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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ROBBY VALENTINE : EMBRACE THE UNKNOWN】 “MAGIC INFINITY” 30TH ANNIVERSARY


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROBBY VALENTINE !!

“What Will It Take To Make The Younger Generation Understand That Life Is Not About Views And Likes. That The Only Way For Fulfilment, Love And Reality Is That You Follow Your Own Path, And Do The Things Your Deepest-self Wants You To Do And Go For.”

DISC REVIEW “EMBRACE THE UNKNOWN”

「僕にとっての成功とは、商業的な成功や売り上げで測られるものではなく、もっと芸術的なもの。若い世代に、人生は再生回数や “いいね!” の数ではないことを理解させるには何が必要だろうか。充実感、愛、そして現実を手に入れる唯一の方法は、自分自身の道を歩み、心の奥底にある自分の望みを実現することなんだ。つまり、自己実現だね。だけど今は、携帯電話やソーシャルメディア、スマートデバイスが普及し、自分の内なる声を聞くことはほとんど不可能になってしまっているんだ」
Robby Valentine。オランダの貴公子、旋律の魔術師の二つ名を持つ眉目秀麗の美男子は、しかしその端麗なルックスからは想像もつかないほどの芯の強さと回復力を兼ね備えています。思えば、今年30周年を迎えたプログ・ハードの傑作 “The Magic Infinity” は、あと数年早ければ彼をロックスターの座に押し上げたはずですし、そのゴージャスな出立ちも時代が時代ならば世界中に信者を増やしたに違いありません。しかし、世はスマホもネットもないグランジが席巻した90年代初頭。Robby の音楽や容姿、言葉は、世界中からダサい、クサい、時代遅れだと切って捨てられてしまったのです。真の音楽とは、タイムレスで、内なる自己実現の賜物であるにもかかわらず。
「日本は僕にとってオアシスだった。長髪、化粧、その他もろもろのせいで、オランダでは信じられないほど苦労した。でも、日本のバンドと比べると、まったく着飾っていないほうだったよ。X Japan のようなバンドのルックスは大好きだった」
そんな苦境にあって、日本だけは Robby Valentine を抱きしめました。”No Turning Back” のドラマに熱狂し、”The Magic Infinity” の幻想美に唸り、”Over and Over Again” の旋律に涙する。ただ、天才的なメロディ・メイカーであるだけでなく、彼は卓越したマルチ・プレイヤーで、挑戦的な作曲者で、日本が発掘した QUEEN の崇拝者でもありました。そして幸運なことに、世界のトレンドや他人の趣向にそれほど左右されなかった当時の日本には、Robby を受け止める土壌がありました。
まだ、日本が “いいね!” に支配されていなかった時代。そうして、もしかすると消えていたかもしれない才能は、遠く離れた島国との蜜月によって力強く生き残りました。Robby は持ち前の諦めない芯の強さと、メタルの回復力、反発力によって自らの “成功” を勝ち取ったのです。
「僕の視覚は今はもう2%くらいしかないんだ。片目でぼんやりと見える程度だね。この視覚的なハンディキャップによって、僕はより内面的な世界に入ることを余儀なくされている。技術的には多くのものを失ったよ。でもね、そのおかげで演奏に深みが出てきたんだ」
数奇な運命によって多くの苦境や壁にぶち当たる天才が、近年襲われたのが目の病です。コロナ禍で診察ができず、ほとんど失明に近い状態に陥ったプリンスは、しかし今回も諦めてはいません。神がかったテクニックを失い、レコーディングに以前の5倍の時間を要するようになった今でも、Robby は音楽を愛していて、ライブにワクワクして、演奏に深みが出たとまで言い切ります。”Embrace The Unknown” “未知を抱きしめよう”。新作のタイトルは、Robby とメタルのそうしたレジリエンスを如実に反映しています。そして、苦境を力に変える Robby の “魔法” は、かつて日本が彼を “抱きしめた” のと同じように、未知の “暗闇” をも抱きしめ、光と色彩に変えたのです。
「音楽と芸術一般は常に逃避場所で救いであるべきだよ。ただ、僕がやっているのは、音楽において自分の最も内側にある感情に従うことだけだ。聴く価値のある音楽は、精神ではなく心から来るものだけだと、僕は感じているからね」
そうして Robby は、この寛容で、優しく、多彩で、色彩豊かなアルバムにおいて、未知なる他者、未知なる文化をも抱きしめようと呼びかけます。もちろんここには、QUEEN, BEATLES, ELO, THE BABYS, スウィング、クラシックにブロードウェイ、そして渦を巻く鍵盤と壮大なコーラスが認められています。ただし、それはあくまで旅の道標。貴公子が触れればそれらはすべて、Robby の色に染まります。私たちは、このシアトリカルでドラマティックなヴァレンタイン劇場を待っていました。同時に、視力を失ってもよい夫でいられるだろうか、よい父でいられるだろうか、よい音楽家でいられるだろうか…そうした不安をすべて曝け出した “伝記的” アルバムで、彼は真の感情を見つけ、苦悩し、表現し、それでも寛容な未来に光を見出すのです。
今回弊誌では、Robby Valentine にインタビューを行うことができました。「この25年間、ラジオから流れてくるレコードの中で、音声補正やオートチューンによって台無しにされていないものはほとんどない。僕らはみんな、クソロボットたちの音楽を聴いているだけなんだよ。だから、僕はそこから手を引いて、自分のやるべきことをやっているんだ」 ヘヴィ・ロックとプログ、そしてポップスの境界線を破壊した天才の新たなる傑作。どうぞ!!

ROBBY VALENTINE “EMBRACE THE UNKNOWN” : 10/10

INTERVIEW WITH ROBBY VALENTINE

Q1: First of all, this year is the 30th anniversary of the release of “The Magic Infinity” in Japan! In Japan, it was released at the same time as “Robby Valentine” and became a big topic and movement. Actually, those two albums were my “gateway” to rock music! Looking back, what do those two albums mean to you? 

【ROBBY】: Wow, my music your gateway to rock. That’s an honour. Thank you.
I look back on it with mixed feelings. Signing to a major record company at the age of 21 was a dream come true. But for various reasons I never liked the sound and the performance on most of the songs of the first album.
I was very inexperienced and I didn’t capture the feel, the magic, that my 8 track home demo had.
For the second album I made a promise to myself I would get it right this time. And I fought for it. The record company hired an extra producer who was making life difficult for me. And I wasn’t having it. Eventually I got everything I wanted on tape, but it was a fight sometimes. The engineer did a great job.
Yet due to the drastic change in fashion and music it never got the success I was hoping and was aiming for. The Magic Infinity got an album sleeve and appeanece I didn’t approve of at all. I had nothing to do with that.
My music and my looks were so much more glamorous than that, it didn’t match the music and my personality at all.
So for different reasons I don’t consider both albums as a success. Success to me isn’t measured in commercial success or sales, but more in an artistic way.
However, the fact that I was with a major label made it possible for my music to be heard in many parts of the world, even when those times weren’t in my favour. And it brought me to Japan, which was amazing.

Q1: まず、今年は “The Magic Infinity” の日本発売から30周年ですね!日本ではファースト・アルバムの “Robby Valentine” と同時に発売され、大きな話題とムーブメントになりました。実は、この2枚が私のハード・ロックへの “入り口” にもなりました。今振り返ってみて、あの2枚のアルバムはあなたにとってどんな意味を持っていますか? 

【ROBBY】: ワォ!僕の音楽が君のロックへの入り口になったなんて光栄だよ。ありがとう。
実は、良いことと悪いことが合わさった複雑な気持ちで振り返っているんだ。21歳でメジャーのレコード会社と契約するなんて夢のようだった。だけど僕は、さまざまな理由から、ファースト・アルバムのほとんどの曲のサウンドとパフォーマンスが好きになれなかったんだ。僕はとても経験が浅くて、当時持っていた8トラックのホームデモでは、フィーリングやマジックを捉えることができなかったからね。
セカンド・アルバムでは、今度こそちゃんと作ろうと自分に誓ったよ。そして、そのために戦った。レコード会社は余計なプロデューサーを雇い、僕を苦しめた。そして、僕は彼らの決定を受け入れなかったんだ。最終的には、僕が望んでいたものをすべてテープに収めることができたけど、そ時々は戦いだった。エンジニアはいい仕事をしてくれたよ。
だけど、時代がね…ファッションと音楽の劇的な変化により、僕が期待し、目指していたような成功は得られなかった。さらに、”The Magic Infinity” では、レーベルが僕がまったく認めなかったアルバム・スリーブやアートワークを採用した。僕はあのパッケージとは何の関係もない。僕の音楽とルックスは、あれよりもずっと華やかなのにね。音楽と僕の個性にまったくマッチしていなかったよ。
だからそれぞれ異なる理由で、僕は2枚のアルバムを成功だとは思っていない。僕にとっての成功とは、商業的な成功や売り上げで測られるものではなく、もっと芸術的なものなんだ。
とはいえ、メジャー・レーベルに所属していたおかげで、たとえ不遇の時代であったとしても、世界の多くの地域で僕の音楽を聴いてもらうことができた。そして、そのおかげで日本にも来ることもできたんだ。それは素晴らしいことだったね。

Q2: Which songs from those two albums do you particularly like and are still proud of?

