EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DANIEL DROSTE OF AHAB !!
“Listening To The Repetitive And Gloomy Atmosphere Of Funeral Doom Immediately Created Pictures In My Mind.”
DISC REVIEW “THE CORAL TOMBS”
「ジュール・ヴェルヌの “ノーチラス号” の小説は、”白鯨” に次いで、航海小説の中で最も人気のある物語。僕は60年代のディズニー映画で初めてこの物語に触れ、子供の頃本当に大好きだったんだ」
ドイツが生んだフューネラル・ドゥームの巨神 AHAB は常に深海に魅せられてきました。ハーマン・メルヴィルの “白鯨” に登場する狂気の船長を名乗る彼らの作品は、未知の世界への航海と、未知に隠された恐怖という名のカタルシスをいつも表現しているのです。
さながら IRON MAIDEN の大作 “Rime Of The Ancient Mariner” を深く暗い海底へと沈めるかのように、深海のフューネラル・ドゥーム集団は2006年の “The Call Of The Wretched Sea” で白鯨を語り、そこから2009年の “The Divinity of Oceans” でマッコウクジラによるエセックス捕鯨船沈没を舞台とした海の脚本を演じ続けました。
さらに、エドガー・アラン・ポーの “ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語”(2012年 “The Giant”)や、ウィリアム・H・ホジソンの “The Boats Of The Glen Carrig”(2015年の同名アルバム)においても、深海の神秘性とアトモスフィア、そして “自由” を、その深みを持った重くて広がりのある葬送曲で見事に表現してきたのです。
「強硬派に言わせれば、ドゥーム・メタルがドゥーム・メタルであるためには特定の様式美が必要だと主張するだろうが、ここには自由がある。これまで AHAB のために作曲している間、限界を感じたことは一度もないからね。ドゥーム・メタルというと、まずそのスロー・テンポや独特のハーモニーを思い浮かべるだろうけど、それ以外にも、ほとんどすべてのジャンルの要素を取り入れることができる自由があるんだ」
なぜ AHAB がこれほどまでに深海へと魅了されるのか。それはきっと、ドゥームと同様に海の底にも “不自由の中の自由” が存在するから。たしかに、光の届かない高圧の海底と同様に、ドゥームには重くて遅い反復の美学という確固とした不文律が存在します。しかし AHAB は、その不自由という音の檻を神秘性やエニグマという魅力へと変えながら、ドゥーム・メタルの長所を引き立てていきます。
つまり、”フューネラル・ドゥームのダークなムードとモノトーンな雰囲気においては、メロディやリズムのシンプルな変化で大きなインパクトを与えることができる” という Daniel の言葉通り、AHAB は屍が降り積もる真っ暗な海底でなお、音楽的な実験と冒険を繰り広げているのです。
「小説という雛形にとって、その物語の解釈に間違いや正解はない。目的ははアートであり、制限やルールは存在しないはずだからね。そして、それこそが僕が作曲をする上で好きな部分なんだ」
深海の語り部が “The Coral Tombs” で挑んだのは、ジュール・ヴェルヌの名著 “海底二万里”。オープニングから、物語のため彼らがはるか海面下に降りていくのが伝わります。”Prof. Arronax’ Descent Into The Vast Oceans” は、不協和音の予期せぬ爆発で始まり、ブラストビートと悲鳴で真っ暗な海道へと突入。スロウでドゥーミーなものを想像していた人には衝撃的な導入部。
一方、”The Sea as a Desert” は、海の砂漠が漂う即興的でサイケデリアを帯びた楽曲。そして、このアルバムの美しくミニマルな瞬間は、主にポストロックに由来していることが明らかとなっていきます。そう、AHAB の新たな冒険は、明らかに以前よりも多様化し、語り口が増幅されているのです。
特筆すべきは Daniel の歌声で、スクリームは魂の奥底まで浸透し、彼のクリーンな歌声は今までのどのアルバムよりも力強くエモーショナル。新たな武器を得た船長は、テンポ、テンション、メロディ、楽器編成をダイナミックに変化させ、レイヤーを緩やかに行いながら、重厚なメランコリーで彼らが熟練の船乗りであることを証明していきます。穏やかなアンビエンスから死のドゥームまで巧みに変容する音楽は、未曾有の音楽体験だと言えます。
それでも、”The Coral Tombs” の大半がドゥームであることに間違いはありません。外部からの影響はこれまで以上に大きいかもしれませんが、AHAB サウンド骨子となる、噛み応えのあるリード、引きずるようなリフワーク、そして沈むようなリズムの波は、未だに海の神秘を尊さまで備えながらリスナーの鼓膜をさながら海底地震のごとく揺らすのです。
今回弊誌では、Daniel Droste にインタビューを行うことができました。「AMORPHIS の “Tales From The Thousand Lakes” と HYPOCRISY の “The Fourth Dimension” を見つけたとき、10代の僕は本当に感動したんだ。アグレッシブな音楽は聴いていたけど、アグレッシブな音楽とダークなアトモスフィア、そして AMORPHIS の曲で使われているオリエンタルなメロディーの組み合わせは、僕を強く惹きつけるものがあったんだ」 どうぞ!!
