EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHANNES ECKERSTROM OF AVATAR !!
“On One Hand It Is Obviously True We Do Things In a Very Theatrical And Bombastic Manner. On The Other The Most ipmportant Asset to Any Stage Performer Is His Eyes. We Never Want To Lose Focus On The Humanity On Stage And In The Interaction With The Audience.”
DISC REVIEW “HUNTER GATHERER”
「僕たちがやっていることにはある種の二面性があるということじゃないかな。一方では、非常に芝居がかっていて、大げさなやり方でやっている。それは明らかな事実だよ。 でもその一方で、舞台のパフォーマーにとって最も重要な財産は自分の目なんだ。舞台上においても、人間性にフォーカスすることや、観客との対話を決して失いたくはないからね。」
RAMMSTEIN からリック・フレアー、果てはスタンリー・キューブリックまで、芸術における “シアトリカル” を濃縮したメタルのライジングスター AVATAR は、そのエピックを敷き詰めたステージにおいても人間を見つめる “目” の価値を忘れることはありません。
70年代に Alice Cooper がロックと演劇を一体化させて以来、KING DIAMOND, MARILYN MANSON とそのシアトリカルな血脈は絶えることなく受け継がれ続けています。20年近くに及ぶキャリアの中で、ゆっくりと、しかし確実にメタル世界で最も創造的かつ興味深く、予測不可能な集団の一つに成長した5人のクラウンは、そのショックロックの遺伝子にジョーカーの狂気を継ぎ足して北欧からジャンルや境界線の予定調和を打ち破ってきました。
「”Mad Max” は、たしかに僕たちが今向かっている道の一つかもしれないね。だけど “スタートレック” のシナリオだって存在するはずなんだ。強い意志があって、一時的な犠牲を払う覚悟があれば、この問題を解決できる可能性はある。僕たちの歌に描かれる、世界全体を通して繰り返し起こる大きな問題は、僕たちの道に立ちふさがっている。でも最終的には、誰も僕たちの正しい行動を止めることはできないんだよ。」
確かな “目” を備えた AVATAR にとって、この呪われた2020年に “Black Waltz” のサーカスや、”Avatar Country” の幻想的な旅路を再現することは不可能でした。かつて完全に想像の産物であった世界の終末、ディストピアを肌で感じた現代のアバターは、そうして破滅のシナリオを回避するためのレコード “Hunter Gatherer” を世に送り出したのです。
たしかに、虹やドラゴン、聖剣の妄想で現実から逃れることは難しくありません。しかし、マッチの炎が消えた暗闇には冷徹な現実が残されます。AVATAR はそれよりも、闇に直面し、闇を受け入れ、世界をあるがままに受け入れる道を選びました。彼らのトレードマークでもある毒舌家で生意気なアティテュードも、ダークで怒りに満ちた人間性をシニカルに表現するレコードとピッタリ符号しました。
「この不確かな時は、僕たちが近年の自分たちよりも (闇や権力との) 対決姿勢を深めた理由にも繋がるんだよね。その対決姿勢は過去から現在までのメタルアルバムたちにも言えることだと思うんだ。僕たちメタルバンドはみんな、様々な方法で闇を探求し、闇に立ち向かう傾向があるから、暗い時代において僕たちの音楽は重要な役割を果たすわけさ。」
つまり、2020年の呪いはメタルが解くべきなのでしょう。Devin Townsend の “Deconstruction” の邪悪なグルーヴと THE HAUNTED の暴走がシンクロするオープナー “Silence in the Age of Apes” でテクノロジーの盲信に唾を吐き、GOJIRA のグルーヴにシンガロングを誘うビッグなコーラスを織り込んだ “Colossus” でディストピアの悪夢を描く “Hunter Gatherer” のワンツーパンチはいかにもシニカルです。
マカロニウエスタンな Corey Tayler の口笛からパンキッシュに疾走する “A Secret Door” はまさに AVATAR を象徴するような楽曲でしょう。ステージにおいてシアトリカルであることを指標する彼らにとって、物語りの豊かさは切っても切り離せない能力です。60年代のストーリーテラー Leonard Cohen, Willie Nelson のカントリーフォークとダイナミックなメタルはそうして AVATAR の胎内で出会いました。もちろん、インタビューに答えてくれた Johannes が敬愛する BLIND GUARDIAN にしても、ストーリーを大仰に伝える才能は群を抜いていましたね。
かつてデスメタルの本質は凶暴なリフやスピードよりもグルーヴと語った Johannes の本領が発揮された “God of Sick Dreams” はパワーメタルと結びついてバンドの新たなアンセムとなり、一方で “Justice” の叙情と哀愁は日本のファンにも大いにアピールするセレナーデでしょう。
極め付けはレコードで最も多様な “Child” で、マーチングバンドから激烈なメタル、求心的なコーラスにカオティックなジャムとアコースティックなアウトロそのすべては、ロボトミー手術が正当だと信じられていた時代の悲哀と愚かさを演じるためだけに存在します。時を経た2020年、常識と情報、そのすべては盲目に信じられるものなのでしょうか?
