EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ASH GRAY OF VENOM PRISON !!
“Without Hope, What Is The Point? We Are Here Now And We Can Live, We Have To Survive, We Have To Be Happy And Our Youth Will Learn And Understand And Hopefully Generations To Come Are The People To Make The World a Better Place. If We Don’t Try, We Won’t Find Out.”
BECOMING A MOTHER IN A METAL WORLD
「とても残念だけど、2022年に予定されている公演を全てキャンセルすることにしたわ。妊娠中、私は生まれてくる子供と共に VENOM PRISON のフェスティバルやショーを実現させるために計画を立ててきた。でも今になって、私は野心的で、初めての母親業をこなしながら物事を実現するため自分にプレッシャーをかけすぎていたことに気づいたの。
メンバーたちは、私の状況に合わせながら、ステージに復帰するために本当によく動いてくれていた。そして、彼らのサポートと理解にはとても感謝しているの。私たちは本当に努力したんだけど、息子と家族には今、フルタイムで私が必要なのよ」
VENOM PRISON のボーカリスト Larrisa Stupar が6月8日に出したステイトメントです。そしてここには、ライブを愛するメタルのカリスマとしての Larrisa と、家族を愛するひとりの女性としての Larrisa、その狭間で悩み、苦しみ、葛藤する等身大の彼女がそのまま投影されています。
「Larissa と夫の James に元気な男の子が生まれたんだ! そして、Larrisa がこのような野心を持ち、僕たちが “人生はこうあるべきだ” と言われてきたような従来のやり方に甘んじようとしない人であることが、とてもクールで、尊敬に値すると思っているよ」
Larrisa の妊娠をうけて、当の Larrisa 夫妻とその家族だけでなく、VENOM PRISON のメンバー全員、ひいてはメタル世界すべてが喜びにつつまれました。かつて弊誌のインタビューで 、”私はメタルという自分のミクロな宇宙の中だけでなく、あらゆるレベルで性差別と戦いたいと思うのよ” と語り、実際、インドにおける商業的な代理出産 (インドの貧困の中で暮らす脆弱な女性から搾取し、自分の子供を持つことが困難な米国の若い家族からも搾取するという悪魔の二重構造) 負の輪廻に “Samsara” という牙を叩きつけ、“Uterine Industrialisation” “子宮工業化” に怒り狂った彼女にとって、母になることとは明らかに特別な経験であり祝祭だったのです。
「希望なくして、何の意味があるのだろう。僕たちは今ここにいて、生きることができている。生き延び、幸せにならなければならないんだよ。若者たちには学び、理解し、願わくば、来るべき世代が世界をより良い場所に導くための人々であってほしいのだよ。やってみなければ、わからない。為せば成る、為さねば成らないのだから」
もちろん、2022年において子を持つ、母となることは並大抵のことではありません。安い賃金、貧困、取得できても短い育休、保育園の不足など、取るべき対策を取らない政府や富裕層によって、ほとんど世界共通で “育てる” ということのハードルが非常に高くなっています。加えて、様々な差別、欺瞞、戦争、さらにパンデミックや戦争が跋扈するこの世界を新たな命に見せたくない、そう思う人も少なくありません。それでも、Larrisa と VENOM PRISON の面々はこの世界に新たな命を迎えることを喜び、音楽と希望を託していくことに決めたのです。Larrisa は、今年の国際女性デー、KERRANG! 誌にこうした文章を掲載しました。
「この10年、職場や仕事の機会、社会における平等は少しずつ改善されてきている。しかし、音楽業界は、全体的にまだ男性優位の分野。SNS や音楽メディアを見ると、男女の表現は多かれ少なかれ平等であるように見えるかもしれないけど、研究結果はそうではないことを示しているわ。2012年から2017年にかけて、ビルボードの年末 Hot 100チャートにランクインした600曲のうち、女性が演奏した曲はわずか22.4%で、女性のソングライターの数はさらに少なかったそう。これは、レーベルや雑誌、ブッキング・エージェンシーで女性が占める地位ではないのだから、非常に厳しい数字よ。さて、このような大きな男女格差の原因とその解決策について述べることもできるけど、これはもう何度も議論されてきたこと。その代わりに、男性が支配するこの業界を女性がどのように乗り越えていかなければならないかを取り上げたいと思う。