SLEEP TOKEN の成功は、何年もかけて作られたもの。2016/17年にプログレッシブ・メタル/Djent のとポップやR&Bといった多様な影響を融合させたモダン・メタルで初めて登場し、”Fields Of Elation” や “Nazareth” は耳の早いリスナーたちの注目を集め始めます。しかし、このユニークで謎に満ちた集団が本当に軌道に乗り始めたのは、バンドがデビュー・フル・アルバムからの新曲を垂れ流し始めた2019年になってからでした。
SLEEP TOKEN を “ミステリー・バンド” “エニグマティック” と呼ぶのは、彼らに関する情報があまり出回っていないから。メンバーは儀式的な仮面をつけ、服装も隠しているため、その素性は明らかにされてはいません。わかっているのは、バンドのリーダーが Vessel という名前で活動していることと、 “Sundowning”(2019), “This Place Will Become Your Tomb”(2021)という2枚のフルアルバムがあることだけで、後者は、様々な媒体で2021年のベスト・アルバム・リストに選出されています。
SLEEP TOKEN のアイデンティティ、その神秘性と、複数の異なるスタイルの音楽を融合させた非効率性と異常性の両方を利用したことは、成功の助けとなりました。なぜなら、そうして複数の市場からの注目を集めることは、新人バンドにとって名声を得るための最も手っ取り早い方法のひとつであり、匿名性はファンによる “詮索” というアミューズメントを生み出します。
デジタル時代には匿名性の美しさがあります。私たちの多くは、知り合いが1~4つの SNS で常につながっていて、恐ろしいほどの勢いで切り替えながら憧れのセレブリティや、架空のヒーローについてあらゆることを学びます。私たちは、消費するために情報をノンストップで消費し、自分の行動を疑うことはありません。
SLEEP TOKEN の信奉者たちは、その手がかりを探し求めています。コヴェントリー在住のファン Chris が立ち上げた Discord サーバーで、彼らはバンドの歌詞、アートワーク、MV、グッズを丹念に調べ、ダ・ヴィンチ・コードのメタル版といった風態で隠れた意味を読み解こうと試みているのです。
「ウェブサイトで Vessel のインタビューを読んで、もっと知りたくなったんだ。Reddit でバンドのコミュニティがないか見てみたんだけど、当時はなかったから作ることにしたんだよ」
現在、そのメンバーは900人を超え、バンドが残した暗号を読み解くことに必死です。Tシャツのデザインに描かれた数字列が、鯨の死骸が海底に落ち、生態系全体の栄養源となる “鯨落ち” の座標であることを発見しました。
「バンドが提示する隠されたアイデンティティと世界観が好きだ。音楽だけでなく、全体的な体験ができるんだ」
アルバム “This Place Will Become Your Tomb” は、腐敗した鯨とそれを餌とする動物たちのヘヴィなイメージを象徴としています。死の中の生、つまり Vessel が頻繁にリリックで取り上げるトピックと永遠の繰り返しを表現しています。
Discord は、バンドがその芸術を通して何を探求しているのか、あるいはしていないのか、魅力的な洞察を与え続けています。
「何事も永遠には続かない。それまで我々は崇拝するのだ」と Chris は淡々と語ります。
インターネットと様々なソーシャルメディアの力によって、無名のバンドが一夜にして一般大衆に浸透する時代になったことは間違いないでしょう。SLEEP TOKEN を新しいバンドだと思い込んでいるメディアもあるかもしれません。しかし重要なのは、多くのバンドやミュージシャンがそうであるように、この新たな成功は何年もかけて作られたものなのです。結局、時代がどう変わろうと、バンドをどのように発見するかはあまり重要ではないのかもしれませんね。昔からのファンであろうと、SLEEP TOKEN の活動を初めて知った人であろうと、バンドが成功を収めることは常にクールであり、新しくてユニークな体験とサウンドを提供するバンドであれば、なおさら嬉しいことですから。
バンドへの期待値は、今後も上昇傾向にありそうです。Genius によると、具体的なリリース日は明らかにされていないものの、”Take Me Back to Eden” というタイトルのアルバムが進行中とのこと。
Spinefarm Records のウェブサイトでは、”Chokehold” と “The Summoning” について、「次に何が来るかは時間だけが教えてくれるが、確かなのは、それが慣習に縛られることはないだろう」と書かれています。
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN COBBETT FROM HAMMERS OF MISFORTUNE !!
“Let’s Boil It Down To “Illusions” By Sadus And “Nursery Cryme” By Genesis; This Pair Of Albums Are Kind Of i Ideal In Thrash On One Hand, And Prog On The Other, To Me Anyway.”
“I Do Love Dark Music, But To Me My Music Just Sounds Like Rainbows. Jagged Piercing Ones At Times, But Still Rainbows.”
