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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DAVE KERZNER : STATIC】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAVE KERZNER !!

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One Of The Most Creative Artists In The Progressive Rock World Now, Dave Kerzner Becomes A Bridge From Retro to Modern, With His Most Ambitious Work, “Static” !!

DISC REVIEW “STATIC”

レトロとモダン、そして米国と英国の架け橋を演ずる、マイアミのプログレッシブコンダクター Dave Kerzner が濃密なるロックオペラ “Static” をリリースしました!!”アクセシブル” を座右の銘とする天分豊かなコンポーザー/マルチプレイヤーは、現代社会の混沌と真なる幸福の追求をそのキャッチーなサウンドデザインで雄弁に語り尽くします。
近年のプログシーンで、Dave ほど八面六臂な活躍を見せるタレントはいないでしょう。Steven Wilson のマスターピース “Grace For Drowning” にサウンドデザインで貢献し、Steve Hackett の “Genesis Revisited II” にも参加。その GENESIS、Phil Collins の息子 Simon Collins と結成した SOUND OF CONTACT でベストニューカマーを受賞する一方、MOSTLY AUTUMN の才媛 Heather Findlay と結成した MANTRA VEGA でも高い評価を勝ち取ります。
何より、亡き Keith Emerson もゲスト参加した 2014 年のソロデビュー作品 “New World” で提示した壮大なコンセプトと世界観、美麗なメロディーと緻密なデザインは、多くのプログロックファンを魅了したのです。
二年の月日を経て届けられた新作ソロアルバム “Static” も同様に近未来の重厚なコンセプトを内包しています。ただし、”New World” が砂漠化した世界での冒険譚、躍動する物語であったのに対して “Static” はより人間の内面へと深くフォーカスしているのです。
Dave は短絡的かつ享楽的な SNS や TV、ドラッグやアルコールに捌け口を求める現代社会を嘆き、 「最近は誰もが自分が正しいと思う傾向があって、とにかく自分の意見を主張するね。僕たちすべてが偽善者であることも、不快な真実の一つだよ。僕だって時には偽善者だし。それはほとんど不可避なことに思えるよ。」 とその混沌を自らの罪も交えて語ります。しかし同時に、その事実を認識し、日常生活のバランスを考慮することから幸福の価値を変えていこうとも提案しているのです。
妖しくも印象的なプレリュードで幕を開けるアルバムは、”Hypocrites” で人間のエゴイスティックな内面を露わにします。オルタナティブなエッジとダークなムードはまさにアルバムの皮肉なコンセプトを体現し、同時に甘美で気怠いメロディーがリスナーをディストピア “遊園地の街” へと誘います。
Dave Gilmour が憑依したかのような Kerzner のボーカルに、幾重にもコーラスをレイヤーする巧みな手法は Alan Parsons にも似て、まるで砂糖のコーティングの如くスイートでスーパーキャッチーな瞬間をもたらしていますね。
Dave のピアニストとしての実力が遺憾無く発揮された “Static”, “Trust” では、彼のソフィスティケートされた作曲術、スキルが自身の理想と呼応し見事に開花しています。あくまでプログロックの枠組みの中で “アクセシブル” 受け入れ易い音楽性や歌詞に拘るコンポーザー Dave Kerzner は同時に、アルバムを映画に見立てて全体のムードにプライオリティーを置くある意味ディレクター的なポジションをも兼ねています。
「実際、より明るく高揚した楽曲を何曲か、ただフィットしないからという理由で外さなければならなかったくらいさ。」 と語る通り、音楽監督が望んでメランコリックな一面を強調した美麗なる調べのバラードは、アルバムを一つのアートと捉えた GENESIS や PINK FLOYD の創造性と Steven Wilson や ANATHEMA のアトモスフィア、そしてコンテンポラリーなメインストリームの魅力を同時に従えシーンの過去と現在の架け橋となっているのです。勿論、チェロを効果的に使用したドリーミーな “Trust” では特に John Lennon へのリスペクトが深い愛情と共に表層化していることも記しておくべきですね。
同様に、BIG BIG TRAIN の Nick D’Virgilio と GENESIS の Steve Hackett がゲスト参加した “Dirty Soap Box” は顕著ですが、アルバムを通してエレクトロニカサウンドやノイズを縦横無尽に張り巡らせ、効果的にディストピアを演出するそのアイデアからも彼の豊かなイマジネーションを感じ取ることが出来るのです。
75分の壮大なるプログレッシブオペラは、17分に及ぶラストエピック “The Carnival of Modern Life” でその幕を閉じます。よりカオティックに “Hypocrites” のテーマへと回帰する実にプログロックらしいこのクローザーを聴けば、メロディー、ハーモニー、オーケストレーション、ダイナミズム、そしてエモーションをどれ一つ欠くことなく細部にまで情熱と知性を注ぐ Dave の類稀なる才能が伝わるはずです。「僕は現実を砂糖でコーティングするような真似はあまりしたくないんだ。」と語る Dave の音楽はどこまでも真摯で正直にその進化を続けていくのです。
今回弊誌では Dave Kerzner にインタビューを行うことが出来ました。様々な音楽プロジェクトを抱えながら、二つの会社で CEO を務める多能な才気。どうぞ!!

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DAVE KERZNER “STATIC” : 9.9/10

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