EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KARI HARALDSSON OF MÙR !!
“I Fel Like You Cannot Help Being Influenced By Your Surroundings When It Comes To Creating Art.”
DISC REVIEW “MÙR”
「芸術を創作するとなると、周囲の環境に影響を受けずにはいられないような気がするね。僕らにとっては、この地の自然が曲作りのプロセスにあまり意識的に関わることはないけれど、散歩に出かけたり、車で全国を横断して人里離れた場所を訪ねたりして、新しい何かを発見するために自然の中で時間を過ごすのが好きなんだ」
その国の環境、自然、そして文化は生まれてくるメタルに影響を及ぼすのでしょうか?少なくとも
、アイスランドほどその自然にメタルが彩られた国はないでしょう。大地は硫黄のプールで沸騰し、イオンの光が壮大な空のスペクタクルを繰り広げる氷の火山岩。プレートテクトニクスの驚異的な力によって熱と電気が供給され、夏は太陽が沈まず、冬は昇ることすらありません。畏怖と美麗が数百万年前から同居するこの場所は、同様にそのふたつを内包するプログレッシブ・メタルにとってある意味約束された場所なのでしょう。Sigur Ros, SOLSTAFIR, AGENT FRESCO など、アイスランドは人口40万人足らず (香川県よりも少ない!) の小さな国ですが、その音楽的な影響はもはや無視できないほどに巨大です。そうしてまた、彼の国の自然を胸いっぱいに吸い込んだ新鋭が登場。MÙR はデビュー作にして、すでに現代プログ・メタルシーンの中心にいます。
「僕ら自身は、特定のサブジャンルやジャンルに当てはめようとはあまり考えていない。曲のアイデアは、誰かと話しているときや映画を見ているときなど、どちらかといえば都合の悪いときに思いつくことが多いんだ。とても自然に生まれてくる。僕たちの音楽にはどのようなテーマやムードが多いのか、あるいは僕にとって最も自然に感じられるのはどこなのかを説明する必要があるとすれば、それは雰囲気のあるサウンドスケープと、大きく重い感情表現だろう」
Devin Townsend の物憂げな美とドゥームの共演 “Eldhaf” で幕を開けるアルバムは、GOJIRA のヘヴィな音の壁とグルーヴから、TANGERINE DREAM がごとき不吉なシンセのミルフィーユ、そうして CULT OF LUNA の壮大なアトモスフィアまで、モダン・プログレッシブの多様性をアイスランドの自然、そのコントラストとシンクロさせていきます。
「アイスランド語で作詞をするのがとても自然なんだよ。自分の考えや感情を英語に翻訳すると、表現しようとしているものとの個人的なつながりを少し取り除いてしまうような、フィルターのようなものがかかってしまうからね」
荒涼としながらも美しく、終末論的ムードの中に光を宿した MUR の音楽。そして、その根幹はアイスランド語が支えていました。Kári Haraldsson の歌声は MUR 最大の武器。そのピッチの高いスクリームは、Joe Duplantier と Devin Townsend の中間に位置し、地を裂くグロウルは Randy Blythe のように露骨でけたたましい。
そうしてヒリヒリと呪詛的な母国語を操る彼のボーカルは、火山地帯のアイスランドにオーロラの電離層のような、予想外だが独特のテクスチャーをもたらすことに成功したのです。
壮大なメタル・グルーヴ、衝撃的なシンセサイザー、そして彼の地の情景を湛えたアトモスフィアと歌声のダンス。メンバー5人の時間を切り取ったむき出しのアートワークが伝説となる日も、そう遠くない未来なのではないでしょうか?
今回弊誌では、Kári Haraldsson にインタビューを行うことができました。「宮崎駿監督の作品(そして他の多くのスタジオジブリ作品)は昔から大好きで、昨年初めて “デスノート” や “進撃の巨人” を観たときは本当に楽しかった。子供の頃、古いニンテンドーDSやゲームボーイでポケモンをよく遊んだけど、最近また遊び始めたんだ!とても懐かしく、昔のトレーディングカードのコレクションもまだ持っているからね。邦楽はまだあまり聴いていないのだけど、ここ数週間は藤田まさよしの “Bird Ambience” というアルバムをよく聴いているよ」 Devin Townsend の傑作 “Ocean Machine” に薫陶を受けたのも納得の素晴らしさ。またショルキーがかっこいい!どうぞ!!