DISC REVIEW “I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY”
「私は自分の音楽を、天使と悪魔の融合とは思っていない。私にとってはすべて天使的なものなんだ。悪魔的なものは、私自身の悪魔について論じるときに題材として登場するだけでね。意図的にダークな音楽を作ろうとはしていないんだ。ダークな音楽は好きだけど、私にとって自分の音楽は虹のように聞こえるだけ。時にはギザギザに突き刺さるような虹もあるんだけど、それでも虹なんだよ」
ご存知の通り、ヘヴィ・ミュージックが無味乾燥で一義的な場所であるというのは、完全なる誤解です。とはいえ、殺風景で無彩色なスタイルの持ち主がたしかに多いのも事実。しかし、そういったアーティストと同じくらい、ヘヴィ・ミュージックを色鮮やかなアートの爆発として扱う人たちも同様に多いのです。シカゴの Fire-Toolz は、ヘヴィネスに宿る無限の色彩を提案するインターネットの虹。Fire-Toolz A.KA. Angel Marcloid は、プログレッシブ、ブラックメタル、ジャズ・フュージョン、インダストリアル、AOR, グラインドコア、さらには日本のシティー・ポップの要素までスリリングなプロキシを通して屈折させ、スタイルの境界を創造のピクセルで消してしまうのです。
「どんなジャンルの音楽にも、男っぽいとか、女っぽいとか、固有のジェンダー・アイデンティティや表現があるとは思えないよ。ここアメリカの私たちにしても、他の文化にしても、そうした関連付けや決めつけをしてしまうのは残念なことだよ。ただ、私はそうしたレッテル貼りが一般的であることも理解しているんだ。私がそんな風に物事を見たことがないたけでね。境界が曖昧になることは、ほとんどの場合、良いことだと思うんだ。制限を取り払い、規範を解体し、自由を活用することは、とても重要なことだから」
ここ数十年にわたるポスト・モダニズム思想の定着は、ステレオタイプを曖昧で不安定なものとし、ジャンルや形式といった制約を過去の遺物と見なす新しい文化を精製しました。Fire-Toolz の最新作、”I will not use the body’s eyes today” は、この新世界の芸術的アプローチをある意味で体現しているのです。その主眼は、音楽の “脱構築” にあります。
「他の人が私のカオスをどう捉えているかは、よくわかるんだよ。私にとってこの混沌は、とてもコントロールされ、組織化されているように感じられるんだけど、外から見ると、混乱しているように見えるかもしれないね」
私たちが毎秒何千ものピクセルを自然とスクロールするように、この7曲はリスナーを容赦なく説得し、時に幻惑します。一つのテクスチャーやモチーフに落ち着くことはほとんどなく、さながらグリッチを含んだデジタル・コラージュのように機能していきます。最もオーソドックスな “Soda Lake With Game Genie” にしても、6分半という長尺の中にサックスやブラスト・ビート、80年代のポップなど、予期せぬ展開が濁流のように押し寄せる非常に流動的な仕上がり。
“A Moon In The Morning” では、Angel Marcloid のパレットは全体を覆い尽くす焼けるようなディストーションへと変化し、悪魔の遠吠えとオーケストラのMIDIストリングスの厳しいせめぎ合いが対消滅の危機感を抱かせます。イタロ・ディスコ、テクノ、EBM のテイストを取り入れたビートも、アコースティック・ギターのサスティーンを強調したブレイクダウンも、この構築を逃れたしかし意図的なカオスの中にあります。
重要なのは “仕切り” がないこと。ここはブラックメタル、ここは AOR、ここはプログレッシブなどという構築された混沌は、結局のところステレオタイプで、興ざめです。
こうして、従来の構成や動きといった概念を完全に捨て去ろうとする姿勢が “I will not use the body’s eyes today” をユニークで挑戦的作品にしているのです。それはまさに、体の目を使わず、心の目で作品を作ること。心を開き、未来を見据えることのできるリスナーにとって、この計算された混沌はすべての芸術と文化が境界線を失ってもまだ機能する世界の予兆とまで言えるでしょう。そう、私たちは Fire-Toolz によってまんまとハッキングされているのです。
「”I will not use the body’s eyes today” というフレーズは、多かれ少なかれ、私がエゴ (肉体的な目) からではなく、高次の自己の目 (心の目) から見ることを肯定しているんだよね。つまりこれは、超越のための嘆願なんだよ」
ヴェーダ哲学、キリスト教神秘主義、見捨てられることへの恐れ、感情の断絶、愛着の不安、自己破壊、意識の霊的傾向、トラウマの治癒、恥。Angel は永遠に拡張される音のツールボックスと同様に、世界とその神秘に対する多様な哲学と神学のインデックスをもその作品に注ぎ込んでいます。そうして、Fire-Toolz というプログラムは自己実現によって既存の器がさらに拡大可能であることを証明しているのです。
今回弊誌では、Angel Marcloid にインタビューを行うことができました。「カシオペア、角松敏生、木村恵子、杏里、Hiroshima、堀井勝美、鈴木良雄、菊池桃子を生んでくれてありがとう!」 どうぞ!!
Fire-Toolz “I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY” : 10/10
COVER STORY : POLYPHIA “REMEMBER THAT YOU WILL DIE
“I’m Gonna Grow Up And Be a Rock Star, And Just Truly Believing That.”
REMEMBER THAT YOU WILL DIE
「中学2年生の時にマリファナを吸い始めた。それが僕の人生の中で大きな意味を持つようになったんだ。テキサスに住んでいたから麻薬所持で逮捕されたけど、それが僕のキャリアに火をつけたようなもの。僕は保護観察中で、1年間、学校に行って、家に帰るだけだったんだ。人を呼ぶことも、友達の家に行くことも許されなかった。それで、ギターを本当に、本当に、本当に上手になろうと思ったんだ」
16歳になった POLYPHIA の Tim Henson は薬物所持で2度、法に触れてしまいました。テキサス州のように薬物犯罪が特に重く処罰される州では、尚更居場所を失います。今、28歳の Tim は、「毎日マリファナを吸える仕事に就いたんだ」と皮肉を込めて話します。「でも、”言霊” ってあるんだよね。小学校6年生のとき、”僕は Tim Hendrix。大きくなってロックスターになるんだ” って、みんなに宣言して、本当にそう思っていたんだ。だからね、意識の顕在化、決意表明。その力が本当に重要だと思うんだよ」
