EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADONIAN CHAN OF tfvsjs !!
The Innovative Math/Post Rock Act From Hong Kong, tfvsjs Has Released “Math Rock With A Canton Twist” Record “在 zoi” !!
DISC REVIEW “在 zoi”
頽廃と精神、暗澹と光明のコントラストを司る、香港のマスロック/ポストロックイノベーター tfvsjs が豊かな可能性に満ちた新作 “在 zoi” をリリースしました!!圧倒的なダイナミズムと多様性を備えたアルバムは、White Noise Records というキーワードともリンクしてアジア圏インストゥルメンタルの目を見張る進歩を証明する1枚となるでしょう。
複雑で予想不可能、しかし美しく感情豊かなピースを創造する tfvsjs が素晴らしきデビュー作 “equal unequals to equal” の後提示したのは、よりダークでヘヴィーな世界観でした。Adonian はその理由について 「僕たちがここ何年か香港で経験したことをどうしても反映しているからだと思うんだよ。政治は毎日僕たちの心を混乱させ、日常生活にも強く影響するんだ。そんな重荷を抱えた状況で作られた訳だから、音楽が僕たちの捌け口となった面は否めないと思うんだ。」 と語ります。
TTNG, Mylets のメンバーが香港のライブハウス Hidden Agenda で、不法就労の疑いにより警察に身柄を拘束された5月の事件をご記憶の方も多いでしょう。一見、ビザの申請を行う行わないという単純な話にも見えますが、実はこの事件こそ香港の闇を反映し象徴しているのです。
香港では、音楽の興行は商業地帯でしか認められていません。しかし商業地帯の非常に高価な賃料のせいで、ライブハウスを経営することは現実的ではないのです。Hidden Agenda はしかしながら、インディペンデントなアーティストを応援したいという情熱によって、賃料の安い “グレーゾーン” 工業地帯で幾度も場所や手法を変えながら何とか営業を続けて来たライブハウスでした。グレーなやり方のために当局からは目をつけられ、ビザの申請も難しいという背景が存在したようですね。
勿論、国によって文化や法律は異なるため、正義を単純に定義することは出来ません。ただ、才能溢れるインディペンデントなアーティストが演奏する場所を奪われていることは確かで、日本にとっても単なる対岸の火事とは思えません。何より、「自由と多様性の国際都市である香港は、クリエイティブなパフォーマンスと作品がもっと繁栄していく機会を創るべきだね。」 という TTNG, Mylets のコメントが全てを語っている気がします。
tfvsjs の言う “ここ何年か香港で経験したこと” は実は Hidden Agenda のケースとシンクロしています。彼らもまた工業地帯で、音楽活動を続けるために機材を持ち込んだスタジオ型のレストラン tfvsjs.syut をオープンさせていました。非常に人気のあったその場所は、しかし当局の立ち退き命令により昨年閉店を迎えてしまいます。
確かに違法性を宿すグレーゾーンでの出来事。ただ、アイコニックな表現者を的とした一連の強硬な流れには、一国二制度の下で保たれている香港の政治的、文化的な自治性の揺らぎを感じざるを得ません。「政治的にも文化的にも中国というより香港のバンド」 と語る彼らのアイデンティティーが保たれることを望むばかりです。
そういった経緯を念頭に置けば、tfvsjs の新たなレコードが、ダークでインテンス、そしてノイジーでドゥーミーなムードを加えたことにも納得が行くはずです。無音とノイズのコンビネーションで幕を開けるアルバムオープナー “Burn all flags,” は実際、頽廃と精神性を隠喩しているようにも思えます。
勿論、もとより一つのジャンルに収まるバンドではありません。2005年に結成された tfvsjs は、以前ボーカルやトランペッターまでをも擁していました。インタビューで hip hop をよく聴いていると語ってくれた通り、メンバー各自の多様な音楽的素養は、窮屈な政治の下でも型にハマらない自由な創作活動を可能としているのです。
何よりトレードマークとも言えるツインドラムスが生み出すダイナミズムは圧巻の一言。ツインギターとツインドラムスによるコール&レスポンスは、複雑な展開でも、シンプルなビートにおいてもまるで二つのバンドが共演しているかのようなエキサイトメントをリスナーへと届けます。爽涼なマスロックと轟音のドゥームゲイズを同時に梱包したかのような “and paint our pupils with ashes” はまさにその象徴だと言えますね。
7th や9th のテンションノートをメカニカルな五線譜へ巧みに配置した “Shrine of our despair”、YES の “燃える朝焼け” をイメージさせるスリリングでプログレッシブな “Battle From The Bottom”、ポストロックとアジアの悠久が見事に調和する “無以名状” を経てたどり着く “滅曲” は間違いなくアルバムのハイライト。
フラストレーションの捌け口となった楽曲で、ブラックゲイズのトレモロは慟哭を、マスロックの暖かなメロディーは光明を代弁し、極上のコントラストはまるで闇夜に浮かび上がる月華の如くリスナーの心を動かします。
日本のマスロックレジェンド toe の美濃氏がミキシングとマスタリングを手がけたことで、サウンドも丹念に磨きあげられ間違いなく作品の充実へと繋がっていますね。
今回弊誌では、ギタリストでコンポーザー Adonian Chan にインタビューを行うことが出来ました。昨年は Summer Sonic にも出演を果たした香港の英雄です。どうぞ!!
