EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RYAN CLACKNER OF CRESTFALLEN DUSK !!
“It Is Worth Noting That Even When Bleak And Miserable, The Blues Does Tend To Be Life-Affirming Though The Opposite Tends To Hold True For Black Metal, Which Is a Very Powerful Contrast.”
DISC REVIEW “CRESTFALLEN DUSK”
「このアルバムのテーマは、アメリカや南部の神話的な記憶の中にある遠い場所を呼び起こし、ブラックメタルとブルースの正当なクロスオーバーが可能だと思われる場所で、歌詞的にも視覚的にも両者を融合させるというものだった」
モダンメタルを多様性と定義し、メタルに備わった寛容さを追い求めてきた弊誌。サブジャンルと文化の掛け算によるメタルの細分化、そしてその可能性はまさに無限大です。ただし中には、その可能性を逆手に取ったセルアウトの野心が見え隠れすることも事実。それでもなお、いくつかの新しいバンドは、夜の丘に立つ灯台のように、宇宙に瞬く一等星のように光り輝いています。
「ヴィンテージ・ギターも使って、いつものメタルらしいギターサウンドを排除して、古くて埃っぽいけどむせ返るような風景を想起させ、僕のアイデアがまだしっかり自立しているかどうかを確認しようとしたんだ。ブラックメタルとブルースの対比を際立たせ、ユーモアたっぷりにするため、ギター以外は基本的にすべて歪ませたんだよね」
ブラックメタルとブラック・ミュージックを融合させた魅力的な音楽といえば、おそらく多くのリスナーが ZEAL & ARDOR を想像するはずです。ただし、ZEAL & ARDOR a.k.a. Manuel Gagneux の場合は、ブラックメタルと、アメリカ南部を中心としながらも黒人の音楽全般という幅広いコンセプトが先にありました。
CRESTFALLEN DUSK の Ryan Clackner の場合は、そもそも大学でアメリカ南部の音楽と歴史を研究し、出発点がブルース、ジャズ、アメリカ南部の古いカントリー/フォーク音楽にあります。よって、このバンドではまずあの山と森と砂と埃と酒と音楽のアメリカ南部、ミシシッピの悪魔を召喚しつつ、その場所にブラックメタルの狂気を加えていくことにしたのです。
つまり Ryan の言葉を借りれば、「このアルバムは、他のブラックメタル・プロジェクトに広く見られるカントリーやフォークの影響から離れ、ジュニア・キンブローやR.L.バーンサイドのような巨人の影響を受けた強いヒルカントリー・ブルースでブラックメタルを再創造しようとする試み。全てのリズムギターは1958 Fender Musicmaster で録音されている」
つまり、もっと狭い場所の音楽をとことんまで深く追求してブラックメタルで煮詰めた地域密着、ど田舎のどニッチなブラックメタルと言えるのです。
「昔のブルース・アーティストたちは、ヒル・カントリーであろうと他の場所であろうと、基本的に抑圧されてもどんな場所でも自分たちの居場所を見つけることができた。そして、殺伐とした悲惨な状況にあっても、命を肯定する傾向があったことは注目に値するよ。これはブラックメタルとは真逆の傾向で、それが非常に強力なコントラストになる」
興味深いのは、同じ悪魔の音楽でありながら、Ryan にとってブルースとブラックメタルは真逆のものであるところ。ど田舎の寂寞、奴隷としての抑圧、惨めな貧困をかかえながら、ヒル・カントリーのブルースマンたちは、決して絶望にとらわれることはありませんでした。むしろ、どんな悲惨な状況にあっても、彼らは生に執着して命の音楽を奏でました。
一方で、ブラックメタルは同様に社会から抑圧され、孤立した人たちの集まりだったかもしれませんが、時には自らの命を断ち、時には他人を殺め、さらには教会を燃やしてその鬱屈を刹那に晴らしたと言えるのかもしれません。そんな “生” に対する真逆の考え方、執着と刹那のコントラストが見事に “Crestfallen Dusk” の世界には描かれているのです。つまり、この再創造は、ヒルカントリーのブルースをブラックメタルの “言語” に翻訳したものなのです。
ローファイで乾いた南部の景色に、ブラストビートが機械兵器のように突き刺さる様は、さながら南北戦争のダンスホールに集結したサタンのお祭り騒ぎのようでもあり、山と砂漠、鬱蒼とした森を照らす大きな月の下に潜むホンキートンクな悪魔の踊りのようでもあり。ヴィンテージ・ギターの息吹に黒々としたメタルがしばしば散乱し、爪を立て、ベースが雪崩のように鳴り響き、ドラムは砂嵐の暴力で命の雫に絶望感を叩きつけていきます。ブラックメタルであることは間違いないのですが、それにしても、今までのものとは全く違う、まさに悪魔の契約。
今回弊誌では、Ryan Clackner にインタビューを行うことができました。「アラバマ出身の大学時代の友人を通じて、ヒルカントリーのブルース・ミュージックに目覚めたんだ。まだ完全には解明されていないけど、ヒルカントリーは僕の人生を変えたんだ」 どうぞ!!
