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COVER STORY 【REMEMBERING VITALIJ KUPRIJ (ARTENSION, RING OF FIRE, TRANS-SIBERIAN ORCHESTRA)】


REMEMBERING VITALIJ KUPRIJ (ARTENSION, RING OF FIRE, TRANS-SIBERIAN ORCHESTRA)

“Knowledge, Experience, and Confidence Are The Tools That I Use To Improve Myself. Knowledge Is Something You Gain As You Do It. You Apply Your Knowledge And Get Experience Out Of It. Confidence Is Something You Need In Your Vision To Survive And To Defend Your Point Of View As An Artist. Otherwise You Are Just a Copy Machine Or a Shallow Artist.”

HIGH DEFINITION

ウクライナ系アメリカ人のマエストロ、Vitalij Kuprij が亡くなりました。享年49歳。Vitalij は、コンサートホールのグランド・ピアノでベートーヴェンの協奏曲第4番を弾くのも、アリーナでフル・ロック・バンドに囲まれてネオクラシカル・メタルを披露するのも、両方お手のものでした。
Vitalij はクラシック、メタル、どちらのジャンルにも精通しており、クラシックの楽曲を演奏するソロ・アルバムと、コルグのキーボードでロックするプログ・メタル ARTENSION や RING OF FIRE でも存在感を発揮。のちに、あの TRANS-SIBERIAN ORCHESTRA にも加わり、メタル世界にとって不可欠な存在となっていきました。ARTENSION のファーストは本当に斬新で、キャッチーで、変態で、あの時代に消えかけていたプログ・メタルの炎を再燃させてくれました。
特筆すべきは、彼が教育をしっかりと受けたプロのクラシック奏者だったことで、当時メタル世界の演奏者に彼のような背景を持つ人物はほとんどいませんでした。だからこそ斬新で、個性的な作曲術、特殊なミキシング、鍵盤を打ちのめすような演奏、強烈なアイデンティティまで愛されるようになりました。アルバムを聴けば、音を聞けば、クレジットを見るまでもなく彼だとわかる。
だからこそ、あまりに早すぎるのです。ただでさえ、メタル世界にカリスマ的キーボーディストはほとんど残されていませんし、新たに登場してもいません。Jens Johansson, Andre Anderson, Jordan Rudess, Derek Shrenian…残念ながら、明らかに両手に収まるほどの人数です。Vitalij がこれから残すはずだった音楽、育てるはずだった人たち…あまりにも大きな喪失です。せめて、彼の言葉、ストーリー、メソッドをここに残しておきましょう。音楽は永遠に消えませんが、物語は語り継がねば消えてしまうのですから。

Vitalij の家はミュージシャンの家系でした。
「父はプロのトロンボーン奏者だった。彼はたくさんの役割があってね。トロンボーンが主な楽器だったけど、音楽教師でもあり、音楽学校の校長でもあり、文化会館の館長でもあった。 自分のバンドも持っていて、ベース奏者でもあったね。父は私をトラブルに巻き込んだ張本人さ (笑)。
最初は父の親友が、私にアコーディオンを習わせようとしたんだ。アコーディオンは、ウクライナではとてもとてもポピュラーな楽器だこらね。父はその年の9月のアコーディオン・レッスンに申し込んだ。レッスンを始める前日、父は私を仕事場に連れて行った。そこでフォーク・バンドのために作曲をしていて、私はそこにあったアップライト・ピアノに駆け寄ったんだ。後で父に聞いたんだけど、私はそこでジャムを始めたらしい!私の指は自然にピアノの鍵盤に触れた。 父はその友人に電話して、私をアコーディオンのレッスンからピアノのレッスンに変えることを告げた。 私の人生は完全に変わったんだ! 本当に感謝しているよ。アコーディオンは嫌いじゃないけど、ピアノは王様だからね!」
そうして Vitalij は、ウクライナでクラシックの訓練を受けることになりました。
「クラシックの訓練は基本的に伝統的な西洋音楽だったね17~18世紀の偉大な作曲家を学んでいった。モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスとかね。ウクライナにも偉大な作曲家が何人かいて、学校では彼らの曲も教わったよ。 その中には今日まで心に残っている素晴らしいピアノ曲がいくつかある。 もちろん影響を受けたよ。 レフコ・レヴツキーという偉大な作曲家がいた。彼の音楽は、とても民俗的なものだ。とはいえ、私の訓練の主な基礎はドイツとフランスの音楽だったね」

最も影響を受けたクラシックの作曲家は誰だったのでしょう。
「いつも変わるんだ。自分の楽器や真のクラシック・トレーニングの技術をマスターしたければ、視野を広げ、一つのことに集中しないこと。ただ私にとって際立っていた作曲家はショパンかな。 ショパンは主にピアノのために作曲した。幼い私にとって、ショパンは憧れの存在だったよ」
11歳の時、Vitalij は音楽的訓練を続けるために家を出てモスクワに行き、その後、全ユニオン・ショパン・コンクールに史上最年少で出場して優勝しました。
「当時のソ連では、どんな訓練を受けてもスパルタだった。軍事であれ、音楽であれ、絵画であれ何であれ、軍隊のように行われていたんだ。とても厳しかった。 狭い部屋に5人という寮生活で、プライバシーはなく、すべてが公開されていた。シャワーは週2日。それは最も奇妙なことだったけど、同時に感謝しているんだ。私は必要な規律を得たからね。レッスンは、西欧やアメリカで行われているような週1回ではなかった。私は1日に2、3時間のレッスンを2日おきに受けていた。残りの時間は練習に充てたね。
すべての作曲家を勉強したけど、先ほども言ったようにこの頃の私はショパンに惚れ込んでいて、他の曲は弾きたくなかった。 それは政府に “ファック・オフ” と言っているようなものだった。 先生に “他の曲は弾きたくない” と言ったので、学校の先生たちは、ショパンだけに専念させていいかどうかで議論になった。最終的に、学校の代表としてショパン・コンクールに出場するなら、ショパンの曲だけに専念してもいいということになったよ。
そのコンクールで優勝したことで、本当に道が開けた。 13歳の時に3ヶ月間、列車でソ連をツアーしたんだ。
ショパン・コンクールはロシアの北にあるカザンで開催されてね。私は初めて飛行機に乗ったのだけど、ひどい吹雪の中だったよ。まあだから、良い思い出もあるんだけど、ロシア人と思われることもあるのは困るね。私はウクライナ出身だから」

そんなクラシックの申し子が、他のジャンルに目を向けるきっかけが、Yngwie Malmsteen でした。
「たしかに父がフォーク・バンドで演奏したりするのは見ていたけれど、私は完全にクラシック・オタクだった。 当時、ソ連にはメロディヤというレコード会社しかなかったんだ。兄が Yngwie のアルバム “Trilogy” を買ってきてくれたんだ。それをかけて、あの素晴らしき “Liar” を聴いた。 すぐにバンドを組みたくなった。友達に頼み始めたんだ。
Yngwie のアルバムに心を掴まれたけど、THE BEATLES の “A Taste of Honey” というアルバムもあったし、QUEENのアルバムもあった。 それらすべてをいつも聴くようになったんだ」
Yngwie のどこに惹かれたのでしょう?
「Yngwie はそれほどキーボードをフィーチャーしていなかった。 初期のアルバムではもっと多かったかもしれないけどね。だから結局は、Yngwie の演奏だった!とてもテクニカルで、同時にメロディアスだった。表現力とハーモニーが大好きだった。
それから何年も経ってから、イングヴェイから電話があって、彼のバンドに誘われたんだ。彼のアルバム “Alchemy” に参加してくれってね。彼は電話してきて、私をフロリダに呼んで、このアルバムでキーボードを弾いてくれと言ってくれたんだ。
でも当時私はすでにソロアルバムを2、3枚出していて、ARTENSION のアルバムも2、3枚出していた。そしてクラシックの世界でもブレイクしようとしていたんだよね。だから、そのオファーを丁重に断ったんだ。
Yngwie と一緒に仕事をしたかったけど、彼がシュレッドしている間に2つか3つのコードを弾くために、自分のレコードや ARTENSION のレコードでやっていたことを諦めたくなかったんだ。でも、ギターとキーボードの革命的なシュレッドでネオ・クラシックのモンスターを作れたら最高だと思う!そのレコードは音楽的に素晴らしいと思う。
ただね、気がつくと、彼は日本のマスコミで私のことを “経験がない” と酷評していた。私はロックの世界に入ったばかりで、まだ何も発表していないとね。彼は私のことをよく知りもしなかった。私が “イエス” と言わなかったからって、マスコミで私をゴミ扱いしないでよ (笑)」

ウクライナやソビエトでは、メタルを学ぶことも簡単ではありませんでした。
「徐々に学んで行ったよ。私の国では何でも手に入るわけではなかったからね。西洋のロックバンドのほとんどは、ずっと後になってから来るようになった。私の国にはロック文化がなかったんだ。 でも結局、兄が洋楽をたくさん集めていたので、それを聴いて自分の音楽スタイルを確立していったんだ」
コンクールで優勝した後、Vitalij はソビエトで国内ツアーを行いその後、スイスでさらに修行を積みました。
「バーゼル音楽院で4年間、全額奨学金をもらって勉強したよ。有名なオーストリアのピアニスト、ルドルフ・ブッフビンダーに師事してね。彼は西洋の演奏スタイルや規律について多くのことを教えてくれたんだ。私はロマン派的でロシア的な環境で育ったので、ブッフビンダーは西欧的な規律ある態度で私を磨いてくれたんだよ」
ARTENSION のギタリスト Roger Staffelbach に出会ったのもスイス留学中でした。
「Roger はもう25年来の友人だよ。夏の間、スイスの小さな町に住んでいたんだけど、そこにピアノ・バーがあって、よく通ってジャムっていたんだよ。そこに Roger が入ってきて、自己紹介してくれたんだ。私はドイツ語が話せなかったから、少し言葉の壁はあったけど、彼はキーボード奏者を探していてね。彼と私は意気投合し、一緒に演奏するようになった。月曜日から金曜日まで、私は電車で1時間のところにある音楽アカデミーで音楽を学び、金曜日の夜、電車で Roger の家に行き、週末は彼のガレージでリハーサルをした。 日曜の夜はまたアカデミーに戻る。
Roger と私は、さらに2人のスイス人奏者と素晴らしいインストゥルメンタル・カルテットを結成したんだ。ATLANTIS RISING という名前だった。私はネオクラシックの曲を書き始め、カセットテープを作るためにお金をつぎ込んだ。カセットテープを300本は作ったと思う。私たちはスカンクのように無一文で、CDを作りたいだけのハングリーな少年だった!」

このカセットの一つが、シュレッドの総本山、シュラプネル・レコードに届くことになりました。
「シュラプネルの Mike Varney が聴いてくれたよ。Roger と私は2人ともアメリカに行くことになった。Roger が西海岸にいる間に、私はカーティス音楽院のオーディションを受けるためにフィラデルフィアに行ってね。 オーディションの後、私は Roger のところへ飛んで行き、その後2人でカリフォルニアのノバトへ飛んで Mike に会ったんだ。当時、シュラプネルは、私たちがやっていることと似たような音楽をたくさんリリースしていたからね。そして彼らは私たちと契約し、それが ARTENSION となったんだ」
世界でも有数の難関音楽学校に入学し、ARTENSION を結成してファースト・アルバムをリリースし、翌年にはファースト・ソロ・アルバムをリリース。カーティスに通いながら、どのようにすべてのバランスをとっていたのでしょう。
「大きなキャリアを築くのは、2つの分野を情熱的にターゲットにすると難しい。でも、私はそれがどんなに難しいことであっても気にしなかった。学期を終えて、他の学生が休みに入っている間、私はピアノで作曲をし、自分が何を書いていたかを思い出す。そしてカリフォルニアに飛び、ARTENSION でレコーディングをし、また戻ってクラシックの勉強に戻る。カーティスは厳しい学校で、おそらく世界ナンバーワンだろうな。
ARTENSION だと、”Phoenix Rising” は素晴らしいと思うし、もちろん “Into the Eye of the Storm” は最も印象に残る作品だけど、私は “Forces of Nature” が本当に好きなんだ。新しいベーシストとドラマー (John Onder と Shane Gaalaas が加わって、また違った雰囲気になった」