麻薬所持の罪で、Tim は保護観察や外出禁止処分となり、一人でいることが多くなりました。しかし、その時間をすべて使ってギターの練習を続け、貪欲に最高のミュージシャンを目指したのです。中国からの移民である母親は、息子がアメリカで得られるチャンスを最大限に生かすことを決意します。3歳のときから Tim はヴァイオリンのレッスンを受け始め、幼少期に長時間の練習に対する耐性を養いました。間違うと先生に弓で手を叩かれることもあり、決して楽しいものではありませんでしたが、彼はこの経験に感謝しています。
「多くの移民が、アメリカはチャンスの国だと考えている。だから、若いうちから何かを始めさせる親が多いんだ。乱暴な先生で、当時はかなり嫌だったけど、今思えばおかげで規律を学べたし、集中し、鍛錬し、練習することで、何事も上手になることを理解できたんだ」
10歳のある日、Tim は父親がギターを取り出すのを見ます。それまで父親がギターを弾くということを全く知らなかった彼は、その楽曲に興味をそそられました。「父親の BLACK SABBATH のコレクションから曲を選んで、耳コピを始めたんだよね。サバスは耳コピが簡単なんだ。全部Eマイナーのペンタトニックだから。そして、15歳になるころには、ヴァイオリンの気晴らしでギターを始めたのに、完全にヴァイオリンを捨てていたよ」
Tim が中学生の頃は、CHIODOS, TAKING BACK SUNDAY, FROM FIRST TO LASTなどが流行っていて、長い前髪に血行が悪くなるほどきついジーンズをはいた仲間に囲まれていました。
「年上の子たちが夢中になっていたクールなバンドだった。メロディーのいくつかは信じられないし、楽器編成も本当にユニークだと思ったんだ。ビートルズ、ジミヘン、サバスなど、古いロックしか知らなかった僕は、現代のバンドがやっていることを聴いて、特にロック的なソロとより現代的でテクニカルなリフを融合させることに、革命的な感覚を覚えたんだよね」
高校に入ると、ほとんどの同級生がシーンを卒業し、より “普通” の趣味を追求していました。しかし、Tim はまだ WHITECHAPEL を聴くことで満足していました。それでも彼は、”メインストリーム” の音楽と、それがなぜそんなに人気があるのかについて、好奇心を抑えることができなくなったのです。
「僕はメインストリームの曲を聴きに行き、なぜ多くの人々が好きなのかを理解しようとしたんだ。メタルは非常にニッチだから、僕はより多くの人に届く音楽を評価するようになっていった。何が親しみやすいのか、なぜ多くの人が共感するのか、音楽にあまり興味のない人たちでさえも。以来、その理由を分析するようになったんだ。僕自身はメインストリームの音楽に個人的に共感していたわけではなく、ただ馴染もうとしていただけなんだけどね。だけど、好きなもののために仲間はずれにされるのは、いい気分ではないからね。とはいえ、メインストリームの音楽の多くに純粋に感謝するようになったんだ」
こうした影響はやがて、Tim が2010年から活動しているバンド、POLYPHIA で作る音楽にも滲み出るようになりました。新譜 “Remember That You Will Die” は、ポップ、ファンク、EDM、Djent といった多様な絵の具をキャンバスに投影した、カルテットにとって最もカラフルでエクレクティックな作品と言えるでしょう。”オマエはいつか死ぬ。忘れるな” というタイトルは、ラテン語の格言 “Memento Mori” をロックンロールの流儀で翻訳した、羊のメタル皮を着た狼の残虐。
「人間は死が避けられないことを自認しているから、生の限られた時間を使って、永遠に存在し続けることができるものを発明しようとする。芸術家は想像力を駆使して、歴史に残るようなものを創り出すんだ。人工知能が発明され、それがアートやテクノロジーに応用されるようになると、人間の思考とコンピューターの思考のギャップを埋める方法が見つかる。 この2つをつなぐことは、最終的に人間の経験の永続性につながり、それは人間が不老不死になることに最も近いと言えるんだ。アルバムのタイトルは、このアートと結びついているんだ」
つまり、POLYPHIA の発明とはジャンルのステレオタイプを気にかけないこと。それが彼らの成功の礎です。彼らは MySpace でデスコアをイメージさせる10代の若者としてテキサスから現れたましたが、彼らをスターにしたのはそのブレイクダウンではなく、21世紀で最もジャンルを打ち破るリックをいくつも生み出したから。ファンク、マスロック、ヒップホップをミックスしたインストゥルメンタル・ジャムは、YouTube で何百万もの再生と Instagram のフォロワーを獲得しました。
「僕たちは何からでもインスピレーションを受ける。過去数枚のアルバムからギターを取り除き、ドラムとベースだけを聴くとしたら、トラップ・ビートやフューチャー・ベース・ビートが残る。もしギターを外して、演奏しているものにボーカルを加えても、やっぱりそう聴こえるだろう。つまり POLYPHIA でギターっぽいのはギターだけで、あとは人間がプログラムされたパートを演奏しているだけなんだ」
POLYPHIA は、半分プログレッシブ・インストゥルメンタル・バンドで、半分オンライン・インフルエンサーだと言えるのかも知れませんね。バンドが2016年に “Euphoria” のビデオを公開した際、半裸のスーパー・モデルをサムネイル画像として起用したところ、400万人を数える人々にクリックバウトされました。YouTube のトップコメントにはこう書かれています。”彼らはとても賢い。美しい女性の画像を使って、騙して素晴らしいギター・バンドを発見させるなんて。ありがとう”
「POLYPHIA は意識的に2つの非常に異なるオーディエンスを一緒にしようとしたんだ。一つはギター・マニアとオタク。もうひとつは、ジャスティン・ビーバーや ONE DIRECTION のキッズだった僕らと同世代の女の子たちだ。それが目標だったんだけど、何年もかけて、自分たちではない何かになろうとすることを減らして、自分たちでいるようになったんだ。今でも男性中心だけど、ライブでは女の子がたくさんいるんだよ」
Ichika Nito、Mateus Asato、Yvette Youngといった才能あるアーティストを起用した 2018年の3rdアルバム “New Levels New Devils”。彼らのプロモ写真には、メルセデスに腰掛け、まるでクールなキッズのような格好をした4人組の姿が写っていました。テック・メタルを愛する若者たちにとって、それはある意味冒涜的な行動でしたが、Tim は当時、重要なことはクールであることと女の子にモテることだったと胸を張ります。
