EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ASH GRAY OF VENOM PRISON !!
“Without Hope, What Is The Point? We Are Here Now And We Can Live, We Have To Survive, We Have To Be Happy And Our Youth Will Learn And Understand And Hopefully Generations To Come Are The People To Make The World a Better Place. If We Don’t Try, We Won’t Find Out.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TC OF SOMALGIA & SPIDER GOD !!
“Everything Is Backwards, Everything Is Upside Down. You Either Resonate With That Quote Or You Don’t – If You Do, Then You’ll Probably Understand ‘Inverted World”
DISC REVIEW “INVERTED WORLD”
「現在 Repose には、PAPANGU, LYKHAEON, SPIDER GOD, SOMALGIA. GATE MASTER, REIGN といったバンドが所属していて、非常に多彩な顔ぶれが揃っているんだ。こうしたバンドは全て、ブラックメタルの境界を押し広げ、現在革新の最前線にいると感じているよ。僕は同じものを何度も聴きたくないし、レーベルもその精神を反映している。 イノベーションか、時代遅れになるかの二択だよ。僕は、エクストリームとプログレッシブの間のギャップを埋めるという使命を担っているからね」
エクストリームとプログの架け橋 SOMALGIA でギター、ボーカル、シンセを担う TC は、楽器以外にも三足の草鞋を履いた英国メタル・アンダーグラウンドの鬼才。ZOPP で知られる Ryan S との蜜月 SOMALGIA 以外にも、BACKSTREET BOYS やブリトニー、果ては K-Pop のブラックメタル化で度肝を抜いた SPIDER GOD に携わり、さらにそうしたブラックメタルの革新を担う俊英たちを一手に引き受けた Repose Records まで立ち上げてしまいました。TC のそうしたイノベーションとチャレンジの哲学には、米国のエッセイスト、マイケル・エルナーの言葉が根幹にありました。
「マイケル・エルナーの言葉が、”Inverted World” “逆さまの世界” のコンセプトを完璧に言い表していると思っているんだ。”すべてが逆で、すべてがひっくり返ってる。医者は健康を破壊し、弁護士は正義を破壊し、精神科医は心を破壊し、科学者は真実を破壊し、主要メディアは情報を破壊し、宗教は精神性を破壊し、政府は自由を破壊する”。 この言葉に共鳴するかしないかだよ。もし共鳴するならば、おそらく “Inverted World” を理解することができるだろうね」
非常に陰謀論めいていて、非常に反抗的で、非常に極端な思想です。少なくとも、バランスのとれた思考の持ち主なら即座に笑い飛ばすでしょうし、当然これを鵜呑みにしてしまうわけにはいきません。
ただし、ここにはおそらく、真実も少なからず含まれています。メディアが情報を大事にしているのか?宗教が心を大事にしているのか?政治が人間を大事にしているのか?あなたがまともだとしても、この問いにはたして即答できるでしょうか? TC は、ややアレな面はあるにせよ、常識を疑い、権力を疑い、メディアを疑うことで、ブラックメタルにかつて宿っていた狂気じみた反抗の精神を、良きにせよ悪しきにせよ、現代に蘇らせているのです。
「僕はプログレッシブとポップ・ミュージックへの情熱を共有していて、ブラックメタルに著しく欠けているものはメロディ、フック、構造だと感じていた。もちろん、Varg が 構造、プロダクション、ハーモニーに反抗したことが、そもそもこのサウンドを生み出したのだと認識しているし、彼らのアルバムは永遠に不滅だよ。しかし、現状を打破して変える必要があるとも思うんだ。同じアイデアを繰り返せる回数は限られているからね。純粋主義者と破壊主義者の戦いは常に続いている」
もちろん、TC の疑いの眼差しは、閉塞的なメタル世界にも向けられています。彼らはメタルの常識を覆し、新しいものの見方(あるいは聴き方)の創造を、自分の頭で考えて、自分たちだけの力で実現しようとしています。例えば、アヴァンギャルドを極めた CREATURE や Igorrr がそうであるように、SOMALGIA はエレクトロニカ、トリップホップ、サイケ、プログレッシブとブラックメタルの複雑な婚姻を次のレベルへと旅出させています。ソマリアなのか、マトリックスの影響なのか、とにかくブラックメタルらしからぬ常夏のアートワークもまさに常識の破壊。
TC は20年後の音楽を生きていて、私たちは彼を通してそれを追体験することができるのかもしれません。さらに SOMALGIA は “The March of Tyranny” のように、ノルウェーの大物アーティストに負けず劣らずアンセム的な名曲を生み出すことができるのです。TC のそうしたポップセンスは、彼が携わるもう一つのブラックメタルの破壊、ポップの黒化を指標した SPIDER GOD にもありありと提示されています。
今回弊誌では、TC にインタビューを行うことができました。「僕たちは、このシーンがかなり陳腐化していて、ちょっとした揺り戻しが必要だと感じていたんだよね。確かに、境界線を押し広げ、常に優れた音楽をリリースしているレーベルやプロジェクトはあるんだけど、誰もがベッドルーム・スタジオとセルフ・リリースのプラットフォームを使えるようになったことの弊害として、クオリティ・コントロールが以前とは違ってきていることが挙げられると思うんだ」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BILLY SHERWOOD OF YES !!
“There’s No Replacing Such a Giant. That Said, I Know Chris Trusted Me To Keep The Flame Burning, So To Speak, Along With The Other Guys In The Band. I Do My Best To Honor His Wishes And Push Forward With YES.”