ARTENSION でツアーは行ったのでしょうか?
「いや、ARTENSION はライブをやったことはないんだよ。でも、日本での成功が大きかったので、ほとんどやれそうだった。ファースト・アルバムはゴールドになるところだったからね。日本でのツアーを計画したんだけど、ツアー・マネージャーが私の書類をめちゃくちゃにしたんだ。 当時私はまだ若く、ソ連のパスポートを持っていて、アジアを旅行するときにどんな特典があるのか知らなかった。 私はサンフランシスコのホテルで就労ビザが下りるのを待っていた。で、結局私はそのツアーに出られなかったので、他のメンバーはプロモ出演をして、飛行機で帰ってきたんだ」
ARTENSION のアルバムには、”I Don’t Care”, “I Really Don’t Care”, “I Really, Really Don’t Care” というピアノ曲が収録されていました。
「最初のアルバムでは “I Don’t Care” だった。座ってジャムったんだ。Mike が私の才能を高く評価してくれていたから、ちょっと披露したかったんだ。アルバムにピアノ・ソロの曲を入れなければならなかった。 そして次の作品では、そのコンセプトを続けたいと思った。安っぽいけど面白い(笑)」
2001年にボーカリストの Mark Boals のソロアルバム “Ring of Fire” で彼と一緒に仕事をするようになりました。
「Mark とやれることで興奮はしなかったが、もちろん賞賛はした!彼は僕にとってとても重要なアルバム “Trilogy” で歌っていて、一緒に演奏しようと誘ってくれたんだからね!楽しかった。そのソロ・アルバムにちなんで、実際のバンドになったんだ。私が曲を書き、Mark が歌詞とメロディーを書いた」

バンドは2枚のスタジオ・アルバムと、日本で録音された2枚組の素晴らしいライヴ・アルバムをリリースしました。ただ、Vitalij が参加していない作品もあります。
「Mark と私はいくつかの点で誤解しあっていた。大げさなことではなく、私たちが同意できなかったことがあっただけなんだ。ARTENSION は、キャリアの始まりという点で、私の心に少しだけ近かったので、私は ARTENSION と自分の作品に集中し続ける一方で、Mark には他のプレイヤーと一緒にやるように伝えたんだ」
Vitalij のソロアルバムはほとんどがインストゥルメンタルで、ソロのための十分なスペースがあり、鍵盤を前面に出しています。ARTENSION はボーカルを起用していますが、RING OF FIRE ほど大人しくはありません。
「ソロ作は私がほとんどの曲を書いたので、常にキーボード中心だ。ボーカルを書く機会も模索していたけどね。ボーカルものでは、私が派手になるという点では限界があったかもしれないけれど、ソロ・アルバムを通してならそれができる。 アルバムが進むにつれて、バンド自体のパワーに集中するようになったから、私が目立つことは少なくなった。でも、どのアルバムにも必ず私らしさがあるよ。
それに、ARTENSION では John West の音域を知り、バンドのスタイルを知り、バンド内のプレイヤー同士の相性を知りながら書くことも意識した。RING OF FIRE でも同じだ。
今は、ただ書いて、とてもパワフルでエモーショナルな感じの音楽にしたいと思っている。より作曲に集中し、より成熟したレベルに持っていく。自分が経験したことから集めた知識をすべて活用し、特定のバンドやプロジェクトをターゲットにすることなく、淡々と書いている。私はただ自分の書いたものを捕らえ、保存し、発展させ、変化させ、また戻ってきたいだけなのだ。 音楽を書くことは、とにかく驚異的だ。とても無邪気なプロセスで、新しい情報が生まれるから大好きだ。 何もないところから始めて、音楽的でスピリチュアルな情報を得る」

例えば、RING OF FIRE アルバムの中を見ると、”All music written by Vitalij Kuprij” と書かれていますが、ギター、ベース、ドラムのパートも Vitalij が書いているのでしょうか?
「すべての曲、すべてのパートをキーボードで書いているよ。だから、ギター、ドラム、ベースがキーボードで演奏され、他のメンバーが何を演奏すべきかの明確な方向性を示しているんだ。 特に後期のアルバムでは、より考え抜かれたものになっている。即興的なものはなるべく省いて、自分自身に任せるようにしている。 だからレコーディングのためにメンバーが集まったときには、構造的にはかなり練られているんだ。
ただ、決まった公式があってはならないと考えている。何かを目指さなくてはならないが、物事は自然に起こるものだ。それがあなたなのだから」
TRANS-SIBERIAN ORCHESTRA での最初のツアーは2009年のイースト・ツアーでした。
「あれは完全に “青天の霹靂” 。ある朝起きてコーヒーを飲み、メールをチェックした。彼らのマネジメントから、Paul O’Neill と会うためにフロリダまで来てほしいというメールが来ていた。 彼らがどのようにして私のことを知ったのかはわからない。Paul が何でもできてフレキシブルなキーボーディストを探していたのは知っている。彼はレコード業界で一緒に仕事をしたことのある人に電話して、その人が私を推薦してくれたんだ。数週間後、私はそこにいた」

TSOや SAVATAGE のことは知っていたのでしょうか?
「SAVATAGE は知っていたよ!なんて素晴らしいバンドなんだ!Burrn! 誌の SAVAGAGE 特集に載ったこともあるんだ。SAVAGAGE の曲を演奏するのは楽しいよ。もし彼らと一緒にツアーに出て、彼らの曲だけを演奏できるのなら、今すぐにでもやりたいよ。とてもロックで楽しくて、本当に僕の好みなんだ。Chris Caferry は John West と仲が良かったので、彼のことはよく聞いていたしね」
2015年の Wacken では、その SAVATAGE の一員とさはてプレイしました。
「うれしい依頼だった!私は彼らと彼らの音楽が大好きなんだ。これも私にとって忘れられない瞬間だった。それが Wacken だったことも、イベントの規模も忘れて。SAVATAGE の音楽を演奏することは、僕にとってとてもスリリングなことだった。Roger と初めて会って、ATLANTIS RISING を結成したときのことを思い出すよ。フロリダでリハーサルをやっていたんだけど、演奏しながら文字通り飛び跳ねていたよ。
“Jesus Saves” を演奏しているとき、私は飛び跳ね、汗をかき、ただとても楽しかった。2014年のヨーロッパTSOツアーで SAVATAGE の曲を演奏したのは素晴らしかったけど、SAVATAGE の一員として、SAVATAGE を愛し、SAVATAGE を観に来てくれたファンのためにここで演奏するのは本当に特別なことだった」

ウォームアップのルーティンなどはあるのでしょうか?
「楽屋にキーボードがあって、指の運動をして血の巡りをよくするんだけど、それはクラシックで訓練されたキーボード奏者としてはごく普通のことなんだ。でも、本番前の精神集中が大事なんだ。 ステージに上がる10分くらい前からシャットダウンして、目を閉じてアドレナリンと責任感に苛まれるモードに入るんだ」
Vitalij のアルバムのライナーノーツには、たいてい、”知識、経験、自信” を使っていると書かれています。
「それは私が自分自身を向上させるために使うツール。知識はやっていくうちに得られるもの。知識を応用して経験を積む。自信は、アーティストとして生き残り、自分の視点を守るために必要なものだ。そうでなければ、ただのコピーマシンか、浅薄なアーティストになってしまう」
クラシックの方だけに専念して、クラシックのピアニストとして名を馳せることを考えたことはあるのでしょうか?
「もちろん、若い頃はね!ヴラジミール・ホロヴィッツは私のアイドルだからね!ヨーロッパでオーケストラと共演したこともある。リサイタルもやったし、マスタークラスも開いた。ブラームスのピアノ協奏曲第1番、ラフマニノフの第2番、ベートーヴェンの第4番を演奏したよ!でも、そう、私は木のように自分を広げている。 私は音楽の力と喜びを感じられることをしたいんだ。私はクラシックの訓練を受けているので恵まれているけど、選択肢はたくさんある。クラシックを演奏することもできるし、ネオクラシカルなシュレッドを演奏することもできる。 私に音楽の喜びをもたらしてくれるものなら何でもいいんだ」

ホロヴィッツをアイドルとして挙げていますが、ロック面では誰に影響を受けているのでしょうか?
「ロックをあまり聴くことができなかった国から来たので、そのような影響という点では、本当にスクエア・ゼロからのスタートだった。尊敬する偉大なロック・キーボードのレジェンドたちのディスコグラフィーを研究していたら、自分自身の何かを失ってしまうということに気づいたんだ。私は完全に暗闇の中で狩りをするような気持ちでやっている。 偉大な音楽の一部が無意識のうちに沁み込んでしまい、”生の自分” を少し失ってしまうことが怖いんだ。
確かに Keith Emerson, Jon Lord, Rick Wakeman には大きな愛と敬意を抱いている。そして現役のプレイヤーでは、Jens Johansson を尊敬している。昔の彼はとても面白くて、とてもクールだった。彼自身も素晴らしい。Mike Pinella の大ファンでもある。Jordan Rudess も大好きだ。以前は、テクノロジーに重点を置く彼の芸術へのアプローチに懐疑的だった。 私は作曲してからスタジオでレコーディングするのが好きなんだ。しかし、そうしたプレーヤーに憧れているにもかかわらず、私は彼らから影響を受けてはいない。よくアーティストに尋ねると、”この人やこの人がいなかったら、私は今やっていない” と言うだろうが、私はそうではない。 自分の要素に集中する余地がなくなるから、頭の中にあまり詰め込みたくないだけなんだ」
メタルで好きな作品はあるのでしょうか?
「私は DREAM THEATER が大好きだ。すべてのアルバムを知っているし、メンバー全員にも会ったことがある。まだスイスにいた1993年に彼らのアルバム “Images and Words” にハマったんだ。Gary Moore, QUEEN, Sting も大好きだ」
クラシック以外の音楽を探求したことはありますか?
「もちろん。 常にね。ジャズでもヒップホップでも何でも、いろいろなジャンルの音楽を探求するのが好きなんだ。私はいつも作曲をしているし、これらのスタイルの音楽を演奏したり書いたりしてきた。音楽に限界はないんだよ」 安らかに…


参考文献: MUSIC AND ART: INTERVIEW VITALIJ KUPRIJ

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【COSMIC JAGUAR : THE LEGACY OF THE AZTECS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SERGIO LUNATICO OF COSMIC JAGUAR !!

“We Didn’t Want To Be Another Primitive And Dull Thrash Band That Sings About Booze, Sex, Zombies, Partying, Social Problems And Other Hackneyed Topics.”

