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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DUSK : SPECTRUMS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MESHARI SANGORA OF DUSK !!

“Saudi Arabia Is Not Known As Being a Place Where Metal Music Is a Thing, But Music Knows No Boundaries.”

DISC REVIEW “SPECTRUMS”

「たしかにサウジアラビアはメタル・ミュージックが盛んな国としては知られていないけど、音楽には国境がないんだよ。音楽が大好きな僕は、大学進学を機にUAEに移り住み、リスナーとしてだけでなく、音楽に携わりたいと思うようになった。それでまず、DJ としてスタートして、それ以来音楽に対する情熱を燃やし続けている」
プログレッシブ・メタルコアのパンデミックは、北米、南米、ヨーロッパ、そしてもちろんここ日本やアジアの国々にも感染し拡大を続けていますが、さすがにサウジアラビアにまで到達し、これほどの逸材が登場するとは想像もつきませんでした。サウジアラビアの一人プログコア DUSK の首謀者 Meshari Sangora の音楽に対する情熱の焔は、実にユニークかつカラフルなデビュー作 “Spectrums” で国境や困難を燃やし尽くすのです。
「僕の生活は、ヘヴィ・ミュージックとメタルが100%なんだ。そうした音楽は、僕にとってのライフスタイルであり、メタル・ミュージックは、ジャンルとして、あるいは生き方として、僕にとって完璧なものであるといつも感じているんだよ。たしかにサウジアラビアでも本当に長い間、メタルやヘヴィ・ミュージックはタブー視されてきたし、過激なバンドや悪魔的なメタルに傾倒する人もいて、イメージは全く良くなかったんだ。でも人々はゆっくりと、しかし確実にヘヴィ・ミュージックに心を開き、メタルの物語の両面を学んでいるところだよ」
これまでインタビューを行ってきたイスラム教国家のバンドたちは、多かれ少なかれ、何かに不自由を感じていて、時には激しく弾圧を受け国外へと脱出した人たちさえ存在しました。もちろん、文化や伝統を重んじることは重要ですが、それによって生じた歪みで自由や権利が制限され、精神的、肉体的な抑圧や不利益を産むとしたら、きっと変化も必要です。”悪魔の音楽” は少なくともサウジアラビアでは、Meshari のような100%メタル人間の情熱によって、徐々に受け入れられて来ているのかも知れませんね。
実際、CREATIVE WASTED によるサウジ初のメタルライブが行われたところです。バンドのベーシストはこう語っていました。
「当時(2000年)のサウジには、どんな種類の音楽シーンもなかった。本当に何もなかった。アンダーグラウンドの民族音楽ならまだしも、それも家の中で友達に聞かせる程度。基本的に、そういうものだけ。ここには、どんな音楽シーンもなかったんだ。何もない。サウジアラビアのアーティストのほとんどは、レバノンなど、王国の外でレコーディングをしていたよ」
Meshari 息子とも言える “Spectrums” の誕生は、まさに変化の象徴でしょう。
「このアルバムは、メタルヘッズとそうでない人の両方にとっての、入り口になるような作品にしたかった。”Spectrums” は音楽が好きな人なら誰でも興味を持つことができると思うんだ。様々に異なるジャンルをミックスしているからね。このアルバムで僕がやろうとしていることは、すべての人に自分の感情や旅を体験してもらうこと。裏切りや処刑、愛、憎しみ、希望といった現実問題を扱ったテーマもある」
Meshari は、この新作をSide AとSide Bとに分けて制作しました。アルバムの前半、Side A は攻撃的なサウンドで、よりギターに重点を置き、前に進むにつれてさらなる敵意が蓄積されていくような作風。一方、後半 Side B では EDM 的なサウンドを多く取り入れ、DJ として養った現代的なデジタル•サウンドとイヤー・キャンディでメタル以外のリスナーにも広く訴えかけていきます。
「母国語を加えるというアイデアは、ユニークなタッチを加えることができると思ったし、アラビア語は僕のルーツとのつながりを保つ方法でもあるね。だから “Agnes Of Rome” という曲にはアラビア語が使われている」
“Spectrums” というタイトルは伊達ではありません。あの元 SWALLOW THE SUN の偉大な Jaani Peuhu、SOLEMON VISION の Aron Harris をはじめ、英語、ドイツ語、フィンランド語、アラビア語という異なる言語、異なるスタイルを持つボーカリストを集めたアルバムは実に多様で色鮮やか。さらに、EDM、ジャズ、ポップ、インダストリアル、アンビエントの音像が、モダン・プログコアという情熱の炉で溶かされ、再結晶した音楽は独創的でキラキラと耳に残ります。もちろん、オリエンタルな音の葉も存在しますが、それを押し売りのように無理強いしないところも見事。DUSK が蒔いた情熱の種は、この地で芽吹くのでしょうか。
今回弊誌では、Meshasi Sangora にインタビューを行うことができました。「POLYPHIA を聴いてメタルを再発見し、その場で再度メタルに転向したんだ。だから、ギターを弾く人たちに追いつくために、基本的なことをたくさん学ぶ必要があると思ったし、少なくともそうやって自分にハッパをかけて、毎日毎日練習していったんだ」どうぞ!!