DISC REVIEW “THE QUEST”
「Chris のような巨人に代わるものはいないよ。とはいえ僕は、Chris が僕が YES の炎を燃やし続けることを信じていたことを知っている。バンドの他のメンバーと同様にね。だから僕は、彼の遺志を尊重し、YES を前進させるために最善を尽くすだけなんだ」
Trevor Horn との一時的な再邂逅 “Fly From Here” から10年。Jon Davison をボーカルに迎えた Chris Squire 最後のスタジオ・アルバム “Heaven & Earth” から7年。結成から半世紀以上を経て、遂にオリジナル・メンバーは誰もいなくなりましたが、それでも YES の炎は赤々と燃え続けています。プログの巨人にとって22作目となる2020年代最初のアルバムは、ファンからの期待、自らのコンフォート・ゾーン、そして未来を見据えた野心そのすべてのバランスが完璧に釣り合った “探求” の結晶。
「複雑な感情だよ。本当に。もちろん、この新譜でYES が前進していることに感激しているよ。だけど、Chris が亡くなったことで、ほろ苦い気持ちもあるんだよね」
WORLD TRADE のアルバムに Chris Squire がゲスト参加を果たして以来、ボーカル、ギター、ベースに鍵盤までこなすマルチ・プレイヤー Billy Sherwood にとってベースの伝説は尊敬する兄のような存在でした。ゆえに、正式メンバーとしては数年の在籍でしたが、1989年からバンドの内外で関わり続けた YES に亡き Chris の後任として、ベーシストとして再び加入することには複雑な想いもありました。
しかし、Chris の遺志と、そして Billy の言葉を借りれば運命、宿命、何かしらの巡り合わせが彼をこのバンドへと再び誘い、その特別な場所で彼は巨人の仕事を継ぎながら、同時に YES を未来へと羽ばたかせる重要な2つの役割を果たすことになったのです。
「すべてのバンドにはリーダーがいると思うんだけど、Steve はその地位を獲得したと思うよ。 彼は長年にわたってバンドに貢献してきたからね。僕は Steve がプロデュースや、いわば “交通整理” をする機会を得たことを嬉しく思っているんだ」
バンドの内外から YES と共に歩み続けた Billy にとっても、現在の Steve Howe を核とした YES が最も “バランス” の取れたしっくりくる布陣なのかもしれませんね。パンデミックにおいて、ファイル共有やオンラインでの共同作業など非常に現代的な方法で制作された “The Quest” は、Steve Howe によってプロデュースまでなされています。1人のメンバーにこれほどその “パワー” と責任が与えられたのは、1994年に Trevor Rabin が “Talk” をプロデュースして以来のことでしょう。
それが一つの理由でしょうか。Roy Thomas Baker の繊細で抑制された “Heaven & Earth” に比べ、”The Quest” は生き生きとした躍動感に満ち溢れています。過去のマスターピースを凌ぐほどの作品かと問われれば答えは否かもしれませんが、それでも遡ることなど決して不可能な時の流れを逆流させるほどの気迫は十分です。その原動力は、やはり決して瑞々しさを失わない Steve Howe の独特なギタリズム。
久々の開幕にプレッシャーのかかるオープナー “The Ice Bridge” ですが、氷の橋は決して割れない強い意志を纏っていました。”Fanfare For The Common Man” を想起させるイントロから安定感を与えるのは Billy Sherwood。Steve Howe 独特のタイム感とギミックは火花のように飛び散り、優雅なボーカルが絶妙に加わります。明らかに、ここには YES の哲学が貫かれています。
環境問題を歌い紡ぐ Jon Davison はやはり Jon Anderson のように聴こえるというよりも、おそらくそうせざるを得ないのでしょうが、間違いなくこれまで以上に自信に満ちていて雄弁。ラストを飾る Steve と Geoff の掛け合いも含めて “Going For The One” のクライマックスのような爽快感を敷き詰めたといっても決して大げさではないはずです。
“Dare To Know” ではオーケストラが一段上の次元へ導き、ミドルテンポの “Minus The Man” では Jon と Steve の音色の甘さを存分に見せつけ、”Leave Well Alone” では Steve が大活躍する ASIA といった風情の80年代的レトロフューチャーがノスタルジアを誘います。そうしてこれまでの YES とは一味違う、70年代の映画のような懐かしさと温かみがアルバムを通して貫かれていくのです。楽曲至上主義を掲げつつ、新たなアイデア、バンドの真価、ファンの期待、そのすべてに必ずしも100%とは言わないまでも大きく応える現行 YES の魂がここにはあります。
「ファンの中に何がベストかを知っていると思っている “腕利きの将軍” はいつの時代にもいるものだけど、結局のところ、運命を決めるのはバンド自身なんだ。 僕は今の YES の一員であることを誇りに思っているし、仲間たちも同じように思っているはずだよ。ただ、現在のラインナップが、YES の歴史の中で最も長く続いているという事実は、僕にとって驚きだったよ。今後もこの方向を変える予定はないし、前に進んでいくだけさ」
Howe, Davison, White, Downs, Sherwood。例えば Jon Anderson, 例えば Rick Wakeman を期待して、もしくは最上級のテクニックを未だに忘れられず、並行世界の YES を夢見るファンが少なくないことはたしかでしょう。
しかし、2015年からバトンを受け継いだこの5人が、最高にクリエイティブで、YES の過去、現在、そして未来を奏でていることもまた事実です。瑞々しくも、Jon Anderson の小宇宙を感じさせる “The Western Edge” には、きっと彼らが今ここにいるすべての理由が詰まっているのかも知れませんね。Roger Dean による美麗なアートワークはもはや勲章。
今回弊誌では、Billy Sherwood にインタビューを行うことができました。「僕にとってプログレッシブ・ロックとは、音楽に宿る自由、表現、想像力の象徴なんだ。 ミュージシャンとしてもライターとしても、そういったものを大切にしているからね」 どうぞ!!
“We’ve Always Been Self-referential. There Are Links Like That Between Every Album. It’s Just This Lovecraft-ian Mythos That Carcass Has Built, This Multiverse. There Are Bookends On Either End Of What Carcass Does, And We Have To Fit Within Those Parameters”
“You Only Have To Look At Those Top Comments To Find Out How Fractured People’s Psychologies Are. This Is Not a Political Issue, I Think It’s a Psychological Issue. There’s a Collective Schizophrenia In The World And The Internet Is Feeding It And Fueling It.”
戦術 -THE ART OF WAR-
Bruce Dickinson は、メタル世界の異端児です。イギリスの巨人、IRON MAIDEN のフロントマンである Bruce は、63歳にもかかわらず今でも旗を振りながら大声で叫び、バンドのマスコットであるエディと剣戟を交わし、若いころといささかも変わらぬ情熱を持ってステージを飛び回っています。背景が変わり、炎が上がると、彼は愛してやまない世界の歴史からインスピレーションを得た古来の衣装を着て、芝居がかった派手な演出で聴衆を釘付けにするのです。
Bruce は、レコーディング・アーティストとして、ライブ・パフォーマーとして、メタル世界最高のボーカリストの一人として当然広く知られています。ただし、同時に彼は、メタル世界においてレジリエンス (心理学における外力による歪み、ストレスを跳ね返す力) の第一人者としても長く記憶されるに違いありません。
2016年、Bruce は舌癌を克服した数ヶ月後に “The Book of Souls World Tour” に参加し、IRON MAIDEN は6大陸で100回以上の公演を行いました。Bruce Dickinson の声は、癌を克服し恐ろしいことにその強靭さを増しています。
「ツアーを3、4ヵ月やってみて…すべてオリジナルのキーで、40年前に使っていたのと同じ音を出している。声のトーンは少し太くなったし…。より頑丈になった。俺は確かにテナーの音域にいるけど、テナーにはさまざまなタイプがある。俺が好きなテナーの一人が、Ronnie James Dio だ。Ronnie は一種のハイブリッドで、年を重ねるごとに彼の声はより頑強になっていったよね。初期の作品、特に RAINBOW 以前の作品に “Butterfly Ball(and the Grasshopper’s Feast)” というアルバムがあってね。彼はゲストとして参加し、DEEP PURPLE の Roger Glober が多くの曲を書き、プロデュースしている。その中に “Love Is All” という曲があるんだけど、彼の声はガラスのようなんだ。とても透明感があって、素晴らしいんだよね。この曲は、アルバムではなくライブでカバーしたいと思っていたんだよ。
