krause がその直後、すねを痛めてさらにレコーディングを遅らせることになったのです。2分半の “Suffer Alone” の収録を即座に変更したため、Conor はこのアルバムで最も難しい曲を暗記して、一晩でトラッキングを行わなければならなくなりました。さらに、ロックダウン中の出来事というプレッシャーも加味されます。ミキシングとマスタリングは、ハードコアのスーパー・プロデューサー、Will Putney を今日。彼らのゴリゴリとしたライブの質感をできるだけ引き出すことを目的に、アルバムをアメリカ国内に送り、彼の本拠地グラフィック・ネイチャーで完成させたのです。
アルバムの発売に際して、Brady にプレッシャーはあったのでしょうか?
「プレッシャーというより、初日から僕らをサポートしてくれた人たちに対する義務だね。ライヴに足を運んでくれたり、Tシャツを買ってくれたり、多くの時間とお金を投資してくれたレコード会社、何年も僕らと仕事をしてくれたブッキング・エージェントやPRなどのため、いい作品を作りたかった。しかし、最終的に僕たちが喜ばせようとしているのは、僕たち自身だけなんだ。この信条を守れば、逆に僕たちに投資してくれた人たちに対する義務を果たすことになる。もし、このレコードが気に入らない人がいたら?僕たちは “間違っていてもいいんだ” と言いたいね。僕たちは努力してこれを作り上げた。1年半かけて作ったんだ。もし気に入らなくても、もう少し努力して味方になってあげるべきかもね」

“Mire” のサウンドが、がその制作中に行った無数のショーによって定義されたとすれば、”Páthos” は CONJURER が全く演奏できなかった期間の落とし胤です。しかし、ギリシャ語で “苦しみ” と訳されるタイトルにもかかわらず、リスナーはパンデミックの経験についての鋭い考察を期待する必要はありません
「ライブで演奏することができなかったんだ。微調整やロードテストもできなかった。ただ、自分の家でじっくりと演奏して、それがアルバムに収録されるんだ。世界が再び開かれ、ギグが再び行われるようになった今になって、”Pathos” の曲をライブで演奏しようとしたら、”なんてこった!”って感じなんだよ」
“Mire” に伴うツアーでは “100万回” 演奏したと Brady は語ります。
「”Mire” では、週末に演奏して、ローカル・オープナーになって、週末にぶらぶらしてリフを書いてただけなんだ。でも、その後、フェスティバルや大きなバンドと一緒にちゃんとしたツアーをやるようになったから、このアルバムではその恩恵を受けることができるだろうね。GOJIRA やヘヴィな音楽をやりたいと思わせてくれたバンドをベースにしていたのが、今はもっと深みにはまり、他の影響を受け始めたところなんだ。”Mire” は、僕らが消費しているものやバンドの方向性と比べると、かなりベーシックな感じがするね。僕と Dan は、ロードバーンのようなエクストリームなサウンドを、より親しみやすいものにしたいといつも話しているんだ。今、”Mire” を聴くと、ただビッグで馬鹿みたいなリフがあるだけ。”Pathos” は間違いなく僕たちが目指しているものを凝縮しているんだ」
2020年にスタジオを訪れた際、Brady がバンドの昔のサウンドをビッグでクレイジーなリフがあるだけ” と表現したのはやりすぎかもしれませんが、”It Dwells” の変幻自在な巨人のリフ、”Those Years, Condemned” の陽気なフォークと角ばったマスロックの婚姻、”In Your Wake” の胃が潰れるほどのデスゲームを聴けば、その表現もあながち大袈裟ではありません。バンドによると、1曲目の “It Dwells” は、アルバム全ての個性を1曲のメタルで表現しているとのこと。GOJIRA や YOB、CONVERGE や ELECTRIC WIZARD といった、彼らのアイドルの影響も未だ残っていますが、それはこれまでよりもはるかに計算されたニュアンスで展開されています。さらに Brady は北米ポストメタル界の至宝 SUMAC の名前をインスピレーションの一つはに挙げていて、彼が取り込もうとしているメタルの “深み、先進性、無双、極限” の波を、オランダのアヴァンギャルド・メタル集会 “Roadburn” シーンとして要約することを好んでいます。
「いつか、ロードバーンのサウンドを、ダウンロード・フェスティバルのオーディエンスに親しみやすいものにしたいんだ。TRIVIUM, BULLET FOR MY VALENTINE, THE BLACK DAHLIA MURDER を聴いて育った人の感性で、IMPERIAL TRIUMPHANT のような作品をフィルタリングしたいんだよね。ダウンロードが好きな人たちはロードバーンのバンドを聴いて、”これで楽しかったら、10点満点になるのに” と言うでしょう?僕たちはそれができるバンドなんだ 」
Dan も同意して肩をすくめます。「ロードバーン・シーンには素晴らしいバンドがたくさんいるけど、あまり楽しくないよね」