【ROBBY】: Over and over again from the first album was recorded a year later than the other stuff, but with a world-class producer: Humberto Gattica from Los Angeles. I still love it, the sound and the performance of it. Two of my other favourites: The magic breeze and I believe in you didn’t have the right sound and performance, but I did them justice on my 2008 compilation album Androgenius. By the way, I re-recorded all the other songs as well recently. They’ll be released next year if it’s up to me.
On the magic Infinity my very favorite song is No turning back. The engineer did a perfect job. Megaman is my other favorite of that album.

Q2: その2枚のアルバムの中で、特に気に入っていて、今でも誇りに思っている曲はどれですか?

【ROBBY】: ファースト・アルバムの “Over and Over Again” は、他の曲より1年遅れてレコーディングされたんだけど、ロサンゼルスのウンベルト・ガッティカという世界的なプロデューサーと一緒に作ったんだ。サウンドも演奏も、今でも大好きだよ。他にも好きな曲が2つある。”The Magic Breeze” と “I Believe in You” は、サウンドもパフォーマンスも適切ではなかったけど、2008年のコンピレーション・アルバム “Androgenius” に正しい音で収録した。ちなみに、他の曲もすべて最近レコーディングし直したんだ。来年リリースする予定だよ。
“The Magic Infinity” で、僕の一番好きな曲は “No turning back” だ。エンジニアが完璧な仕事をしてくれた。”Megaman” はこのアルバムの中でもう一つ好きな曲だな。

Q3: With those two albums, your connection with Japan has become very strong. You even lived in Japan for a while. What do you think about the country, its culture, and its music?

【ROBBY】: Nowadays I haven’t got a clue about what’s going on in Japan nor everywhere in the world. Popular music culture is heading rapidly towards the era of A.I. . I don’t mean electronic music,synth pop, whatever. But I mean, for 25 years there’s hardly any record you hear on the radio that is not fixed with voice correction and ruined by auto-tune. We’re all listening to fucking robots. So I tapped out and am just doing my own thing.
But back in the day, Japan was an oasis to me. Because of my long hair, make up and all the rest I was having an incredibly hard time in the Netherlands. Though in comparison to Japanese bands I totally looked underdressed. I loved the look of those bands like X-Japan.
The acceptance I felt in Japan was heartwarming.The months in which I lived in Osaka were the best months of my life. I love the culture, the mentality, everything. There I felt more at home than in my own country. I feel grateful to have had that wonderful experience in my life.

Q3: この2枚のアルバムで、あなたと日本とのつながりはとても強くなりましたね。実際あなたは、日本に住んでいたことさえありますよね。日本という国、文化、音楽についてどう思っていますか?

【ROBBY】: 今、日本で何が起こっているのか、もっといえば、世界中で何が起こっているのか、僕はまったく知らないんだ。ポピュラー音楽の文化は急速にA.I.の時代に向かっている。エレクトロニック・ミュージックとかシンセ・ポップとか、そういう意味ではなくてね。この25年間、ラジオから流れてくるレコードの中で、音声補正やオートチューンによって台無しにされていないものはほとんどない。僕らはみんな、クソロボットたちの音楽を聴いているだけなんだよ。だから、僕はそこから手を引いて、自分のやるべきことをやっているんだ。
でも昔は、日本は僕にとってオアシスだった。長髪、化粧、その他もろもろのせいで、オランダでは信じられないほど苦労した。でも、日本のバンドと比べると、まったく着飾っていないほうだったよ。X Japan のようなバンドのルックスは大好きだった。
それに、日本で感じた受け入れられているという感覚は心温まるものだった。大阪に住んでいた数ヶ月は、人生で最高の数ヶ月だった。文化、メンタリティ、すべてが好きだよ。自分の国よりもくつろげたね。人生であのような素晴らしい経験ができたことに感謝しているよ。

Q4: At that time, you were described as Journey meets Queen in Japan. Was that an appropriate assessment? Also, you are a well-known admirer of Queen, what do you especially love about them?

【ROBBY】: It’s a huge compliment to be described as such. But I was never into Journey. My favorites were Queen and The Babys. But then again, The Babys are very much connected to Journey.
I love so many things about Queen. Where it all starts is the voice. Freddie Mercury has the best voice in history. Their music from the 70’s is my thing. Mustapha, Bicycle, Death on two legs, Killer Queen, Bohemian…the list is endless. It’s not difficult to be diverse when it comes to musical styles, but to be able to write so many amazing songs, so many classics in all those various types of music, is just amazing. And together with that they had all the ingredients right . May’s guitar sound that blended so well with Mercury’s piano, the way those three voices made this magic choir sound together. Oh, I can go on and on…

Q4: 当時、あなたは JOURNEY meets QUEEN などと日本で評されていましたね。それは適切なラベルでしたか?また、あなたは QUEEN の崇拝者として有名ですが、彼らのどんなところが特に好きなのですか?

【ROBBY】: そう評されるのは大きな賛辞だよ。でも、僕は JOURNEY にはハマらなかったな。好きだったのは QUEEN と THE BABYS。でも、THE BABYS は JOURNEY ととてもつながりがあるからね。
僕は QUEEN の様々な部分が大好きなんだ。でも、すべての始まりは声だったね。フレディ・マーキュリーは史上最高の声の持ち主だ。70年代の彼らの音楽は本当に僕のお気に入りだよ。”Mustapha”, “Bicycle”, Death on two legs”, “Killer Queen”, “Bohemian”…数え上げたらきりがない。音楽スタイルが多様であることはそう難しいことではないけれど、そのような様々なタイプの音楽すべてにおいて、これほど多くの素晴らしい曲、これほど多くの名曲を作ることができるのは、ただただ素晴らしいことだよ。
それに加えて、彼らにはすべての要素が揃っていた。マーキュリーのピアノと見事に調和したメイのギター・サウンド、そして3人の声が一緒になって魔法の合唱団を作り上げたやり方。ああ、まだまだ続くよ…。

Q5: The music industry has changed dramatically over the past 30 years. Nowadays, streaming and TikTok are the most popular ways to listen to music, rather than physical CDs. And on social networking sites, instant musicians who cut out a 30-second performance are popular. How do you perceive this “instant” change in music culture?

【ROBBY】: Maybe I should be more active at all those platforms you mention. but it all depresses me. In my opinion it’s pure emotional poverty. So many great and beautiful things get lost and overlooked. There’s no depth. Is there any teenager left who puts on an album in its entirety, on Vinyl, CD, Spotify or whatever? Giving the songs a chance to grow on you? And if there’s no physical product anymore, what do you have left, something in the cloud, something virtual? What will it take to make the younger generation understand that life is not about views and likes. That the only way for fulfilment, love and reality is that you follow your own path, and do the things your deepest-self wants you to do and go for. But with all the phones, social media and smart devices it’s almost impossible to hear your inner voice anymore.

Q5: 音楽業界はこの30年で劇的に変化しました。今や音楽を聴くには、物理的なCDよりもストリーミングや TikTok が主流となっています。さらに、SNS では、30秒のパフォーマンスを切り取ったインスタント・ミュージシャンが人気を博していますね。この “インスタント” な音楽文化の潮流をどう捉えていますか?

【ROBBY】: 僕は、君が言うようなプラットフォームにもっと積極的に参加すべきなのかもしれないね。でも、そうしたすべてが僕を憂鬱な気持ちにさせるんだ。
僕の考えでは、結局は純粋な感情の貧困が原因だ。多くの偉大で美しいものが失われ、見過ごされている。深みがない。Vinyl でも CD でも Spotify でも何でもいいから、アルバムを全曲通して聴く10代の若者が何人残っているだろうか? リスナーに、曲をじっくり聴いて自分の中で熟成させるチャンスを与えているのだろうか? もし物理的な製品がなくなったら、何が残るだろう?クラウド上の何か、バーチャルな何かかい? そして、若い世代に、人生は再生回数や “いいね!” の数ではないことを理解させるには何が必要だろうか。
充実感、愛、そして現実を手に入れる唯一の方法は、自分自身の道を歩み、心の奥底にある自分の望みを実現することなんだ。つまり、自己実現だね。だけど今は、携帯電話やソーシャルメディア、スマートデバイスが普及し、自分の内なる声を聞くことはほとんど不可能になってしまっているんだ。

Q6: Moreover, the world was shrouded in a dark shadow, especially in the 2020s. Wars, pandemics, and divisions. I feel that you have dealt with these topics in your recent albums “The Alliance’, “Separate Worlds”, and “Embrace The Unknown”. In times like these, your tolerant, gentle, and beautiful albums are needed and redeeming! In fact, do you think rock and metal can be a place of escape and salvation for those who are oppressed right now?

