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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AVANDRA : DESCENDER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRISTIAN AYALA OF AVANDRA !!

“The Kevin Moore-era Dream Theater Has Had The Biggest Impact On Me, Since It’s When They Really Elevated My Soul To a Whole Different Level Of Emotion And Taught Me What Music Can Do To Really Transform You As a Person. “

DISC REVIEW “DESCENDER”

喪失、戦争、そして天災。時に芸術は悲劇の灰から降誕します。2017年に襲来した髑髏のハリケーン、マリアはプエルトリコに壊滅的な被害をもたらしました。しかしその神の所業は、皮肉にも AVANDRA のボーカリスト/ギタリスト Christian Ayala に至芸 “Descender” の偶成をも促すこととなったのです。
ハリケーンの爪痕、長期停電の困難はしかし Christian に音楽と詩歌へ没頭する常闇と情念をあてがうことにもなりました。そうして、銀灰色の憂鬱とアンビエンスに彩られた “Descender” の凛々しき純潔は、その荘厳を極めることとなったのです。
「DREAM THEATER と CYNIC の理想的な婚姻」 “Descender” を評する際、プログメタルの二傑について触れない訳にはいかないでしょう。
「Kevin Moore 時代の DREAM THEATER は僕に最も大きなインパクトを与えたんだ。僕の魂を完全に異なる感情域まで高め、人として真に変革するため音楽に出来ることを教えてくれたんだよ。だから Kevin とは何とかして音楽人生の中で共演したかったんだ。まさに彼にしか作り得ない満載の感情とアンビエンスを持ち込んでくれたね。」
Christian が語るように、Kevin Moore こそが初期の DREAM THEATER に類稀なる陰影と叙情、そして唯一無二のアトモスフィアとアンビエンスをもたらしていたことは明らかです。Kevin の脱退以降 “Lifting Shadows Off a Dream” のような冷厳でしかしどこか温もりのある暗紫色の景色を垣間見ることは叶いませんし、”Space-Dye Vest” の幽玄については語るまでもないでしょう。
AVANDRA の音楽には Kevin の天性が確かに存在しています。そしてそれ故に半ば隠棲状態の Kevin も “Derelict Minds” へのゲスト参加を決めたのでしょう。
興味深いことに、多くのリスナーが “Cynic-y” だと感じた “Derelict Minds” の印象的なリフワークは、実際は DREAM THEATER のデビュー作 “When Dream and Day Unite” がインスピレーションの源でした。CYNIC のトレードマークとなっている連続した2音、3音を繋げていくシンメトリーな音数学は、実は DREAM THEATER のデビュー作にも多数使用されています。
音質や Charlie Dominici の繊細すぎるボーカルパフォーマンスには評価が分かれるところでしょうが、”When Dream and Day Unite” に漂う蒼の叙情は比類なきロマンでもありました。そしてもちろん、CYNIC の SF を由来とするエアリーなアトモスフィア、アンビエンス。
二大巨頭の共通点と天稟をレガシーして受け継いだ AVANDRA の方程式は、プログメタルの軌跡においてむしろ遅すぎたと言えるほどに必然だったのかも知れませんね。
「DREAM THEATER, OPETH, PORCUPINE TREE を僕の “ホーリートリニティー” (聖三者) と呼ぶことにしたんだよ。」
加えて、AVANDRA の運命的な旅路は、モダンプログレッシブの領域に不可欠なコントラスト、ダイナミズムをしっかりと伴っています。DREAM THEATER の “Breaking All Illusions” を思わせるイントロが耳を惹く2部構成のエピック “Beyond the Threshold” を聴けば、温和で情感豊かな鍵盤の響きに Kevin Moore を夢想し、その起伏を帯びたシネマティックな世界線に圧倒されるでしょう。
“The Narrowing of Meaning” に漂うメランコリーとアグレッションの鍔迫り合い、ポストロックの洗礼を浴びた “Even You”、さらに “Adder’s Bite” に流れるダーククリーンとプログヘヴィーの対峙はまさに OPETH の錬金術で、現代を闊歩する女神の矜持を見せつけていますね。CULT OF LUNA の Magnus がマスタリングを担当した事実にも頷けます。
きっと、10年、20年の後、DALI’S DILEMMA の “Manifesto for Futurism” のような評価を得るアルバムなのかも知れませんね。
今回弊誌では、Christian Ayala にインタビューを行うことが出来ました。「もし僕が死んでしまっても何かを残しておきたいという気持ちからだったね。作品を作っておけば、世界に僕の “創造性” を残しておくことが出来る。バカげているかもしれないけどね。(笑) だけどそれがレコーディングやヴァーチャルスタジオテクノロジーを学ぶモチベーションになったんだ。」 どうぞ!!

AVANDRA “DESCENDER” : 10/10

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