ちなみに、2018年の時点で CONJURER がこれほどビッグな存在になるとは予想もしていなかった弊誌ですが、当時行ったインタビュー で Brady が興味深い言葉を述べています。
「僕にとっては GOJIRA と THE BLACK DAHLIA MURDER こそがスターティングポイントだった訳だからね。そして決定的な瞬間は YOB をライブで見た時だった。多くのバンドは一つか二つのメジャーな影響を心に留めながら作曲していると思うんだけど、僕たちはどの瞬間も30ほどの影響を考慮しながらやっているんだ。ギター/ボーカルの Dan Nightingale と僕は、当時同じようなフラストレーションを抱えて仲良くなったんだ。ローカルシーンがいかにクソになったか、メタルコアがいかに退屈かという鬱憤だよ」
ただし、その “楽しい” ことだけが “Páthos” の明らかなセールス・ポイントというわけではありません。マンチェスターのポストロッカー PIJN との2019年のコラボレーション “Curse These Metal Hands” と比較して、Brady は「”CTMH” が50パーセントのアルコールであるのに対し、”Pathos” はとてもシラフな体験だ」と言い切ります。それでもこのアルバムは、鬱と実存的な恐怖をブレンドした魂の叫びであり、特に残酷な二日酔いによく似ていると言えるのかもしれません。
例えば、ロンドン在住のヴォーカリスト兼作曲家 Alice Zawadzki の力強い歌声が響く “All You Will Remember” は、亡くなった祖母がアルツハイマー病と認知症と10年間戦う姿を見た Dan の実体験。
「いろいろな意味で、認知症は死の前の死だ。この曲は感情的だ。今年の初めに祖母が亡くなってから、この曲は間違いなく別の光を帯びている。祖母が亡くなった今、この曲を世に出すべきかどうか、自問自答しなければならないことがあるんだ。でも、それがこの病気の現実なんだよな。認知症を患った人がもうかつての愛する人ではないという考えと格闘しても、患者が心の奥底では自分に何が起こっているのか分かっているのだと思うと、胸が張り裂けそうになる」

ネット上の哲学者Rokoによる同名の思考実験にインスパイアされた “Basilisk” は、仮想の人工知能が、想像しながら実現するために働かなかった人を拷問する動機があるという “決定理論” と、そのシナリオが人間の自由意志に及ぼす影響についてとりあげています。この抽象的なコンセプトは、Google のエンジニアが同社のチャットボットに意識が芽生えたことを示唆したとして停職処分を受けたという最近のニュースを思い起こさせる一方で、完成した楽曲は、歌詞としてはあまりにも濃密で、その中心には “思考は破滅と似ているか” という問いがうっすらと漂っているのです。
「アルバムにコンセプトはなく、ただただ惨めな曲ばかり。認知症の影響についての曲もあるし、認知症になった人の愛する者として、また自分自身がそのような状況に陥るかもしれないという可能性、それに対処するための曲もある。本当に惨めで、鬱や不安といった内面的な葛藤や、それにどうアプローチしていくかというトラックもある。鬱や不安がどのように現れるかという二面性、そして本当の自分とネガティブな自分とのバランス。それから、ロボットが世界を征服してしまうという曲もある」
クローザー “Cracks In The Pyre” は、カーディフ・シティのサッカー選手であるエミリアーノ・サラが英仏海峡上空の飛行機事故で死亡し、彼の遺体が見つからなかったことを受けて Jan が胸中さらけ出したことに端を発しますが、すぐに悲しみと偉大な来世のためのより複雑なメタファーへと発展していきました。”かつて穏やかだった潮流は、今は苦しめ、思い出させるだけだ “あの世” の君を思い描こうとしても、君の優美さは見えないまま 僕は否定される”。Brady はこう説明します。
「僕たちは誰も宗教家ではないんだけど、宗教家が故人が “より良い場所” に行ったと信じることで得られる許しをうらやむという話をしていた。それを信じていなければ、誰かがいなくなったとき、彼らはただいなくなっただけになってしまう。この興味深い、感情的な、信じられないほど憂鬱なテーマが、熟考するきっかけになった」