【ROBBY】: Music and art in general will always do that.
The only thing I do is follow my most inner feelings in music. Nothing is ever intentional. I don’t sit down and think:” Now I’m going to write an anthem against the stupid Corona measures and rules.” It just comes from within. I’m merely a tool or a vessel of what happens within.

Q6: さらに、特に2020年代に入って、世界は暗い影に覆われています。戦争、パンデミック、分断。あなたは最近のアルバム “The Alliance”, “Separate Worlds”, “Embrace The Unknown” で、こうしたテーマを扱ってきたように感じます。このような時代だからこそ、あなたの寛容で、優しく、美しいアルバムが必要とされ、救いとなるのではないでしょうか? 実際、ロックやメタルは今抑圧されている人たちの逃避場所や救いになると思いますか?

【ROBBY】: 音楽と芸術一般は常にそうであるべきだよ。ただ、僕がやっているのは、音楽において自分の最も内側にある感情に従うことだけだよ。意図的なものは何もない。座って、”さあ、コロナの愚かな施策やルールに反対する賛歌を書こう” なんて考えたりはしないんだ。それはただ内側から湧いてくるものなんだ。僕は、内なるものの道具や器にすぎないんだよ。

Q7: Still, “Embrace The Unknown” is a great album! It embraces your journey so far, Queen, Beatles, Classical and everything else, and it also seems to bring you back to your roots of hard rock. In fact, is this album a culmination of your career?

【ROBBY】: I never thought about it that way. To me an album is always the collection of songs I have made and am satisfied with in that particular period of my life.
Choosing a musical direction and limiting myself to one style has never worked for me.
In fact, I wanted this album to become the most heavy and guitar oriented and angry album I ever made. But then most of the ideas I came up with that made my heart tick were far from heavy. I feel the only music that’s worth listening to is coming from the heart, not the mind.

Q7: それにしても、 ”Embrace The Unknown” は素晴らしいアルバムですね!QUEEN, THE BEATLES, クラシックなど、あなたのこれまでの歩みを包括し、さらに原点であるハード・ロックのルーツに立ち返えったような感覚があります。実際、このアルバムはあなたのキャリアの集大成だといえますか?

【ROBBY】: そんな風に考えたことはないよ。僕にとってアルバムとは常に、人生の特定の時期に作って満足した曲のコレクションなんだ。音楽の方向性を決めたり、ひとつのスタイルに自分を限定したりして、うまくいった試しがないからね。
実際、僕はこのアルバムを、これまで作った中で最もヘヴィでギター・オリエンテッドで怒りに満ちたアルバムにしたかった。でも、生まれてくる、僕の心をくすぐるようなアイデアのほとんどは、ヘヴィとはほど遠いものだった。聴く価値のある音楽は、精神ではなく心から来るものだけだと、僕は感じているよ。

Q8: By the way, I love Valentine/Valencia’s second album, but is there any more collaboration with Valencia?

【ROBBY】: Thank you, I really do like that album as well. But it’s actually 2 solo albums combined, where we play and sing on each other’s tracks, doing exactly what the other wants. That’s the way we could work best I thought.
We’re friends, having good contact. We don’t want to ruin that with working together again, hahaha.

Q8: ところで、私は Valentine/Valencia のセカンドアルバムも大好きなのですが、彼とのコラボレーションはもうやらないのでしょうか?

【ROBBY】: ありがとう、あのアルバムも本当に好きだよ。でも、実際あの作品は2枚のソロアルバムを合体させたもので、あとはお互いのトラックで演奏したり歌ったりして、相手が望むことをそのままやっているんだよね。それが一番うまくいく方法だと思ったんだ。
僕たちは友人であり、今も良好な関係を築いているよ。 だからこそ、また一緒に仕事をすることで、それを台無しにしたくないんだ。ははは!

Q9: Finally, I am surprised and very concerned to hear that you have an eye disease. What is your situation now? Is it interfering with your musical activities?

【ROBBY】: My vision is about 2 % now. I only can see vaguely through one eye. I lost the sight of my right eye due to an infection in 2016, but I still had vision with my left eye. I suffer from glaucoma and during the first lockdown it worsened. The hospital wouldn’t see me due to the lockdown: eye-problems aren’t life threatening. Since it was untreated I lost my sight.
I found a new strength and enjoyment in playing live concerts. But that took a while. I have to learn so many new things. I have a special kind of iphone so I can still email and write messages or notes, but playing the piano and other instruments is a big challenge now. With this visual handicap I’m forced to go inside more, to my inner world. That has given me more depth in playing. But technically I have lost so many things.
My eye-hand coördination was so fast and useful with playing the piano, I just can’t play lots of difficult things anymore. I have to practise so much more. But there’s only so much you can do. Recording takes me 5 times longer than it used to do. But on the other hand I was lucky my recording equipment was hopelessly outdated. I always felt too dumb not to get into the computer world of recording, where the possibilities are endless. But the advantage is that I can now still feel the knobs on my mixing desk. There’s no voice over on Pro Tools or other virtual studio systems like the iphone has. And even if it did, that would be too much. Imagine every move you make, every button or knob you turn or touch will be ‘voiced overed’.
No way to get in touch with your deepest emotion then. That PC won’t make it to the next day, I can tell you that.

Q9: 最後に、あなたが目の病気を患っていると聞いて驚き、とても心配しています。今はどのような状況なんでしょうか?

【ROBBY】: 僕の視覚は今はもう2%くらいしかないんだ。片目でぼんやりと見える程度だね。2016年に感染症で右目を失明してしまったんだけど、あのころはまだ左目は見えていたんだ。でも僕は緑内障を患っていて、最初のロックダウン中に悪化してしまった。病院はロックダウンのために僕を診察してくれなかったんだよ。目の病気は命にかかわるものではないからってね!それで未治療だったから、僕は視力を失ってしまった。
それから僕はライブ・コンサートに新たな力と楽しみを見出した。でも、それには時間がかかったよ。新しいことをたくさん学ばなければならないからね。特殊な iphone を持っているから、メールやメッセージ、メモを書くことはできるけれど、ピアノや他の楽器を演奏することは、今となっては大きな挑戦なんだ。この視覚的なハンディキャップによって、僕はより内面的な世界に入ることを余儀なくされている。技術的には多くのものを失ったよ。でもね、そのおかげで演奏に深みが出てきたんだ。
ピアノを弾くときの目と手の共同作業はとても速くて便利だったよ。今はもう、あまりに難しいものは演奏できないね。もっと練習しなければならないよ。でも、できることは限られている。レコーディングには以前の5倍の時間がかかるしね。でも一方で、レコーディング機材が絶望的に時代遅れだったのはラッキーだった。これまでは、無限の可能性を秘めたコンピューターによるレコーディングの世界に手を出さないのは、あまりにも間抜けだといつも思っていた。
しかし、ミキシング・デスクのノブの感触を今なお感じられるという利点もある。Pro-Tools や他のバーチャル・スタジオ・システムには、iphone のようなボイス・オーバー (文字を読み上げてくれる機能) はない。仮にあったとしても、それはやりすぎだ。君のすべての動き、回したり触ったりするすべてのボタンやノブが “ボイスオーバー” されることを想像してみればいい。それでは、君の深い感情に触れることはできないよ。そのPCは次の日には使えないだろう。まちがいないね。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED ROBBY’S LIFE!!

For my 7th birthday my obaa-san gave me ‘A night at the opera’ from Queen. From that moment on I knew what I wanted to do with my life: be a musician.

QUEEN ” A Night At The Opera”

QUEEN “Jazz”

ELO “Out of the blue”

THE BABYS “On the edge”

THE BABYS “Union Jacks”

MESSAGE FOR JAPAN

Thank you for all you have given me.
For welcoming me with love and open arms almost 30 years ago. I don’t know if there will ever be a chance for me to play in Japan again, but I’m grateful to you and to all of you who have listened to my music and came to the shows. I love you forever.

君たちが僕に与えてくれたものすべてに感謝しているよ。約30年前、愛と両手を広げて僕を迎えてくれた。また日本で演奏する機会があるかどうかわからないけど、君たちだけじゃなく、これまで僕の音楽を聴いてくれてライヴに来てくれたすべての人に感謝しているんだ。永遠に愛しているよ。

ROBBY VALENTINE

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COVER STORY + INTERVIEW 【ELEGY : REUNION 2023】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH IAN PARRY OF ELEGY !!

“Henk Was Ahead Of His Time With His Unique Song Writing Style And Phenomenal Technique On Guitar.”