今回弊誌では、稀代の演者にしてボーカリスト Johannes Eckerström にインタビューを行うことが出来ました。「鳥山明から黒澤明、村上春樹からタイガーマスク、上原ひろみから tricot まで、日本からの多くの創造的な衝動が、僕の個人的でクリエイティブな旅を形作ってきたんだ。」Babymetal との US ツアーでも話題に。ギター隊の常軌を逸したハイテクニックも見逃せませんね。どうぞ!!
AVATAR “HUNTER GATHERER” : 10/10
INTERVIEW WITH JOHANNES ECKERSTROM
Q1: From the Corona crisis to Black Lives Matter, and climate change, this world is going through a turbulent time right now. I don’t know whether Sweden’s coronavirus strategy succeed or fail. But, “Hunter Gatherer” seems to be an album that reflects those uncertain times, doesn’t it?
【JOHANNES】: Yes, more than we ever imagined. I think it comes from the overarching themes of the album dealing so much with trying to understand what it means to be human right now while being more confrontational than we have been in our recent past. On the other hand this could be said about may metal albums, old and new. As we all tend to explore and confront darkness in different ways, dark times are bound to rhyme with our music pretty well.
Q1: コロナ危機から Black Lives Matter、さらに気候変動による災害と、世界は激動の時を迎えています。
あなたの母国スウェーデンのコロナ対策が成功なのか失敗なのか私にはわかりませんが、最新作 “Hunter Gatherer” は少なくともそういった不確かな時を反映したレコードのようですね?
【JOHANNES】: そう、想像以上に不確かな時だよね。だからこそ、このアルバムのテーマが、人間であることが何を意味するのかを理解することに落ち着いたと思うんだ。そうして僕たちが、近年の自分たちよりも (闇や権力との) 対決姿勢を深めた理由にも繋がるんだよね。
一方で、その対決姿勢は過去から現在までのメタルアルバムたちにも言えることだと思うんだ。僕たちメタルバンドはみんな、様々な方法で闇を探求し、闇に立ち向かう傾向があるから、暗い時代において僕たちの音楽は重要な役割を果たすわけさ。
Q2: A dystopian world like Mad Max, for example, was a figment of our imagination in the 90s, but in 2020 it seems to be a looming crisis. Still, we hope for a future other than cyberpunk and dystopia. Do you think “Hunter Gatherer” is an album that confronts such a doomsday route?
【JOHANNES】: At the very least it tries to encircle the feelings we have as we stand in this fork in the road. Yes, Mad Max is one path we might be heading down on right now. However, we could also go for the Star Trek scenario. We have the potential to solve this, if the will is there and if we are ready to make temporary sacrifices, and that’s the problem. A big reoccurring issue throughout our songs and the world at large is that we are standing in our own way. Ultimately no one is stopping us from doing the right thing.
Q2: 90年代において、映画 “Mad Max” のようなディストピア世界は想像の産物でしかなかったわけですが、今では迫り来る危機にも思えます。それでも私たちは、そんなサイバーパンクな未来以外の結末を望んでいるはずです。
対決姿勢を深めた “Hunter Gatherer” は、そういった破滅ルートに贖うアルバムとも言えそうですね?
【JOHANNES】: 少なくとも、その分かれ道に立っている僕たちの感情を包み込もうとしているんだよね。そう、”Mad Max” は、たしかに僕たちが今向かっている道の一つかもしれないね。だけど “スタートレック” のシナリオだって存在するはずなんだ。
強い意志があって、一時的な犠牲を払う覚悟があれば、この問題を解決できる可能性はある。僕たちの歌に描かれる、世界全体を通して繰り返し起こる大きな問題は、僕たちの道に立ちふさがっている。でも最終的には、誰も僕たちの正しい行動を止めることはできないんだよ。
Q3: The last album “Avatar Country” was a fantasy album, like a circus, in a sense. Would you say that the real and darker “Hunter Gatherer” is the opposite?
