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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CARPENTER BRUT : LEATHER TERROR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FRANCK HUESO OF CARPENTER BRUT !!

“Metal Music Was Boring Me, I Thought The Genre Was Going In Circles. Then One Day I Watched a Justice Live Show And It Was The Trigger. Why Not Push Electro To The Point That It Sounds As Powerful As Metal Music? So Carpenter Brut Was Born.”

DISC REVIEW “LEATHER TERROR”

「Bret Halford は、POISON の Bret Michaels と JUDAS PRIEST の Rob Halford を混ぜた名前で、主人公が好きなグラム・ロックとヘヴィ・メタルという二つの音楽ジャンルにオマージュを捧げる私なりのやり方だった」
“若き科学者 Bret Halford は、恋愛が苦手な男。学校のチアリーダーである運命の女性は、すでにいじめっ子のひとりと付き合っている。ロックスターに扮した Bret は、Leather Teeth と名乗り彼女を口説こうとするが、大事故に巻き込まれ大やけどを負ってしまう。同じ頃、ミッドウィッチでは謎の殺人鬼 “ブギーマン” が街をうろついていた。この街では殺人、カニバリズム、暴力が進行中だ”
これは2018年の “Leather Teeth” で、フランスが誇るシンセウェーヴの天才 CARPENTER BRUT が書き起こした、ヘヴィ・メタルとホラーのレトロフューチャーな怪綺譚、3部作のサウンドトラック、その第1幕。CARPENTER BRUT の頭脳である Franck Hueso は、ギターをほとんど持たず、ボーカル曲も数曲のみであるにもかかわらず、”ターミネーター”、”エルム街の悪夢”、”バトルランナー” の完璧にデザインされた電子音楽を、華やかなヘアメタル、ディスコ風味、鋲付き革ジャンの光沢で鮮やかに彩ってみせました。Carpenter の名は伊達ではありません。
「僕はミュージシャンではないから、楽器を演奏するのは難しかった。でも一方で、僕は機械やプラグなどを扱う方法を知っていて、それを扱うのが好きなんだよね。自分が何をしているのか、どんな結果が得られるのか、よくわからないまま何時間もシンセサイザーをいじっていると本当に面白いし、”ハッピー・アクシデント” が発生して、思いがけない結果が得られることもあるんだよ」
第二幕 “Leather Terror” は、Bret が第一幕で受けた屈辱を晴らすため、復讐の鬼となるストーリー。興味深いことに、”Leather Teeth” の4年後にリリースされた “Leather Terror” は、その舞台設定も1987年から1991年、つまり4年後へと移行しています。”Serpence Albus” から “Black Album” へ。奇しくもそのストーリー・ラインと呼応するかのように、CARPENTER BRUT の音楽もまた、ナイフと血とレザーが織りなすダークでアグレッシブな領域へとより深く歩みを進めています。Franck のノスタルジアとは冷たく、硬く、しかしどこか居心地のよい恐怖。
「僕はポップスのフォーマットで、シンプルでキャッチーな曲も好きだし、A点からZ点まで、いろいろなムードを持った伸びていくような楽曲も両方好きなんだ。だから、ロックやポップスの音楽的な構成でありながら、すべてシンセサイザーで行う。人々が慣れ親しんでいる構造を保ちつつ、あまり馴染みのない音を使うという二律背反を多用しているのさ。そうやって様々な音楽をミックスしているよ」
シンセウェーヴ、インダストリアル、ダークウェーヴ、EDM、そしてメタルの境界線を曖昧にした “Leather Terror” は、80年代のホラー映画のような構成の魔法で、過去と現在、そして未来までも曖昧にします。不気味で威嚇的なリズム、反復の美学、重厚なサウンドスケープとアンセミックなメロディー、静謐で暗がりのムードにいたるまで、Franck はその武器化された電子機器でメタルとシンセウェーヴの華麗な “戦争” を “麻薬的” に描いているのです。
「メタルは退屈で、このジャンル自体が堂々巡りだと思っていたんだよ。そんなある日、JUSTICE のライブを観た。あれが引き金となったね。エレクトロもメタルと同じくらいまでパワフルなサウンドにできないか?…エレクトロを最もダンス的な方法で押し出し、メタルのパワーとクロスオーバーさせたいという欲求が生まれたんだ。それで CARPENTER BRUT が誕生したんだよね」
ギターを1本もフィーチャーしていないのに、私たちの望む荒々しいリフやメタリックな音像が生み出される奇跡。実はその根底には、メタルとディスコに共通する “パワー” や “エナジー” の底流がありました。陰と陽の音楽的な掛け算は殺人鬼のダンスホールを産み落とし、クリエイティブな自由を与えられた “ゲスト・ダンサー” ならぬゲスト・シンガーたちは、その場所で思いのままにトラックをハックし、恐怖に独自の色を加えていきます。
GUNSHIP の Alex Westaway、THE DILLINGER ESCAPE PLAN の Greg Puciato、CONVERGE の Ben Koller、TRIBULATION の Johannes Andersson、SYLVAINE の Kathrine Shepard、ULVER など、多数のゲストが踊る死の舞台は、あの時代の空気感を呼び覚ますだけでなく、多様なボーカル体験をも再現しています。つまり CARPENTER BRUT はメタルではない “電子音楽” であるけれど、メタルと同じくらい暗く、豊かで、感情的で、エクレクティックな音楽。ミュージシャンじゃなくてもミュージシャンにはなれる。CARPENTER BRUT のすべては楽しい二律背反が原動力なのです。
今回弊誌では、Franck Hueso にインタビューを行うことができました。「”北斗の拳” や “マッド・マックス” などのように、僕が特に大好きなポスト・アポカリプス的な精神に基づく “AKIRA” の世界観は、もちろん大好きさ。”ポスト・アポカリプティック” (終末論的) は、次のアルバムのテーマにもなっているからね」 GHOST の Tobias によると、Franck はあの DEATHSPELL OMEGA にも関わりがあるとかないとか…それにしても、PERTURBATOR といい、DAN TERMINUS といいフランスのダークウェーヴ恐るべし。どうぞ!!