DISC REVIEW “THE LEGACY OF THE AZTECS”

「明日何が起こるかわからない、とても危険な状況だったからこそ、できる限りリハーサルを重ねた。結局、4ヶ月でフルアルバムをゼロから作曲し、レコーディングしたんだ!目的が見えていれば、障害は見えなくなるものだよ」
ウクライナへ向けたロシアの非道な侵略が始まって、すでに一年半の月日が経ちました。戦火はおさまることなく混迷と拡大を続け、ウクライナの人々にとって当たり前にあった平和や安全という当たり前の生活は遠のくばかり。しかし、逆境にあってこそ、ヘヴィ・メタルのレジリエンス、反発力や回復力は輝きます。明日全てが失われてしまうかもしれない。そんな限界の非日常において、ウクライナの COSMIC JAGUAR は自らの生きた証をここに残しました。
「音楽の制作は、たとえ平和な時代であっても難しいものだ。なぜなら、たいていは自分の作品が聴衆からの反応やフィードバックをほとんど得られず、また自分の目標を実現するための手段を見つけることも難しいからね」
逆境を跳ね返す力こそ、ヘヴィ・メタルの真骨頂。長年、BESTIAL INVASION で活動してきた Sergio Lunatico はカルト的な人気を得るものの、世界的な名声までは程遠い状況でした。しかし、戦争の勃発と同時に一念発起し結成した COSMIC JAGUAR は、第三世界のメタル、伝統音楽を抱きしめたメタル侵攻の波に乗り、見事に世界的な注目を集めつつあります。DEATH, ATHEIST, VOIVOD, CYNIC, SADIST, CORONER, PESTILENCE といった “あの時代” の特別なテクニカル・メタル、その神秘性が見事にアステカの神話と噛み合った祭壇のメタル・サウンドは、ウクライナから海も山も大陸も超えて、遥かテノチティトランにまで鳴り響くのです。
「僕たちは、酒やセックス、ゾンビ、パーティー、社会問題など、陳腐なテーマを歌う原始的で退屈なスラッシュ・バンドにはなりたくなかった。古代世界の歴史が好きな僕が選んだのは、アステカの文化と神話だった。僕の記憶では、メキシコの地元バンドを除いて、このテーマを使うスラッシュ・バンドはほとんどなかったからね。面白いのは、多くの人が僕らをメキシコのバンドだと思っていることで、彼らに言わせれば、僕らがアステカの精神と雰囲気を非常にうまく伝えているからなんだ。そして、僕らがウクライナ出身だと知ると、彼らはいい意味で認知的不協和を感じるんだ!」
そう、あのメタル・エジプト神 NILE の名を挙げるまでもなく、ヘヴィ・メタルに国境はありません。メタルの世界でアーティストは、好きな題材を好きなだけ深堀りすることが許されています。日本人にとってのオオカミのような存在である、ジャガーをバンド名に冠するのも彼らのメキシコ愛がゆえ。アヴァンギャルド/テクニカル・スラッシュと表現するのが最適なその多彩さは、ラテン、ファンク、ジャズ、デスメタル、ブラックメタル、ワールド・ミュージックとまさにコズミックな拡がりを見せながら、アステカの民族楽器と女性ボーカルでリスナーをアステカの神殿へと誘います。そうして、かの文明の独特な死生観や終末信仰は、未だなお争いを続ける人類への警告として語り継がれるべきなのかもしれませんね。
今回弊誌では、Sergio Lunatico にインタビューを行うことができました。「ウクライナにおける戦争において、今は安全な場所などなく、いつでもミサイルやドローンに捕捉される可能性があるため、毎日が自分や愛する人にとっての最後の日となりうる、そう思って生きているよ。だからこそ僕たちは生き残るためにあらゆる方法を試しているんだ」 どうぞ!!

COSMIC JAGUAR “THE LEGACY OF THE AZTECS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IGNEA : DREAMS OF LANDS UNSEEN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HELLE BOHDANOVA OF IGNEA !!

“I’d Say Music Can Definitely Change People’s Mood And Mind. But Changing The World… I’m Afraid, I Cannot Be So Naive Because Of Everything Happened To Me And My Country.”

DISC REVIEW “DREAMS OF LANDS UNSEEN”

「もちろん、音楽は非常に重要なもので、この1年間、ウクライナでもそのことが示された。塹壕の中や負傷したときに歌う兵士、防空壕の中で歌う人々、音楽は人々をより落ち着かせることができたわ。だから、音楽は人の気分や心を変えることはできると思う。でも、世界を変えるなんて……自分や自分の国に起こったことを考えると、そんなにナイーブにはなれないわ」
ロシアとプーチンの侵攻から1年経った今、ウクライナのモダン・メタル旅団 IGNEA はアルバムという自らの分身を世に放つことを決意します。当然、彼らのドッペルゲンガー “Dreams of Lands Unseen” が怒りに満ちた作品でも、暴虐に向けた鋭き矛先でも、リスナーが驚くことはないでしょう。もちろん、音楽は世界を変えられない。音楽で身を守ることはできない。それでも、IGNEA はより芸術家らしい方法で、不条理に抗することを決めたのです。
「Sofia はどこを旅しても、必ずウクライナ文化の一部を持ち込んでいて、自分がウクライナ人であることを強調していたのよ。また、彼女は言葉の使い方が巧みで、歌詞の中のフレーズもそのまま彼女の言葉をウクライナ語で残したかったんだ。最後に、私たちはウクライナ人で、自分たちの言葉を愛しているから、自分たちのルーツへのトリビュートとしてもウクライナ語を使ったのよ」
IGNEA は、暴力に暴力で立ち向かうよりも、見過ごされてきた歴史的な人物の粘り強さと功績に焦点を当て、ウクライナの誇りと強さを描き出しました。”Dreams of Lands Unseen” の主人公、旅行写真家/文筆家の Sofia Yablonska は、祖国ウクライナから世界を旅し、初の女性ドキュメンタリー映画監督となり、ヨーロッパの植民地主義がもたらした悪影響にしっかりと目を向けた偉大な人物。彼女をウクライナの象徴的な女性像として、そして帝国主義の批判者として光を当てるというコンセプトは、最近のロシアの不当な侵略や行き過ぎた暴力と闘うための、より文化的なアプローチであると言えるでしょう。
「戦争が始まって最初の数カ月は、私たちにとって生き残ることだけが重要だったわ。あらゆる音が怖くなって、音楽を聴くことすらできなかった。それでも私たちの地域が占領解除され、この戦時下の状況に慣れたとき(ひどい言い方だけど)、私たちはアルバムを作り続けようと強く思ったの」
ウクライナ人としての誇り。ウクライナが真に戦っている相手。そしてウクライナが今、必要としているものを浮き彫りとしたアルバムは、恐怖であった “音” をいつしか勇気へと変えていました。そしてその IGNEA が手にした勇気は、しっかりとその冒険的な音楽にも反映されています。
シンフォニックなオーケストレーションと伝統音楽が、メタルを介して結びつくその絶景はまさにトンネル・オブ・ラブ。Sofia がモロッコ、中国、スリランカなどを旅したように、東洋や中近東の光景が巡る実に多様で自由なモダン・メタルは、かつての帝国主義や権威主義とは正反対の場所にいます。
そうして、抑圧に抗う可能性と力は、Helle Bohdanova の声を通して世界へと伝播していきます。光と陰を宿した Helle の美女と野獣なボーカルは、大戦中に女性一人で世界を旅することの逞しさと恐怖、その両面を実に巧みに表現しています。そしてその逞しさや恐怖は、そのまま現在の Helle の中に横たわる光と陰でもあるのでしょう。メタル・バンドには珍しい異端楽器の数々はきっと彼らの軍備。ただ一つ、確かなことは、ウクライナの勝利が、IGNEA の冒険と Helle の勇気によって一足早くもたらされたという事実。未到の地の夢は、愛する地があればこそ映えるのです。
今回弊誌では、Helle Bohdanova にインタビューを行うことができました。「アルバムの発売日である4月28日の夜中に、大規模なミサイル攻撃があったわ。そして、その1週間後には、私が住んでいる家のすぐ隣の5つのアパートをドローンが直撃した。もちろん、最前線に近ければ近いほど、状況は悪化するわ。それでも、ウクライナに住む人は皆、翌日が来ることに確信が持てないのよ」 どうぞ!!

IGNEA “DREAMS OF LANDS UNSEEN” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RING OF FIRE : GRAVITY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARK BOALS FROM RING OF FIRE !!

“I Look To Singers Such As Pavarotti Who Never Lost Their Level Of Excellence And Singing Up Until The Day They Left This Earth. I Hope And Pray To Be Able To Do The Same!”

DISC REVIEW “GRAVITY”

「長い休みを取ったんだ。前作はコンセプトアルバムだったんだけど、ロシアを題材にしたこともあってあまり評判が良くなかったんだよね。ちょうどその頃、ロシアという国やその指導者に対して皆が怒っていた。だから、とても良いアルバムだったのだけど、チャンスをもらえなかった気がするね。その結果、僕たちは RING OF FIRE のバンドの活動から非常に長い間離れることになったんだ」
20世紀の最終盤に、特にここ日本で猛威を振るったネオクラシカルなシュレッドと、プログレッシブなヘヴィ・メタル。その複雑でしかし神秘的な二つの審美を炎と冷静でつなぎあわせた RING OF FIRE の存在は、ARTENSION と共に、かつて私たちを不可能を可能にした不可視領域へと誘ってくれました。
時は2022年。ネオクラシカルとプログを、素直に、ウルトラ・テクニックで結びつけるバンドはほとんど絶滅してしまいました。マグナ・カルタやシュラプネルはほとんど息をしていませんし、SHADOW GALLERY はメンバーの死により沈黙。SYMPHONY X はネオクラシカルを脱出し、ROYAL HUNT がその灯火を必死で繋いでいるといった状況なのかもしれません。
Vitalij Kuplij と Tony MacAlpine。もしくは George Bellas。さらに、彼のソロアルバムにおける Greg Howe との共演に、さながらパブロフの犬がごとく心が踊った私たちの偏った性癖は、もはや相当時代遅れなのかもしれませんね。実際、ヘヴィ・メタルは今でも多くのリスナーを惹きつけ、拠り所となっていますが、もっと多様で広義の “プログレッシブ”、そうでなければよりヒロイックで視覚にも訴えかける大仰なファンタジーを人々は求めているようです。
では、RING OF FIRE に、もう付け入る隙はないのでしょうか? 否。9年ぶりに帰ってきた彼らのサウンドは、自らのアイデンティティを保ちながらも、しっかりと “今”のヘヴィ・メタルの風を受けています。ウクライナ人である Vitalij にとってはもちろん侵略に、そして稀代のシンガー Mark Boals にとっては加齢という “重力” に、引っ張られるわけにはいかなかったのでしょう。RING OF FIRE 5枚目のアルバム “Gravity” は、その “反発力” で過去の遺産を見事に “エピック” なキャンパスへと描き切りました。
「Vitalij Kuprij はウクライナ出身だから、どのアルバムもヨーロッパ的な雰囲気はあると思う。もちろん、Cole や Aldo も曲を書いて独自のヴァイブを加えているし、僕以外のバンドはみんなヨーロッパにルーツがあるから欧州の音になるのも当然だよね」
血の入れ替えは完璧に成功しました。名の売れた古株を選ぶよりも、Mark と Vitalij はイタリアの新鋭3人に賭け、そしてギャンブルに勝利しました。特に、SECRET SPHERE のギタリスト Aldo Lonobile は掘り出し物としか言いようがありません。これまでの RING OF FIRE にもしかしたら欠けていた、ヨーロッパのエピックやスケール感、それにストーリー・テリングのスキルが Aldo によってもたらされました。それはまさに、今のメタルに求められるもの。
このアルバムのマグナム・オーパスである “The Beginning” と “Storm Of The Pawns” は、複雑な感情、洗練の感覚、鍛錬を重ねたクラシックの技術が、エピック・メタルのイメージで再構築されています。重要なのは、そこにプログレッシブ・メタル特有の驚きが組み込まれているところ。Vitalij が紡ぐ突然のピアノの旋律は、至る所でリスナーにサプライズを提供していきます。もちろん、”Melanchonia” のような内省的なリリックとメランコリーが、メタライズされた感情を爆発させる RING OF FIRE 式対比の美学も健在。”King Of Fool’s” や “21 Century Fate Unknown” のように、時には予想外の不協和音を音楽に取り入れて、心理的変化を伝える “物語” の能力も見事。
タイトル曲の “Gravity” はそんな新たな RING OF FIRE に生まれたマイルストーンなのかもしれません。メンタル、スピリチュアル、フィジカル。歌の三要素を整えた Mark Boals の歌唱は絶対領域へと到達。ドラマチック・シネマティックなシンセサイザーが響く中、ダニー・エルフマンがメタル映画のスコアを作ったような感染力が楽曲のフックを最高潮まで高めます。心強いことに、RING OF FIRE は今でも挑戦を重ね、最後の1音までそのクオリティを保っています。ネオクラシカル/プログレッシブ最後の桃源郷がここにはあるのです。
今回弊誌では、メタルの歌聖 Mark Boals にインタビューを行うことができました。「僕はまだまだ歌い方を勉強している感じなんだよ。パバロッティのように、この世を去るまでその卓越した歌唱力を失うことがなかった人たちは、特に尊敬しているよ。僕もそうでありたいと願っているから」BILLIONAIRES BOYS CLUB、いいですよね。どうぞ!!