ELEGY REUNION 2023

「やはり Henk の功績は大きいよ。彼は、DREAM THEATER などの偉大なバンドが存在するプログ・シーンよりも何年も前に、ELEGY の曲を書いていたんだからね。だから、Henk はそのユニークな曲作りのスタイルとギターの驚異的なテクニックで、時代の先端を走っていたと言える」
日本ほど ELEGY を愛し、ELEGY に愛された国は他にありません。おそらく、この国のリスナーは世界のどの国よりもメタルに知を求め、美を求めていました。だからこそ、早すぎたオランダの至宝に恋焦がれ、挽歌が眠りについた際にはいつまでも、いつまでもその目覚めを待ち続けていたのです。今でこそ、当たり前になったファンタジーとテクニカルの饗宴、”プログ・パワー” ですが、明らかに ELEGY はその源流です。そうして、DREAM THEATER よりもファンタジックで、HELLOWEEN よりもテクニカルかつ知的な失われし夢の迷宮がついに長き眠りから覚める時が訪れました。
「あの頃、Henk の母親が悲しいことに他界してしまい、想像できるように、それは彼にとって本当にものすごい打撃となってしまったんだ。彼は2人の子供を育てていたから、家族のために音楽から手を引くことにしたんだよ。でも ELEGY は、Henk と常に連絡を取り合っていたんだ」
ELEGY と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか?明らかに、前ボーカリスト Eduard Hovinga の月まで突き抜けるような甲高いハイトーンとドラマティックなメロディは、初期 ELEGY の象徴でした。そしてもちろん、Henk van der Laars と Arno van Brussel / Gilbert Pot が織りなすあまりに劇的なギター・ハーモニーの疾駆は、ELEGY の代名詞と言えるでしょう。
その美しき両翼が完全に噛み合った “Lost” において、私たちはメタル・カタルシスの最高到達点を経験しました。逆に言えば、”Spanish Inquisition” の身を捩るような音スタシーを知ってしまった我々は、生半可なプログ・パワーでは満足しない体に調教されてしまったのです。いやー、”Supremacy” も良いんですよね…”Lust For Life” みたいな壮大荘厳なバラードを書けるバンドが他にどれほどいることか。
そうした絶頂期に、なぜかギター・スイープのテクニックまでずば抜けていた Eduard がバンドを去り、VENGENCE, Misha Calvin, そして TAMAS などで活躍した “Zero” の申し子ともいえる Ian Parry が ELEGY に加入します。Ian は Eduard のような天空のシンガーではありませんが、例えば Ronni James Dio のような力強く、エモーショナルな歌唱を得意としていました。だからこそ、少しスピードを抑えて、内省的で狂おしいほどにエモーショナルな “State of Mind” には適任でした。
嘘のような話ですが、当時の中高生は皆、カラオケで名曲 “Shadow Dancer” を歌いながら踊り狂ったものでした。それほど、あの頃の ELEGY は人気があったのです。本当です。Ian Parry はあの年、BURRN! 誌のベスト・シンガーに選ばれたんじゃなかったかな…とにかく、だからこそ、突然の Henk の脱退は青天の霹靂、あまりにも衝撃的で絶望的なニュースだったのです。
「ELEGY は2000年から、Jean Michel Jarre/Consortium Project の Patrik Rondat と2枚のアルバム “Forbidden Fruit”, “Principle of Pain” をレコーディングしていた。しかし、ファンが Henk を欲していることは明らかで、Patrik がやめると決めた時、Martin と私はバンドを繭の中に入れて、いつか Henk が戻ってくることを願うことにしたんだよ。その日がついに訪れたんだ!」
バンドは名手 Patrik Rondat を勧誘し活動を続けますが、非常にユニークなソングライターと、本当にユニークなサウンドを持つギタリストという二足の草鞋を履いていた天才の抜けた穴を埋めることは難しく、ELEGY は長い眠りにつくことになりました。たしかに Patrik はクラシック・ギターも縦横無尽に使いこなすフランスでも屈指のプレイヤーでしたが、ヴァイオリンから始まっている Henk が司るキーボードまで含めたゴージャス&カルフルなオーケストレーションの色彩こそ、ELEGY の真骨頂だったのかもしれませんね。
結局、ファンだけでなく、Ian も Martin も Dirk も Henk van dar Laars という偉人の帰りを待っていたのです。”Lost” のアートワークに描かれた月のように、時は満ちました。全作の再発、日本も含む?!リユニオン・ツアー、そしてその道の先には、私たちが焦がれ続けた新作が待っているようです。
今回弊誌では、Ian Parry にインタビューを行うことができました。「素晴らしい未来への希望を歌うことだよ。メディアでよく見聞きするような怖い話ではなく、もっとおとぎ話を書きたいんだ。魔法にかかったようなファンタジーの世界をね。そうだね、それで、1997年の “State of Mind” の時のように、ファンの皆に再び幸せな気持ちになってもらえたらうれしいね」 弊誌独占世界初インタビュー。どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GGGOLDDD : THIS SHAME SHOULD NOT BE MINE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GGGOLDDD !!

“It’s Something I Need To Remind Myself Of Daily. That It Wasn’t My Fault And That All The Shame And Guilt That I Felt Shouldn’t Be Mine. But Should Be Felt By The Perpetrator.”

DISC REVIEW “THIS SHAME SHOULD NOT BE MINE”

「私たちの歌詞は、いつも現実をテーマにしているの。実際の現実のことを書けるのに、ファンタジー的な暗さや悪のような題材を探す衝動に駆られないんだ。それが、私たちの音楽の、辛辣で時に直接的なサウンドにぴったりだと思うのよ」
辛く抑圧的な現実からの逃避場所。目の前の痛みを忘れられるファンタジー。ヘヴィ・メタルがそうして、多くの人の心を癒し救っているのはまちがいありません。バンドの義務は演奏と作曲で、政治的発言や不快な真実を突きつける必要はないと考える人も多いでしょう。それでも、メッセージのあるバンドは、現実と向き合うアーティストは時に、人の心を激しく揺さぶり、音と言論の組み合わせが超常現象を引き起こすことを証明します。オランダの GGGOLDDD がヘヴィ・メタルに込めたメッセージはただ一つ、”合意のない性交をするな!”
「”この罪悪感は私のものじゃない”。それは私が毎日自分に言い聞かせるべきことでもあるの。レイプの被害を受けたのは私のせいではない。私が感じたすべての恥や罪悪感は、私のものであってはならないということをね。それは加害者が感じるべきものなのよ」
GGGOLDDD のメッセージは、痛々しい実体験に基づいています。バンドのフロントを務める Milena Eva は19歳のときにレイプされ、17年間も羞恥心と罪悪感を持ち続けてきました。
それは、彼女がバンドで作る音楽にも時折反映され、波状的に表面化しながらも、決して沸騰することはありませんでした。しかし、パンデミックの停滞期に時間を持て余し、思考が巡る中で彼女のトラウマは完全に噴出し、それが “This Shame Should Not Be Mine” 制作の原動力となったのです。このアルバムは、ただ被害者意識に浸るのではなく、むしろ背筋を伸ばし、身をもって罪の意識を感じさせるほど激しい怒りと非難を秘めることになりました。
「アルバムを書くことが必ずしもセラピーとは言えないと思うけど、そうすることでカタルシスを感じ、あの出来事と真剣に向かい合うことはできた。どちらもセラピーの説明として使える言葉だとは思うのよ。自分があの出来事をどう感じ、何を経験してきたかを言葉にする助けにはなったのよね」
メタルにおいて歌詞はしばしば後回しにされがちですが、”This Shame Should Not Be Mine” では歌詞を素通りすることはできません。性的暴行。そのトラウマを背負った羞恥と罪の意識の人生にスポットライトを当て、婉曲や比喩で和らげることはありません。”Spring”では、死んだようなモノトーンの目で “臭いを消してほしい/皮膚が剥がれるまでシャワーを浴びたい” とつぶやき、”Strawberry Supper” では “オマエは私を太陽と呼び、私を引き裂いた” とレイプ犯に直接語りかけます。そして、”Notes on How to Trust “では、同じ苦痛を再び経験するリスクを冒さず、どうすれば他人にに心を開くことができるかを考えていきます。
音楽を通してトラウマに対処し、トラウマを曲作りに反映させる。LINGUA IGNOTA は、この点で GGGOLDDD の良き理解者でしょう。しかし、これほどまでに荒々しく、直接的な方法でトラウマを扱っているバンドはほとんどなく、Milena の歌詞は詩というよりも、棘の鞭や鋭いナイフのような物理攻撃に特化した武器にも思えます。
この容赦のない怒りの津波は、オルタナティブ、インダストリアル、ブラック・メタルの境界で嘶くその音楽にも反映されています。そしてこの荒涼としたテーマの完璧な背景となりながら、メロディックなフックと反復の魔法によって、このアルバムは頭にこびりつくような麻薬にも似た中毒性を帯びていきます。
もちろん、”This Shame Should Not Be Mine” は、楽しいアルバムではありません。万人受けするようなアルバムでもないでしょう。ただ GGGOLDDD は、近年のメタルらしい不協和音や異質な曲の構成によってではなく、楽曲を難解にしないことによって、アクセスを容易にすることによって、むしろ意図的に不快感を与えているのです。恥や罪、痛みや長い苦しみを加害者の胸の奥に深く、永遠に刻み込むかのように。
今回弊誌では、GGGOLDDD にインタビューを行うことができました。「鎧のコンセプトは、”This Shame Should Not Be Mine” の内容を可視化することだった。この鎧は、私たちがいつも持ち歩いているもの。そして、自分と他者との間に残る、盾のような境界線」 日本の至宝、MONO とのツアーも決定!どうぞ!!

