“I Do Love Dark Music, But To Me My Music Just Sounds Like Rainbows. Jagged Piercing Ones At Times, But Still Rainbows.”
DISC REVIEW “I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY”
「私は自分の音楽を、天使と悪魔の融合とは思っていない。私にとってはすべて天使的なものなんだ。悪魔的なものは、私自身の悪魔について論じるときに題材として登場するだけでね。意図的にダークな音楽を作ろうとはしていないんだ。ダークな音楽は好きだけど、私にとって自分の音楽は虹のように聞こえるだけ。時にはギザギザに突き刺さるような虹もあるんだけど、それでも虹なんだよ」
ご存知の通り、ヘヴィ・ミュージックが無味乾燥で一義的な場所であるというのは、完全なる誤解です。とはいえ、殺風景で無彩色なスタイルの持ち主がたしかに多いのも事実。しかし、そういったアーティストと同じくらい、ヘヴィ・ミュージックを色鮮やかなアートの爆発として扱う人たちも同様に多いのです。シカゴの Fire-Toolz は、ヘヴィネスに宿る無限の色彩を提案するインターネットの虹。Fire-Toolz A.KA. Angel Marcloid は、プログレッシブ、ブラックメタル、ジャズ・フュージョン、インダストリアル、AOR, グラインドコア、さらには日本のシティー・ポップの要素までスリリングなプロキシを通して屈折させ、スタイルの境界を創造のピクセルで消してしまうのです。
「どんなジャンルの音楽にも、男っぽいとか、女っぽいとか、固有のジェンダー・アイデンティティや表現があるとは思えないよ。ここアメリカの私たちにしても、他の文化にしても、そうした関連付けや決めつけをしてしまうのは残念なことだよ。ただ、私はそうしたレッテル貼りが一般的であることも理解しているんだ。私がそんな風に物事を見たことがないたけでね。境界が曖昧になることは、ほとんどの場合、良いことだと思うんだ。制限を取り払い、規範を解体し、自由を活用することは、とても重要なことだから」
ここ数十年にわたるポスト・モダニズム思想の定着は、ステレオタイプを曖昧で不安定なものとし、ジャンルや形式といった制約を過去の遺物と見なす新しい文化を精製しました。Fire-Toolz の最新作、”I will not use the body’s eyes today” は、この新世界の芸術的アプローチをある意味で体現しているのです。その主眼は、音楽の “脱構築” にあります。
「他の人が私のカオスをどう捉えているかは、よくわかるんだよ。私にとってこの混沌は、とてもコントロールされ、組織化されているように感じられるんだけど、外から見ると、混乱しているように見えるかもしれないね」
私たちが毎秒何千ものピクセルを自然とスクロールするように、この7曲はリスナーを容赦なく説得し、時に幻惑します。一つのテクスチャーやモチーフに落ち着くことはほとんどなく、さながらグリッチを含んだデジタル・コラージュのように機能していきます。最もオーソドックスな “Soda Lake With Game Genie” にしても、6分半という長尺の中にサックスやブラスト・ビート、80年代のポップなど、予期せぬ展開が濁流のように押し寄せる非常に流動的な仕上がり。
“A Moon In The Morning” では、Angel Marcloid のパレットは全体を覆い尽くす焼けるようなディストーションへと変化し、悪魔の遠吠えとオーケストラのMIDIストリングスの厳しいせめぎ合いが対消滅の危機感を抱かせます。イタロ・ディスコ、テクノ、EBM のテイストを取り入れたビートも、アコースティック・ギターのサスティーンを強調したブレイクダウンも、この構築を逃れたしかし意図的なカオスの中にあります。
重要なのは “仕切り” がないこと。ここはブラックメタル、ここは AOR、ここはプログレッシブなどという構築された混沌は、結局のところステレオタイプで、興ざめです。
こうして、従来の構成や動きといった概念を完全に捨て去ろうとする姿勢が “I will not use the body’s eyes today” をユニークで挑戦的作品にしているのです。それはまさに、体の目を使わず、心の目で作品を作ること。心を開き、未来を見据えることのできるリスナーにとって、この計算された混沌はすべての芸術と文化が境界線を失ってもまだ機能する世界の予兆とまで言えるでしょう。そう、私たちは Fire-Toolz によってまんまとハッキングされているのです。
「”I will not use the body’s eyes today” というフレーズは、多かれ少なかれ、私がエゴ (肉体的な目) からではなく、高次の自己の目 (心の目) から見ることを肯定しているんだよね。つまりこれは、超越のための嘆願なんだよ」
ヴェーダ哲学、キリスト教神秘主義、見捨てられることへの恐れ、感情の断絶、愛着の不安、自己破壊、意識の霊的傾向、トラウマの治癒、恥。Angel は永遠に拡張される音のツールボックスと同様に、世界とその神秘に対する多様な哲学と神学のインデックスをもその作品に注ぎ込んでいます。そうして、Fire-Toolz というプログラムは自己実現によって既存の器がさらに拡大可能であることを証明しているのです。
今回弊誌では、Angel Marcloid にインタビューを行うことができました。「カシオペア、角松敏生、木村恵子、杏里、Hiroshima、堀井勝美、鈴木良雄、菊池桃子を生んでくれてありがとう!」 どうぞ!!
Fire-Toolz “I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY” : 10/10
COVER STORY : POLYPHIA “REMEMBER THAT YOU WILL DIE
“I’m Gonna Grow Up And Be a Rock Star, And Just Truly Believing That.”
REMEMBER THAT YOU WILL DIE
「中学2年生の時にマリファナを吸い始めた。それが僕の人生の中で大きな意味を持つようになったんだ。テキサスに住んでいたから麻薬所持で逮捕されたけど、それが僕のキャリアに火をつけたようなもの。僕は保護観察中で、1年間、学校に行って、家に帰るだけだったんだ。人を呼ぶことも、友達の家に行くことも許されなかった。それで、ギターを本当に、本当に、本当に上手になろうと思ったんだ」
16歳になった POLYPHIA の Tim Henson は薬物所持で2度、法に触れてしまいました。テキサス州のように薬物犯罪が特に重く処罰される州では、尚更居場所を失います。今、28歳の Tim は、「毎日マリファナを吸える仕事に就いたんだ」と皮肉を込めて話します。「でも、”言霊” ってあるんだよね。小学校6年生のとき、”僕は Tim Hendrix。大きくなってロックスターになるんだ” って、みんなに宣言して、本当にそう思っていたんだ。だからね、意識の顕在化、決意表明。その力が本当に重要だと思うんだよ」
麻薬所持の罪で、Tim は保護観察や外出禁止処分となり、一人でいることが多くなりました。しかし、その時間をすべて使ってギターの練習を続け、貪欲に最高のミュージシャンを目指したのです。中国からの移民である母親は、息子がアメリカで得られるチャンスを最大限に生かすことを決意します。3歳のときから Tim はヴァイオリンのレッスンを受け始め、幼少期に長時間の練習に対する耐性を養いました。間違うと先生に弓で手を叩かれることもあり、決して楽しいものではありませんでしたが、彼はこの経験に感謝しています。
「多くの移民が、アメリカはチャンスの国だと考えている。だから、若いうちから何かを始めさせる親が多いんだ。乱暴な先生で、当時はかなり嫌だったけど、今思えばおかげで規律を学べたし、集中し、鍛錬し、練習することで、何事も上手になることを理解できたんだ」
10歳のある日、Tim は父親がギターを取り出すのを見ます。それまで父親がギターを弾くということを全く知らなかった彼は、その楽曲に興味をそそられました。「父親の BLACK SABBATH のコレクションから曲を選んで、耳コピを始めたんだよね。サバスは耳コピが簡単なんだ。全部Eマイナーのペンタトニックだから。そして、15歳になるころには、ヴァイオリンの気晴らしでギターを始めたのに、完全にヴァイオリンを捨てていたよ」
Tim が中学生の頃は、CHIODOS, TAKING BACK SUNDAY, FROM FIRST TO LASTなどが流行っていて、長い前髪に血行が悪くなるほどきついジーンズをはいた仲間に囲まれていました。
「年上の子たちが夢中になっていたクールなバンドだった。メロディーのいくつかは信じられないし、楽器編成も本当にユニークだと思ったんだ。ビートルズ、ジミヘン、サバスなど、古いロックしか知らなかった僕は、現代のバンドがやっていることを聴いて、特にロック的なソロとより現代的でテクニカルなリフを融合させることに、革命的な感覚を覚えたんだよね」
