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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SCOTT HENDERSON : PEOPLE MOVER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SCOTT HENDERSON !!

“There’s Nothing Sadder Than Young Guitar Players Who Only Listen To Heavy-metal. There’s So Much Great Music Out There To Learn From, And It’s Unbelievable To Me That Someone Would Stick To Listening To Only One Style. It’s Like Being In Musical Prison.”

DISC REVIEW “PEOPLE MOVER”

「オープンマインドで音楽スタイルに囚われないことがとても重要だね。若いギタリストがメタルしか聴かないことほど悲しいことはないよ。学ぶべき音楽は沢山あるんだ。」
ジャズとブルース、クラッシックにロック、そしてファンクのスピリットを理想的にミックスし、フュージョンの翼を蒼の音空へと広げるギターレジェンド Scott Henderson は、特定のジャンルに囚われる創造のあり方を “音楽の刑務所” と断罪し包音力の重要性を語ります。
Joe Zawinul, Jean-Luc Ponty, Chick Corea といったジャズの巨匠に認められ共演を果たす一方で、TRIBAL TECH、ソロ活動、さらには Victor Wooten, Steve Smith との VITAL TECH TONES に Jeff Berlin, Dennis Chambers との HBC など豪華なサイドプロジェクトまで、Scott の音楽的な冒険は非常に多岐に渡ります。
TRIBAL TECH の登場は衝撃的でした。自身で “ギアヘッド” と語るように最新テクノロジーや MIDI を惜しげもなく投入し、複雑なコンポジションやオーケストレーションをジャズとロック、ファンクのキャンパスへと落とし込むバンドの野心は、停滞していたインスト/フュージョン世界を再始動へと導く原動力にも思えたのです。もちろん、メカニカルでロマンチック、テクニカルかつアンサンブルを極めたハイパーフュージョンの根底には、Scott とベースマン Gary Willis が誇る最高峰の知性と技術がありました。
ただし、Guitar World 誌のNo.1ギタリストをはじめとして、様々なアワードや高評価を得た TRIBAL TECH も Scott にとっては表現形態の1つにしか過ぎなかったようです。同じ音楽性を長く続けると飽きが来てしまうの言葉通り、Stevie Ray Vaughan が降臨したかのようなソロレコード “Dog Party” を契機として Scott は何年もブルースの荒野を探求することとなりました。
「僕はそれぞれ異なる理由で多くの音楽スタイルを愛しているよ。ブルースのソウルやフィーリング、ジャズのハーモニーと表現豊かなインタープレイ、ファンクをプレイする時の体感、ロックのパワー、クラッシックやプログロックの美しきコンポジション。全てが僕を幸せにするのさ。」
そうして近年、Scott Henderson は自らの音楽地図を遂に完成へと導いているように思えます。最新作 “People Mover” は実際、コンポジションにおいてマエストロの最高到達点かも知れませんね。
「僕はジャズが死んだとは思っていないんだ。けれど、ジャズのコンポジションがいくらかは失われた芸術となっているように思えるね。つまり、沢山の偉大で新たなプレイヤーは登場しているけど、偉大なライターはそんなに多くないんだよ。僕が聴く限りではね。」
ファストに絶妙にアウトする複雑怪奇なリックの数々、オーバードライブのエナジーは当然 Scott の象徴だと言えますが、彼自身はむしろリズムの魔法、洗練されたハーモニーや調性の美しさを宿した多様な作曲の妙に現在より重きを置いています。
事実、アルバムはシームレスにジャンルの境界を繋いでいます。Holdsworth と Jeff Beck の完璧なる婚姻 “Transatlantic”、TRIBAL TECH を想起させるソリッドなファンカデリックフュージョン “Primary Location”、疾走する4ビートに Wes Montgomery イズムを織り込む “Satellite”、PINK FLOYD の叙情とエモーションを封入した “Blood Moon”、ブルースの奔放をペダルの魔法で解放する “Syringe”。その緊張と緩和、繊細と躍動のダイナミズム、楽曲のバラエティーはまさに “Lost Art” に相応しき輝きを放っていますね。
今回弊誌では、Scott Henderson にインタビューを行うことが出来ました。「僕の考えでは TRIBAL TECH が唯一革新的だったのは、音楽を事前に書くことなくスタジオでジャムって、それを後のプロダクションでコンポジションに落とし込んでいくやり方だろうな。」どうぞ!!

SCOTT HENDERSON “PEOPLE MOVER” : 9.9/10

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