EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NIKITA KAMPRAD OF DER WEG EINER FREIHEIT !!
“I Somehow Always Wanted To Create an Album About The Night, About Dreams And The World Between Being Awake And Asleep.”
DISC REVIEW “NOKTVRN”
「私はずっとクラシック音楽が好きで、フレデリック・ショパンは私に多くのインスピレーションを与えてくれた作曲家の一人なんだ。特に彼のピアノのためのいわゆる “夜の小品” であるノクターンがお気に入りなんだよね」
ヘヴィ・メタルは昼の音楽でしょうか、それとも夜の音楽でしょうか? もちろん、カリフォルニアの真夏の太陽の下、ビーチで美女と組んず解れつ大音量で聴くべきメタルも存在しますが、根本的には暗く、重く、憂鬱な夜行性の音楽であることは誰もが認めるところでしょう。夜行性とはすなわち夜と一体になることです。
夜想曲、ノクターンを書くためには、夜からインスピレーションを受けなければなりません。ポーランドのピアニストで作曲家、フレデリック・ショパンは夜を愛し、1827年から1846年の間に21曲の夜想曲を書き連ね、遂にはその超絶技巧の中で人間の心の複雑さにまで到達して表現しました。つまり、彼の “夜の小品” は、ロマン派の理想を華麗に実現し、技巧的研究の中に類稀なる夜のハーモニーとメロディーの融合を提示していたのです。
「レコードを作る場合重要なのは、バンドの文脈における楽器と音の組み合わせだということなんだ。例えば、シンフォニック・オーケストラでヴァイオリンだけを聴くのと同じように、メタルでギターだけを聴いても、全体は理解できない。”Noktvrn” では、ショパンのノクターンなどクラシックな曲との直接的なつながりはないにしても、こうしたクラシック流のアプローチが最近の私の曲作りに大きな影響を与えているんだよ」
5枚目のアルバムとなる “Noktvrn” で、DER WEG EINER FREIHEIT は独自の革命的な道を歩み始めました。ボーカル/ギターの Nikita Kamprad は、クラシックの整合性やシンフォニーが描き出す全体像の美学に影響を受けながら、さらに敬愛するショパンがのめり込んだ “夜” に心酔し、メタル・ノクターンの具現化に向けて全精力を傾けました。
「私はなんとなく、夜について、夢について、起きているときと眠っているときの間の世界についてのアルバムを作りたいとずっと思っていたんだよ」
きっかけは、深夜から早朝に白昼夢として降りてきた “Immortal” という楽曲でした。もし夢の中で作曲ができたとしたら、もし半分眠っている状態で創造的になれたとしたら。朝日がほんの少しだけ顔を出した紫色の部屋の中で Nikita はそんな夢物語を偶然にも実現し、さらに夜のリズムに惹かれていきました。作曲を夜間に限定して行うようになったのも、飽くなき夜音探求のため。そうして、プログレッシブ・ブラックメタルを指標するドイツの賢者は、そのバンド名と同様に自由を渇望し、実験と挑戦のノクターンを完成させました。
「つい数日前、ある人が DEAFHEAVEN も新しいアルバムで私たちの “Noktvrn” と似たようなテーマを扱っていると言ってきたんだ。例えば、早朝に感じる気持ちや、半分眠っているような気分といったものをね」
偶然とは重なるもので、DER WEG EINER FREIHEIT と同様にブラックメタルの世界を押し拡げる DEAFHEAVEN も奇跡的に”青の時間” をテーマとした作品を昨年リリースしています。ただし、音楽的には双方リスクを犯しながらも DER WEG の “夜” の方がより多彩で実験的なのかもしれませんね。
オープニングを飾る “Finisterre II” のアトモスフェリックな音響はアルバムを侵食し、”Monument” のオーケストラアレンジとホーンセクションが妖しくも美しい夜の音を召喚。別世界を醸し出す “Immortal” のフォーク、”Haven” の夢のようなシューゲイズ、”Gegen Das Lichtの徹頭徹尾アバンギャルドなアートロックと、彼らの夜会は迷宮のように深く入り組みながら、混迷の中に人の複雑を描き出します。
「私たちの社会では、メンタルヘルスや心の病気はいまだに過小評価され、話したくないタブーのような問題とされているように感じているんだ。だから私たちがそれについて話さなければ、精神的な病に苦しむ人々の助けにはならないだろうと思ってね」
“Noktvrn” は一般的なブラックメタルとは異なり、人間の心のあり方を投影した作品です。睡眠時や夢を見ている時の脳の働き、パニック障害、幽体離脱体験にフォーカスしたリリックはショパンのように夜で心を哲学して、パズルのピースのようにアルバムの音楽へと寄り添いました。
暗く、孤独で、憂鬱な夜は、だからこそ時には優しい時間にも変化します。遂にマイルドな英語を解禁すると共にクリーンな歌声を解き放ち、実験的なブラックメタルを多層的なハーモニーの輝きで装飾した彼らの新たな挑戦は、まさに弱さや儚さをも抱きしめる夜の包容力をも認めた結果ではないでしょうか。
今回弊誌では、Nikita Kamprad にインタビューを行うことができました。「音楽を書いたり、ライブで演奏したりすると、ほんの一瞬だけど、自由な気持ちになる。言論、プライバシー、宗教などの自由が制限され、しばしば紛争、腐敗、戦争を引き起こしているのを見ると、今の世界にはあまり自由を感じないからね。だから、音楽とこのバンドは、私にとっての “自由への道” であり、好きなことができる安全な空間に逃避する方法なんだよ」 どうぞ!!
DER WEG EINER FREIHEIT “NOKTVRN” : 9.9/10
続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DER WEG EINER FREIHEIT : NOKTVRN】