DUSK “SPECTRUMS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + COVER STORY 【BRING ME THE HORIZON : AMO】


BRING ME THE HORIZON: WHEN LOVE AND HATE COLLIDE – STORY BEHIND “AMO”

WHEN LOVE AND HATE COLLIDE

ファンとの間の愛憎劇は、創造性を追求するアーティストならば誰もが背負う十字架なのかも知れません。とは言え、BRING ME THE HORIZON ほど荊の枷にもがき苦しみ、愛憎の海に溺れながら解脱を果たすミュージシャンは決して多くはないでしょう。
BRING ME THE HORIZON は新たなる宿業 “Amo” でラディカルな変革を遂げ、リスナーを文字通り地平線の向こうへと誘っています。それはロック、ポップ、エレクトロ、トランスにヒップホップをブレンドした野心極まる甘露。
しかし「15年経った現在でも、ヘヴィーじゃないとかブラストビートがないことが問題になる。そういった障害を壊し続けて来たんだけどね。」とフロントマン Oli Sykes が NME のインタビューで語った通り、確かにデスコア時代からのダイハードなメタルヘッドに “Amo” は堪え難い冒険だったのかも知れませんね。
実際、UK Billboard チャートで初の No.1 を獲得したとは言え、フィジカルのセールス自体はまだメタルの範疇にあった前作 “That’s the Spirit” と比較して75%も落ち込んでいます。もちろん、ストリーミングの大きな躍進は考慮するべきでしょうが、それにしても決して無視出来る数字ではありません。

“I think we’ve been ahead of some of the other bands. To Oli’s credit, he’s quite good at that. He has ideas before anyone else.”


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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PASSCODE : VIRTUAL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PASSCODE !!

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Electronicore Meets Kawaii ?! Japanese Girls Outfit, “NINJA BOMBER” From Osaka, PassCode Has Just Released Splendid 2nd Album “VIRTUAL” !!

DISC REVIEW “VIRTUAL”