tfvsjs “在 zoi” : 9.8/10
INTERVIEW WITH ADONIAN CHAN
Q1: First of all, how was Summer Sonic, and Japan Tour last year? Did you like our culture?
【ADONIAN】: The Japan tour was a great experience for us,, the best part is getting to know the bands we performed with, especially Rega and Dalljub Step Club, TatalaYAVZ learnt a lot from their performance, Japanese bands are really tight and have great energy on stage.
To be honest we were quite nervous in Summer Sonic, because the interchanging was tight, and we have to setup 2 drum sets, so we end up have to perform without sound checking hahahahah.
Q1: まずは昨年のサマーソニック出演、日本ツアーの感想を聞かせていただけますか?
【ADONIAN】: 日本ツアーは僕たちにとって大きな経験になったよ。最も重要だったのは共演したバンドと知り合えたことかな。特に rega, DALLJUB STEP CLUB, tatalaYAVZ のパフォーマンスからは学ぶことが多かったね。日本のバンドは本当にタイトで、素晴らしいエナジーをステージで発揮するんだ。
正直に言って、サマーソニックはとても緊張したよ。僕たちはドラムセットを2台準備しなければならないのに、転換もあまり時間がなくてね。だから結局サウンドチェックもしないでステージに上がったんだ(笑)。
Q2: This is the first interview with you. So, at first, could you tell us about your band? How did tfvsjs come to be? What made you need double drums?
【ADONIAN】: We had numerous line up changes and finally settle the current line up in 2012. The double drum setup came from the idea of breaking up beats into left right panning to create a more dynamic and stereo effect.
Q2: 本誌初登場です!バンド結成の経緯から話していただけますか?ダブルドラムスになったのはなぜでしょう?
【ADONIAN】: 僕たちは、2012年に遂に現在のラインナップに定まるまで、本当に多くのメンバーチェンジを経験して来たんだ。
ダブルドラムスというアイデアは、ビートを左右に分割することで、よりダイナミックでステレオ効果を宿したサウンドを生み出せると思ったからなんだ。
Q3: What’s the meaning behind your band name tfvsjs? I read somewhere that it represents “頹廢 vs 精神” in Cantonese. Is that right? And what should we call tfvsjs?
【ADONIAN】: It’s from Cantonese pronounciation 頹廢 vs 精神, just call us tfvsjs.
Q3: tfvsjs というバンド名の由来を教えていただけますか?
【ADONIAN】: バンド名前は広東語で “頹廢 vs 精神” という意味なんだ。ただ tfvsjs と呼んでくれればOKだよ。
Q4: Anyway, your newest album, “在 zoi” is just out now! When you named it “在 zoi”, what was in your mind? Could you tell us about a concept of the record?
【ADONIAN】: Using “在 zoi” as album name came from the idea of breaking the structure of the Chinese character into “+” “-“. “在” means “present” “existence”, whereas “+” could symbolize future, while “-” could symbolize past. Our heart might be consistently downcast by the worries of the future, or the regrets from the past, but every moment is a new decision, And these decisions could shape the future and break alway from the past. The present is a new “me”.
Q4: 最新作は “在 zoi” というタイトルですが、どういった意味が込められているのですか?
