EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MAMMAL HANDS !!
New Chapter Of UK Jazz, Mammal Hands Carve Out A Great Footstep With The Expansive, But Monolithic New Record “Shadow Work” !!
DISC REVIEW “SHADOW WORK”
拡大する UK ジャズの象徴にしてニュージャズの新たな潮目、MAMMAL HANDS。昨年、初来日公演も成功させた異端のベースレストリオがリリースした最新作 “Shadow Work” は、多彩多様なジャンルを繋ぐ架け橋としてタイトルとは裏腹の凛とした光彩を放っています。
Robert Glasper に端を発する、拡散する新たなジャズの潮流はまさにモダンな音楽世界の縮図と言えます。ヒップホップ、ソウル、ファンク、エレクトロニカ、フォーク、クラシカル。様々なジャンルを縦横無尽に横断し、”Jazz The New Chapter” とも形容されるニュージャズの瑞々しいアプローチは、そして今、世界各地で同時多発的に勃興しているのです。
とりわけ UK は北欧、南米と並んで、その万華鏡のサウンドスケープで注視される新聖域の核心だと言えるでしょう。
「沢山の新たな UK のジャズアクトがその音楽にエレクトロニカを取り入れる傾向は驚きではないんだよ。というのも、UK では多くの偉大なエレクトロニカミュージックが制作されているからね。」 インタビューで Nick が語ったように、そうして UK ジャズ新世代が一際フォーカスしブレンドした個性こそ、彼の地が誇るエレクトロニカの胎動でした。
Matthew Halsall 率いる Gondwana Records のロースターはその滾りし地熱の趨勢を握ります。ハングの叙情を取り入れた PORTICO QUARTET, ビッグレーベル BlueNote への移籍を果たした GOGO PENGUIN, そして中でも今回取り上げる MAMMAL HANDS は最もエクレクティックで普遍的な魅力を備えたトリオだと言えるのかも知れませんね。
何より記して置くべきは、バンドの持つ Steve Reich 由来のミニマリズムと幻想的なそのサウンドデザインが、馴染み深きポストロックやポストプログレッシブの領域と非常に接近している点ではないでしょうか。
「実の所、僕たちは自分たちをジャズグループだと考えたことは一度もないんだよ。」 と JESSE が語れば、Nick は 「僕が聴いて育ったのは、MOGWAI, GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR, KING CRIMSON といったバンドなんだ。」 と証言します。
レコード最長のエピック “Transfixed” はその象徴かも知れません。シングルノートの反復から生まれるグルーヴは、いつしか複雑で多面的なリズムとメロディーを重ねて行きます。
ライヒとチャネリングを果たしたかのようなミニマリスティックなデザインは、Jesse のタブラを使用したパーカッシブなアプローチ、Nick のアコースティックとエレクトリックを行き来するヒプノティックな鍵盤の妙、Jordan のコルトレーンを想起させる冷ややかなテナーの情熱、そしてさりげのない電子の海を全て携えて、60, 70年代の “スピリチュアルジャズ” をロックとコンテンポラリーのイメージを伴い21世紀へと蘇らせるのです。
実際、「新しいアプローチとトラディショナルなアプローチをブレンドして音楽を創造することは、 僕たちにとって本当に興味深い手段なんだよ。それに、僕は新たなバンドがコンテンポラリーなサウンドを追い求めることは重要だと思っているからね。」 と Nick が語るように、彼らの戦略は実に巧妙です。
近年、よりエレクトロニカへとコミットする PORTICO QUARTET とは対象的に、MAMMAL HANDS はジャズのトラディショナルな偶然性からコンテンポラリーな必然性、そしてロックやプログ、エレクトロニカのリスナーにもアピールするキャッチーなフックとチャレンジングな革新性を兼ね備えているのですから。
ストリングスを文脈に配置したミニマルジャズの体現 “Black Sails”、フルートで作曲されたアイリッシュフォークとジャズの美麗なる落とし子 “A Solitary Bee”、クラシカルの息吹が宿る “Boreal Forest”、そしてグループのアイデンティティであるワールドミュージックに特化したタブラの魔術 “Three Good Things”。
つまり全ては、アドベンチャーを志向するジャズ、ロック、フォーク、アンビエント、ダンスリスナーにとって、格好の架け橋として設計されているのです。そして絶景なるその無垢なる橋からの眺望は、逆説的に言えばカテゴライズを超越したただ “音楽” と描写されるべき風景なのかも知れませんね。
今回弊誌では、メンバー全員にインタビューを行うことが出来ました。アクセシブルでありながら非常に繊細かつ多様な彼らの音楽は弊誌の理想ともシンクロします。「多くの人が、僕たちの音楽が他のジャンルを聴くきっかけになったと言ってくれるのは嬉しいよ。」 どうぞ!!
MAMMAL HANDS “SHADOW WORK” : 10/10
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