RING OF FIRE “GRAVITY” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【WHITE WARD : FALSE LIGHT】


COVER STORY : WHITE WARD “FALSE LIGHT”

“You Feel Tension—Music Helps To Release It. You Feel Sad—Music Helps You Feel a Little Bit Happier. You Feel Anger And Pain—Creativity Is Also Your Savior. You Only Need How To Push The Negative Feeling Into a Creative Direction.”

FALSE LIGHT

ウクライナの実験的なブラックメタル集団 WHITE WARD は、6月に新譜 “False Light” をドロップしました。これはロシアがウクライナに侵攻してからちょうど4ヶ月目にあたります。4月にアルバムのリリースをアナウンスした際、彼らはこう語っていました。
「現在、ロシアの侵攻によりウクライナでは沢山の悲劇が起こっている。それでも、僕たちは新しいアルバムをリリースすることに決めたんだ。このアルバムが、より多くの人々をサポートし、ここウクライナでロシア軍が犯している犯罪をより効率的に広めるのに役立つだろう、そう信じてね。このソリッドな作品を完成させるのに2年以上かかったんだ。
そして、今、僕たちの国やその周りで起こっているすべてのことを受け止めながら、僕たちはこの作品を世界と共有することに決めた。僕たちは、音楽が困難な状況にある人々を助けると信じているから。音楽がどれほど強力な癒しの力を持っているかを知っているから。だから、もう待てないんだ。
この写真は、戦争が始まる数週間前に、僕らの友人 Sergii Kovalev によって撮られたもの。自然の写真家、ビデオグラファーである彼は、そうして今、僕たちの国で起こっている出来事を記録し、世界に示し始めている」

WHITE WARD はオデッサ出身で、当時はちょうどロケット弾の連射が新たな不安要素となっていた頃。ボーカルの Andrii Pechatkin は、5月に戦況についてこう語っていました。
「事態は急速に変化している。あらゆることに対応できるようにしなければならない。生き残るために柔軟でなければならない。新しい状況を受け入れなければならない。強くあり続け、団結しなければならない。僕たちの未来のために戦う必要があるんだよ」
コンポーザーでギタリストの Yurii Kazarian がこう付け加えます。
「僕は今、物質的な価値と “精神的な” 価値をかなり真剣に見直しているところなんだ。戦後、物質的な価値観は少し後退するかもしれないと理解している。僕も世界も2022年初頭のようになることは絶対にありえないのだから。大きな変化が今起きているんだ。あらゆる、それも最も恐ろしいシナリオに備えなければならない」
世界は変わってしまった。Pechatkin はさらに、反抗のための原動力について言及します。
「唯一の問題は、この戦争において自分の居場所はどこなのかということだった。僕たちには、勝利の瞬間を加速させるために戦う、守るべきものがあった。だから重要なのは、その場所を見つけ、それを最大限に活用することだったんだ」
Kazarian はこう付け加えます。
「僕は、自分の国や周りの人々をどれだけ愛しているかを実感することで、ウクライナ人であることについてどう感じているか、自分にとって明確で最終的な答えを得ることができたんだ。人前ではあまり感情を表に出さないのだけど、戦争が始まってからは、一人になると目に涙が溢れてくることがある。こんな気持ちになったのは初めてだよ。だから、新しい価値観の理解という話をしたんだよ。戦争が始まってから、僕の価値観は大きく変わってしまった」

具体的に、戦争はウクライナの人々をどう変えたのでしょうか? Pechatkin が答えます。
「戦争で起こった恐ろしい出来事は、僕自身の文化、隣人との関係、日常生活など、多くの問題に目を向けさせることにもつながった。戦争中は、毎日が最後かもしれないと思うようになったからね。僕たちにとって、人生はより貴重で強烈なものになったんだ」
Pechatkin はフィクサーとして、BBC のジャーナリストをコーディネートしました。
「戦争が始まってから3ヶ月間、僕たちはウクライナの南部を回ってきた。とても魅力的な仕事で、さまざまな問題を考え直すきっかけにもなったんだ。1ヵ月前、僕たちはさらに10日間仕事に出た。僕たちがミコライフにいたのは、最も激しい砲撃の時で、一晩に40~50回の砲撃を耐え抜いていたんだ。2014年から働いているメイン・フィクサーがいてね。彼は捕虜の解放を手伝い、膨大な経験を積んだ男。最初の砲撃が行われたとき、外に出ると、彼が微笑んでいるのが見えた。この8年間は、1秒1秒が最後の1秒になりかねなかった。だから、彼はすべての瞬間を楽しんでいたんだよ」
大都市キーウと地方の間には温度差があると Pechatkin は考えていて、その “違い” は今回の作品に大きく反映されています 。
「キーウは巨大な機械のようなもので、多くのものを与えてくれる代わりに、多くのエネルギーや感情を奪ってしまう。あの “肉挽き機” の中で自分をどのように認識し、生き延びようとするかだよね。20階建てのビルに住んでいると、エレベーターの中でスマホを見ている人たちに出会う。彼らは、そうして他人と接触しないように最善を尽くしているんだよね。こうした距離感と親密さは、さまざまな問題で出くわす。社会的なストレスが大きければ大きいほど、笑顔で接する気力も失われていくのだろう」

Pechatkin の故郷オデッサにも変化がありました。
「街では、ウクライナ語を話す人の声が多く聞かれるようになった。僕が住んでいる建物でも、すでに5~6人がウクライナ語を話しているね。戦前は、女性一人しかウクライナ語を話さなかったのに。
つまり、ロシア語は過去であり、ウクライナ語は現在であり未来であることに、人々が気づいているんだよ。僕たちは現在を築き、未来の到来を後押ししなければならないんだ。だんだんみんなウクライナ語を話すようになってきた。割合が非常に多いとは言わないけれど、戦前と比べればね…。
もちろん、今でも親ロシア派はいるよ。オデッサがドイツから解放された記念日には、広場に花束を運び記念碑にウォッカをかける男がいた。彼は、 “ロシアのためではなく、ソ連のためだ。あの頃はよかった、3コペックでソーセージが食べられた” と叫んでいたね。これはまさに、親ロシア派の立場を示しているよ。ロシア的世界観が崩壊したから、自分たちをソ連時代につなげようとしているんだろうな」
オデッサの自宅について Pechatkin はここにいるのは比較的安全だと言います。
「ロケット弾の攻撃や砲撃を何度か経験したね。しかし、検問所や対戦車防御、軍隊を除けば、生活はいつもと変わらないよ」
Kazarian は、「僕にとってオデッサにいることは、戦争と恐怖の大鍋の中で、人生が自分の道を進もうとするレマルクの小説のように感じることがあるんだ。空襲の中、夏のレストランの敷地内でコーヒーを飲む人々、そんなパラドックスを感じるね」と付け加えました。
それでもやはり、戦争は恐ろしくて残酷なもの。Pechatkin は同胞の安否を憂慮します。
「人間の残酷さには限りがない。ブチャをはじめとするウクライナの都市や村で起こった出来事がそれを物語っている。残念ながら、まだ多くの情報は得られていない。だから、より残酷な残虐行為の証拠がこれから明らかにされるかもしれない」
Kazarian も同意します。
「僕たちは、歴史からもっと恐ろしいことの例をたくさん知っているんだ。だから、今見ているすべてのものは、すでに極端な残酷さの例であるにもかかわらず、始まりに過ぎないのかもしれないよね。だからこそ、一刻も早く、この戦争を止めなければならないんだよ」

マルチ・インストゥルメンタリスト兼コンポーザーの Mykola Lebed(GHOST CITIES)は、WHITE WARD に前作 EP “Debemur Morti” から参加して、アルバムにとって非常に重要なローズ・ピアノとピアノを披露しています。
「ピアノの音は壮大で、優しく、そして美しい。ピアノの音は、いつも音楽にこうした雰囲気を与えてくれる。さらに、サスティンペダルの倍音で、より美しく響く。一方、ローズ・ピアノは、よりファンシーでノワールな印象。どちらの楽器を選ぶかは、どんなフィーリングを表現したいかによるんだ。WHITE WARD の場合、自分のパートをあまり壮大に聴かせないことが重要なんだよね」
ゲストという立場からみて、Lebed にとって WHITE WARD の音楽はどのように響いているのでしょうか?
「嵐が激しくなってきているときに、山の中の森を散歩しているような感じかな。すべては自分の内側で起きていることなんだよね。彼らの歌詞のテーマは、僕の心にとても響いている。個人的な感情を歌ったものであったり、自然の恵みについてであったり、ケルソンの活動家カテリーナ・ハンジウク(現在占領中で、間違っていなければ Pechatkin の元々の故郷)のことであったり。”False Light” だと、”Phoenix” に思い入れがあるね。歌詞の中に、”決して脇目もふらず” という重要なテーマが存在するからね。
同じ現実を生き、同じ問題に直面し、このような状況だからこそ、僕たちはこれまでよりも繋がっているとも言える。WHITE WARD のメンバーの一部は何年も前から知っているし、彼らの他のバンド、SIGNALS FEED THE VOID や GRAVITSAPA、ATOMIC SIMAO の古いアルバムは絶対にチェックする必要があると思うよ」

Lebed にも、”False Light” を通して伝えたいメッセージがあります。
「この2ヶ月間、僕は全国をツアーで回り、時には前線に非常に近いオデッサやドニプロで演奏したんだ。オデッサとドニプロは、(毎日砲撃を受けているミコライフとハルキウとは別に)戦場に最も近い2つの都市だ。それに、キーウでの公演は、ロシア軍がロケット弾で住宅を攻撃する前日だったから、目が覚めたとき、街の中心部で焼けて破壊された家々をこの目で見たよ。
僕はキーウに数年住んでいて、前回攻撃された地区で多くの時間を過ごしたんだけど、自分の家が燃やされて破壊されるのを見るのはかなりつらいことだった。ウクライナでの生活は決して楽ではないし、今は本当に精神的に辛い。今、ウクライナに安全な場所はない。前線からどんなに離れていても、ロケット弾はほとんどの大都市を襲い、ショッピングモールや文化センター、病院、住宅などを直撃しているからね。住民は不安になり、眠れなくなり、欠乏症になりつつある。毎日直面する恐怖の数々に、ただ無感覚になり、完全に疲れ果てる。安心感もなく、警報が聞こえたら防空壕に行くべきか、それとも気にせず自分の仕事を続けるべきか、常に迷い続けていることに気づくんだ。
僕のツアーは、西から東へ、北から南へ、10都市を回った。家に閉じこもって、個人的な問題に直面していることに疲れ果てていたんだよ。戦争は僕たちの生活を一変させ、愛する人は逃げ出し、国境を越えることもできず、男であるがゆえにいつでも軍隊に召集される可能性がある。そうして、自分には今日しかないのだと理解し始める。だから、今日やりたいことは、音楽をやること、そしてツアーに出ることだと思ったんだよね。ツアーは僕にとって、いつも癒しのようなものだから。
僕のツアーは、すべてチャリティー・ツアー。会場やブッカーからは一切報酬をもらわず、集められた資金はすべて軍やボランティアに寄付したよ。それが主なメッセージさ。僕たちは “脇目も振らず”、どんな形であれ戦うべきで、強く、自分たちのやっていることをやり続けるべきだ。ロシアは奴隷国家で、ウクライナは常に自由な国だ!」

WHITE WARD の10年にわたるキャリアは、厳粛なブラックゲイザー、悪魔の森の吟遊詩人、そしてジョン・ゾーンに見出されたジャズクラブのハウスバンドが一体となった奇異なものでした。バンドが次にどうなるのか全く予想がつかないため、彼らの “ツアー” は当初から非常に刺激的だったとも言えるでしょう。それでも、”Love Exchange Failure” の明らかにメトロポリタンなブラックメタルから “False Light” の “田舎” “自然” への軸足の移動は意外な感じもしますが、そこには理由がありました。彼らは、”False Light” において、そのブラックメタルという土台を拡大し、ブラックゲイズとノワールというサウンドの土台を強化するために、新たな影響を与える決断を下したのです。
Kazarian が語るように、無名の主人公は都会の風景を超え、より良い生活を求め、大都市の外でこそ “幸福” を見つけることができると信じています。陰鬱なアメリカーナの刺激は、そのテーマを実現へと導きました。例えば、”Salt Paradise” はゴシック・ウェスタンのような、映画的でありながら穏やかなアコースティックが支配する楽曲で、バンドのメタル的な要素から完全に切り離されたトラックでありながら、メタルに劣らず重みを感じるよう設計されています。”Cronus “では、ゲストボーカルの Vitaliy Havrilenko の淡々とした語り口が、ポストパンクのような弾むような演奏によく合っており、曲の後半ではメタリックなサウンドが炸裂。
しかし、そうしたスモーキーなサックス・ソロやアコースティックな演奏がアルバム全体に散りばめられているにもかかわらず、WHITE WARD は依然としてメタル・バンドであり、”False Light” ではその “主軸” をも徹底的に追求していることが分かります。タイトル・トラック “False Light” は、露骨な咆哮とギターを多用し、現代のデスメタル・レコードも一切引けを取らない獰猛さを誇ります。つまり、このアルバムはより包括的な作品で、ブラックメタルよりもエクストリーム・メタルという言葉がふさわしい作品なのかもしれません。