高校に入ると、ほとんどの同級生がシーンを卒業し、より “普通” の趣味を追求していました。しかし、Tim はまだ WHITECHAPEL を聴くことで満足していました。それでも彼は、”メインストリーム” の音楽と、それがなぜそんなに人気があるのかについて、好奇心を抑えることができなくなったのです。
「僕はメインストリームの曲を聴きに行き、なぜ多くの人々が好きなのかを理解しようとしたんだ。メタルは非常にニッチだから、僕はより多くの人に届く音楽を評価するようになっていった。何が親しみやすいのか、なぜ多くの人が共感するのか、音楽にあまり興味のない人たちでさえも。以来、その理由を分析するようになったんだ。僕自身はメインストリームの音楽に個人的に共感していたわけではなく、ただ馴染もうとしていただけなんだけどね。だけど、好きなもののために仲間はずれにされるのは、いい気分ではないからね。とはいえ、メインストリームの音楽の多くに純粋に感謝するようになったんだ」
こうした影響はやがて、Tim が2010年から活動しているバンド、POLYPHIA で作る音楽にも滲み出るようになりました。新譜 “Remember That You Will Die” は、ポップ、ファンク、EDM、Djent といった多様な絵の具をキャンバスに投影した、カルテットにとって最もカラフルでエクレクティックな作品と言えるでしょう。”オマエはいつか死ぬ。忘れるな” というタイトルは、ラテン語の格言 “Memento Mori” をロックンロールの流儀で翻訳した、羊のメタル皮を着た狼の残虐。
「人間は死が避けられないことを自認しているから、生の限られた時間を使って、永遠に存在し続けることができるものを発明しようとする。芸術家は想像力を駆使して、歴史に残るようなものを創り出すんだ。人工知能が発明され、それがアートやテクノロジーに応用されるようになると、人間の思考とコンピューターの思考のギャップを埋める方法が見つかる。 この2つをつなぐことは、最終的に人間の経験の永続性につながり、それは人間が不老不死になることに最も近いと言えるんだ。アルバムのタイトルは、このアートと結びついているんだ」
つまり、POLYPHIA の発明とはジャンルのステレオタイプを気にかけないこと。それが彼らの成功の礎です。彼らは MySpace でデスコアをイメージさせる10代の若者としてテキサスから現れたましたが、彼らをスターにしたのはそのブレイクダウンではなく、21世紀で最もジャンルを打ち破るリックをいくつも生み出したから。ファンク、マスロック、ヒップホップをミックスしたインストゥルメンタル・ジャムは、YouTube で何百万もの再生と Instagram のフォロワーを獲得しました。
「僕たちは何からでもインスピレーションを受ける。過去数枚のアルバムからギターを取り除き、ドラムとベースだけを聴くとしたら、トラップ・ビートやフューチャー・ベース・ビートが残る。もしギターを外して、演奏しているものにボーカルを加えても、やっぱりそう聴こえるだろう。つまり POLYPHIA でギターっぽいのはギターだけで、あとは人間がプログラムされたパートを演奏しているだけなんだ」
POLYPHIA は、半分プログレッシブ・インストゥルメンタル・バンドで、半分オンライン・インフルエンサーだと言えるのかも知れませんね。バンドが2016年に “Euphoria” のビデオを公開した際、半裸のスーパー・モデルをサムネイル画像として起用したところ、400万人を数える人々にクリックバウトされました。YouTube のトップコメントにはこう書かれています。”彼らはとても賢い。美しい女性の画像を使って、騙して素晴らしいギター・バンドを発見させるなんて。ありがとう”
「POLYPHIA は意識的に2つの非常に異なるオーディエンスを一緒にしようとしたんだ。一つはギター・マニアとオタク。もうひとつは、ジャスティン・ビーバーや ONE DIRECTION のキッズだった僕らと同世代の女の子たちだ。それが目標だったんだけど、何年もかけて、自分たちではない何かになろうとすることを減らして、自分たちでいるようになったんだ。今でも男性中心だけど、ライブでは女の子がたくさんいるんだよ」
Ichika Nito、Mateus Asato、Yvette Youngといった才能あるアーティストを起用した 2018年の3rdアルバム “New Levels New Devils”。彼らのプロモ写真には、メルセデスに腰掛け、まるでクールなキッズのような格好をした4人組の姿が写っていました。テック・メタルを愛する若者たちにとって、それはある意味冒涜的な行動でしたが、Tim は当時、重要なことはクールであることと女の子にモテることだったと胸を張ります。
「2004年の “St Anger” で、METALLICA のプロモを見たんだ。彼らは全員メルセデスでリハーサルスペースに乗り付けたんだ。すげーカッコいいと思ったんだ。その時、自分たちを世界最大かつ最高のメタル・バンドと呼ぶというミームを思いついたんだよ。それに、僕らがもっとビッグになりたいと思っていた頃、ONE DIRECTION はまだ存在感を示していた。僕たちは、”よし、彼らがやっていることをやろう。明らかに女の子が好きなことだ” と思ったんだよな」
“The Most Hated” という明らかにノンギターな EP は、ファンたちの頭を悩ませ、中には逃げ出してしまった人もいました。
「あのリリースで、”俺たちが先にいたから POLYPHIA は俺たちのものだ” みたいな気取った老害的ファンを排除したんだ。彼らは僕たちの以前の作品を気に入っているから、それはそれでよかったんだ。結果として、新しいファンを獲得することができたからね。アマチュアから現在のようなバンドへと成長できたのさ。このアルバムも、半分は既存のファンのため、残りの半分は新しいファンのために作ったよ」
ボーカリストがいないことで、当初は多くのリスナーにとって眉唾ものでしたが、Tim はむしろインストであることがバンドに大きな創造性と可能性をもたらしたと考えています。
「より多才になれるし、より多くのコラボレーションが可能になるんだ。僕が本当に理想としているビジネスモデルは、EDMがすごく流行っていた2015年から16年ごろ、Zedd と Alessia Cara みたいな DJ とポップスターとのコラボも盛んで、同じ DJ があらゆるポップスターとコラボしてスターのキャリアを飛躍させるようなシステム。POLYPHIA のアイデアは DJ なんだよね。どんなシンガー、ラッパー、メタル・ボーカリスト、楽器奏者、DJ、プロデューサーともコラボできるんだ」
Chino Moreno や Steve Vai、ラッパーの Killstation や $not、ポップスターの Sophia Black など、”Remember That You Will Die” の豪華なゲスト陣を見れば、POLYPHIA の生み出したモデル・ケース、その影響力が浮き彫りとなります。
“Don’t Take The Easy Dollar. Find What You Want To Do — What Makes You Happy — And Go With It. Live Virtuously, And You’ll Be Rewarded Tenfold. I’m Not Rich, But I’m Happy Where I’m At”
DREAMKILLER
Arthur Rizk はモダン・メタルの秘密兵器でしょう。もし彼の名前を知らなくても、メタルヘッズなら彼の仕事は必ず知っているはずです。2006年以来、プロデューサー、ソングライター、エンジニア、マルチ奏者として300を超える実績を誇る Arthur のキャリアは、ダラス生まれのニューカマー POWER TRIP のデビューフル “Manifest Decimation” を2013年に手がけたことで飛躍的な成長を遂げました。SOULFLY, KREATOR, CAVALERA CONSPIRACY, CRO-MAGS, SACRED REICH, CODE ORANGE, PRIMITIVE MAN, TURNSTILE, SHOW ME THE BODY といったバンドは、Arthur 独特の専門知識から恩恵を受けていますが、これは表面上の話に過ぎません。最近では、ジャンルを超えたラッパー、ソングライター Ghostemane のメジャー・デビュー作を手がけ、90年代のヒップホップへの愛を全開にしたのですから。
「ETERNAL CHAMPION と SUMMERLANDS では、ほとんどメタル以外のものからしか影響を受けていない。僕が本当に好きなのはメロディックなものばかりなんだ。THE EAGLES, Lionel Richie, TANGERINE DREAM といったムードのね。もっとメロディックなものが僕の曲作りのスイッチになるし、そこから何かアイデアを得て、それをメタルとして書くだけなんだ、基本的にね。僕の作品はすべて、メタル以外のものから影響を受けている」