CARPENTER BRUT “LEATHER TERROR” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VOYAGER : COLOURS IN THE SUN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEX CANION OF VOYAGER !!

“As For a Band That Has Influenced The Band’s Sound As a Whole, It’d Have To Be Type O Negative. They’ve Been a Huge Inspiration.”

DISC REVIEW “COLOURS IN THE SUN”

「世界の生は今ほど良くなったことはないという事実と、同時にそうして実現しつつある人間としてのカラフルな多様性を祝うべきであるというテーマを扱っているよ。」
燦々と輝くオーストラリアの太陽の下、集結した5つの異なる個性は VOYAGER の名が表す通り人類の多様性を探求する音の船を大洋へと導きます。
メタル第三世界から現れた VOYAGERは、拡散と多様化のモダンメタルを象徴するのみならず、個性を尊重して育む現代世界の潮流まで確かに体現したバンドです。実際、彼らは音楽のルーツも各自の特徴も異なりながら、あたかも南天の夜空を彩る南十字のごとくそれぞれが際立って輝いているのです。
ショルダーキーボードを携え見た目もゴージャスなボーカリスト Danny Estrin は、紅旗からトヨタの MR2 までオールドスクールな車に情熱を燃やし、MODERN TALKING のようなシンセポップを崇拝。
一方で TesseracT の Dan Tompkins と ABSENT HEARTS も牽引するギタリスト Scott Kay は、”Dungeons & Dragons” のようなゲームを愛し、ARCHITECTS 的モダンギターの世界に心酔するニュータイプ。
今回インタビューに答えてくれたベーシスト Alex Canion にしても、バンドの外では声優の夢を追いマーシャルアーツに情熱を捧げ、LEVEL 42, THE CURE といった80’sをインスピレーションの中心に挙げているのですから。
ただし、VOYAGER という星座の中ではむしろそのバラバラにも思える個性が化学反応を起こします。
「出来るだけ単純化したプログレッシブポップメタルという言葉で、みんなが僕たちのプレイする音楽のイメージを掴みやすくしているんだけど、実際は、シンセウェーブメタルという表現が僕たちのマテリアルに対して最もしっくり来ると思うんだ。」
Danny のシンセポップ、Scott のモダンギター、Alex の80’s、それに紅一点 Simone の Devin Townsent 愛。全ての糸が絡み合い溶け合うことで、VOYAGER のカラフルかつアクセシブルな “シンセウェーブメタル” が織り上げられるのです。
「このアルバムではキーボードとシンセサイザーが大きな役割を果たしていて、アルバムを通して作品に “カラー” を仄めかし続けているね。」
Alex が語るように、バンドの最新作 “Colours in the Sun” は、これまで以上にキーボードとシンセサイザーを核に据えた、最もポップでしかし最もヘヴィーな作品だと言えるでしょう。
ノスタルジックなシンセサイザーの緩波と先鋭なポリリズムジェンティズムがせめぎ合うオープナー “Colours” はまさにアルバムの未来予想図。嫋やかで優雅な Danny の歌声は音のパレットへと染み渡り、アンセミックでダンサブルなビッグコーラスを導きます。
「バンド全体のサウンドに影響を与えたという意味では、TYPE O NEGATIVE だろうな。彼らからは巨大なインスピレーションを受けているよ。」
VOYAGER がゴシックメタルの偉大なる先駆者を最大のインスピレーションに挙げるのは、少々意外かもしれませんが理に適っています。事実、刻々と移ろうテンポの中で繊細なシンセサイザーのさざめきとメランコリー極まるメロディーを奏でる “Saccarine Dream” を聴けば “October Rust” の幽玄なゴシックホラー、TYPE O NEGATIVE に潜むニューウェーブへと連続性を認めるのも難しくはないでしょう。
当然、それ以上に彼らの実験性にシンクロニシティーを感じているのは確か。無論、これは祝祭のレコードですが、それでも耽美とメランコリーは VOYAGER を VOYAGER たらしめる絶佳の魔法です。
クライマックスは Alex も当代きってのシンガーと認める LEPROUS の Einar がゲスト参加を果たした “Entropy” で訪れます。最も才能に満ちたプログメタル最北端と最南端の衝突は、超常的なエナジーとエモーションを創出しました。
その実、エントロピーはレコードで最もスタンダードなメタルチューンかもしれませんが、故に VOYAGER のヘヴィーでプログレッシブな一面を深々と堪能出来る一つの熱量でしょう。
“Water Over the Bridge” で MESHUGGAH までもシンセウェーブに染めた後、”Runaway” でこの世のポップを追求するまさに千変万化、カラフル極まる祝祭のフィナーレ。PERTURBATOR や TesseracT に目配せをしながらよりレトロフューチャーに舞う太陽の蝶。
今回弊誌では Alex Canion にインタビューを行うことが出来ました。「パースはとても孤立している場所だから、故に世界の他の地域に追いつきたいという意欲が少なくとも小さな役割は果たしていると思うね。だから小さくてもオリジナルなシーンがとても繁栄してきたように思えるね。」 どうぞ!!

VOYAGER “COLOURS IN THE SUN” : 9.9/10

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