EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TORSTEN KINSELLA OF GOD IS AN ASTRONAUT !!
Inspired By Tragedy, Irish Instrumental Trio, God Is An Astronaut Makes Allow To Creative Evolution With Their Dark & Melancholic New Record “Epitaph” !!
DISC REVIEW “EPITAPH”
エレクトロニカのイマジネーションとスペースロックのアトモスフィアを原動力に、稀代のダイナミズムを掌握するアイリッシュトリオ GOD IS AN ASTRONAUT が自身の殻を破る悲愴 “Epitaph” をリリースしました!!
比類無き名を冠するバンドの創造性は、降りかかる悲劇とその感情さえも写真のように切り取って至上の哀話を完成させました。
優れたポストロックアクトの多くが島国を出自とするのは偶然でしょうか。大陸に比べて、島には陸と海の自然が接近し時に混ざり合う表情豊かな場所も少なくありません。その雄大さ、カラフルな色彩を全身に浴びて育ったアーティストの感性はやはり極上のサウンドスケープを届けてくれるように思えます。
ダブリンの南、絶景の国立公園とヴァイキングの港を有するウィックローが生んだ GOD IS AN ASTRONAUT も間違いなくそうしたバンドの一つでしょう。そして自らの作品を “スナップショット” と表現する写音家の彼らが今回切り取った情景は、悲しいことに幼い従兄弟の急逝でした。
「このアルバムは彼に捧げられていて、僕たちなりのお別れだったんだよ。それに僕たちにとっては、この受け入れ難い最も悲しみに満ちた喪失へなんとか対処する方法だったんだと思う。」と Torsten が語るように、”墓碑銘” と名付けられた作品は無垢なる肉親に捧げる鎮魂歌であると同時に、双子の Kinsella 兄弟が自身のトラウマを解放し乗り越える非常口だったのかも知れませんね。
レコードで最も長い7分半のエピック、幕開けのタイトルトラック “Epitaph” でバンドは作品のムードを決定づけます。靄がかかったリヴァーブピアノのイノセンスは、デジタルビートの底流と共に不穏な色合いを帯び、ノイズの森から現れるドローンの死神は、重苦しいギターの大鎌と荘厳なる女性コーラスを携え幻想的でダークなメランコリーを解き放つのです。
続く “Mortal Coil” でも最早レコードのセンターに位置するピアノの響きは悲しみのパルスを呼び起こし、泣き叫ぶギターワークはやり場の無い怒りを生々しく楽曲へと還元します。そうして、アコースティックとアナログの波長は未曾有の調和でバンドの知的なテクスチャーと緻密なデザインを実証するのです。
しかし、ある意味 “典型的な” ポストロックのダイナミズム、手法で幕を開けた作品は、「僕らを安易にポストロックのカテゴリーに入れるのは、ちょっと怠惰な聴き方だと思うな。」の言葉通り徐々にバンドの挑戦的で多彩多様なその姿を露わにして行きます。
「作品の音楽は、リスナーをまさに僕たちが経験したようなダークでトラウマティック、そして物悲しい気持ちにさせると思うんだ。だけど、それと同時に彼と過ごした幸せな時間、一握りの希望を盛り込むことも重要だったんだ。」という Torsten の言葉はある種象徴的です。メランコリーと苦渋に満ちたレコードには、多くの人に幸せを与えて来たという少年の姿もまた克明に刻まれているのです。
少年の魂は、暗闇の中で光が散乱する “Winter Dusk/Awakening” でトライバルなケルトの風とポストクラシカルの慕情を等しく抱きしめ、日本の情緒を込めた “Komorebi” では、ウィックローの木漏れ日の中で、優しいミニマリズムをバックに光りと影のダンスを踊ります。
そうして辿り着く “Oisín” で彼は天に召されたのでしょうか。デリケートなピアノのモチーフは少年の死に纏わる悲傷や苦痛、嗟嘆の全てを抱擁し、無垢なる少年の魂に翼を与えたようにも思えます。汚れなき美しさを切り取ったメロディーは、少年の生きた証と共に空へと帰って行くのでしょう。
今回弊誌では、ギターとキーボード、時にボーカルも担当するバンドの頭脳 Torsten Kinsella にインタビューを行うことが出来ました。
もちろん、ギターとシンセサイザーを緻密にレイヤーする手法によって常に MOGWAI と比較され続けている GIAA ですが、皮肉にも現実で向かい合った真の悲劇を切り取ることで、アナログに拘った本質的なプロダクションと共にまた一歩音楽的な歩みを進めたように思います。言い換えればそれは、ジャンルの特性でもある清廉潔白を打ち破るブレイクスルー。
「僕たちの音楽は、作曲を行なっている間に経験した出来事をエモーショナルにキャプチャーしているんだよ。写真が感情を切り取るようにね。」どうぞ!!
GOD IS AN ASTRONAUT “EPITAPH” : 9.9/10
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