11月にハンガリーで Roger と一緒にオーケストラ演奏をすることになっているんだ。去年、ケベック・シティでオーケストラとやったのと同じで、2晩かけて Jon Lord の “Concerto for Group and Orchestra” を演奏して、最後にパープルの曲を5曲演奏したんだ。ハンガリーでも同じことをやるだろうね。
とても楽しいし、オーケストラと一緒に仕事をするチャンスもあるからね。指揮者のポール・マンが他のこともやってみたい?と聞くから、俺は、”メイデンの “Empire of the Clouds” という絶対にやらない曲があるんだけど、これはオーケストラのために作られていて…” と言ってみた。彼はその曲を聴いて、”ああ、これは素晴らしい!” と感動していたよ」
2019年に後に “Senjutsu” となる2枚組の新作アルバムをレコーディングした際には、アキレス腱を痛めながら、手術の翌日にはボーカルを撮り終えました。Bruce はその時のことを、ブーツを履き、松葉杖をついてスタジオに入り、足は “クソ風船” のようになっていたと語っています。そこから彼はツアーに戻り、キャリアを網羅した “Legacy of the Beast World Tour” を継続。毎晩、戦略的にステージを歩き回り、医師がかかとを縫い合わせた直後にもかかわらず懸命に動き回って聴衆を鼓舞しました。
「動き回っていたけど、違う動き方をしていたんだよ。ふくらはぎの筋肉を使わずに動くことを覚えたんだよね。これがなかなか難しくて、従来のやり方ではできないんだ。だから、ジャンプもできないし、走ることもできないし、早く歩くことも問題だった。でも、カニのように歩けば大丈夫だったんだ!」
IRON MAIDEN は、コロナウイルスの流行により、レガシーツアーの残りを2022年に延期することを余儀なくされましたが、さらに Bruce 自身もこの “Senjutsu” リリースの大事なタイミングで軽度のCOVID-19に感染してしまいました。しかし、機長でありレジリエンスの達人はもちろんその心を折られてはいません。
「とても素晴らしいレコードだから、これ以上座って待っているわけにはいかないからね。人々はロックンロールの棚から何かが落ちてくるのを待っていたんだ。だから、このアルバムをリリースするのは、ある意味素晴らしいタイミングだと思うんだ。
体調は全く問題ない。COVIDに感染したから、10日間の自宅隔離を余儀なくされているが。ちょうど1週間前に陽性反応が出たんだ。症状としては、2~3日前から少し気分が悪くなり、少し汗をかき、少し鼻が詰まって、俺の場合は小さな咳が出て、嗅覚も鈍っていたけど、今は少し戻ってきているね。
感染したからといって、ワクチンには全然懐疑的になっていないよ。2回とも接種したし、もし誰かにもう2回接種してほしいと言われたら、真っ先にその列に並ぶだろうな。俺とパートナーは、俺がファイザー、彼女はアストラゼネカのワクチンを接種し、二人とも感染した。でも、彼女はそれを乗り越えたし、基本的に俺も今、かなり克服しているよ。
ワクチンを打っておいたから、症状が軽かったんだろうな。それに、俺の知り合いでワクチンを接種した人は皆、副作用がとても軽いんだよ。ワクチンを接種していない人でコロナになった人を何人か知っているけど、彼らは相当酷い目にあっているよ。たとえ死ななかったとしても、その後かなり長い期間、体調が優れないんだよな。これは50歳以上の人だけではなく、30歳以下の若い人たちにも言えることなんだ」
家に閉じこもるのは退屈で、”Netflixをすべて見てしまった” と告白する Bruce にとって、メイデンの世界に戻ることは、普通の生活に戻ることを意味しています。
「世界が早く常識的なものに戻れば、誰にとっても良いことだよな。俺たちは、その一環として “Maiden is Back” を求めているんだよ」
80分以上という壮大な長さで、最後の2曲だけで30分近くかけてレコードの片面を占める。そんな型破りな音楽とテーマは IRON MAIDEN だけが実現可能な魅力的なメタルドラマでしょう。プログ、フォーク、ブルース、サウンド・トラックなどの影響が随所に現れる、41年の歴史を持つメイデンのタペストリー。”Senjutsu” はそんな匠の伝統に独自の挑戦の形を刻んでいます。
パリのギョーム・テル・スタジオ( “Brave New World” や “The Book Of Souls” を制作したのと同じ場所)で長年のプロデューサーであるケヴィン・シャーリーと再度タッグを組んだ “Senjutsu” の創作過程は、このような全能感に満ちた聴きごたえのある作品にしては、非常にゆるやかなものでした。
「2枚組というのも、自分たちの手の中にあるものに気づくまで、実際には計画されていなかったんだよ。このように濃密で時折挑戦的な作品を作ることが、歴史的なツアーの強壮剤になるという指摘さえも、さりげなく受け流していた。本当に、”アルバム” 以外の計画はなかったんだ。何か決まったアイデアや先入観を持って臨んだわけではないんだよ。
Steve は文字通り2、3日家に閉じこもっていて、その間俺たちはみんなでピンボールをしている。そして彼はこう言うんだ。”おーい!みんなスタジオに来てくれ!” ってね。
Adrian と一緒に作った曲は、もう少しオーソドックスなものだったな。何かができたと思うまで、ギターを弾いたり歌ったりしていたんだ。それからリハーサルをして、そのまま曲にした。言ってみれば、もっとオーガニックなんだよね。逆に Steve は、かなり細かいところまでこだわる傾向がある」
実際、Bruce はこのアルバムで Adrian Smith とのみ楽曲を書いています。
「彼と一緒に書いていると、すぐに物事がうまくいくんだよ。そういう意味では、彼は一緒に作曲するのにとても適した人だよね。彼は、歌いやすいコード構造を考えてくれるし、そこには音楽的な色が含まれているので、俺の頭の中で絵を描き、その上に言葉や曲を書くのも簡単なんだ。
時には、少しずつ入れ替えていくこともある。彼がコーラスだと思っていたものが、途中で何かに変わるかもしれない。コーラスだと思っていたものがギターになるかもしれないけど、それはアイデアを出し合っているうちにわかることさ。Adrian はテニスの名選手なんだけど、彼と一緒に曲を作るのは、ボールを前後にノックするようなものだ。良いラリーになると、”これは良い!” “あれはクリエイティブだ!” となる。実際、エイドリアンとの曲作りはまさにそんな感じなんだよ。
でも、別に Janick と共作しなかったからって意図的なことじゃない。Steve はスポンテニュアスにやるのが好きじゃない。”サプライズだ!俺が全部仕上げた!”というのが彼のやり方なんだ。俺たちは40年以上も一緒に仕事をしているから、お互いの仕事のやり方や長所、短所などを理解しているんだ。
俺と Adrian は、”The Writing on the Wall” 作ったとき、とても驚いたんだよ。彼は、”これは1曲目にするべきだ!” と言った。この曲は俺たちにとっては異色だよ。ある意味では、もう少しメインストリームで、クラシック・ロックのようなものだからな」
JETHRO TULL のような感じもあります。
「JETHRO TULL や DEEP PURPLE みたいな、子供の頃に着ていた “服” を “着せ替え箱” の中から掘り出して、何年も経ってから表に出しているんだよ。俺がバンドに参加していなかった頃の “Prodigal Son” を聴いてみるといいよ。ちょっと待った!と思うだろうね。とても JETHRO TULL 的だから。
俺と Steve は JETHRO TULL の大ファンだけど、好きなアルバムはそれぞれ違うんだよね。俺は初期のフォーク・ロックのファンだけど、彼は “Thick as a Brick” やプログレッシブなものが好きなんだ。あとは “Passion Play” とか。俺はそれほど好きじゃないんだよね。短い曲の方が好きだ。
彼は GENESIS の大ファンなんだけど、Phil Collins の GENESIS ではなく、Peter Gabriel の初期を好んでいる。一方、俺はどちらかというと Peter Gabriel のソロのファンでね。GENESIS を離れてからの彼の作品はよりエッジが効いていると思うからね。”Peter Gabriel III” は、なんて素晴らしいアルバムだろう。”Intruder”, “No Self Control” みたいな不吉さがいい。
あと、俺は VAN DER GRAF GENERATOR というイギリスのプログ・バンドの大ファンでね。彼らは GENESIS と同時代のバンドだったけど、彼らほどビッグではなかったんだ。VDGG はもっとプログレッシブでアート・ロックなタイプなんだけど、俺は彼らと Peter Hammill から歌詞の面で大きなインスピレーションを受けているよ。
まあつまり、俺たち2人の間には、かなりの量の “プログレ” が潜んでいるんだ。ここ数枚のアルバムにはそれが表れているよね」
コロナで始まった2020年代。それだけではなく、IRON MAIDEN に加入したころとはさまざまなことが大きく変化しています。