【JOHANNES】: It probably fits to call it the opposite. Our process can be likened to a pendulum. As we constantly search for new challenges and let the music change with us, some albums are bound to in part be a strong reaction against whatever we’ve been doing right before. This doesn’t mean we don’t like Avatar Country anymore or anything like that. On the contrary we are very proud and pleased with it. It’s just part of our trip to reinvent ourselves.
Q3: 前作 “Avatar Country” はある種サーカスのような、ファンタジーのレコードでした。先ほどのお話を踏まえれば、最新作 “Hunter Gatherer” はよりダークで現実的なレコードのようですね?
【JOHANNES】: そうだね。真逆と言った方がしっくりくるかもしれないね。僕たちのプロセスは振り子に例えることができるだろう。常に新しい挑戦を模索し、音楽を自分たちと共に変化させていく中で、ある種のアルバムは、今まで自分たちがやってきたことに対する強い反発になっていくことがあるわけさ。
だからといって、”Avatar Country” が嫌いになったとか、そういうことではないんだよ。それどころか、僕らはあのアルバムをとても誇りに思っているし、満足している。 これは自分たちを再発明するための旅の一部に過ぎないんだよ。
Q4: For Avatar, the stage is the main canvas, right? I know the current situation of not being able to perform live is stressful, but can you tell us about some of the influences on your epic live performances and stages?
【JOHANNES】: I could make a very long list for you, and it would span a wide variety of genres and even art forms. Off the top of my head I could say Queen, Ric Flair, the Hives, Rammstein, Stanley Kubrick, David Lynch, Iron Maiden, Judas Priest, Michael Jackson, Iggy Pop, the Haunted… I guess the point is that there is a certain duality to what we do. On one hand it is obviously true we do things in a very theatrical and bombastic manner. On the other the most important asset to any stage performer is his eyes. We never want to lose focus on the humanity on stage and in the interaction with the audience. Under every layer of theatrics there is a core of punk rock attitude, and I think that is the key to what we do.
Q4: パフォーマンスが売りである AVATAR にとって、ステージはキャンバスと呼べるものでしょう。
満足にライブが行えない現在の状況は大きなストレスだと思いますが、AVATAR の華麗なステージに影響を与えたアートを教えていただけますか?
【JOHANNES】: とても長いリストになっちゃうな。それにジャンルやアート形態もとても多岐にわたるんだよ。パッと頭に浮かんだだけでも、リック・フレアー (プロレスラー), QUEEN, THE HIVES, RAMMSTEIN, スタンリー・キューブリック, デヴィッド・リンチ, IRON MAIDEN, JUDAS PRIEST, Michael Jackson, Iggy Pop, THE HAUNTED…まあ要するに、僕たちがやっていることにはある種の二面性があるということじゃないかな。
一方では、非常に芝居がかっていて、大げさなやり方でやっている。それは明らかな事実だよ。 でもその一方で、舞台のパフォーマーにとって最も重要な財産は自分の目なんだ。舞台上においても、人間性にフォーカスすることや、観客との対話を決して失いたくはないからね。
演劇のすべての層の下にはパンクロック的なアティテュードのコアがあって、それが僕たちの活動の鍵だと思っているんだ。
Q5: Musically, I think Avatar is one of the most eclectic bands in the world. I mentioned darker earlier, is there a return to the roots of Scandinavian melodic death metal to some extent this time around?
【JOHANNES】: Maybe, but it wasn’t an outspoken ambition. God of sick dreams kind of fit that bill and it’s true that as we had a more aggressive approach probably looked at a lot of the music that shaped us to begin with. The melodic death metals bands of the Swedish west coast play a huge part in that of course.
Q5: 音楽に目を向ければ、AVATAR は世界でも最も多様なメタルバンドの一つでしょう。先ほどよりダークになったと言いましたが、その中でも今回は、ある意味バンドのルーツであるスカンジナビアのメロディックデスメタルに多少回帰した部分がありそうですね?
