EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SARAH PENDLETON OF THE OTOLITH !!
“It Is Worrisome And Frightening How Easily We Seem To Slip Back Into The Grave Mistakes Of The Past And Allow Ugliness And Hatred And Aggression To Poison Us. Vigilance And Memory Are Vital. Love Is Vital”
DISC REVIEW “FOLIUM LIMINA”
「”Bone Dust” はウクライナ侵攻の前に書かれたものだけど、自分の家を守るための歌。私たちは簡単に過去の重大な過ちに戻り、醜さと憎しみと侵略に毒されることを許してしまうようね。心配だし恐ろしいわ。警戒心と記憶力は不可欠だと思う。何よりも、愛は不可欠よ」
世界は多くの場所、様々な理由で燃えているように思えます。だからこそ、”過去” という灰の中から生まれた THE OTOLITH の “Bone Dust” は2022年に必要なアンセムにも感じられるのです。見事にサンプリングされた “独裁者” におけるチャップリンの演説と同様に、この楽曲は徐々に強度と熱を増し、燃え盛る世界の醜さ、憎しみ、不条理に対して教訓という愛を注いでいきます。
THE OTOLITH 63分のデビュー作 “Folium Limina” は、”Sing no Coda “に聞こえる遠い教会の鐘から、TOOL のような陶酔感の “Andromeda’s Wing”, ISIS を思わせるドラマティックなクローザー “Dispirit” の最後の音までリスナーは絶句し、静寂と轟音、美麗と醜悪の狭間で人間の業を知り、それでも希望という名の光を胸に秘めて生を見つめます。
「SUBROSA の終焉は、私たちにとって胸が張り裂けるような出来事だったわ。予期せぬ出来事で、私たちは何ヶ月も悲しみと混乱と嘆きに包まれていたの。でもね、グループのメンバーの一人がその一員であることを望まなくなったとき、最終的にはそれを受け入れて前に進まなければならないの」
THE OTOLITH は、ソルトレイク・シティで愛された SUBROSA の灰の中から生まれたバンド。元 SUBROSA のメンバー Sarah Pendleton、Kim Cordray、Andy Patterson、Levi Hanna と、VISIGOTH のベーシスト Matt Brotherton で新たな生を受けました。THE OTOLITH は不死鳥のように蘇るのか。それとも、イカロスのように燃え尽きるのか。求めよ、さらば与えられん。5人のデビュー作 “Folium Limina” は明らかに SUBROSA の遺品をさえ凌ぐフェニックスに違いありません。
「”Otolith” とは、ギリシャ語で “耳の石” を意味する言葉。内耳にある小さな水晶の構造物なのよ。バランス、動きの検出、音の検出を助けるの。アルバム・タイトルのフォリアとは、脳の中にある葉っぱのような構造物で、電気や電磁波のエネルギーを伝導させる働きをする。木の枝のように見えるわ。そして、リミナという言葉は、覚醒と夢想の間、シラフと陶酔の間、生と死の間などの心の辺境状態に由来している」
耳の石の名を冠した THE OTOLITH は、SUBROSA の残したものをある程度は受け継いでいると言って良いでしょう。巨大でアヴァンギャルドなドゥームを得意とし、情景を映し出すモノリシックなメランコリーが彼らの命題。氷河のようなリフがドゥーミーな海に突き刺さり、幽霊のようなヴァイオリンがその表面を悲しみの色に染め上げます。
美と破滅の間に境界線を引かず、幽玄なストリングスとダイナミックなベース、ギター、パーカッションを織り込んだ闇のタペストリー。現実と夢想、生と死の狭間で輝くのは Sarah と仲間の千変万化な歌唱。深く掠れた咆哮、礼拝的な詠唱、合唱のような澄んだ歌声は、SUBROSA の影をなぎ払い、キャッチーで、ダイレクトで、ドラマティックな THE OTOLITH の現在地を内耳の水晶へと刻みます。
「誠実さ、純粋な感情こそが、音楽を作る上で最も重要なピースだと信じているわ。だから、私たちにとって、それは今も変わっていない。その感情がネガティブなものであろうとポジティブなものであろうと、誠実である限り、すべての楽曲に含まれるべき唯一の要素なのよ」
誠実、純粋、愛。THE OTOLITH のスロウ・バーンはそうした感情の大切さと共に、過去の過ちから学ぶべき知恵の輝きを再確認させてくれます。残虐で冷酷な悲壮から切ない美しさまで、音のスペクトラムを横断する6曲は、近年稀に見る “アルバム” 志向の作品。つまり、これはタペストリーであり、美しく説得力のあるしかし欠点に満ちた人生の教科書なのでしょう。メタルを通して生命を吹き込まれた人間の経験は、暗く、美しく、思慮深く、超越的なものとなるはずですから。
今回弊誌では、Sarah Pendleton にインタビューを行うことができました。「ヘヴィ・メタルはバラエティに富んだ多元的な世界なの。木星サイズの抽象画のように、より多様になり、渦を巻き続けているのよ。私たちは、どんなサブジャンルに分類されようが、そこからこぼれ落ちようが、その世界の一部であることに恍惚としているの」 どうぞ!!