「2004年の “St Anger” で、METALLICA のプロモを見たんだ。彼らは全員メルセデスでリハーサルスペースに乗り付けたんだ。すげーカッコいいと思ったんだ。その時、自分たちを世界最大かつ最高のメタル・バンドと呼ぶというミームを思いついたんだよ。それに、僕らがもっとビッグになりたいと思っていた頃、ONE DIRECTION はまだ存在感を示していた。僕たちは、”よし、彼らがやっていることをやろう。明らかに女の子が好きなことだ” と思ったんだよな」
“The Most Hated” という明らかにノンギターな EP は、ファンたちの頭を悩ませ、中には逃げ出してしまった人もいました。
「あのリリースで、”俺たちが先にいたから POLYPHIA は俺たちのものだ” みたいな気取った老害的ファンを排除したんだ。彼らは僕たちの以前の作品を気に入っているから、それはそれでよかったんだ。結果として、新しいファンを獲得することができたからね。アマチュアから現在のようなバンドへと成長できたのさ。このアルバムも、半分は既存のファンのため、残りの半分は新しいファンのために作ったよ」
ボーカリストがいないことで、当初は多くのリスナーにとって眉唾ものでしたが、Tim はむしろインストであることがバンドに大きな創造性と可能性をもたらしたと考えています。
「より多才になれるし、より多くのコラボレーションが可能になるんだ。僕が本当に理想としているビジネスモデルは、EDMがすごく流行っていた2015年から16年ごろ、Zedd と Alessia Cara みたいな DJ とポップスターとのコラボも盛んで、同じ DJ があらゆるポップスターとコラボしてスターのキャリアを飛躍させるようなシステム。POLYPHIA のアイデアは DJ なんだよね。どんなシンガー、ラッパー、メタル・ボーカリスト、楽器奏者、DJ、プロデューサーともコラボできるんだ」
Chino Moreno や Steve Vai、ラッパーの Killstation や $not、ポップスターの Sophia Black など、”Remember That You Will Die” の豪華なゲスト陣を見れば、POLYPHIA の生み出したモデル・ケース、その影響力が浮き彫りとなります。
“Don’t Take The Easy Dollar. Find What You Want To Do — What Makes You Happy — And Go With It. Live Virtuously, And You’ll Be Rewarded Tenfold. I’m Not Rich, But I’m Happy Where I’m At”
DREAMKILLER
Arthur Rizk はモダン・メタルの秘密兵器でしょう。もし彼の名前を知らなくても、メタルヘッズなら彼の仕事は必ず知っているはずです。2006年以来、プロデューサー、ソングライター、エンジニア、マルチ奏者として300を超える実績を誇る Arthur のキャリアは、ダラス生まれのニューカマー POWER TRIP のデビューフル “Manifest Decimation” を2013年に手がけたことで飛躍的な成長を遂げました。SOULFLY, KREATOR, CAVALERA CONSPIRACY, CRO-MAGS, SACRED REICH, CODE ORANGE, PRIMITIVE MAN, TURNSTILE, SHOW ME THE BODY といったバンドは、Arthur 独特の専門知識から恩恵を受けていますが、これは表面上の話に過ぎません。最近では、ジャンルを超えたラッパー、ソングライター Ghostemane のメジャー・デビュー作を手がけ、90年代のヒップホップへの愛を全開にしたのですから。
「ETERNAL CHAMPION と SUMMERLANDS では、ほとんどメタル以外のものからしか影響を受けていない。僕が本当に好きなのはメロディックなものばかりなんだ。THE EAGLES, Lionel Richie, TANGERINE DREAM といったムードのね。もっとメロディックなものが僕の曲作りのスイッチになるし、そこから何かアイデアを得て、それをメタルとして書くだけなんだ、基本的にね。僕の作品はすべて、メタル以外のものから影響を受けている」
この6年間の Arthur の進化が、”Dreamkiller” に、誠実さ、謙虚さ、内省の正確なブレンドによってのみ可能となる重厚さを与えているのです。別の言い方をすれば、このアルバムには失うものがあるのでしょう。
Arthur は自分の部屋にレバノンの国旗を誇らしげに、そして当然のように掲げています。彼のクリエイティブな性格には、実際、そのレバノンの遺産が大きく影響しています。レバノンからの移民である彼の両親は危険を冒してペンシルバニアで新しい生活を始め、イートンでレバノン風デリカテッセンを開業したことは彼の誇りでした。ヘヴィ・メタルの洗礼を受ける前、彼が影響を受けた音楽は東洋と西洋のハイブリッドでした。一方では、レバノンの伝説的な音楽家であるフェアーズ、ファリド、アスマハン・アルアトラッシュのような人たち。もう一方は、”カトリックの賛美歌と中世とドリアンモード”。彼のメタルのルーツは後者にあり、前者はむしろ音楽の極めて個人的な性質、彼の考え方に影響を与えたのです。
「僕はレバノン系のカトリック教徒として育った。結局、音楽だけが心に残っているんだよな。面白いことに、ヨーロッパとこちら側では、好きなメタルが全く違うんだ。ヨーロッパの人たちは、エキセントリックとまでは言わないけど、結構バンドの後期の作品に興味を持つ傾向にある。80年代の大御所バンドなら、そのバンドの後期のレコードも好きなんだよ。例えば80年代のスラッシュ・バンドがあったとして、ヨーロッパの人たちは90年代や2000年代に彼らが作ったゴシック・ロックのようなものも好きだ。例えば PARADISE LOST や SENTENCED のような、ある方向から始まって別の方向に向かったバンドのレコードをずっと追いかけている可能性がある。その理由はよくわからないけどね。アメリカの人たちは、音楽の流行の移り変わりが早い気がするね。
とにかく、レバノンの従兄弟たちが、僕をメタルに引き込んでくれたんだ。IRON MAIDEN の “Virtual XI” とか、そんな感じの適当なカセットテープをくれたんだ。従兄弟たちは僕のヒーローだったから、”彼らがハマっているものは何でもハマらなきゃ!” って感じだったからね。ユーロ・メタルからの影響は、前作よりもこのアルバムの方がより強く出ているんだ」