【JOHANNES】: そうかもしれないけど、それはそれほど大きな野望だったわけじゃないんだけどね。”God of Sick Dreams” はたしかにメロデスと合致していたし、僕たちがよりアグレッシブなアプローチをとるようになったことで、自分たちを最初に形作った音楽の多くを見返したのは事実だと思うよ。
スウェーデン西海岸のメロディックなデスメタルバンドは、もちろんその中で大きな役割を果たしているね。
Q6: Corey Taylor’s guesting and working with him is a big deal for Avatar, isn’t it? Could you tell us how he got involved? What’s Slipknot and Nu-metal to you?
【JOHANNES】: It’s a big deal of course, but most of all it was a lot of fun. We have met in the past as we’ve opened for Slipknot, but the big connection was and is Corey’s friendship with Producer Jay Ruston. When I first got in to metal I was very old school in my mindset and a shunned the term nu metal. I had to turn probably 17 or so to warm up to bands like Slipknow and System of a Down but they all became major influences on us in those early years of the band. I even covered Duality in high school. I don’t really know what nu metal would stand for today. It seems that the three big surviving acts of those days whose legacy clearly lives on are the two I already mentioned and Korn, and all three of those bands are extremely different from each other.
Q6: Corey Taylor のゲスト参加はバンドにとって大きな出来事だったのではないですか?
【JOHANNES】: もちろん大きな出来事だけど、何よりも楽しかったね。僕たちは過去に SLIPKNOT のオープニングを務めたこともあるんだけど、ゲスト参加に至った理由、大きな繋がりはプロデューサーの Jay Ruston と Corey の友情だったんだ。
僕が最初にメタルを始めた時、僕の考え方は非常にオールドスクールで、実は Nu-metal という言葉を敬遠していたんだ。だから17歳くらいまでは SLIPKNOT や SYSTEM OF A DOWN のようなバンドになかなか慣れなかったんだけど、バンド結成初期のころにはそういったバンドに大きな影響を受けるようになったね。高校時代には “Duality” のカバーもしていたくらいだから。
今日、Nu-metal が何を意味しているのかは正直よくわからないんだ。当時の遺産がはっきりと生き残っているのは、SLIPKNOT, SYSTEM OF A DOWN, KORN の3つの大きなバンドだけで、実はこの3つのバンドはお互いに全く違うからね。
Q7: In terms of combining aggression and intelligence, you are very close to the best metal band of our time, GOJIRA. Interestingly, on top of that, you’re also storytellers with influences of 60’s country and folk, Leonard Choen and Willie Nelson. That’s a very unusual approach for a metal band, isn’t it?
【JOHANNES】: Yes I think it is. There is a certain song writing sensibility that we aspire to reach that in our case is very much rooted in a Beatles fanatism among a couple of us. To us it has always been about that balance of putting the song and the emotions it should convey first while working in the school of Black Sabbath, as if you do metal music the riff and the heavy grooves lead the way.
Q7: 知性とアグレッションの融合という意味では、AVATAR は私たちの世代における最高のメタルバンド GOJIRA と非常に近い場所にあると感じます。
あなたたちが興味深いのは、その場所に 60年代のフォーキーなストーリーテラー Leonard Cohen, Willie Nelson の遺伝子を加えていることです。非常にユニークなアプローチですよね?
【JOHANNES】: うん、そう思うよ。僕らには目指している曲作りにかんする特定の感性があるんだけど、それはメンバーのうち何人かに根付いたビートルズファンというルーツに大きく関係しているんだ。
僕たちにとっては、BLACK SABBATH の学校に所属をしながら、それでも楽曲と伝えるべき感情のバランスを第一に考えてきたんだ。メタルらしいリフやヘヴィーなグルーヴを導きながらね。
Q8: Speaking of storytelling and theatrical performance, I think Avatar is a band that has inherited the legacy of Blind Guardian and King Diamond, would you agree?
【JOHANNES】: Blind Guardian is a big influence but I don’t know if it is correct to say we have inherited any role from them. That being said I am a massive fan. I see the connection to King Diamond but must say his influence has been a bit more indirect.
Q8: ストーリーテリング、そしてシアトリカルなパフォーマンスという意味では、AVATAR は BLIND GUARDIAN や KING DIAMOND の血も同様にひいているようにも思えますが?
【JOHANNES】: BLIND GUARDIAN には本当に大きな影響を受けているよ。まあだけど、それが彼らの役割を受け継ぐかといえばそうとも言えないんじゃないかな。ただ、僕が大ファンって言うだけでさ。
KING DIAMOND との繋がりも理解できるよ。ただ、 僕にとって King からの影響はより間接的なんだ。