【ADONIAN】: アルバム名を “在” に決めたのは 、”在” という漢字に含まれる “土” の構造を “+” と ” – “に分解するというアイデアから来たんだよ。 “在” は「存在する」「現在」を意味し、”+” は未来を、” – “は過去を象徴することが出来るね。
未来の心配や過去の後悔によって、僕たちの心は常に何かしらの愁いを帯びているかもしれないけど、すべての瞬間が新たな選択なんだよ。そして、その瞬間の決断は新たな将来を形作り、過去を壊すことが出来るんだ。新たな”自分”が存在するのが現在なんだよ。
Q5: How did you evolved, changed from your debut record “equal unequals to equal”? What was the goal of “在 zoi”?
【ADONIAN】: “在 zoi” sound darker and heavier than “equal unequals to equal”, I guess it inevitably reveals what we had gone through in Hong Kong these few years… Politics mess with our minds everyday, and affect our daily life intensely. I guess music became an outlet for us under such burden.
Musically, we explored ways of playing we never tried before, including odd time signatures with instruments intertwined in totally different patterns. The way we compose this album is very different from the previous record, which we wrote almost 90% of the material on computer before we actually play the instrument. It is not until we begin the recording when we first learn how to play the songs.
Q5: デビュー作 “equal unequals to equal” から進化、変化した点について教えてください。作品のゴールはどこだったのでしょう?
【ADONIAN】: “在 zoi” は、”equal unequals to equal” よりもダークでヘヴィーなサウンドになっていると思うな。それはね、僕たちがここ何年か香港で経験したことをどうしても反映しているからだと思うんだよ。政治は毎日僕たちの心を混乱させ、日常生活にも強く影響するんだ。そんな重荷を抱えた状況で作られた訳だから、音楽が僕たちの捌け口となった面は否めないと思うんだ。
音楽的には、以前に試したことのない領域を探索したんだ。楽器が全く違うパターンで変拍子を刻み絡み合うようなね。今作では、前作とは全く異なるコンポジションのアプローチを試みたんだよ。今回は実際に楽器を演奏する前に、コンピューターでほぼ90%を書いていたからね。レコーディングに入る前に演奏のやり方が分かっていたんだよ。
Q6: You know, I felt “在 zoi” is very diverse album. Some different styles, from Math, Post-rock, Prog, to Noise, Doom, flow all through the album seamlessly. Well, is this a Math-rock?
【ADONIAN】: As you say, it’s math rock, post rock, prog, noise, doom, or just the expression of the mess in our minds.
Q6: それにしても “在 zoi” はとても多様なアルバムですね。マスロック、ポストロック、プログからノイズやドゥームまでがシームレスに現れます。この音楽を何と表現するべきですか?
【ADONIAN】: 君が言うように、マスロック、ポストロック、プログ、ノイズ、ドゥームでも構わないし、とにかく心に浮かんだ表現で良いんだよ。
Q7: So, we have really great Math/Post-rock acts in Japan like, Lite, tricot, toe, 宇宙コンビニ. Especially, sometimes you are compared with the style of toe. And White Noise Record releases lot’s of Japanese band’s records. Have you been influenced by these bands?
【ADONIAN】: We like these bands a lot, they indeed influenced our music, but actually each of our band members listen to totally different genre of music, to be honest, we listen to Hip Hop the most when we hang out as a band.
Q7: マスロック、ポストロックという観点から見れば、日本は Lite, tricot, toe, 宇宙コンビニといったジャンルのヒーローを生んで来たと言えます。特に tfvsjs は “在 zoi” のプロダクションにもかかわった toe と比較されることも多いですが、そういった日本のバンドからの影響はありますか?
【ADONIAN】: そういったバンドは大好きだよ。実際、僕たちの音楽にも影響を与えているしね。
ただ、tfvsjs のメンバーは各自が全く異なるジャンルの音楽を聴いているんだよ。正直に言って、バンドでツルむ時は hip hop を一番聴いているかな。
Q8: How is the scene of Hong-Kong? Which is better, you are called from Hong-Kong, or from China?
【ADONIAN】: Hong Kong has a very small music scene, almost everyone knows everyone. Though I think the scene is getting better, but there aren’t that many performance opportunity as there’s only a handful of venues.
I guess culturally and politically we would like to identify ourselves to Hong Kong more than China.
Q8: 最後に香港のシーンについて聞かせてください。tfvsjs は香港のバンドですか?中国のバンドですか?
【ADONIAN】: 香港の音楽シーンはとても小さいんだよ。ほとんどみんながお互いに知り合いという感じだね。シーンの質は良くなって行っているんだけど、ライブハウスが本当に少ないからパフォーマンスの機会が限られているんだよ。
そうだな、文化的にも政治的にも、僕たちは中国のバンドというよりは香港のバンドだと思っているよ。