GGGOLDDD “THIS SHAME SHOULD NOT BE MINE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE GATHERING : BEAUTIFUL DISTORTION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HANS RUTTEN OF THE GATHERING !!

“I Think We Just Love To Crossover Genres And To Experiment, Not Thinking About Commercial Aspects.”

DISC REVIEW “THE GATHERING”

「残念ながら最近は “歪み” が多くて、物事の美しさを見るのが難しいからね。解決しなければならない問題が多すぎて、鬱陶しく感じることもあるよ。でも、この大変な時期に、人々に寄り添えるような素敵な音楽ができたと思っているよ」
ご承知の通り、ヘヴィ・メタルには美しさと歪みが同居しています。しかし、多くの場合 “Beautiful” よりも “Distortion” が勝っているのが事実。実験と交配を遺伝子に宿す THE GATHERING が混沌と殺伐、分断の中から引き出した儚き美の結晶 “Beautiful Distortion” は、”歪み” 以上に “美しさ” が支配する寛容なヘヴィ・メタル。
「常に音楽が第一であるということを認識しているからだろうな。逆にいえば、それ以外のことはあまり重要ではないんだよ。だから僕は、あの時代の古いメタルが好きだった。当時のシーンは音楽が中心で、ギミックが中心ではなかったからね。今は変わってしまったけど、だからこそ当時このシーンの一員であったことを嬉しく思っているよ」
90年代、THE GATHERING はメタルに革命を起こしながら、以降も決して革命の手を緩めなかった偉大なバンド。ULVER, PARADISE LOST, MY DYING BRIDE, などデスメタル・ドゥーム、ゴシック、エレクトロニカを渡り歩いた異端の中でも、ANATHEMA と同様によりアトモスフェリックなポスト・プログレッシブ / ポスト・オルタナティブへとその歩みを進めた美の伝道師。シューゲイズまで組み込んでいたでしょうか。カテゴライズの難しさはそのまま、THE GATHERING の多様性の哲学を物語っています。
「Anneke と Silje の二人を比較するのは賢明ではないだろうね。二人は全く異なるシンガーなんだから。多くの人がそうしているのは知っているけれど、それはフェアじゃない。Silje は私たちの音楽にたくさんの新しい色彩を与えてくれる。彼女はファンタスティックで、私たちの新しいアルバムでも素晴らしい仕事をしてくれているよ。私は彼女の暖かい声がとても好きなんだ」
1995年の “Mandylion” で “女声のゴシック・ドゥーム” を確立し、シンフォニック・メタルなど後続にも多大な影響を与えた THE GATHERING。結果として、バンドの顔であった Anneke Van Giersbergen はスターダムを確立し、2007年に脱退してしまいます。もちろん、Anneke の声は THE GATHERING のみならずメタル世界における女声の “基準点” となりましたが、新たに加入した Silje Wergeland の北欧からオランダへと吹き抜ける瑞々しい歌風も、存分にリスナーの心を溶かしているのです。
「まあほら、人生いろいろだよ。もちろん、元ベースの Marjolein が2014年に辞めたのは大きかったね。だから、しばらく活動をやめることにしたんだ。生活の中で他のことをするためにね」
そうして今、私たちは THE GATHERING 約10年ぶりのアルバムを手にすることとなりました。2012年にリリースされた “Disclosure” とそのB面作品 “Afterwords” を聴けば、Silje の涼やかなボーカル・スタイルがエニグマティックに進化した THE GATHERING サウンドの中核にあるのは明らかで、それはこの新作でも同様でしょう。今回は、対となるB面 “Interference” が同日にリリースされましたが、このEP最後の曲は裏名盤 “How To Measure A Planet?” のタイトル曲のライブバージョンであり、そういった意味でもこの美麗なるつがいは THE GATHERING 全てのクラシックの中でもあの作品に接近しているように感じます。
「あのころ、私の好きだったバンドは様々なアルバムを作り、実験することを恐れていなかったからね。だから、私たちもそうしなければならなかったし、実験と交配は私たちの遺伝子の中に存在しているんだ」
“Beautiful Distortion” は、ポスト・ロックやアート・ロックと融合した繊細なオルタナティブ/ ポスト・プログレッシブの音の葉で化粧をほどこされ、相変わらず美しく、折衷的で、隔世のサウンドトラックのような景色を映し出しています。オランダのパイオニアは雨の日の叙事詩 “Home” 以来、ドラマ性以上により物悲しい曲作りをする傾向にあります。彼らは、切なさに “重み” を加える比類のないコツを知っていて、ロマンチックなフラスコとビーカーで未知の化合物へと仕立て上げていくのです。
感情的なコードの流れに揺蕩う明と暗の漂流物、ミッドテンポの軌道に打ち上げられた崇高と歪みの二律背反。知性と対比を駆使しつつ、オープニングを飾るカムバック・シングル “In Colour” の秋を彩るメロディと騒めく木々のコンポジションは、THE GATHERING がヴィヴァルディのごとく四季を司る音楽家であることを証明しています。”How to Measure a Planet?” や “Home” のプロデューサー、Attie Bauw の仕事も白眉。
今回弊誌では、ドラマーにしてバンドのエンジン Hans Rutten にインタビューを行うことができました。「CELTIC FROST, PARADISE LOST はもちろん、COCTEAU TWINS, DEAD CAN DANCE, PINK FLOYD, SLOW DIVE, それに MASSIVE ATTACK も。RUSH や VOIVOD のようなバンドもみんな大好きだよ」 どうぞ!!

THE GATHERING “BEAUTIFUL DISTORTION” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【STAR ONE : REVEL IN TIME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ARJEN ANTHONY LUCASSEN OF STAR ONE !!

“I See It As My Role As a Musician To Offer Escapism”

DISC REVIEW “REVEL IN TIME”