THE OTOLITH “FOLIM LIMINA” : 10/10
INTERVIEW WITH SARAH PENDLETON
Q1: First of all, can you talk about the reasons for Subrosa’s dissolution? Many in the metal world were really disappointed…
【SARAH】: The end of SubRosa was heartbreaking for us. It was an unexpected event that left us in sadness, confusion, and grief for many months. When one member of a group no longer wants to be part of it, eventually you must accept it and move on.
Q1: まず、SUBROSA 解散の理由からお話ししていただけますか?熱心なファンの多いバンドだっただけに、残念でしたよ…
【SARAH】: SUBROSA の終焉は、私たちにとって胸が張り裂けるような出来事だったわ。予期せぬ出来事で、私たちは何ヶ月も悲しみと混乱と嘆きに包まれていたの。でもね、グループのメンバーの一人がその一員であることを望まなくなったとき、最終的にはそれを受け入れて前に進まなければならないの。
Q2: Rebecca is not here. But it seems to me that The Otolith is truly a band born from the ashes of Subrosa. Why did you decide to form a new band, The Otolith, when you could have continued Subrosa with a few member changes?
【SARAH】: Rebecca was the main songwriter in SubRosa, and we have a different way of writing songs in The Otolith, so we wanted a new beginning, a new name, a new way. We also wanted to honor the memory of what SubRosa was with Rebecca. It would not have been SubRosa without her.
Q2: その一人とは、バンドの中心人物だった Rebecca でしょうが、新たなメンバーを入れて SUBROSA を続けることも不可能ではなかったはずです。
それでも、SUBROSA の灰の中から THE OTOLITH という新たなバンドを立ち上げた理由を教えていただけますか?
【SARAH】: Rebecca は SUBROSA のメインソングライターだったけど、THE OTOLITH では曲の作り方が違うから、新しい始まり、新しい名前、新しいやり方をとりたかったの。それに、SUBROSA が Rebecca と共にあったという記憶にも敬意を表したかったのもあるわね。彼女なしには SUBROSA はあり得なかったから。
Q3: In a world where song-by-song is the norm, this is a work that must be heard as a whole album. It’s truly amazing! Don’t get me wrong, I found The Otolith to be more dramatic, direct, and catchy than Subrosa. From your point of view, where do you see the difference between Subrosa and The Otolith?
【SARAH】: I think the biggest difference is the songwriting technique. In The Otolith, each member brings song ideas and we experiment together and decide how to arrange things. Levi is a very prolific writer and brings a lot of excellent guitar riffs, we all write riffs and countermelodies and sometimes a song is based on a violin riff or a vocal line. We all contribute lyrics and ambient sounds and samples. We will continue to dive deeper into industrial and ambient soundscapes.
Q3: それにしても、”Folium Limina” はアルバムという概念が失われつつある現代において、アルバムという特別な視聴体験の重要さを伝える稀有な作品ですね!
誤解しないで欲しいのですが、SUBROSA に比べてよりドラマティックで、ダイレクトで、キャッチーな音楽だと感じましたよ。
【SARAH】: SUBROSA と THE OTOLITH の一番の違いは曲作りのテクニックだと思う。THE OTOLITH では、メンバーそれぞれが曲のアイディアを持ち寄り、みんなで実験しながらアレンジを決めていく。
Levi は非常に多作で、素晴らしいギターリフをたくさん持ってくるんだけど、このバンドでは私たち全員がリフやカウンター・メロディを書き、時にはヴァイオリンのリフやボーカルラインをベースにした曲もある。歌詞やアンビエントサウンド、サンプルもみんなで提供する。これからもインダストリアルやアンビエントのサウンドスケープに深く潜っていくつもりよ 。
Q4: What is the meaning behind the band name “The Otolith” and the album title “Folium Limina”?
【SARAH】: It’s no easy task to come up with the right name for a band. It must be something meaningful for each member, something that represents a large idea with just a few words. We struggled to find the right name for a while, then Kim had the beautiful idea of calling us The Otolith. The word “otolith” comes from the Greek for “ear stone”. They are small crystal structures in the inner ear. They aid balance, motion detection, and sound detection.
About the album title–folia are leaf-like structures in the brain that help conduct electrical and electromagnetic energy. They look like a system of tree branches. And the term limina comes from the liminal state of mind, such as the transitory state between waking and dreaming, between sober and euphoric, between alive and dead. It is a place of thresholds and energy exchange.
Q4: バンド名の “Otolith”、そしてアルバム・タイトル “Folium Limina” にはどういった意味が込められているのですか?
