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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BELL WITCH & AERIAL RUIN : STYGIAN BOUGH VOL.1】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DYLAN DESMOND OF BELL WITCH & AERIAL RUIN !!

“Playing With a Guitar Was an Interesting Experience Because It Had Been So Long! Often Times I Try To Write Guitar And Bass Parts To Play At The Same Time On The Bass, But Having an Actual Guitar Allowed Room For Harmonies In The Upper Registers.”

DISC REVIEW “STYGIAN BOUGH VOL.1”

「今回は AERIAL RUIN とのスプリットではなく、完全なコラボレーションをしようと決めたんだ。Erik はこれまで僕たちのフルレングスアルバムの全てに参加していて、彼が加わった曲にはほとんどバンドそのものとしての魅力があると感じたからね。彼が最初に歌った曲が土台になっているという考えで、新しいバンドを作ってみてはどうだろうか?と思ったのさ。」
型破りなベース/ドラムスのデュオで、型破りな83分に及ぶ生と死の合わせ鏡 “Mirror Reaper” をリリースした BELL WITCH。沈鬱で思索を伴う葬送のドゥームメタルにおいて、参列者を陶酔の嘆きに誘うその呪われたスケール感は異端の域さえ遥かに超えています。
ただし、ベル家の魔女の重く厳粛なポルターガイストにとって、AERIAL RUIN こと Erik Moggridge がこれまで果たした役割は決して少なくはありませんでした。すべてのレコード、特に “Mirror Reaper” において Erik の仄暗きフォークの灯火は、バンドの神秘に厳かな微睡みをさえもたらしていたのですから。
そうして遂にフューネラルドゥームの極北とダークフォークの異彩が完全に調和する闇の蜜月 “Stygian Bough Vol.1” は世界にその孤影をあらわしました。
「Erik が BELL WITCH にはじめて参加したのは2012年の “Longing” からで、彼は “Rows (of Endless Waves)” の最後のパートを歌っているんだ。そしてあの楽曲のテーマは、世界に現れ破壊しようとしている、海に宿る幽霊や霊のようなものを扱っていたんだよ。Erik はこのテーマを “Stygian Bough” の歌詞でも継続していて、それがアートワークにも反映されているんだ。」
アルバムタイトルの “Stygian Bough” とは、英国の社会人類学者ジェームス・フレイザーの著書 “The Golden Bough” “金枝篇” に端を発しています。
人間の王殺し、権力の移譲を社会的、宗教的、神話的観点から比較研究した長編は、コロナ危機を反映していないとはいえ、現在のアメリカにこれほど問題意識を重ねる Dylan とバンドの深層心理を当然ながら投影しているはずです。語られるのは権力を巡り世界を破壊しかねない、王の亡霊と司祭、そして人類の強欲の物語。
「このアルバムの制作をはじめた時、僕たちは ULVER の “Kveldssanger” を参照して引き合いに出したんだ。あとは ASUNDER の “Clarion Call”、そして CANDLEMASS の “Nightfall” だね。」
ギター/ボーカルの Erik が全面的に加わることで、BELL WITCH の “ノーマルな” 作品群とは明らかにその出発点が変わりました。”The Bastard Wind”, “Heaven Torn Low”, “The Unbodied Air”。20分づつ3つの楽章に分かれたアルバムは、普段の葬送曲よりもテンポは増し、旋律は色彩を帯びて、確実に感傷的でエモーショナルな海風を運びます。
「ギターと演奏するのは久しぶりで、面白い経験だったよ。というのも、僕はギターとベースのパートを書いてそれをベースで同時に演奏しようとすることが多いからね。だけど今回は、実物のギターをバンドに組み込むことで高音域のハーモニーにも余裕が生まれたわけさ。」
ギター、和声との邂逅は、すべての音域を司る Dylan のベースラボラトリーにも変化をもたらしました。6弦から7弦へスイッチし奈落のような低音と深々たる残響を引きずりながら、高音域ではより自由にメロディアスな演奏を許されています。フレットに叩きつける右手と左手のタップダンスは、一層熱を帯びて激しさを増す一方でしょう。
Jesse Shriebman は、スペースが狭まった分だけ普段よりも手数を抑え、リズム楽器本来の役割を忠実に果たしながら、一方で荘厳なピアノとオルガンのアレンジメントに心血を注ぎ、煉獄のテクスチャーに多様性を導きました。そしてもちろん、Erik が紡ぐダークフォークの仄暗き幽玄はアルバムの真理です。
生と死の境界、権力の腐敗、人類による地球支配。光と陰が交差する新たなドゥーム世界は、BELL WITCH と AERIAL RUIN によって描かれます。この寂寞の叙情詩は、PALLBEARER が持つプログレッシブな革新性とはまた異なるベクトルの進化でしょう。
今回弊誌では Dylan Desmond にインタビューを行うことができました。「PRIMITIVE MAN との日本ツアーは素晴らしかったよ!COFFINS とプレイできたこともね。彼らはレジェンドさ!」2度目の登場。どうぞ!!