「今までとはまったく違う方法でプロモーションを行っているよ。リリースの告知には、インターネット上で、イースターエッグ・ハントのようなものを用意したんだ。それに、ミニムービーのようなアニメーション・ビデオもある。
アニメーションは音楽に匹敵するよ。バイクが通ると音がする、人が銃をロックしたりロードしたりすると音がする。男がヤギに変身すると、ベロベロと音がして、バリバリと壁に叩きつけられる。大きなサウンドシステムを使えば、それは素晴らしい音になる。映像に命が吹き込まれたように感じるんだ」
長い間、話題になるようなビデオを作っていないので、人々が想像できないような壮大なものを作りたいと考えていた Bruce を駆り立てたのはドイツのあるバンドでした。
「メイデンのマネージャーであるロッド・スモールウッドに、”RAMMSTEIN の “Deutschland” のビデオを見たことがあるか?”と言ったんだ。あれは、俺にとっては画期的なビデオでね。驚くべきことだよ。俺たちは RAMMSTEIN ではないから、同じことを提案しているわけではなかったんだ。でも、同じくらいのインパクトを与えることができるものが欲しかったんだよ。
画期的なビデオを作りたかった。俺はアニメーターではないからすべてを担当したわけではないけど、ストーリーを書き、元ピクサーのマーク・アンドリュースとアンドリュー・ゴードンが事実上のエグゼクティブ・プロデューサーとして、全体に深く関わっているんだよ」
かつて “トイ・ストーリー” を手がけた人物が、今は IRON MAIDEN のマスコット、エディが政治家の首を切るシーンを書いているのも驚きです。
「俺が脚本を考えたとき、マークはガイドとしてフルカラーの美しい絵コンテを8枚描いてくれた。特に気に入っているのは、最後のシーンでエディがアダムとイブをキャデラックに乗せて、4人のバイカーにエスコートされているところだね。背景にはスタンリー・キューブリックや “ドクター・ストレンジラブ” へのオマージュが描かれていて、まさに俺がこのラストシーンを書いたかのようだった。すぐに、”この仕事をするのにふさわしい人たちだ ” とおもったね。
最初の会議で、マークは “聞いてくれ、僕は勝手にこのオープニングシーンを考えたんだが、バイカーたちはもっと早く登場するべきだと思うんだ。たぶん、ハゲタカのように旋回しているんじゃないかな” と言った。俺は “ロード・オブ・ザ・リングのナズグルだな” と思ったよ。素晴らしいね。
クリエイティブな人たちと一緒に仕事をしていると、すぐに理解しあえるのがとても楽しいんだ。大虐殺で人々を排除する方法を検討していたとき、”実際にどんな銃を持つべきか” というディテールにまでこだわったよ。武器のマイクロデザインをしていたんだよね。
四頭身の死神のようなバイクの男たちが、有害廃棄物の中を走り、逆さまになったアメリカ国旗が、大食いで身なりの悪い政治家を乗せた車に掲げられている…おそらくドナルド・トランプだろうな。まあトランプである必要はないんだけど。これは一般的な比喩だから」
Bruce の中には難解な歴史の教科書と、スター・ウォーズやロード・オブ・ザ・リングが同時に存在しています。だからこそ、リスナーに届きやすいのかもしれません。
「そうだね。でも、そういった娯楽作品がアイデアをどこから盗んで来たと思うかい?ほとんどはシェイクスピアが作ったもので、その前はギリシャ人が作っていたね。その前には、聖書をそのまま引用したものもたくさんあるし。すべてがリサイクルされて、同じ巨大なメディアの洗濯機に入り、新鮮な状態でマーベル・コミックになって出てくるんだ。
俺は神話が好きだよ。特に、ある程度の寓話性があって、今の時代の良き参考書となるようなものがね。邪悪な帝国が常に勝利するわけではないという希望を人々に与えるようなね。救いを得ることができるのだから」
“Death of the Celts” は、1998年のメイデンの楽曲 “The Clansman” には関連性があるようにも思えますが。アイルランドとスコットランドという違いはあるにせよ。
「スカートをはいた男性のことはよくわからないんだけど、Steve (Harris) にはそういうところがあるんだよね (笑)。 “Death of the Celts” は Steve の曲だけど、彼は部族のアイデンティティを脅かすような人たちの曲を書くのがとても好きなんだよね。彼は以前にもネイティブ・アメリカンや少数民族についての曲を書いている。アイデンティティを脅かされているグループに親近感を持っているんだろうな。そして、自分たちが脅かされているときには、変化するよりも死んだほうがましだと思っている。その考え方は、ある意味ではとてもロマンティックだけど、同時にそれがどれほど歴史的なものなのかはわからないよね。なぜなら、実際に一夜にして死滅する民族はいないから。恐竜もそうだった。何が起こるかというと、人々が吸収されるんだよ。バイキングは絶滅したわけではないけれど、吸収され、同化された。最終的には、イングランド北部に住む、金髪で青い目をした人たちになったんだ」
今アメリカでは、自分のチームや教団に属すると思われる人たちに対して反対の声を上げることを、人々はとても恐れています。
「世界全体が二極化しているのを見るとがっかりするね……いや、二極化どころではないね。AとB、左と右、北と南…分断されているんだよな。
それが無責任なソーシャルメディアによって増幅されているんだよ。ソーシャルメディアは自分自身を、”そうか、我々は実際にこの怪物を生み出し、事実上制御不能にさせてしまったが、それは我々のせいではない、それがインターネットなのだ、それが進歩なのだ” と考えてしまっている。
だけど、これは制御可能であり、人々は責任を取ることができるんだよ。小さな小さな極端な意見をメガホンで叫んだところで、SNS と同じようには広がっていかないだろうね。だけどメガホンで叫んだほうが、イデオロギー間の対立ではなく、実際の言論を可能にするかもしれないよね。イデオロギーとは、政治的なイデオロギーではなく、事実に基づくイデオロギーのことだよ。
例えばある人は、”チーズはマインドコントロールの方法である” という信念を持っているかもしれない。それをインターネットで公開すれば、バカな男たちがそれを信じるんだよ。なぜなら、それに対抗する反応がないからね。
かつては、新聞社や信頼できる情報源に行って、”チーズについての本当の話は何か?微生物が私たちの脳に侵入するように再プログラムされたのか、それともただのチーズなのか?” といった具合にソースを確認することができた。だけど、それはますます難しくなっている。俺たちのビデオ “The Writing on the Wall” につけられたコメントを見ればわかるよ。興味深いことに、このビデオは左翼から右翼まで、そしてその間のあらゆる意見からさまざまな主張を受けている。
誰かが “これは終わりの時に関するものだ!”といえば、聖書に詳しい人たちは “そうだ、これはイエス・キリストのことで、彼が我々を救うために戻ってくるんだ” と言い、他の人たちは “いや、これは悪の帝国のことだ” “これはトランプのせいだ” “ああ、これはバイデンのせいだ” “ああ、これはワクチンに関わることだ “とさまざまなコメントがあるんだよね。
正直言って、信じられないことだけど、人々は自分なりの解釈で意見を押し付けていくんだ。これらのトップコメントを見れば、人々の心理がいかに分裂しているかがわかるだろう?これは政治的な問題ではなく、心理的な問題だと思うよ。世界には集団的な統合失調症があり、インターネットがそれに拍車をかけているんだよね」
“Hell on Earth” という曲は、まさにそんな地獄のような世界を反映しているようにも思えます。
「どうだろう。それは Steve の歌詞だからね。彼は俺が言うことを気にしていないと思うけど、ちょっとした象徴主義者なんだよね。彼は主流にはならないんだよ。もしかすると、彼は厄介な集団の一員であるかもしれない。彼は俺が信じていないことも信じているけど、人は自分の信じたいことを信じることができ、それが自由な世界と呼ばれるゆえんだからな。だから “Hell on Earth” で彼は明らかに世界を見てこう言っている。”俺が死んでこの世を去ったら、別の世界に戻ってきて、すべてが悪い夢だったと思えるかもしれない。もう一度やり直せるかもしれない。でも、それまでの間、地球上の地獄にいなければならない” とね」
新しいアルバムのタイトルに日本語の “戦術” を選んだ IRON MAIDEN。これは、相手がどこに力を注いでいるかを見極め、それを利用して勝利のための対応策を構築するという考え方です。Bruce が言うように、”サムライ・エディ” と繋がっているのも重要なポイントです。
「Steve が最初の曲を考えて、”Senjutsu” という曲だと言ったんだ。彼は、日本語で “戦争の術 “という意味だと言った。俺は本当かな?と思ってグーグル検索で調べてみたら、いくつかの異なる意味があるみたいだった。俺らはその中から “The Art of War” でいくことにしたんだ。
何の戦争なのかはよくわからない。歌詞を見て、”これは誰かがゲーム・オブ・スローンズを見まくっているみたいだ!” と思ったんだ。草原から北方民族が降りてきて、そこには壁があって、彼らは何としてもその壁を守らなければならない…」
“Senjutsu” のジャケットには、鎧に身を包んだエディが描かれています。つまり、Bruce にはステージ上で鎧を着たり、サムライ・エディと戦ったりする可能性があるということなのでしょうか?