他の曲でもソングライターたちは、悲しみを自らに語らせることに喜びを感じています。”It Dwells” と “Rot” は、精神疾患がもたらす対照的な影響について歌い、”Suffer Alone” では、苦痛に満ちた孤独を力強く反芻。”In Your Wake” では、拒絶と喪失の影響を扱っています。Brady と Dan は過去に不安やうつ病の経験を公言していますが、それでも “Pathos” は CONJURER がこれまで見せたどの作品よりも親密で、思いやりと希望に満ちているように感じられます。
「個人的な歌詞を書くとき、自分にとってトラウマになるようなこと話したくないという思いが常にあったんだ。でも、人生にはいろいろなことが起こるから、それを話さないわけにはいかないんだ。ロックダウンが僕らに影響を与えなかったと言うのは愚かなことだ。このアルバムは、僕たちがこれまでで最もつながりが薄かった時代の、つながりと共感について書かれたもの。もし、別の時期に制作していたら、もっとハッピーなアルバムになっていたかもしれない。でも、同じように聴こえたと思いたいね」
“Páthos” の物語は、音楽だけでは終わりません。2021年3月に最終マスターを受け取ってから15ヶ月後にリリースされるまでの遅れは、ハードコアなファンにアナログ盤の素晴らしさを味わってもらうために、リリース日にフィジカルレコードを届けたい(または供給が不安定な現状では可能な限りそれに近づけたい)という CONJURER の希望によるものでしたが、そのおかげでパッケージ全体の完成度を高めることができました。
ペイントされたアートワークのアイデアは “Mire” の頃からありましたが、今回、時間とリソースを追加したことで、バンドはフランスのアーティスト Jean-Luc Almond に依頼することができました。彼は、油絵の抽象画に落ち着いたポートレートを重ねた独特のスタイルを持ち、アルバムの変幻自在の悲しみと共鳴しています。特別に依頼され、額装された彼の作品は、パッケージ用に両面撮影されました。Brady は興奮を抑えられません。「音楽とビジュアルは同じものなんだ!」
Dan にとって、この印象的なビジュアルは、曲の中で表現されている個人的な目覚めと完璧に呼応しています。ロックダウンの末に自閉症であることが判明し、それまで苦しんでいた断絶を理解し対処できるようになったことで、痛みから解放されたのです。
「僕が今まで感じていたけれども表現できなかったことをすべて表現しているんだ。両手で頭を抱えながら、顔の奥底から大きな色の塊が出ている人のイメージは、僕が心の中に抱え込み、話すことができないと感じたすべてのものを象徴しているんだよ」