VENOM PRISON がパンデミックに襲われる前、2019年の最後のライヴを行ったとき、次に2021年の Bloodstock に出演するためにステージに戻るとき、自分が妊娠9週目になるとは思ってもみなかった。最近、スタジオで “Erebos” のレコーディングを終えた私は、練習セッション中にこのニュースをバンドの他のメンバーに伝えることにしたの。私は、音楽業界で働く他の多くの女性たちと同様、妊娠を知った人たちがどのような反応を示すかとても心配だった。多くの女性ミュージシャンにとって、将来母親となることを発表することは、おめでたいことではなく、むしろ不愉快なことかもしれないから。ツアー中のミュージシャンの場合、影響を受けるのは自分のバンドだけでなく、マネージメント、レコード会社、ブッキングエージェント、PR、ツアークルーなど、一緒に仕事をする人たちにも及ぶから。
ありがたいことに、バンド仲間、レーベル、マネージメント、みんなが前向きで私の状況を理解してくれて、とてもサポートされていると感じていても、ミュージシャンとしての将来はとても不安だったわ。ライブ業界でのキャリアは、多くの新進気鋭のミュージシャンにとって仕事というよりもライフスタイルのようなもので、ツアースケジュールをこなすことはは非常に難しく、新しい母親にとってはほとんど不可能に思えるかもしれないくらいにね。
そのためか、ロックやメタルの世界では、出産を控えた女性ミュージシャンやすでに親になっているミュージシャンをあまり見かけない。この世界は自分のキャリアを計画するのが難しく、多くの人が音楽的願望やキャリアを追求するために子供の世話を犠牲にしなければならないことを恐れているの。私はメタルの世界で母となるため、多くの質問や疑問を抱えているけど、単に誰も頼ることはできないの。音楽のキャリアをどう進めるか、休業中の経済的負担はどうするか、他の女性たちはツアーと子育てをどう両立させているかなど、自分一人で考えなければならないのよ。
だから、私たちは意識改革を行う必要がある。より包括的になるために、業界は妊娠と母性という概念を理解する必要があるわ。ライブハウス業界では女性はまだ少数派で、それがこうした話題がほとんど出てこない大きな理由の一つ。妊娠中のミュージシャンやクルーのための戦略や手配を導入する必要があるわね。他の業界と同様に、妊娠を理由に差別をしないこと、妊娠中の親とこの問題について敬意を持って話し合うこと、可能な限りサポートを提供することを学ぶ必要がある。私たちは、世界を良くしていく必要があるの」
結果として、Larrisa の野心や挑戦は出産直後という難しい状況において、うまくはいかなかったかもしれません。もちろん、幼い頃は子供に寄り添うべきという議論もあるでしょう。しかし、ライブと家族、愛するもの両方を大切にしたい、どちらも失いたくないという彼女の気持ちは多くの人々に届いたはずですし、そんな決して大望とはいえない願いを叶えていくのが優しい世界というものでしょう。きっと、メタルの包容力があれば叶うはず。そして何より、Larrisa のこれからの長い人生において、子育てとメタルの両立はライフワークとなり、時に強烈で時に繊細な彼女の歌のように、誇り高きメタルの母親像を提示していってくれるはずです。”Erebos” で体現したように、闇や混沌をなぎ払いながら。
今回弊誌では、Ash Gray にインタビューを行うことができました。「貧困と暴力の連鎖は、結局富裕層からのサポートがないことに起因しているんだ。僕は貧困層の人たちと一緒に働き、彼らの生活を見てきた。制度がいかに彼らを完全に失敗させ、弱者として残し、そこから生き残るために決断を下さざるを得ない状況をね」もともと、Larrisa が受けてくれる予定でしたが難しくなり、急遽代役を引き受けてくれたのですが、現在バンド、そして世界が置かれた状況を素晴らしく伝えてくれています。世界を良くしたい。願わくばそう望む人が一人でも増えますように。どうぞ!!
VENOM PRISON “EREBOS” : 10/10
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