とはいえもちろん、都会的で現代的なジャズとブラックメタルの要素を見事に融合させてきた WHITE WARD が、バンドの矜持を完全に放棄したわけではありません。13分という途方もない長さの “Leviathan” は、ブラックメタルの激しいリフから、ブラスと優しいパーカッションに彩られた美しいコンポジションまで、WHITE WARD すべてを注いだ渾身のオープナー。ジャズとメタル、2つのジャンルのマスターは、アクロバティックなパーカッションから万華鏡のリフ・ワークまで、音楽のすべてがジャズ演奏者のような正確さと熱意をもって演奏されながらも、メタルとして必要な即時性と攻撃性を犠牲にすることは決してありません。苛烈と気品、都会と田舎、血と知の対比は、ここにきて一層深まり、その落差が聴く者の心を惹きつけるのです。この楽曲は、Kazarian のお気に入りの一つでもあります。
「この曲は、僕たちが3rdアルバムのために最初に取り組み始めた曲の一つなんだ。アルバムの残りの部分のムードとスタイルを決定づけたよ。この曲を完成させるのにかかった時間を正確に覚えているわけではないけど、制作には何十もの段階を経て、多くのバリエーションと修正があったことは確かだ。
作曲のプロセスはいつもと同じで、まず僕がリフのほとんどと曲の構成とリズムを作り、それからバンドとして細部にこだわり、曲のさまざまな部分に新しいアイデアを導入していった。この曲をアルバムのオープニングにすることは、僕にとっては当然のことだった。僕は音楽を作るとき、特定の曲がアルバムの中でどのような位置を占めるべきかを、すでに感じ、分かっているからね。だから、一貫したプランニングというよりも、ほとんど常に自発的なプロセスなんだよ」
“False Light” は、ウクライナの作家 Mykhailo Kotsubinsky による1908年の印象派小説 “Intermezzo” や、作家 Jack Kerouac や精神分析医 Carl Jung の作品からインスピレーションを受けています。そうして、政府が認可した殺人事件、差し迫った環境破壊、警察の残虐行為、家庭内虐待、都市の精神的空虚、現代の主流文化の虚偽性、過剰消費による悪影響といった、ウクライナが抱えていた “現代病”、都会の空虚さについてアルバムは語っているのです。そう、我々に降り注ぐネオンは “偽物” の光。

ただし、戦時中という最もありえない場所で、WHITE WARD の芸術と創造性は生き残る道を見つけました。 Pechatkin が作品のテーマについて語ります。
「このアルバムは、戦争というトピックには触れていないけど、僕にとって非常に重要なもの。現代のウクライナの歴史に関連する多くの問題だけでなく、いくつかの深い内面の考察や経験をカバーしているからね…アルバムのコンセプトは、現代のウクライナの歴史の様々な出来事に基づいているんだ。だからこそ、祖国を覆う炎と破壊から生まれるウクライナ文化にリンクしているんだよ」
Kazarian が続けます。
「新しいアルバムと WHITE WARD は、今でも僕にとって非常に重要なもの。このリリースに取り組むことは、前進するための未来への希望をさらに与えてくれたんだ」
Pechatkin の最後の言葉が大きく響きます。
「創造性や音楽は、現実から逃避するための方法のひとつであり、傷を癒し、あらゆる障害を克服するための機会を与えてくれる普遍的な治療法なんだ。戦争によって人々が、学ぶことに消極的になり、コンフォートゾーンに留まりたがることになれば残念だよ。もし、人々が自己改善や継続的な学習にもっと注目し、時間をかければ、もっと自分自身に疑問を持つようになるはずなんだから。
この厳しい時代に、創造性は精神的な崩壊やその他の問題から多くの人を救ってくれる。もし君が緊張を感じていても、音楽がそれを解放するのに役立つ。もし君が悲しいと感じていたら、音楽は少し幸せに感じるのに役立つ。そしてもし君が怒りや痛みを感じていたとしても、創造性はまた、君の救世主だ。ただ、否定的な感情を創造的な方向へ押しやる勇気さえあればいいんだよ」

参考文献: NEW NOISE MAG :INTERVIEW: WHITE WARD’S ANDRII PECHATKIN AND YURII KAZARIAN: MUSIC, WAR, AND LIFE

Debemur Morti:WHITE WARD – INTERVIEW WITH MYKOLA LEBED

SLUKH MEDIA:White Ward Band were interviewed for the Antipodes show. We picked the best

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KARFAGEN : LAND OF GREEN AND GOLD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANTONY KALUGIN OF KARFAGEN !!

“I Want To Be With My Son And Wife Who Are Poland Now. I Want To Walk Through The Valleys Of Green And Gold Without Fear And Tears. Of Course I Want To Go Back To Studio And Work. Now I Can Only Guess If My Studio Is “Alive” There In Kharkiv…But There’s Always Sunrise Even After The Darkest Night.”

DISC REVIEW “LAND OF GREEN AND GOLD”

「今、ポーランドにいる息子と妻と一緒にいたい。”緑と金の谷”を、恐れずに、涙を流さずに歩きたい。もちろん、スタジオに戻って仕事をしたい。今、僕のスタジオがハリコフで “生きている” かどうかは、ロシアの大砲と空爆で大量に破壊された街のことを思えば、推測するしかないんだけど…それでもね、一番暗い夜の後でもいつも日は昇るんだよ」
KARFAGEN とはウクライナのマルチ奏者、コンポーザー、プロデューサー Antony Kalugin の主な音楽活動拠点であり、”Land of Green and Gold” はバンドにとって13枚目のアルバムです。Antony は多作な人物で、KARFAGEN, SUNCHILD, さらに ソロ・アーティストとしても、年に数回は新たな作品をリリースし続けてきました。しかし、そんな彼の音楽=人生は今、ロシアの侵略によって大きな岐路に立たされることとなりました。
彼は現在、故郷である激戦のハリコフを離れ、ウクライナで事実上の難民となっており、生活さえままならず、命の保証さえないような恐ろしい状況に置かれています。しかしそんな “災害” の中でも、Antony は KARFAGEN というライフワークを想い、音楽を求め、スタジオに帰りたいと切に願っているのです。
「ウクライナのために祈り、平和のために祈ることだね。そしてあなたたちの平和な日常、その価値を噛み締めてほしい。あとは、経済的にロシアをサポートしないでほしいな。経済制裁は彼らにとって本当に厳しいものだからね!」
Antony の音楽は常にポジティブで希望に満ち、平和を願っています。それは今、きっとこの世界にとって最も必要とされていること。必要なものは?世界に望むことは?その質問に Antony は、ロシアを倒してほしいでもなく、金銭や兵器や物質の援助でもなく、ただただ祈りと答えました。おそらくそれは、実は最も優しく、美しく、そして勇敢な願いなのかもしれませんね。武器を握るよりも置くことの方が、よっぽど勇気が必要なのは歴史が証明しているのですから。
「たしかに、この作品の “色” の組み合わせは、まさにウクライナ的だよね。多くの友人がこう言っていたのを覚えているよ。ああ、これはたしかにウクライナ製だ!ってね(笑)。このアルバムはね、平和と調和の音なんだよ」
そして実際、”Land of Green and Gold” は、そんな優しく、美しく、勇敢なウクライナを承知するような作品てす。タイトルやアートワークの緑と黄金は、そのままウクライナの大自然と太陽が奏でる驚異に満ちた風景を音の葉で表現していきます。アルバムは大きく3つのチャプターに分かれ、彼の地の様々な風景をシンフォニックな空気の広がり、陽気で遊び心のあるメロディー、ミュージシャンの名人芸、アコースティックな間奏曲、ジャジーな即興演奏など、KARFAGEN のトレードマークとなる要素すべてを用いて描き出しました。
第1章 “Land of Green” では、ウクライナの手つかずで自由な、深緑の風景をプログレッシブ、ジャズ・ファンクからアコースティック、アコーディオンのエスニックまで幅広く奔放に、牧歌的な音楽へと変換しています。今後、このような無垢を呼び起こすことが可能なのだろうか…と思わずにはいられないほどに、平和で希望に溢れた祈りのプログレッシブ・ミュージック。
一方、第2章 “Land of Gold” ではゴージャスなシンフォニック・プログを体現し、堂々とした豪華な雰囲気で、創造の栄冠、生命の賞賛を表現しています。巧みなギター、幾重にも重なるキーボード、そしてコーラス・エフェクトが組曲の華やかさを高めていきます。まさにウクライナの生命と誇りを全身で表現しているのでしょう。それにしても、時にギルモア、時にホールズワース、時にカールトン、時にグレッグ・ハウが憑依する Alex の千変万化なギターワークは白眉。そんな名人芸も、Antony の Tony Banks を思わせる七色の鍵盤が包み込んで、緑金の草原はいつしかメロディーで満たされていきます。
「今、戦争が始まって27日目だ。これを書いていても、戦争がいつまで続くか分からないんだよね。僕の想いは、家、親戚、子供、両親を失ったすべての絶望的な無実の市民と共にある…両親が殺されたため、多くの生まれたばかりの赤ちゃんが一人きりになっているんだ…目に涙が込み上げてくるよ…2022年にもなって、僕たちがこのように恥知らずで皮肉な犯罪の犠牲になるとは思ってもみなかったからね」
最後に、ずっと短い “Land of Jazz”。インプロビゼーションの活力は素晴らしいアルバムのコーダとなり、ウクライナの人々が、音楽が、再び “呼吸” できるようになることを強く信じさせてくれます。”Land of Green and Gold” を聴けば、ウクライナがかつてどのような場所であったかを思い出し、そして、必ずや再興しどのような場所になるのかが伝わるに違いありません。平和への優しく、美しく、勇敢な祈りと共に。例え、今は “緑と金の地” が侵略の TUNAMI によって破壊されたとしても…
今回弊誌では、Antony Kalugin にインタビューを行うことができました。「今日、プログレッシブ・ミュージックはウクライナでだけでなく、全世界で人気がないよね。僕たちはそれを知っている。それでも、この魂のこもったユニークな音楽の灯火をつないでいきたいよね!プログは富や大きな名声をもたらすものではないよ。だけどそれは、特別な何か、隠された夢と平和の世界をリスナーと共有できるものなんだ」 どうぞ!!

KARFAGEN “LAND OF GREEN AND GOLD” : 10/10

INTERVIEW WITH ANTONY KALUGIN

Q1: First of all, could you tell us how you got into such music in Ukraine, a place where maybe prog and rock music are not popular enough?

【ANTONY】: It was my father who showed me the beauty of art rock when I was only a child. We had Pink Floyd, Supertramp, Elton John, Genesis etc. vinyls. He was listening to them so did I ))
I remember I had entire Queen collection on tapes, my father brought it to me from Poland. So we listened tapes in the car while traveling around Europe. Queen, Dire Straits, Roxette were the bands whose music sounded on the Diso party. So this music is in my blood. Later on when I was 15 – 16 I`ve discovered beauty of Camel and Marillion…And I`ve started digging in this more prog direction – with every new album it was a sort of revelation.
Nowadays Prog is not popular not only in Ukraine but in the whole world, we know it. But we still do carry on this unique flame of soulful music! It`s something that will not bring you a fortune or big fame, it`s something special that you want to share with a listener, hidden world of dreams and fays!