この Arthur の形成期における幅広い芸術性は、彼の作品に不可欠であり、異例の解決策を発見する欲求を刺激し続けています。ジャンルを超えたラッパー Ghostemane のアルバム “N/O/I/S/E” と “ANTI-ICON” を手がけることは、彼の創造力の試金石となりました。”90年代のラップの大ファン” と称する Arthur は、Bun B や Three 6 Mafia、ヒューストンやメンフィスのアンダーグラウンド・テープなどを参考にしながら作品に臨みました。Ghostemane の挑戦は、”6つのジャンルの音楽をどう融合させ、親しみやすいものにするか”。その挑戦は、確かに大変なものでしたが、Arthur にとって非常に貴重な学習体験となりました。
「Ghostemane は90年代のメンフィス・ラップとインダストリアルとメタルを融合させている。同じような領域だと思うんだけど、僕はエレクトロニックなものが好きで、そういうものをたくさん手がけてきたよ。COCTEAW TWINS や DEAD CAN DANCE の大ファンだからね。そういうものに影響を受けている人たちと一緒に仕事をすることが多いよ」
Arthur は、このレコードを “6、7日で作った” と明かしています。眠れない夜と、信じられないほど楽しい時間を過ごしたと言いながら、彼は、青写真として初期のビート以外は何も持たずに、トラッキング、ボーカル、ミキシング、その他に取り組んだと断言しました。彼の DNA と切っても切れない関係にある、このマルチジャンルなラッパーとの経験で、Arthur の献身と決意が輝きを増したのは明らかでした。
「Ghostemane を失望させたくなかったんだ。このプロジェクトは、彼がメタルやハードコアの世界に飛び込む最初のレコードであり、彼の大事な瞬間だった。そんな瞬間に彼は僕を選んだんだ。を連れてきた。彼は巨大化する瀬戸際にいる。失望させるわけにはいかないんだよ」
Ghostemane との仕事を、”ノスタルジア” という旗印の下に平板化するのは間違いです。むしろ、ノスタルジーとモダンの間の興味深い一線を探っているのです。Ghostemane のメタルとヒップホップの衝撃的なブレンドは、かつての Nu-metal と共通点もありながら、明らかに一線を画すと Arthur は考えています。
では、SUMERLANDS はどうでしょう?”Dreamkiller” に目を通すと、たしかにノスタルジアは誇らしげに袖に纏っています。メタルが無限に進化すると仮定しても、”影響” と “模倣” を区別することは、Arthur がバンドのアイデンティティを構築する際の重要な柱となります。QUEENSRYCHE, JUDAS PRIEST, Jake E. Lee 時代の Ozzy Osbourne のレコードは、”Dreamkiller” に重大かつ明白な影響を与えています。ただし、SUMERLANDS には、プラトニックな理想に対する Arthur の懸念が深く刻み込まれています。彼は、JUDAS PRIEST のようなバンドを表層的に直接パロってロックンロールのグッドタイムを求めるバンドが影響力の不完全な理解であると主張しているのです。
「僕はプリーストの本質は壮大な曲にあると思う。”Sad Wings of Destiny” を聴くと、まるで QUEEN のレコードのように聴こえる。それに、Rob Halford は様々な女性フォーク・ロックに影響を受けていたんだ」
Arthur と SUMERLANDS の80’sメタルへの傾倒は、AOR, Lionel Richie、Earth, Wind & Fire、Bee Gees、そして Arthur のお気に入りである ABBA のような、ノンメタルな影響を隠し味にしています。
「このアルバムでは、誰がどう思おうが構わないと思っている(笑)。新しいシンガーが加わり、バンドが生まれ変わったような感じだ。僕は FOREIGNER の作品の大ファンなんだよ。彼らのおかげで、プロデュースにのめり込んでいったと言えるかもしれない。FOREIGNER の作品では、シンセサイザーの使い方がとても気に入っているんだ。シンセサイザーが前面に出ているわけではなく、質感を高めているような感じ。彼らのように、どの曲もどこかダークで地中海的な雰囲気にしたかったんだ」
Arthur が “ソーセージグラインダー” と呼ぶ、多種多様なアーティストの品揃えの中でも、ABBA は彼の音楽的アプローチの2つの本質を表しています。ひとつは、他のバンドの美学を一面的に捉えて音楽をトレースすることは、失敗する運命にある。2つ目の論考は、影響、認識、そして杓子定規な思い込みの投影がどのように “真正性 “というプリズムに集約されるかに関わるもの。定型の破壊。
「どのタイプの音楽にどのタイプの歌詞が合うか、というようなことは決してあってはならない。だからつまらない音楽が多いんだ。ABBA に “The Visitors” というアルバムがある。彼らが解散して、最後のレコードを作ったときのもの。どの曲も文字通り肌寒くなるような、本当に悲しい気分にさせてくれるものばかりだ。ABBA らしくないが最高なんだよ。ダンス・ギターやシンセサイザーを駆使して、キャッチーなヴォーカルも入れつつ、もっと歌謡曲っぽい曲を作りたかったんだ。誰がこのレコードを気に入ってくれるかなんて、どうでもいいんだ。僕たちはこの作品が大好きで、この作品に夢中になっているんだから」
メタル・アルバムに期待される歌詞の題材として、Arthur が “Sex、ビール、サタン崇拝” と皮肉るのとは対照的に、SUMERLANDS は、無益、黄昏、夜と昼の間の仄かな時間に見られるはかない希望といった、捉えどころのない、暗い願望のようなアイデアを選択しています。これを成功させたのは、バンドの新ボーカリスト、Brendan のおかげだと彼は言います。彼の加入は Paul Di’Anno に対する Bruce Dickinson だと Arthur は語っています。そうなると、 “Dreamkiller” はバンドの “The Number of the Beast” となり、SUMERLANDS はそれに応じて野心を高めてきたことになるのです。彼の声は前任の Swanson よりもしなやかで、上昇気流に乗りながらタイトなコーナーでもしっかりとメロディーを追いかけることができます。ただし、脈打つようなシンセサイザーと焼け付くようなソロイズム、BOSTON のようなポジティブな輝きとは対照的に、”Dreamkiller” は重苦しいユーモアと虚無的な正直さで構成されています。その好対照こそ、SUMERLANDS の真骨頂。
「楽曲の多くは絶望を歌っている。2歩進んだと思ったら、2歩下がっていたことに気づくんだ (笑)。憂鬱な曲ばかりだけど、僕らにはそれが面白いんだよ。それが人生だ!ダークユーモアだよ。まるで僕たちが罰当たりでマゾヒストであるかのようにね、わかる?
