EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RIYO OF KOOCHEWSEN !!
Prog meets J-POP !! One of the brightest hope from Japan, KOOCHEWSEN has just released their great 2nd mini-album “Sukoshi Fushigi” !!
DISC REVIEW “SUKOSHI FUSHIGI”
70年代のプログロックとJ-POP/歌謡曲を融合し、見事現代に蘇らせた才能溢れる4人組 クウチュウ戦 が 2nd ミニアルバム “Sukoshi Fushigi” をリリースしました!!
最近の J-POP/ROCK シーンには ゲスの極み乙女 や パスピエ など、マスロックだったり、少しプログレッシブだったりする演奏と、なめらかでポップなサウンドを掛け合わせてセルアウトしたバンドが少なくありませんね。クウチュウ戦の音楽も確かにプログとポップの融合です。しかしそこにはもっと直接的で本質を捉えたプログロックからの影響が伺えます。
アルバムオープナー “光線” はまさに クウチュウ戦 を象徴するような楽曲です。YES や KING CRIMSON を想起させる、スリリングで複雑な所謂”キメ”のフレーズで幕を開けながら、楽曲は光の速さでその色を変えます。伸びやかだったりハスキーだったり、状況に応じて的確にその声質を使い分ける Vo/Gt、そしてメインソングライターのリヨさんが歌い上げる、優しくてどこか懐かしいメロディーは70年代や80年代の J-POP に通じますね。そしてその2つの要素が楽曲の中でカラフルに溶け合い、クウチュウ戦 を唯一無二のバンドに昇華させていると感じました。スリルとポップ。もしかしたら、WINGS の “Live and Let Die” に方法論は近いのかも知れません。
キーボード担当のベントラーカオルさんが手がけた “雨模様です” も非常に重要な楽曲だと思います。はっぴいえんどの遺産に再度光を当てるような試みが見事に成功していますね。後半の転調が実に効果的。「ですます調」を歌詞に使用しているのもポイントで、これははっぴいえんど、松本隆さんの歌詞に多く見られる手法です。さらに言えば、90年代にはサニーデイ・サービスがその手法を踏襲しており、彼らを発掘した渡邊文武氏がクウチュウ戦も手がけているのは偶然とも思えませんでした。
他にもロックの原衝動を喚起させる “台風” は John Frusciante も慄くようなプリミティブとインテリジェンスを内包したギターワークが必聴ですし、井上陽水さんが乗り移ったような “エンドレスサマー” での歌唱も見事。全曲にフックとテーマを備えた素晴らしいミニアルバムに仕上がっていますね。
今回弊誌ではリヨさんにインタビューを行うことが出来ました。”世直し”、”世界を浄化したい”・・・わかります。
KOOCHEWSEN: “SUKOSHI FUSHIGI” 9.6/10
【INTERVIEW WITH RIYO】
Q1: 本誌初登場です!! まずは クウチュウ戦 という少し不思議な名前の由来を教えて下さい。
【RIYO】: バンド名の由来ってよく聞かれるけどないんですよね。ユミコと2人でなにか得体の知れないかっこいいバンド名を考えようと思って辿り着きました。由来を聞かれたとき面倒なのでいろいろ後付けで考えました。押井守のスカイクロラの影響だとか、空中で戦うようなスリリングな演奏をしたかったとか。でもやっぱりどれもしっくりきません。
Q2: リヨさんはバンド結成後に海外を放浪されていたそうですね。その旅で見つけたものは現在のバンド活動に活かされていますか?
【RIYO】: 言葉にするのは難しいけど影響は大きいと思います。闇雲に尖っていただけの20歳の俺は世界のいろんな部分に触れることで、雑にいえば丸くなったというか優しくなれたというか。とにかくいろいろなことを受け入れました。結果2016年のリスナーに寄り添ってみようと思えるようになりました。
Q3: 2nd ミニアルバム “Sukoshi Fushigi” がリリースされましたね。”Sukoshi Fushigi” の頭文字は SF です。藤子・F・不二雄 さんが SF を Science Fiction ではなく「少し不思議」と解釈していたのは有名な話ですが、タイトルはその辺りと関連するのでしょうか?