【SARAH】: バンド名を決めるのは簡単なことではない。メンバーそれぞれにとって意味のあるものでなければならないし、たった数文字で大きなアイデアを表すようなものでもなければならない。
私たちはしばらくの間、適切な名前を見つけるのに苦労していたんだけど、Kim が私たちを “The Otolith” と呼ぶという素晴らしいアイデアを思いついたの。”Otolith” とは、ギリシャ語で “耳の石” を意味する言葉。内耳にある小さな水晶の構造物なのよ。バランス、動きの検出、音の検出を助けるの。
アルバム・タイトルについてだけど、フォリアとは、脳の中にある葉っぱのような構造物で、電気や電磁波のエネルギーを伝導させる働きをする。木の枝のように見えるわ。そして、リミナという言葉は、覚醒と夢想の間、シラフと陶酔の間、生と死の間などの心の辺境状態に由来している。それは、閾値とエネルギーの交換の場なの。
Q5: When I interviewed Rebecca in 2016, she said, “To me, genuine emotion is what creates “atmosphere” and “beauty” in doom metal.” Has that idea about doom metal changed today?
【SARAH】: We believe that sincerity, genuine emotion, is the most important piece in making music. So for us, that has not changed. It’s the one ingredient that should be in every song, whether that emotion is negative or positive, as long as it is sincere.
Q5: 2016年に Rebecca にインタビューを行ったのですが、彼女は「私にとって “真の感情” とは、ドゥームに宿るアトモスフィアと美麗なの」 と語っていました。その精神は、THE OTOLITH にも引き継がれていそうですね?
【SARAH】: そうね。私たちは、誠実さ、純粋な感情こそが、音楽を作る上で最も重要なピースだと信じているわ。だから、私たちにとって、それは今も変わっていない。
その感情がネガティブなものであろうとポジティブなものであろうと、誠実である限り、すべての楽曲に含まれるべき唯一の要素なのよ。
Q6: You provided a great cover of “Would?” for the Alice In Chains tribute album. Is that band and that song special to The Otolith?
【SARAH】: We are all big fans of Alice in Chains, and would have been happy to cover any of the songs from Dirt. It was wise of Jadd from Magnetic Eye records to ask us to do “Would?”, because it was uniquely suited to us, and somehow he knew that. It was the first song we recorded as a group, and opened the gates for us.
Q6: ALICE IN CHAINS のトリビュート・アルバムに “Would?” を提供していましたが、名演でしたね?
【SARAH】: 私たちは皆、ALICE IN CHAINS の大ファンで、 “Dirt” のどの曲でも喜んでカバーするつもりだったわ。でも、マグネティック・アイ・レコードの Jadd が “Would?” をやってくれと言ったのは賢明だったわね。ユニークにフィットしたし、彼はそれをわかっていたのね。
グループとして最初にレコーディングした曲で、私たちの門を開いてくれたから。
Q7: “Bone Dust” is a really strong song! Was the rise of fascists and the invasion of Ukraine, the main reason you used Chaplin’s “Great Dictator” speech?
【SARAH】: We’re so glad you like the song! Bone Dust was written before the invasion of Ukraine, but it is a song about defending one’s home. It is worrisome and frightening how easily we seem to slip back into the grave mistakes of the past and allow ugliness and hatred and aggression to poison us. Vigilance and memory are vital. Love is vital.
Q7: アルバムの中でも、”Bone Dust” は特別強力な楽曲ですね!チャップリンの “独裁者” のスピーチを使用したのは、近年のファシズムの台頭やウクライナでの戦争が理由ですか?
【SARAH】: この曲を気に入ってもらえてとても嬉しいわ。”Bone Dust” はウクライナ侵攻の前に書かれたものだけど、自分の家を守るための歌。
私たちは簡単に過去の重大な過ちに戻り、醜さと憎しみと侵略に毒されることを許してしまうようね。心配だし恐ろしいわ。警戒心と記憶力は不可欠だと思う。何よりも、愛は不可欠よ。
Q8: Many would call you post-metal as well as doom and progressive. The post-metal genre still seems to be in a stagnant situation, with no artists beyond Isis and Cult of Luna, but you guys sure seem to be able to change that, would you agree?
【SARAH】: Metal has more sub-genres than any other type of music, and I absolutely love that. It’s a multiverse exploding with variety. It keeps getting more diverse and more swirled together at the same time, like an abstract painting the size of Jupiter. We are ecstatic to be part of that world, no matter what sub-genres we fall into or spill out of.
Q8: ドゥームやプログレッシブと同時に、あなたたちをポスト・メタルと呼ぶ人も多いでしょう。
実際、ISIS と CULT OF LUNA を超えるアーティストが長く出現していないこのジャンルで、あなたたちはその状況を変えられそうな気がしています。
【SARAH】: メタルは他のどの音楽よりもサブジャンルが多く、私はそれがとても気に入っているのよ。ヘヴィ・メタルはバラエティに富んだ多元的な世界なの。木星サイズの抽象画のように、より多様になり、渦を巻き続けているのよ。
私たちは、どんなサブジャンルに分類されようが、そこからこぼれ落ちようが、その世界の一部であることに恍惚としているの。