「国際フェンシング連盟は、特にフランスを中心とした西洋のフェンシング連盟で、ライトセーバーの国際的な競技会を公認しているんだ。冗談ではなく、ライトセーバーの大会だよ。彼らのトレーニングを1、2回見たことがあるんだが、実際に競技用のライトセーバーを持っていて、それが最高にかっこいいんだよ。ジュニアフェンシング用のライトセーバーを買ったんだけど、これが地球上で最もクールなものでね。完全な戦闘用ライトセーバーなんだ。徹底的に叩きのめすことができる。壊れることもないしね。
これをホテルのロビーに持ち込んで、ロビーでライトセーバー合戦をしたことがあるんだけど、誰も止めなかったんだよ。だから、ステージ上でサムライ・エディとライトセーバーで決闘するというアイデアは、ぜひ実現したいね!」
IRON MAIDEN が孤高であり続けられる秘訣。Bruce は最後にそのヒントを語ります。
「IRON MAIDEN は、デビューから41年、17枚のアルバムをリリースしてきたけど、いまだに挑戦し続け、人とは違うことをしたいと思っているし、ファンに対して知的に接したいと思っているんだ。それには根性が必要だし、自分の仕事に信念を貫く勇気も必要だ。このアルバムをライブで全曲演奏したいと思っている。それはかなり野心的かもしれないね。しかし、実際のところ、2枚組アルバムをライブで演奏することによる驚きは、それほど大きな提案ではないんだよ。それは、メイデンがメイデンらしく、反抗的に、確実にやっているだけなんだよね。
驚くようなことをするための鍵は、人々を驚かせようとすることではなくてね。むしろ、IRON MAIDEN であろうと意識するときに、危険が生じる。俺たちが情熱を持ってやっていることは、定義上、すべて IRON MAIDEN になる。しかし、それを考えすぎてしまうと、自分自身を窮地に追い込み、自分自身の決まり文句を再利用してしまう危険性があるんだよ。それはカラオケバンドに任せておけばいい」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MIKE BARBER OF WIZARDTHRONE !!
“Children Of Bodom Played At Tuska Festival And Alexi Dedicated “Bodom Beach Terror” To Me And My Friends, And I Went Home To The UK Feeling More Motivated Than I Ever Had To Follow this path”
DISC REVIEW “HYPERCUBE NECRODIMENSIONS”
「私たちは基本的に過去15年間の音楽を無視していたんだよね。エクストリーム・ウィザード・メタルはうまく機能していると思うよ。レビュアーがこのバンドをパワー・メタル、メロディック・デス、テクニカル・デス、シンフォニック・ブラックと表現しているのをよく目にするけど、結局私たちの音楽はそれらのどれにも当てはまらず、すべての要素を少しずつ取り入れているんだよね」
WIZARDTHRONE は、宇宙から来たテクニカル・パワー・デス・シンフォニック・ブラック・メタルの名状し難き混合物で、いくつもの多元宇宙を越えた魔法使いの王。
カラフルで印象的な音楽性と純粋な不条理の間を行き来する複合魔法の創造性は、ALESTROM, GLORYHAMMER, AETHER REALM, NEKROGOBLIKON, FORLORN CITADEL といったメタル世界のファンタジーを司る英傑を依り代として生まれています。そうして、何百万光年も離れた銀河から地球に到達した彼らのデビュー・アルバム “Hypercube Necrodimensions” には、激しさと情熱、そして知性とファンタジーが溢れているのです。
「歌詞を見てすぐにはわからないかもしれないけど、このアルバムは、現代の政治的な音楽と同じように、同じくらい、強い声明を出していると思うんだよ。これは世界が悲しみと怒りに満ちている時代に作られた情熱と生命の祭典であり、作りながら僕たちにも未来への希望を与えてくれたんだ」
暗く歪んだ2020年を経て、メタル世界でも政治的な発言やリリックは正義の刃を構えながら確実に増殖しつつあります。メタルにおけるファンタジーやSFの役割は終わったのか?そんな命題に、GLORYHAMMER でも “ハンマー・オブ・グローリー” を手に暗黒魔術師ザーゴスラックスと戦う Mike Barber は堂々たる否をつきつけました。
「2007年にフィンランドを旅行した際、共通の友人から Alexi と Janne を紹介されたんだけど、彼らは親切で純粋で、何時間も私たちと一緒にいて、質問に答えたり、ビールを一緒に飲んだり、ミュージシャンになるためのアドバイスをしてくれたんだよね。翌日、CoB はTuskaフェスティバルで演奏し、彼はなんと “Bodom Beach Terror” を私と私の友人に捧げてくれたんだ。私は、この道を進むことにかつてないほどのモチベーションを感じながら英国に帰ったんだよ」
COB + EMPEROR などと陳腐な足し算ですべてを語る気はありません。ただし、未曾有のメタル・メルティングポットでありながら、ここ15年間の方程式をあえて捨て置いた WIZARDTHRONE の魔法には、たしかに亡き Alexi Laiho と CHILDREN OF BODOM の遺産が根づいています。
Mike と Matthew Bell (FORLORN CITADEL)。そのギターのデュエルは “Frozen Winds of Thyraxia” の凍てつくような風速を越えて、まばゆいばかりの爆発的なエネルギーをもたらします。さながら Alexi と Rope のコンビにも似た魅惑のダンス。タイトル・トラック “Hypercube Necrodimensions” では、その場所に ALESTORM や GLORYHAMMER の怪人 Christopher Bowes の高速鍵盤乱れ打ち、フォルクローレの瞬きが加味されて、”Wildchild” の面影がノスタルジアの星砂へと込められます。それは、テクデスのテクニカルな威圧をのみもってしても、パワー・メタルの勇壮をのみをもってしてもなし得ない、奇跡の瞬間でしょう。
一方で、”The Coalescence of Nine Stars in the System Once Known as Markarian-231″ の冷徹で黒々としたシンフォニックな響き、ナレーションを加えた “Black Hole Quantum Thermodynamics” のドラマティックなメタル劇場、”Forbidden Equations Deep Within the Epimethean Wasteland” の複雑を超越した音世界といった、様々なサブジャンルを予測不可能にシームレスに横断するハイパーキューブな黄泉の多次元体は、宇宙の真実を物語る現実を超えた壮大なサウンドに到達しているのです。もちろんそれは、メンバー各自が自身のバンドから持ち寄った “種” を育てた結果でもあり、スーパーバンドとしての理想形をも提示しているのではないでしょうか。
今回弊誌では、Mike Barber にインタビューを行うことができました。「サウンドよりも、彼らのアティテュードがこのアルバムの制作に影響を与えたと思う。ただし、タイトル曲には、CoB の解散に敬意を表して、明らかな影響をいくつか入れているよ。Alexi が亡くなってから、彼らは私にとってまた新たな意味を持つようになったんだ」 どうぞ!!
