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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【A-Z : A-Z】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARK ZONDER OF A-Z !!

“The Main Focus Was Songs And Big Catchy Choruses. Nothing Better Than a Catchy Sing-Along Chorus.”

DISC REVIEW “A-Z”

「大衆にアピールしつつ、自分たちらしさも忘れない。それが当初からの目標。主な焦点は歌とキャッチーなコーラスだった。 そういうことをするバンドは、たいてい世界で一番大きなバンドだ。でも、このバンドで演奏しているメンバーなら、同時に素晴らしい音楽性が光るし、プログの人たちにもアピールできると思ったんだ。キャッチーなシンガロング・コーラスほど素晴らしいものはないからね」
FATES WARNING, WARLORD のドラマーとして名を馳せた Mark Zonder が2020年初頭に新バンドの計画を立てた時、彼は非常に明確なビジョンを持っていました。それは、ビールのコマーシャルや車のコマーシャルで使えそうな音楽。ただし、なにもポップスやヘアメタルが作りたかったわけではありません。これまでのキャリアを活かした洗練された音楽パートを保ちつつ、ハーモニーやメロディー、ビッグなフックを最優先に取り組むことにしたのです。なぜなら、それこそが 「リスナーの大多数が求めるものだから」。
洗練された知性とコマーシャルな大衆性の両翼をどちらも羽ばたかせるために選んだメンバーは極上でした。Steve Vai/ RING OF FIRE のベーシスト Philip Bynoe、ARABESQUE などで知られるギタリスト Joop Wolters、先ごろ美しきリーダー作を発表したキーボーディスト Vivien Lalu。そして最後のピースとなる “歌” を Mark が探した時、そこに降臨したのはかつて FATES WARNING で苦楽を共にした名シンガー Ray Alder だったのです。
「彼がコマーシャルな音楽に夢中になっていることは以前から知っていたし、何より彼はこの種の音楽を理解して、いつもとてもコマーシャルなポケットの中のグルーヴで歌ってくれると思っていたんだ」
A-Z というバンド名は Alder Through Zonder の意味。そこにはもちろん、悠久の時を超えたリユニオンの浪漫も込められていますが、それ以上に名前でバンドの音楽を限定してリスナーの数を決めてしまいたくないという強い想いが存在します。例えば、ドラゴンや剣を題材にすればメタルのリスナーを、大自然や宇宙をテーマにすればプログのリスナーをある一定数は取り込めるでしょうが、彼らはリスクを犯してでもそんな狭い檻を飛び出したいのです。
「個人的にはこういう大衆受けするヒット曲の音楽の方がずっと好きだったんだ。”Perfect Symmetry” の “Through Different Eyes” で、FATES WARNING の商業的な分野での発展が見られるとあの時思ったんだよな。あのドラムのパートは、誰もがついていけるような素晴らしいグルーヴとフィーリングを作り上げているよ」
とはいえ、これが FATES WARNING という運命的な夢の続きであることも事実。以前 Daymare Recordings からの再発盤のライナーにも記したとおり、FATES WARNING はある種カメレオン的な性格を有していて、時と場所を選びながら様々な方向に振れていったのですが、ビルボード20位という結果が示すとおり “Parallels” は最も異質で最もコマーシャルな作品でした。疑いようもなく、QUEENSRYCHE の大成功にも影響を受けていたでしょう。
コンパクトで洗練されていて知的でメロディアス。以降、Mark はアーティスティックな方向に進む FATES WARNING にある種の違和感を抱いていたのでしょう。つまり A-Z は “もし FATES WARNING が商業的な成功を追いかけていたら?” という If の世界を具現化したスーパーグループでもあるのです。
興味深いことに、ここでの Ray Alder は FATES で見せるハイパーな歌唱を捨てて、Harry Hess のようなハーモニー、メロディー、声質のアプローチを選択しています。加えて、名手たちのツボを押さえたテクニカルな演奏、洗練された作曲術によって、開幕から HAREM SCAREM や MILLENIUM を想起させるプログレッシブ・ハードの目眩く世界が展開されていきます。ただし、そこだけに終わらないのがこのバンドの恐ろしいところで、Vai 時代の ALCATRAZZ, TOTO, 80年代の YES に RUSH といったジャンルを超越したまさにロックの A-Z な色彩の妙がアルバムを通して展開されていくのです。
どの楽曲にも、オッ!と感じる旋律やウッ!と拳を握りしめるフックが必ず内臓されているのがミソ。結局、複雑極まる音楽でも単純明快な音楽でも、メロディーが死んでしまっては意味がありません。そうして英雄たちの邂逅は、FATES WARNING 夢の続きを確信させる3連打で幕を閉じるのです。
今回弊誌では、Mark Zonder にインタビューを行うことができました。「DREAM THEATER は “Pull me Under” が MTV でとてもプッシュされたからね。その後メジャーレーベルの助けも借りて成功を収めたんだ。もちろん、彼らは自分たちのやり方を貫き、とても努力した。 だけど同時に、ビデオ再生やメジャーレーベルの力、リソースも非常に役立ったのはたしかだよ」どうぞ!!

A-Z “A-Z” : 10/10

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