CRESTFALLEN DUSK “CRESTFALLEN DUSK” : 10/10
INTERVIEW WITH RYAN CLACKNER
Q1: First of all, what kind of music were you listening to, when you were growing up?
【RYAN】: In my parents house they were always playing jazz, classical music, the blues and Southern rock.
Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?
【RYAN】: 両親はいつも、ジャズ、クラシック、ブルース、サザンロックを聴いていたよ。そんな家庭で育ったんだ。
Q2: I understand you are also a historian of Southern music, right? Why do you do your research?
【RYAN】: Calling myself a historian would feel very grandiose and pompous but I do know a bit about American music in general. I started exploring Southern folk music in college after being exposed to the black work songs from the early 20th century via the jazz pianist Jason Moran who I had been studying with at the time, as well as taking an interest in the banjo during the end of my college years. I was a jazz major in college which introduced me to a ton of music, much of which I’m still processing to this day.
Q2: あなたはアメリカ南部の音楽の研究家でもあるそうですね?
【RYAN】: 自分を歴史家と呼んでしまうと、とても大げさで尊大な感じがするけど、アメリカ音楽全般について少しは知っているつもりだよ。大学時代、当時習っていたジャズ・ピアニストの Jason Moran を通じて20世紀初頭の黒人労働歌に触れ、南部のフォーク・ミュージックを探求し始めたんだ。
あと、大学時代の終わりにはバンジョーに興味を持ったよ。大学ではジャズを専攻していたから、たくさんの音楽に触れ、その多くは今もなお追求し続けているものなんだ。
Q3: Still, Crestfallen Dusk cracked me up! It’s a really incredible album! Frankly speaking, what made you decide to combine blues and black metal?
【RYAN】: Truthfully I just felt that it needed to be done. I was turned on to the Hill Country blues music world through a friend in college from Alabama; that was 20 years ago already. It changed my life in ways that still haven’t totally panned out yet. Also, there is another album of Crestfallen music already written, by the way. I also wanted to see it happen from an American person and wanted to see if I was up to the challenge as blues music in general is a little bit out of my wheelhouse.
Q3: それにしても、CRESTFALLEN DUSK の音楽は素晴らしいですね!率直に、ブルースとブラックメタルを融合しようと思ったきっかけは何だったんですか?
【RYAN】: 正直に言うけど、そうする必要があると感じていたからなんだよ。アラバマ出身の大学時代の友人を通じて、ヒルカントリーのブルース・ミュージックに目覚めたんだ。まだ完全には解明されていないけど、ヒルカントリーは僕の人生を変えたんだ。
ちなみに、CRESTFALLEN DUSK の音楽はすでにもう1枚のアルバムを書いてある。そうやってまた、アメリカ人からの実現を見てみたかったし、ブルース・ミュージック全般の演奏が僕は少し苦手なので、自分がチャレンジできるかどうか試してみたかったからね 。
Q4: Blues and black metal are totally different in time and place of their appearance, but both are considered the devil’s music. And And both were the music of rebellion of the oppressed and marginalized minority, weren’t they?
【RYAN】: Rebellion certainly, and Satan, whether mythologically or in a more literal sense, certainly. As far as being oppressed/marginalized goes, I’m not sure black metal can really claim that one for the most part but certainly the blues artists of old in basically any locale they found themselves in, whether Hill Country or elsewhere. It is worth noting that even when bleak and miserable, the blues does tend to be life-affirming though the opposite tends to hold true for black metal, which is a very powerful contrast.