MÙR “MÙR” : 10/10
INTERVIEW WITH KARI HARALDSSON
Q1: First of all, what kind of music did you grow up listening to?
【KARI】: I grew up mostly listening to my dad’s old classic rock and heavy metal CDs. During my teenage years I branched out to more extreme metal and started exploring electronic and ambient music, alongside listening to a lot of jazz and classical music when learning the piano.
Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?
【KARI】: 父の古いクラシック・ロックやヘヴィ・メタルのCDを聴いて育ったんだ。10代のころは、もっとエクストリームなメタルに手を広げ、エレクトロニック・ミュージックやアンビエント・ミュージックも探求し始めた。同時に、ピアノを習っていたからジャズやクラシックもたくさん聴いていたよ。
Q2: How was Mur formed? What is the origin of the band’s name?
【KARI】: Hilmir and I met in high school, while studying filmmaking. We started jamming out in my mom’s garage on the weekends, mostly just playing cover songs of our favourite metal bands at the time. His guitar teacher at the time was Þráinn Árni Baldvinsson of Skálmöld and Jón Ísak, our other guitarist, was also being taught by him. They met after one class and Þráinn, recognising their shared musical interests, pushed them to meet up with me the next weekend to play together all three of us. After jamming in my mom’s garage for a couple of years, we met the rest of the guys while studying jazz at Menntaskóli í Tónlist, a music school in Reykjavík. So the band slowly morphed from a weekly garage jam into Múr, as we slowly started coming up with our original material.
Q2: MUR はどうやって結成されたんですか?
【KARI】: Hilmir と僕は、映画制作を学んでいた高校時代に出会ったんだ。僕たちは週末に母のガレージでジャムセッションを始め、主に当時好きだったメタル・バンドのカバー曲を演奏していた。当時の彼のギターの先生は Skálmöld の Þráinn Árni Baldvinsson で、もう一人のギタリスト Jón Ísak も彼に教わっていたんだよ。
ある授業の後、2人は出会い、2人の共通の音楽的興味を理解した Árni は、次の週末に3人で演奏するために僕と会うよう勧めたんだ。母のガレージで2、3年、3人でジャムった後、レイキャビクの音楽学校 Menntaskóli í Tónlist でジャズを勉強しているときに他のメンバーと出会ったんだ。そうしてバンドは、毎週やっていたガレージ・ジャムから、徐々にオリジナル曲を作るようになり、Múr へと変化していった。
Q3: Iceland is not a big country by any means, but it has produced a lot of great and innovative bands like Sigur Ros, Solstafir, Agent Fresco, and you guys! Do you actually have a rich music scene and music education?
【KARI】: Thank you! Iceland has a very active music scene, covering a wide range of genres. The metal scene is not very big, but it is very active and involved, with many bands sharing members and the concerts being well attended and everyone supporting each other.
Q3: アイスランドは決して大きな国ではありませんが、Sigur Ros, SOLSTAFIR, AGENT FRESCO, そしてあなたたちのような偉大で革新的なバンドを多く輩出してきましたね!アイスランドには、豊かな音楽シーンや音楽教育があるのですか?
【KARI】: ありがとう! アイスランドは音楽シーンがとても活発で、幅広いジャンルをカバーしている。メタル・シーンはそれほど大きくはないけれど、とても活発で、多くのバンドがメンバーを共有し、コンサートには多くの観客が訪れ、みんながお互いをサポートし合っているんだ。
Q4: I have an image of Icelandic bands making music that reflects their rich nature, like Volcanoes and oceans, and you guys do too, don’t you? Is Iceland’s nature a big inspiration for you?
【KARI】: I feel like you cannot help being influenced by your surroundings when it comes to creating art. For us, it’s not very consciously involved in the songwriting process, but I still love spending time out in nature, whether it’s going out for walks or driving across the country and visiting remote places to discover something new.
Q4: アイスランドのバンドは、火山や海など豊かな自然を反映した音楽を作っているイメージがありますが、やはりアイスランドの自然はあなたたちにとっても大きなインスピレーションですか?
