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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MARILLION : F.E.A.R.】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PETE TREWAVAS OF MARILLION!!

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One Of The Greatest Prog Legend From England, Marillion Has Just Released Their Best Album In Two Decades, “F.E.A.R.” !!

DISC REVIEW “F.E.A.R.”

イングランドを代表する Prog アクト、MARILLION が、ここ20年における彼らの最高傑作とも評される新作 “F.E.A.R.” をリリースしました!!
コンセプト、リリック、ミュージック、全てが異次元のクオリティーで深く冷厳に溶け合ったアルバムは、キャリア38年にしてバンドの新たなマイルストーンとなるでしょう。
Prog Rock がコマーシャリズム、POP の波に飲まれた80年代に、GENESIS 譲りのドラマ性とシンフォニーを携えて颯爽とシーンに登場した MARILLION は、ボーカル Fish のカリスマ性、シアトリカルなパフォーマンスとも相俟って Neo-Prog と呼ばれる新たなムーブメントの主役となって行きます。とは言え、彼らの音楽は決して70年代の回顧のみに収まるものではありませんでした。
New Wave, Heavy Metal の風を受けて、巧みにトレンドを反映し、実験性を孕んだそのサウンドはバンドの多彩な一面を見せつけます。初期の作品群からは、U2 や POLICE といった正統派ブリットロックから、IRON MAIDEN のハードなエッジまでを血肉として、Prog Rock を一つ先のステージに進めようと試みていたことが伝わりますね。
ボーカルが Fish から Steve Hogarth にチェンジし、1994年に制作したコンセプトアルバム “Brave” は Pomp Rock バンドとしての MARILLION が結実した瞬間でした。
インタビューにもある通り、Prog Rock 特有のファンタジー性と距離を置き、ダークかつリアリズムに拘ったテーマで勝負した作品は、ダイナミックで強く空間を意識し、アンビエントさえ取り入れながら、際立った音楽的表現力、センスと共に、音楽史に新たな章を書き加えたのです。
そしてその試みは勿論、現在 Modern Prog, Post-Prog シーンの Guru として尊敬を集める Steven Wilson と、彼が率いて来た PORCUPINE TREE とも強く共鳴していたことは明らかでしょう。
それから22年の月日を経て、リスナーの元に届けられた彼らの新しいマスターピースは、”F.E.A.R.” と名付けられました。”F*** Everyone And Run” を略して “F.E.A.R”。この実にセンセーショナルなタイトルは、やはり現実的で、社会問題に目を向けた、現在の MARILLION らしい極めてリアルなコンセプトを表現しているのです。具体的には銀行や政治の汚職、Brexit、欧州議会の腐敗、世界的資本主義の崩壊など、まさに英国が抱える現代社会のダークサイドを投影した濃密な68分に仕上がっています。
アルバムオープナー、”El Dorado” は悲観的な未来を予測した楽曲。PINK FLOYD の “The Division Bell” を想起させる大曲は、インタビューで Pete が “ヨーロッパ周辺には、大きな変化が起こりつつあり、それを通して誰かが僕たちをコントロールする計画を立てているような予感、予兆が存在するんだよ” と語った通り、MARILLION が抱く未来に対する “Fear” の前兆を表現しているようにも感じます。前作のオープナーで、奇しくも同じ17分の大曲 “Gaza” と対となる存在と言えるかも知れませんね。
同時に “El Dorado” は Mike Kelly のエレクトリックピアノからオルガンまで自在に操る見事なキーボードサウンドと、まさにトップフォームな Steve Rothery の物語を紡ぐギターソロがアルバムを通して重要な鍵となることも伝えています。
そしてやはり、特筆すべきは H こと Steve Hogarth のキャラクターになりきった壮絶な歌唱でしょう。作品を象徴するテーマである、持つ者と持たざる者、世界的資本主義の拡大による”エリート”の出現と彼らの保身についての組曲 “The New Kings” において、H は全身の感情を振り絞り、アルバムタイトルともなった “F*** Everyone And Run” と歌い紡ぎます。その瞬間、センセーショナルでともすればチープにさえ思えたその一節は、悲しみの感情を掻き立て、世界の状況を真摯に考えるきっかけを与える魔法の言葉へと変化するのです。RADIOHEAD を想起させるコンテンポラリーなセンチメンタリズムを見事にコンセプトと融合させ、MARILLION が現代にプロテストソングを蘇らせたと捉えることも可能でしょう。
THE BEATLES から脈々と繋がる UK の血を受け継ぎながら、
真の意味での Progressive を体現したアルバム “F.E.A.R.” 。今回弊誌では、1982年からバンドを支え続ける、フレキシブルなベーシスト Pete Trewavas にインタビューを行うことが出来ました。ヨーロッパで絶大な支持を得ている MARILLION ですが、メッセージにもある通り、今度こそは日本のファンにもアピールすると信じます。どうぞ!!

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MARILLION “F.E.A.R.” : 10/10

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