“The Whole Album Sounds Like Drama, The Music Is Designed Around Being As Exciting As Possible By Having Constant Tension And Release, And The Same With The Stories, They Are Funny But There’s Also a Dramatic Core To Them”
Picton は El Lebrijano の “Saeta al Cantar” を挙げました。
「彼はもっと成功した別のアルバムを出していて、それはより北アフリカ的な側面を持っていたんだ。でもこのアルバムは、フラメンコと北アフリカの音楽を融合させたもので、かなり実験的な演出がなされている。僕は、この演出がとても気に入っているんだ。狂ったようなボーカルサウンド。本当によくできていると思うな。
このアルバムは、フラメンコの枠を超えた、完全に別世界のものだと思ったよ。フラメンコ・ヌエボは、ロックとフラメンコを融合させようとする試み。だけど、これは完全に別のもので、独自のレーンを持っているね。この世のものとは思えないほど、刺激的なプロダクションと巧みなアレンジが施されている。”Dethoned” のイントロなど、”Cavalcade” に影響を与えた部分があるんだよね」
Miles Davis は Simpson のみならず、バンド全員にとって重要な存在です。
「”In a Silent Way” を聴くと、午後8時、ニューヨーク、繁栄している、周りにはたくさんの人がいる、というような感覚を覚える。”What’s Going On” と同じように、特定の空間や環境に身を置くことができるアルバムだと思う。最初の5秒を聞いただけで、すぐにその世界に入っていけるんだよね。マイルスの旅という意味では、”Miles In The Sky” や “Filles de Kilimanjaro” の直後にこのアルバムがリリースされているのは非常に興味深いよね。そして、彼は「ああ、いや、あんなものはどうでもいい、元に戻そう」と言ったわけさ。それを同じミュージシャンと一緒にやるなんて、最高にクールだと思うよ。それは、彼らがいかに素晴らしい存在であるかを証明している。ハービー・ハンコック、トニー・ウィリアムス、デイヴ・ホランド、マイルスといったミュージシャンたちが、これほどまでに抑制された演奏をするのを聞いて、とても謙虚な気持ちになったよ。このアルバムは、音楽的成熟がいかに強力であるかを気づかせてくれた最初のアルバムのひとつさ。
彼らは好きな時に好きなものを演奏できるのに、そうしないことを選んだのだということがよくわかるよね。もちろん、このアルバムは最初のエレクトリック・アルバムであると言われているけど、僕はそうは思わない。 抑制と規律といえば、このアルバムが真っ先に思い浮かぶよ。特にトニー・ウィリアムスは、最も無茶苦茶なドラマーで、ほとんどのアルバムでハイハットだけを演奏しているんだ。他の誰もそんなことはしないだろう。僕にとっては気が遠くなるような話さ。彼は、ポピュラー音楽の中で最もクリエイティブなドラマーだと思うよ。でも、そう言えるのは、彼が両極端なことができるから。彼は、とんでもなくテクニカルなこともできるし、40分間ハイハットを演奏するだけでも、音楽に貢献し、必要なことをすることができるんだから」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KATIE DAVIES OF PUPIL SLICER !!
“I Don’t Think Anyone Should Be Discriminated Against For How They Were Born, Who They Love And How They Look. Hopefully One Day The World Will Be a Better Place Where Things Aren’t As Bad As They Are Today.”
COVER STORY : BLACK COUNTRY, NEW ROAD “FOR THE FIRST TIME”
“Black Country, New Road Is Like Our Very Own ‘Keep Calm and Carry On’ Or Tea-mug Proclaiming That You Don’t Have To Be Crazy To Work Here But It Helps. It Basically Describes a Good Way Out Of a Bad Place. Excited People Sometimes Claim To Have Lived Near The Road And I Keep Having To Explain To Them That It Doesn’t Exist”
BLACK COUNTRY, NEW ROAD
英国最高のニューバンド、世界最高のニューバンド。デビュー作ですでに最高の評価を得て、将来が約束されたかのように思える BLACK COUNTRY, NEW ROAD。しかしこの独創的な、全員がまだ20代初頭の若者たちは地に足をつけて進んでいきます。
「せいぜい、10点中7点くらいの評価だと思ってたよ。誰もが好きになるわけはないからね。大抵、Twitter で音楽を発表しても、2割が熱狂し、5割が知らん顔、残りの3割が嫌うって感じでしょ?」
サックス奏者の Evans がそう呟けば、ベースHyde も同意します。
「私たちはただの7人のベストメイトで音楽を作っているだけなの。注目されることは名誉なことだけど、私はそれとはあまり関係がないのよ」
このケンブリッジシャー出身の7人組モダン・ロックバンドは、プレスの注目を浴びようとはしていません。彼らは結成してまだ2年半ほどしか経っていませんが、今のところプレス、マスコミの必要性を感じていないのです。なぜなら、ライブが、強烈な口コミの熱量を生み出しているからです。
今、南ロンドンのロック・ミュージック周辺で何かが勃発しています。ポストパンクやポストハードコアの枠組みを使って、アシッドフォークからクラウトロック、クレズマー、ジャズ、ファンク、アートポップ、ノイズ、ノーウェーブまで、様々な影響を受けた多様なバンドが、奇妙な新しい方法でそれらを組み合わせて、奇妙な新しい音楽を生み出しているのです。
こういった素晴らしい手腕を持つ若いバンドは、現役または元音楽学生の場合が多く、結果としてお金をかけずに実験や成長ができる練習場へのアクセスが若い才能にとっていかに重要かを示しています。実際、BC,NR のうち3人はクラッシックの教育を受けています。
BLACK COUNTRY, NEW ROAD に参加しているミュージシャンのほとんどは、何人かがそのまだ学生であった2014年にイースト・カンブリッジシャーで結成された NERVOUS CONDITIONS というバンドに所属していました。そのライブパフォーマンスはエキサイティングという言葉でさえ控えめに思え、ダブルドラマーのラインアップは、1982年の THE FALL や1993年の NoMeansNo のような雰囲気を醸し出して、BEFHEARTIAN の喧騒と BAD SEEDS の勢いまで感じさせていました。さらにグラインドコアの激しさと、憎まれ口や軽蔑の念が、瞬時に静謐な美しさに変わるような、煌びやかな輝きを携えていました。
ただし2018年1月にシンガーの Conner Browne がSNSの投稿を通じて2人の別々の人物から性的暴行を受けたと告発され、数日後にバンドは解散を余儀なくされたのです。声明の中で、Conner は告発をした2人の女性に謝罪しただけでなく、バンド仲間にも謝罪しました。
数ヶ月も経たないうちに、ほとんど何の前触れもなく、同じようなラインナップの新しいグループがロンドンと南東部を中心に激しいギグを行っていました。Conner がいなくなり、元ギタリストの Izaac Wood がフロントマンとなり、ドラマーの一人 Johnny Pyke は去りましたが、Chalie Wayne はまだキットの後ろにいます。ベースの Tyler Hyde, サックスの Lewis Evans, シンセサイザーの May Kershaw, ヴァイオリンの Georgia Ellery とお馴染みの顔が新たなバンドを彩ります。セカンドギタリストには Luke Mark が加わりました。
ただし、ラインナップが似ているとはいえ、バンドとしては(全くではないにしても)かなり違ったサウンドになっていました。BC,NR の方が優れていると、数回のライヴで明らかになります。新たにフロントマンとなった Izaac Wood の超越的で文学的なインスピレーションがバンドをさらに進化させたとも言えるでしょうか。
すでにトレードマークとなったシュプレヒコール・ヴォーカルだけではなく、個人的な経験を歌っているというよりも、歌詞の一部または全部がフィクションになっているような、物語性のある曲作り。Wood は散文、詩、韻を踏んだ連歌などを1曲の中で簡単に切り替えています。彼は、視点の変化を伴う複数の物語や、他の曲へのメタ・テキスト的な参照など、ポストモダン的な手法を用いています。
Speedy Wunderground からリリースされたデビュー・シングル “Athen’s France” のセッションで Wood は、1億再生を記録した Ariana Grade の “Thank U, Next” と、彼自身が同年に THE GUEST としてソロでリリースした “The Theme From Failure Part 1” というあまり知られていないシングルをチェックしたと語っています。これらの曲をはじめ、詩的に音楽的に確かな足取りのを並置することは、BLACK COUNTRY, NEW ROAD がどこから来ているのかにかんして、多くの手がかりを提供してくれるはずです。
では Isaac Wood がソングライターになる前は、日記を書いたり、10代の詩人であったり、熱烈なエッセイスト、PCで戦うキーボードの戦士など、文章に馴染み深い人間だったのでしょうか?