【KARI】: 芸術を創作するとなると、周囲の環境に影響を受けずにはいられないような気がするね。僕らにとっては、この地の自然が曲作りのプロセスにあまり意識的に関わることはないけれど、散歩に出かけたり、車で全国を横断して人里離れた場所を訪ねたりして、新しい何かを発見するために自然の中で時間を過ごすのが好きなんだ。
Q5: The Icelandic language is very important to you guys, as is nature, right? Why do you use this language in your lyrics and titles?
【KARI】: Writing lyrics in my native language has just always felt more natural for me than writing in English, as translating my thoughts and feelings into English seems to put up this filter that removes a bit of my personal connection to what I am trying to express.
Q5: アイスランドの自然と同様、アイスランド語もあなたたちの創作にとって大切なようですね?
【KARI】: アイスランド語で作詞をするのがとても自然なんだよ。自分の考えや感情を英語に翻訳すると、表現しようとしているものとの個人的なつながりを少し取り除いてしまうような、フィルターのようなものがかかってしまうからね。
Q6: The album has both an apocalyptic feel and a saving light. Is this based on Icelandic mythology? Or is it the world of today’s reality, dark and distorted by war and division?
【KARI】: To me, the music and lyrics are more of an exploration into an internal, personal conflict rather than something external like war and division. They delve into subjects like facing who you are, finding your place and purpose in the world, and finding strength in letting go of what has been holding you back.
Q6: このアルバムには黙示録的な雰囲気と救いの光の両方がありますね。そのアルバムのムードはアイスランドの神話に基づいているのでしょうか?それとも、戦争と分断によって暗く歪んだ今日の現実の世界なのでしょうか?
【KARI】: 僕にとって、この音楽と歌詞は、戦争や分断のような外的なものよりも、むしろ内的で個人的な葛藤を探求するものだった。自分自身と向き合い、世界における自分の居場所と目的を見つけ、自分を縛っていたものを手放すことで強さを見出すといったテーマを掘り下げているよ。
Q7: You guys have a mix of complex, prog-ish parts like Devin Townsend, Gojira and atmospheric post-metal parts like Cult of Luna, which do you feel you are more like yourself?
【KARI】: Thank you, those are all absolutely fantastic artists! I don’t think about it very much, trying to fit a certain sub-genre or genre in general. I just write whatever music comes naturally to me, which seems to happen mostly subconsciously, with ideas for songs often coming to me at inconvenient times like during a conversation with someone or while watching a movie. If I would have to describe what sort of themes or moods seem prevalent in our music, or where it feels most natural to me, it would be in atmospheric soundscapes, and big, heavy expressions of emotions.
Q7: あなたたちは、Devin Townsend や GOJIRA のような複雑でプログっぽい部分と、CULT OF LUNA のようなアトモスフェリックなポスト・メタル的部分が混在していますが、どちらがより自分たちらしいと感じますか?
【KARI】: ありがとう!素晴らしいアーティストばかりだ!僕ら自身は、特定のサブジャンルやジャンルに当てはめようとはあまり考えていない。曲のアイデアは、誰かと話しているときや映画を見ているときなど、どちらかといえば都合の悪いときに思いつくことが多いんだ。とても自然に生まれてくる。僕たちの音楽にはどのようなテーマやムードが多いのか、あるいは僕にとって最も自然に感じられるのはどこなのかを説明する必要があるとすれば、それは雰囲気のあるサウンドスケープと、大きく重い感情表現だろう。
Q8: The artwork featuring photos of all the members is very unusual and striking in recent years. Why did you decide on this photo for the artwork?
【KARI】: We tried a few different approaches when it came to the artwork for the album, but none of the more traditional artwork styles, like paintings or illustrations, seemed to fit the music or represent it in the right way. We did not want to play too hard into any specific pre established aesthetic or style and potentially colour or affect someone’s first experience of our music, giving them an idea of what to expect, but rather let the music speak for itself.
Q8: 全員の写真を使用したアートワークは、最近では珍しいですが実にクールですよ。
【KARI】: アルバムのアートワークに関しては、いくつかの異なるアプローチを試したけど、絵画やイラストのような伝統的なアートワークのスタイルは、どれも音楽にフィットせず、僕らの音楽を適切な方法で表現できないように思えた。僕たちは、あらかじめ確立された特定の美学やスタイルに固執しすぎて、僕たちの音楽を初めて聴く人に色付けをしたり、影響を与えたりするようなことはしたくなかったからね。それよりも、音楽自身に語らせたかったんだ。