この6年間の Arthur の進化が、”Dreamkiller” に、誠実さ、謙虚さ、内省の正確なブレンドによってのみ可能となる重厚さを与えているのです。別の言い方をすれば、このアルバムには失うものがあるのでしょう。
Arthur は自分の部屋にレバノンの国旗を誇らしげに、そして当然のように掲げています。彼のクリエイティブな性格には、実際、そのレバノンの遺産が大きく影響しています。レバノンからの移民である彼の両親は危険を冒してペンシルバニアで新しい生活を始め、イートンでレバノン風デリカテッセンを開業したことは彼の誇りでした。ヘヴィ・メタルの洗礼を受ける前、彼が影響を受けた音楽は東洋と西洋のハイブリッドでした。一方では、レバノンの伝説的な音楽家であるフェアーズ、ファリド、アスマハン・アルアトラッシュのような人たち。もう一方は、”カトリックの賛美歌と中世とドリアンモード”。彼のメタルのルーツは後者にあり、前者はむしろ音楽の極めて個人的な性質、彼の考え方に影響を与えたのです。
「僕はレバノン系のカトリック教徒として育った。結局、音楽だけが心に残っているんだよな。面白いことに、ヨーロッパとこちら側では、好きなメタルが全く違うんだ。ヨーロッパの人たちは、エキセントリックとまでは言わないけど、結構バンドの後期の作品に興味を持つ傾向にある。80年代の大御所バンドなら、そのバンドの後期のレコードも好きなんだよ。例えば80年代のスラッシュ・バンドがあったとして、ヨーロッパの人たちは90年代や2000年代に彼らが作ったゴシック・ロックのようなものも好きだ。例えば PARADISE LOST や SENTENCED のような、ある方向から始まって別の方向に向かったバンドのレコードをずっと追いかけている可能性がある。その理由はよくわからないけどね。アメリカの人たちは、音楽の流行の移り変わりが早い気がするね。
とにかく、レバノンの従兄弟たちが、僕をメタルに引き込んでくれたんだ。IRON MAIDEN の “Virtual XI” とか、そんな感じの適当なカセットテープをくれたんだ。従兄弟たちは僕のヒーローだったから、”彼らがハマっているものは何でもハマらなきゃ!” って感じだったからね。ユーロ・メタルからの影響は、前作よりもこのアルバムの方がより強く出ているんだ」
この Arthur の形成期における幅広い芸術性は、彼の作品に不可欠であり、異例の解決策を発見する欲求を刺激し続けています。ジャンルを超えたラッパー Ghostemane のアルバム “N/O/I/S/E” と “ANTI-ICON” を手がけることは、彼の創造力の試金石となりました。”90年代のラップの大ファン” と称する Arthur は、Bun B や Three 6 Mafia、ヒューストンやメンフィスのアンダーグラウンド・テープなどを参考にしながら作品に臨みました。Ghostemane の挑戦は、”6つのジャンルの音楽をどう融合させ、親しみやすいものにするか”。その挑戦は、確かに大変なものでしたが、Arthur にとって非常に貴重な学習体験となりました。
「Ghostemane は90年代のメンフィス・ラップとインダストリアルとメタルを融合させている。同じような領域だと思うんだけど、僕はエレクトロニックなものが好きで、そういうものをたくさん手がけてきたよ。COCTEAW TWINS や DEAD CAN DANCE の大ファンだからね。そういうものに影響を受けている人たちと一緒に仕事をすることが多いよ」
Arthur は、このレコードを “6、7日で作った” と明かしています。眠れない夜と、信じられないほど楽しい時間を過ごしたと言いながら、彼は、青写真として初期のビート以外は何も持たずに、トラッキング、ボーカル、ミキシング、その他に取り組んだと断言しました。彼の DNA と切っても切れない関係にある、このマルチジャンルなラッパーとの経験で、Arthur の献身と決意が輝きを増したのは明らかでした。
「Ghostemane を失望させたくなかったんだ。このプロジェクトは、彼がメタルやハードコアの世界に飛び込む最初のレコードであり、彼の大事な瞬間だった。そんな瞬間に彼は僕を選んだんだ。を連れてきた。彼は巨大化する瀬戸際にいる。失望させるわけにはいかないんだよ」
Ghostemane との仕事を、”ノスタルジア” という旗印の下に平板化するのは間違いです。むしろ、ノスタルジーとモダンの間の興味深い一線を探っているのです。Ghostemane のメタルとヒップホップの衝撃的なブレンドは、かつての Nu-metal と共通点もありながら、明らかに一線を画すと Arthur は考えています。
では、SUMERLANDS はどうでしょう?”Dreamkiller” に目を通すと、たしかにノスタルジアは誇らしげに袖に纏っています。メタルが無限に進化すると仮定しても、”影響” と “模倣” を区別することは、Arthur がバンドのアイデンティティを構築する際の重要な柱となります。QUEENSRYCHE, JUDAS PRIEST, Jake E. Lee 時代の Ozzy Osbourne のレコードは、”Dreamkiller” に重大かつ明白な影響を与えています。ただし、SUMERLANDS には、プラトニックな理想に対する Arthur の懸念が深く刻み込まれています。彼は、JUDAS PRIEST のようなバンドを表層的に直接パロってロックンロールのグッドタイムを求めるバンドが影響力の不完全な理解であると主張しているのです。
「僕はプリーストの本質は壮大な曲にあると思う。”Sad Wings of Destiny” を聴くと、まるで QUEEN のレコードのように聴こえる。それに、Rob Halford は様々な女性フォーク・ロックに影響を受けていたんだ」
Arthur と SUMERLANDS の80’sメタルへの傾倒は、AOR, Lionel Richie、Earth, Wind & Fire、Bee Gees、そして Arthur のお気に入りである ABBA のような、ノンメタルな影響を隠し味にしています。
「このアルバムでは、誰がどう思おうが構わないと思っている(笑)。新しいシンガーが加わり、バンドが生まれ変わったような感じだ。僕は FOREIGNER の作品の大ファンなんだよ。彼らのおかげで、プロデュースにのめり込んでいったと言えるかもしれない。FOREIGNER の作品では、シンセサイザーの使い方がとても気に入っているんだ。シンセサイザーが前面に出ているわけではなく、質感を高めているような感じ。彼らのように、どの曲もどこかダークで地中海的な雰囲気にしたかったんだ」
Arthur が “ソーセージグラインダー” と呼ぶ、多種多様なアーティストの品揃えの中でも、ABBA は彼の音楽的アプローチの2つの本質を表しています。ひとつは、他のバンドの美学を一面的に捉えて音楽をトレースすることは、失敗する運命にある。2つ目の論考は、影響、認識、そして杓子定規な思い込みの投影がどのように “真正性 “というプリズムに集約されるかに関わるもの。定型の破壊。
「どのタイプの音楽にどのタイプの歌詞が合うか、というようなことは決してあってはならない。だからつまらない音楽が多いんだ。ABBA に “The Visitors” というアルバムがある。彼らが解散して、最後のレコードを作ったときのもの。どの曲も文字通り肌寒くなるような、本当に悲しい気分にさせてくれるものばかりだ。ABBA らしくないが最高なんだよ。ダンス・ギターやシンセサイザーを駆使して、キャッチーなヴォーカルも入れつつ、もっと歌謡曲っぽい曲を作りたかったんだ。誰がこのレコードを気に入ってくれるかなんて、どうでもいいんだ。僕たちはこの作品が大好きで、この作品に夢中になっているんだから」
メタル・アルバムに期待される歌詞の題材として、Arthur が “Sex、ビール、サタン崇拝” と皮肉るのとは対照的に、SUMERLANDS は、無益、黄昏、夜と昼の間の仄かな時間に見られるはかない希望といった、捉えどころのない、暗い願望のようなアイデアを選択しています。これを成功させたのは、バンドの新ボーカリスト、Brendan のおかげだと彼は言います。彼の加入は Paul Di’Anno に対する Bruce Dickinson だと Arthur は語っています。そうなると、 “Dreamkiller” はバンドの “The Number of the Beast” となり、SUMERLANDS はそれに応じて野心を高めてきたことになるのです。彼の声は前任の Swanson よりもしなやかで、上昇気流に乗りながらタイトなコーナーでもしっかりとメロディーを追いかけることができます。ただし、脈打つようなシンセサイザーと焼け付くようなソロイズム、BOSTON のようなポジティブな輝きとは対照的に、”Dreamkiller” は重苦しいユーモアと虚無的な正直さで構成されています。その好対照こそ、SUMERLANDS の真骨頂。
「楽曲の多くは絶望を歌っている。2歩進んだと思ったら、2歩下がっていたことに気づくんだ (笑)。憂鬱な曲ばかりだけど、僕らにはそれが面白いんだよ。それが人生だ!ダークユーモアだよ。まるで僕たちが罰当たりでマゾヒストであるかのようにね、わかる?
