EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARK BOALS FROM RING OF FIRE !!
“I Look To Singers Such As Pavarotti Who Never Lost Their Level Of Excellence And Singing Up Until The Day They Left This Earth. I Hope And Pray To Be Able To Do The Same!”
DISC REVIEW “GRAVITY”
「長い休みを取ったんだ。前作はコンセプトアルバムだったんだけど、ロシアを題材にしたこともあってあまり評判が良くなかったんだよね。ちょうどその頃、ロシアという国やその指導者に対して皆が怒っていた。だから、とても良いアルバムだったのだけど、チャンスをもらえなかった気がするね。その結果、僕たちは RING OF FIRE のバンドの活動から非常に長い間離れることになったんだ」
20世紀の最終盤に、特にここ日本で猛威を振るったネオクラシカルなシュレッドと、プログレッシブなヘヴィ・メタル。その複雑でしかし神秘的な二つの審美を炎と冷静でつなぎあわせた RING OF FIRE の存在は、ARTENSION と共に、かつて私たちを不可能を可能にした不可視領域へと誘ってくれました。
時は2022年。ネオクラシカルとプログを、素直に、ウルトラ・テクニックで結びつけるバンドはほとんど絶滅してしまいました。マグナ・カルタやシュラプネルはほとんど息をしていませんし、SHADOW GALLERY はメンバーの死により沈黙。SYMPHONY X はネオクラシカルを脱出し、ROYAL HUNT がその灯火を必死で繋いでいるといった状況なのかもしれません。
Vitalij Kuplij と Tony MacAlpine。もしくは George Bellas。さらに、彼のソロアルバムにおける Greg Howe との共演に、さながらパブロフの犬がごとく心が踊った私たちの偏った性癖は、もはや相当時代遅れなのかもしれませんね。実際、ヘヴィ・メタルは今でも多くのリスナーを惹きつけ、拠り所となっていますが、もっと多様で広義の “プログレッシブ”、そうでなければよりヒロイックで視覚にも訴えかける大仰なファンタジーを人々は求めているようです。
では、RING OF FIRE に、もう付け入る隙はないのでしょうか? 否。9年ぶりに帰ってきた彼らのサウンドは、自らのアイデンティティを保ちながらも、しっかりと “今”のヘヴィ・メタルの風を受けています。ウクライナ人である Vitalij にとってはもちろん侵略に、そして稀代のシンガー Mark Boals にとっては加齢という “重力” に、引っ張られるわけにはいかなかったのでしょう。RING OF FIRE 5枚目のアルバム “Gravity” は、その “反発力” で過去の遺産を見事に “エピック” なキャンパスへと描き切りました。
「Vitalij Kuprij はウクライナ出身だから、どのアルバムもヨーロッパ的な雰囲気はあると思う。もちろん、Cole や Aldo も曲を書いて独自のヴァイブを加えているし、僕以外のバンドはみんなヨーロッパにルーツがあるから欧州の音になるのも当然だよね」
血の入れ替えは完璧に成功しました。名の売れた古株を選ぶよりも、Mark と Vitalij はイタリアの新鋭3人に賭け、そしてギャンブルに勝利しました。特に、SECRET SPHERE のギタリスト Aldo Lonobile は掘り出し物としか言いようがありません。これまでの RING OF FIRE にもしかしたら欠けていた、ヨーロッパのエピックやスケール感、それにストーリー・テリングのスキルが Aldo によってもたらされました。それはまさに、今のメタルに求められるもの。
このアルバムのマグナム・オーパスである “The Beginning” と “Storm Of The Pawns” は、複雑な感情、洗練の感覚、鍛錬を重ねたクラシックの技術が、エピック・メタルのイメージで再構築されています。重要なのは、そこにプログレッシブ・メタル特有の驚きが組み込まれているところ。Vitalij が紡ぐ突然のピアノの旋律は、至る所でリスナーにサプライズを提供していきます。もちろん、”Melanchonia” のような内省的なリリックとメランコリーが、メタライズされた感情を爆発させる RING OF FIRE 式対比の美学も健在。”King Of Fool’s” や “21 Century Fate Unknown” のように、時には予想外の不協和音を音楽に取り入れて、心理的変化を伝える “物語” の能力も見事。
タイトル曲の “Gravity” はそんな新たな RING OF FIRE に生まれたマイルストーンなのかもしれません。メンタル、スピリチュアル、フィジカル。歌の三要素を整えた Mark Boals の歌唱は絶対領域へと到達。ドラマチック・シネマティックなシンセサイザーが響く中、ダニー・エルフマンがメタル映画のスコアを作ったような感染力が楽曲のフックを最高潮まで高めます。心強いことに、RING OF FIRE は今でも挑戦を重ね、最後の1音までそのクオリティを保っています。ネオクラシカル/プログレッシブ最後の桃源郷がここにはあるのです。
今回弊誌では、メタルの歌聖 Mark Boals にインタビューを行うことができました。「僕はまだまだ歌い方を勉強している感じなんだよ。パバロッティのように、この世を去るまでその卓越した歌唱力を失うことがなかった人たちは、特に尊敬しているよ。僕もそうでありたいと願っているから」BILLIONAIRES BOYS CLUB、いいですよね。どうぞ!!