「STAR ONE は AYREON とは逆で、ギターリフをベースとしている。そして STAR ONE はもっとストレートな音楽なんだ。クラシカルでもないし、アコースティックもない。ストレス発散の時間だよ!」
自称、長身痩躯のヒッピー。オランダが生んだプログ・メタルの巨匠 Arjen Anthony Lucassen は GENTLE STORM, STREAM OF PASSION, GUILT MACHINE など数多のプロジェクトで、そのつど自身の様々な音楽的宇宙を探求し、知的欲求を満たしてきました。それが可能になるのも、ほとんどが壮大な2枚組で複雑にストーリーが絡み合う、さながらメタル世界の “スターウォーズ”、AYREON という母船が存在しているから。
「Bruce Dickinson は AYREON のアルバム “Universal Migrator” での私たちの共同作業をとても気に入ってくれて、私と一緒にアルバムを書いてレコーディングしたいと言ってくれたんだ。それで曲作りを始めたんだけど、その時、私は素直にこのことをインターネットに書いてしまったんだ。そのニュースはすぐに広がり、Bruce のマネージャーである Rod Smallwood にも伝わってね。彼は、私がそんな早い段階でこのプロジェクトの話をしたことを面白く思わず、プロジェクトをキャンセルしてしまったんだよ」
Bruce Dickinson との蜜月からはじまった “Space Metal” STAR ONE とは、AYREON のハイエナジーなプログ・メタル、その側面にフォーカスし、より掘り下げて表現したプロジェクト。映画を愛する Arjen は、自分の好きな映画、それもSFやファンタジーについての感想や感情を表現する場として STAR ONE に乗り込んでいます。ただし、これまでの “Space Metal” では、”スターゲイツ” や “スターウォーズ” といった遥か彼方の宇宙を探索したのに対して、今回はもう少し地球に寄りそい、”時間旅行” に端を発するディストピアや近未来的な映画をテーマとしているのです。
これまで STAR ONE では、Russell Allen や Floor Jansen のような才能あるメンバーが中心となってハーモニーを奏でてきましたが、今作では “One Song, Two Singers” を掲げた二枚組のアルバムとなり、さらに Arjen の世界中の最高のギタリストと仕事がしたいという野望を叶えるため乗組員の数は大幅に増加。多様な才能と名人芸を味わえる、ボリューム満点の壮大な宇宙メタルがここに完成をみたのです。
オープナー “Fate of Man” は、”Universal Migrator” サーガ第2弾で私たちが愛した要素をそのまま抽出したような、速く、重く、メロディックな幕開け。カナダのメタルバンド UNLEASH THE ARCHERS の Brittney Slayes が STAR ONE の世界に新鮮な声をもたらし、映画 “ターミネーター” の残像を伝えます。同時に、SYMPHONY X の Michiel Romeo は、壮絶なギターリードで T-800 の残忍な道を切り開いていきました。
次のトラック “28 Days” は、同じく SYMPHONY Xの Russell Allen が “ドニー・ダーコ” の複雑な物語を語るために歌詞を提供し、楽曲に説得力を付与します。ジェットエンジン、タイムトンネル、バニースーツのドロドロとしたカオスはドロドロとした楽曲に移行して、ドニーの奇妙な人生の最後の28日間を十分に表現しています。
3曲目の “Prescient” は、AYREON らしい伝統的なシンセと半ケルト的なメロディーで始まった後、映画 “プライマー” の物語となり、2人の主人公、エイブとアーロン を Michael Mills (TOEHIDER) と Ross Jennings (HAKEN) が見事に演じきりました。この曲のデュエットは、かつての “Human Equation” を想起させ、二人のアカペラパートが何層にも重なっていて、リスナーの脳内を駆け巡ります。
次の “Back From The Past” では、Jeff Scott Soto と Ron Thall の SONS OF APOLLO 組が暗躍し、1985年にタイムトラベル。若き日のマクフライの様に、デロリアンが午後10時4分に線を越えなければならないと訴えます。素晴らしいアレンジに素晴らしいミュージシャンシップ。
Steve Vai がメタルを弾く、今となっては珍しいタイトル曲の冒険の後訪れる “The Year of 41” はアルバムのハイライトでしょう。1941年、真珠湾攻撃を阻止するため、米海軍の乗組員がわずかな可能性に賭ける映画 “ファイナル・カウントダウン” にインスピレーションを得た楽曲。Joe Lynn Turner が Jens Johannson と再びタッグを組み、WHITESNAKE の偉大なる Joel Hoekstra を引き連れ軍艦に乗り込みました。AYREON 世界が素晴らしいのは、魔法のようにスペシャルな組み合わせが実現するファンタジー・ワールドであるところ。”41″ のミュージシャンシップは並外れていて、アルバムの中でも本当に傑出しています。特に Joe Lynn Turner の変わらぬ歌声、変わらぬメロディー。Arjen の RAINBOW に対するリスペクトが詰まった楽曲で、70の老兵は老いてますます盛んです。
まさに10年待った甲斐がある傑作。Arjen ならではの完成された作品であり、アグレッション、多様なボーカル、リリックと名人芸のイマジネーションに溢れた、中毒性の高い時間旅行。今回弊誌では、Arjen Anthony Lucassen にインタビューを行うことができました。「何というか、私はひどい反社会的な引きこもりなんだよね。恥ずかしながら、私は砂の中に頭を突っ込んでいるようなものでね。世の中で何が起こっているのか、まったくわからないし、知りたくもないんだよ。人間の言動が腹立たしいからだよ。そして、私は結局、人のひどい行動に対して何もできないんだ…」 それでも我々は、ディストピアをテーマとした彼の真意を汲み、行間を読むべきでしょう。二度目の登場。 どうぞ!!

STAR ONE “REVEL IN TIME” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PESTILENCE : EXITIVM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PATRICK MAMELI OF PESTILENCE !!

“It Is Not a Secret I love Allan Holdsworth, Tribal Tech, Chick Corea And Steve Coleman. They Opened Up My Musical Horizons.”

DISC REVIEW “EXITIVM”

「私はどのカテゴリーにも属したくなかった。ありとあらゆるルールで自分を制限してしまうからね。DEATH がテクニカルだったのは、Sean と Paul がバンドに加わった時だけだよね。加えて私たちも、決して “スーパー・テクニカルだとは思われていなかったけど、このジャンルに新しいスタイルを生み出したのはたしかだよ」
DEATH, CYNIC, ATHEIST, NOCTURNUS, ATROCITY, GORGUTS, DEMILICH。80年代後半から90年代初頭にかけて、デスメタルやスラッシュメタルを独自の牙で咀嚼し、突然変異の魔物を生み出す “奇妙な” メタルの波がエクストリーム・ミュージックの歴史を変えました。
POSSESSED に端を発した彼らの異端は、決して現代のいわゆるテクニカル・デスメタル “Tech-metal” のように、レールに乗ったシュレッドが飛び交う狂喜乱舞の硬質な宴ではなく、存在自体が阿鼻叫喚で突拍子も無いアイデアを現実にしてしまう魑魅魍魎の無礼講だったのです。そこにルールは存在しませんでした。
「私が Allan Holdsworth, TRIBAL TECH, Chick Corea, Steve Coleman を愛しているのは秘密でもなんでもないよ。彼らが私の音楽的な地平線を広げてくれたんだ」
オランダから新たなメタルの感染爆発を呼んだ疫病 PESTILENCE の無礼講は、実に粋な演出でした。そして彼らはその “傾奇者” の精神を今に至るまで貫き通しています。ジャズとメタルの蜜月といえば、まず CYNIC を思い浮かべるファンも多いでしょう。しかし、89年にリリースされた PESTILENCE の2ndアルバム “Consuming Impulse” を聴けば、奇抜なリフの発明のそばにジャズや現代音楽の知性が投影されていることに気づくはずです。その場所から、シンセサイザーやインタルードを活用したシアトリカルとも言える傑作 “Testimony of the Ancients”, アトモスフェリックなホールズワース・イズムを継承した “Spheres” と彼らの世界は広がっていきました。
「私が過去に一緒に仕事をしたほとんどの音楽家たちは、他に自分のバンドやプロジェクトなどに専念していることを理解してほしいと思うんだ。彼らは、1枚のアルバムと1回のツアーのためこのバンドに滞在し、その後は自分の仕事をするために去っていくというわけさ」
それでも PESTILENCE をソロプロジェクトではなくバンドであると断言する奇才 Patrick Mameli。実際、流動的なメンバーを利用しながら休止と再開を繰り返すペストの脅威は、時を経るごとに増しているようにも感じられます。15年の眠りから目覚めプログデスの威厳を示した “Resurrection Macabre”、8弦ギターの導入で難解と異端を極めた “Doctrine”、ファンの長年の忠誠に報いた “Hadeon”。ex-CYNIC の Tony Choy, DARKANE の Peter Wildore, 長年の相棒 Patrick Uterwijk といった達人たちの恩恵にも恵まれて、PESTILENCE に聴く価値のない作品など一枚たりとも存在しないのです。
「たしかに、シンセやサウンドスケープの使い方は “Testimony of the Ancients” と似ている部分もあるかもしれない。だからといって同じような音楽だとは言えないだろうな。私が今使っているシンセやコードは、あの時よりより進化していて、音楽的な有効性が高いのだから」
そんな彼らの現在地が “Exitivm”。ラテン語で “破壊” と名づけられたアルバムは、再度過去を破壊して新たな音の葉を紡ぎ出す再創造の楽典。”Testimony of the Ancients” で選択されたギターの歪みとキーボードを多用したアプローチの質感、”Spheres” のアトモスフェリックなコード・ヴォイシングを受け継ぎながら、楽曲をコンパクトでグルーヴィーに保ち、その偏執的でしかし弾力に満ちた不安の塊は、環境破壊、精神の破壊、民主主義の破壊を扱った “Exitivm” なテーマと素晴らしく調和していくのです。ex-GOD DETHRONED のドラマー Michiel van der Plicht によるシャープでブルータルなドラミングが、このソリッドな作品の本質を代弁していますね。
今回弊誌では、Patrick Mameil にインタビューを行うことができました。「ようやく、政府がクリエイティブな人々、音楽家、画家、表現者に対してどれほど無関心であるかを悟ったよ。私たちはかなり長い間、資金援助も何もない状態で監禁されていたんだからね。Chuck (Schuldiner) が言うように、まさに彼ら権力の “Secret Face” (DEATH の楽曲、”Human” 収録) 秘密の顔を示していたと思うよ」 どうぞ!!

PESTILENCE “EXITIVM” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DILEMMA : RANDOM ACTS OF LIBERATION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH COLLIN LEIJENAAR OF DILEMMA !!

“I Believe That Prog Music Should Not Only Be Clever And Virtuoso, But Also Moves Your Emotions And Your Heart. And It Should Surprise You, Taking You On a Musical Journey.”