それに曲はメタリックだけど、完全なヘヴィ・メタルではない。ヘヴィ・メタルでありながら、ある意味オルタナティブ・ロックのように親しみやすいものにしたかったんだ。メタルはそういうものだよ。その瞬間や雰囲気は、ただひたすらメタル的に “オーバーキル” するよりもずっと重要だと思うんだ。僕が音楽に目覚めた頃、コールドウェーブをたくさん聴いたし、ASYLAM PARTY とか、フランスのバンドもたくさん聴いた。でも、THE CURE はミニマル・ゴスのレコードを作った最初のバンドなんだ。”Faith”。あれは僕にとっては、ちょっと手を加えれば史上最高のメタル・レコードになり得るもので、そこにも大きな影響を受けているんだ」
当然、Arthur はメタル界屈指のスタジオの魔術師であり、”Dreamkiller” でもその神聖な芸術を爆発させています。例えば、タイトル曲の疾走感あふれるメインリフ、それをなぞる羽のように軽いシンセサイザーや、”Death to Mercy” で80年代らしい深いフェードアウトの靄の中に消えていくデュエル・ソロのように、彼は小さなディテールに喜びを感じているのです。もしタイミングとレコード契約に恵まれていれば、JOURNEY や TOTO がアルバムチャートを席巻していた頃、SUMERLANDS は彼らと同等のレコーディング費用を得ていたかもしれません。しかし、Arthur の才能より、彼らはそのような大掛かりなサウンドを、相応の費用をかけずに実現したのです。
もうひとつ、Arthur がこだわったのは、プロジェクトとバンドの区別と、前者の限界です。バンドは、Arthur が言うように、”興奮するためのもの” であり、個別のアイデンティティを持っています。80年代の US メタルは、”1枚のレコードを作るだけで、それが素晴らしいものであったとしてもやがて消えていく” バンドであったと、彼は言います。彼らは成功には無関心でしたが、自分にとって重要なのは ‘彼らがいつもバンドを組んでいたこと” だと Arthur 言い切ります。
「SUMMERLANDS をできるだけ “プロジェクト” から遠ざけようと思ったんだ。2、3人の男が何かをやっているとわかると、人々はそれを小さなプロジェクトか何かのカテゴリーに入れてしまうからね。プロデューサーの産物ではなく、バンドのように思わせたかった」
ギターの話になると、噂の “ストラト・オンリー” ポリシーが登場します。このジョークの由来は、”史上最高のヘビーメタルバンドの1つ” に対する素直な憧れからだと、Arthur は嬉しそうに語ります。「イングランド出身のサタンだ」。彼らのギタリストがストラトしか弾かないという事実が、彼にとってはとてもクールだったのです。IRON MAIDEN のデイヴ・マーレイのストラトに対する長年の執着は本当に面白いと Arthur は言います。彼は、”Twilight Points the Way” のストラト・サウンドが “Dreamkiller” の音色美を最もよく表しているトラックだと主張します。しかし、この曲は単なるストラトの曲ではなく、バンドの結束にとって欠かせない楽曲でもあります。「この曲は僕にとって厳粛な誓いなんだ」
宗教、イデオロギー、スタジオ、ステージ、そして数十年にわたるジャンルを超えた音楽的影響の網の目の中で、Arthur は自分自身に忠実であり続けるという揺るぎない信念を持ち、様々な経験を積みながらその意味を内省的に再確認してきました。彼は、音楽と文化のはかなさを痛感しています。「それが絆だと思うたびに、目を離すと消えているんだ」
特に音楽においては、一般的に2つのうちの1つが起こると Arthur は主張します。一方は、自分の興味に忠実でないまま、若者の好みを追いかけることに終始してしまう。逆に、自分自身に忠実すぎる人は、若い人たちとのつながりを持てないかもしれない。アーサーは、”安全な “ルートを避けながら、自分の興味のある音楽を追求することで、”少なくとも誰かが聴きたくなるようなものを作ることができる” と言います。つまり、彼の芸術的なアイデンティティにとって不可欠なのは、自分の意思に従って音楽の旅をするという決意であり、それは最も大きなリスクであると同時に、最も大きな見返りをもたらすものなのです。
「大物のプロジェクトを引き受けたり、自分の経歴を利用して大きな仕事を得たり、常に自分を売り込むのとは対照的に、そうすることで僕はずっと幸せになれたんだ。安易にお金を取らないこと。自分がやりたいこと、自分を幸せにすることを見つけ、それを貫くこと。高潔に生きれば、10倍の報酬が得られる。僕はお金持ちではないけれど、今いる場所で幸せなんだ。今夜午前2時にコンピュータに向かい、3時間の睡眠をとって朝の8時まで仕事をしても、幸せな気分でいられるよ。自分が取り組んでいることに満足しているからね。これこそが、人が考えるべき人生の大きなポイントだと思う。それが君が取るべきリスクなのさ」
“There will be bands where you’re like, “I only like the early stuff because the later stuff got different.” That’s fine, but do you really need six records that sound like one specific thing?”