Q1: まずは、ウクライナという国で、プログレッシブ・ミュージックにのめり込んだきっかけからお話ししていただけますか?

【ANTONY】: まだ子供だった私にアート・ロックの素晴らしさを教えてくれたのは、父だった。PINK FLOYD, SUPERTRUMP, GENESIS, エルトン・ジョンといったレコードを持っていたからね。父が聴いていたから、私も聴くようになったんだ。
そういえば、父がポーランドから僕のために持ってきてくれた QUEEN の全コレクションのカセットテープがあったんだ。それで、僕たちはヨーロッパを旅行している間、車の中でそのテープをずっと聴いていたんだよね。QUEEN, DIRE STRAITS, ROXETT は、ディスコ・パーティーで流れていたバンド。だから、彼らの音楽は僕の血の中にあるんだ。その後、15~16歳の時に CAMEL と MARILLION の美しさに気づいて…それから、よりプログ的な方向を掘り下げるようになったんだ。
今日、プログレッシブ・ミュージックはウクライナでだけでなく、全世界で人気がないよね。僕たちはそれを知っている。それでも、この魂のこもったユニークな音楽の灯火をつないでいきたいよね!プログは富や大きな名声をもたらすものではないよ。だけどそれは、特別な何か、隠された夢と平和の世界をリスナーと共有できるものなんだ。

Q2: You are incredible keyboard player, what musicians were your heroes when you were growing up?

【ANTONY】: Thank You, I don`t think i`m virtuoso player, I`m good writer and composer – yes, virtuoso – no ))) Anyway, I always enjoyed Tony Banks, Pete Bardens and some Rick Wakeman pieces. Manfred Mann moog singing as well. On a modern scene there are many very technique musicians but something is missing in their material – melody and soul. That`s why I prefer proper melodic solo rather than fast arpeggios that can be played on every other track and that do not mean anything rather than to show all how great the player is.
Tony Banks, Dave Gilmour, Andy Latimer, Snowy White are among this prolific musicians that can take a breath away with a few notes and chords structure only.

Q2: それにしても、KARFAGEN は卓越したプレイヤーの集まりで、あなたの鍵盤も素晴らしいですね!どういった音楽家を目標にしてきたんですか?

【ANTONY】: ありがとう!でも僕自身は自分を名手だとは思っていないんだよね。良いライターであり作曲家だとは思うけど…なんてね!(笑)
とにかく、僕はいつも Tony Banks, Pete Bardens, そして Rick Wakeman の作品を楽しんでいたんだよね。あとは Manfred Mann のムーグの歌声も。
現代のシーンには非常にテクニックのあるミュージシャンがたくさんいるけど、彼らの作品には何かメロディーとソウルが欠けているような気がする。だから僕は、他のどの曲でも演奏できるような速いアルペジオよりも、きちんとしたメロディックなソロの方が好きだし、そのプレイヤーがいかに素晴らしいかをみんなに見せることは何の意味もないと思っているんだ。
Tony Banks, Dave Gilmour, Andy Latimer, Snowy White といった人たちは、わずかな音符とコード構成で息を呑むような演奏をすることができる多才なミュージシャンだよね。

Q3: How did Karfagen come to be? What’s the meaning behind your band name Karfagen?

【ANTONY】: Karfagen – means Carthage, it was my father who advice me that title when I was studying at school. Since than it was title of my project in school, university and still it`s a nice unique title.

Q3: KARFAGEN というバンド名にはどんな意味が込められていますか?

【ANTONY】: KARFAGEN とはウクライナ語でカルタゴのことで、学生時代、父がこのタイトルを教えてくれたんだよね。それ以来、学校、大学での僕のプロジェクトの名前となり、ユニークで素敵だから今も気に入っているよ。

Q4: Are you in Kharkov now? What is the situation? Is it safe there?

【ANTONY】: Together with my wife and little son we`ve driven away from the city on the first day of war.
It was like a worst nightmare in life. Unbelievable that it can happen nowadays. It`s 27th day of War, writing this I don`t know how long it`ll be. My thoughts are with all desperate innocent civil people who lost their homes, relatives, child and parents… There`s so many new born babies left all alone cause their parents were killed…Tears in my eyes… I don`t believe that in 2022 we`ll be victims of such a shameless and cynical crime.
Everyday Kharkiv is under fire now… We all pray for peace. I hope this disaster will ends soon!

Q4: あなたはハリコフ出身ですが、今もあの街にいるのでしょうか?状況はいかがですか?

【ANTONY】: 妻と小さな息子と一緒に、僕たちは戦争が始まった日にあの街から車で逃げ出したんだ。
それは人生最悪の悪夢のようだった。今日でも、こんなことが起こりうるとは信じられないよね。今、戦争が始まって27日目だ。これを書いていても、戦争がいつまで続くか分からないんだよね。
僕の想いは、家、親戚、子供、両親を失ったすべての絶望的な無実の市民と共にある…両親が殺されたため、多くの生まれたばかりの赤ちゃんが一人きりになっているんだ…目に涙が込み上げてくるよ…2022年にもなって、僕たちがこのように恥知らずで皮肉な犯罪の犠牲になるとは思ってもみなかったからね。
毎日、ハリコフが砲撃されている…僕たちは皆、平和を祈っている。この災害が早く終わることを願っているよ。

Q5: The world is angry at Russian aggression. They say it is unforgivable to destroy Ukraine, a beautiful people and country. Perhaps the artwork and music you wrote for “Land of Green and Gold” is the very representation of this beautiful Ukraine, would you agree?

【ANTONY】: Yes, the combination of colors on the artwork are very Ukrainian indeed. I remember lot of my friends were saying: Oh, it`s seen that it is made in Ukraine for sure! )))
This album is the sound of peace and harmony.

Q5: 世界中がロシアの侵略に怒りの声をあげています。美しいウクライナの人、景観、国を破壊するなんて許せないと。
奇しくも、あなたの新作 “Land of Green and Gold” のアートワークや音楽も、美しいウクライナを表象していますよね?

【ANTONY】: そうだね。たしかに、この作品の “色” の組み合わせは、まさにウクライナ的だよね。多くの友人がこう言っていたのを覚えているよ。ああ、これはたしかにウクライナ製だ!ってね(笑)。
このアルバムはね、平和と調和の音なんだよ。

Q6: This album is full of love for prog giants like Camel, Genesis, Pink Floyd, and Gong, right? It is very technical yet emotional. For example, in guitar, we can enjoy the duality of Dave Gilmour and Allan Holdsworth living together, would you agree?

【ANTONY】: Alex Pavlov is fantastic jazz rock guitarist – I like his mixture of Holdsworth and Greg Howe in style. Writing the material for the album, I knew that Alex would be the main “actor”, that`s why i`ve brought more fusion and jazz elements to the sound canvas of the album. Also I`ve tried to recreate the sound and the warmth of the sound of the 70th. With some pastoral atmospheric breaks. To me it`s a very solid well crafted album and I`m so pleased to reed so many positive comments about it.
Straight after the war I`ll release the Karfagen “Land of Green” Bonus disk, that is available now on digital platforms only and first of all on my antonykalugin.bandcamp.com platform.
It will be really interesting addition to Karafgen fans collection..

Q6: このアルバムは、CAMEL, PINK FLOYD, GENESIS, GONG といったプログの巨人たちへの愛情に満ちていますね。テクニカルでありながら、非常にエモーショナルです。
例えば、ギターを聴いていても David Gilmour がいたかと思えば、次の瞬間 Allan Holdsworth がいるというような感じで…

【ANTONY】: Alex Pavlov は素晴らしいジャズロック・ギタリストで、Holdsworth と Greg Howe が混ざったようなスタイルが好きなんだ。アルバムのための素材を書くとき、今回は Alex が主役になることはわかっていた。だから、アルバムのサウンド・キャンバスにフュージョンとジャズの要素をもっと取り入れたんだ。
同時にまた、70年代のサウンドと暖かさも再現しようとした。牧歌的な雰囲気のブレイクもある。僕にとって、このアルバムはとてもソリッドでよくできたアルバムなんだよ。だから、多くのポジティブなコメントをもらって、とても嬉しく思っているんだ。
この戦争が終わったら、KARFAGEN の “Land of Green” のボーナス・ディスクをリリースするつもりだよ。ファンのコレクションに追加されるのは、本当に興味深いものになるだろうね。

Q7: Japanese people also wish to do something to help Ukraine. What are you most in need of now? What is the most effective aid we can provide?

【ANTONY】: Pray for Ukraine, pray for peace, value every peaceful day of your life.
Don’t support Russia with business. Sanctions should be really strict for them!

Q7: ウクライナをなんとか助けたいと望んでいる日本の人たちは大勢います。今最も必要なもの、効果的な援助は何でしょうか?

【ANTONY】: ウクライナのために祈り、平和のために祈ることだね。そしてあなたたちの平和な日常、その価値を噛み締めてほしい。
あとは、経済的にロシアをサポートしないでほしいな。経済制裁は彼らにとって本当に厳しいものだからね!

Q8: We hope to hear your wonderful music again soon. Please tell us what you want to say to the world now.

【ANTONY】: I want to be with my son and wife who are Poland now. I want to walk through the valleys of Green and Gold without fear and tears. Of course I want to go back to studio and work. Now I can only guess if my studio is “alive” there in Kharkiv, as it`s massively destroyed by Russian artillery and planes…But there’s always sunrise even after the darkest night.

Q8: 忌々しいこの戦争が早く終わって、KARFAGEN の新たな音楽が聴けることを願っています。今、世界に伝えたいことは何でしょうか?

【ANTONY】: 今、ポーランドにいる息子と妻と一緒にいたい。”緑と金の谷”を、恐れずに、涙を流さずに歩きたい。もちろん、スタジオに戻って仕事をしたい。今、僕のスタジオがハリコフで “生きている” かどうかは、ロシアの大砲と空爆で大量に破壊された街のことを思えば、推測するしかないんだけど…
それでもね、一番暗い夜の後でも常に日は昇るんだよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED ANTONY’S LIFE

CAMEL “MIRAGE”

U.K. “U.K.”

THE FLOWER KINGS “RETROPOLIS”

MARILLION “BRAVE”

TRANSATLANTIC “SMPTe”

MESSAGE FOR JAPAN

I hope to visit your beautiful country, to play a few concerts for you!!
I know there`s so many followers of art rock and prog rock music in Japan. I wish you Peace and Happiness – enjoy life, enjoy music and stay creative!!
ps. I like “Ain Soph” band especially their “A Story of Mysterious Forest” 1980 if you don`t know this album by your countrymen – I highly recommend you to discover it!!!Many thanks Best wishes,

いつか日本という美しい国を訪れ、あなたたちのために何度かコンサートを開きたいと思っているんだ!
日本にはアート・ロックやプログ・ロックのフォロワーがたくさんいるよね。僕はあなたたちが平和で幸せであることを祈っているよ。 人生を楽しみ、音楽を楽しみ、そしてクリエイティブであり続けるために!
P.S. 僕は日本の “Ain Soph” というバンドが好きで、特に彼らの1980年の傑作 “A Story of Mysterious Forest” が大好きなんだ。もしこのアルバムを知らないなら、ぜひ知っておくことをお勧めするよ。ありがとう。幸運を!

ANTONY KALUGIN

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SUNRISE : EQUILIBRIA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KONSTANTIN LAARS NAUMENKO OF SUNRISE !!

“We Remember Life In The Soviet Union Very Well And We Are Happy That Our Country Broke The Chains Of This Prison And Moves In The European Direction. Freedom Is In The Blood Of Our Nation And Our Way Is To Build a Highly Developed European Country.”