それに曲はメタリックだけど、完全なヘヴィ・メタルではない。ヘヴィ・メタルでありながら、ある意味オルタナティブ・ロックのように親しみやすいものにしたかったんだ。メタルはそういうものだよ。その瞬間や雰囲気は、ただひたすらメタル的に “オーバーキル” するよりもずっと重要だと思うんだ。僕が音楽に目覚めた頃、コールドウェーブをたくさん聴いたし、ASYLAM PARTY とか、フランスのバンドもたくさん聴いた。でも、THE CURE はミニマル・ゴスのレコードを作った最初のバンドなんだ。”Faith”。あれは僕にとっては、ちょっと手を加えれば史上最高のメタル・レコードになり得るもので、そこにも大きな影響を受けているんだ」
当然、Arthur はメタル界屈指のスタジオの魔術師であり、”Dreamkiller” でもその神聖な芸術を爆発させています。例えば、タイトル曲の疾走感あふれるメインリフ、それをなぞる羽のように軽いシンセサイザーや、”Death to Mercy” で80年代らしい深いフェードアウトの靄の中に消えていくデュエル・ソロのように、彼は小さなディテールに喜びを感じているのです。もしタイミングとレコード契約に恵まれていれば、JOURNEY や TOTO がアルバムチャートを席巻していた頃、SUMERLANDS は彼らと同等のレコーディング費用を得ていたかもしれません。しかし、Arthur の才能より、彼らはそのような大掛かりなサウンドを、相応の費用をかけずに実現したのです。
もうひとつ、Arthur がこだわったのは、プロジェクトとバンドの区別と、前者の限界です。バンドは、Arthur が言うように、”興奮するためのもの” であり、個別のアイデンティティを持っています。80年代の US メタルは、”1枚のレコードを作るだけで、それが素晴らしいものであったとしてもやがて消えていく” バンドであったと、彼は言います。彼らは成功には無関心でしたが、自分にとって重要なのは ‘彼らがいつもバンドを組んでいたこと” だと Arthur 言い切ります。
「SUMMERLANDS をできるだけ “プロジェクト” から遠ざけようと思ったんだ。2、3人の男が何かをやっているとわかると、人々はそれを小さなプロジェクトか何かのカテゴリーに入れてしまうからね。プロデューサーの産物ではなく、バンドのように思わせたかった」
ギターの話になると、噂の “ストラト・オンリー” ポリシーが登場します。このジョークの由来は、”史上最高のヘビーメタルバンドの1つ” に対する素直な憧れからだと、Arthur は嬉しそうに語ります。「イングランド出身のサタンだ」。彼らのギタリストがストラトしか弾かないという事実が、彼にとってはとてもクールだったのです。IRON MAIDEN のデイヴ・マーレイのストラトに対する長年の執着は本当に面白いと Arthur は言います。彼は、”Twilight Points the Way” のストラト・サウンドが “Dreamkiller” の音色美を最もよく表しているトラックだと主張します。しかし、この曲は単なるストラトの曲ではなく、バンドの結束にとって欠かせない楽曲でもあります。「この曲は僕にとって厳粛な誓いなんだ」
宗教、イデオロギー、スタジオ、ステージ、そして数十年にわたるジャンルを超えた音楽的影響の網の目の中で、Arthur は自分自身に忠実であり続けるという揺るぎない信念を持ち、様々な経験を積みながらその意味を内省的に再確認してきました。彼は、音楽と文化のはかなさを痛感しています。「それが絆だと思うたびに、目を離すと消えているんだ」
特に音楽においては、一般的に2つのうちの1つが起こると Arthur は主張します。一方は、自分の興味に忠実でないまま、若者の好みを追いかけることに終始してしまう。逆に、自分自身に忠実すぎる人は、若い人たちとのつながりを持てないかもしれない。アーサーは、”安全な “ルートを避けながら、自分の興味のある音楽を追求することで、”少なくとも誰かが聴きたくなるようなものを作ることができる” と言います。つまり、彼の芸術的なアイデンティティにとって不可欠なのは、自分の意思に従って音楽の旅をするという決意であり、それは最も大きなリスクであると同時に、最も大きな見返りをもたらすものなのです。
「大物のプロジェクトを引き受けたり、自分の経歴を利用して大きな仕事を得たり、常に自分を売り込むのとは対照的に、そうすることで僕はずっと幸せになれたんだ。安易にお金を取らないこと。自分がやりたいこと、自分を幸せにすることを見つけ、それを貫くこと。高潔に生きれば、10倍の報酬が得られる。僕はお金持ちではないけれど、今いる場所で幸せなんだ。今夜午前2時にコンピュータに向かい、3時間の睡眠をとって朝の8時まで仕事をしても、幸せな気分でいられるよ。自分が取り組んでいることに満足しているからね。これこそが、人が考えるべき人生の大きなポイントだと思う。それが君が取るべきリスクなのさ」
“There will be bands where you’re like, “I only like the early stuff because the later stuff got different.” That’s fine, but do you really need six records that sound like one specific thing?”