DREAM UNENDING
人生は厳しいもの。人は必ず成長し、生きるために働き、老いて死にます。もし、そんな苦痛のサイクルから解き放たれたとしたら? もし私たちが現代生活の呪縛から解放され、哲学的な反乱を起こし、諦めるのではなく人生を謳歌することができたらどうでしょう。TOMB MOLD の Derrick Vella と INNUMERABLE FORMS, SUMERLANDS の Justin De Tore によるデュオ、DREAM UNENDING は、そうして人生という果てしないファンタジーに慰めを見出しました。
ANATHEMA や Peaceville Three に影響を受けたデスメタル、ドゥーム・メタルを背景に、DREAM UNENDING が描く人生に対する理想を理解することは簡単ではないでしょう。De Tore は、人生の循環的な側面と、逆境に直面した際の魂の回復力をテーマに、音楽とのより深い感情的なつながりを求めているのです。
すべての弦楽器を担当する Vella は、夢のように破砕的な雰囲気を作り出し、バンドが影響を受けてきた素材をさらに高揚させながら、個性と職人的なセンスで巧みにアイデアを育てていきます。デスメタル、ドゥーム・メタル、デス・ドゥームではなく、バンドを “ドリーム・ドゥーム” と呼ぶ Vella のソングライティングは、ヘヴィネスの黒海と天国から射す光のちょうど中間にある絶壁で稀有なるバランスを取っています。
それにしても、デスメタルの救世主として名を売った2人は、なぜゴシックやデス/ドゥームメタルの父である “Peaceville” にオマージュを捧げることになったのでしょう?Derrick Vella が答えます。
「僕が初めて Peaceville に触れたのは PARADISE LOST だった。2000年代に古いゴスのブログを通じて “Shades of God” を聴いたことがあったんだ。正直なところ、あのアルバムは好きではなかったね。そのブログで彼らが “Gothic” というアルバムも出していることを知ったんだけど…なぜあのブログはそっちをアップロードしなかったのか、理解できなかったよ。
“Gothic” は簡単に僕を虜にした。当時聴いていたダーク・ウェイヴ、ポストパンク、エクストリーム・メタルの延長線上にあるような、論理的なものだったからね。まさに世界がぶつかり合う瞬間だった。ちょうどあの頃は、夜、真っ暗なバスで帰宅していたから、このアルバムと THIS MORTAL COIL の “Filigree and Shadow” が混ざっても、それほど飛躍した感じはしなかったね。思い出深いアルバムだよ。
その頃から、友人がドゥーム・メタルにハマり始めたんだけど、彼はカーゴ・パンツのドゥームではなく、もっとベルボトムのようなドゥームが好きでね。だから幸運なことに、THERGOTHON や ESOTERIC みたいなバンドを紹介してもらうことができたんだ。ESOTERIC はこれまで存在した中で最も偉大なメタル・バンドかもしれないね。とても共鳴したよ。UNHOLY のファースト・アルバムもそう。それで結局、Peaceville のものをもっと聴くようになったんだ。
でも、何よりも他のバンドより心に響いたのは、ANATHEMA だった。いつも一番胸が締め付けられる。パワフルで壮大だ。ドゥームというのは面白いジャンルだよね。奇妙にプログレッシブであったり、簡単に雰囲気を作り上げることができたり、空間をシンプルに埋めて濃密なものを作り上げることができたり。デスメタルと同じくらい、いや、それ以上に好きなんだ。
DREAM UNENDING が存在するのは、Justin にバンドを始めようと誘われたからなんだ。それまではドゥーム・メタルを書こうとさえしていなかった。みんなは、僕が高いクオリティでたくさんの曲を書くことができるといつも言ってくれるけど、本当に頼まれたときしかやらないんだ。他人のために書くというプレッシャーの中でこそ、僕は成長できるんだろうな」
ボーカルとドラムを担当する Justin De Tore にとっても、PARADISE LOST と ANATHEMA は重要なバンドでした。
「PARADISE LOST を初めて聴いたのは、”Draconian Times” が発売されたときだった。ここボストンの大学ラジオでレギュラー・ローテーションとして放送されていたんだよね。ただ、EVOKEN / FUNEBRARUM の Nick Orlando が PARADISE LOST の最初の数枚のレコードをチェックするように薦めてくれるまで、彼らの初期の作品を聴くことはなかったんだ。僕は21歳で “Gothic” を聴いて、とても深い経験をした。基本的に Nick は僕をデス/ドゥームに引き込んだ人物で、だから彼には感謝しているよ。
ただ、”Peaceville Three”も好きなんだけど、一番好きなのは ANATHEMA。Darren White のように痛みや悲しみを表現する人は他にいないよ。とても感動的だ。とにかく、このスタイルで演奏するのはずっと夢だったんだけど、それを実現するための適切な仲間がいなかったんだ。だから、Derrick のように、僕と同じような熱意を持ってくれる人に出会えたことは、自分にとって幸運だったと思っている」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LINUS KLAUSENITZER OF OBSIDIOUS !!
“The Wars And Violence In The World Can Only Make You Feel Depressed. I Try To Still Have a Normal Life By Focusing On The Beautiful Things In Life Without Ignoring What Is Happening In The World.”
COVER STORY : ARCHITECTS “THE CLASSIC SYMPTOMS OF A BROKEN SPIRIT”
“Music Is an Escape For People. You Can Have Very Traumatic Experiences And Come And Enjoy Our Music And Listen To The Songs That Are About These Situations. But I Also Want You To Be Able To Come And Switch Off And To Let Us Be Your Saturday Night, Even If It’s On a Tuesday Or Wednesday, Come And Have a Good Time With Us And To Forget About The Stresses Of The Modern World.”
“壊れた精神の典型的な症状”。Sam は不安を感じた時、David Bowie のビデオを見ます。このビデオは、ミュージシャンに対して、常に自分の直感に従い、決して引き下がらないようにと励ましているのです。
「David Bowie は、アーティストの最高の作品は、足が底につかず、水の上に浮かんでいる瞬間だと言っている。もし安全すぎて足が床についていたら、正しい仕事をしているとは言えないんだよ」
Sam は、Bowie の助言を確かに心に刻みました。ARCHITECTS はパンデミックに見舞われる前に、すでに世代を超えた最高のUKメタル・バンドとしての地位を固めていました。2015年の “Lost Forever // Lost Together”、2016年の “All Our Gods Have Abandoned Us”、2018年の “Holy Hell” はすべて、先進のテクニカル・メタルコアのスタンダードとなるものだったのです。しかし、バンドがその荒涼としたブルータリティの限界を押し広げ始めたとき、物事は変化を始めました。昨年の “For Those That Wish To Exist” でブライトンの5人組は、よりクリーンでメロディックな音の時代を切り開くことになったのです。
ARCHITECTS のニューアルバム “the classic symptoms of a broken spirit” の作曲とレコーディングの際に Sam は、Bowie の知恵を取り戻しました。”For Those That Wish to Exit” のようなシネマティックなピークやストリングスはなく、代わりに巨大なリフ、ダーク” はギター、そしてスタジアムでも通用するフックが使われています。Sam はこのアルバムを “殺伐としたパーティー・アルバム” と表現しています。
