EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GAEREA !!
“We Put On Our Different Daily Masks To Deal With Co-workers, Our Loved Ones Or Other Members Of Society. We Want To Be Able To Be Someone Different In Every Situation In Order To Be Or Feel Accepted. These Masks Represent Mostly That.”
DISC REVIEW “MIRAGE”
「僕たちは、人間、希望や夢、そして荒廃した悲惨な人生にどう対処していくかに、ほとんどの部分がインスパイアされているんだよ。今の世界の状況は、現実を観察し、吸収するのに非常に面白い時期だとは思うのだけど…」
ファンタジーよりも現実を。暴力よりも夢や希望を。悲しみには前向きな力を。ポルトガルに登場した仮面のブラックメタル GAEREA は、”Mirage” “蜃気楼” と題されたアルバムでごく普通の人々の人生や現代生活の困難さについての物語を叙情的に探求しています。
多くのモダンなブラックメタルがそうであるように、GAEREA にとってもかつてこのジャンルの骨子であった “アンチ・クライスト” や “暴力と怒り” はもはやそれほど重要な議題ではありません。ブラックメタルの最前線は、人間、日常生活とその苦悩を扱う領域へと移行しつつあります。鬱病や自殺に抗し、解放感や幸福の追求こそ彼らのテーマ。今の時代は、個々の人間が人間としてどう感じるかにフォーカスするべきだと GAEREA は考えているのです。
「人は仲間の中にいるとき、本当の意味でリアルであるとは言えないと思う。僕たちは、一人きりの孤独な環境で、自分の感情や希望、絶望がようやく自分を包み込んだり、苦しめたりできるときにだけ、自分自身に正直になれるんだよ。
僕たちは、同僚や恋人、社会の人々と接するために、日々さまざまな仮面をかぶっているよね。僕たちはそうやって、社会に受け入れてもらうために、状況によって違う人になりたいと思っているんだよ。僕たちのマスクは、そうした事柄をあらわしているんだ」
たしかに、奇抜なマスクをかぶることは、名を売るための一つの方法かもしれません。ただし今となっては、正体を隠したバンドの存在はもはや目新しいものではなく、”イロモノ” から脱却し、羽ばたくためには音楽にさらなる重点を置く必要もあるでしょう。
それほどのリスクを犯してまで GAEREA がシンボルマークの描かれたマスクをかぶるのは、匿名性と神秘性以上に “真の自分” を守るため。”真の自分” にたどりつくため。結局、GAEREA だけではなく、すべての人間は社会生活のために様々な仮面をかぶって生活しています。ただし、そんな仮面の裏側の心の奥底に触れられるのは自分だけ。GAEREA は “記号” のような自分の状態を受け入れ、そこから進化して、真の個性を解き放っていく勇気を持っているだけなのです。
「ファドは僕たちの一部だよ。結局、僕たちの感性にはポルトガルの文化が刻まれているのだから。”サウダージ” を感じることは、僕たちの一部であり、言葉にはできないけれど、もちろん、音楽としてそれを不滅に刻むことはできるからね」
ただし、この謎めいたアーティストは、顔や素性を隠しているかもしれませんがその分、彼らの感情や情熱は、溢れ出るように開放的で、逞しく、カタルシスに満ちています。不協和なノイズと、メロディーと優雅さの驚くほど幽玄なスペクタクル。ここには定型的なものは何もなく、オーガニックで、自然で、激しく、冷ややかで、しかし美しく、親しみやすく、高揚感を誘うのです。
例えば、”Arson” はギターの美しく雄大なリードと、邪悪なブラストビートに重なる苦しげな絶望の叫びがまさに人間の持つ二面性を反映していますし、”Mantle” は攻撃的でありながら、リフの背後にある悲しみを痛いほどに表現しています。そして、エンディングの大作 “Laude” のメジャー感は、これまでの曲にはない感覚をもたらし、リスナーに仄かな希望の糸を垂らしてくれるのです。
そうして、私たちは冒頭 “Memoir” の物悲しき内省、帰属への憧憬にポルトガルのサウダージを発見します。明らかにこの寂寞、閉所恐怖症の美しさはファドに根ざした DNA のなせる技。GAERNA の欲する孤独、奥底から湧き上がる真の自分は、ここに呼吸し、解き放たれました。”The Satanist” 以来、ブラックメタルのアルバムがこれほどまでに精彩を放ったことはないでしょう。体験してください。これは蜃気楼ではないのですから。
今回、弊誌では GAEREA にインタビューを行うことができました。「MOONSPELL をこの国が到達した金字塔と考えるなら、僕たちはまったくもって、最大のポルトガル・メタル・バンドではないよ。30年以上もの間、初期から変わらない情熱を持って活動してきた彼ら素晴らしきジェントルマンたちには、計り知れない尊敬の念を抱いているんだ」 どうぞ!!