DISC REVIEW “RANDOM ACTS OF LIBERATION”

「オランダ人はいつも交易と開拓を掲げてきたよ。この精神は、音楽にも反映されているんだ。なにせオランダのプログシーンは小さいから、成功を収めたいなら手を広げなければならないんだ。だからこそ、オランダのプログロックバンドはよく世界的な注目を集めるんだろうね。」
オランダに根づく交易と開拓の精神は、文化、芸術の歩みをも伴うこととなりました。そしてそのスピリットは、”交易” と “開拓” を音で体現するプログレッシブロックの海原と無謬にシンクロしているのです。
FOCUS, EARTH & FIRE, TRACE, KAYAK, AYREON, TEXTURES, VUUR。潮風の交差点で脈々と重なるダッチプログの渦潮は、DILEMMA を呑み込み、23年の長い間仄暗き水の底へと沈めました。しかし、90年代に素晴らしき “Imbroccata” でプログシーンに深々と爪痕を残した船乗りたちは甦り、遅れて来た大航海時代 “Random Acts Of Liberation” で文字通り自由を謳歌するのです。
ただし、乗組員は船長の鍵盤奏者 Robin Z を除いて大きく変化を遂げています。特筆すべきは、Neal Morse, KAYAK との仕事でも知られる百戦錬磨のドラマー Collin Leijenaar と、ex-FROST*, DARWIN’S RADIO の Dec Bruke を加えたことでしょう。オランダでプログ雑誌のライターも務める Collin の理想と、FROST* の血脈に繋がる Dec の個性は、バンドを一際カラフルでアクセシブルなプログレッシブポップの海域へと誘うこととなりました。
「プログロックはただクレバーでバーチュオーソ的だけであるべきではないと信じているんだ。同時に感情や心を動かすべきだってね。そうしてそこには驚きや音楽的な旅への誘いがあるべきだってね。人は心の底から音楽と繋がる必要があるんだよ。」
実際、Collin のこの言葉は、”Random Acts Of Liberation” が強固に裏付けています。
DREAM THEATER の “Pull Me Under” を彷彿とさせる緊張感とキャッチーなメロディーラインのコントラストが鮮やかなオープナー “The Space Between The Waves” が、より”自由”なプログロックの風波としてアルバムの趨勢を占えば、14曲72分の DILEMMA シアターの幕開けです。
“Amsterdam (This City)” を聴けば、一番の理解者 Mike Portnoy が 「SPOCK’S BEARED, FROST*, FLYING COLORS, HAKEN, Steven Wilson と並ぶとても味わい深いモダンプログ」 と DILEMMA を評した理由が伝わるはずです。デジタルサウンドとストリングスを効果的に抱擁する多様で甘やかなホームタウンのサウンドスケープは、Steven Wilson や FROST* が提示するプログレッシブポップのイメージと確かにシンクロしているのです。
“Aether” では PINK FLOYD と、”All That Matters” では ELO とのチャネリングでさらにプログポップの海域を探求したバンドは、しかし12分のエピック “The Inner Darkness” でスリリング&メタリックなルーツを再び提示し対比の魔術で魅了します。
“Spiral Ⅱ” からのシアトリカルに、コンセプチュアルに畳み掛ける大円団は、まさに Neal Morse と Mike Portnoy の申し子を証明する津波。中でも、”Intervals”, “Play With Sand” の激しく胸を打つ叙情、音景、エモーションはあまりに尊く、リスナーの心を “音楽” へと繋げるはずです。
今回弊誌では、Collin Leijenaar にインタビューを行うことが出来ました。時にトライバル、時にジャズ、時に Portnoy の影響を組み込んだドラミングの妙は、アルバムのデザインを華麗に彩ります。「このアルバムでは、プログロックをよりオープンで直接的な表現とすることに成功したと思うよ。プログをプログたらしめている興味深い要素を失うことなく、ポップな感覚を加えているね。」 どうぞ!!

DILEMMA “RANDOM ACTS OF LIBERATION” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VUUR : IN THIS MOMENT WE ARE FREE – CITIES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANNEKE VAN GIERSBERGEN OF VUUR !!

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An Anthemic Opening Statement From Dutch Progressive Metallers VUUR Is Anneke Van Giersbergen’s Heaviest, Most Ambitious Work To Date !!

DISC REVIEW “IN THIS MOMENT WE ARE FREE – CITIES”

THE GATHERING, THE GENTLE STORM, DEVIN TOWNSEND PROJECT 等で妖艶かつ伸びやかな歌声を披露。欧州で確かな地位を確立するオランダのメタルプリマドンナ Anneke van Giersbergen が鮮烈なるニューバンド VUUR でその瑞々しい創造性の “浄火” を灯します。プログレッシブでヘヴィーな彼女の新たな航海は、コンテンポラリーな風を味方にシーンの先へと舵を取ります。
AYREON のマスターマインド Arjen Anthony Lucassen とタッグを組み、中世のフォルクローレで大航海時代のオランダを壮麗に描いた THE GENTLE STORM は VUUR の壮大な序曲でした。
インタビューにもあるように、GOJIRA, MASTODON, OPETH といったモダンなプログメタルを愛聴する Anneke は、プロジェクトの終焉と同時に THE GENTLE STORM の強靭なライブバンドをスカウトし、オランダ語で”火” “推進力” の名も映える、先鋭の狂熱 VUUR を生み出す決断を下したのです。
“In This Moment We Are Free – Cities” と名付けられたバンドのデビューフルレングスは、文字通り Anneke がこれまでツアーで訪れた世界中の都市をインスピレーションに制作されました。「どの街や都市にも異なるヴァイブやエナジーが存在するの。」 と語る通り、アルバムは実に多様でカラフルなサウンドスケープを誇っているのです。
Anneke と巡る世界旅行は、ベルリンに漂う悲哀と享楽の文化的カオスを反映するかのような “My Champion – Berlin” で幕を開けます。GOJIRA を想起させる有機的で巨大なグルーヴと、Anneke のオペラティックなメランコリーが溶け合うアンセムは、実に壮観であまりに独創的な化学反応だと言えますね。
事実、これまでカルトでディープなプログメタルは大抵男性がボーカルを務めて来ましたし、逆に言えば NIGHTWISH のような女声を前面に配するシンフォニックなアプローチではシンプルなリフワークを貫きバランスを取るケースが殆どでした。つまり、カルトとゴージャスが交差する VUUR のエピックは、前代未聞の野心的な物語だと言えるのです。
“Time – Rotterdam” はまさに “In This Moment We Are Free” のスピリットを体現するトラックでしょう。入り組んだタイムストラクチャーの中、時にハーモニーを創造し、時にポリフォニックなチャレンジを聴かせ、アコースティックの味わいまで司るギターチームのクリエイティビティは群を抜いていますね。経過音を多用する Jord の滑らかなリードプレイも印象的で見事なアクセントになっています。
さらに Anneke の揺らぎと艶は、厳かに巧みにレイヤーを重ねる中でその表情、深みを増して、プログメタルの巧妙なるストラクチャーの中へ驚くほどに溶け入っていますね。
MASTODON の砂漠を内包する “The Martyr and The Saint – Beirut”、Kate Bush のスピリットを受け継ぐ “The Fire – San Francisco” でオプティミスティックな熱気を伝えると、VUUR の旅路はリオの港へと辿り着きます。
PERIPHERY の Mark Holcomb との共作により生まれた “Rio – Freedom” は、繊細なクリーントーンがマスロック、ポストロックのイメージさえ植え付けるコンテンポラリーな楽曲。作中でも最もエモーションを発する Anneke のボーカリゼーションと相まって、極上のモダンプログレッシブワールドを形成しています。
実際、Mark 以外にも ANATHEMA の Daniel Cardoso が “Valley of Diamonds – Mexico City” に、AMORPHIS の Esa Holopainen が “Sail Away – Santiago”, “Save Me – Istanbul” のコンポジションに参加し、”耽美” や “勇壮”、”哀愁” といったそれぞれの “色” を加えたことでアルバムはより豊潤で多様なモダニズムを備えることとなりました。
同時に、AYREON, EPICA との仕事で知られるチャートヒッター Joost van den Broek のセンスも忘れる訳には行きませんね。そして Djent やポストブラックまで経由した VUUR とリスナーの旅路は、Mark Holcomb が手がけたエセリアルで多幸感溢れる “Reunite! – Paris” で鮮やかな余韻を残しつつ幕を閉じるのです。
今回弊誌では、Anneke van Giersbergen にインタビューを行うことが出来ました。「私はいつだって今を生きようとしているのよ。」 アルバムに収録した楽曲すべてに Anneke は “In This Moment We Are Free” の一節を忍ばせています。どうぞ!!

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VUUR “IN THIS MOMENT WE ARE FREE – CITIES” 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AYREON : THE SOURCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ARJEN ANTHONY LUCASSEN OF AYREON !!

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The Most Gorgeous Metal Opera In The World, Ayreon Are Back To “Forever” Saga With The Newest Record “The Source” !! Beautiful And Wonderful 70’s Vibes Are Here!