百花繚乱のアイドルシーンに、ピコリーモを引っさげ大阪から現れた4人組 PassCode が期待の新作 “VIRTUAL” をリリースしました!!新メンバー大上さんの加入、グループのリーダーだった黒原さん脱退という大きなメンバーチェンジを経て制作されたアルバムは、鮮烈なデビュー作 “ALL is VANITY” と”リンク”しつつも、より多彩で、よりキャッチーで、メンバーの確かな成長が感じられる優れた作品となりました。
アルバムオープナー “MOON PHASE” は PassCode の “Re-Birth” を高らかに宣言するキラーチューン。前作収録 “Toxic” のイメージを引き継ぎながら、よりスケールアップを果たした Electronicore サウンドを聴くことが出来ますね。キラキラとしかし複雑に突き進む楽曲の中、ふんだんに挿入される 今田さんのシャウト/スクリーム は男性ボーカルの凄みとはまた一味違ったテイストが白眉で、前作からの進化を伝えています。オートチューンの多用も実に効果的。
さらに、こちらも前作収録 “アスタリスク” とリンクする “NINJA BOMBER” はタイトルから想像出来る通り、和のテイストを取り入れた海外にも強くアピールする仕上がりとなっていますね。逆に言えば、こういったある種飛び道具的な楽曲が際立つのも、シリアスな “Now I Know”, “Nextage” のような彼女たちの”骨格”がしっかりと存在しているからだと思います。
勿論、そういった所謂ピコリーモは PassCode サウンドのベースでありアイデンティティーな訳ですが、インタビューで高嶋さんが”おもちゃ箱”と例えたように、カラフルでバラエティー豊かな本作では PassCode の新たな1面も重要な聴きどころとなっていますね。
例えば “ドリームメーカー” は Kawaii 要素を多分に含んだ電波チューン。でんぱ組.inc を想起するファンも多いでしょう。また、派手なシンセサウンドが注目されがちですが、”from here” などで聴けるピアノの音色も美しく作品に色を添えています。
さらに、アルバム終盤に配置された “Don’t Leave Me Alone”, “You Made My Day” のように切なく、ブルージーな味わいさえ存在する、聴かせる楽曲も素晴らしいアクセントになっていますね。特に “You Made My Day” は1分そこそこの短い中に、PassCode の熱い想いが込められた歌詞、パフォーマンスだと感じました。
今回は、サウンド・プロデュースを手がける平地孝次さんがメンバーの歌唱パートを決定したことで、より各メンバーの特徴が作品に昇華されていますし、SiM や BABYMETAL を手がける 原浩一さんがマスタリングを行うことでサウンド自体もアップグレードされており、実に聴き応えのある完成度の高い作品に仕上がっています。
今回弊誌では、PassCode のメンバー全員、高嶋 楓さん、今田 夢菜さん、大上 陽奈子さん、南 菜生さんにインタビューを行うことが出来ました。8/8の Zepp DiverCity ワンマンでは初のフルバンドセットも控えています。ぜひアイドルとバンドの垣根を壊していって欲しいですね。どうぞ!!

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PassCode “VIRTUAL” : 9.2/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE ALGORITHM : BRUTE FORCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH REMI GALLEGO OF THE ALGORITHM !!

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Electronica meets Prog-Metal! One of the originator of “Progtronica” from France, THE ALGORITHM has just released their new masterpiece “Brute Force” !!

DISC REVIEW “BRUTE FORCE”