一方、Jan にとっては、昨年の夏が一つの区切りとなりました。6月19日に開催されたDownload Pilot のメインステージで演奏した後、重要なソングライターであり、スタジオでの事実上の芸術監督でもある創設者のドラマーは、バンドメンバーにスティックを置くことを告げたのです。
「本当に悲しいよ」と Brady は嘆息します。「結婚して数日後、母親、妻、義理の両親と一緒に食事をしているときに、メッセージを受け取ったんだ。携帯電話を見て、”Jan がバンドを辞めた!” って言いながら見返したんだ。レコードのスクラッチみたいな感じ。どう処理していいかわからなかったよ!少しの間、本当に怒っていたよ。Jan は10歳の頃から少なくとも2つのバンドを同時にやっていて、一時期は6つもやっていた。誰よりも多くギグをこなしてきた。彼はツアーが嫌いだと公言していたが、かつてはステージ上の30分に価値があると感じていた。最初のアメリカ・ツアーが始まって2週間目に、彼はもう演奏するのは楽しくないと言ったんだ。そして、ダウンロード・パイロットのとき、彼は広報担当者にキレて、自分の機嫌の悪さが自分を悪い人間にしていることに気づいたんだ。彼にとっては、このバンドは自分には合わないと悟った瞬間だった。彼はこのバンドを辞めただけでなく、所属していた全てのバンドを辞めたんだ。そして、恐ろしいことではあるけど、離れてみることは彼の精神衛生上とても良いことだった。最近彼に会って、僕の好みからすると不穏にハッピーに近い感じだな!って思ったんだ」
空いたスツールは、新鮮な出会いも与えてくれました。ギルフォードのハードコアクルー POLAR の Noah Seeが、CONJURER の新しいドラマーとして登場したのです。昨年11月以来、代役を務めてきた彼は、思わず笑みがこぼれる。
「Janはこのバンドでとても重要な役割を担っていたけど、僕たちは音楽的にも個人的にもとてもうまくいっているんだ。このメンバーで新しい経験をし、外に出て、人々に自分の印象を与えることを楽しみにしているんだ」
新鮮なエネルギーは、これほど重いアルバムを世に送り出す上で極めて重要なものです。
「Noah が加入したことで、バンドとしてどうあるべきか、どうありたいかを再確認することができた」と Conor は思っています。「Noah に参加してもらった後、彼は僕らにバンドの本当のゴールは何かと聞いてきたんだ。これはただ4人の仲間で、ちょっと手に負えなくなったギグをやるだけなのか、それとも本当にやりたいことをやるのか?ってね。ということです。パンデミックによって元気を取り戻したように、今は4人目のメンバーが本当にここにいたいと思ってくれている。彼のおかげで、自分たちのやりたいことに気づけたんだ」
そして、もし “Páthos” がファンから同じような熱意を引き出すことができたら?それは最高の喜びだと Dan は強調します。
「アルバム全体が、つながりを求めているんだ。このアルバムは、僕たちみんなが経験していること、感じていることを理解するためのものなんだ。リフを聴くだけなら、それはそれでいいんだ。でも、”Mire” の時以上に僕らとつながってくれたら、それは素晴らしいことだよ」

CONJURER はブリティッシュ・メタルの未来なのでしょうか?Conor は慎重です。
「トリッキーだね。一方ではとても親切なことであり、人々が僕らのバンドを聴いてそのように感じ、わざわざインターネットに載せるということは正気の沙汰とは思えないほど。でも、一方で、僕たちは4人のバカなバンドマンなんだ、ということも少しはある。自分たちが作る音楽が好きで、明らかに自分たちのために第一に作っていて、他のみんなにも気に入ってもらえたらいいなと思っているような。だから、みんなが気に入ってくれるのはとても嬉しいんだけど、でも、本当にそうかな?僕たち?僕たちがブリティッシュ・メタルの未来なのか?でも、ここ数年、みんなが僕らについて良いことを言ってくれていることには感謝している。EMPLOYED TO SERVE や PALM READER といったバンドとは本当に良い友達になれたよ。Heriot のシャツを着ていて、彼らは次の大物という感じがする。ブリティッシュ・メタルの未来について語るなら、彼らは今まさに台頭してきて、シーンを席巻しているバンドのひとつだと思うんだ。でも、この5~7年の間に、素晴らしいバンドが次々と現れて、僕らもその一員になれて、肩を並べられることを光栄に思っているんだ」
「これは有機的に成長することなんだ」 と Brady は結論付けています。
「クレイジーなマーケティングやお金の後押しはいらない。ただ、僕らの音楽に情熱を感じてくれる人たちとつながり続ける機会を持ちたいし、僕らが再び訪れるたびに、それぞれの都市にもう少し多くの人が集まってくれるようにしたいんだ。そう、このケーキはすでにチェリーで覆われている。でも、このアルバムのサイクルが終わる頃には、80パーセントのチェリーと20パーセントのケーキの割合にしたいんだ….」

参考文献: KERRANG!:Conjurer talk new album Páthos: “I don’t want to be the sort of band where people can anticipate what’s going to happen”

KERRANG!:Conjurer: “Already, this band has come further than any of us thought was possible…”

Could Conjurer be “the future of British metal”?

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CONJURER : MIRE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRADY DEEPROSE OF CONJURER !!

“Dan And I Bonded Over Our Mutual Frustration With How Shit The Local Scene Had Become And How Bored We Were With Metalcore. Conjurer Ended Up Being The Product Of This.”