【RIYO】: 関連しています。長いことSFロックバンドと名乗ってきたクウチュウ戦ですが、これを単なるサイエンスフィクションバンドと解釈されるのはちょっと嫌だなって思ったんです。SFというジャンル自体単なる疑似科学の領域を既に超えていて、フォースみたいな得体の知れないヒューマンパワーがあったりするじゃないですか。
それはクウチュウ戦のコンセプトにも言えて、単なる「作り物の科学バンド」だと説明不足なんですよ。もっと科学のパラダイムを越えた近未来感というか、どこかマジカルでファンタスティックな。
Q4: アートワークからは80年代のレトロフューチャーな世界観が伝わります。 あの時代を実際にご経験されている訳ではないと思いますが、現代に対するアンチテーゼやあの時代への憧れのような気持ちがあるのでしょうか?
【RIYO】: 80年代に対する憧れはあります。俺は生まれてなかったから詳しいことは知らないけれど、音楽にはその時代の空気が真空パックされていることがたまにあって、音楽を通してその時代を追体験することはできるんです。そんな感じで追体験したときに「なんてムードのあるメロウな時代なんだろ」と思ったりします。
現代に対するアンチテーゼはあまり前面にだしたくないんですよね。今の時代には音楽にもそれ以外にもいろいろと不満はあります。誰かの歌にありました「なぜか町には大事なものがない それはムード」みたいな。あまりにも世界がマテリアリスティックになってきていると思う。特に日本は。
でもこの時代に生まれたのが俺のカルマなんで、立ち向かわなきゃいけないんです。言うなれば世直し。世界をほんの少し浄化すること、それが俺のカルマです。
Q5: クウチュウ戦 の音楽は二面性を持っていると感じました。70年代のスリリングなプログロック的要素と、古き良きJ-POPサウンドが楽曲に混雑していますね。そこが私のようなプログロックファンには堪りません。
ただ、一般的にはプログロックには難解というイメージがありますよね?J-POPパートだけでも充分に楽曲として成立する素晴らしいメロディーとクオリティを誇っていると思うのですが、なぜプログロック的要素を加えるようになったのでしょう?
【RIYO】: プログレってキャッチーだと思ってるんですよ。クリムゾンもジェントルジャイアントもポップスとして聴いてたんだと思います。だからキャッチーな曲が要求される今の状況でもがんがんプログレみたいなリフをぶち込んでいけるんです。
後は単にイントロがあってAメロ~サビみたいなのって飽きちゃうんですよ。つまんない。おもしろがりながらこれからも音楽を続けて行きたいです。
Q6: これほどまで70~80年代のプログロック / J-POP に傾倒している若いアーティストはなかなかいないと思うのですが、どういったきっかけで聴き始め、どのように咀嚼して行ったのですか?
【RIYO】: 最初のきっかけは親でした。父が井上陽水、母がさだまさしのファンで小学生の頃、ひたすら聴かされてきたんです。このお二方の音楽は今でも俺の芯になっていますね。
それから高校生の時、街の図書館でYESのベストアルバムを借りて聴き、「燃える朝焼け」に衝撃を受けたんです。当時の日本のバンドがなんだか物足りなくて、いろんなバンドを聴き漁っていた頃でした。
その後は大学に入り順調にプログレオタクの道を進んでいきました。
Q7: “Sukoshi Fushigi” の歌詞には太陽、台風、雨、雲など自然を題材にしたものが多いですよね?特に太陽はアルバムの最初と最後に出てくるキーワードですが、特別な思い入れのようなものがあるのでしょうか?
【RIYO】: これは本当に偶然なんですよね。レコーディング時に溜まっていた曲の中からベストな6曲を選んだだけなんです。いろんな方に指摘されてはじめて気づきました。でもひとつ言えるのが、俺が地球大好きってことです。
Q8: “光線” のMVにはキュウソネコカミ、クリープハイプやゆるめるモ!を手がけたヒットメーカー、加藤マニ氏を起用しています。最近のシーンは、一風変わっているバンドにも充分にセルアウトするチャンスがあると思いますが、売れるということについてはどう思っていますか?
【RIYO】: 極論を言えば、売れなきゃ意味なんてないんです。俺を含め大勢のリスナーが聴くのは売れている音楽、あるいは売れた音楽。ほんのりと頭にある“世界を浄化したい”という野望も人に聴かれなかったら達成されることはないでしょう。まぁ大して売れてない今は今で楽しく生きてますけどね。