Q4: ブルースもブラックメタルも、音楽や生まれた場所、時間は全く異なりますが、両方とも社会から抑圧され孤立したものたちの反抗の歌であることは同じですよね?
【RYAN】: 確かに両者とも反抗的で、神話的であれ、より文字通りの意味であれ、両者ともにサタンも確かに存在した。しかし、ブラックメタルは本当に抑圧され、孤立していたのだろうか?大部分の人たちは疑問だよね。
一方で、昔のブルース・アーティストたちは、ヒル・カントリーであろうと他の場所であろうと、基本的に抑圧されてもどんな場所でも自分たちの居場所を見つけることができた。そして、殺伐とした悲惨な状況にあっても、命を肯定する傾向があったことは注目に値するよ。これはブラックメタルとは真逆の傾向で、それが非常に強力なコントラストになる。
Q5: I once interviewed Zeal & Ardor, and he told me that he started incorporating southern music into black metal when he was told to mix “black” metal with “black” music. Does Zeal & Aldor’s approach and philosophy influence you?
【RYAN】: No but I certainly get what he’s saying. I’ve only listened to them a few times though I would like to explore their music further.
Q5: かつて私は ZEAL & Ardor にインタビューを行ったことがあるのですが、彼が南部の音楽とブラック・メタルを融合したきっかけは、”黒” と “黒” を掛け合わせてみろよとネットで煽られたからでした。
ZEAL & ALDOR の音楽や哲学から影響された部分はありますか?
【RYAN】: いや、影響は受けていないよ。でも確かに言ってることはわかるよ。まだ数回しか聴いていないけど、もっと彼らの音楽に触れてみたいと思っているんだ。
Q6: If you’ve ever taken a little nibble at the blues, you’ll know that Crestfallen Dusk’s blues soul isn’t just a desire to make unusual metal, it’s a full-blown thing. Is the lack of metal-like distortion on the guitars also because you wanted to keep the blues alive?
【RYAN】: Yes. It’s why I used my vintage guitar as well, to try to evoke an old and dusty yet sweltering landscape devoid of my usual guitar sounds and see if the ideas are still solid enough to stand on their own. Humorously, we distorted basically everything except the guitars.
Q6: 少しでもブルースに造詣があれば、CRESTFALLEN DUSK の音楽が、変わったメタルを作りたいという陳腐な目的ではなく、本物のブルース魂を持っていることに気づくはずです。
メタルらしいディストーション・ギターを最小限にしているのも、ブルースを際立たせるためですよね?
【RYAN】: そうなんだよ。だからヴィンテージ・ギターも使って、いつものメタルらしいギターサウンドを排除して、古くて埃っぽいけどむせ返るような風景を想起させ、僕のアイデアがまだしっかり自立しているかどうかを確認しようとしたんだ。
さっきの対比の話を際立たせ、ユーモアたっぷりにするため、ギター以外は基本的にすべて歪ませたんだよね。
Q7: And the artwork on the album is quite beautiful! What is the theme of the artwork and lyrics?
【RYAN】: The theme is simply to conjure a remote place in the American/Southern mythological memory and merge it lyrically and visually wherever a legitimate crossover would appear to be possible. The album covers are by a great East Tennessee photographer named Larry Horn and were taken in remote places in the Deep South and the large majority of the lyrics were written as poetry by my drummer Zac Ormerod who plays in Primeval Well, Vile Haint, StumpTail, etc. with me.
Q7: アートワークも美しくて大好きですよ。アルバムのテーマと関連はあるんですか?
【RYAN】: このアルバムのテーマは、アメリカや南部の神話的な記憶の中にある遠い場所を呼び起こし、ブラックメタルとブルースの正当なクロスオーバーが可能だと思われる場所で、歌詞的にも視覚的にも両者を融合させるというものだった。
アルバムのジャケットはイーストテネシーの偉大な写真家ラリー・ホーンによってディープサウスの人里離れた場所で撮影され、歌詞の大部分は僕と一緒に Primeval Well, Vile Haint, StumpTail などで活動しているドラマー Zac Ormerod によって詩として書かれたものなんだ。
Q8: Many readers and listeners are young and may not know the blues. What kind of blues would you recommend as Gateway?
【RYAN】: Hill Country of course!
Q8: 最後に、若い読者にオススメのブルース・ミュージックを教えてください。
【RYAN】: ヒルカントリーに決まってる。ヒルカントリーを聴け!