DISC REVIEW “THE SOURCE”

オランダを代表するコンポーザー、マルチプレイヤー、シンガー、そしてプロデューサー、Arjen Anthony Lucassen のメタルオペラプロジェクト AYREON が2枚組90分の一大スペクタクル “The Source” をリリースしました!!AYREON の宇宙を再び拡大し、過去最高とも思えるクオリティーを備えたよりギターオリエンテッドなレコードは、絶佳なる現代のスペースオペラとしてシーンに君臨するでしょう。
“Forever” サーガと称される AYREON のストーリーは、時代も時空も超越した壮大なるSFファンタジー 。まるで “Star Wars” と “The Lord of the Rings” が共鳴し溶け合ったかのような知的かつファンタジックな物語は、実際ロック史に残るエピックとして海外では絶大な人気を誇るのです。
“Forever” サーガのストーリーラインは、アルバムのリリース順に語られる訳ではありません。

「”Forever” とは技術の進歩により長寿の秘密を発見した “Planet Y” に住む水生知的生命体。感情を失い全てを”マシン”に頼るという生き方に進化してしまった彼らは、種族を再度活性化させるため彗星に自らのDNAを託し地球へと送ります。彗星の衝突は地球を支配していた恐竜を滅亡させ、破壊の灰の中から人類が登場したのです。
当初、”Forever” の実験は成功したように思えました。 “Forever”の遺伝子を有する人類は、”Forever” が “マシン”に頼るようになる以前の感情を有していたのですから。しかし、進化をスピードアップさせた “Forever” は、皮肉にも人類が彼らと同様の問題に直面したことを知ります。それはテクノロジーへの依存と感情の危機でした。人類のモラルは発展の速度に追いついてはいなかったのです。”Forever” は人類を自己破壊から救えるのでしょうか?」

これが前々作 “01011001” のプロットであり “Forever” サーガの”エピソード0″に位置する話です。
そこからストーリーはファーストアルバム “The Final Experiment”、つまりエピソード1” へと繋がります。2084年に最後の世界大戦が起こり、火星へと移住し滅亡する運命の人類。2084年の科学者たちはタイムテレパシーで過去へと警告を発し、さらに人類は “Forever” に導かれ様々な時代、人種が滅亡を回避するための行動を続けて行くのです。
“The Source” は “エピソード-1″ に位置するストーリー。さらに時を遡り”Forever” が “Planet Y” へと辿り着く以前の物語が描かれています。

「人類の大きな祖先とも言える “The Alphans” は、環境問題や政治的混乱により危機を迎えていました。彼らの星を守るため “The Alphans” はグローバルコンピューター “The Frame” に全てを託しますが、コンピューターが星を守るために下した結論は、”The Alphans” の根絶だったのです。星から脱出可能な宇宙船は1台だけ。搭乗が許されたのは技術や能力を備えた一部の “The Alphans” のみでした。そうして彼らがたどり着いた惑星こそ “Planet Y” だったのです。
“The Frame” から解放された “The Alphans” は “Forever” と称するようになりました。それはテクノロジーを進化させ開発した、”マシン” により永遠の命を保証されたからに他なりません。しかし同時に “Forever” はテクノロジーに依存しすぎたがためその感情を失い、より高く構築した建物は太陽の光を全て遮り “Age of Shadows” という暗黒の時代を迎えてしまったのです。そうして彼らは地球に DNA を送ることとなったのです。」

ここまで長きに渡り、しかもスムーズにストーリーが繋がると戦慄すら感じますが、作品を通じてテーマとし警鐘を鳴らし続けるのが、”テクノロジーへの依存” がもたらす危険であることは明らかですね。
音楽的には、インタビューにもあるように、Keith Emerson, Rick Wakeman, Jodan Rudess など鍵盤のレジェンドを起用してプログレッシブかつキーボードオリエンテッドに仕上げた前作 “The Theory of Everything”、そして Anneke van Giersberge とタッグを組んだ “女性的な” GENTLE STORM のリアクション、反動として、”The Source” は非常にキャッチーでヘヴィーなアルバムに昇華されています。
重厚かつ絢爛なアルバムオープナー “The Day That The World Breaking Down” から登場しアルバムの要所で現れる、ハモンドと絡むヘヴィーなメインギターリフが DREAM THEATER の “Erotomania”, “Voices” に極めて酷似している点にはギョッとしますが、James LaBrie が参加しているのでおそらく問題はありません。
実際、オマージュこそが “The Source” のキーワードだと言えるでしょう。 インタビューにもあるように、Arjen は彼のロック/メタル、特に70年代に対する憧憬を隠そうとはしていませんね。例えば “Everybody Dies” “Journey to Forever” が QUEEN への愛情が込められたラブレターだとすれば、”Run! Apocalypse! Run!” “Into The Ocean” は RAINBOW の新作に対する督促状かも知れません。何よりも、Freddie Mercury や Dio の役割を問題なく果たすことの出来る Mike Milles や Russell Allen といった極上のシンガーたちを発見し、適材適所にオペラの “俳優” として重用する Arjen の才覚には脱帽するばかりです。
あなたがもしクラッシックロックのファンならば、アルバムを聴き進めるうちに JETHRO TULL, STYX, PINK FLOYD, Kate Bush, さらには同郷の FOCUS などを想起させる場面に出くわしニヤリとすることでしょう。しかし同時に Arjen の巧みで見事過ぎるコンポジションにも気づくはずです。
多弦ギターやエレクトロニカなどモダンな要素も吸収し、インタビューにもあるようにフォーク、メタル、アトモスフィア全てを調和させメロディーとフック、そしてダイナミズムに捧げたアルバムはまさにエピカルなメタルオペラの金字塔として後世に語り継がれていくはずです。
今回弊誌では、Arjen Anthony Lucassen にインタビューを行うことが出来ました。残念ながらツアーは引退したそうですが、これだけの内容をメンバー集めから全てほぼ1人でを制作し続けているのですから当然という気もします。どうぞ!!

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AYREON “THE SOURCE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【EPICA : THE HOLOGRAPHIC PRINCIPLE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARK JANSEN OF EPICA !!

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Dutch Female-Fronted Symphonic Metal Outfit, Epica Issue Seventh Studio Album “The Holographic Principle” On 9/30 !! Let’s Set Off On Another Voyage Of Scientific Discovery !!

“A GUIDE TO THE HOLOGRAPHIC PRINCIPLE”

オランダが誇る Symphonic / Prog Metal の雄、EPICA が9/30に待望の新作 “The Holographic Principle” をリリースします!!
マルチリンガルという高い知性、美しすぎるその容姿、そして幻想的なメゾソプラノ。3拍子揃った紅一点 Simone Simons と、ex-AFTER FOREVER の Mark Jansen を中心として結成されたバンドは、初期の Gothic Metal 路線から徐々にメタリック、シンフォニック度合いを増し、荘厳かつ壮大な独自の Symphonic Metal を具現化しています。地元オランダのみならず、ブラジルでまで自らが主催する Epic Metal Fest を行うほどですから、その人気は最早世界レベルと言えるでしょう。NIGHTWISH, WITHIN TEMPTATION, そして EPICA をシンフォメタルの三本柱と信じるファンも多いはずです。
恐ろしいほどの高い完成度、ストーリー性を誇り、EPICA の集大成とまで評された前作 “The Quantum Enigma” の時点で、過去最高のヘヴィネス、アグレッションを備えていた訳ですが、最新作 “The Holographic Principle” はさらにエクストリームでヘヴィーなレコードです。
前作と同じ Joost Van Den Broek & Jacob Hansen というレコーディングチームを起用して制作されたアルバムは、Issac が「実際、僕達はまずメタルバンドなんだ。」と語る通り、ブルータルで推進力溢れるリフワークがアルバムの根幹に存在します。”Edge Of The Blade”, “Universal Death Squad” は、多くの Symphonic Metal バンドが”キャッチーさ”と引き換えに失いつつある、インテンスや大胆さ、展開美をこれでもかと見せつける強力な楽曲ですね。
とは言え、勿論、荘厳でシンフォニックな要素こそ EPICA のアイデンティティー。インタビューで Mark が語ってくれた通り、今作では何と、全てのオーケストラ楽器がライブでレコーディングされているのです。幻想的で揺らめくような “Once Upon A Nightmare” や、11分にも及ぶ「EPICA を EPICA たらしめる全ての要素を詰め込んだ」という大曲 “The Holographic Principle” を聴けば、豪華で独創的な真のオーケストレーションと共に、彼らの新しいチャレンジがさらに EPICA を一段上のバンドに進化させていることに気づくでしょう。
バーチャルリアリティを題材とした “The Holographic Principle” は、高い知性と豊かなエモーションを乗せた、科学と音楽の新たな旅だと言えますね。
今回弊誌では、Mark Jansen にインタビューを行うことが出来ました。日本のファンにとっては最後のまだ見ぬ巨人とも言える EPICA。遂に来日を約束するような言葉もいただきました。オランダの貴公子の登場です。どうぞ!!

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