BELL WITCH & AERIAL RUIN “SATYGIAN BOUGH VOL.1” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BELL WITCH : MIRROR REAPER】2017 X’MAS SPECIALL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DYLAN DESMOND OF BELL WITCH !!

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Seattle Based Doom-duo, Bell Witch Takes You Poetic And Philosophical Deathly Journey With Timless Masterpiece “Mirror Reaper” !!

DISC REVIEW “MIRROR REAPER”

シアトルに居を置くベース/ドラムスのドゥームデュオ BELL WITCH が、1曲83分の暗重なる叙事詩 “Mirror Reaper” をリリースしました!!生と死を投影する難解なるあわせ鏡は、昨年逝去した前ドラマー Adrien Guerra へ捧げるトリビュートとしてその崇高なるメランコリー、哀しみの影を増しています。
紫煙のヘヴィートリオ SLEEP が1曲が一時間にも及ぶスロウでアトモスフェリックな反芻の集合体 “Dopesmoker” をリリースして以来、ドゥーム/スラッジ/ドローンのフィールドはメタルの実験性を最も反映する先端世界の一つとして、創造性のリミットを解除し、定石を覆しながらその歩みを続けて来ていました。
勿論、JESU や BORIS のエピカルな長編も、ジャンルの音楽性とは対極に位置する瑞々しくも天真爛漫なムードを追い風に創造された濃厚なサウンドスケープであったに違いありませんね。それでも、BELL WITCH の新たなチャレンジ、1曲83分の野心は想像を遥かに超えるサプライズでした。
“Mirror Reaper” を形作る要素自体は、前作から大きく変化を遂げてはいません。確かにヘヴィーなレコードですが、ランニングタイムの大半はラウドでもブルータルでもなく非常にオープンでスペーシー。ベース、ドラムス、ボーカルにハモンドB3が生み出すその空間に巣食うは巨大な絶望、悲哀と、全てを掻き集めても片手で掬い取れるほど希少なる希望。
しかし Dylan が 「誰にでも簡単に作れるようなレコードにする必要は全くないと決めたんだよ。楽曲を別々に分けてしまうと、説得力が失われる気がしたんだ。」 と語るように、48分の “As Above” と35分の “So Below” が自然と連続して織り成す構成の進化、常識の破壊は、より妥協のない緻密なコンポジション、Adrian の死に手向けるメランコリックな花束と共に、生と死の安直でステレオタイプな二分法へ疑問を投げかけ、”死のメディテーション” を指標しているのです。
アルバムは、アトモスフィアの波に溺れる6弦ベースの幽玄な調べで幕を開けます。実際、「Michael Hedges のギタープレイは実に参考になったね。」 と語るバンドのマスターマインド Dylan Desmond のベース捌きは驚異的で卓越しています。
左手のみならず、右手を強い感情と共にフレットへと叩きつけ、時に滑らし、時に揺らして生み出すトーンは唯一無二。
ギタリストの不在を感じさせない、むしろそれを不必要と思わせる、独特のウォームでメロディックなマルチディメンショナルサウンドは、新たなベースヒーローの誕生を強くアピールし、同時に崇高な意思と純潔なるムードをアルバムにもたらしていますね。
加えて、地を這うグロウルとミスティックな詠唱のコントラスト、SIGUR ROS を想起させるファルセットのハーモニー、ハモンドオルガンのオーガニックなサステイン、Jesse のセットから流れ出すシンバルの漣。アルバムは、瞑想の荒野、空虚な嵐、美麗なる責め苦を経て、いつしか全てが緩やかな生命と音の大河に注がれドゥームの奇跡、反復の魔術を完璧に創出します。そして挿入される亡き Adrian のボーカルは、”生と死の間に存在する共通要素” “ゴースト” を信じるバンド独特の素晴らしきトリビュートなのでしょう。
NEUROSIS, SWANS などと共闘を続ける鬼才 Billy Anderson のインプットにも触れない訳にはいきませんね。Billy ほど暗闇と混沌、そして壮大なサウンドを巧みに精製するプロデューサーは決して多くはないでしょう。そしてこの作品ほど、型破りで威厳を湛えたアンタッチャブルなメタルレコードも実際ほとんど存在しないはずです。
時間、場所、もしかしたら自分自身さえも忘れてただ広大な闇の迷宮で彷徨うだけの地獄、もしくは天国。コマーシャルと最も遠い場所にあるアートのエリジウム。
そして、詩的で哲学的な “死の旅路” は、作品で最も哀しく最も愛すべきポートレート、バンドのコラボレーター Erik Moggridge の消え入るような歌唱で幕を閉じるのです。
今回弊誌では、Dylan Desmond にインタビューを行うことが出来ました。海外メタル誌では軒並みベストの上位に撰されている傑作。そして弊誌にとっては、最もクリスマスらしい作品です。どうぞ!!

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BELL WITCH “MIRROR REAPER” : 10/10

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