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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SKINFLINT : BALOI】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GIUSEPPE SBRANA OF SKINFLINT !!

“No Metal Bands Were Covering African Mythology And Tales. So I Wanted To Incorporate This Element Of Our Culture Into The Music. I Feel These Tales Are The Most Important Aspect Of Skinflint.”

DISC REVIEW “BALOI”

「アフリカでは多くの人がメタルに触れる機会が少なかった。ラジオ局でメタルが流れていなかったり、自分の周りにメタルについて知っている人がいなかったりすれば、やっぱりメタルに出会うことはなかっただろう。今はインターネットが普及し、人々はより簡単に様々な種類の音楽にアクセスできるようになったからね」
モダン・メタルに宿る寛容さが羽ばたかせたメタルの種子は、今や世界中に飛散し、芽吹き、華麗な花を咲かせようとしています。モダン・メタルの生命力は実に瑞々しく、行く手を遮るさまざまな障壁を壊し、世界各地の文化を包容し、その硬質な高揚感や知性を感染させていきます。
それでも、アフリカ大陸にメタルが根付くまでには長い時間を要しました。ライブがなかったり、渡航費が高かったり、ラジオでかからなかったり、そもそもメタルの存在自体が知られていなかったりで、近年までこの場所はまさにメタル不毛の地だったのです。
「ボツワナでは、メタルをブッキングしてくれる会場やプロモーターが絶対的に不足している。多くの人は、地元にシーンがあることさえ知らない。アフリカでの旅費は非常に高く、距離も離れているしね。さらに、ライヴは週末や月末にしか行われない。そのため、ツアーは非常に難しく、ほとんどのバンドはここでツアーさえ行おうとしないんだ。ステージもPAシステムも、スタジオだって自分たちで作らないといけない。とてもDIYなんだよ」
しかし、インターネットの普及によって、アフリカでもメタルは徐々に身近なものになりました。チェニジアの MYRATH や、南アフリカの VULVODYNIA、アンゴラの BEFORE CRUSH などは世界的に注目を集め、アフリカ大陸のメタルをあのバオバブの木のようにスクスクと育てています。
それでも、この地のメタルには今でも苦労が絶えないと、ボツワナの古豪 SKINFLINT の首領 Giuseppe Sbrana はその心情を吐露します。距離的問題、設備的問題、人的問題。そんな逆境においても彼らがメタルを諦めないのは、音楽に対する情熱とアフリカの誇り、そして DIY の矜持から。
「アフリカは歴史、神話、口承伝承の豊かな大陸だ。これらの物語の多くは、主流メディアで取り上げられたことさえなかったし、他のメディアでもまったく伝えられてこなかった。当時、こうした物語を取り上げるメタル・バンドは皆無だった。だから私は、私たちの文化のこの素晴らしい要素を音楽に取り入れたかったんだ。アフリカの物語は SKINFLINT の最も重要な側面だと感じているよ」
そう、彼らがメタルで描くのはアフリカの伝統とプライド。彼の地に残る神話や伝承を風化させず、世界中に伝えたい。その想いが、モダン・メタルの生命力、包容力、感染力と完璧にシンクロして彼らの最新作 “Baloi” は生まれました。アルバムでも屈指の名曲、”Sangoma Blood Magic” は、アフリカのシャーマンでヒーラー、サンゴマのストーリー。
身体的、精神的、スピリチュアル的な治療だけでなく、戦う人々を守ったり、迷子の牛を見つけたり、占いをしたり。薬草や動物の皮などを使って人々を癒すサンゴマ。西欧の医術が広まった今でもサンゴマの存在は大きく、人口の半分以上の人々がさまざまな困難でサンゴマを頼りにしています。それはきっと、日本の神道、八百万の神と同様にサンゴマが祖先と、伝統と、大地とつながっているから。
そんなズールーの秘術を宿した SKINFLINT のメタルは、MOTORHEAD のごとくパンキッシュに爆走し、VENOM のように凶暴で、SOULFLY のように伝統のリズムを体で受け止めます。ある意味、彼らのメタルも癒しであり、儀式。そうして、そのスピリチュアルなメタルのブラッド・ダンスはやがて世界を席巻するはずです。
今回弊誌では、Giuseppe Sbrana にインタビューを行うことができました。「私のメッセージは、欧米の検閲、キャンセルカルチャーによって、君たちの芸術が破壊され、本来の表現が変わってしまうことを決して許さないでほしいということ。日本はとてもユニークでクリエイティブな国なのだから」 どうぞ!!

SKINFLINT “BALOI” : 9.9/10

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