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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLAZE BAYLEY : WAR WITHIN ME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BLAZE BAYLEY !!

“If You Are Weak You Can Grow Strong. If You Are Broken You Can Mend. If You Are Different You Are Not Alone.”

DISC REVIEW “WAR WITHIN ME”

「良い時も困難な時も、俺のファンは俺と一緒にいてくれたからね。俺が自分自身を信じられなくなったときだって、彼らは俺のことを信じてくれたんだから。絶望的な気持ちになったときには励ましてくれた。だから、ファンが俺に作曲やレコーディング、演奏を求めてくれる限り、俺はやり続けるだろうな」
Blaze Bayley は、世界最大のメタルバンド IRON MAIDEN で5年という決して短くない時間を過ごしました。ミッドランドの小規模バンド WOLFSBANE からまさかの加入。誰もが羨むシンデレラ・ストーリー。しかし、そんな栄光の裏側で Blaze は一人、もがき苦しんでいました。偉大なる万能のシンガー、前任者 Bruce Dickinson の後任という重圧。がむしゃらが力となった WOLFSBANE よりも、丁寧に音程を追わねばという不自由な足枷。鳴り止まぬファンからのバッシング。
「当時、メイデンのファンの多くは俺を嫌っていたし、25年経った今でも嫌っている人は多いと思う。でも、この2枚のアルバムでは素晴らしい曲が書けたと思うし、この2枚はメイデンを語る上で重要な意味を持っているんだ」
25年の月日を経た現在でも、Blaze の中に巣食う仄暗い感情は拭い去れてはいないようです。それでも、Blaze があのバンドにいた意味はきっとありました。たしかに、”X-Factor” はアルバムの暗い荘厳と Blaze の不安定な音程がミスマッチの感はありましたが、”Virtual Ⅺ” のよりキャッチーでカラフルな音使いは彼のガッツやエナジーと調和を見せ始めていましたし、Steve Harris の奮戦も相俟って現在の大作化した “エピック・メイデン” への礎を築いたようにも思えます。実際、今 “Virtual Ⅺ” を聴けばメイデンのプログサイドとキャッチーサイドが完璧に交わった快作以外の感想が出てきませんし、仮に Bruce が歌っていたとしたら壮大になりすぎて別物の作品となっていたはずです。
「俺のファンが落ち込んでいるとしたら、このアルバムは彼らに力を与えるものでなければならない。俺がメタルを続けるため自分自身に言い聞かせていることの一部をファンに伝えたかった。もし君が弱っていても、強くなって戻ってこられる。もし君が壊れてしまっても、治すことはできる。もし君が他の人と違っていても、決して一人ではないんだよ」
あれから四半世紀。Blaze Bayley はただひたすらその人生を、ピュア・メタルとファンのために捧げ続けてきました。そんな英国のメタル侍の姿はある意味、Blaze にとっての恩返しでもあります。批判を浴びても決して自分を無下に扱わなかった IRON MAIDEN への恩返し。苦しい時も自分を信じてサポートを続けてくれたファンへの恩返し。そうして Blaze は、このコロナ禍で苦悶の時を過ごすファンのために最大の恩返しとなる “War Within Me” を贈りました。
「”War Within Me” の制作を始めたとき、俺たちは興奮と自由を感じたんだ。10曲ができあがった。10曲が互いに関連している必要はなかったけれど、残忍で力強く、真実を示していて、俺たちが作れる最高の曲でなければならなかった。そして楽曲のアレンジは、それぞれのストーリーに忠実なものでなければならなかった。妥協なく、勇気と誠実さを示さなければならなかった」
Blaze Bayley が IRON MAIDEN から巣立って25年。その歩みの結晶こそ “War Within Me”。内なる葛藤を乗り越えた侍の逆襲には、メタルのすべてが詰まっています。Blaze にとって作曲のパートナーであり卓越したギタリストでもある Chris Appleton との出会いは、さながらそのエンジンにハイオクとナイトロを搭載したようなものでした。ACCEPT のように勇壮で、IRON MAIDEN のように知的で、MEGADETH のようにテクニカルで、MOTORHEAD のように粗暴。これほどメタルらしいメタルをしたためるアーティストが今日どれほど存在するでしょうか。それにしても素晴らしいギタープレイヤーですね。
インタビュー中では Tim “Ripper” Owens に向けたシンパシーについて言及していますが、もしかすると、Blaze Bayley にとって目指すべきは Udo Dirkschneider なのかもしれませんね。特異すぎるその声、勇壮を体現したかのような容姿、そして時に本家を凌ぐような凄まじい楽曲とパフォーマンス。さらに、ウィリアム・ブラックのSFトリロジーにしても、チューリング、テスラ、ホーキンスの科学者をテーマとした組曲にしても、さながら “Aces High” のような303部隊の攻防にしても、Blaze Bayley は何よりメタルのロマンを誰よりも深く理解しています。インタビューでは Blaze の、意外なほどの知への探究心を感じられるでしょう。
18歳のころ、清掃の夜勤をこなしながらホテルで “The Number of the Beast” を聴いていた少年は夢を叶え、今度は叶えさせてくれたファンのためにメタル道を突き進んでいきます。今回、弊誌では Blaze Bayley にインタビューを行うことができました。「実は、彼らが俺を選んだことにとても驚いたんだ。彼らが電話をかけてきて、俺が選ばれたと言ったんだけど、あの時俺はショックを受けたんだ。嬉しいけど、ショックだった」 どうぞ!!

BLAZE BAYLEY “WAR WITHIN ME” : 10/10

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