DISC REVIEW “EQUILIBRIA”

「ウクライナのメタルシーンは非常に多様で、ほとんどすべてのサブジャンルが存在しているよ。すでに有名なバンドもあれば、世界のメタルシーンでビッグネームになる可能性を秘めたこれからのバンドもあるんだよ」
JINJER, NOKTURNAL MORTUM, DRUDKH。Konstantin Naumenko の言葉を借りればソヴィエトという “牢獄” の鎖を断ち切ってからのウクライナは、ブラック・メタルからプログレッシブ・グルーヴまで個性極まる多様なバンドをゆっくりとしかし確実に輩出し始めました。それでもウクライナ、もしくは東欧から SUNRISE のようなクオリティーとテクニックを兼ね備えたパワー・メタルの申し子が登場したのは初めてでしょう。
「僕たちがインスパイアされたのは、バンドを始めた頃にとても人気があって、今ではレジェンドとなったパワー・メタルのバンドたちなんだ。STRATOVARIUS, SONATA ARCTICA, HAMMERFALL, HELLOWEEN みたいなバンドだよ」
2003年に活動を開始し、オンラインとアンダーグラウンドの世界で徐々に脚光を浴びはじめた SUNRISE は4枚目のフルアルバム “Equilibria” で、東欧メタル世界の常識を覆す大きな一撃を放ちました。
SONATA ARCTICA, そして STRATOVARIUS。北欧パワーメタルの象徴的なバンドを基にしてヘヴィネスとサウンドスケープを増幅した60分強の作品は、20年前のユーロ・パワー成功の要因を探りながら次の世代へとつなぐミッシング・リンクなのかもしれませんね。
フロントマン Konstantin “Laars” Naumenko は、”Ecliptica” や “Silence” の頃の Tony Kakkoが果たした冷静と情熱の間でドラマティックなメタルを語る吟遊詩人の役割を継ぎ、ボーカル/キーボード奏者で妻の Daria “Lady Dea” Naumenko は Jens Johansson を彷彿とさせる見事な鍵盤捌きとともに天使のような囀りで夫の世界観を肉付けしていきます。そうして、リズム・セクションと最近加入したギタリスト Maksym Vityuk まで一丸となり、雷鳴のようなスピードメタル・アタックを繰り広げていくのです。
「僕たちの “We are the Fire” が SONATA ARCTICA にインスパイアされていることには同意するけど、類似性はこの曲で終わっていると思うよ。他の曲では、異なるサウンドと異なるアイデアを披露している。NIGHTWISH や初期の WITHIN TEMPTATION のようなシンフォニックな曲もあれば、 STRATOVARIUS や AVANTASIA に近いサウンドの曲もあるからね。さらに、プログレッシブ・メタル・スタイルで書かれた3曲は、DREAM THEATER の作品を思い出させるかもしれないね」
“Equilibra” が “Reckoning Night” 以降の SONATA ARCTICA、もしくは “Eternal” 以降の STRATOVARIUS の長き沈黙に焦りを感じている層に対する福音であることは言うまでもありませんが、より広義のパワー・メタルやシンフォニック、プログ世界もこの作品を享受するべきでしょう。
“We Are The Fire”や “Life Is A Journey” のような高空飛行のジェットストリームは、”Father Time” や “Fullmoon” の疾走と高揚感を運びますが、心に響く混声のヴォーカル・デュエット “The Only Reason” や、ピアノを中心としたミドルペースの “The Bell” では存分にシンフォニック・プログレッシブの余韻に浸ることが可能。さらに、”Equilibrium” や “Unbroken Dreams” では重厚なリフワークとキーボードの相乗効果で、感染力の高いヘヴィーメタルの根源を探求していくのです。Eではじまり、Aで終わるパワーメタルの金字塔は、四半世紀の時を超えてより壮大により荘厳に進化を果たしました。
今回弊誌では、Konstantin “Laars” Naumenko にインタビューを行うことができました。「僕たちは、ソビエト連邦での生活をよく覚えているよ。そして、僕たちの国があの牢獄の鎖を断ち切り、ヨーロッパの方向に向かって進んでいることを嬉しく思っているんだ。自由は僕たちの国の血の中にあり、これからの道のりは高度に発展したヨーロッパ的国家を築くことなんだ」 どうぞ!!

SUNRISE “EQUILIBRIA” : 9.9/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【JINJER : MACRO】


COVER STORY : JINJER “MACRO”

“I Was Too Young To Remember Life In Soviet Union, But The Spirit Of Soviet Union Is Still Here. I’m Living In An Apartment Built Maybe 40 Years Ago, And My Parents Live In Such An Apartment, As Well. All Our Shops And Supermarkets Are Situated In Buildings Built Then. So It Is Still Sike Soviet Union. And There Are a Lot Of People Who Still Have Soviet Union In Their Heads And Their Minds.”

HOW JINJER SINGER TATIANA CROSSES MUSICAL, LYRICAL, AND UKRANIAN BORDER 

「時に穏やかで平穏。だけど時に人々は何かが起こるのをただ待っている。今現在、少なくとも爆撃はされていないわ。それは良い事ね。」
JINJER のボーカリスト Tatiana Shmailyuk はウクライナのドネツクにある故郷ゴルロフカについてそう話します。彼女とバンドメイト、ベーシストの Eugene Abdiukhanov、ギタリスト Roman Ibramkhalilov、そしてドラマー Vladislav Ulasevich が最初にドネツクから逃れたのは2014年のことでした。それから程なくして、ウクライナの内戦を装った現在も続くウクライナとロシアの衝突、クリミア危機が勃発したのです。
「良い時期に脱出したと思うわ。だって数ヶ月後には国境地域を跨ぐことさえ本当に不可能となっていたんだから。」
戦場から逃れる中で、JINJER は東部から西部へと800マイルを移動してポーランドとの国境に近いリヴィウに立ち寄りました。
「だけどすぐに退屈してしまったわ。旅行者のための街だったから。家も借りたんだけど、水道、電気、暖房設備に問題があって住むことは難しかった。だからもっと文明化された場所へ移ることにしたの。」そうして Tatiana 達はウクライナの首都キエフへと移り住んだのです。

では、ウクライナの風土や国民性は JINJER にどういった特徴をもたらしているのでしょうか?
「JINJER は優しさと弱さが等しい土地から生まれたの。ウクライナは経済的には厳しい国よ。特に90年代前半、私たちの親の世代は大変だった。父と母は最低の賃金を得るためでさえ一生懸命働かなければならなかったの。兄と私を養うために。学校や家の近くにもいつも犯罪があったしね。そこから私たちは人生の教訓を多く学んだわ。
だからウクライナ人は精神的にタフなのよ。例えば少々痛くても、医者には行かないわよ。最後まで我慢する。 だからショウもキャンセルなんてしないわ。ジュネーブの灼熱で喉が腫れ上がっても、私はセットを完遂したわ。根性ね。」
ただし、素顔の Tatiana はシャイな一人の女性です。「みんな私を鉄の女か何かだと思っているようだけど、私だって人生全てを恐れているわ。だから演じているようなものよ。みんなと同じようにセンシティブで傷つきやすいの。いつもスクリームしている訳じゃないしね。まあ毎晩叫んでいるけど、朝は叫ばないわ (笑)。」

Tatiana は JINJER を始めるずっと以前から歌い、そしてその咆哮を響かせていました。
「母に言わせれば、とても幼い頃からスクリームしていたそうよ。叫びすぎておなかにヘルニアができたくらいにね。」
稀に叫んでいない時には、ラジオで聴いたロシアやウクライナのポップソングを歌っていました。1989年のヒットソング “Lambada” も彼女のお気に入りです。「ポルトガル語は分からないけど、シンガロングしていれば楽しいわよね。」
シリアスにボーカルへ取り組み始めたのは8歳の時。レッスンを受け、コンサートホールで合唱隊としてコンサートを行いましたが、ダンスの振り付けに悩まされてしまいます。
「二度とやらないわ!ダンスを誰かとシンクロさせるなんて苦行。一人でなら全てをコントロール出来るんだけどね。」
しかしすぐに兄によってロシアンメタルの世界へと誘われ人生が変わりました。中でも、ロシアの IRON MAIDEN と称される ARIA の存在は別格。
「ドネツク、特に私の故郷ゴルロフカの人間は音楽的なのよ。メタルが大好きだしね。偉大なバンドも沢山あったわ。兄もミュージシャンでダークなドゥームバンドでギターを弾いていたの。」

1991年、ソヴィエト連邦が崩壊すると変化は猛烈な勢いで押し寄せました。MTVはウクライナにも NIRVANA や OFFSPRING のウイルスを運びます。
「NIRVANA を聴いてすぐにロシアのロックを忘れたわ (笑)。MTV は最高だった。すぐに OFFSPRING にハマったわ。私たちの街で私は一番の OFFSPRING ファンに違いなかったの。父がテレビの音をカセットに録音する方法を教えてくれてね。友人やクラスメイトとテープの交換を始めたのよ。そうしてリスナーとして音楽体験を共有していたのね。」
OTEP の Otep Shamaya は Tatiana の感性に衝撃を与えました。「この男の人は最高にクールね!って言ったら友人が女の子よって。OMGって感じよ!こんな女の子は初めてだったわ。そうやって私も彼女みたいに衝撃を与えたいって思うようになったの。
私も9歳からずっと男物の服を着ているわ。それって結局、性別で世の男性を虜にしたくないからなんでしょうね。それよりも中身や心で惹きつけたいのよ。去年ツアーで会えたんだけど、酔っ払っていてずっと彼女を賞賛していたことしか覚えていないの。」
2009年、キエフに訪れた SOULFLY が初めてのメタルコンサート。「めったにない機会だったのに、彼氏が誰かと喧嘩をはじめて途中でセキュリティーに追い出されたのよ。その夜はずっと彼を責め続けたわ。」

近年、ツアーで家を開けることも多い Tatiana ですが、それでも継続中の紛争は彼女をウクライナから完全に切り離すことはありませんでした。ただしソヴィエトのアティテュードに魅力を感じることはありません。ソ連が崩壊した時 Tatiana はわずか4歳でしたが、それでも強硬な共産主義の残影は彼女を未だに訶みます。
「ソビエト連邦での生活を思い出すには幼すぎたけど、それでもソ連の精神はまだここにあるの。私はおそらく40年前に建てられたアパートに住んでいて、両親も同様にそんな感じのアパートに住んでいるわ。お店だってスーパーマーケットだって当時建てられたもの。だからここは今でもまるでソ連よ。それにまだ多くの人々が頭や心にソ連を宿しているの。
古い人間をマトリョーシカって呼んでるわ。私の容姿はバスの中でもジロジロ見られるし。ウクライナでは男性でもタトゥーは受け入れられていないの。まだ U.S.S.R の考え方でいるから、異なる人間が気にくわないのよ。そういった年配の人たちはテレビばかり見ているけど、そこに現実は映っていないわ。タトゥー?あなた60歳になったらどうするの?って感じよ。」

青春期を東欧の貧困家庭で過ごした Tatiana の人間に対するダークな見方は、彼女の故郷に限りません。「私は人類が好きじゃないの (笑)。進化で何かがおかしくなったのよ。今では神様や自然を蔑ろにしている。それが私の内なる怒りを呼び起こすのよ。」
母なる自然への愛情は Tatiana をヴィーガンに変えようとしています。「私はまだビーガンになろうとしているところなの。子供の頃あまり裕福じゃない家庭で育ったから、肉を食べる余裕があまりなくてね。だから最近肉をやめて、肉が大好きだって気づいたの。肉の匂いがすると、気が狂いそうよ。でも動物の苦しみや環境を思うとね…。」
幸いなことに、Tatiana はヴィーガンへの願望と肉食への渇望を両立させる解決策を持っています。「人間の肉を食べることが許されるならそうするわ (笑)。そんなに食に貪欲なら、お互いを食べてみない?」

DISC REVIEW “MACRO”

Facebook に次いで世界で2番目に人気のあるソーシャルメディアプラットフォーム YouTube。JINJER が公開した “Pisces” のライブビデオはすでに2800万回の視聴数を誇ります。
当然そこには、ウクライナという出自、さらにジキルとハイドを行き来する女性ボーカル Tatiana の希少性、話題性が要因の一つとして存在するはずです。
ただし、JINJER の音楽がオンラインによくある、短命のインスタントなエンターテインメントでないこともまた事実でしょう。ベーシスト Eugene にとっては音楽が全てです。
「ウクライナ出身だから政治性を求められるのも分かるんだけど、僕らの音楽にかんしては何物にも左右されないんだ。仮にロシア出身だろうと、イタリア出身だろうと同じだよ。音楽と僕たち。全てはそれだけさ。」
つまり、JINJER は同時代の若者に表層から衝撃を与えつつ、実のところその裏側では幾度ものリスニング体験に耐えうる好奇心と思考の奥深きトンネルを掘り進めているのです。
実際、Tatiana は JINJER がスポットライトを燦々とその身に浴びるような集団ではないと語ります。
「有名になりたいって訳じゃないの。今でも私は車ももっていないし築40年のアパートに住んでいるわ。だから第2の “Pisces” を作ろうなんて思わない。JINJER は大人気になるようなバンドじゃないわ。」