DREAM UNENDING
人生は厳しいもの。人は必ず成長し、生きるために働き、老いて死にます。もし、そんな苦痛のサイクルから解き放たれたとしたら? もし私たちが現代生活の呪縛から解放され、哲学的な反乱を起こし、諦めるのではなく人生を謳歌することができたらどうでしょう。TOMB MOLD の Derrick Vella と INNUMERABLE FORMS, SUMERLANDS の Justin De Tore によるデュオ、DREAM UNENDING は、そうして人生という果てしないファンタジーに慰めを見出しました。
ANATHEMA や Peaceville Three に影響を受けたデスメタル、ドゥーム・メタルを背景に、DREAM UNENDING が描く人生に対する理想を理解することは簡単ではないでしょう。De Tore は、人生の循環的な側面と、逆境に直面した際の魂の回復力をテーマに、音楽とのより深い感情的なつながりを求めているのです。
すべての弦楽器を担当する Vella は、夢のように破砕的な雰囲気を作り出し、バンドが影響を受けてきた素材をさらに高揚させながら、個性と職人的なセンスで巧みにアイデアを育てていきます。デスメタル、ドゥーム・メタル、デス・ドゥームではなく、バンドを “ドリーム・ドゥーム” と呼ぶ Vella のソングライティングは、ヘヴィネスの黒海と天国から射す光のちょうど中間にある絶壁で稀有なるバランスを取っています。
それにしても、デスメタルの救世主として名を売った2人は、なぜゴシックやデス/ドゥームメタルの父である “Peaceville” にオマージュを捧げることになったのでしょう?Derrick Vella が答えます。
「僕が初めて Peaceville に触れたのは PARADISE LOST だった。2000年代に古いゴスのブログを通じて “Shades of God” を聴いたことがあったんだ。正直なところ、あのアルバムは好きではなかったね。そのブログで彼らが “Gothic” というアルバムも出していることを知ったんだけど…なぜあのブログはそっちをアップロードしなかったのか、理解できなかったよ。
“Gothic” は簡単に僕を虜にした。当時聴いていたダーク・ウェイヴ、ポストパンク、エクストリーム・メタルの延長線上にあるような、論理的なものだったからね。まさに世界がぶつかり合う瞬間だった。ちょうどあの頃は、夜、真っ暗なバスで帰宅していたから、このアルバムと THIS MORTAL COIL の “Filigree and Shadow” が混ざっても、それほど飛躍した感じはしなかったね。思い出深いアルバムだよ。
その頃から、友人がドゥーム・メタルにハマり始めたんだけど、彼はカーゴ・パンツのドゥームではなく、もっとベルボトムのようなドゥームが好きでね。だから幸運なことに、THERGOTHON や ESOTERIC みたいなバンドを紹介してもらうことができたんだ。ESOTERIC はこれまで存在した中で最も偉大なメタル・バンドかもしれないね。とても共鳴したよ。UNHOLY のファースト・アルバムもそう。それで結局、Peaceville のものをもっと聴くようになったんだ。
でも、何よりも他のバンドより心に響いたのは、ANATHEMA だった。いつも一番胸が締め付けられる。パワフルで壮大だ。ドゥームというのは面白いジャンルだよね。奇妙にプログレッシブであったり、簡単に雰囲気を作り上げることができたり、空間をシンプルに埋めて濃密なものを作り上げることができたり。デスメタルと同じくらい、いや、それ以上に好きなんだ。
DREAM UNENDING が存在するのは、Justin にバンドを始めようと誘われたからなんだ。それまではドゥーム・メタルを書こうとさえしていなかった。みんなは、僕が高いクオリティでたくさんの曲を書くことができるといつも言ってくれるけど、本当に頼まれたときしかやらないんだ。他人のために書くというプレッシャーの中でこそ、僕は成長できるんだろうな」
ボーカルとドラムを担当する Justin De Tore にとっても、PARADISE LOST と ANATHEMA は重要なバンドでした。
「PARADISE LOST を初めて聴いたのは、”Draconian Times” が発売されたときだった。ここボストンの大学ラジオでレギュラー・ローテーションとして放送されていたんだよね。ただ、EVOKEN / FUNEBRARUM の Nick Orlando が PARADISE LOST の最初の数枚のレコードをチェックするように薦めてくれるまで、彼らの初期の作品を聴くことはなかったんだ。僕は21歳で “Gothic” を聴いて、とても深い経験をした。基本的に Nick は僕をデス/ドゥームに引き込んだ人物で、だから彼には感謝しているよ。
ただ、”Peaceville Three”も好きなんだけど、一番好きなのは ANATHEMA。Darren White のように痛みや悲しみを表現する人は他にいないよ。とても感動的だ。とにかく、このスタイルで演奏するのはずっと夢だったんだけど、それを実現するための適切な仲間がいなかったんだ。だから、Derrick のように、僕と同じような熱意を持ってくれる人に出会えたことは、自分にとって幸運だったと思っている」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LINUS KLAUSENITZER OF OBSIDIOUS !!
“The Wars And Violence In The World Can Only Make You Feel Depressed. I Try To Still Have a Normal Life By Focusing On The Beautiful Things In Life Without Ignoring What Is Happening In The World.”