COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【KARNIVOOL : IN VERSES】


COVER STORY : KARNIVOOL “IN VERSES”

“I do hope this album can help people in the way it has helped me, and also that it may inspire and encourage some people reading this, especially those entering their mid to later years to finish that project that they’ve wanted to finish for a while.”

IN VERSES

「目的を遂げる人もいる。遂げられない人もいる。何とかやっていける人もいる…やろうとしない人もいる」
これは、伝説的なオーストラリアのプログレッシブ・メタル・バンド、KARNIVOOL 4枚目のアルバム “In Verses” のコーラスの一部です。数々の賞を受賞したアルバム “Asymmetry” 以来、バンドは長き停滞状態に陥っていました。残ったファンは、滅多にないツアーと、時折の謎めいたソーシャルメディアの投稿でなんとか生き延びてきました。しかし、ついにその待ち時間は終わりました。
13年の時を超えたアルバム “In Verses” は、最高のプログレッシブ・メタル・バンドの一つである KARNIVOOL が時とともに強くなることをリスナーに粘り強く、そして辛抱強く思い出させてくれる作品です。リフはよりラウドに、リズムはより奔放に。しかし、このアルバムを最高傑作としているのは、メロディーとフックです。長年に渡って最高のモダン・プログ作品の一つとして記憶されるに違いないこのアルバムは、長い間オーブンの中で温められてきました。キッチンに常に料理人がいたわけではないにしても。
「まあ、すべての始まりと終わりをここで説明していたら永遠になってしまうけど、本当に長かった。実際、長すぎたよ。どのアーティストにも、ここまで長い時間をかけるのはお勧めしないね!過去10年ほど、新作に取り組んでいると何度か公言してきたはずにしても。以前のアルバムはどれも、いわゆる “オリンピック周期” の4年に沿っていたので、アルバム “Asymmetry” のリリース後、2014年初頭に4枚目のアルバムの制作に着手し、最初はほぼ同じ期間でのリリースを目指していたんだ。最初の試みは2016年半ば、プロデューサーの Forrester が西海岸に来て、アルバムの半分、あるいはEPの拡張版くらいの感じでレコーディングを始めた時だったね。最終的に “In Verses” に収録された曲のほとんどは、その時点ですでに制作中だった。今にして思えば、かなり生産的で、あのセッションのおかげで曲が完成に近づいたんだ。でも、まだ準備が整っていなかったのは明らかだった。
その後の数年間は、本当に軌道に乗ろうと努力する中で、厳しい日々だった。仕事は散発的で、たとえ進歩があったとしても、それは断片的で、試練の時期、個人的な葛藤、経済的な問題、そしてバンド内の勢いと結束力の深刻な欠如に満ちていたね。何かが芽生えたとしても、すぐに消えてしまうような感じ。この時期は僕にとって個人的にも大変な時期で、砂漠へ移住することにしたんだ。これは、健康と幸福を最優先にし、自分自身を癒し、再び自分の足で立つ機会を得るという点で、僕にとって大きな決断だった。この間には実に多くのことがあり、一段落にまとめるのは不可能だけど、これまでの道のり、あらゆる試練と苦難、失敗した試み、成功、そして僕たちの人生の年月はすべて価値があったと言えるだろう。それらすべての時間と経験が、アルバムに収録された曲という最終的な形へと凝縮されていった。今振り返ってみると、曲が息を吹き込み、熟成していくには、時間と空間が必要だったのだと思うんだ」

バンドの中心人物、ギタリスト Drew Goddard は紆余曲折を経たため、勢いという要素が逆に厄介な存在となったと感じていました。皮肉なことに、勢いを排除した “In Verses” はだからこそ素晴らしく、そして完璧に練られた構成となっています。無理強いするよりも、自分たちのプロセスを信頼していたからこそ、まとまりが生まれたのです。
「方向性を事前に決めることは決してないんだ。アルバムのテーマは直感的な創作上の決断からゆっくりと、しかも長い時間をかけて浮かび上がってくるイメージのようなものさ。だから、常にプロセスを信頼するという要素があり、音の冒険心とエネルギーが僕たちの創作プロセスを突き動かし、アルバムごとに共通のテーマを提供している。でも、僕たちは同じことを繰り返すのは好きじゃない。僕自身、自分が作る音楽の中に新しいサウンドや感覚を見つけ、それがこうして生まれたことに驚きたいという欲求に突き動かされている。振り返ってみると、”In Verses” はある意味、新境地を開拓したように聞こえる一方で、過去3枚のアルバムの要素も含まれており、バンドが共に歩んできた時間をより強固なものにしている。まるで一つの章の終わりと新たな章の始まりのようにね」
アルバムが形を成していくうち、ひとつのテーマが浮かび上がりました。それはまさに、13年という長い月日を経ても彼らが貫き通したもの。諦めないこと。挑戦を続けること。
「諦めないことが鍵だと思う!僕らはどのアルバムでもすごく挑戦的だけど、今回のアルバムはこれまでで最も挑戦的だった。人生は挑戦に満ちている。僕にとって KARNIVOOL の音楽は、逆境や困難を乗り越えて勝利を収めるためのサウンドトラックのようなもの。暗いけれど、一筋の光が僕たちを前に導いてくれる。だから、アルバム制作のプロセス、そこに込められた感情を作品に反映するのは、本当に自然な流れだった。僕にとっての報われた瞬間は、2023年初頭のヨーロッパツアーの頃。心身ともに健康で、ツアー前よりもずっと良くなり、バンドの雰囲気もポジティブになった。みんなで演奏し、ツアーを楽しみ、観客からのサポートと反応を喜べるようになった。8年間ヨーロッパツアーをしていなかった後、観客からこれほどの興奮と喜びを受け取ったことは、前進し続ける大きな原動力となったんだ。その気持ちが雪だるま式に大きくなり、そこから勢いがついたと感じているよ」