エレクトロニカ/EDM とモダンメタル/Djent を融合させ独自の音楽を発信する、フランスの奇才 THE ALGORITHM が新作 “Brute Force” をリリースしました!!
勿論、PERIPHERY, ANIMALS AS LEADERS, BORN OF OSIRIS など、最新のモダンプログメタル界隈において、エレクトロニカの要素は必修科目。当たり前のように使用されています。ただ THE ALGORITHM として知られる Remi Gallego のように、その2つをシームレスに繋いでいるアーティストは未だ存在しないでしょう。彼こそが “Progtronica” のトレンドセッターなのです。
新作 “Brute Force” でもポリリズムを多用したアグレッシブなリズム、モダンなリフは健在。そして美麗で数学的に構築された EDM サウンドが独特のアトモスフィアを発しています。さながら Remi Gallego が築き上げた音楽の現代建築のように。
とは言え、今回の作品は畳み掛けるようなインテンシティーと共に、よりバランスがとれたキャッチーなアルバムの様にも思えます。例えば、シングルカットされた “Pointer” はロシア民謡のような印象的なメロディーが、Post-Meshuggah なギターリフ、リズムの上で綿密に構築されています。同時に、新機軸としてギターソロを導入しており、結果としてメタルとEDMのバランスが絶妙の仕上がりになっていますね。インタビューでも語っているように、過去の作品に比べてより人間味、エモーションを導入したことで、さらなるファン層獲得にも繋がるように感じました。
また、タイトルトラック “Brute Force” はクラシカルなアプローチが見事な佳曲。例えば、Castlevania のようなゲーム音楽にも通じるドラマ性が白眉です。
Breakcore トレンドセッター、同郷の Igorrr が参加した “Deadlock” には貪欲に新機軸を導入する Remi のアーティストとしての矜持が強く現れているように感じました。凶悪さを纏った”生の”ギターリフが衝撃的ですね。
Post-Rock の影響すら感じるスロウな “Userspace” に Dub, Breakcore 色の強い “Shellcode” まで楽曲は実にバラエティー豊かです。
全体的に見れば、今作は主要海外誌のレビューにおいて、DAFT PUNK が手がけたディズニーのSF映画 “Tron : Legacy” のサウンドトラックと比較されることが非常に多く、それはつまり、人生を変えたアルバムにも上げているように、強い影響を受けた同郷の偉大な先輩の域にまで Remi Gallego の世界観が肉薄して来ている証のようにも思えました。
今回弊誌では、その Remi にインタビューを行うことが出来ました。短いですが、彼独特の考え方は伝わると思います。どうぞ!

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THE ALGORITHM “BRUTE FORCE” : 9.2/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KOUTEI CAMERA GIRL : LENINGRAD LOUD GIRLZ】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KOUTEI CAMERA GIRL !!

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Japanese Girls Rap Crew, KOUTEI CAMERA GIRL has just released revolutionary new record “Leningrad Loud Girlz” !!!

衝撃のデビュー作 “Ghost Cat” から半年。ガールズラップクルー 校庭カメラガール が待望の2ndアルバム “Leningrad Loud Girlz” を早くもリリースしました!!
グラミー賞や各有名音楽紙ベストアルバムの結果を見るまでもなく、今年を代表する1枚が Kendrick Lamar の “To Pimp A Butterfly” であることは議論の余地もないでしょう。Kendrick や Flying Lotus, Robert Glasper などが提唱し取り組んでいるポピュラーミュージックのアップグレード。HIPHOP, ジャズ、ファンク、ソウル、エレクトロニカなど黒人音楽をルーツとしたこのムーブメントに素早く反応したガールズグループの一つが 校庭カメラガール なのではないでしょうか?”Star flat Wonder Last”なんて特に。同時に今年話題となった ZEDD, AVICII といった EDMアーティストの新作とも通じる部分はあると感じました。
勿論、ラップという観点ではアイドル枠でもリリスク、RHYMEBERRY が存在しますし、ガールズラップという括りで考えても水曜日のカンパネルラや泉まくらなど面白いアーティストが続々と出現しています。ただ、コウテカのトレンドを取り入れながらも、さらに先を切り開くような音楽性はその中でも驚くほどに異端ですね。基本はクラブミュージックでありながら、6人のラップやボーカルは非常にキャッチーで良い意味の邦楽感もありますし、メッセージ性も強く、先に挙げた要素以外にもポストロックやバンドサウンドまで幅広くチャレンジしています。
異端と言えば、メンバーの名前も「もるも もる」「しゅがしゅ らら」「ましゅり どますてぃ」「ののるる れめる」「らみた たらった」「ぱたこあんど ぱたこ」とかなり変わっていますし、今までには存在しなかった新しいアイドル像を体現しているのかも知れません。
今回弊誌では、コウテカメンバーのうち4人に話を聞くことができました。メンバーの時に人を食ったような回答も実にらしいですね。12/18には初のワンマン公演も控えています。購入はこちらから。どうぞ!

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MMM RATING IS…

KOUTEI CAMERA GIRL “LENINGRAD LOUD GIRLS” : 9/10

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