「新作の構想はダーティーでインダストリアル。新しい ARCHITECTS や古い ARCHITECTS も入っているけど、全てを通してこのテーマがあるんだ。僕たちはインダストリアルなバンドを全く知らないんだけど、それでもやっていこうと思ってるんだ」
ARCHITECTS は常に変幻自在です。このアルバムを例え聴いていなくても、メタルバンドはこうあるべきというステレオタイプからは明らかに外れています。白を基調としたシンプルなアートワーク、小文字で書かれたタイトル。そこから、悪魔崇拝やメタルらしいファンタジーは微塵も感じられないのですから。
そして音楽を聴けば、以前はストリングスや広がりのあるパッセージで感情表現をしていた ARCHITECTS が、この作品ではさらにエレクトロニクス、インダストリアルの世界をバンドのレパートリーとして取り込んでいることに気づくはずです。グリッチ風味のシンセサイザーによるサウンドが、彼らが20年近くかけて完成させたサウンドにさらなる深みを加えています。
エレクトロニクスを積極的に取り入れた現代のメタルバンドなら、シーンをリードする BRING ME THE HORIZON との比較は避けられません。特にオープニングの “deep fake” はシンセの使い方とヴォーカルの表現が彼らに似て秀逸。”Sempiternal” の影は10年近く経った今でもメタルコアの亡霊として影を落としますが、ここではそれ以上のものがあります。もちろん、RAMMSTEIN の面影を宿す “tear gas” にも。
“burn down my house” は静電気を帯電したよりスローでムーディーな曲で、一方 “living is killing us” はシンセウェーブのビートが深く刻まれた未来的な都市景観。アルバム全体を通して何層にも重ねられた挑戦的な建築物は、一つのアイディアに固執することはありません。
バンドが自分たちのサウンドを進化させ続けることが重要だと Sam は言います。2016年にギタリスト兼ソングライターの Tom Searle(ドラマーの Dan の双子の兄)が28歳で癌で他界した後、ARCHITECTS はメタル・コミュニティの “悲しみ” を背負うことになりました。多くのファンは、起こったことの意味を理解しようとしたアルバムである2018年の “Holy Hell” に溢れた悲しみにカタルシスを見出しました。しかし ARCHITECTS は、芸術のために自分たちの痛みの中で生きることが、不健康になりつつあることに気づいたのです。
「”グリーフ・コア” か何かのようなジャンルにならないことが重要だったと思う。Tom は僕らが常に痛みに耐えて、毎晩トラウマになるような経験を持ち出すことを望んではいないはずだ。インダストリアル・バンドになるなんてとんでもないことだが、僕たちはそれに挑戦するつもりなんだ」
つまり、ARCHITECTS の今日の状況はバラ色です。このビデオは、10枚目のアルバム、”the classic symptoms of a broken spirit” は大好評。あの BIFFY CLYRO と共にツアーに出る予定で、ロンドンのThe O2にも初上陸する手筈。前作 “For Those Wish To Exist” はチャートで1位を獲得し、The Official Charts Company からトロフィーが授与されています。
「あの出来事は、レスターがプレミアリーグで優勝したようなものだ。誰もがそんなことは起こらないとタカをくくっていた」
しかし、岡崎のチームと同様に、ARCHITECTS は狂ったオッズをはねのけて優勝しました。そして、ARCHITECTS はこれまでで最大の UK ツアーを敢行。それから彼らは昨年末、ロンドンの伝説的なアビーロード・スタジオで、オーケストラとレコーディングを行いました。
「最初のテイク “Black Lungs” をやったとき、僕は何も歌えなくなったんだ。完全にパニックになって、部屋を出なくちゃいけなかった。マネージャーからジンを渡され、涙ぐんでいた僕は指揮者のサイモン・ドブソンに慰められたんだ。彼は僕を抱きしめて、”一緒に乗り越えよう” と言ってくれた。”他のことは気にしないで、自分ことだけに集中して” と。そして、それはうまくいったんだ」
ビートルズに傾倒するフロントマンは、これを “聖書のような体験” と呼び、パンデミックがまだすべてを終わらせる恐れがある中でコストとリスクを秤にかけつつ、結局次のアルバムを書くことにしたのです。
「ロックダウンという、何もしない退屈な時間の中で、作曲だけが唯一意味のあることだったんだ。自分がミュージシャンであること、これが自分の仕事であることを再認識させてくれた。僕は犬の散歩が得意なんだけど、あとは本当にそれくらいしかできないんだ。だから、何か集中できるものがあってよかったし、みんなのコミュニケーションも保てた。一緒にスタジオにいなくても、アルバム制作のために、常に連絡を取り合っていたからね」
もしあなたが、Sam がビデオでメイクをしていることや、シングル “tear gas” が2007年の “Ruin” よりもさらに RAMMSTEIN 的なインダストリアルな香りがすることに腹を立てているとしても、歌詞の内容を知るまでその怒りは収めるべきでしょう。すべてが小文字のタイトルが物語るのは、傷ついた精神の典型的な症状です。”living is killing us”, “doomscrolling”, “a new moral low ground”, “be very afraid”, “born again pessimist” など、収録されている曲のタイトルがまさにそれを物語っています。Sam は、このような荒涼とした表現には “Very Architects” ARCHITECTS らしい胆力のあるユーモアがあると言いますが、気候変動や、持てる者と持たざる者の残酷な格差社会、そして自分自身の精神状態にかんする率直な分析といったセンシティブなテーマを扱うときには、まさにそのユーモアと胆力が必要なのだと言います。
「そうでなければ、いつも泣きながら歩いていることになる。人々の逃避場所になりたいんだ。自分の音楽は、人々が一緒になって、この国や世界の状況に対する疲労や弱さを共有できる場所でありたいと思うんだ。暖房費も気候変動も心配だけど、僕たちにはそれを話し合える相手がいるし、バンドで歌うこともできる。でも、そういった場所がない人もいるわけで。彼らは本当に心配しているのに、友人たちはそんなこと気にも留めていなかったりしてね。だから、こういうことを話せるバンドがいて、身を乗り出して、”クソみたいな話だよな” と言えるのはいいことだと思うよ」
ARCHITECTS のようなバンドがいることは、もちろん良いことでしょう。今のイギリスは、実際、”クソみたいな話” ばかりなのですから。イギリスの政府は、この数ヶ月で4人目の財務大臣となるジェレミー・ハントを発表。彼は、NHS を解体し、そこで働く人々の士気を破壊することによって売却のための下準備をしているように見えました。食べ物を買う余裕がないとか、凍死しないか?とか、基本的な生命の尊厳が脅かされているのです。さらに、前首相のリズ・トラスはよりクリーンな代替案ではなく、環境の破壊が進むべき道であると主張し続けていました。
同じ週、Just Stop Oil のキャンペーン参加者2人がロンドンのナショナル・ギャラリーに入り、ゴッホの “ひまわり” にスープの缶を投げつけ、壁に貼り付ける様子を撮影しました。芸術と命、どちらが大切なのか。絵画を守ることと、地球と人間を守ることのどちらが大事なんだ?と。その後、彼らの主張よりもその手法が話題になったのは当然ですが残念なことでした。イギリスは自国の気候変動目標の達成にさらに遅れをとっています。
Sam は、自分が答えを持っていないことを最初に認めます。そして、個人として、たとえ彼のような熱心な人間であっても、全体の “ゲーム” が地球に対して不正に操作されている間は、ほとんど何をやっても無駄に近いと理解しています。ARCHITECTS の音楽には、こうした不安も織り込みながら、悩みを他人と共有し、何ができるかを考えようとしているのです。