オーストラリアのパースから現れたことも、彼らの個性を強くしています。パースは地球上で最も孤立した大都市の一つであり、それが KARNIVOOL を世界的な音楽業界のトレンド追及のプレッシャーから守ってきたと言えるのかもしれません。
「初期の頃は、それが間違いなく役に立った。本当に未熟な中でも、自分たちの技術を磨くことができた。下手くそだったけど、世に出なくても手探りで自分たちの “もの” を見つけることができた。戸棚の下に眠って埃をかぶっている素材がたくさんあるんだ」
Goddard は活動休止期間中、この孤立をさらに一歩進め、自己反省のために砂漠へと移住しました。
「しばらくの間、人が少ない田舎で違う意味で自分がダメなことを許したんだ。でも、孤独と孤立の間には微妙な境界線があるんだよな。僕にとって最も孤独な瞬間は、人混みの中にいた時だったような気がするよ」
その “砂漠での時間” は、広大で同時に深く個人的な感覚を持つアルバム “In Verses” のDNAに深く影響を及ぼしました。現在彼らの影響は、依然として多岐にわたります。そもそもは MESHUGGAH, TOOL, SOUNDGARDEN のホーリー・トリニティを基盤としていましたが、新作はより意外な分野から影響を受けています。モロッコ音楽の微分音的変化、J Dillaの “酔ってよろめく” ヒップホップのリズム、そしてボイジャー探査機のゴールデン・レコードまで驚くべきカラフルなインスピレーションたち。
「ボイジャーのレコードでネイティブ・アメリカンの歌を聴いて、ゾクゾクしたんだ。強烈なダイナミクスの変化、何もない状態から巨大なものへと変化し、また元に戻る。僕たちは常に、これまで聴いたことのない音程やリズムを探しているんだ」

彼らのアルバムの中で最も精緻なアレンジメントを誇る “In Verses” ですが、最も長く聴き続けられる3曲は、作品の中間部にあります。もちろん、”Ghost” と “Drone” はプログではほとんど見られないような即時性を示し、”Opal” はアルバムで最も心を揺さぶるメロディーを収録しています。しかし、”In Verses” が輝かしい作品から特別な作品へと変貌を遂げるのは、 “Animation” から始まる部分であり、KARNIVOOL があらゆるツールを巧みに使いこなしその技巧を際立たせる、スリルとサスペンスに満ちたサウンドはまさに唯一無二でしょう。
「”In Verses” の中間部は、まさに今のバンドの特徴を体現している。”Animation”, “Conversations”, “ReAnimation” は、どれも同じ音楽モチーフ、いわば同じ音楽文化から生まれたと言えるだろう。それぞれ全く異なる独立した曲でありながら、共通のテーマを共有しているんだ。同様に、”Remote Self Control” は “Aozora” の制作から生まれた曲で、他の曲から曲が生まれた例も数多くある。こうした例は、長い時間をかけて書き上げられたアルバムに、統一感を与え、ひとつに繋がっていく。そうしたディテールの追求こそがこのアルバムの鍵だ。完成してもまだ突き詰めたい、放棄したくない気持ちがあるほどにね」
“Themata” が荒削りなオルタナ・メタルの導入部で、”Sound Awake” が広がりのあるメロディアスな傑作だとすれば、”Asymmetry” は難解で不協和音に満ちた作品でした。そして、このアルバムは音色の限界を押し広げ、しかしリスナーを “Asymmetry” の “煉獄” へ置き去りにはしません。
「 “The Refusal” が大好きなんだ。”Asymmetry” で最も耳障りな曲の一つ。解決しないキーで歌われている。最後の歌詞は “これは不可能だ” で、ただ奇妙な後味を残すだけだ。”In Verses” は、色々な意味でそれに対する反応なんだ。有機的な進行ではあるけど、僕らはもう少し何かを探求している…ストレートとは言いたくないけど、もっとハーモニーがあって、もっと安定したメロディーがある」