「言葉を書くことに関しては、特に長い歴史はないし、豊かな歴史もない。初期の試みはいくつかあったけど、本気で書くことにコミットした最初の記憶は、2018年の “Theme From Failure Pt.1” だった。」
この曲は、歌詞が陽気でメタモダンなシンセポップな作品でした。
「今まで寝たことのある全ての女の子に自分のパフォーマンスを評価してもらったけど、その結果は恐ろしいものだった。 あの曲は、全く同じことを言う方法が50通りもあることを証明しているんだ。」
歌詞の影響力といえば、Wood はブリクストンのザ・ウィンドミル・パブと Speedy Wunderground のレーベルを中心とした狭いシーンの中で同業者、尊敬する人たちを挙げています。南ロンドンの音楽シーンは控えめに言っても今、沸騰しているのです。彼は特に Jerskin Fendrix を称賛しています。
「自分の音楽をやっている時にはほとんど把握していなかった音楽的なコンセプトが、初めて彼を見た時にはすでに Jerskin のセットの中で完全に形成されていたんだ。彼がやったことは面白くて感動的だったけど、決してくだらないものではなかった。僕たちの関係を最も正確に表現するならば、僕は彼の甥っ子ということになるだろうね。」
それに Kiran Leonard の “Don’t Make Friends With Good People” も。
実際、BLACK MIDI, SQUID と共に、BC, NR は単なるポストパンクの修正主義者と定義することはできないにせよ、純粋に優れたポストパンクの復活を祝っているようにも思えます。もちろん、重要なのは彼らがフリージャズやクラウトロックを漂いながら1970年代後半の最高で最も突出したバンドが持っていた精神、ダイナミズム、実験性を備え、新たに開発されたジャンルまで横断している点ですが。コルトレーンの精神から SWANS の異能、TOOL の哲学まで、受け止め方も千差万別でしょう。
「彼らは僕らをもっと良くしようと背中を押してくれるんだ。彼らより優れているというよりも、より良いミュージシャンになって、より良い曲を書けるようにね。もっと練習しなきゃと思うよ」
文学的な影響については、「もちろん、僕はいくつかの本を読んだことがある。明らかに僕は何冊かの本を読んでいて、それらの本が言葉にも不確かだけど影響を与えているんだ。」 と語っていますが、具体的には 数年前に読んでいた Thomas Pynchon (アメリカの覆面作家。作品は長大で難解とされるものが多く、SFや科学、TVや音楽などポップカルチャーから歴史まで極めて幅広い要素が含まれた総合的ポストモダン文学) と Kurt Vonnegut (人類に対する絶望と皮肉と愛情を、シニカルかつユーモラスな筆致で描き人気を博した。現代アメリカ文学を代表する作家。ヒューマニスト) の名前を挙げます。
「芸術の高低の境界線を尊重していない人がいることは問題だけど、少し成功している作家はその境界線を尊重し、それを理解し、それを覆したり、操作したりしているんだよ。彼らは文化についてのつまらない一般化したポイントを作るためにやっているのではなく、実際に人々が共感できるような、感情的に共鳴する何かを言うためにやっているのだから。僕たちは皆、文化的な価値の高低という点では、高いものも低いものも経験しているけど、それらが交差したとき、あるいは境界線が存在するように感じられないとき、その境界線が取り払われたとき、それはその瞬間の感動や感情的な共鳴の一部となるんだ。それが正確に表現できれば、信じられないほどインパクトのあるものになる。だから僕はヴォネガットのような作家に興味を持っているんだ。物語に興味を持ってもらうための安っぽいトリックかもしれないけどね。でも、リスナーが風景を想像するのに美しい言葉や文学的なセンスを使う必要はないんだよ。コカコーラのように、彼らがすでに知っているものを与えて、あとは好きなものを好きなだけ詰めればいい」
意外かもしれませんが、Wood は Father John Misty の大ファンであることも公言して憚りません。
「正直、彼のことをちょっとセクシーな愚か者だと思っていたんだけど、気がつけば彼の後を追いかけていた。彼は世界最高の作詞家ではないけれど、彼の考えていることは完全に、完全に正直だからね」
Wood 自身の初期の文学的な実験としては、”Kendall Jenner” が挙げられるでしょう。ホテルのスイートルームに宿泊するTVスターを、彼らの意志に反して強引にその場を訪れるリアリティーショーの一場面。もちろんフィクションですが、Kendall (カーダシアン家のお騒がせセレブライフで知られるモデル、タレント) は自殺の前に、(私はNetflixと5HTP の申し子/私の青春時代すべてがテレビで放送されている/何も感じることができない/ジュエリーを脱ぐと私は空気よりも軽いのよ)と嘆きます。
「僕はちょうど面白いと思った物語の装置を試してみたかった。音楽の終わりは前のセクションとはかなり対照的で、物語にはある種のクライマックスが必要だと思ったので、多くのものと同じように、死で終わったんだ。この作品は、彼女の立場や場所について、あるいは彼女のファンや視聴者についてのより広い解説を意図したものではないんだ。別に視聴者の共犯性をあげつらってもいない。いつも彼女や彼女の家族の出来事を楽しんでいたからね。ストレートな物語性のある作品を作るのは初めての試みで、今振り返ってみるとちょっと刺激的すぎたかもしれない。もちろん、女性を差別する意図なんてないよ?そんなことは考えたこともなかった。」
“For The First Time” は昨年3月にイギリスがロックダウンに入る前にレコーディングされた最後のアルバムの一つであり、混乱の中で録音されたアルバムとして完全にふさわしいものだと感じられます。屹立したポストロックの冒険と皮肉なポップカルチャーへの言及に満ちたレコードは、反商業的で、リスナーが純粋なポップミュージックを期待していたのであれば間違った作品を手に取ったと言えるでしょう。
では、この作品で Wood はソングライティングの際に実際の自分に近いペルソナを採用したことはあるのでしょうか?