DISC REVIEW “MIRE”

2015年、英国ミッドランズに突如として現れた魅力的なエクストリームミュージックの醸造所 CONJURER は、刺激に飢えたメタル中毒者を酔わせ、瞬く間に熱狂の渦を巻き起こしています。
スラッジ、ドゥーム、ハードコア、プログ、そしてブラック&デスメタル。香り高き金属片の数々をエクレクティックに調合し精製する芳醇なるアマルガムは、Holy Roar 主導で進められる Neo-New Wave of British Heavy Metal の象徴として踏み出す大胆で鮮烈な一歩です。
「僕にとっては GOJIRA と THE BLACK DAHLIA MURDER こそがスターティングポイントだった訳だからね。そして決定的な瞬間は YOB をライブで見た時だった。」
インタビューで Brady が語ってくれた通り、CONJURER が創成したのは圧倒的に面妖で不穏なスラッジ成分、神秘と思索のプログ成分に、相隔相反するファストで激烈なメタルコアの獰猛を配合した超俗の美酒 “Mire”。その崇高なる多様性の香気は、レーベルの理念とも完璧にシンクロしながら厳かに新時代の幕開けを告げています。
アルバムオープナー “Choke” は、この混沌と斬新を見渡す眺望。濾過以前の純粋な憤激。あまりにハングリーなテンポチェンジの妙。
GOJIRA と NEUROSIS の遺伝子を纏った野太くもエッジーな唸りは、不協和音の沼沢、閉所恐怖症のハーモニーを彷徨いながら瞬時にファストで狂乱のブラックメタルへとその色を変えていきます。さらにその底流は Frederik Thordendal のプライドとも合流し、ただ陰鬱で悲惨な音景を表現するためのみに結束を強くするのです。
実際、泥と霧に覆われた不気味で不透明な原始沼をイメージさせる “Mire” というタイトルは、明らかに限られたリスニングエクスペリエンスでは全貌を掴めない、繰り返しの再生を要求するアルバムの深みと間口、そして芸術性を象徴していますね。
「多くのバンドは一つか二つのメジャーな影響を心に留めながら作曲していると思うんだけど、僕たちはどの瞬間も30ほどの影響を考慮しながらやっているんだ。」との言葉を裏付けるように、バンドは様々な風景をリスナーの脳裏へと刻み続けます。
“Hollow” で示されたドゥーミーなメランコリー、クリーントーンの旋律はポストロックの景観さえ抱きしめた、陰鬱なアルバムに残る微かな希望。しかしその幽寂なるサウンドスケープは、やがて宿命の如く地の底から襲い来るブラッケンドハードコアの波動、濁流に巻き込まれ押し流されてしまうのです。その落差、静と動、速と遅が司るダイナミズムの効果はまさしく無限大。
それにしてもバンドの落差を支えるリズム隊は破格にして至妙。特に様々なリムショットを華麗に使い分け、楽曲のインテンスを高める Jan Krause のドラムワークは新たなヒーローの名に相応しい創造性に満ちていますね。
“Thankless” で敬愛する MASTODON に感謝なき感謝を捧げ、”The Mire” で再びホラー映画のテンポチェンジをショッキングに見せつけた後、アルバムは終盤にハイライトを迎えます。
静謐の谷と激情の山脈を不穏に繰り返し行き来する “Of Flesh Weaker Than Ash” で 「GOJIRA はデス/ブラックメタルの要素を作曲に活用しながら、ヘヴィーな音楽を実にキャッチーに変化させることが出来ると教えてくれた訳さ。」の言葉通りエクストリームメタルのフック、イヤーキャンディーを張り詰めたテンションの中で実現し、SLEEP のファズサウンドをフューネラルドゥームの寂寞とプログスラッジのエピックに封じた “Hadal” でレコードは新世界への扉を開きながらは威風堂々その幕を下ろすのです。
今回弊誌では、ギター/ボーカル Brady Deeprose にインタビューを行うことが出来ました。「ギター/ボーカルの Dan Nightingale と僕は、当時同じようなフラストレーションを抱えて仲良くなったんだ。ローカルシーンがいかにクソになったか、メタルコアがいかに退屈かという鬱憤だよ。」 どうぞ!!

CONJURER “MIRE” : 9.9/10

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