リード・シングル “Drone” はその言葉を裏付けています。推進力のある分厚いベースラインと、高らかに響くボーカルパフォーマンスが曲を牽引しますが、興味深いことに、この曲の起源は完全に機械的なものでした。
「タイトルは “Drone Commander” という機器に由来しているんだ。信号発生器なんだよ。それが生み出したドローン・サウンドが、この曲全体のベースになった。僕らはその機械にあわせて曲を書いたんだ。このトラックは、広大な西オーストラリアの砂漠の重みを響かせ、故郷ならではの壮大なロックリフに支えられている。それは、反映であり、再生でもある。”Opal” の”死がそばにあるかのように、私はじっと静かになるだろう” という歌詞も、ずっと心に留めていた。何かがひらめいて、最終的な歌詞にも反映されたんだ」
“Opal” の一部は、Goddard が KARNIVOOL と曲作りを始めた最初期に遡ります。
「中間とエンディングのリフは、実は “Themata” 時代に実家のパソコンで初めて録音した曲なんだ。そして20年後、収まる場所を見つけたんだ。より現代的にアレンジしてね。”You’ve been holding up…” で始まるヴァースは、”Asymmetry” 収録の “Aeons” からカットされた部分。曲全体が、今まで経験したことのない形でひとつにまとまった。昔からバラバラだったアイデアが、突然、ひとつの場所に収まったんだよね」
そして、ハープまで使用した深く心に響くこの曲は、バグパイプも含め、息を呑むようなクロージング “Salva” へと繋がっていきます。
「僕たちは今でもアルバムという音楽形態の価値を信じている。アルバムを最初から最後まで一つの旅として聴いてもらえれば、この曲の真髄はもっと伝わってくると思うんだ。KARNIVOOL の旅路を共に歩んでくれて、それを僕たちと共有してくれた人たちにとって、最後の2曲、”Opal” と “Salva” が何かを与えてくれるといいな… 僕自身、解放感、ある種のカタルシスを得られたからね」

“Drone” のアートワークは、灰色と白の海に浮かぶ荒涼とし傾いた船を描いていて、あるファンが “KARNIVOOL が最後にアルバムをリリースしたときは、あの船の下に水があった” とコメントしたジョークを彼らは気に入っています。つまり、”In Verses” の音楽やリリックは、そのアートワークから想像されるほど陰鬱なものではないと彼らは示唆しています。
「常に音楽主導なんだ。歌詞は音符への反応となる。だから何よりもまず、言葉の響きが重要だ。Ian は非常に即興的で、”Conversations” のような曲でそれは顕著だ。数テイクを録ると、突然彼の表情が変わる。”意味不明な言葉” を声に出して、それがやがて意味へと結晶化していく。僕らにとって、声はまず楽器であり、物語を語るのは次のステップなんだ。音楽にどう合うかが重要で、歌詞の意味は、言葉の響きによって決まることもある。発明というより発見だ。僕らは岩の中から歌を掘り出しているんだ」
THE BEATLES と MESHUGGAH は彼らのお気に入り二大バンドですが、制作のスピードは大きく違います。
「僕らの時代の4年は、ビートルズの世界では1週間くらいだろう (笑)。彼らがどうやってやったのか、わからないよ。ビートルズは MESHUGGAH と並んで僕のお気に入りのバンドだし、僕らの中でそのバランスは取れている。でも、彼らはあらゆるルールの例外なんだ」
彼らは困難を乗り越え、その努力に意味を持たせようとする勇気をリスナーに感じてほしいと願っています。そして、人生のピークを迎えた人、あるいはピークを越えた人に向けて、自らの音楽と姿勢を通して特別なメッセージを送っているのです。
「このアルバムが、誰かの力になればと願っている。僕自身を支えてくれたようにね。そして、特に中高年の人たちが、人生でずっとやりたかった作品なり、プロジェクトなりを成し遂げるきっかけになればと願っているんだ。僕はいつもこのことを考えていてね。時には辛い努力を経て、日の目を見るべき素晴らしい芸術。そんな芸術的な宝物が、世界中にたくさん眠っているはずなんだ。中高年になり、時間やお金、仕事や家族のことでアートを完成させることを諦めかけている人も多いだろう。だけどそれらは世界に残され、共有され、聞かれるに値するものであり、ハードディスクの中に永遠に埋もれてしまうべきではないんだよ。だから諦めずに、必要な助けを求め、ただ進み続けてほしい」

参考文献: NEW NOISE MAG :INTERVIEW: KARNIVOOL GUITARIST DREW GODDARD TALKS ‘IN VERSES’

MGM :KARNIVOOL: THE WAIT IS OVER – INSIDE THE 12-YEAR JOURNEY TO ‘IN VERSES’

THE MUSIC AU:Karnivool Detail The Epic Grind Behind ‘In Verses’: ‘Everyone’s Still Finding Really Beautiful Stuff On This Record’

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