とは言え、PROTEST THE HERO の精子と KILLSWITCH ENGAGE の卵子が受精し生まれたようにも思える2012年の “Inhale, Don’t Breath” から JINJER は異次元の進化を遂げています。比較するべきはもはやメタル世界最大の恐竜 GOJIRA でしょうか。それとも MESHUGGAH?
テクニカルなグルーヴメタルに Nu-metal と djent の DNA を配合し、R&B からジャズ、レゲエ、ウクライナの伝統音楽まで多様な音の葉を吸収した JINJER のユニークな個性は全てを変えた “King of Everything” から本格化へ転じたと言えるでしょう。
2019年に届けられた EP “Micro” とフルアルバム “Macro” は双子のような存在で、創造性のオーバーフローの結果でした。
「もともとフルアルバムの予定はなかったんだ。”Micro” は次の作品までの繋ぎって感じだったんだけど、完成が近づくともっともっと楽曲を書きたくなってね。クリエイティブなエナジーが溢れていたんだ。」

無慈悲なデスメタルから東欧のメランコリー、そしてレゲエの躍動までを描く“Judgement (& Punishment)” はJINJER の持つプログのダイナミズムを代弁する楽曲でしょう。
「僕たちの音楽に境界は存在しない。いいかい?ここにあるのは、多様性、多様性、そして多様性だ。」そう Eugene が語れば Tatiana は 「JINJER に加わる前、私はレゲエ、スカ、ファンクをプレイするバンドにいたの。だからレゲエの大ファンなのよ。頭はドレッドにしていたし、ラスタファリに全て捧げていたわ。葉っぱはやらないけど。苦手なの。JINJER は以前 “Who Is Gonna Be the One” でもレゲエを取り入れたのよ。レゲエをメタルにもっともっと挿入したいわ。クールだから。」と幅広い音楽の嗜好を明かします。
判決を下し罰するというタイトルは SNS に闊歩する魑魅魍魎を揶揄しています。「気に入らなければ放って置けばいい。私ならそうするわ。なぜ一々批判的なコメントを残すのかしら?それって例えばスーパーに行って質の悪いバナナを見る度、おいクソバナナ!お前が大嫌いだ!さっさと木に戻りやがれ!って叫び始めるようなものでしょ?(笑) 私は他にやるべきことが沢山あるの。そんなことに割くエナジーはないわ。」

“On The Top” は2020年代の幕開けを告げる新たなプログアンセム。SOULFLY を想わせるトライバルパーカッシブと djent の小気味よいスタッカートシンコペートは Tatiana のフレキシブルな歌呪術へと怪しく絡みつき融けあいます。
「ラットレースのラットを演じてるって感じることはある?世界はどんどんそのスピードを増し、誰もが成功と呼ばれるあやふやなものに夢中よね。”On The Top” で訴えたのは、名声や成功に伴う孤独と満たされない心。”トップ” に到達するため犠牲にするものは多いわ。その梯子は本当に登る価値があるの?犠牲を払うのは自分自信なんだから。」
ウクライナの陰影を抱きしめたコケティッシュな “Retrospective”、ポルトガルのライター José Saramago の著作にインスピレーションを受け、死を地球を闊歩するクリーチャーになぞらえた “Pausing Death”、大胆にも聖書を再創造したと語る “Noah” など、Tatiana の扱う題材は多岐に富み、世界をマクロ、そしてミクロ、両方の視点から観察して切り取るのです。
「ウクライナでは決してメタルは歓迎されていないの。にもかかわらず素晴らしいバンドは沢山存在するわ。ただ、チャンスを把み国境を超えることは本当に難しいの。」
アイコニックな女性をフロントに抱き、多様性を音楽のアイデンティティーとして奉納し、ウクライナという第三世界から登場した JINJER は、実はその存在自体が越境、拡散するモダンメタルの理念を体現しています。音楽、リリックのボーダーはもちろん、メタファーではなく実際に険しい国境を超えた勇者 JINJER の冒険はまだ始まったばかりです。

参考文献: FROM WARZONES TO MOSH PITS: THE EVOLUTION OF JINJER’S TATIANA SHMAILYUK: REVOLVERMAG

Jinjer Singer Didn’t Want ‘Pisces’ to Become So Popular [Exclusive Interview] Read More: Jinjer Singer Didn’t Want ‘Pisces’ to Become So Popular | LOUDWIRE

Ukrainian Metal Band Jinjer Delivers on Its Promise With New Album ‘Macro’

METAL INJECTION “JINJER”

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FULL ALBUM STREAM: “A FURROW CUT SHORT” 【DRUDKH】


FULL ALBUM STREAM: “A FURROW CUT SHORT” OF DRUDKH !!

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WORLD PREMIERE: NEW SONG !! “TILL FOREIGN GROUND SHALL COVER EYES” OF DRUDKH !!

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 NO PICTURE ! NO INTERVIEW ! UKRAINIAN MYSTERIOUS PAGAN BLACK METAL SET TO RELEASE NEW ALBUM “A FURROW CUT SHORT ” ON 4/20 !!

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 写真、インタビュー、一切 NG !! 秘密結社のようなウクライナの PAGAN BLACK METAL, DRUDKH が4/20に新作 “A FURROW CUT SHORT” をリリースします。ウクライナのエピカルなフォーク音楽を取り入れたメロディックでシネマティックなブラックメタルを指標しています。実はあの ALCEST の NEIGE と合体したプロジェクト OLD SILVER KEY で優れたアルバムをリリースしていたりします。今回もウクライナの詩から発想を得たアルバムになるそうです。
On ‘A Furrow Cut Short’, Roman is heavily drawing inspiration from 20th century Ukrainian poetry once more, which often deal with the bloody struggle of this old country to build a nation from foreign oppression. DRUDKH still refuse any kind of interview or promotion and demand to be understood through their music alone. This album equally represents the blood soaked sound of black despair and full hearted resistance to vile treachery and evil as well as the beauty of landscapes and culture. Listen carefully to hearts breaking.
Tracklist
1. Cursed Sons I
2. Cursed Sons II
3. To the Epoch of Unbowed Poets
4. Embers
5. Dishonour I
6. Dishonour II
7. Till Foreign Ground Shall Cover Eyes
Line-up
Roman Sayenko: guitars
Thurios: guitar, vocals
Krechet: bass
Vlad: drums, keyboards
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JAPANESE PREMIERE : ‘KIEV’ AND ‘KIEV (HAIOKA REMIX)’ 【UMMAGMA】


JAPANESE PREMIERE : ‘KIEV’ AND ‘KIEV (HAIOKA REMIX)’ FROM UMMAGMA’S UPCOMING ALBUM “KIEV REMIXES”

‘KIEV’

‘KIEV (HAIOKA REMIX)’

CANADIAN/UKRAINIAN TEAM ‘UMMAGMA’ WILL RELEASE INTERNATIONAL REMIX ALBUM ‘KIEV REMIXES’ ON 10/31!!

本誌でも大好評だった SOUND OF SPUTNIK のメンバー二人によるプロジェクト UMMAGMA。彼らの ‘KIEV’ という曲を様々な国の様々なアーティストがリミックスした ‘KIEV REMIXES’ というアルバムが Emerald & Doreen Recordings から10/31にリリースされます。今回はそこからオリジナルテイクと 日本人アーティストSHINTARO HAIOKA がリミックスを行った素晴らしいテイクを日本のファンの皆さんへ特別に公開します!!

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【ABOUT ‘KIEV’】

In this new release, Ummagma rise above the decay and mayhem encountered in that country to embrace diversity and beauty, while taking their music in new directions. ‘Kiev’ is not only the epicenter of massive civil unrest – it is the name of this release, and is ultimately a message of hope. The outcome shows that what is the end for one person may be the start for another.  In ‘Kiev’, this Canadian-Ukrainian team celebrates their freedoms, exploring the root of today’s problems to create beauty in the face of hostility. Even more importantly, it shows that beauty can blossom even in the midst of ugliness. Despite heavy turmoil in Ukraine, Ummagma look forward to a brighter future for Eastern Europe. 

UMMAGMA はこの新作で新しい方向性を提示しました。ウクライナが直面している腐敗や混乱。そこから脱するような多様性や美しさを抱く事で。キエフが象徴しているのはただ市民の不安の震源地というだけではなく希望へのメッセージでもあるのです。私たちはウクライナとカナダのチームです。自由に感謝し、敵意に満ちた今日の問題のルーツを美しさを奏でることで探求していきます。重要なのは醜さの中でも美は花開くという事です。ウクライナは確かに大混乱のさなかにありますがUMMAGMA は東ヨーロッパの明るい未来を見据えています。

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This release is an impressive package featuring the original track ‘Kiev’ plus 9 remixes from 9 fantastic artists from as many countries, celebrating the splendour of the original composition in their own unique styles. One of these artists is Japanese producer Shintaro Haioka, who is one of just three Red Bull Music Academy artists from Japan, renowned for mixing traditional Japanese instrumentation, such as the koto, with electronic chill sounds.  In the words of the Academy, which is now underway in Tokyo, “Haioka offers a distinctively Japanese take on modern electronic music, and one that rationalises the past with the future, and his nation with the world.”

今回のリリースは ‘KIEV’ のオリジナルトラックと様々な国の9人の素晴らしいアーティストがリミックスを行った ‘KIEV’ の9バージョンが収められています。それぞれが独自のスタイルでオリジナルの楽曲に輝きを与えています。その中に一人、日本人アーティストがいます。RED BULL MUSIC ACADEMY に所属する日本人3人の中の一人、SHINTARO HAIOKA です。琴のような和楽器をミックスする事で有名ですね。アカデミーの言葉を引用すると、「HAIOKA は彼独特の過去と未来、日本と世界を結ぶようなモダンなエレクトロミュージックを創造している」という風に紹介されています。
Haioka wants to represent Japanese style at RBMA

【MESSAGE FOR JAPAN】

Once again we have the fortune of working with a good record label and also the opportunity to introduce our music to you. For this, we are thankful. This release is a bit different than the Sounds of Sputnik release, which recently premiered here in Marunouchi Musik Magazine, because it’s just Ummagma, our duo, which was created and blossomed on the basis of love. We have been experiencing a very strange time in our lives due to the war in Ukraine, but it has united us even more and made us even more determined to make music – to create something beautiful – even if many people are looking in the other direction. This song ‘Kiev’ is a statement about everything wrong with our greedy society, but the song ends on a note filled with hope. Love, light and hope – that is what we wish – for everyone and, most immediately, for anyone taking the time to listen to this music. We also hope you will explore Shintaro Haioka’s music further, as we think he is brilliant!  Domo arigatou gozaimasu!
幸運にも良いレーベルとめぐり合い、また皆さんに私たちの音楽を紹介する事が出来ました。本当に皆さんには感謝しています。今回のリリースは以前MMMで紹介した Sound of Sputnik (こちらの記事)とは少し異なっています。Ummagma というデュオで愛の音楽だからです。ウクライナの戦争によって私たちは人生でも最も奇妙な時を経験しています。ただそれによって私たちはより結束し、美しいものを作るという音楽への熱意を新たにしました。この’KIEV’ という曲は全てが間違っている私たちの貪欲な社会へのステイトメントです。ただ最後は希望で一杯の音で終わりますよ。皆さんへの愛、光、希望。それこそが私たちの望む物なのです。同時に Shintaro Haioka の音楽もぜひチェックして下さい。彼は本当に素晴らしいと思っているからです。どうもありがとうございます。

                      FROM UMMAGMA

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彼らの関連ページです。合わせてチェックして下さい!!

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