「最初の曲(”Athen’s France” や “Sunglasses”)では、大きな不安の中で自分を守ろうとしたときに現れる、哀れでシニカルな思考に焦点を当ててきた。だから、そうなんだと思うよ…男の内面をキャラクターで書いてきたからね。それは厄介で、時々うまく翻訳できないこともあると思うんだけど…。例えば、初期の曲では女性の描写がやや一次元的だったと思われていたのは間違いなく後悔しているよ」
カニエ、NutriBullets、デンマークの犯罪ドラマへの言及でポップカルチャーへのアイロニーを匂わせながら、不快なほどに生々しく別れの領域を掘り下げる “Sunglasses”。その機能と意味はまるでボックスを踏み続けるダンスのように、9分という時間の中でずっと続いています。傷ついた自我、嫉妬、不安、その他全てを語るこのトラックの強烈さを考えると、当然のことながら、Wood は具体的な解説を避けようとします。
「多くの人の心の中にある特定の視点から書かれている。それは信じられないほど悲観的で傲慢に感じることがある声なんだ。多くの人が初めて’Sunglasses’を聴いた時に、耳障りで擦り切れたような感じがすると思うんだ。でも実際には、音だけじゃなくかなり苛立たしげな声を出していて、かなり馬鹿げた抑揚をつけていて、それはとても泣き言で、演技的で、かなり大げさなんだよね。聞いているとかなりイライラしてしまう。他の多くの人もそうだろうね」
そもそも、ポストパンクやそれに隣接するシンガーで実際誰もが認める実力者など、Ian McCulloch, David Bowie, Scott Walker くらいではないでしょうか。Mark E Smith, Sioux, Ian Curtis, Iggy Pop への評価が突然負から正へと反転したリスナーは少なくないでしょう。
「願わくば、僕のヴォーカルをたくさん聴いて、声に対する経験がある時点で反転してしまえばいいんだけど。そうすれば、リスナーは僕の歌に夢中になり、それを楽しむようになるからね」
“Sunglasses” の異質なアレンジメントについては「この曲は、物語の中で何が起こるのかという点を、音楽的にかなり露骨に設定していると思う。説明するまでもないだろうけど。何かが起こって、最初の道とは別の道で終わる。音楽はそれを追っているだけなんだ。天才的なポップ・コーラスが書けない時には、この書き方が効果的だと思うよ」
最近まで Wood は10代でした。彼にはまだ時間がたっぷりと残されています。そして刻々と変化を続けるはずです。もちろん、だからこそ現在の曲作りには、若者特有の不安感も。
「不安が意識的に影響しているとは全く考えていないけど、とても重要な時にはよく感じるし、自然とそのことについて書いたり歌ったりするね。そして、なにかを放出する時には、単純に自分自身かなり圧倒されていることに気づくことがあるよ」
BLACK COUNTRY, NEW ROAD という奇妙な名前を Wood はプロパガンダだと説明します。
「僕たちなりの『Keep Calm and Carry On』のようなもので、ここで仕事をするのに必ずしも狂っている必要はないけど、助けになることはあると宣言しているんだ。基本的には、悪い場所から抜け出すための良い方法だと説明しているんだよ。興奮した人たちが時々、この道を知ってるなんて言うんだけど、僕はそれが存在しないことを彼らに説明し続けなければならないんだよ」
このバンドの飄々としたウィットは “For The First Time” 全編に現れていますが、特にオープニングの “Instrumental” でのおかしなキーボードリフはその証拠でしょう。通常、待望のバンドのデビュー・アルバムを紹介するような方法ではありません。Evans が紐解きます。
「奇妙だからといって、それが必ずしも悪いとは限らない。シンセのラインが目立つのはおかしいし、曲の中心になるのもおかしい。だけどそれは素晴らしいことだと思うよ。僕たちは4つのリード楽器を持っている。実際には5つかもしれない。2本のギター、ボーカル、サックス、バイオリン、そして鍵盤を使って、みんなで細部にまで気を配る必要があるんだ。細部にまで気を配っていないと、たぶん聴いていて気持ちの良いものにはならないだろうね。僕たちは我慢しなければならない。だからこそうまくいくんだ」
実験的レーベル Ninja Tuneと契約したのは、収穫でした。コンタクトはラブレターという21世紀において脇に追いやられ、枯れ果てたスタイル。型にはまらない契約だったからこそ、完璧にフィットしていたのでしょう。未知の世界への感覚も魅力の一つだったと Hyde は説明します。
「彼らが私たちメンバーの中の誰かを知っているとは思えなかった。とてもエモーショナルになったわ。私たちに契約を申し入れていた他の誰も、このような方法で感情を表現していなかったからね。彼らはわざわざそんなことをする必要はなかったけど、そうしてくれたの」
このグループがすでに若いファンの想像力を掻き立てていることに注目すべきでしょう。”Opus” を制作した最初のセッションでは、新グループと旧グループとの差別化を図るための議論があったのではないでしょうか?
「具体的にいつ、どのようにしてそうなったのかは覚えていないけど、BC,NRで何をしたいのかという理解はあったのだと思う。NERVOUS CONDITIONSを2~3年やっていたんだけど、その間に開発したものをいくつか取り入れたいと思っていたのは確かだよ。でももちろん、それまでとは違う種類の音楽を作りたいという願望もあるし、現在の作品は、僕ら全員にとってよりくつろげるものになっていると思う」
Hyde も同意します。
「感情的にも音楽的にもつながっているんだから、私たちは何かを作り続けるしかなかったの。感情的には脆くなって、もがいていたけどね」
最新シングルとなった “Science Fair” は、前衛的なギターとブラスのモンスター。Evans のお気に入りです。
「この曲はかなりストレートなものだよ。キューバ風のビート・フリップなんだ。科学的に完璧なドラム・ビートだよ」
一方、Georgia は、起源が東欧とドイツ、伝統的なユダヤ人の民族音楽クレズマーがバンドにもたらした影響を説明します。ヴァイオリンとサックスは伝統的なロックの楽器ではありませんが、クレズマーのバックグラウンドは新たな扉を開きました。
「祝賀会の音楽みたいなものよ。パーティーミュージックなの。ユダヤ文化の中で人々が集まる時に演奏されるのよ。悲しい音楽でも、かなりハッピーな音楽。でも、マイナーキーだから悲しそうに聞こえるのよね」
アルバムのタイトルでさえも、奇妙な場所から抜かれています。それは Isaac が偶然見つけた “We’re All Together Again for the First Time” と題されたデイヴ・ブルーベックのジャズ・アルバムからの抜粋でした。
曲作りのプロセスは決まっているのでしょうか?
「具体的なプロセスはないんだけど、最初のアイデアはたいてい Lewis と僕がスケッチをして、それからハーモニーを奏でることのできるメンバーがトップラインなどでそのスケッチを補強していくんだ。その後、グループ全体で肉付けをして分解し、全員が満足できるものに仕上げていくんだよ。その時にテーマを考えて、歌のための言葉をまとめるんだ。曲作りの過程で言い争うことはほとんどないね」
それはバンドのサウンドの断片の組み合わせ方にもはっきりと表れています。”For The First Time” は例えば「エキゾチックな」着色剤を使っただけのロックではありません。クレズマーとポスト・ハードコアという、表向きは全く異なる要素が反復合成されていることを考えると、このバンドにはいくつかの「異なる陣営」が存在しているのではないかと疑いたくもなります。
「確かに相対的な専門知識のポケットはいくつかある。Georgiaと Lewis はクレズマー音楽の経験が豊富で、Georgia は現在 Happy Bagel Klezmer Orkester と共演しているし、Lewis は若い頃に経験豊富なクレズマー音楽家と共演して彼らから即興演奏の仕方を教わり、それが彼の作曲に大きな影響を与えているんだよ。May はクラシックの分野に最も多くの時間を割いているし、僕はARCADE FIRE のアルバムを最も多く所有している。でも、これらの影響を受けたもの同士がお互いに争っているわけではないんだ」
Evans も同意します。
「僕たちはとても仲が良いから、誰かにアイデアがクソだと言われても気が引けることはないよ。ソングライターの中には、音楽は自分の赤ちゃんのようなものだと言う人もいるけど、それは僕たちのエートスではないんだよ。僕らは常に曲を変えているし、7人組のバンドでは手放す能力が本当に重要なんだ。独裁者にはなりたくないんだよね。他にも6人の素晴らしい才能を持った人がいるんだから、彼らを無視して何の意味があるんだろう?それは音楽を悪くするだけだ。もしそれが1人の手によるものなら、僕らの音楽はクソになっていただろうね」