「誰のせいでもなく、僕たちにできることはあまりない。僕たちの社会におけるより大きな問題は、おそらく世界の炭素排出量の80パーセントを担っている約13の企業にかかっているのだから。環境に配慮している人は、リサイクルのやり方を間違えると、何かを殺してしまったような気がして、イライラしながらベッドに入ることになる。でも大丈夫。それは結局、企業の責任なんだ。もちろん、環境問題は自分の手を離れたわけではないし、毎日、環境のため、自分のため、周りの人のために、より良いことをしようと努力している。でも、時には、それが彼らの責任であることに気づかなければならないんだよ。問題は、誰も大企業にそうした質問をしないこと。みんな、こうした企業が提供するすべてを必要なものとして見なしているから、誰も踏み込めないんだよ。本当にクソ難しい問題なんだ。
僕たちはいつも、世界で何が起こっているのかを、虫眼鏡で見て、”これが本当の姿だ” と話してきた。今のイギリスは生活費や暖房費に苦しんでいる人たちが多いから、すごく暗いんだ。それってもちろん、僕たちにとっても恐ろしいことだけど、人工呼吸器をつけたまま寝ている老婦人にとってはもっと、本当に恐ろしいことだからね」
このアルバムでは、同じように厳しい視線を内側にも向けています。”burn down my house” では、Dan Searle の歌詞が精神的な健康について語りかけます。この2、3年、パンデミックに対する恐怖と怒りが、人との接触がかろうじて合法となったことで増幅されました。自分自身の葛藤の重さだけでなく、精神の病が現実的な健康問題とはなぜ見なされないのかという疑問符をこの曲は描き出します。
「この曲はすごく暗い曲なんだ。僕と Dan の精神的な健康について歌っているんだけど、社会的な状況に昇華できるオープンな曲だと思う。精神衛生についての議論や、チャリティ活動みたいに、人々が何かをすることはあるけど、この問題は思うほどにはまだ現実味がない。実際にきちんとした会話になっていないんだ。”大丈夫じゃなくてもいいんだよ” って言うだけで、”本当に大丈夫なのだろうか?” 答えは “ノー” だ」
ギタリスト、Tom Searle が2016年に亡くなる1年前から、Sam は抗うつ薬を服用するようになっていました。パンデミックにかけて、世界がいつもより混乱する中、彼は服用量を倍増させていきました。抗うつ薬はたしかに、暗いものを閉じ込めておくのに役立ちましたが、それ以外のものも同様に閉じ込めてしまったのです。うつ病の代わりに、彼は何も感じなくなりました。
「抗うつ剤が悪いとは思わないよ。抗うつ剤がなかったら、僕はここにいないだろうから。だけど、服用量を2倍にしたとき、僕はやり過ぎてしまった。喜びも悲しみも、まったく感じられなくなったんだ。全く何も感じない。喜びも悲しみがまったくないんだ。悲しみを感じたい、感情を持ちたいと思っていたよ」
Sam の友人たちが、彼と彼の婚約者に、娘の名付け親になってほしいと頼んだ瞬間が転機でした。その時、婚約者は涙を流しましたが、Sam 自身は、依頼されたことを光栄に思い、嬉しく思っていたが、何も感じなかったといいます。その瞬間に彼は、「もう薬はやめよう、もっと自分を見つめ直そう」と思ったのです。
「あまりに急に断薬するのは危険なので、時間をかけて断薬していったんだ。でも、その間は気が狂いそうだった。断薬するのはとても大変だったんだ」
同時に、サムは自分自身と自分の人生をより徹底的に検討し始めました。バンドが公の場で気高く Tom の死という悲しみを乗り越えてきたように、彼はより静かで個人的なケアも必要だと気づいたのです。
「実際にすべてを眺めてみると、”そうか、自分が対処しなければならないこと、話して癒さなければならないことがたくさんあるんだ” と気づいたんだ。僕と Dan は同じ時期にそれを経験していたんだと思う。Tom が亡くなった後、僕らはそのままツアーに出て、その状況についてレコードを録音した。ステージでも毎晩、彼のことを話したよ。それは本当にすべてを包み込むようなもので、本当に大変だった。
24時間365日、自分のトラウマをみんなに開放するのは簡単なことではないからね。かなり疲れるし、本当にただただ悲しかった。ステージに上がるたびに、Tom の話をするんだけど、同じ話ばかりするわけにはいかない。台本を読んでいるように聞こえるのが嫌だったから。だからこそ、毎晩 Tom の話をしているうちに、トラウマになるような思い出に入り込んでいくんだけど、それがすごくいい思い出だったり、すごくつらい思い出だったりする。
でも、僕本当のことを話していたんだ。Dan と話したんだけど、明らかに僕がステージでこの話をするのがどれだけ大変かを見ていて、”嫌ならこれ以上心を開く必要はない”, “もし君が多くを語らず、ショーを乗り切って楽しい時間を過ごし、ここにいることに感謝する必要があるなら、そうすべきだ” と言ってくれた。
だから、スタジオに入ったときも、今回は、今あるこの瞬間を本当に楽しもうという感じだったね。Tom が僕らにしてほしいと思っていることをやろう、つまり、悲しんでみじめに座っているのはやめようと決めた。Tom が望んでいるのは、悲しんだり惨めになったりすることではなく、自分の人生を精一杯生きて、すべての瞬間を楽しむことだから。
だから、自分の中に戻ってみると、”一人で乗り越えなきゃいけないんだ。みんなの前で僕が乗り越えるんじゃないんだ” って気づくんだ。僕はすでにカウンセラーに会っていたんだけど、最優先って感じじゃなかった。パブで大金を使ったり、ずっと欲しかったレコードを買ったりすること…カウンセラーの優先順位はその下にあるものだったんだよね。だけど、その転機で僕は、できる限り最高のカウンセラーに相談し、お金を貯めて、自分自身をケアするためにお金を使おうと思ったんだ」
結局、ステージから降りればアーティストも普通の人間です。
「チェスター・ベニントンや彼が経験した苦悩を見れば、スーパースターであるかどうかは関係ないんだ。みんな毎日を過ごして、学んで、お互いのために頑張るしかない。僕たちは、他の人たちと同じように、人生や家族、子供、浮き沈み、不安、長所、短所を持った普通の人間だ。僕は少し前に、なぜ怒りの音楽に惹かれるのかに気づいたんだ。他の多くの人と同じように、僕も自分の怒りのための健全なはけ口を持っていなかったから。実際、僕はそれを “許容できる” 方法で表現する方法をまったく知らなかったけど、ヘヴィー・ミュージックは、他の何にもできないときに、その感情を表現する場所を与えてくれたんだ。
今日、僕は18歳ではなく34歳で、自分の怒りのすべてを理解しているわけではないけど、音楽を作るときに表現することを求める感情はそれだけではないし、それはこのバンドのメンバー全員にも当てはまる。そう、怒る理由はたくさんあって、その感情はこの作品に表現されているけれど、もっと複雑な感情もここにあるんだ」
Sam はファンから受けるフィードバックをあまり気にかけてはいません。ARCHITECTS 初期の作品を特徴づけていた破砕的なヘヴィネスが失われたことを嘆く否定的なコメントなどを軽く笑い飛ばし、気にしない。メイクアップのことも、そこまで大した問題ではありません。唯一、本当に気になるのは、バンドが Tom と一緒にいたときとは違うという不満を持つ人たち。そこに Sam は恐怖や嫌悪感を感じています。
「最近はファンの声が大きい。インスタや Twitter を得て皆が突然、音楽評論家になった。だからどうでもいいんだ。良いものも悪いものも読まないよ。ただ若者の作品がその声に影響されるのは嫌だ。音楽を出すだけで怒られるのは辛いからね。
バンドにいるから、楽な人生だろうと思われているような気がする。でもね。毎日、毎秒、Tom のことを考えているんだ。ARCHITECTS という言葉を聞けば、彼のことを考えずにはいられない。Tom ならこれを恥じるだろう、Tom ならこのレコードを嫌うだろう、Tom ならこうしただろう、Tom の遺産に泥を塗るな、と言う人をたくさん見てきた。だけど、オマエは Tom の何を知っているんだ? 名前を口にするのもおこがましいって言いたいよ。
Tom はメインソングライターで、今はみんなが ARCHITECTS でソングライターとしてのあり方を学んでいる。僕たちはこの作品を作るために一生懸命働いてきた。”Tom なしではもう無理だ” と言う方がよっぽど簡単だっただろう。もうこれ以上できない。Tom の真似はできないよってね。つまり、僕たちは親友の音楽をパクってるわけじゃないんだ。後任のギタリスト Josh Middleton に Tom のようなリフを書いてくれなんて頼めないよ。それがどれだけ侮辱的なことかわかる?」
そうして Sam は “大丈夫じゃなくても大丈夫” の件に戻ります。
「SNS のヤツらは、今の僕らが気に入らないからと言って、僕の人生の中で最もトラウマになった瞬間を持ち出してもいいと思っているんだ。そのことで何度も泣いたし、何度も傷ついた。人がこんなに卑屈になれるなんて信じられない。そんなこと言うヤツは狂ってるよ。”大丈夫じゃなくても大丈夫” なんて言われるのは腹立たしいよ。だから、僕たちはお互いに話し方に気をつける必要があるんだよ。Tom がいた頃と比べられるのが僕は恐ろしいから。
新しい ARCHITECTS を好きになれとは言わない。音楽は完全に主観的なものだから。多くのファンは、僕のビートルズの “Revolver” のB面が最高だという話は聞きたくないと思うんだ。わかるよ。嫌いなら嫌いでいい。ただ、そこで僕を侮辱したり、僕のベストメイトを持ち出したりする必要はないんだよ」
“the classic symptoms of a broken spirit” を聴いていると、すべての挫折した感情の結び目が大きく書き込まれています。Sam が言うように、これは共有されることを意図したものでもあり、平易な言葉はそれを聞いて感じる必要のある人々に届く方法として使われているのです。そうして Sam は、自分のバンドがカタルシスの源となり、人々が暗闇の中に光を見出すことができるようにと願っているのです。
「ライヴでは、水曜日の夜を金曜日の夜に変えたいんだ (笑)。現代社会のストレスを忘れて欲しい。音楽は、人々にとって逃避の場だから。大きなトラウマになるような体験をしても、僕たちの音楽を楽しみに来て、トラウマをその時だけは忘れられる。
君がお金をかけて僕たちに会いに来てくれる時、僕たちは君のためにショーを行っているんだよ。君のお金は、僕たちのパフォーマンスという形で君に還元され、君を世の中のストレスから解放するということを知ってほしいんだ。
今の僕たちはオルタナティヴ・アリーナ・メタルだよ。よくわからないけど。つまるところ、僕たちはただのロックンロール・バンドなんだ」
最近の曲は実際にそうしたステージのために作られたもの。Sam は “Animals” をライブで演奏するときの興奮を、”大勢の人が巨大でシンプルなリフに押しつぶされる” という言葉で表現します。そして、疑うことを知らない BIFFY ファンは、英国で最も優れたメタル・バンドのひとつに初めて遭遇するのです。
「”これは一体何なんだ?”と思ってくれる人がいるといいんだけどね。面白くなりそうだ。楽しみだよ。僕はいつも打ち負かすことを楽しんでいる。観客の中にいる誰かを見て、激怒しているその一人に集中して、考えを変えようとする…そのチャレンジが好きなんだ」
何より今、Sam Carter は幸せです。彼は人生に満足し、自分のバンドの新しいアルバムに喜びを感じ、ようやく友人たちとツアーに出られるという見通しも立ちました。今の彼は自分自身をきちんとケアしていて、以前との違いを目の当たりにしているところです。そして、アルバムに収録されている音楽と同じくらい Sam の人生は、彼が人々と共有し、絆を深めたいと考えているものなのです。
「これが僕の人生だなんて、信じられないよ。”信じられない”! みんなにそれが伝わればいいな。それは、とても大切なこと。まるで、誰かが僕の口の中に LSD を入れたみたいだ」
壊れた精神?建築家はそれをリフォームする方法を知っています。
“We Do Think Of War As Part Of Human History And Mainly a Great Way To Learn That Violence Is Never The Answer To Resolving Any Conflict. There’s Nothing Positive In Death Of Innocents That Benefits Humanity At Large.”
DISC REVIEW “HEIR OF THE RISING SUN”
「歌詞を読んでみると、この作品がただの歴史の授業ではなく、詩的で、時には出来事の完全な説明というより、もっとテーマを喚起するような内容になっていることに気がつくと思うんだ。中世ビザンツ帝国の時代は北米じゃ軽視されがちだけど、歌詞の内容的にも音楽的にも大きな可能性を秘めた、取り組むべき興味深い題材だと思った」
大砲が何発も何発も都市の城壁に打ち込まれる中、ダミアヌスは深く動揺しながらも、矢を手に城壁の上に立つ。彼はすぐに聖母に祈りを捧げた後、弓を包囲者たちに向けて放つ。埃が空中に舞い上がり、大砲を操るオスマン軍の将を左に数センチ外してしまう。パニックの中、ダミアヌスは選択を迫られる。先祖の土地を捨てて去るべきか、それとも戦って死ぬべきか?ダミアヌスが戦うことを決断した数分後、大砲の弾が命中し、彼の手足は引き裂かれ骨は粉々になった。おそらく神は帝国の滅亡を望んでおられるのだろう。コンスタンティノープルの街のあちこちが限界点に達し、ノヴァローマの富を手に入れるため、オスマン帝国はついに征服不可能な都市に突入した。
「実は、この曲はウクライナ戦争が始まるずっと前に作られたものなんだ。とはいえ、僕たちは戦争を人類の歴史の一部と考え、暴力がどんな争いも解決するための答えには決してならない、そのことを学ぶために最適な方法だと考えているんだ。罪のない人々の死が、人類全体の利益となるなんてことは絶対にない。戦争にポジティブなことは何もないのだから」
この “The Fall of Constantinople” “コンスタンティノープルの陥落” は、AETERNAM の5枚目のアルバム “Heir of the Rising Sun” を締めくくる、ビザンツ帝国の終焉を描いた壮大な楽曲です。この歴史的、音楽的なクライマックスに到達するために、AETERNAM は SEPTICFLESH の映画的シンフォニー、WILDERUN の知の陶酔、AMORPHIS の旋律劇、ORPHANED LAND の異国の香りを見事に混交しています。リスナーはこのレコードで時を超え、オスマンとビザンツの時代に旅をしながら、”永遠” の名を持つバンドが提起する人類永遠の課題 “戦争” を追体験するのです。この物語は遠い昔の話しでありながら、実は過去の遺物ではありません。そろそろ私たちは、ほんの少しでも歴史から何かを学ぶべきでしょう。
「”Kasifi’s Verses” の冒頭にあるトルコ語のちょっとしたナレーションを入れると、実は5つあるんだよね。 それは、曲の中で僕たちが語る人々に対する言葉でのオマージュと見ることができるだろうね」
“Heir of the Rising Sun” で AETERNAM はアグレッシブ・メロディアスなリフの合間に、中東・北アフリカの風を受けたギターリードがオスマン帝国の誇りを見せつけ、”征服者” がコンスタンティノープルを手にするため力をつけていく様を描いていきます。もちろん、その絵巻物の情景は、モロッコに生まれ育った Achraf の歌声が肝。
そうしてアルバムは、1453年5月29日が近づくにつれそのオリエンタルなテンションを増していきます。”Beneath the Nightfall” や “Where the River Bends” におけるブラックメタルの激しい旋律、荘厳に勝利を響かせる “Nova Roma”。
一方で、”The Treacherous Hunt” では、東洋の水にグレゴリオ聖歌とシンフォニック・ブラックメタルの構造を無理なく融合させて、ビザンツ帝国の側からもストーリーを肉付けしていきます。戦争に正義などありませんし、完全に善と悪で割り切れるものでもないでしょう。AETERNAM は侵略者、被侵略者、両方の物語を描く必要があることを知っていました。英語、ギリシャ語、トルコ語、ノルウェー語、ラテン語という5つの言語を使用したメタル・アルバムなど前代未聞。しかし、それはこの壮大な “教訓” をリアルに語るため、絶対に不可欠な要素だったのです。
フィナーレにしてクライマックスのクローザーでは、大胆なメロディとスタッカート主体のリフ、ドラムが大砲のように鳴り響き、オスマントルコの攻撃を演出。しかし、途中から勇壮なギター・リフに移り変わり、ビザンツ兵の視点が強調されます。逃げ出すか、このまま街に残って死ぬか。彼は嘆きながらこう決心するのです。
「もし神の意志で街がこの夜に滅びるのなら 私は命を捧げた戦士たちの側に倒れよう」
今回弊誌では、魂のボーカル&ギター Achraf Loudiy と、創始者のドラマー Antoine Guertin にインタビューを行うことができました。「Achraf と僕が出会ったとき、彼は AETERNAM の曲にもっと東洋的なメロディーを取り入れるというアイディアを持っていたんだ。 彼はモロッコでそうしたメロディーを聴いて育ったし、彼の母親が素晴らしいシンガーであることも重要だった。家系的にもそうなんだよね」 どうぞ!!